エルの翼のようです

1 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:03:07 ID:TPsYliTQ0
ラウンジとプラス、どちらも強大な国力を持つ二国の争いは300年が経過しても続いた。
お互いが強大な故、戦線は膠着を続け数年単位の休戦期間を設けながら戦争は続いていた。

そして現在、両国は休戦期間を設け次なる戦いへ向けて備えていた。

そんな現状とは打って変わって、ラウンジの国土の端に存在する小さな村シベリア。
人口は少なく、田畑を耕しながら人々が暮らすそんな場所である。

2 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:05:03 ID:TPsYliTQ0
シベリア村の端に存在する小さな魔法書店、その店の2階に眼鏡を掛けた男が集まっている
子供に学を教えていた。

( ФωФ)「と、言う訳で人々は荒廃した大地と共に再度文明を築き上げ今に至るのである」

パタンと本を閉じ、子供が座っている席を見渡す男。
すると、男の視界に少々不愉快な光景が飛び込んでくる。

( 'ω`)「ZZzz……」

(;^д)「ちょ、ちょっと……ブーン君、先生見てるよ!」

隣の席にいた少女にゆさゆさと体を揺らされるブーンと呼ばれた少年。
しかし、どんなに少女が体を揺らしても起きる気配はなく、周囲の席にいた生徒達から微笑がもれる。

( ФωФ)「……ブーン君」

( 'ω`)「ZZzz……」

( ФωФ)「ブーン君!」

( 'ω`)「ZZzz……」

(#ФωФ)「ホライズン=ナイトール! 起きんかィ!!」

バシンという強烈な音が響き、少年は目を覚ます。

3 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:06:51 ID:TPsYliTQ0
頭部に鈍い痛みを覚え顔を上げ、瞼を上げる。
最初に視界に飛び込んできたのは、机の上に広がった唾液。
次に飛び込んできたのは、教科書を持ちこちらを睨みつける眼鏡を掛けた男

( ФωФ)「目は覚めたかい?」

( ^ω^)「はい、ロマネスク先生」

頭をさすりながら僕はそう答えるしかなかった。

( ФωФ)「どこから寝ていた」

(;^ω^)「お恥ずかしながら、計算の授業が終わってからは記憶がありませんお」

( ФωФ)「そうか、じゃあ歴史書の74ページを読みたまえ」

( ^ω^)「解りましたお」

74ページを開き、声を上げながらページを読み上げる。

4 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:07:56 ID:TPsYliTQ0
かつて世界は高度な文明を持ち、人々が幸せに暮らしていました。
しかし、そんな豊かな暮らしを妬んだ者達が居ました。
天使です。
天使はその力で文明を一夜で灰燼に帰しました。
それから人はもう一度力を合わせ、ようやく現在の形まで復興を遂げました。

( ФωФ)「そこまででよい」

本を閉じ、席に座る。
長いこと眠っていたような感覚がするが、呼んだ文章はほんの少し。

( ^ω^)「……また、脱線したのかお?」

(*^д)「うん、天使は怖いんだぞーっていう話を結構してた」

( ^ω^)「そうかお」

ロマネスク先生は天使の事を恐れている。
いや、正確には僕も含め皆恐れているのだ。
人智を超える力を持ち、一度世界を崩壊させた。
その理由にはついては諸説あるみたいで、天使を崇拝をしている教会では
僕達がなにか悪い事をして、天使を怒らせてしまったと言っている。
だけど、だいたいの歴史書ではその辺りの事が結構曖昧でなんで滅ぼされてしまったのかはよくわからない。

( ФωФ)「では、今日はここまでとするか……皆、気をつけてな」

(*^д)「はーい!」

(*^ω^)「おっおっ、授業が終わったお! ご飯食べに行くお!」

5 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:09:18 ID:TPsYliTQ0
ロマネスクさんの魔法書店の2階から勢いよく階段を降り、僕はご飯を食べに行くために村の中を走り出す。
今日は一体何が食べれるんだろう、そう思いながら全力疾走をすると後ろから声が聞こえてきた。

(;^д)「待ってよーブーン君!」

( ^ω^)「おっせーおタカナ! 早く来ないとお前の分も食っちまうお」

(;^д)「ちょ……勘弁してよぉ」

やっとこさ僕の許までたどり着いたタカナは、ぜーぜーと肩で息をしながら呼吸を整え始める。

( ^ω^)「落ち着いたかお?」

(*^д)「ん、うん……」

( ^ω^)「じゃあ、一緒に行こうか」

僕が手を出すと、タカナは頷き僕の手を握る。
それから僕達は村にある教会へと向かっていった。
そこにはデレさんというシスターが居て、彼女が僕達のお昼ご飯を作ってくれているのだ。

6 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:10:13 ID:TPsYliTQ0
( ^ω^)「デレさんこんにちはだおー」

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはブーン君、タカナちゃん」

裏口から教会へと入り、台所で芋の皮を剥いていたデレさんに挨拶をする。

( ^ω^)「手伝いますかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ、ご飯ならもうできてるからそこのお鍋からお皿によそって食べて」

(*^д)「あ、野菜のスープだ!」

( ^ω^)「じゃあ、早速よそって食べおうか、タカナお皿持ってきておくれだお」

(*^д)「うん」

パタパタという音をたて食器棚に向かっていくタカナ。

(*^д)「はい、お皿」

( ^ω^)「ん、ありがとうだお」

お皿を受け取り、僕はタカナの分をよそい彼女に手渡す。
次は僕の分、ちょっとばかりタカナより多くよそう。

( ^ω^)「さあ、食べおうか」

(*^д)「うん」

7 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:11:51 ID:TPsYliTQ0
スプーンを使い、一口スープを口に含む。
ああ……デレさんの作るスープはおいしい。

(,,゚д)「デレさんこんちはー」

(#゚;;-)「こんにちはデレさん」

僕がスープを平らげた頃、タカナのお兄さんのギコードさんとディノさんがやってくる。
二人とも、この小さな村の警備をしていていざという時に頼りになるお兄さん達だ。

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは、ご飯できてるからよそって食べて」

ジャガイモの皮剥きを終えたデレさんは、人参の皮を剥く作業に移る。
まだお昼だというのに夕食の下ごしらえをするのが、お昼のデレさんの日課だ。

(,,゚д)「いつもいつも申し訳ないです」

(#゚;;-)「有難く頂きます……」

(,,゚д)「おい、皿取ってこいよ」

(#゚;;-)「昨日は僕が取ってきただろ、今日は兄さんがいけよ」

(,,゚д)「なんでだよ」

(#゚;;-)「兄さんいつも僕の分少なく盛って、自分の分多く盛るだろ」

(,,゚д)「そんな事ねぇよ」

(#゚;;-)「あるよ」

(;^ω^)(不毛な……)

8 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:13:05 ID:TPsYliTQ0
食事を終えた僕は、タカナと一緒に教会の前の掃き掃除をする。
母ちゃんが生きていた頃、母ちゃんはいつも自主的にこうして掃き掃除をしていた。
それを僕がただ継いでやっているだけ。

( ^ω^)「あー、掃き掃除だりぃー」

(;^д)「真面目にやろうよ」

花に水遣りをするタカナに小言を言われる。
こんな事をするより僕は剣術の修行をしたいが、デレさんにお昼ご飯を作って貰っているため、
いくら掃き掃除が面倒でも欠かすことはできない。
母ちゃんが生きていればなぁ……たまにこう思う事はある。

(*^д)「そういえば明日、ベリーの収穫祭だね」

( ^ω^)「うん、今年も真っ赤なベリーが沢山採れるといいおね」

毎年この時期に僕達の村ではベリーの収穫祭が行われる。
この村から東にほんの少し行った所にある森では、この時期にベリーが沢山成るのだ。
それを集めて、ジャムにしたり醗酵させてお酒にしたりして付近の町や村に売っているのだ。

まあ、僕には加工品の事はどうでもよく
早くあのベリーの甘酸っぱい味を堪能したい、それだけだった。

9 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:15:38 ID:TPsYliTQ0
(*゚∀゚)「よぅおめー等、飯食ったか?」

ふいに掃除の途中に声がし僕は顔を上げる。
綺麗なドレスをきた女の子が八重歯を見せながら微笑んでいた。

( ^ω^)「あ、ツーちゃん! うん、食べたお」

(*^д)「ストランド様、こんにちは」

(*゚∀゚)「おーいタカナー、毎度言ってるがそんな堅苦しい言い方なしにしようぜ」

(;^д)「で、でもストランド様は貴族の方だし」

そう、ツーちゃんことツー=ストランド。
彼女は貴族の娘だ。
そんな貴族がなんでここに居るのかというと、彼女の父親がこの村に別荘を持っていて
毎年この時期にツーちゃん達はしばらくの間この村でゆっくりしているのだ。

( ^ω^)「まあまあ、タカナはまだ小さいからしょうがないですお」

(*゚∀゚)「んー、でもお前がタカナぐらいの時、お前平気でタメ口聞いてきたじゃん」

(;^ω^)「ブフォッ!? あ、あの時はツーちゃんが貴族だって知らなくて……」

あの時は母ちゃんにしこたま殴られたっけか。
普通なら平民の僕がそんな口を利くのは恐れ多い事なのだが、彼女のお父さんは笑って許してくれた。
まあ、そんな事があって僕とツーちゃんは身分の差はあれど、こうして割と砕けた会話ができる。

10 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:17:20 ID:TPsYliTQ0
(*゚∀゚)「なー、お前等明日ベリーの収穫祭なんだろ?」

( ^ω^)「うん、一杯取って御腹一杯食べるつもりだおー」

(*゚∀゚)「そうか、がんばれよ」

( ^ω^)「うん、ツーちゃんが沢山食べられるように一杯採るから安心しておくれお」

(*゚∀゚)「ここのベリーおいしいからな、父上もジャムはこの村のベリーのジャムしか使わないしな」

(*^д)「そうなんですか?」

(*゚∀゚)「ああ、だから毎年この時期に別荘にやってくるのさ」

( ^ω^)「なーるへそ」

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君、タカナちゃん、お掃除終わった?」

僕達が明日の話に盛り上がっていると、ふいにデレさんがやってくる。

(*゚∀゚)「……デレか」

同時に機嫌が悪くなるツーちゃん。
ツーちゃんはデレさんが嫌いなのではない、教会で働く人が嫌いなのだ。
世界を滅ぼした天使を崇拝しているから。
そうなると僕達も嫌われるものなのだが、僕達は僕達で色々と事情がある。

11 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:18:40 ID:TPsYliTQ0
ζ(゚−゚*ζ「ストランド様……」

(*゚∀゚)ノシ「じゃーなブーン、タカナ! ベリー、楽しみにしてるぜ」

( ^ω^)「うん、沢山採ってくるお!」

僕達はそのままツーちゃんが見えなくなるまで見送り、デレさんと一緒に教会の中へと入り夕食を貰う。
剣術の修行をしたかったが、ツーちゃんと長話をしてしまったので結局今日はできなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「そうだ、二人ともこれ」

夕食後にデレさんに渡されたのは手作りの手袋だった。

(*^ω^)「おっおっ、ピッタリですお! どうもありがとうですお」

ζ(゚ー゚*ζ「これで葉っぱとかで手を切らなくてすみそうだね」

(*^ω^)「たしかに手袋があれば大丈夫そうですお」

実は昨年、僕は収穫祭の最中に毒草で指を切り高熱を出したのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、タカナちゃんもね」

(*^д)「あ、ありがとうございます」

ボンボンがついた、紫色の手袋を受け取り手にはめるタカナ。
年相応の女の子らしく、なかなかに可愛い。

ζ(゚ー゚*ζ「2人とも明日はがんばってね」

ζ(゚−゚*ζ「できれば私も参加したいのだけれど」

12 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:19:43 ID:TPsYliTQ0
( ^ω^)「……」

シスターのデレさんは収穫祭には参加できない。
天使を崇拝してるから。
村の大人の話では、デレさんには悪印象はあまりない。
でも、それとこれとでは話が別らしい。

(*^д)「わ、私……デレさんの分も沢山採ってきますから」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう……ごめんね、こんな事言っちゃって」

( ^ω^)「気にしてないですお」

( ^ω^)「それじゃあ、また明日」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、気をつけて帰ってねブーン君」

( ^ω^)「タカナもまた明日な」

(*^д)「うん、また明日ね」

13 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:20:35 ID:TPsYliTQ0
陽がだいぶ傾き星が見え始めた頃、僕は家へとたどり着いた。

( ^ω^)「今帰ったお」

家に入ると、まず僕を歓迎してくれたのは酒の臭い。
床を転がる酒の空き瓶。
そして

(`゚ω゚´)「おせーぞブーーーン!!!」

親父の怒鳴り声。

(`゚ω゚´)「てめぇ、こんな時間までどこほっつき歩いてた!」

どたどたと大きな音を立てながら姿を現す親父。
朝、姿を見たときから服装が変わっていない。

( ^ω^)(また、朝っぱらから飲んでたのかお)

(`゚ω゚´)「おい! 酒買ってこい」

( ^ω^)「……」

(`゚ω゚´)「返事しろ糞ガキィ!」

頬に親父のパンチがめり込み僕は床に叩きつけられる。

(メ^ω^)「金……渡せお」

(`゚ω゚´)「チッ、クズが」

14 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:21:38 ID:TPsYliTQ0
床の上に放り投げられた小銭を拾い、僕はランプ片手にこの村に一軒だけある宿屋に入る。

¥ ・∀・¥「いらっしゃい……て、なんだブーンか」

(メ^ω^)「マニーさん、お酒売って欲しいお」

¥ ・∀・¥「やれやれ、君も難儀だね……」

カウンターから一本の酒瓶を取り出し、マニーさんは僕に手渡してくれた。
この宿屋では、酒場としても機能しており夜にはこの村の人で賑わっていた。

¥ ・∀・¥「と、言っても……君のお父さんがいないと僕の店はかなりきつい立場に立たされちゃうんだけどね」

(メ^ω^)「早く村の大人達に帰ってきて貰いたいですお」

¥ ・∀・¥「……そうだね。でもそう簡単には帰ってはこないと思うな。
       また、大きな戦いがおきそうだし」

(メ^ω^)「そうなんですかお?」

¥ ・∀・¥「ああ、だから態々こんな村からも徴兵していったんだよ」

(メ^ω^)「…………」

¥ ・∀・¥「と、長話をしてしまったね。早くそれを持って行きなさい」

(メ^ω^)「どうもありがとうだお、マニーさん」

¥ ・∀・¥「気をつけてな」

15 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:22:27 ID:TPsYliTQ0
(メ^ω^)「…………」

ランプ右手に、酒瓶を左手に僕は家へと向かった。

(メ^ω^)「…………」

親父がああなったのは、母ちゃんが死んでからだ。
信徒だった母ちゃんは教会の帰りに、暴れて制御のつかなくなった馬に蹴られて死んだ。

あの時の事は今でも忘れられない。

母ちゃんが死んだ後、親父は酒で悲しみを紛らわそうとした。
酒を飲んでは奇声を上げ、いつしか暴力を振るうようになった。

そして、アルコールが抜けると。

(`・ω・´)「……すまん」

(メ^ω^)「いいお別に」

アルコールが抜け迎えにきた親父にそれだけ言い、僕は酒瓶を手渡す。
親父は何も言わずそれを受け取り、震える手で僕の手を握る。

これが原因で親父は徴兵されなかった。
武器を持った時、震えが収まらず不合格の烙印を押された。

16 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:23:15 ID:TPsYliTQ0
(`・ω・´)「悪かったよ……」

(メ^ω^)「気にしてないお」

変わらないやりとり。
親父にはもうなにも望んでいない。
どうせ酒を飲めば元に戻る。
最近はシラフでいる時間の方が短い。

(メ^ω^)「明日、収穫祭だから酒は飲むのやめておけお」

(`・ω・´)「ああ……」

(メ^ω^)「家についたら僕はもう寝るお」

(`・ω・´)「ああ……」

チラチラと酒瓶に視線をやる親父。
これでやれすまんだの悪かった等と言うのだ。

(メ^ω^)「…………」

17 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:24:13 ID:TPsYliTQ0
家に帰った僕は、ベッドに横になる。

居間では親父がコップに酒を注いでる音が聞こえる。

(メ^ω^)「糞親父が」

それだけ小さく呟くと僕は枕に顔を埋め、寝る体制に入る。

明日は収穫祭、収穫したベリーを分けたりする作業でしばらくは家に帰らずにすむ。


翌朝、僕は酒瓶を抱きしめて鼾をかく親父を尻目に服を着替る。
洗濯物が大分溜まっている。
着替えのしまってあるタンスの隣に置いてある洗濯籠に着替えながら目をやる。

( ^ω^)「……行ってくるお」

どうせ聞こえてはいないだろうが一応言う。
僕は手袋を持つと家を後にし村の中央広場へと向かった。

18 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:25:15 ID:TPsYliTQ0
¥ ・∀・¥「やあおはよう、今日は待ちに待った収穫祭だね」

( <●><●>)「そうですね、村の若者が大勢徴兵されてしまった分、我々ががんばらないと
        いけないのはワカッテマス」

(,,゚д)「よーし、兄ちゃん収穫がんばっちゃうぞー」

(#゚;;-)「何を言っているんだ兄さん、僕達は門番の仕事をしないと駄目だろう」

(´゚Д゚)「……」

(#゚;;-)「タカナ、兄ちゃん達はお仕事があるから僕達の分もがんばってくれ」

(*^д)「うん、がんばる」

(#゚;;-)「行くよ、兄さん」

(´゚Д゚)「……あぁ」

(;^ω^)(ギコードさんかわいそうに……毎年収穫祭を楽しみにしてたから)

村の数少ない若手、ギコードさん達が門番の仕事に戻ると、残ったのは50を超えた人や
専門知識のある人、商いをしている人、子供だけ。

( ´曲`)「えー、今年もこの時期がやってきたっテナー」

この村の村長テナーさんが挨拶をし、同時に諸注意等を言いあげる。

( ´曲`)「今年は村の者が大勢徴兵されて居なくなってしまった。
      故に人手はまったく足りないが、がんばって収穫に勤しんでもらいたい」

19 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:27:24 ID:TPsYliTQ0
( ФωФ)「だったら、門番をしているパステル兄弟も参加させたほうがよいのでは?」

(;´曲`)「ギコード達を門番から外すと誰が門番をするんだっテナー」

(;ФωФ)「それもそうか……最低限の防備だけは残したいからな」

( ´曲`)「んじゃ次に諸注意だっテナー。
      去年ブーンが、毒草で指切って寝込んだから今年は手袋着用義務だっテナー」

¥ ・∀・¥「ちゃんと手袋してるよー」

マニーさんが黄色の手袋を持ち上げ揺らす。

(*^д)「私もしてるー」

l从・∀・ノ!リ人「妹者じゃー」

鍛冶屋の流石兄弟さん家の妹、妹者ちゃんも火避けの分厚い手袋をタカナと共に揺らす。

( ´曲`)「ブーン、お前はしてるか?」

( ^ω^)「うん、デレさんに作って貰ったお」

( ´曲`)「……そうか」

デレさんの名前を聞き村長さんは複雑な表情を浮かべた。

20 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:28:12 ID:TPsYliTQ0
( ´曲`)「ま、細かい事はこれぐらいにして、収穫祭を開始するっテナー!」

( ´_ゝ`)「イヤッホーーー!!弟者達の分までとってやるぜー」

l从・∀・ノ!リ人「兵士になってしまった小さい兄者の分までがんばるのじゃ」

弟者さんというのは兄者さんの弟で、兄者さんの代わりに徴兵され現在は兵士として働いている。
だから、今年は参加できない弟者さんの分も含めて張り切っているのだろう。

( ´曲`)「と、一ついい忘れたっテナー」

( ФωФ)「ん、まだなんかあるのか?」

( ´曲`)「子供には必ず一人大人がついてやるようにしろっテナー!
      万が一モンスターが出たときは身を挺して子供を守ってやれっテナー」

そういい腰からショートソードを取り出すテナーさん。

( ФωФ)「ブーン、我輩と共に行動をするか」

( ^ω^)「おっおっ、ロマネスクさんありがたいですお」

( ФωФ)「お前はほおっておくと碌な事をしないからな。
        我輩がちゃんと見張っておいてやろう」

(;^ω^)「ああはい……余計なことはしないようにしておきますお」

( ФωФ)「それならよい」

( ´曲`)「そんじゃ、収穫祭開始っテナー」

21 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:28:56 ID:TPsYliTQ0
東の森に走る。
待ちに待ったこの日がきたから。

(*^ω^)「うぉぉすっげぇーー!! 今年も沢山ベリーが成ってるお!」

( ФωФ)「うむ」

ベリーを一つ採り、それを口に運ぶロマネスクさん。

(( ФωФ))「ふむ……」  モッキュモッキュ

(*ФωФ)ゴクン 「うまい!」

(*^ω^)「本当ですかお!」

(*ФωФ)「うむ、今年も良いベリーができておる。
       これならかなりの値で売れそうであるな」

(*^ω^)「そいつはやったお!」

( ФωФ)「さあブーン、まずはこの籠が一杯になるまでベリーを収穫するとしようか」

(*^ω^)「はいですお」

( ФωФ)「それと、あんまつまみすぎんようにな」

(*^ω^)「はいですお」

( ФωФ)「良い返事だ。普段の授業もそれぐらい熱心に取り組んでくれたら嬉しいのだがね」

(;^ω^)「は、はいですお」

22 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:29:49 ID:TPsYliTQ0
(*^д)「村長、今年も沢山ベリーが成ってますね」

( ´曲`)「ああ、これで少しは村の懐が潤うっテナー」

( <●><●>)「ええ、しばらくは大丈夫だとは思いますが……
        ベリー以外にもなにか考えないと行けないのはワカッテマス」

(;´曲`)「そうは言うがな、畑を耕す人手も足りないしこれ以上はいかんともしがたいっテナー」

この村の財政はさほどよくはない。
むしろ、徴兵によって貴重な働き手を失ってからは収穫量も激減しワリと洒落にならないぐらい
この村の懐は寒かった。

(;^д)「この村にもお財布があるんですか……一体どんな事に使うんですか?」

( ´曲`)「簡単に言えば王様に毎月お金を納めてるっテナー」

勿論他にも色々とあるのだが、子供にはこれ以上言っても理解はできないであろう。
そう思い、彼は簡単な説明をする。

(;^д)「そうなんですか、村長さんって大変なんですね」

( ´曲`)「そう言って貰えるとありがたいっテナー」

( <●><●>)「お話はそれぐらいにして、私達も収穫を開始しましょうか」

(*^д)「あ、そうですね! 私、がんばります」

( ´曲`)「ん、よろしく頼むっテナー」

23 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:30:49 ID:TPsYliTQ0
(*^д)「村長さんもがんばってくださいよ」

(;´曲`)「いや、ここまでくるのに結構体力使っちゃって……」

( <●><●>)「帳簿ばっかりして普段から運動しないからですよ」

(#´曲`)「うるせー馬鹿、おめぇのほうが帳簿つけるのが上手いんだからおめぇがやれよっテナー!」

( <●><●>)「村長は兄さんじゃないですか、帳簿というのは村長が付けるべきだという事はワカッテマス」

(#´曲`)「てめぇこの野郎……一発ぶん殴ってやる」

( <●><●>)「ふっ、兄さんが私に勝てないのは既にワカッテイマス」

(#´曲`)「なんだとこの馬鹿弟! ぶっとばしてやるっテナー!」

(;^д)(元気だなぁ……その勢いでベリーを収穫してくれたら嬉しいのに)

ガッシボカ!

(;^д)(しょうがない、私だけでもがんばろう)

喧嘩をする2人を放置し、ベリーを籠に入れていくタカナ。
齢7歳ではあるが、彼女はそこらの者より何倍もしっかりしていた。

(*^д)(おとーさんにベリーのジャム送ってあげないと)

24 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:31:38 ID:TPsYliTQ0
( ^ω^)「ロマネスクさん、籠が一杯になりましたお」

だいたい30分ぐらいして、最初の籠が満杯になる。
普段ならもっと人が沢山いて、10分ぐらいで満杯になるのだが、今年は僕とロマネスクさんしか周りにいない。

( ФωФ)「うむ、それじゃあ我輩が持っていくか」

( ^ω^)「あ、大丈夫ですお! ブーンが持っていきますお」

( ФωФ)「おお、そうか! それは助かるな」

腰をとんとんと叩くロマネスクさん。
まだ30分しか経過していないが、疲れの色が見て取れる。

( ^ω^)「それじゃあ行きましょう」

籠を背負い、ロマネスクさんの後に続く。
5分程歩くと森を抜け草原にでる。草原の向こうには僕達の住む村が見える。

( ФωФ)「この籠は流石兄弟のかな」

草原には既に満杯の籠が一つ置いてあり、僕はその籠の横に満杯になった籠を下ろす。

( ^ω^)「それじゃあ次、行きましょうか」

( ФωФ)「うむ」

( ^ω^)「じゃあ行ってきますおー」

見張りを担当してくれているオジサンに手を振り、僕達は再度ベリーの許まで向かってゆく。

25 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:32:30 ID:TPsYliTQ0
(;ФωФ)「ブーンよ、少し休まぬか?」

かれこれ5回ほど往復をした後、突然ロマネスクさんが岩に腰掛ける。
これまで無休でベリーを収穫し続け疲労が溜まったみたいだ。

( ^ω^)「僕はまだ大丈夫ですお」

(;ФωФ)(恐ろしく体力のある子じゃのぅ……)

( ^ω^)「僕はこのまま収穫を続けるので少しそこで休んでて欲しいお」

(;ФωФ)「ん、すまない……」

( ^ω^)「♪〜♪〜」

(;ФωФ)(しっかし、ブーンはすごいのぅ……
       流石兄弟、パステル兄弟が彼ぐらいの時はかなりぐったりしておったんだがなぁ)

( ^ω^)「おっおっ、あっちの方にもベリーが沢山成ってるお」

( ФωФ)「む、本当だな……
        どれ、行ってみるとするか」

よっこらしょと掛け声を上げ立ち上がるロマネスクさん。
見た感じは若々しいが、ロマネスクさんもそこそこいい年をいっているのだなぁと改めて再認識する。

26 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:33:44 ID:TPsYliTQ0
(*^ω^)「こりゃ凄いお! こんな場所にこんな沢山のベリーが成ってたなんて知らなかったお」

( ФωФ)「じゃが、少々危険だな……森の奥に入りすぎている」

「ほれ、上を見てみろ」と言われ僕は上を見上げる。
すると、沢山の木々が太陽の明かりを遮っていて今までの場所とはどこか薄暗い印象を受ける。

( ФωФ)「しかし、さほど日が当らんというのにここまでベリーが成っているのは不思議だな……
        土がいいのであろうか?」

( ^ω^)「土、ですかお?」

( ФωФ)「うむ、土にも栄養素が色々と含まれていてな。
        植物はそれを分けて貰い成長をしていくのだよ」

( ^ω^)「そうなんですかお」

なんだか難しい話を始めるロマネスクさん。
土に栄養が含まれているなんて僕は初めて知った。

( ФωФ)「ここは少しベリーを収穫したら離れるとしよう……
        魔物の巣があるかも知れんからな」

( ^ω^)「魔物ですかお?」

( ФωФ)「うむ……ゴブリン程度ならワシでもなんとかな」

27 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:35:01 ID:TPsYliTQ0
バリバリ!それはまるで雷が落ちてきたような音だった。
吃驚して僕は上を見上げると、なにか黒い塊がゆっくりと降ってきたと思ったとら
次には目の前に塊が落下した。

(;゚ω゚)「…………」

上から木の枝と共に落ちてきたのは人だった。
いや、違う人ではなかった。

( - ,,)rッ

背中にある純白の羽。
空から舞い落ちる無数の白い羽。

(;ФωФ)「……て、天使!?」

そう、目の前に落ちてきたのは天使だった。
けれども天使は動かない。
口からは透き通るような赤い液体が垂れ、纏っていたローブもボロボロだった。

(;゚ω゚)「……」

僕は恐る恐る、天使が落ちてきた時に落としてしまったベリーを拾う。
そして、拾ったベリーを天使の頬へと投げる。

ペチッ

( - ,,)rッ「…………」

(;゚ω゚)「……」

無反応。
天使は意識を失っているか、死んでいるかもしれない。

28 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:36:27 ID:TPsYliTQ0
(;゚ω゚)「ろ、ロマネスクさん……ど、どうしますか?」

(;ФωФ)「……わ、わからん」

ふいに目の前を天使の羽とは違う羽が横切った。

(;ФωФ)「まずい、魔物だ!」

いち早く反応したロマネスクさんの声に僕は上を見上げる。
そこにはハーピーと呼ばれる両手が羽、体は女性、下半身が鳥のモンスターが居た。

川#゚ -゚)「ニンゲン……獲物を横取りするか!」

ハーピーは羽を広げ僕達を威嚇する。
モンスターにとっては天使も獲物なのらしい。

(;゚ω゚)「…………」

川 ゚ -゚)「……ふむ、好みの時期は少し過ぎてはいるが肉付がよさそうな少年だな」

やばい、アイツ僕を食う気だ。
女の人は好きだが、食料にはされたくない。
それに、僕はどちらかというと草食系の女の人の方が好きだ。

(;ФωФ)「ブーンに手出しはさせん!」
  _,
川 ゚ -゚)「年をとったニンゲンの肉は好かぬ、硬くて不味い」

29 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:37:22 ID:TPsYliTQ0
(;ФωФ)「退けハーピー! ここには我輩以外の人間が沢山居る!
       我輩達に手をだせば他の者がだまってはおらぬぞ」
  _,
川 ゚ -゚)「……たしかにニンゲンの臭いが沢山する」

(;ФωФ)「だから退け」

川 ゚ -゚)「だが、子供の匂いもする」

(;゚ω゚)「ま、待て! こ、子供には手を出すなお!」

腰からナイフを抜き構える。
ハーピーは空から獲物を攫う事がある。
たとえ森の中だとはいえ攫われたら一巻の終わりだ。
  _,
川 ゚ -゚)「貴様も子供だろうに」

(;ФωФ)「子供に手をだすのならば我輩が相手になるぞ!」

杖を取り出し構えるロマネスクさん。
僕もナイフを構えハーピーと戦う姿勢を見せる。

川 ゚ -゚)「…………」

(;゚ω゚)「…………」

( ´_ゝ`)「おーい、なんか起きたのかー?」

兄者さんの声が聞こえてきた。
恐らく天使が落ちてきた音を聞き、様子を見に来たのだろう。

川 ゚ -゚)「チッ、ここは退いてやる」

30 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:38:10 ID:TPsYliTQ0
羽音をたて空へ舞い上がるハーピー。
ハーピーが居なくなったのを見届けた僕は、その場に座り込んでしまった。
こんなに緊張したのは、親父が始めて僕に暴力を振るってきた日以来だ。

( ´_ゝ`)「大丈夫かー?」

(;ФωФ)「な、なんとかな……」

( ´_ゝ`)「……おい、そこに倒れてる奴はなんだ?」

天使を指差す兄者。
ロマネスクさんも僕もなにも言う事ができなかった。

l从・、・;ノ!リ人「て、天使なのじゃ! 天使が倒れてるのじゃ!」

後からやってきた妹者ちゃんが大声を上げる。

(;´_ゝ`)「どういう事だ? これは……」

(;ФωФ)「我輩達にも状況が把握はできておらぬ」

(;´_ゝ`)「し、死んでるのか?」

(;ФωФ)「分からん」

(;´_ゝ`)「だ、大丈夫なのか? もし目を覚ましたら殺されちまうんじゃないのか?」

l从・、・;ノ!リ人「こ、殺されちゃうのじゃ?」

31 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:39:09 ID:TPsYliTQ0
(;ФωФ)「その可能性もある……」

(;´_ゝ`)「……人を呼びに行こう」

(;ФωФ)「あ、ああ」

(;^ω^)「……念のため僕はここに残ってますお」

(;ФωФ)「き、危険だぞブーン」

(;^ω^)「か、母ちゃんが教会信徒だったから恐らくは大丈夫だとは思いますお」

l从・、・;ノ!リ人「い、妹者じゃ!」

(;ФωФ)「じゃあ兄者君も残ったほうが」

(;´_ゝ`)「俺は違う、弟者が信徒だが俺は教会には一度も行った事はない」

(;^ω^)「い、いいから早く人を呼んできてくださいお!」

(;ФωФ)「わ、解った!すまんなブーン」

(;´_ゝ`)「き、危険だと感じたらすぐに逃げろ! 解ったな!?」

l从・、・;ノ!リ人「わ、解ったのじゃ!」

32 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:39:56 ID:TPsYliTQ0
(;^ω^)「…………」

残された僕達は、ただ呆然と天使を見下ろす事しかできなかった。
天使が生きているのか、死んでいるのかすらの確認もできずに。

l从・、・;ノ!リ人「て、天使は生きてるのじゃ?」

(;^ω^)「わ、分からないお……」

l从・、・;ノ!リ人「た、確かめてみようなのじゃ」

(;^ω^)そ「うぇ!?」

なんちゅー恐ろしい事を言うんだこの子は。
だけど、妹者ちゃんの言う事も一理ある。
もし天使が死んでいるのなら、こんなにビクつかなくてもすむからだ。

(;^ω^)「……わ、分かったお。ブーンが軽く触れてみるお」

l从・、・;ノ!リ人「い、妹者はあそこの木の後ろに隠れてるのじゃ」

自分から提案しておいて隠れるなんてなんて子なんでしょう。

(;^ω^)「…………」

妹者ちゃんが隠れたのを見計らって、僕はそっと手を伸ばす。
少しずつ少しずつ、少しずつ少しずつ、天使の頬への距離が縮まってゆく。

そして僕は天使の頬へと触れた。

33 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:41:05 ID:TPsYliTQ0
(;^ω^)σ「…………」

反応はなにもない。
やはり死んでいるのだろうか?

僕は今度は天使の羽に触れてみた。
やはり反応はない。

l从・、・;ノ!リ人「や、やっぱり死んでるのじゃ?」

(;^ω^)「分からないお」

羽や頬を触っただけでは生き死にの判別はできない。
でも解った事はある。
この羽はたしかに目の前に倒れている天使の体から生えている事。

(;^ω^)「…………」

しばらくどうすればいいか僕は考え決心をする。
ゆっくりと天使の口元に手を伸ばし呼吸をしているかたしかめた。
結果は弱々しいが息遣いを感じた。

(;^ω^)「生きてる」

l从・、・;ノ!リ人「ヒッ!」

僕の言葉に再度木の後ろに隠れる妹者ちゃん。
できる事なら僕も隠れたいが。
年長者としてのプライドがそれを許してくれない。
なによりも、もし天使が襲ってきたのなら僕は妹者ちゃんを守らなければならない。

34 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:41:46 ID:TPsYliTQ0
僕は近くに落ちていたナイフを拾い構える。

l从・、・;ノ!リ人「こ、殺すのじゃ?」

(;^ω^)「い、いや……襲ってきた時のためにこうして」

天使なんかに僕達人間が敵うはずがないのは理解している。
なら、今すぐ殺してしまうほうが正しいのかも知れない。
でも、だとしても、目の前で意識を失っている者を僕は殺す気にはなれない。

(;ФωФ)「遅くなったすまない!」

僕がナイフを構えて少しした後、ロマネスクさん達が大勢人を連れて戻ってきた。

(;´曲`)「み、見た感じたしかに天使だっテナー」

(;^ω^)「ロマネスクさん達が人を呼びに行った後、少し調べてみたけど
      この羽、本当に体から生えてましたお」

(;´曲`)「てことは本物……」

(;^ω^)「しかも、まだ生きてますお」

(;´_ゝ`)「な、なんだと!?」

( <●><●>)「……そうですか」

「早く殺したほうがいいんじゃないか?」

村人の一人がそう告げると、他の人も皆口々にそうしたほうがいいと続ける。

35 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:42:39 ID:TPsYliTQ0
(;^ω^)「そ、村長……どうするんですかお?」

(;´曲`)「……分からん、いっそこのままほおっておくべきなのかも知れん」

(;ФωФ)「…………」

(;^д)「…………」

( <●><●>)「……随分とボロボロの服を着ていますね」

しばらくの沈黙が続いた後、ワカッテマスさんが突然口を開いた。
服を指差し、破けている、血のあとがある等と喋った後、なにか考え始める。

( <●><●>)「この天使は、降ってきた時からこの服を?」

(;ФωФ)「ああ……」

( <●><●>)「ふむ……服についた血の状態からこの天使は傷を負っていると
        見た方がいいでしょう」

(;´曲`)「な、なにかトンでもない化け物とでも戦ったのか?」

(;ФωФ)「いや、どうもハーピーに襲われたらしい
       天使が降ってきた後、ハーピーに襲われたんだ」

( <●><●>)「……成程成程」

(;´曲`)「なんか分かったのか!?」

( <●><●>)「ええ……まだ確信はもてませんが、恐らくは」

(;^ω^)「な、何が分かったんですか!?」

36 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:43:28 ID:TPsYliTQ0
( <●><●>)「その前に、皆さんはハーピーと戦って勝てますか?」

(;ФωФ)「我輩は魔法を使えば勝てるが」

(;´曲`)「若かったら勝てたと思うっテナー」

( <●><●>)「そんなハーピーにここまでの傷を負わされるという意味は分かりますか?」

(;´_ゝ`)「何が言いたいんだ?」

( <●><●>)「これは推測です……私の推測ではこの天使はさほど力を持っていないのかも知れませんよ
        なんせ、ハーピーに負けるくらいですし」

(;ФωФ)「んー、じゃが本調子じゃなかったという場合も」

( <●><●>)「ですから推測です」

(;´_ゝ`)「推測じゃはいそうですかとは言えないな」

( <●><●>)「ええ……」

(;´曲`)「や、やっぱり殺したほうがいいかも知れんっテナー」

( <●><●>)「……」

ショートソードを抜き、天使に近寄る村長。
僕も含め周りの人は何も言わず、ただ村長を見守る事しかできなかった。

37 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:44:21 ID:TPsYliTQ0
(;´曲`)「…………」

(;´_ゝ`)「村長?」

(;´曲`)「こ、怖いっテナー」

(;´曲`)「さ、刺したら目を覚まして襲ってくるかも知れんっテナー」

( <●><●>)「可能性はあります……天使とは未知の存在という事がワカッテマスから」

(;´曲`)「なんだってこんな日に天使が落ちてくるんだっテナー」

それは皆が思っている事だと僕は思う。
ついさっきまで僕達は楽しくベリーを収穫していたのだから。

(;´曲`)「誰か、代わりにやってくれる人はいないかっテナー?」

「…………」

(;^ω^)「…………」

誰も何も言わない。
当然だと思う、誰もそんな事はしたくない。
村長もやりたくはないと思う。

(;´曲`)「…………か、覚悟を決めるしかないっテナー」

(;<●><●>)「襲ってくる可能性もあります……気をつけてください」

(;´曲`)「そ、そんな事言われたら覚悟できないっテナー」

38 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:45:25 ID:TPsYliTQ0
結局、ただ時間だけが過ぎていき僕達はその場でずっと立ち往生していた。
僕も含め皆どうすればいいか分からなかった。
だって、天使は昔僕達の遠いご先祖様の文明を滅ぼしたのだから。
そんな天使が剣の一突きで死ぬかどうか、僕には分からない。
きっと皆も分からない。

(;´_ゝ`)「……どうするよ」

(;<●><●>)「こればっかりはわかりません」

l从・、・;ノ!リ人「教会に行ってる人も襲ってくるのじゃ?」

(;<●><●>)「わかりません……もしかしたら天使にとってはそんな事は関係ないかも知れません」

(;^ω^)「……」

¥;・∀・¥「ちょっと思ったんだけどさ、仰向けにして見ませんか?」

(;´_ゝ`)「仰向け? 何故に?」

¥;・∀・¥「いやさ、どんな顔してるか気になってさ」

(;ФωФ)「我輩も少し興味があるな……」

(;^ω^)「たしかにうつ伏せだと、どんな顔してるのか分かり辛いですおね」

(;´曲`)「も、もし目を覚ましたら?」

(;´_ゝ`)「……かといってこのまま突っ立ってる訳にもいかんでしょう」

39 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:46:43 ID:TPsYliTQ0
(;゚д)「て、天使がでたって本当か!?」

突然人の群れを掻き分けてギコードさんとディノさんが現れる。
どうやら誰かが呼びにいったらしい。

(#゚;;-゚)「背中に羽……たしかに天使だね」

(;゚Д゚)「まじかよ……なんだってこんな時に」

(;´曲`)「まったくだっテナー」

¥;・∀・¥「ねぇねぇ、ちょっとその天使仰向けにしてよ」

(;゚Д゚)「えぇ!? 俺に死ねっていうのかよ」

(#゚;;-゚)「死ぬ時はどうせ皆一緒だから大丈夫じゃない?」

(;゚Д゚)「あー、まあたしかにそうだな」

(;<●><●>)「もしかしたら弱い可能性もありますけどね」

(,,゚д)「え、そうなん? なら平気じゃん」

そう言い天使を仰向けにするギコードさん。
あまりの事に僕達を含め周りの人の時間が一瞬止まる。

(;<●><●>)「ど、どうやら目を覚ましませんでしたね」

¥ ・∀・¥「へぇ、綺麗な顔してるな……口から血が垂れてるけど」

40 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:47:37 ID:TPsYliTQ0
(,,゚д)「胸あるな、この天使は女かな」

(;゚;;-゚)「天使にも性別ってあるんだな」

僕も含め男性陣の視線が天使の胸に注がれる。悲しきかな男の性である。

l从・、・;ノ!リ人「そ、そんな事よりお腹、怪我してるのじゃ」

腹部を指差す妹者ちゃん。
腹部のローブは血を吸ったせいか変色しており、たしかにそこを怪我している事が見て取れた。

(;゚Д゚)「どうしますか村長?」

(;´曲`)「いや、俺に聞かれても困るっテナー」

(;゚;;-゚)「でも、なにか決めて貰わないと」

(;´曲`)「いやいやいやいや……なんでもかんでも押し付けるのはよくないっテナー」

( <●><●>)「……いっそ助けてしまうのはどうでしょうか?」

(;^ω^)「そんな事して大丈夫なんですか?」

( <●><●>)「恐らくは知的生命体、恩は感じれど仇で返す可能性は少ないと思いますが」

(;ФωФ)「だが、奴らは文明を滅ぼしたのだぞ」

( <●><●>)「ですが、教会の教えでは行き過ぎた人間の行為に罰を与えたと教えていると聞いていますが」

l从・、・;ノ!リ人「う、うん……デレさんはそう言ってたのじゃ」

(;ФωФ)「だが危険なことには変わりはない!」

41 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:48:25 ID:TPsYliTQ0
( <●><●>)「兄さん、貴方が決めてください」

(;´曲`)「そうは言われてもな……」

( <●><●>)「もしかしたら、救った礼をしてくれるかも知れませんよ」

(;´曲`)「うーん……」

(;ФωФ)「我輩は反対する、こんな危険分子を村に連れ込む等正気の沙汰ではない」

( <●><●>)「伝承ではそうかも知れませんが、現実には違うかも知れませんよ」

(;゚Д゚)「どっちでもいいから早く決めてくれよ」

(;´曲`)「……本当に安全なんだろうな?」

( <●><●>)「少なくとも恩人を襲うような真似はしないとは思いますが……
        それに、どうせ治療するのは私なんですからいざという時は私が犠牲になりましょう」

(;ФωФ)「お前が犠牲になるという事は我々も犠牲になるという事ではないか!」

( <●><●>)「そうならないように説得はしますよ」

(;´曲`)「……分かった。
      弟のお前がそう言うんだ……ここは一つ助けてやってみようじゃないか」

(;゚д)「村長がそう言うなら」

(;ФωФ)「……そう決定したなら従おう」

42 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/02/19(日) 00:49:23 ID:TPsYliTQ0
こうして落ちてきた天使はワカッテマスさんが運営する診療所へと運ばれていった。
結局、この日の収穫祭はほとんどベリーを収穫できずに終わってしまった。

皆がその場を立ち去って行く中、僕は落としたベリーを拾い籠の中へと入れていく。
一応収穫した物だ。
落としてしまったが、水で洗えばなんとかなる。

あらかた拾い終えた僕は、最後に天使の頬に投げたベリーを拾い上げる。
少し天使の血がついていたが、それ以外には汚れはなくめだった傷もない。

( ^ω^)(血がついてるってだけで捨てちまうのももったいない……食っちまうかお)

僕はベリーを口の中に放り込み、1齧りしベリーを飲み込む。


あれだけの騒ぎがあった後だからであろうか、今まで食べたベリーよりも何倍もおいしく感じた。


第一話 END


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