エルの翼のようです
- 96 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:27:44 ID:6GLCRh9M0
- ( ´曲`)「今日が収穫の最終日だっテナー!
皆、全力で収穫をして貰いたいっテナー!」
(lilФωФ)「う、うむ……」
(lil´_ゝ`)「あ、あぁ……」
(;^д)「……皆、青い顔してるね」
(;^ω^)「疲れがとれてないんだお」
(lilФωФ)「あたたた……こ、腰が痛い」
(lil´_ゝ`)「あかんわこれ」
早朝、広場に集まった多くの人は皆口々に体の不調を訴えていた。
そのほとんどの痛みは腰に集中しているらしく、皆腰を抑えていた。
l从・∀・;ノ!リ人「兄者、大丈夫なのじゃ?」
(lil´_ゝ`)「わからん……」
¥ ・∀・¥「……村長、パステル兄弟を参加させたほうがいいんじゃないかな?」
(,,゚д)「ま、まじか!?」
( ´曲`)「門番の仕事はどうするんだっテナー」
¥ ・∀・¥「兄者君とロマネスクさんにやって貰ったらいいんじゃないかな?
特にロマネスクさんは魔法が使えるしさ」
- 97 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:29:32 ID:6GLCRh9M0
- (;´曲`)「だが、ロマネスクが外れると森に魔物が出たときに……」
(;゚Д゚)「がんばる! 俺がんばるからぁ!」
(#゚;;-゚)(僕は門番の仕事をしてたいなぁ……)
(lilФωФ)「我輩達が門番を受け持つから、パステル兄弟を参加させてやって欲しい」
(lil´_ゝ`)「……頼むよ村長」
(;´曲`)「わ、わかったっテナー」
ヽ(*゚Д゚)ノ「ウヒョーー!!」
(;゚;;-゚)(めんどくさいなぁ……)
( ´曲`)「そんじゃ、東の森に向かうっテナー」
( ^ω^)「おっおっおっ、今日も沢山収穫するお」
空き籠を持ち、僕は先を行く大人の後をついていく。
その僕の後ろではギコードさんが大はしゃぎをしていた。
隣で見ているタカナが少し困った顔をしている。
ディノさんは相変わらず無表情だ。
- 98 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:31:04 ID:6GLCRh9M0
- l从・∀・ノ!リ人「ブーン、今日もがんばろうなのじゃ」
( ^ω^)「おっおっ、妹者ちゃんもがんばってだお」
l从・∀・ノ!リ人「うん、がんばるのじゃ! おっきい兄者のぶんまで妹者が収穫するのじゃ!」
えいえいおーと気合を入れる妹者ちゃん。
それに続くように僕も握りこぶしをつきだす。
(#゚;;-)「ブーン君、いいお兄さんっぷりだね」
( ^ω^)「そうですかお?」
(#゚;;-)「正直、君がいてくれて助かるよ……
僕達は毎日門番の仕事をしてるから、妹を構ってやれなくてね」
(#゚;;-)「それに妹者ちゃんのお兄さんも鍛冶の仕事をしてるから、
彼が忙しい時は君が遊んでやってるんだろ?」
l从・∀・ノ!リ人「そうなのじゃ! ブーンとタカナと3人でよく遊ぶのじゃ!」
(*^д)「そうだね、よくよく考えたら私達3人でよく遊んでるね」
l从^∀^ノ!リ人「うん! 兄者がお休みの日以外はいつも一緒なのじゃ!」
- 99 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:32:04 ID:6GLCRh9M0
- ( ^ω^)「なんでそんな話を今?」
(,,゚Д゚)「俺達は、来年徴兵される」
(;^ω^)「え!?」
初耳だった。
(;^ω^)「ギコードさん達がいなくなったら誰が門番をやるんですか!?」
(#゚;;-)「君だよ、ブーン君」
(;^ω^)「ええ!?」
もうそこまで話が進んでいたのか。
たしかに、門番の仕事は大切だけど……僕が門番になってしまったら……。
タカナ達は2人で遊ぶのだろうか?
いや、それよりも……
(;^ω^)「タカナが一人になっちゃいますお」
(,,゚д)「……解ってる。
けれども、どうする事もできないだろ?」
僕は近くで妹者ちゃんと楽しくお喋りをするタカナを見る。
あの年で、親とも兄弟とも離れ離れになってしまうのか……
- 100 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:33:05 ID:6GLCRh9M0
- 村には僕達以外の子供は数人いる。
けれども、僕とタカナ、妹者ちゃんとは遊んでくれない。
親が信徒だからだ。
僕の場合は母ちゃん。
タカナは両親が、妹者ちゃんはお父さんと弟者さんが。
僕達3人は、親に連れられ教会に通っていた。
それが原因で、周りの子からは省かれてしまったが、僕達3人の絆はかなり強いと言える。
(;'ω`)「……彼女達だけで遊ぶ事になるんですおね」
(,,゚д)「ああ……可哀想だが、そうなる」
(#゚;;-)「しかも、仕事中は離れられないからね……
日がな一日中、つったってるだけさ」
(,,゚д)「俺達は兄弟だから、無駄話もできたが……」
(#゚;;-)「ブーン君は一人でやる事になるからね」
(;'ω`)「一人きりですかお……」
(#゚;;-)「僕からはがんばって、としか言えないな」
(,,゚д)「ああ、俺からもだ」
(;^ω^)「わ、解りましたお……たとえ一人でも、門番の仕事はまっとうしますお」
(,,゚д)「がんばれよブーン」
- 101 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:34:06 ID:6GLCRh9M0
- ( ^ω^)「…………」
(,,゚д)「…………」
(#゚;;-)「……」
( ^ω^)「あの」
(,,゚д)「ん、どうした? 魔物か?」
( ^ω^)「いや、なんで二人は前向いて話してるのかなって」
(;-д)「あー、それか……仕事柄って奴かな」
(#゚;;-)「常に前方を見ながら、兄さんと話してたら顔を見ないで話す癖がついてさ」
(,,゚д)「余所見してる間になにかあったら大変だろ? だから常に前方を警戒してるのさ」
( ^ω^)「そうだったんですかお」
(;-д)「この癖、早く治さないとな」
(#゚;;-)「門番の仕事がある内は無理だよ」
(;^ω^)(人には色々な悩みがあるんだお)
天使が落ちてきたけど、今の所僕らの周りは平和だった。
- 102 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:35:00 ID:6GLCRh9M0
- ( ФωФ)「…………」
門番の仕事というのは実に暇である。
ロマネスクは持参した、本を片手に椅子に座りながら改めてそう思った。
(lil´_ゝ`)「あー駄目だ、腰いてぇ……」
( ФωФ)「若人が情けないのである」
(lil´_ゝ`)「妹者をおんぶしてから、なんか腰がおかしくて」
( ФωФ)「ふむ……」
(lil´_ゝ`)「てか、ロマネスクさんも痛いんじゃないんですか? なんか平気そうな顔してますけど」
実のところロマネスクに腰痛はない。
明日に体の痛みが響かないように、薬草をシロップでつけた飲み物、ポーションを前日に飲んでいたからだ。
おかげで朝は体調がすっきりとし、昨日の痛みはまったく感じられなかった。
では何故彼は、収穫に参加をしないのか……
それは、天使の事が気になるからだ。
( ФωФ)「動くと痛くなるからな、こうして本を読み安静にしておるのだよ」
ページをめくり次の文を読み始める。
内容は推理物、昨晩魔封じの腕輪を取り出した棚の奥にあった本だ。
(lil´_ゝ`)「はぁぁーいてぇ……」
( ФωФ)「……診療所に行くか?」
- 103 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:36:16 ID:6GLCRh9M0
- 結局の所、早朝にテナーは天使はまだ目を覚まさないとつげた。
不安が蔓延し、収穫作業に支障がきたさないようにという判断からだ。
故に
(lil´_ゝ`)「やですよ、もし俺が行った時に天使が目を覚ましたらどうするんですか」
彼は診療所に向かうのを拒んだ。
もっとも、テナーがありのままを告げたとしても彼は行くのを拒んだろうが……。
( ФωФ)「そうか……」
(lil´_ゝ`)「…………」
けれども、自分は診療所に行きたがっている。
ワカッテマスが今何をしているのか、気になっている。
天使が腕輪をつけたのかどうか気になっている。
意識がそちらの方に集中し始め、本の内容が頭に入らない。
ロマネスクはため息をつくと、本を閉じた。
( ФωФ)「……」
(lil´_ゝ`)「どうかしたんですか?」
( ФωФ)「腰が痛くて、内容が頭にはいらん」
(lil´_ゝ`)「俺も痛くて、門番の仕事所じゃないですよ」
- 104 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:37:22 ID:6GLCRh9M0
- ( ФωФ)「兄者君、少しばかり門番の仕事を任せてよいか?」
(lil´_ゝ`)「どこ行くんですか?」
( ФωФ)「診療所に行く」
(lil´_ゝ`)「なっ!?」
言葉を失う兄者。
何故態々死地に向かうような事をするのか、彼には理解できなかった。
(lil´_ゝ`)「殺されるかも知れませんよ」
( ФωФ)「ああ」
(lil´_ゝ`)「まだ、目を覚ましていないとはいえ……目を覚ましたらどうなるか」
( ФωФ)「襲ってきたら戦うさ」
杖を構える。
先端の赤い宝珠が太陽の光を受け、輝いて見える。
( ФωФ)「それに、ワカッテマス一人だと心配でな」
(lil´_ゝ`)「…………」
(lil´_ゝ`)「仲、いいですもんね」
( ФωФ)「ああ」
- 105 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:38:28 ID:6GLCRh9M0
- (lil´_ゝ`)「……戻ってきてくださいよ」
( ФωФ)「約束はできんが……恐らく大丈夫だろう」
(lil´_ゝ`)「何故そう言えるので?」
( ФωФ)「何事もネガティブに考えるとよくないからな」
本当ならネガティブな考えに支配されるだろう。
だが、昨日ワカッテマスが尋ねてきたおかげで、危険度は少ないと分かっている。
それでも、一抹の恐怖は彼を取り巻いているのだが。
( ФωФ)「行ってくる」
(lil´_ゝ`)「気をつけてくださいよ」
( ФωФ)「ああ、気をつけるさ」
診療所へ向かって歩く。
ワカッテマスと話をするため。
できる事なら天使と話をするため。
そして、村のために。
- 106 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:39:17 ID:6GLCRh9M0
- 診療所の扉を叩くと、すんなりとワカッテマスが出迎えてくれた。
( <●><●>)「収穫祭には参加しなかったのですか?」
( ФωФ)「昨日の話が頭から離れなくてな……パステル兄弟と仕事を代わってもらった」
( <●><●>)「ふむ……では、ここにきた理由は」
( ФωФ)「解っているだろう?」
( <●><●>)「……ええ、ワカッテマス」
診療所の中に入るロマネスク。
ワカッテマスが指で示す先を見、彼は息を呑む。
(,,゚ -゚)「……」
(;ФωФ)「……」
上体を起こした天使が、ロマネスクを見つめる。
恐怖が体を支配する。
何故、自分はこんな無謀な事をしたのかと後悔を始める。
( <●><●>)「彼は私の友人のロマネスク=ハルミアです。
貴方のつけている腕輪を譲ってくれた人ですよ」
(,,゚ -゚)「これを……」
左手を上げ、手枷のような腕輪を見る天使。
- 107 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:40:08 ID:6GLCRh9M0
- (,,゚ -゚)「お手数をかけます……」
(;ФωФ)「へ?」
殺されるかと思ったが命は繋げたらしい。
成程、ワカッテマスの言うとおり敵意はないらしい。
今の所は。
( <●><●>)「私の言うとおりでしたでしょう?」
(;ФωФ)「ああ……ほっとしたよ」
椅子に座り大きくため息をつくロマネスク。
その間も視線は天使へとそそがれ、なにか不穏な動きをしないかどうか見張り続ける。
(- ゚,,)rッ「……」
だが、天使は特にこれといった行動は起こさない。
ただ窓越しから村の風景をじっと眺めていた。
( <●><●>)「そうだ、せっかく来たんですから少し手伝って貰えませんか?」
(;ФωФ)「ん、何をする気なのだ?」
( <●><●>)「身体検査ですよ」
(;ФωФ)「な、なに!?」
- 108 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:41:48 ID:6GLCRh9M0
- 思わず立ち上がり、天使の顔とワカッテマスの顔を見比べる。
少々取り乱したようだ。
(;ФωФ)「だ、大丈夫なのか!?」
( <●><●>)「ええ、了承は得てます」
(;ФωФ)「そうか……」
(,,゚ -゚)「恐れないで……わたしは何もしないわ」
(;ФωФ)(何かされたら死んでしまうだろう)
(,,゚ -゚)「それに、魔法を封じられてるから」
腕輪を見せる天使。
正直な所、本当に封じられてるかどうかも怪しいが、腕輪の効果を信じるしかない。
自分がつけた時はたしかに魔法を封じられたから。
大きく息を吐き、ロマネスクは天使の顔を見る。
( ФωФ)「……始めよう」
( <●><●>)「解りました」
ワカッテマスが天使の寝ているベッドに向かう。
目で追って行くと、ベッドの近くにボロボロのローブがある事に気づく。
たしか天使が着ていたローブか。
( ФωФ)(あれ、てことは天使は今裸?)
- 109 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:42:39 ID:6GLCRh9M0
- いや、流石に下着はつけているだろう。
ロマネスクは頭を振り邪まな妄想を払いのける。
( <●><●>)「布団をどけます」
(,,゚ -゚)「はい」
へその辺りまで布団が下げられる。
そして天使の体に巻かれた数々の包帯が露になる。
( ФωФ)「この傷は、ハーピーのか?」
( <●><●>)「ええ、引っかき傷等や爪あとから、そう判断して間違いないでしょう」
痛々しい光景だった。
包帯には血が滲んでおり、傷が深い事が窺い知れた。
( ФωФ)「……これは治るのに時間がかかりそうだな」
( <●><●>)「ええ」
天使の腹部をそっと触る。
ほのかな暖かさと、息遣いを感じた。
( ФωФ)(天使も、我々と同じ生き物か……)
( <●><●>)「包帯を換えましょうか……」
( ФωФ)「ん、解った」
- 110 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:43:32 ID:6GLCRh9M0
- 血が滲んだ包帯をほどいていくワカッテマス。
長年、診療所を開いていただけあって手つきは手馴れていた。
( <●><●>)「そこのガーゼを取って貰えますか?」
( ФωФ)「ほれ」
腹部の包帯と、血が滲んだガーゼを外すワカッテマス。
新たにガーゼと包帯を巻くあいだ、天使は何も言わずその作業を見守っていた。
( ФωФ)(大人しいな……女性だからであろうか?)
天使とは野蛮な存在であると思っていた。
いや、この天使が大人しいだけで他の天使は野蛮なのかも知れない。
いやいや、実は本性を隠しているのかもしれない。
それはともかく、多くの歴史書では天使は野蛮な存在と記されていた。
世界を滅ぼした無慈悲に滅ぼした者。
教会の発行する歴史書以外は、みな天使をこのように書いている。
( <●><●>)「では、次は胸のほうですね」
では、何故教会は数多ある歴史書とは違う情報を記しているのか?
と、いっても教会の歴史書にも天使は文明を滅ぼした者と書かれている。
違う情報なのは、人。
我々の遠い先祖が行き過ぎた行為をしたため罰が下った、と。
( ФωФ)(んー分からんな……そもそも我輩は信徒ではないからな)
ふと天使を見る。
( ФωФ)(ほぅ、小さいがよい形をした膨らみだな)
- 112 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:44:40 ID:6GLCRh9M0
- (;ФωФ)そ (あっ!?)
( <●><●>)「これで大丈夫です、また血が滲んだら変えましょう」
(,,゚ -゚)「ありがとうございます」
思わず裸体を見てしまった。
だが、すぐに包帯で胸は覆われ裸体を楽しめたのはほんの一瞬であった。
(;ФωФ)(……変な事考えなければよかったかな)
いかん、何を考えているのだ。
ロマネスクは激しく頭を左右に振り、顔を両手で覆い自分は変態かなどと邪推した。
( <●><●>)「どうかしましたか?」
(;ФωФ)「い、いや……考え事をしていた」
( <●><●>)「そうですか、では次は羽を見せてください」
(,,゚ -゚)「はい」
天使が前かがみになり、背中の羽が静かに広がる。
( ФωФ)「美しいな……このような美しい羽等見たことがない」
( <●><●>)「ええ、私もですよ」
羽を触る。
アヒルの羽毛とはまた違う肌触りを感じた。
- 113 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:45:29 ID:6GLCRh9M0
- ( ФωФ)「柔らかいな」
(゚- ゚,,)rッ「羽を閉じてよろしいですか?」
( <●><●>)「ええ」
小さく折りたたまれていく羽。
どのような構造になっているのかもっと調べたかったが、流石に断念する。
( ФωФ)「その羽で飛べるのですかな?」
(゚- ゚,,)rッ「ええ、私達の羽には重力の束縛を断ち切る力があるから」
( <●><●>)「成程」
( ФωФ)(誰もが夢見る空への憧れを、天使は得ているのか)
でなければ空から落ちてきたりなんぞせんか。
あの日の事を少し思い返すロマネスク。
そして同時に、ホライズン=ナイトールの顔が浮かんできた。
( ФωФ)(そういえば、彼も幼きころは空に憧れていたな)
ブーン、ブーン、いつかは僕達も空を飛べるはず。
幼きころ、彼は手を広げそう言いながら村中を走り回っていた。
その影響で彼にはブーンというあだ名がつき、今もそう呼ばれている。
- 114 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:46:25 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「では、次は下半身です」
( ФωФ)「パンツは穿いてるのか?」
( <●><●>)「彼女が穿いてた物をそのままですが」
( ФωФ)「……脱がさなかっただろうな?」
( <●><●>)「しませんよそんな事、私をなんだと思ってるんですか」
( ФωФ)「それならいいのだが」
(゚- ゚;)rッ「……」
( <●><●>)「ああ、すいませんね……では包帯を換えましょうか」
(゚- ゚;)rッ「お、お願いします」
不吉な会話を聞き、少々不安になる。
( <●><●>)「はい、これで大丈夫です。
横になってもらって構いません」
(゚- ゚;)rッ「ありがとうございます」
ベッドに横になり、再度外の景色を見る。
体を少し動かしたが、思うように力が入らない。
まだ、しばらくは体を休める必要がある。
天使は、自分の存在でこの村に迷惑をかけている事を思い申し訳なくなる。
- 115 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:47:15 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「包帯の交換がてらに軽く調べて見ましたが、私達とどこも変わりませんね」
( ФωФ)「せいぜい羽があるぐらいだな」
( <●><●>)「今朝方、幾つか質問をしましたが……魔法以外になにか別の能力は持っていないとの事ですよ」
( ФωФ)「信じるのか?」
( <●><●>)「信じるしかないでしょう」
( <●><●>)「それに、天使は嘘をつかないそうですよ」
( ФωФ)「本当なのか?」
(,,゚ - )「ええ、嘘は大罪だから」
厳格なのだな。
たかが嘘で大罪だというのだから。
( ФωФ)「嘘をつけばどうなる」
(,,゚ - )「羽と体を縛られ、海へ落とされる……事実上の死刑」
厳格どころではなかった。
( ФωФ)「……君は何故この付近を飛んでいたんだ?」
(,,゚ - )「色々あったの」
それだけ言うと、天使は窓のほうへ顔を向け風景を見始める。
これ以上は語らないという事であろう。
- 116 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:48:00 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「まあ、これで天使が危険でない事は証明できたでしょう」
( ФωФ)「問題はそれを村の者が信じるかどうかだな」
( <●><●>)「そこは兄さんを使いますよ」
( ФωФ)「なにか考えがあるのか?」
( <●><●>)「色々と考えてますよ」
( ФωФ)「それならよいのだが……」
ふと時計に目をやる。
時刻は午前10時を過ぎたころ。
いつのまにか1時間近く経過している。
( ФωФ)「長居をしたようだな、そろそろ戻らんと兄者君が心配をするな」
( <●><●>)「そうですか」
( ФωФ)「ではな」
( <●><●>)「ああ、ロマ! 一つ尋ねてもよいですか?」
( ФωФ)「どうした?」
( <●><●>)「この村の財政の事はご存知ですよね」
( ФωФ)「ああ、ベリーでなんとか少しはと言ったところか」
- 117 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:49:22 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「ベリー以外になにか思いつきませんか?」
(;ФωФ)「すまぬ、以前からあれこれと考えてはいるのだが未だに何も思い浮かばぬが現状だ」
( <●><●>)「そう……ですか」
(;ФωФ)「……元々この村は人手で成り立っていたようなものだからな」
( <●><●>)「ええ、そうですね」
( ФωФ)「早く徴兵された者が戻ってくればよいのだが」
( <●><●>)「それどころかパステル兄弟も徴兵されますからね」
( ФωФ)「来年で彼らは18になるからな」
( <●><●>)「……本当は戦争なんてなくなればいいのですけどね」
( ФωФ)「若い命が失われていくという事は嘆かわしい事だ」
( <−><−>)「そうですね……私もそう思います」
( <●><●>)「分かりました、もっともっと何か案がないか考えて見ます」
(;ФωФ)「すまぬな、力になれずに」
( <●><●>)「いえ、感謝してますよ……ロマ」
- 118 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:50:07 ID:6GLCRh9M0
- やはりなにもなかったか。
椅子に座ったワカッテマスは大きなため息をつく。
( <●><●>)(……)
ベリーだけでこの村をもたせるのは無理だ。
ベリー以外に、安定して外貨を稼ぐ手段がこの村には求められていた。
だが、こんな村にそんな手段ほとんどはない。
せいぜい、この村で収穫した農作物やベリーぐらいだ。
その収穫物も人手不足で収穫量が激減してしまっている。
このままでは、この村はどんどんと貧しくなるばかりなのである。
( <●><●>)(あの囁きを……)
残された道は昨晩思いついたこれしかない。
( <●><●>)(後は兄さんが承諾してくれれば)
- 119 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:50:48 ID:6GLCRh9M0
- ( ФωФ)「今戻ったのだ」
(lil´_ゝ`)「生きていたんですか……よかったよかった。
遅いから心配しましたよ」
( ФωФ)「すまぬな、長居をしてしまったよ」
そう言い、ポケットから液体の入った薬瓶を取り出し兄者に手渡すロマネスク。
戻ってくる途中に自宅からとって来た物だ。
(lil´_ゝ`)「ポーションじゃないですか、ついでに貰ってきてくれたんですか」
( ФωФ)(あー、アイツから貰っておけばよかったか……失敗したな)
(lil´_ゝ`)「では、ありがたく」
一息で小瓶の中身を飲み干す。
すると、先ほどまでの腰の痛みが嘘のように綺麗さっぱりと消える。
( ´_ゝ`)「どうもありがとうございます」
( ФωФ)「遅くなった詫びのようなものだ、気にするな」
本を取り出し、椅子に座り読み始める。
不安が消えたせいか、今度は内容がスッと頭に入る。
- 120 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:51:38 ID:6GLCRh9M0
( ´_ゝ`)「あの……天使はどうでした?」
( ФωФ)「起きていた」
( ´_ゝ`)
(;´_ゝ`)「……生きているという事は大丈夫だったんですよね」
( ФωФ)「ああ、この通り我輩は五体満足だ」
(;´_ゝ`)「そうですか……よかったですよ」
(;´_ゝ`)「危険は、ないんですか?」
( ФωФ)「恐らく……はな」
(;´_ゝ`)「そうですか」
( ФωФ)「詳しいことはテナーが何れ話してくれるだろう」
(;´_ゝ`)「そう……ですか」
それっきり兄者は何も言わなくなる。
ただ椅子に座り、草原の彼方を見つめていた。
- 121 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:52:24 ID:6GLCRh9M0
- (;´曲`)「……」
午後9時、遅い夕食を終えたテナーは報告書を見ながら頭を抱えていた。
例年の半分程度の収穫量。
ベリーによる収入は今年はさほど見込めない。
帳簿を開き、内容を確認しため息をつく。
足りない、まったく足りないのだ。
これでは今年いっぱい持つかどうか、瀬戸際だった。
(;´曲`)(まいったっテナー……)
頭を抱える。
妙案は浮かんでこない。
たとえ何か浮かんでも、人手が足りず実行をすることができない。
(;´曲`)(……最終手段は借金しかないっテナー)
徴兵された者が戻ってくれば、借金は返す事ができる。
だが、何時帰ってくるというのか? すぐに帰ってくる保障等存在しない。
そもそも、こんな大規模な徴兵は長年生きてきたなかで初めての出来事だった。
それ故テナーは解ってしまう。
間もなく、歴史書に載るほどの大規模な戦争が起きる事を。
(;´曲`)(絶望的だっテナー)
- 122 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:53:09 ID:6GLCRh9M0
- 帳簿を閉じ、集まった籠からどれくらいのジャムや酒が作れるのか計算する。
その内の幾つかは、無料で渡さなければならないためその分を引く。
頭が痛くなる。
∩;´曲`)>「あぁぁあぁあぁ!! 金、金がないっテナー!」
自分の代で、この村を潰してしまうのか。
そんな重圧がテナーに襲い掛かる。
自分の資財を投げ打ってでも、村を存続させなければならない。
そんな想いも湧いてくるが、自分の資財等たかがしれている。
(;´曲`)(そうだ、シャキンなら……あいつなら金を持っている!)
だが、彼が金を貸してくれるとは思えない。
アルコール依存症になり、彼の頭の螺子はかなりとんでしまっている。
骨折り損のくたびれ儲けになる可能性の方が容易に想像できた。
(;´曲`)(あぁ……彼の奥さんが生きていたなら……)
過ぎた事を悔やむ。
暗雲、まわりを見回しても光明は見えない。
ただ彼は頭を抱え、机を見つめ続けていた。
そんな時
- 123 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:53:59 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「兄さん、入りますよ」
声と共にワカッテマスが、部屋に入ってきた。
(;´曲`)「……天使は見張ってなくていいのか?」
( <●><●>)「彼女は寝ていますよ」
(;´曲`)「そうか……で、なんの用だっテナー」
( <●><●>)「兄さん、今年の収穫量はその表情から見ると散々だったようですね」
(;´曲`)「ああ、散々だよ……これじゃあ今年中に貯蓄が尽きちまうっテナー」
( <●><●>)「そうですか……それは大変ですね」
(;´曲`)「……そんな事を言いにきたのか? お前は」
( <●><●>)「いいえ、違います……私は兄さんにお金を得る方法を提案しにきたのですよ」
( ´曲`)「……ほぅ、何を考えてきてくれたっテナー」
- 124 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:54:42 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「まず1つ目……村の者から資財を没収しそれを売った金で税を納める」
( ´曲`)「貴様、本気で言っているのか?」
( <●><●>)「いいから聞いてください」
( ´曲`)「……解った」
( <●><●>)「その2、ストランド様から借金をする……」
( ´曲`)「あの人達は休暇でこっちに来てるだけだ、迷惑はかけれん」
( <●><●>)「その3、教会から援助を受ける」
(;´曲`)「……駄目だ、それはできん。
この村は元々教会建設に反対する者が多かったんだ!
それが俺の一存で教会から援助を受けたとなると、猛反発が起きるっテナー!」
( <●><●>)「ではその4……子供を奴隷商に売る。
中々高く売れるそうですよ……特に女の子が」
(#´曲`)「馬鹿! そんな事できるか!」
( <●><●>)「良心が痛みますか?」
(#´曲`)「当たり前だっテナー!」
- 125 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:55:24 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「では、ここからが本題です」
フッと、ワカッテマスの纏っていた雰囲気が変わる。
まるで最高の妙案を思いついた。
そんな表情をしていた。
( <●><●>)「良心も痛めず、誰にも迷惑をかけずに金銭を得る方法を思いついたんですよ」
( ´曲`)「なんだ?」
( <●><●>)「……と、それを話す前に天使の事を話さなければ」
(;´曲`)「おいおい」
思わずこけそうになる。
だが、知っておかなければならない情報だ。
テナーは即座に頭を切り替える。
( <●><●>)「結論から言えば、あの天使は我々には害にならないと見てよいでしょう」
(;´曲`)「本当にそう言いきれるのか?」
( <●><●>)「天使本人が言った事ですから言い切れませんが、恐らくは……」
(;´曲`)「曖昧だな」
( <●><●>)「では、今度は私が訪ねた事とその答えをお話します」
メモを取り出し、書いてある内容を読み上げる。
- 126 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:56:06 ID:6GLCRh9M0
- (;´曲`)「成程……」
( <●><●>)「信じますか?」
( ´曲`)「……信じよう、弟のお前が言うのだからな」
( <●><●>)「そうですか、まあ兄さんがそう言うのはワカッテいました」
( ´曲`)「じゃあ、これを明日の朝報告すれば不安は一応の所収まる訳だっテナー」
( <●><●>)「……兄さん」
( ´曲`)「なんだ?」
( <●><●>)「兄さんはあの天使以外、天使を見たことありますか?」
(;´曲`)「はぁ!? 見たことある訳ないっテナー!」
( <●><●>)「そうです、きっと世界中に住む数多く……いや全ての者が見たことなんてないと思います」
(;´曲`)「そりゃそうだろ……あの天使なんだぞ」
( <●><●>)「兄さん……なんの危険もなく、なおかつ伝承の存在を見ることができるなら
貴族や商人等の、とりわけ珍しい物好きの人達は容易く金を落とすとは思いませんか」
(;´曲`)「っ!?」
(;´曲`)「まさか……まさか貴様……」
- 127 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:56:53 ID:6GLCRh9M0
- ( <●><●>)「天使に恩返しをして貰いましょう……」
にこりと微笑むワカッテマス。
まるで、兄の答えをワカッテいるかのように。
(; 曲 )
( <●><●>)「そうだ、兄さんはまだ天使をよく見てませんでしたね。
見に行きましょう、彼女はとても美しいですよ」
目の前に手が差し出される。
この手をとってしまえば、後戻りはできない予感がする。
だとしても、その差し出された手を払いのける事はできなかった。
( 曲 )「……行こう」
( <●><●>)「ええ、この村の……我々の未来のために」
- 128 名前:名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 23:57:48 ID:6GLCRh9M0
- 大海原の中に、帆に風を受け進む船が一艘、
数多くの客を乗せて航行していた。
目的地はラウンジ国所属の港町、パーソクである。
そして、その船の船長である男の部屋に、一人の男が入ってきた。
( ´∀`)「船長、どのくらいでパーソクにつくんだい?」
('(゚∀゚∩「だいたい五日ぐらいだよー!」
( ´∀`)「五日ですか……ご丁寧にどうも」
なにか問題でも起きたのかと思ったが、違ったらしい。
船長を胸をなでおろし、男の身に着けてる物に目をやった。
('(゚∀゚∩「おや、お兄さん、装備を見たところ騎士かい?
立派な鎧と盾だね」
( ´∀`)「お察しの通りです」
はにかみながら答える騎士。
('(゚∀゚∩「へー、そりゃすごい! これから戦争の準備のために首都に帰るところかい?」
( ´∀`)「いえ、恩師の墓参りに行こうかと」
('(゚∀゚∩「恩師かぁ……どこで亡くなったんだい?」
( ´∀`)「シベリア村です」
騎士はそう答え、船長室を後にした。
第三話 記された道 END
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