ξ゚听)ξ白い世界とひとりの少女のようです

1 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:27:16 ID:uzP73Wk20
ただ、白い世界が広がっていた。
見わたす限りどこまでも続くまっ白な空間と、
そのなかをぷかぷかと浮かぶ、巨大な白い立方体や直方体。
どこかに光源があるらしく、ときおり浮かんでいるそれらに影ができる。
そのおかげで、かろうじて物体の存在と、距離の存在は認識することができる。

在るんだか無いんだかわからない。そんな空間の端っこのほうに、その少女はいた。

ξ゚听)ξ

ぷかぷかと浮かぶ立方体のひとつの上で、体育座りをしている、小さな少女。
あたりの空間と同じ、まっしろな服に、鮮やかな金色の髪をしている。

彼女はずっと、周囲に浮かぶ立方体や直方体を見ていた。

いや正しくは、少女が見ていたのは図形そのものではなく、
彼女は、それらの表面にときおり映るものを見ていたのだった。

そこに映っていたのは、様々な"自分の姿"。

2 名前:('A`)なんか嗅覚がパネェようです 投稿日:2011/08/26(金) 23:28:22 ID:uzP73Wk20

ξ゚听)ξ(あ、ここにもようやく"わたし"がでてきた……)イエデハオッサンセッテイノ

ξ゚听)ξ(ドラクエ? ……ってなんだろ?)

ξ゚听)ξ(あ、クーちゃん殴った)

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ

ξ*゚听)ξ(わたし、強い……)

3 名前:( ´ー`)先生の戦う生徒指導のようです 投稿日:2011/08/26(金) 23:29:45 ID:uzP73Wk20

ξ゚听)ξ(デスティニーブッラクシュガー……)

ξ゚听)ξ(ブラックシュガーって黒糖なんだ……へぇ)

ξ゚听)ξ(……ところで、黒糖ってなんだろ?)

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ

ξ*゚听)ξ(でもなんか強そう……)コトバノヒビキテキニ

4 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:30:28 ID:uzP73Wk20

ξ゚听)ξ(うーん……)

ξ゚听)ξ("わたし"は強いのかな?)

ξ゚听)ξ(あそこにいる"わたし"が強いってことは、ここにいるわたしも強いのかな?)

ξ゚听)ξ(もっと、他のわたしも見てみよう)

5 名前:( ^ω^)バローのようです 投稿日:2011/08/26(金) 23:31:32 ID:uzP73Wk20










『ξ'A`)ξ「ぴちょんくん」』

ツンデレ---ξ 凵@)ξ---ン










        .

6 名前:( ^ω^)バローのようです 投稿日:2011/08/26(金) 23:32:39 ID:uzP73Wk20

ξ 凵@)ξ

ξ 凵@)ξ

ξ;゚听)ξハッ

ξ;゚听)ξ(し、しまった。あまりのショックに一瞬意識が……)

ξ;゚听)ξ(え、なにあれ? あれ、わたし?)

ξ'A`)ξ←これ

ξ;゚听)ξ(あれが"わたし"ってことは、ここにいるわたしも……)

7 名前:( ^ω^)バローのようです 投稿日:2011/08/26(金) 23:33:43 ID:uzP73Wk20

ξ;゚听)ξ。c0(『ξ'A`)ξ「ぴちょんくん」』)ホンワホンワ

ξ;゚听)ξ。c0(『ζ('A`ζ彡゜クルリ「ぴちょんくん?」』)

ξ;゚听)ξ。c0(『ζ('A`*ζノシ「ぴちょんくん!」』)

ξ; 凵@)ξ<<いやあああああああああああああああああああああああ!!!!
      手ェ振ってるうううううううううううううううううううう!!!!

9 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:35:56 ID:uzP73Wk20
ひとしきり恐怖に悶えたあと、少女は立方体の上に、両手をひろげてごろんと横になった。
少女の見上げる空、というより上の風景はどこまでもまっ白で、
やはり、ときおり遠くの図形に影ができなければ、高さが存在するのかも分からない。

ξ゚听)ξ(わたしは、なんでここにいるんだろう……?)

まっ白で、ときおり図形の表面に映る映像以外何もない世界。
ここにずっと、少女はいた。
自分がこの場所にいる意味を考えながら。
自分がここに在る理由を考えながら。
それを考えようとする動機は単純だった。少女は知りたかったのだ。

―――自分が、"何"であるのかを。

ξ゚听)ξ(でも……でも、なんにも分からない。
     わたしがなぜ、ここにいるのか、理由も意味も分からない)

空を見上げれば、無数の図形の表面に、さまざまな"自分"の姿がある。
自分は、なぜ"彼女たち"のようになれないのか。
少女はずっと、そんなことばかり考えていた。

ξ゚听)ξ

ξ--)ξ=3

空を見上げることにも飽きた少女は、ため息を吐き、今日はもう寝ようかなと考えた。

そのときだった。

10 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:37:13 ID:uzP73Wk20

「ツーーーーーーーーー」

ξ゚听)ξ<……え?

上の方から響いてくる、少年のような声。
少女は、はじめ何かの聞き間違えかと思った。

この空間にある音は、少女の声と、映像を見ているとき脳内に響く声だけだったから。
自分以外の生の人の声など、彼女は生まれてこのかた、聞いたことがなかったから。

でも、声は上のほうから、確実に少女を目指して近づいて、いや、

―――落ちてきて、いた。

「--ゥゥゥぅぅぅうううううううううううん」

ξ;゚听)ξ<ふぇ!?

ぼん、というなんだか想像したより軽い音を立てて、彼女の前にそれは降り立った。
少女の前に立ったのは、少女と同じまっ白な服を着た少年。

( ^ω^)<おっお、ツン。やっと見つけたお

くるり、とこちらを見た少年の顔には、どこかで見たような笑顔があった。

11 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:39:16 ID:uzP73Wk20

ξ;゚听)ξ<な、なに……誰よ、あんた!
      それに、「ツン」って……もしかしてわたしのこと?

少年いわく「ツン」であるところの少女は、ひどく早口にそうまくしたてた。
少年はそんな彼女に対し、顔に浮かんだ笑顔に見合ったやさしい声で返す。

( ^ω^)<おっお、そうだお。きみがツンで、ぼくが内藤ホライゾン。
      ぼくたちはこの場所に生まれた、アスキーアートだお

ξ゚听)ξ<あすきーあーと……わたしも? 内藤ホライゾン……あんたが?

少女は空を見上げた。
空にある図形たちの、平面に映しだされた、"彼ら"を見上げた。
この場所でずっとひとりだった彼女だったが、それらの単語には聞き覚えがあった。
彼女が見ていた映像には、それらの単語の出てくるものが多くあったのだ。

             イ タ
( ^ω^)<きみが世界の、こんなすみっこの方にいるとは思わなかったお。
      だからきみを探すのにずいぶん時間がかかってしまった。
      ぼくは、生まれてからずっときみを探し続けてきたんだお?

ξ゚听)ξ<生まれてから、ずっと? わたしを? どうして?

( ^ω^) ……

ξ゚听)ξ?

なぜだか黙ってしまった内藤に、ツンは首をかしげる。
何か悪いことでも訊いたのだろうか? 彼女がそんな風に思っていると

12 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:42:50 ID:uzP73Wk20

(  ω )ボソッ<……みに……らだお

ξ゚听)ξ<え、なに?

なぜか自分から顔を逸らす少年。
声が聞き取れず、聞き返すツンの目には、
なぜか彼の横顔がどんどん真っ赤になっていくように映った。

( ///ω//)<きみに、あいたかったから、だお

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ

ξ* 凵@)ξ!?

真っ赤な顔で言う少年。彼の頬が赤く染まっている理由などまったく理解できなかったが、
しかしツンは、なぜだか自分のほっぺたのあたりが、どんどん熱くなっていくのを感じていた。
                ス レ
( ///ω//)<は、はじめて作品できみの姿を見たとき、
       ぼ、ぼくはなんだか胸がドキドキしてしょうがなかったんだお!
       気がついたら、自分がいたスレを飛び出していた。
       きみのことを考えたら、なぜか空だって飛べたんだお!

ξ* 凵@)ξ<え、あ、ああああの……!!

真っ赤な顔で、目をあわさずにまくしたてる少年に、少女はただおろおろするばかり。
当然である。これが彼女にとって生まれてはじめての他者との会話であり、
これが、彼女がされる生まれて初めての愛の告白というやつなのだから。

13 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:44:14 ID:uzP73Wk20

ξ* 凵@)ξ<<そッ、そんなこと言われたって……
       こ、困るわよ!! そ、それにあんたの言う「すれ」って、
       上でぷかぷか浮いてるやつに映ってるもののことでしょ!?
       じゃあ、あんたの見た"わたし"ってわたしじゃないじゃない!!

恥ずかしさを紛らわすために一気にまくしたてて、ツンは後悔した。
せっかく自分にあいにきてくれた人に、自分はなんてひどいことを言ってるんだろう、と。
いくら生まれてから一度も人と話をしたことがないからとはいえ、
これでは彼に嫌われてしまうではないか。

(  ω )<それは、まあその……わかってるお

ほら、案の定彼も沈んでいるし。
どうしよう、どうすればいい? そんな風にツンが迷っていると、内藤は再び口を開いた。

( ^ω^)<でも、だからぼくはきみを探していたんだお

ξ゚听)ξエ?<……どういうこと?
            ス レ
( ^ω^)<ぼくの居場所には、たしかにきみはいなかったお。
                イ タ             ツ ン
       でも、この広い世界を探せば、きっとぼくもきみにあえる。そう考えたんだお。
       だからぼくはきみを探していて、そして―――



「―――そして、ぼくはきみを見つけたんだお」

         .

14 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:47:15 ID:uzP73Wk20
目の前に、手が差し出されている。

ξ* 凵@)ξ<あ、え? えっと、あの……
               ヒ ト
( ///ω//)<初対面のAAにこんなこというのは、おかしいってわかってるお!
       でも、ぼくは……ぼくは言いたい。ずっときみを探してきたぼくだから!
       だから、ツン、……ぼくじゃ……その、
       ぼくでは、だめ……ですか、お?

うつむいた彼が差し出してきた手は、ぷるぷると震えていて、
彼が緊張しているということが、ツンにも痛いほど伝わってきた。
ただ、やはり彼女は混乱していて、気持ちの整理がつかなくて―――

ξ* 凵@)ξ<<い、いきなりそんなこと言われて答えられるわけないでしょッ!?
       ば、ばっかじゃないの!!?

―――ついつい、きつい口調で、そんなことを言ってしまった。

(  ω )<お……

彼、意気消沈。
それを見るツンの胸にも、ふつふつと罪悪感と後悔の念が湧きあがってくる。

ξ* 凵@)ξ(でも……これでいいのかもね、だってわたし、
       自分がなんなのかも全然わかんないようなやつだし)

ひょっとしたら、急にミイラ化して「ぴちょんくん」としか喋れなくなるかもしれない。
ひょっとしたら、女友達を作るという名目のもと、化け物と化すかもしれない。
はじめて自分に手を差し伸べてくれた人の相手が、そんなだったら嫌だと思うし、
だから―――

16 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:48:43 ID:uzP73Wk20

(  ω )<<……そ、それなら!!

ξ*゚听)ξ<へ?

突然大声を上げる少年に、ツンは現実に引き戻された。
見れば、少年は手を空中にかざしている。
その手に、ぽわ、と白い光が集まりだしたと思ったら、それは四角い『画面』の形になった。

(  ω )<<それなら、ぼくとデートしないかお!?

少年の手に握られた画面が、ツンの眼前につきつけられる。
それは、何かの告知のようだった。

13 :
佐藤★:2011/08/23(火) 17:01:24 ID:???0
.
■創作板納涼夏祭り「夏の終わり2011」


8月29日〜30日、この板に二つのスレを立てます
一つは感想紹介スレ
一つは短編と絵スレです

ただし各スレの利用は18:00〜明け方くらいまで(雑談は可)でお願いします
時間の制約があることに注意してください
祭り感の演出とか、投下時間を限定することで過疎を避ける意味もゴニョゴニョ
.
ξ゚听)ξ<え、えっと……?

(  ω )<"いきなり"はだめなんだお? じゃあぼくとデートしてくださいお!
       このお祭りでいっしょに遊んで、いっぱい話して、
       それで、決めてくださいお! 
       ぼくが、きみの"内藤ホライゾン"にふさわしい男かどうか!

17 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:49:51 ID:uzP73Wk20

ξ*゚听)ξ<えっと……うん、まあ、それならその、いい、かな?

(*^ω^)!!

もじもじしながらツンが言うと、内藤はばっ、と顔をあげた。
その目は、きらきらと輝いていて、
ツンはなぜだかその瞳をずっと見つめていたい、と、そんなことを考えた。

ξ* 凵@)ξ(なッ、なになに!? なんなのこの感じ!!?)

突然の感じたことのない感覚に、混乱する脳内。
彼女のそんな状況を知らない少年は、無邪気に笑った。

(*^ω^)<あ、ありがとうだお!!

ξ* 凵@)ξ<<べッ、べつにお礼を言われる筋合いなんかないわ!!
       わたしが、その、暇だから!! それだけなんだからねッ!!

ああ、また心にもないことを言ってしまった。
ふたたび、彼女はそんなことを後悔したが、
しかし、嬉しさの絶頂にある少年は、無邪気な笑顔も、はずんだ声も崩すことはなかった。

(*^ω^)<おっお、それでもぼくはうれしいお!
      きっと楽しいお祭りにするお!!

ξ*゚听)ξ<ふ、ふん。期待しないで待っててあげるわよ

18 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:50:58 ID:uzP73Wk20

(*^ω^)<<じゃあ、29日の17時半に、ここにきみを迎えに来るお!

言うなり少年は両手を広げる。
ツンは知っていた。"内藤ホライゾン"がこのポーズをとる意味を。

ξ;゚听)ξ<え、あ、ちょっ……

ツンが後ろで手を伸ばすのも知らずに、内藤は両手を広げた状態のまま、走り出す。
踏みだす足から白い煙があがるほどの速度で走る彼の体は、
しだいにツンの立つ立方体から離れ、宙に浮いた。

⊂( ^ω^)つ<<ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!

まっ白な空を飛ぶ、内藤。
それなりの速度で飛んでいるから、きっともうすぐ、彼の姿は見えなくなってしまうのだろう。

ξ* 凵@)ξッ!!!

そう考えると、なぜだか胸がきゅうっとしめつけられるような気がして、
気がつくとツンは、空を飛んでいく内藤の後ろ姿に向かって叫んでいた。

19 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:51:51 ID:uzP73Wk20










ξ* 凵@)ξ<<お祭りまで時間あるんだから、また遊びに来てもいいんだからね!!!










            .

20 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:53:25 ID:uzP73Wk20
数分後、ツンは内藤に叫んだ体制のまま、彼が消えた白い空をずっと眺めていた。

ξ*゚听)ξ

彼に声は届いただろうか?
いくら考えても答えは分からないが、それでも考えざるをえない自分がいて、
それがなぜなのかもわからなくて、
ツンは爆発するんじゃないかというくらい早鐘を打っている心臓を、服の上から両手で押さえる。

ξ*--)ξ ……。

音がした。

命の、音。

少女は、再び目を開けた。

ξ*゚听)ξ<あ……

オレンジや青に染まる空と、そこに浮かぶ白や緑の立方体や直方体。
再び目が捉えた世界は、ばかみたいに色であふれていて、

ξ*゚听)ξ<きれい……

思わず彼女は呟いた。
頭のすみでぼんやりと、彼もこんな世界を見ていたのかな、
と、ツンはなぜだかそんなことを考える。
8月29日の、17:30。
彼がまた、ここに来る。

21 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:54:11 ID:uzP73Wk20










ξ*゚听)ξ<たのしみだな、お祭り

鮮やかな色に染まる世界の中で、白い服の少女は一言、そう呟いた。








              .

22 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 投稿日:2011/08/26(金) 23:54:52 ID:uzP73Wk20





     ξ゚听)ξ白い世界とひとりの少女のようです

            おわり




              .


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