ξ゚听)ξとしゃぼん玉( ^ω^)のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:07:10.94 ID:EUQFgEhx0

                小さくて

                 丸くて

            ふわふわ浮かんでいる


     ◎     ○       。            
      。          0       o    ○  
                                 
     ξ゚听)ξとしゃぼん玉( ^ω^)のようです  o
                                 
        O          ◎     ○      
   ○         o       。           
                             ○   


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:08:47.64 ID:EUQFgEhx0

 朝から降り続いた雨は止み、空には白い雲。
 湿った空気で満たされた昼間。

 そんな住宅街の、ごくごく平凡な一軒家。
 二階建てで、白い外壁に包まれ、黒い屋根を被った平凡な一軒家。

 その中の、小さな子供部屋。
 きちんと整理された部屋の中で、ツンは溜息をついた。


ξ゚听)ξ「はーあ……」

 両親は共働きで、家には誰もいない。

 テレビの電源を付けてもツンの興味をそそるような番組はなく、
 家のなかはしんと静まり返っている。

 友達と遊ぼうにも、今日は気分が乗らないのでそんな気にはなれず、
 ツンは時間を持て余していた。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:10:29.62 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ

 『気持ちを沈ませたままじゃダメだよ』という母親の口癖。
 それをうつらうつらと思い出しながら、家の中を歩く。

 なんとなく風呂場に入り、すぐ目に入った黄色い容器。
 「しゃぼん玉液」という文字が派手に書かれている。

 その隣には、切り口を入れて先を広げたストローが一本、
 ぽつんと立て掛けられていた。


ξ゚听)ξ(しゃぼん玉かあ)

 最近はやってないな、とツンは思う。

 父親に教えてもらい、もっと小さい時には良く吹いていたものだった。
 しかし時を重ねるごとに飽きが来て、今は全くやっていない。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:12:08.81 ID:EUQFgEhx0

 昔を懐かしんでいる内に、手は自然と容器を掴んでいた。

ξ゚听)ξ(久しぶりにやってみようかな)


 ツンは思い立つと、近くの台所から紙コップを一つ取り、
 風呂場に入って、コップにしゃぼん玉液を注いだ。

 しばらく置いていたから変な臭いがするかな、と心配したツンだったが、
 それも杞憂に過ぎず、全くの無臭だった。

 ストローを念入りに洗い、しゃぼん液に浸す。

 吸い込まないよう注意して、口を付ける。
 風呂場の開いた窓に向かって、優しく息を吹く。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:13:41.53 ID:EUQFgEhx0

           o  o
         o o o  
ξ゚听)y― o   

 風呂場のすぐそばは空き地になっており、
 いくら吹いても迷惑にはならない。

 小さく丸いしゃぼん玉は、ふわふわと浮き、ゆらゆら漂う。

 残念な事に曇り空で、色彩の変化を楽しむ事は出来ないが、
 水分の蒸発は少ないので長持ちする。

 自分の気持ちを晴らすように、ツンは吹き続ける。


ξ゚听)y―o

 ストローをしゃぼん液に浸して、離す。息を吹く。

 それを繰り返していると、妙な事が起こった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:15:17.99 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)y―O

 吹いても吹いても、しゃぼん玉がストローから離れない。
 息を吹く度に、まるで風船のように膨らんでいく。

ξ゚听)y―○

 ツンは「変だなあ」と思いながらも、更に息を吹く。


       γ⌒ヽ
ξ゚听)y―'、  ノ ぷくー
           ̄


       γ'⌒`ヽ
ξ゚听)y―(    ) ぷくぷくー
       .ヽ___ノ

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:16:39.01 ID:EUQFgEhx0





     ぽんっ







12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:17:39.79 ID:EUQFgEhx0

  γ'⌒`ヽ
  ( ^ω^)
   ヽ___ノ


ξ゚听)ξ


( ^ω^)

ξ゚听)ξ

(^ω^ )

ξ゚听)ξ

( ^ω^ )

ξ゚听)ξ「こっち見るな」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:19:07.58 ID:EUQFgEhx0

( ^ω^)「おっおっおー」

ξ゚听)ξ「わー」

 それはなんとも奇妙な光景だった。

 サッカーボール程度の大きさをしたしゃぼん玉が、
 風呂場にふわふわと浮いているのだ。

 そのしゃぼん玉には妙な顔もあり、声も発していた。

 常識では到底考えられない出来事。


( ^ω^)「おっ、驚かないのかお?」

 にやけた顔をしたしゃぼん玉が、
 ぴくりとも表情を変えずに話しかける。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:20:32.58 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ「何で?」

( ^ω^)「しゃぼん玉が喋ってるんだお。普通は驚くと思うお」

ξ゚听)ξ「だって楽しいもん」

( ^ω^)「そんなもんかお」

ξ゚听)ξ「うん」

 ツンは子どもならではの感覚で、不思議な事も自然と受け入れていた。

( ^ω^)「おー。学校はどうしたんだお?」

ξ゚听)ξ「帰ってきたところ」

( ^ω^)「友達と遊んだりしないのかお?」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:21:57.26 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ「友達はいるけど、今は遊びたくないの」

( ^ω^)「おー、何かあったのかお?」

ξ゚听)ξ「ちょっと嫌な事があったから」

( ^ω^)「そうなのかおー……。そうだお」

ξ゚听)ξ「?」

( ^ω^)「僕と一緒に、別の世界に行ってみないかお?」

ξ゚听)ξ「どういうこと?」

( ^ω^)「不思議な世界に行ってみたくないかお?」

ξ゚听)ξ「どんな世界なの?」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:23:33.82 ID:EUQFgEhx0

( ^ω^)「行ってみれば分かるお。
      そこで一度、ゆっくり休んでみるといいお」

ξ゚听)ξ「じゃあ行ってみる」

( ^ω^)「それじゃ、目を閉じて、両手で僕を掴んでくれお」

ξ--)ξ

 ツンは言われた通りに、目を瞑り、ブーンを掴んだ。
 ぷにぷにとした弾力感が両手に伝わる。


「目を開けてみるお」

 ブーンの言った通りに、今度は目を開ける。

 全くの別世界が、ツンの目に飛び込んできた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:25:28.30 ID:EUQFgEhx0

 まずツンが驚いたのは、夜になっている事だった。

 上に右に左にも、星々が輝く夜空が広がっている。

 光源はどこにもないが、辺りに暗さは全く感じられない。

 風はなく、寒くも暑くもない。


 そして、辺りにいくつも浮かぶ大小様々な、七色のしゃぼん玉。

 それは割れる事も動く事もなく、じっとしていた。

 現実では味わうことのできない、幻想的で夢のような世界に、
 ツンはただただ感嘆するばかり。

ξ*゚听)ξ「すごーい」

「下を見てくれお」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:26:53.77 ID:EUQFgEhx0

 下を見る。
 これまた大きなしゃぼん玉が、ツンの体を浮かせていた。

 更にその下は、しゃぼん玉で埋め尽くされており、
 それを通してかすかに白色が確認できる。おそらく雲もあるのだろう。

ξ゚听)ξ「ブーンはどこにいるの?」

「ツンが乗っているしゃぼん玉が僕だお」

ξ゚听)ξ「大きい」

「ちょっと動くから、つかまっててくれお」

ξ゚听)ξ「分かった」

 しっかりつかまると、ブーンが浮き上がり始めた。
 時々しゃぼん玉を避けながら、どんどん昇っていく。

 宇宙をさまよっているような感覚。
 思わず見とれてしまう、光り輝く星の粒。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:28:29.76 ID:EUQFgEhx0

「ついたお」

ξ*゚听)ξ「わー」

 ツンの目の前に現れたのは、雲の上に乗った小さな家。
 白い円柱のような外観に、三角形の赤い屋根。煙突もある。

 雲の上に立ってみると、まるで毛皮のような感触がした。
 すり抜ける事もない。

( ^ω^)「おっ、家に入るといいお」

 いつの間にか、しゃぼん玉のブーンがツンの傍らに浮いている。
 始め現れた時の大きさになっていた。

ξ゚听)ξ「こんにちはー」

 赤いドアを開け、中に入る。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:30:22.96 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ「誰もいない」

 一階建ての家の中は、もぬけの殻。
 ツンは仕方なく家の中を見回す。

 内装は全て木製で、温かみが感じられた。
 天井にはランプがあり、部屋を明るくしている。

 部屋の中央には丸いテーブル。
 その傍に、本が詰め込まれた本棚。

 窓は左右それぞれに一つずつ。
 扉から一番奥の方には、火のついていない暖炉。

 しばし見つめていると、ブーンが中に入ってきた。

( ^ω^)「おっ、誰もいないお。どこ行ったんだお?」

 呟き、部屋の中を漂った後、ブーンは家を出ていった。
 ツンも外へ出る。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:31:55.03 ID:EUQFgEhx0

( ^ω^)「あっちにいるかも知れないお。乗ってくれお」

ξ゚听)ξ「分かった」

 大きくなったブーンに乗り、向こうを見ると、
 同じような家がもう一軒、雲の上に乗っていた。

 ただし屋根は茶色で、ドアは緑色。


( ^ω^)「いくお」

 再び、ぷかぷか進んでいく。
 距離はそれほどでも無く、ものの数秒でたどり着いた。

 雲に足を降ろす。

( ^ω^)「入ってくれお」

ξ゚听)ξ「うん」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:33:45.64 ID:EUQFgEhx0

 ツンが緑色のドアを開けると、ちりん、と鈴が鳴った。
 足を踏み入れる。

 中はまるで、小さなバーの様だった。
 暖炉でもついているのか、温かい店内。

 木製のカウンターに、木製の長椅子。
 広さはあまり無く、四人程度しか座れないだろう。


 バーの向こうから、しょぼくれた顔をした男が声をかけてきた。

(´・ω・`)「やぁ、ようこそ、喫茶店・バーボンハウスへ。僕はショボン。
      このコーヒーはサービスだから、まずは飲んで温まって欲しい」

ξ゚听)ξ「コーヒーは苦手で……」

(´・ω・`) ショボーン

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:35:29.20 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「誰だ?」

( ^ω^)「おっ、やっぱりこっちにいたのかお」

 青い髪をした女性が、左端の方に座っていた。

 穏やかな目つきをしているが、無表情な顔を見て、
 ツンはとっつきにくそうな印象を受けた。

川 ゚ -゚)「君は?」

ξ゚听)ξ「ツンです」

川 ゚ -゚)「私はクーだ。宜しく」

 クーと名乗った女性はそう言って、軽く頭を下げる。
 つられるように、ツンも軽く頭を下げた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:37:01.90 ID:EUQFgEhx0

 クーから一人分開けて、ツンも座る。

ξ゚听)ξ「えっと、これは夢なんですか?」

川 ゚ -゚)「夢じゃないぞ、頬をつねれば分かる」

 言われるままに頬をつねる。
 痛みが走り、「これは夢じゃないんだな」と、ツンは認識する。

ξ゚听)ξ「クーさんはずっとここにいるんですか?」

川 ゚ -゚)「自分の家に戻ったりもするがな。
     本も読めるし、話し相手→( ^ω^)(´・ω・`)もいるから暇にはならない」

ξ゚听)ξ「へー」

(´・ω・`)「ここの世界にいればお腹はすかないし、喉も乾かない。
      おまけに疲れも早くとれる」

ξ゚听)ξ「そうなんだ……」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:38:58.57 ID:EUQFgEhx0

 本当に、夢のような世界。

 ここにいれば、苦しいことや辛い事もないかも知れない、
 とツンは思う。

 この世界での生活に、思いを馳せてみる。


 この喫茶店で飲み物を飲みながら、まったり過ごしたり。


 どこまでも広がる星空やしゃぼん玉を見ながら、この世界に浸ってみたり。


 クーの家には本もある。

 煌びやかな星空の下でする読書は、それはそれは良いものだろう。


 しゃぼん玉に乗って、ぷかぷか探検してみるのも。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:40:35.15 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ「ここにずっといてもいいんですか?」

川 ゚ -゚)「君の気が済むまでな」

ξ゚听)ξ「どういう事ですか?」

( ^ω^)「そのまんまなんだお。ここは休憩所なんだお」

ξ゚听)ξ「休憩所?」

( ^ω^)「そうだお」

 現実から離れた、空想を具現化したような世界。

(´・ω・`)「そういえば、何故ここに?」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:42:10.51 ID:EUQFgEhx0

( ^ω^)「僕が連れて来たんだお」

(´・ω・`)「成程」

( ^ω^)「ちょっと嫌な事があったらしいお」

川 ゚ -゚)「聞こうじゃないか。何があったんだ?」

 クーが優しい口調で訊く。

ξ゚听)ξ「同じクラスの人が、私の夢は叶いっこないって言うの」

川 ゚ -゚)「それはそれは。どんな夢なんだ?」

ξ゚听)ξ「お医者さんになりたいの。お母さんみたいな」

(´・ω・`)「いいじゃないか」

ξ゚听)ξ「でもね」

 ツンの声色が暗くなる。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:43:48.92 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ「成績が良くないし、要領も悪いから、そんな夢は叶いっこない。
       って、クラスの人が言うの」

川 ゚ -゚)「ふむ」

 クーは顎に手を当て、目を瞑る。
 少し間を置いてから、ツンに問いかけた。

川 ゚ -゚)「それで、君はどうしたいんだ?」

ξ゚听)ξ「分からないの」

 叶えたいが、自分の力では叶えられないかもしれない夢。
 それに向かって、頑張るべきなのかどうなのか。

 ツンには、分からなかった。

(´・ω・`)「叶えられないと思っているのかい?」

ξ )ξ「分からない」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:45:21.38 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「外に出てみようか」

( ^ω^)「おっ、そうするといいお」

ξ゚听)ξ「うん」

(´・ω・`)「では、またのご来店を」

 ショボンの挨拶を背に受け、外へ出る。
 相変わらず目に入るのは一面の星空と、しゃぼん玉。

川 ゚ -゚)「ちょっとそこに立ってみてくれ」

ξ゚听)ξ「どこ?」

川 ゚ -゚)σ「そこだ」

 クーの指さした所は、家が乗っている雲の端っこ。

ξ゚听)ξ「落ちない?」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:46:57.25 ID:EUQFgEhx0

 高所に立ち、足が竦む。

 はるか眼下はクッションのようなしゃぼん玉で埋め尽くされているが、
 落ちて無事でいられるのか、ツンは心配になった。

ξ;゚听)ξ「怖いのでもういいですか」

 高い場所で危険を感じ、怖がるのは生物の本能として当然の事。
 もういいんじゃないか、と思ってツンは声を出すが


川 ゚ -゚)「どん」

 背中を押された。

ξ゚听)ξ「え」

 落
 ち
 た。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:49:39.23 ID:EUQFgEhx0

(;^ω^)「ちょちょちょちょーい!!」

川 ゚ -゚)「そらもーとべーるはずー」

ξ;><)ξ「きゃああああああああああああああああ」

 ツンは目を瞑り、金切り声を上げた。

 今まで感じたことのないような恐怖。


 浮遊感。



 空気を切りながら、落ちていく自分。




 彷彿とする意識。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:51:14.66 ID:EUQFgEhx0

 ――飛び降りてから数秒。

 ツンはもうだめだ、と諦めかけたが、しゃぼん玉がクッションとなり、
 衝撃を和らげた為、事なきを得た。

 焦燥感はまだ消えていないが、助かった、と安堵。

ξ;゚听)ξ「はぁ、はぁ」

 肩を上下させて息を切らし、額には汗が浮かんでいる。
 しばし座り込んでいると、大きくなったブーンに乗って、クーが降りて来た。

川 ゚ -゚)ノ「やあ」

 ツンの気分などお構いなし。
 手を振り、軽快に喋るクー。

ξ;゚听)ξ「何するんですか」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:53:02.81 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「答えは君自身が見つけ出す事だ」

ξ;゚听)ξ「……」

川 ゚ -゚)「まあ君にはきつかったかも知れないな。
     寝転がっても良いぞ」

ξ゚听)ξ「はい」

 しゃぼん玉に、仰向けで寝転がる。
 湿っぽさや冷たさは感じられず、むしろ心地よいとも思えた。

 目の前に広がる幻想的な世界を眺めていると、
 自然とツンの心も落ち着き始める。


 鼓動が元に戻ってきた頃、クーが話しかけた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:54:39.26 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「すっきりしたか?」

ξ゚听)ξ「……はい、なんとなく」

 家にいる時は沈んでいた気分が、
 ここにきてだいぶ晴れやかになってきた。

 ツンはそんな気がした。


川 ゚ー゚)「それならいい」

 言って、笑顔を見せるクー。

 いままで無表情だった為、突然見せた笑顔にツンは驚いたが次第に、
 笑顔も良く似合う、と思うようになった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:56:30.41 ID:EUQFgEhx0

ξ*゚ー゚)ξ「ありがとうございます」

川 ゚ー゚)「それほどでも」

( ^ω^)(あれ? 僕は?)



ξ゚听)ξ「ブーンは何で割れないの?」

( ^ω^)「唐突だおね。……割れないと思ってるから割れないんだお」

ξ゚听)ξ「針でつついても割れないの?」

( ^ω^)「分からないし試したくもないお」

 クーがブーンと向き合い、人差し指を構える。

川 ゚ -゚)「針でこんな風に思いっきりつつくと――

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:57:56.44 ID:EUQFgEhx0





     ぱんっ






47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 22:59:22.72 ID:EUQFgEhx0

     と割れるかも知れないな」


( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「ブーン?」

( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「おーい」

( ^ω^)「……はっ」

ξ゚听)ξ「大丈夫?」

( ^ω^)「僕の儚いしゃぼん玉生が終わったかと思ったお」

川 ゚ -゚)「そうか、まだまだこき使えそうだな」

( ^ω^)「僕マジ簡便」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:01:12.57 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「さて、この夢のような時間もそろそろ終わりだ」

 突然の宣告。

ξ゚听)ξ「もう少し居たい……」

川 ゚ -゚)「休憩してばかりだと体がなまるからな。ほれ」

 クーは、小さな水晶が付いた首飾り……のようなものを取り出し、
 ツンに手渡す。

ξ゚听)ξ「これは……?」

川 ゚ -゚)「それがあれば、またここに来ることが出来る。
     躓いた時、立ち止まってみたい時、この水晶に念じるといい。
     いつでも来れるとは限らないが」

ξ*゚ー゚)ξ「はい」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:03:06.54 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「帰る時も、その水晶に念じればいい。やってみるんだ」

ξ゚听)ξ「やってみます」

 もしかしたらお母さんが帰っていて、いなくなった自分を心配しているかも、
 と思ったツンは、早速念じようとする。

川 ゚ -゚)「ああ。そうだ」

ξ゚听)ξ「?」

川 ゚ -゚)「お母さんが心配しているかも知れないと心配しているかも知れないが、
     その心配は無用だ」

( ^ω^)(心配心配うっさい)

川 ゚ -゚)「それと……最後に一つ言っておく」

ξ゚听)ξ「?」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:04:59.80 ID:EUQFgEhx0

川 ゚ -゚)「あまり気張りすぎるなよ」

ξ*゚ー゚)ξ「はーい」

 ツンは念じる。
 後ろ髪を引かれる思いで、この世界に、別れを告げる。


 ――ありがとう。さようなら。


 温かい靄に包まれるような感覚の後、
 ツンは静かにこの世界から姿を消した。



           ○

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:08:00.95 ID:EUQFgEhx0

           ○



ξ゚听)ξ「わ」

 風呂場の様子は変わっていなかった。
 どうやら、時間は全く経っていないらしい。


ξ゚听)ξ(もしかして……)

 自分は夢でも見ていたのか、とツンは思ったが、
 首にある感触に気付く。

 小さな水晶のついた、首飾りがぶらさがっていた。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:09:52.36 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ「……」

 ツンは今までの自分を振り返る。
 がむしゃらにやってばかりで、突っ走って失敗する事も多かった。

 ツンは考える。
 目指しているものが母親と同じなのは、何故なのか。

 もしかしたら、単なる使命感からだったのかも知れない。
 母親がそうだから、自分も、という短絡的な考えからだったのかも知れない。


 しかし自分がそうなりたいという気持ちは変わらない。
 では、これからどうするか。

 今までと同じようにやっていれば良いのだろうか。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:11:45.65 ID:EUQFgEhx0

ξ゚听)ξ(やっぱり、急ぎすぎるのもダメだよね)


 ――マイペースでやっていてもいいよね。
    ね、ブーン?


 ツンはそう思い、首飾りをじっと見つめる。

 あの世界で貰った首飾り。
 黒い紐に、小さな水晶が付いた首飾り。

 水晶の奥を見つめてみる。

 元気を分けてもらえそうな、にやけた顔が映った気がした。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 23:13:09.13 ID:EUQFgEhx0

     ◎     ○       。            
      。          0       o    ○  
                                 
     ξ゚听)ξとしゃぼん玉( ^ω^)のようです  o
                                 
        O     おわり ◎     ○      
   ○         o       。           
                             ○   


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