- 5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 01:49:39 ID:HzJ3yubUO
僕が絵を描いて、
彼女が音を奏でる。
毎晩毎晩、くだらないことを話しながら。
それが僕らの日常だった。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 01:50:43 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)気のおけない友達でいるようです
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 01:52:27 ID:HzJ3yubUO
目覚ましが鳴った。
なかなかいい音だ、なんてふざけたことを考えながら、まだ眠い霞んだ眼を擦り、音の元凶を止める。
もそもそと足を布団の中で動かしつつ、携帯を開いた。
よう、朝勃ち野郎。というメールが一件。
(´・ω・`)「ハインの野郎…」
はいはい、と返事をして、ベッドから起き上がる。
目玉焼きの匂い…は勿論しない。
(´・ω・`)「朝ご飯は抜こっかな」
歯磨きをして、制服に着替えて。
さあ、一日の始まりだ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 01:53:38 ID:HzJ3yubUO
从 ゚∀从「よっ」
(;´・ω・`)「あ、おはよう。朝のメールはなんなんだよ…」
从 ゚∀从「そんなげんなりすんなよ。してたんだろ?」
してないよ、ときちんと否定した。
校門で彼女に会うのは予想外だった。少し心臓がうるさい。
周りの眼が気になって、どうも落ち着かない。
从 ゚∀从「はいはい。じゃ、またな」
(´・ω・`)「うん、じゃあ」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 01:59:49 ID:HzJ3yubUO
ぱたぱた、と彼女は走っていった。
まだ時間はあるのに、なぜ走る必要があるんだろう。
でも、おかげで心臓が鳴り止んだ。
(,,゚Д゚)「よ、ショボン」
(´゜ω゜`)「うわっ」
(;,,゚Д゚)「なんだよそんなに驚いて…しかし、ハインと喋ってたのか、珍しいな」
(´・ω・`)「………ああ、」
(´・ω・`)「挨拶しただけだよ」
(,,゚Д゚)「そっか、ところでさ――」
今日は朝から賑やかだ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:00:22 ID:HzJ3yubUO
「えー、つまり、ここでxを…」
青い空に雲が漂っている。ふよふよと気持ちよさそうに。
雲には家族とか、いないんだろうか。
わからないなあ。と、呟いて、分からないって言葉は嫌いじゃないな、と思考の転換をする。
分からないというのはずるい。それを知っているから、僕は、分からない、が好きなんだ。
「よし、ショボン。これの答えは」
(´・ω・`)「………分かりません」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:00:50 ID:HzJ3yubUO
そうか、と先生は呟き、違う人に質問をしていた。
分からない。
わからないな、わからない。
雲の気持ちも。クラスの冷ややかさも。問題の答えも。先生の軽率さも。床の厚さも。温度も。僕の気持ちさえ。
よくわからない。
どろり、と脳味噌が溶ける感覚がして。
少し、笑った。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:01:59 ID:HzJ3yubUO
从 ゚∀从「ふいー、暑いな!」
んー、と唸りながらハインは伸びをした。
短いセーラー服から白い肌が見える。
(´・ω・`)「…夏だからね」
从 ゚∀从「それもそうだけど、暑すぎだろ。ショボンは暑くないのか」
(´・ω・`)「暑いよ。ものすごく暑い」
じゃあ室内で食べようぜ、という声を無視し、もくもくとパンを頬張った。
ここは屋上、今は昼休みだ。
从 ゚∀从「絶対音楽室のが涼しいし旨く感じるし」
(´・ω・`)「音楽室いったらハインはピアノから離れないだろ」
それに、廊下でハインと歩くのを見られたら。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:05:06 ID:HzJ3yubUO
从 ゚∀从「まあな」
笑って。
華奢な肩が揺れる。
頼りなくて、でも柔らかそうなその体躯にさらさらと、少し痛んだ肩までの髪を揺らしながら。
太陽の光に涙を一滴垂らした瞳で、彼女は笑う。
僕はその笑顔が好きだ。きっと好きだ。
(´・ω・`)「分からないなあ」
从 ゚∀从「なにがだよ」
(´・ω・`)「何がかもわかんない」
从 ゚∀从「あっそ。この唐揚げうめえ」
(´・ω・`)「いいね唐揚げ」
从 ゚∀从「いいだろ、あげねえけど」
ははは、とまた笑った。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:05:59 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「御馳走様でした」
从 ゚∀从「ごちそーさん、じゃあな」
(´・ω・`)「うん」
从 ゚∀从「お前はまだ行かないのか」
(´・ω・`)「うん、もうすこしいる」
从 ゚∀从「ふうん、じゃ」
踊るように屋上の扉へ向かっていく。長いスカートは捲れずに、きちんとハインの足元を揺らいでいた。
从 ゚∀从「なあ、そうだ。ところでさ」
今日もくる?
聞かなくても、わかってるくせに。
もちろん、と僕は曖昧な笑顔で返した。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:08:58 ID:HzJ3yubUO
****
「起立、礼!」
ありがとうございました、と呟く。
何がありがとうございますなんだろう、ただのホームルームだろ、とか心の中で毒づいて。
( ・∀・)「ショボン、今日カラオケいかね」
(´・ω・`)「いや、今日も駄目なんだよ」
( ^Д^)「なんだよ最近付き合い悪いな」
(´・ω・`)「ごめんごめん、塾なんだって」
( ・∀・)「しょうがないなー」
从'ー'从「えーショボン君いかないのー?」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:09:37 ID:HzJ3yubUO
歌うのは好きなんだけど、他にもっと重要な用事があるから、皆には悪いけれど、行けない。
だなんていえる訳がない。
ハインと放課後いたいことが重要な用事だなんていってしまったら。
いってしまったら。
いってしまったら、どうなる?
(,,゚Д゚)「じゃあなショボン」
(´・ω・`)「うん、また明日」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:10:16 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「………」
そもそも、この人達は本当に友達なんだろうか。
上辺を作って皆に合わせて、まるで仕事。はみ出したくないから、好きな本も部屋で読めないし、そうしているうちに、ああ、本当の気持ちが、ほら。
(´―ω―`)「やめよう」
今日は少し、苛ついているのだろうか。
…わからない。
早く彼女に。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:13:28 ID:HzJ3yubUO
ハインと話すようになったのは、つい最近だ。
彼女のことは知っていた。有名だったし、いつも一人でいたから。
よく渡辺さんが、ハインってきもいよねとかいっていたっけ。
一回なんでと聞いたことがある。
从'ー'从「だって友達いないし、放課後ずっとピアノを弾いてるじゃん。なんかひくー」
下らない理由だ。高2にもなってそんなことで気持ち悪がるのか、とむしろ僕は渡辺さんにひいたのを覚えている。
モララーは確かにきもいねと笑っていたが、ギコとしぃさんはひいていたな。
あれ以来、モララーと渡辺さんは苦手になってしまった。もちろん、はみ出さないように彼らとも話すけれど。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:14:39 ID:HzJ3yubUO
とりあえず、僕はハインのことを知っていた。そして興味を持った。ピアノを弾ける。凄いじゃないか。
だから僕は放課後、彼女のいる音楽室へ行ってみることにした。
友達の誘いをわざわざ断って行った、忘れられないあの日。
黄金色に染まった音楽室から流れるリストのため息。
彼女の伏せた睫毛。どこか空を見つめる瞳。流れる髪。しなる手首。指が鍵盤を踊って。
なんて濡れた、美しい音色。
音がどんどん上がっていく。
一瞬、息が止まったように感じた。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:15:20 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「…と、ハインの部屋だ」
もうついてしまった。そんなにあの日を思い出すことが楽しかったのだろうか。
インターホンを押してから、がちゃりと扉を開ける。
マンションの一室にハインは一人で住んでいる。最初は密室に二人っきりと意識したものの、最初だけだった。
だいたい僕らは付き合っているわけでもなく、ただ話をしたりするだけの関係で。
二人になってもいかがわしいことはしたことがないし、これからもしないんだろう。
僕はそれを少し、寂しく感じてしまうけれど。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:16:29 ID:HzJ3yubUO
从 ゚∀从「早かったな」
(´・ω・`)「うん、まあ」
从 ゚∀从「上がれよ」
玄関を上がり、広い部屋にでる。キッチンがあるから多分、ここは食べるところなんだろうけれど、机や椅子はない。
かわりに部屋の真ん中に、グランドピアノと、そばにベッドが置かれてある。
しかし、相変わらず汚れていない、整頓された部屋だ。
初めてここにきた時、意外と汚れてないねというと殴り飛ばされたのを思い出す。
(*´・ω・`)「ふふ」
从; ゚∀从「えっどうした」
(*´・ω・`)「思い出し笑い」
从 ゚∀从「なんだよきもいな…」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:17:58 ID:HzJ3yubUO
雑談しながら、僕はベッドに座って鞄から画板と鉛筆を取り出し、ハインは楽譜の用意をする。
(´・ω・`)「さて、始めようか」
从 ゚∀从「ああ」
僕らの時間を。
.
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:20:43 ID:HzJ3yubUO
从 ゚∀从「お、もうこんな時間か」
時計は8時を回っていた。
(´・ω・`)「そろそろ帰るよ」
画材をしまう。今日も何もなかったなあとぼんやり考えながら。
从; ゚∀从「…あのさ」
(´・ω・`)「なに?」
珍しくハインが戸惑った表情をしている。
从; ゚∀从「あの、あのさあ」
(´・ω・`)「どうしたの」
从; ゚∀从「いや、えっと…」
(´・ω・`)「………」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:21:46 ID:HzJ3yubUO
从; ゚∀从「家、辛くないのかよ」
(´・ω・`)「はは……辛くない、ことはないかなあ」
从; ゚∀从「ならさ、あー」
泊まってもいいよ。
小さく呟いた。
(;´・ω・`)「……え、と」
何をいっているんだろう。
男と女が同じベッドで寝るということが、わかっているんだろうか。
(;´・ω・`)「あ……」
从 ゚∀从「………」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:23:19 ID:HzJ3yubUO
頭が沸騰しそうだ。手の汗がひどい。ねちゃねちゃ。汗の音と、僕の中の自分が舌なめずりをする音。
どうしたら。どうしたら。
从 ゚∀从「…――」
彼女の縋るような瞳が。
(;´・ω・`)「…だ、だめ……だめだ」
从 ゚∀从「……え」
(;´・ω・`)「ごめん。それはきっと、なんだか、駄目なことだ」
从 ゚∀从「………」
从 ゚∀从「ごめんごめん、冗談だよ。男を家に泊めるわけないしw」
(;´・ω・`)「………あ、」
从 ゚∀从「ごめんな、じゃあな」
(´・ω・`)「…うん」
ぱたん、扉は閉まった。
聞こえるはずもないのに、彼女の悲しげなテンペストが聞こえた気がした。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:28:40 ID:HzJ3yubUO
***
寝覚めは最悪だった。
从 ゚∀从「昨日は失言だったな…」
中三になって、どうしても習いたい先生ができた。
でももともと住んでいる所からあまりに遠かったから、高校からは親に無理をいって引っ越し、今は一人暮らしをしている。
高校は最低な毎日。
少し本を読んだらうざがったりする頭の悪い連中ばかり。ピアノのために勉強をしなかった自分を呪ったぐらいだ。
从 ゚∀从「朝ご飯…ココアでいいか」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:29:36 ID:HzJ3yubUO
もしかしたらそんな奴らばかりじゃないのかもしれない。ショボンのように上手いこと周りに合わせているだけのやつも居るのかもしれない。
だが私は人見知りをするし、わざわざ周りに合わせてショボンのような奴を見つける、なんて器用な真似はできない。
从 ゚∀从「ショボン…」
ショボンは私の光だ。
もちろん、この街にもショボン以外に友達はいる。
だけど高校の友達は彼だけだし、それに多分、ショボンは特別だ。
私の特別。
だから昨晩は試すような真似をしてしまった。
从 ゚∀从「………」
特別な感情。ショボンへの感情。
これは恋愛感情なのだろうか。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:30:11 ID:HzJ3yubUO
***
(´・ω・`)「(やばい。眠い。眠すぎる)」
昨日は寝られなかった。
ハインのあの言葉の意味を考えていたら徹夜してしまったのだ。
(´・ω・`)「(授業中なのにやばいな)」
席は後ろの方だから少しなら…という考えが少しよぎるが、いやいややめようとすぐに居眠りを我慢する。
今の授業は歴史。鬼のモナー先生の授業だ。眠るだなんてもってのほか。
昨日の数学のように、もし当てられたら分かりませんで通用する相手じゃない。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:30:52 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「(昨日の、ハイン)」
結局、なぜあんなことをいったのかがよくわからなかった。
ハインが僕に恋愛感情を持っているとは思えない。ならただの善意だろうか。
僕の家庭は複雑だから、それに気をかけたとか。
(´・ω・`)「(…あのハインが?)」
( ´∀`)「ショボン君」
(´・ω・`)「…え、」
( ´∀`)「目が虚ろでしたね。話しを聞いていましたか?…私が今何の話をしていたかいってみなさい」
冷や汗が頬を伝った。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:33:59 ID:HzJ3yubUO
( ・∀・)「おいよショボン」
(´・ω・`)「んー」
从'ー'从「さっきは散々だったねw」
(´・ω・`)「ほんとにね」
( ・∀・)「てか今日さ、カラオケいけるよな」
(* ^Д^)「ショボン来ねえと俺寂しいよほんと」
从'ー'从「ちょwきもww」
うるさい連中だなとか思いつつ。
(´・ω・`)「いけるよ。行こう」
彼女と今日会うのはまだ気まずいから、と自分に言い訳をして、約束してしまった。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:35:08 ID:HzJ3yubUO
(,,゚Д゚)「ショボン」
(´・ω・`)「ギコ」
(,,゚Д゚)「無理、しなくていいんだぜ。塾があるなら…」
ギコはいいやつだと思う。優しくて、彼も多分僕と同じで、周りに合わせてるタイプなんだろう。
だからこの高校の男子の中で、僕は一番仲がいい。
けれど、そんなギコにもハインのことは話せない。
(´・ω・`)「気にしないでいいよ。僕も皆と遊びたいんだ」
もちろん笑顔で。
ギコもそれならいいけれど、と笑った。なぜか少し寂しそうに見えた。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:53:30 ID:HzJ3yubUO
***
( ^Д^)「モララー君かっこいー!」
(; ・∀・)「うっわきもいだまれ」
从'ー'从「www」
烏龍茶を飲みつつ。
いつもに比べたらなんて騒がしい放課後だろう、とか考えて、僕は今、カラオケという檻の中にいる。
ハインにはメールで今晩は無理なことを伝えた。大丈夫だろう。
…返事はなかったけれど。
今日は昼も一緒に食べていない。
(´・ω・`)「(まあ、昼はいつも一緒なわけじゃないし)」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:54:17 ID:HzJ3yubUO
从'ー'从「はい!次、渡辺いっきまーす」
暗い室内に照明が輝く。汚らしい光だ。
やっぱり、ハインといたかった。
( ・∀・)「なあショボン」
モララーがにやにやと話し掛けてきた。
相変わらずいやな笑い方だ。
(´・ω・`)「んー」
( ・∀・)「あのさー俺ショボンの秘密知ってるんだけど」
なになにー、と全員が反応する。
まさか―――
( ・∀・)「最近ハインの家にいるよな」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:55:04 ID:HzJ3yubUO
空気が、凍った。
( ・∀・)「俺、ハインの家にお前が行くのみたんだよな」
从;'ー'从「ショボン君、ほんと?」
塾だったんじゃないの、と渡辺さんがけたたましい声で僕を責めた。
いえなかったのはお前らのせいだろ。ハインと居るのがばれたらどんな反応をするか、わかってたから。
誰も歌わないから、伴奏だけの音楽がうるさい。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:55:38 ID:HzJ3yubUO
「てかそれやばくね」
うるさい。
「嘘ついてたわけww」
うるさい。
「ハインとか…」
うるさい。
「ハインと仲良くなるとか、ショボン君もなんか、キモ――」
(´・ω・`)「うるさいよ」
足が地面を蹴った。
(;,,゚Д゚)「おいっ」
ギコの声も無視して、もう終わりだと呟きながら。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:56:35 ID:HzJ3yubUO
(;´・ω・`)「はあ…はあっ」
あのやかましい宴から逃げて、たくさん走って、気づくと僕は夜道を歩いていた。
真夏の夜は好きだ。温い暖かさが暗闇に映えて、気持ちがいい。
でも今は、最悪な気分だった。
〜♪♪♪
(´・ω・`)「ん、メール…」
From ハイン
Sb もしよければ
―――――――――――――
終わったら来てくれないか。
もう、今の自分には。
(´・ω・`)「…彼女と居たいんだ」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:57:46 ID:HzJ3yubUO
そしてまた走って、ビル群の星座の瞬きが線になるくらい走って、速く、速くと焦った。
こんな夜中に行ったら流石に失礼じゃないかとか、メールの返事をしないととか、いっそ電話したいとか、くだらないことを考えながら、ただ走った。
さっきの出来事なんか忘れてしまって。
ハイン。ハイン。ハイン――
从 ゚∀从「ん、来たのか」
(´;ω;`)「はあ…ごほっ……う、ん」
从 ゚∀从「返事来ないからもう無理かと思ったぜ。大丈夫かよ、ぐちゃぐちゃだぜ」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 02:59:18 ID:HzJ3yubUO
声が掠れて上手く喋れない。涙が止まらなかった。なんかあったのか、と声。僕は答えなかった。
まあ入れよ、と単語が耳に入る。
从 ゚∀从「…私はピアノを弾くよ。相談とかがあって呼んだんじゃない。わかってるだろうけど」
部屋まで歩きながらハインが呟いた。
从 ゚∀从「ただピアノを弾くよ。ショボンに聴いていて欲しいんだ。ショボンに聴いて欲しいんだよ」
(´うω;`)「……う、ん」
ハインがピアノに辿り着く。僕はいつものように、ベッドに腰掛ける。
从 ゚∀从「ショボン。ショボンは特別なんだ」
(´・ω・`)「………それは恋愛感情?」
わからない。
ハインは笑った。いつもみたいに。
そしてピアノの音が鳴って、僕は眼を閉じた。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:01:20 ID:HzJ3yubUO
スケールから弾くのは、指の練習だとか色々あるけどさ。
めんどくさいけど、私は好きだ。だって頭と指が整頓されていってすっきりするから。
いつもそういって彼女は弾いていた。
不思議な夜だった。
泊まれよと言われて断った次の日にこんなに遅くくるだなんて馬鹿みたいだな、というとハインは笑った。
そして、今日は泊まれよ、といった。歌うみたいに、軽いタッチを響かせながら。
うん、と。
背中を合わせて手を繋いで寝よう、と僕は応えた。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:02:39 ID:HzJ3yubUO
「僕、最低なんだ」
「なにがだよ」
「ハインと仲良くなるのをグループにばれたくなかったんだ、ひたすら隠してびくびくしてた」
「………」
「ごめん。除け者にされるのが怖かった。そんでさっきばれちゃってさ、焦って、…」
「きにすんなよ」
「……」
「言わせとけ。私は気にしないし、むしろわかってたし、ショボンの考えは誰でも持ってしまうことだ。大体はみ出している私が悪い」
「…、でも」
「それにショボンは私の家に来てただろ。それでよかった」
「………ありがとう」
「ああ」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:03:11 ID:HzJ3yubUO
「てかお前、泊まって大丈夫なのかよ」
「どうせ僕の親は離婚の話しかしてないしいいだろ」
「ふうん」
「明日からはどうするんだ」
「明日?」
「ああ。友達とか」
「わからない。ただ、堂々とハインと居たい」
「まじかよ」
「うん。今思えば嘘をついた僕が悪いのもあるのかもしれないし、もう隠してびくびくしたくない」
「そっか――」
「うん」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:03:36 ID:HzJ3yubUO
彼女が僕に恋愛感情をもつのかは、まだわからない。でも特別だった。
喧嘩もするかもしれない。すれ違うかもしれない。
けれど。
二人だけは変わらないでいよう。
ソーダ水をぶちまけたような夜、僕らは誓った。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:08:18 ID:HzJ3yubUO
***
从* ゚∀从「ふぅ、やっぱ昼食は屋上だな」
太陽が気持ちいいぜ、とハインはご機嫌だ。
(´・ω・`)「…音楽室のがいいっていってたくせに」
从 ゚∀从「うるせえな」
从 ゚∀从「やっぱ一人、寂しいか」
ハインが気まずそうにいった。
昨日の一件から僕もはみ出し者の仲間入りになったようで。
モララー辺りが何かいったのか変な噂が回ったのか、今日は誰も話し掛けてこない。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:09:13 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「いやハインがいるし…結構一人だと自分勝手できてそんなに」
从 ゚∀从「そうか」
でも本当は、
(´ ω `)「…いやごめん、やっぱちょっと寂しいかな」
結構きつかった。
とくにギコと喋らなかったことがこたえた。彼はあのグループで唯一、僕が話しやすかったし尊敬している所もあったから。
从 ゚∀从「……」
(´・ω・`)「えっと」
何か、違う話題を。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:10:30 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「ハインは、きつくないのか」
いってから、自分がいえる立場かと後悔した。しかもこれもあまりいい話題じゃないし、大体違う話題になっていない。
(´ ω `)「(僕、最悪だ)」
从 ゚∀从「……私は」
从 -∀从「私は、………」
(´・ω・`)「……いや、ごめん…」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:12:08 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「…なんだろ、ハインとは無言がしんどくないや」
从 ゚∀从「、突然なんだよ」
あのグループだと、無言がきつかった。話題ださなきゃと、無言を回避して面白い話題をふるのに必死になっていた。
そうやって皆の株を上げて――
(´・ω・`)「本当に職場みたいになってたんだな」
「ああ、そうだな。実は俺もきつかった」
(;´・ω・`)「―――!」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:14:43 ID:HzJ3yubUO
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)
(;´・ω・`)从; ゚∀从
(;´・ω・`)「ギコ、しぃ…なんでここに」
从; ゚∀从「………?」
(*゚ー゚)「なんでって、探したのよ。たまに居ないと思ってたら屋上なんかにいたんだ…ハインちゃん、横いいかしら」
从; ゚∀从「あ、ああ」
(,,゚Д゚)「ショボン。はっきりいう」
(´・ω・`)「………」
(,,゚Д゚)「俺達はあのグループから離れた」
(;´・ω・`)「…―――!?」
(*゚ー゚)「元から私たち、離れるつもりだったのよ。ショボン君をつれて」
(´・ω・`)「僕、を…」
从 ゚∀从「…………」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:15:22 ID:HzJ3yubUO
(,,゚Д゚)「そして俺と、ショボンと」
(*゚ー゚)「私とハインちゃんで、四人で仲良くしないかしら」
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- 62 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:17:20 ID:HzJ3yubUO
从; ゚∀从「……!!!」
ハインがお茶を吹いた。
(*゚ー゚)「ふふ、」
(,,゚Д゚)「俺さ、ショボンのこと本当に信頼してるんだよ。昨日のことは、その、いわない理由はわかったけどさ、でも俺にはいってくれてもよかったじゃんか」
(´ ω `)「うん…いわなくてごめん」
(,,゚Д゚)「いや俺も気づけなくて……それに、俺そんなことで引かないぜ」
(´ ω `)「――!」
(,,゚Д゚)「なあ、また、…つるもうぜ」
いいか、と。
(´ ω `)「…そんなの、断る理由、なんて」
(´;ω;`)「――――」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:21:55 ID:HzJ3yubUO
確かにあのグループは、仕事だった。
でもそんな冷えた関係でも、暖かい友人がいたんだ。
気づかなかった。
わからなかった。
いや、わからないと、ごまかしていたのかもしれない。
でも、本当の、ほんとうは。
从 ∀从「私も…いいのか」
(*゚ー゚)「いいに決まってるじゃない」
(,,゚Д゚)「ショボンが本当に仲良くなったやつだ。いいに決まってる」
从 ;∀从「ありがとう…ありがとう」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:22:37 ID:HzJ3yubUO
涙が頬を伝っていく。
いつの間にかハインも泣いていた。
やっぱり本当は寂しかった、と彼女は小さくいった。
しぃさんは微笑んでいて、ギコは照れくさそうに、でも泣いてしまって。
まあ、とりあえず食べよう。誰かがいった。
それで皆で食べて、味はしょっぱくて。皆泣いて、しぃさんだけはただ微笑んでいて。
溶け合った気がした。
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- 66 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:23:35 ID:HzJ3yubUO
今日も、朝起きて、学校に行って、昼ご飯を食べて、放課後ハインの家で二人の時間を過ごした。
いつもと違っていたのは、昼休み泣いたこと。放課後四人で帰ったこと。休み時間は4人で過ごしたこと。その四人が本気で語り合える友人だということ。モララー達の視線が少しきつかったこと。でもそんなことどうでもいいくらい、はしゃいだこと。
(*゚ー゚)「へー、ハインちゃんって」
从; ゚∀从「ばか、大声でいうな!」
(´・ω・`)「なになに」
从;゚∀从「うるせえっ!あとしぃ、呼び捨てでいい」
(*゚ー゚)「ふふ、わかったわハイン」
(,,゚Д゚)「なんなんだよー」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:24:46 ID:HzJ3yubUO
(*゚ー゚)「私とギコがつきあってるって話」
(,,//Д//)「!!!」
(´・ω・`)「(知らなかった…)」
从 ゚∀从「(フォローありがとう、しぃ)」
そしていつもより、ハインがよく笑って、僕は果てしなく楽しくしたこと。
从 ゚∀从「ただいまー」
(´・ω・`)「お邪魔します」
从 ゚∀从「じゃ、やるか!」
(´・ω・`)「僕も用意しないとね」
今日は何を描こう。
ハインでも描こうか、と考えて、いやハインは動くだろ、とすぐ却下。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:26:14 ID:HzJ3yubUO
从 ゚∀从「なあショボン」
(´・ω・`)「ん」
从 ゚∀从「ショボンはあの暗く濁った沼のような高校の唯一光だったんだ」
(´・ω・`)「………」
从 ゚∀从「私さ、別にこれからも二人だけでもよかったんだ。ショボンはギコと喋られないことを悲しんで、一人の教室を嘆いたけど」
从 ゚∀从「もちろん嬉しかった、友達が増えたことは。泣くくらい嬉しかった、なぜか安心した。それにこの高校で女友達ができるなんて」
从 ゚∀从「独りは寂しかった。本当は寂しかった。そんな私を救ったのはショボンだった。そして今、グループになって、ショボン、」
(´・ω・`)「ハイン、」
从 ∀从「………怖いんだ」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:27:54 ID:HzJ3yubUO
(´・ω・`)「……!」
从 ∀从「グループでの接し方が曖昧に、わからなくなってて」
从 ∀从「友達が増えて、グループになって…でも怖い、こんなに嬉しかったからなのか、これならいっそ二人だった方が」
(´・ω・`)「ハイン」
从 ∀从「………」
(´・ω・`)「二人は変わらない約束、そうだろ」
从 ∀从「うん」
(´・ω・`)「そして四人も変わらないでいよう」
从 ∀从「……、」
(´・ω・`)「いや、変わらせない。大丈夫だよ、安心してくれ、ハイン。怖くない、いや辛いことはあるかもしれないでも、」
(´・ω・`)「でもハイン、少しずつ信頼していこう。皆を。二人で少しずつ、進もう」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:30:06 ID:HzJ3yubUO
从 ∀从「………」
从 ゚∀从「うん」
少しずつ少しずつ。
素敵な毎日を、信頼した仲間と過ごせるように。
ふわりと、君の笑顔が常に見られるように。いや、むしろあの儚い笑顔の瞳が、今度は向日葵のような眩しい、瞳になるように。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:30:51 ID:HzJ3yubUO
〜♪♪♪
(´・ω・`)「あ、メール」
From ギコ
Sb 俺たち
―――――――――――
これから、変わらないでいような
(´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「はは、」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/08/21(日) 03:32:06 ID:HzJ3yubUO
しぃとギコも同じことを考えていたいのかな。
ハインがどうした、と聞くのでメールを見せる。
从 ゚∀从「なんか、すげえな」
(´・ω・`)「……うん」
(´・ω・`)「あ、決めた」
从 ゚∀从「ん、何を」
(´・ω・`)「今日描く絵」
今日だから描く絵。
そう、ハインがピアノを弾いて、それを聴きながら、僕はくだらない絵を描く。
それは絶対に変わらない。
そして、四人も変わらないでいたい。
ずっと、
(´・ω・`)从 ゚∀从気のおけない友達でいるようです(,,゚Д゚)(*゚ー゚)
終わり。
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