( ^ω^)好奇心を満たそうとするようです

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:21:30.81 ID:lcSCrXzK0
ぎぎぃ、と。
重い音を立てて、扉が開く。

( ^ω^)「いらっしゃい」

入ってきたのは長身の男。
ぴしり、という擬音が似合いそうなほど、きっちりと黒いスーツを着込んでいる。
両手には薄い皮の手袋。
何よりも異質なのはその大きなマスクで、表情が全く伺えないほどだった。

僕は、入ってきた男にコーヒーを勧めた。
彼は、首を横に振る。

スーツの上着をとりながらも、マスクは外そうとしなかった。
都市伝説の、口裂け女みたいな。
そんな第一印象を、僕は彼に、持った。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:24:41.55 ID:lcSCrXzK0



( ^ω^)好奇心を満たそうとするようです



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:27:50.67 ID:lcSCrXzK0
( ^ω^)「依頼、ですかお?」

男は何も言わない。
ただひとつ、うなずくだけ。

( ^ω^)「えぇと、それで、依頼内容は?」

この店は、普通の、品物を提供する店ではない。

金さえ積まれれば何でもやるという、“なんでも屋”。
普段は、よくあるような探偵稼業。
猫を探したり、不倫の調査だったり、そういうありがちな仕事。

男は、何かを言おうとしたらしく、マスクの下で口を少し、動かした。
でも、声はマスクに阻まれたせいで、うまく音にならなくて。

少し、その整えられた眉を潜める。
そして、口頭で言うことをあきらめたのか。
黒い手帳と深緑色の万年筆を取り出すと、ゆっくりと文字を書く。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:30:39.99 ID:lcSCrXzK0
一文。

こちらに見せてきた手帳には、黒いインクで、たった一文が書かれていた。


『ころしてください』


( ^ω^)「……」

金さえ積まれれば、何でもやる。


人を、殺すことだってやる。

もちろん普段から殺しをしているわけではない。
殺しを頼むような奴は、それを隠蔽できるような力をもった人間くらいだからだ。
だから僕は、こんな明るい街角で堂々と、“なんでも屋:地平線”と看板を出して店を開くことができるのだ。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:33:32.69 ID:lcSCrXzK0
( ^ω^)「詳しく、聞きますお」

僕は一口。
コーヒーを口に含みながら尋ねる。

男は、懐から白い封筒を取り出す。
真黒な皮の手袋とは真逆の、真っ白な、染み一つない封筒。

「ぜんぶ、ここに」

ひどく細い声で、男は言った。
心なしかその声は、震えているような気がした。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:36:21.02 ID:lcSCrXzK0
***

はじめは幼少時。
鏡の双子が抱いた幼い疑問。

兄はただふと気になって口にしたにすぎないし。
弟はただそこにいたから聞いてしまっただけ。

ただそれだけの、偶然。


「人は、どんな表情で、死んでいくんだろうな」

少年はドラマを映し出すテレビの画面を見ながら、呟いた。

呻き声をあげて倒れる被害者。
走り去る黒い影。
第一発見者の悲鳴。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:39:33.85 ID:lcSCrXzK0
「ドラマってほら、作りものじゃないか?」

ぺったりとした赤い血糊に塗れる被害者。役の俳優。
疑われる第一発見者。役の女優。

全てが作りもののドラマは淡々と進んでいく。

「本当の人間はどうやって死んでいくのか、と」


まぁ、いいや。
忘れて忘れて。

と。

兄は笑って言ったけれど。


「じゃぁ、見てみるか?」


弟は、笑わずに、言った。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:42:38.44 ID:lcSCrXzK0
はじめは何かの小説で読んだように、死にそうな人を探した。
親戚の見舞いをするついでに、病院を歩き回り、そんな人と接触していく。

死を見るためだけに、ふたりで。

でも実際、“死”を目にすると、兄は、ぼろぼろぼろぼろ泣いていた。

(´<_` )「情けないな、兄者。人が死ぬのを見たいと言ったのは兄者だろう」

(  _ゝ )「………」

兄はただ無言で、ただただ涙を拭うだけ。

弟は、心底呆れかえったように、溜息を一つ。


いくつかの死を見ていく度に、兄の幼い心は涙を流す。
いくつかの死に触れる度に、弟の幼い心は笑いだす。

やがて、二人の、“死”の遊びは、一人の遊びへシフトしていく。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:45:38.05 ID:lcSCrXzK0
***

『僕を殺してください


たくさんたくさん時間をかけて

ゆっくりゆっくり殺してください


たくさんたくさん痛めつけて

じっくりじっくり殺してください』

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:48:39.23 ID:lcSCrXzK0
***

そんな文章から、封筒の中身は始まっていた。

( ^ω^)「……自殺?」

僕はそう呟いて、中の便箋に目を通していく。
男はもう、部屋にはいない。

封筒の中には小切手が一枚と数枚の便箋。

一枚目は、独白にも似た、懇願。
おそらく、これが依頼内容。

細い万年筆で、きっちりと書かれた文字。
それは、妙に稚拙なイメージを受ける文章とは、噛みあっていなかった。

( ^ω^)「初めてだお、自殺の依頼なんて…」

僕は何度かその文章に目を通してから、二枚目の便箋に移る。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:51:55.18 ID:lcSCrXzK0
***

('A`)「……あの、えっと、ハンドルネーム、が、えっと」

(´<_` )「ドクさんですか?はじめまして。“オト”です」

('A`)「お、オト、さんですか。えっと、はじ、めまして…」

小さな喫茶店。
ハンドルネームを名乗り合う、少し異質な人間たち。

目的を持って集った人間たち。


その目的に到達するために、口を開く。


(´<_` )「嫌ですよねこんな世の中なんて」

すらすらと出てくる言葉。

微笑みながらの演説は続く。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:54:54.66 ID:lcSCrXzK0

「本当に理不尽で理不尽でどうしたらいいんでしょうねまったくもって僕らみたいな底辺には優しくない」


……だから死にたいんですよ。


('∀`)「あぁ、僕、も、死にたくて、死にたくて、でも一人じゃ怖くて。」

そうですね。死にたいです。
早くほら、早く。

死にましょう、一緒に。僕も早く死にたいです。

('∀`)


('A`)


( A )


うそ、だけどさ。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 00:58:14.73 ID:lcSCrXzK0
二人で遊べなくなった一人はまず、集団自殺サイトを巡った。
HNを変えて、口調を変えて、地方を変えて。

たくさんの嘘を吐いたおかげで、様々な死に触ることができた。

死にたがりな人達は優しくすると、すぐにこちらを受け入れてくれたから。

たくさんの死を見ることができた。
たくさんの死に顔を記録することができた。

人はこうして死んでいくんだよ、と。

幼い頃の自分に教えてあげられるくらいに。



そして彼はやがて、一つの好奇心を、自覚する。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:01:14.72 ID:lcSCrXzK0
***

きっかけとなったのは、一つの痣。
左の腕にできた、丸く、濁った色の痣。

(;´_ゝ`)「……痛い…」

(´<_` )「足元くらい見て歩け、と」

( ´_ゝ`)「いやしかし階段から落ちてたったこれだけの傷。ある意味流石とは言えまいか」

何が嬉しいのか、楽しそうに痣を指差し、笑う兄。
弟は、その痣にゆっくりと触れ、そして。

(;´_ゝ`)「いいいいいいいいイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!!!」

躊躇いなく、押す。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:04:58.70 ID:lcSCrXzK0

(´<_` )「ふむ」

(;´_ゝ`)「ふむじゃないですよ弟者さん!痛いですよ俺!死んじゃいますよ!」

(´<_` )「その程度では死なないだろう……」

(;´_ゝ`)「わかるけど!わーかーるーけーどー!!」

傍から見れば、仲良くじゃれ合う兄弟に見えただろう。

けれど。

(´<_` )「……」

1人になった弟は、兄の傷に触れた指先を、じっと、見つめていた。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:07:43.17 ID:lcSCrXzK0

三月四日

原因:階段からの落下

結果:痣。青色。直径四センチほどの円形。

経過:一日目:押すと痛みを訴える。
    二日目:外見は変わらず。押すと痛みを訴える。
    三日目:外見は変わらず。

   ・
   ・
   ・

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:11:59.56 ID:lcSCrXzK0
日を追うごとに、兄の体には傷が増えていく。
弟の部屋には医療品が増えていく。

浅い傷も、深い傷も。

切傷も擦傷も打身も凍傷も。

様々な傷を、兄は体に、全身に刻んでいく。

( ´_ゝ`)「いつも済まないな、弟者」

(´<_` )「なに、気にするな」

( ´_ゝ`)「……本当に、弟者は医者にでもなったらどうだ?」

(´<_` )「ふむ。そうしたら兄者から金を取らねばな」

(;´_ゝ`)「……五割引で頼む」

弟はわらう。

兄もわらう。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:16:09.05 ID:lcSCrXzK0
タイトルのない大学ノート。
きっちりと記された“実験”記録。

日付。原因。結果。経過。

その4要素だけが淡々と綴られている。

彼は今日もノートを開く。
使いなれた万年筆で、かりかりと。

そして時折。

( <_  )「……」

ほんとうに、うれしそうに、わらうのだ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:20:01.29 ID:lcSCrXzK0
***

『普通の人間は可哀想だとは思いませんか?

だって、自分の死に顔が見られないんですよ?

死んでしまえばもう、鏡を見ることだってできませんしね。


でも僕は違いました。

自分の顔がどんな風に歪んで、曲がって、そうして死んでいくのか、見ることができるのです。

その権利があったのです。


それはとても、幸せなことだと、恵まれたことだと思いませんか?』

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:23:30.16 ID:lcSCrXzK0
***

二つ並んだ学習机。

鍵のかけられる秘密の引き出し。
ずっと使い続けているせいか、錆びているその鍵をゆっくりと差し込み、回す。
錆びてはいるが、鍵としての機能は十分にしてくれている。

かちゃり。

開いた引き出しから、そっと、道具を探す。

今日は、何を、試そうか、と。


はは、は、は、はは。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:27:06.62 ID:lcSCrXzK0
彼は今日もノートを開く。
ゆっくりと、頭の中で、計画を練る。

愚かな愚かな兄を今日も騙すため。
優しい笑顔の練習をする。


可哀想な兄者!
信頼する弟に利用されている、なんて知らないままに。疑わないままに!


たくさんたくさん時間をかけて。

ゆっくりゆっくり殺されていく。

本当に可哀想。
本当に。本当に。

あは、は。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:30:17.04 ID:lcSCrXzK0

――――弟者大変だ!寝ている間にまた傷が増えた!すごい!なにこれこわい!


……いつのまにこんなところ打ったんだろう俺…。知らないか、弟者…。  ――――


――――痛い、痛い。弟者、それで殴ったら洒落にならんだろう!や、やめ、やめてくれ!お手柔らかに!!ぎゃー!!


うわー!!!猫がー!!!猫が俺をー!!うわー!!!助けて弟者ー!うわー!!―――

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:34:03.19 ID:lcSCrXzK0
弟者、弟者、おとじゃ、おとじゃ

おとじゃ


おと




ああ

ああああ あ  あああ あああ  ああ ああああ  ああああ ああああ
ああ あああああ  あああああああああ あああああ  あああ あ
あああああ あ  あ ああ  ああああ ああああ

あああああああああああああああああああああああああああああ


ああ




おと

じゃ?

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:37:39.88 ID:lcSCrXzK0
――― 一時停止。


再生。

リピート、リピート、リピート。

かち、かち。

かちり、ぱちり。

くすくす、ふふふ。

はは、あはははは。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:41:11.71 ID:lcSCrXzK0
***


『血を分けた兄弟だから、と。

ぼくは、彼を殺すことを、もっと躊躇うかと思っていました。


でも、驚くほど冷静に、ぼくは兄を殺していました。

一番、苦しみが長引くように。

じっくり、じっくり、時間をかけて。

ゆっくり、ゆっくり、痛めつけて。


そしてそれを写真に、動画に、音声に。

たいせつに、たいせつに、保存しました。』

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:45:13.48 ID:lcSCrXzK0
***

秘密基地と称した幼い頃の遊び場所。

人が立ち入らない場所だということは知っていた。
何故って、昔、大量に仕掛けた罠なんかがそのまま、作動せずに置いてあったから。

試しに罠を踏んでみたら、まだ動いてくれた。

あぁ、おれたちがここに入らなくなってから、誰も、ここには来なかったんだな、と。

そう、弟は思った。


だから、そこを使うことにした。


思い出なんて、彼の好奇心の前では、どうでもよかったから。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:48:28.96 ID:lcSCrXzK0
( ´_ゝ`)「おー、すげー!懐かしいー!」

久々に秘密基地に来た兄は、ひどくはしゃいでいた。
昔隠した玩具や、くだらない落書きなんかを見て回りながら、嬉しそうに。

そんな兄を放置して、黙々と準備を始める。

ノートパソコンを起動する。マイクをおいて録音ができるようにする。
カメラの調子をすこしいじる。
アウトドア用のランタンをいくつかセットする。
あらかじめはこんでおいた道具を取り出す。

どうしたんだ、といった表情であにが自分をみる。


別にどうもしてないよ。
いつだっておれはこうしたかったんだからさ。

だからおれはいつもどおりですよ、と。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:50:37.21 ID:lcSCrXzK0
ぎんいろのほうちょうはきらきらしていた。
おもいかなづちをふるうのはすこしつかれた。
ながいひもはてにあまった。
おおきなはさみはよくきれた。
のこぎりはすこしきりにくかった。

がちゃん、ぐしゃり、だんっ。

じょき、じょき、じょき。

ぎぃ、こ、ぎ、こ、ぎぃこ。

たすけてといった。
ぼくはたすけなかった。
やめてくれといった。
ぼくはやめなかった。

ああ。
ああああああ。
あは、ははは、はは。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:54:10.55 ID:lcSCrXzK0



かがみのむこうのぼくをころした。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 01:57:28.80 ID:lcSCrXzK0
***

『何度も何度も繰り返して再生するうちに、自分は、気づいてしまいました。

自分は、兄に、兄の死に様に、嫉妬していることに。


自分とそっくりな顔の兄が苦しみ悶え、泣きわめきながら死んでいくのを見て、嫉妬していました。


嗚呼、なんて彼は美しく死んでくのだろう、と。

自分が死ぬ時は、こんなにも美しく、死ねるのだろうか、と。』

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:03:29.60 ID:lcSCrXzK0


『だからぼくは、確かめたくなった。』


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:06:48.70 ID:lcSCrXzK0
***

(´<_` )「道具ならたくさんあります」

彼はそう言って、僕を山小屋へ導き入れた。
大きなマスクの中から聞こえる声は、事務所で聞いた時の声よりも明るく、楽しそうに響いた。

山小屋の扉が、重く軋んで閉じた。
蜘蛛の巣のはられた窓から差し込む青白い月の光。

その下で彼はマスクを外す。

マスクの下に隠されていたは、にまり、と、笑った顔。
嬉しくてうれしくてたまらないといった風な。

もう、彼の意志ではその笑顔は、戻らないのだろう。
顔全体に貼りついて固まってしまった笑顔。

くすくすくす。
ふふふふふ。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:10:01.01 ID:lcSCrXzK0
(´<_` )「兄も、ここで死にました」

彼は両手を広げて言った。

(´<_` )「兄は、私に、私の死に顔を見せるために産まれてきたのに、それだけのために産まれてきたのに、それだけのための道具だったの

に」



「私より優れているなんて、私のプライドが許せなかった。」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:14:30.75 ID:lcSCrXzK0
さぁ、だから

ぼくをころしてください


たくさんたくさんじかんをかけて

ゆっくりゆっくりころしてください


たくさんたくさんいためつけて

じっくりじっくりころしてください


かがみのむこうにわらわれるから

かがみのむこうがわらってるから


あんたはしょせんかがみなんだと

おもいしらせてやるために

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:17:24.37 ID:lcSCrXzK0
詠うように彼は言い切る。
彼が言い切ったのを見届けてから、

( ^ω^)「弟者さん」

僕はそっと、懐に入れておいた小切手を取り出す。
たくさんのゼロの書きこまれたそれを、彼に差し出す。

( ^ω^)「申し訳ないんですけども、僕はこれを受け取れませんお」

(´<_` )「……?足りませんでしたか?その金額で」

( ^ω^)「いや、そういうわけじゃないんですお」

少し無理矢理気味に、僕は彼に小切手を押し付けた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:21:01.82 ID:lcSCrXzK0
( ^ω^)「最初は普通に依頼を受けようと思ったお、でも」

貴方の手紙を、手記を読んで。



( ^ω^)「僕は、僕の為にあんたを殺したくなったんですお」


突然いなくなった僕の親友。

死んでしまったらしい僕の親友。

僕の知らないところで死んだ僕の親友。
僕の知らない人と一緒に死んだ僕の親友。

下らない狂人に騙されてあっさりと死んでしまった、僕の、親友。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:24:33.12 ID:lcSCrXzK0

だれもあんたを満たしてやらない。
だれもあんたを満たせない。

だってあんたは僕から奪った。

僕が一番知りたかったことを奪った。



僕は、僕は、僕は。



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:27:37.35 ID:lcSCrXzK0
( ^ω^)「僕だって、ドクオが死ぬのを見たかったのに」


僕の好奇心はもう満たされることはないから。

あんたの好奇心ももう満たされないように。


黒いスーツに穴一つ。
ぱぁんとはじける軽い音。


細い目を大きく見開いて。

自分の結果を自覚しながら彼は死んだ。

道具の兄に勝てないまま、彼は一つの痛みで死んだ。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:31:13.48 ID:lcSCrXzK0
悔しいかな?


悔しいだろうね!



だってあんたは満たされなかった!




ざまぁみろ。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 02:33:11.76 ID:lcSCrXzK0



( ^ω^)好奇心を満たそうとするようです


おしまい。




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