暗い森のようです

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:03:02.92 ID:uMEqbqkoO
──────────

 「ここには、居るのかな」

 「さあ、さあ、わかりませんわおうさま、ここさいきんはしっぱいつづき」

 「ああ、とにかく探してみようか」

 「そうですわそうですわ、そうなさいましなおうさま」

 「行ってくるよ、紫」

 「いってらっしゃいまし、おうさま」

 「ここに、僕が居る事を祈っておいて」

 「はいな、はいなおうさま、しろがねのきみ、いってらっしゃいましな」

 「ああ、行ってきます、子猫とお留守番しておいで」


──────────

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:05:05.83 ID:uMEqbqkoO


 森に立っていた。

 誰もいない、暗い森。

 わたしはそこに立ち尽くしたまま、動かない。

 何もない、生き物の気配なんて感じない。

 ただ背の高い木々の中、わたしがぽつねんと立っている。


 風が起こす木々の音。

 ざわざわと運ばれる緑の匂い。

 それら全てが、わたしは森にいるのだと教えていた。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:07:01.94 ID:uMEqbqkoO


 目が覚めると、そこはわたしの部屋だった。
 可愛らしい物で溢れた部屋。

 鈍く痛む頭に触れると、全身が汗でびっしょりだと言う事に気付く。


 ああ、またあの夢を見た。

 ここ最近、毎晩みる暗い夢。
 ただ一人で森に突っ立ってる夢。

 起きた時に、やたらと汗をかいている。
 そして、いつもわけのわからない嫌な気分に陥るんだ。


 わたしはため息混じりにベッドから這い出て、パジャマから普段着に着替える。

 今日から学校だ。
 のんびりしていたら、新学期初日から遅刻してしまう。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:09:05.07 ID:uMEqbqkoO

 暑い暑い、蝉がじゃわじゃわとうるさい時期。

 夏休みが終わり、わたしは真っ黒に日焼けした皮膚の痛みを感じながら
 赤いランドセルを背負い、中途半端に終わった大量の宿題をそこに入れていた。

 そして先生に叱られるだろうと予想しながら、のんびりと教室の戸を開ける。
 一ヶ月近くぶりに感じる、木造校舎の蒸し暑さと匂い、級友の声。

 賑やかな教室に少し懐かしさを感じたものの、
 それは教室に満ちる熱気によって、すぐに取り払われた。

  _,
ミセ;゚−゚)リ「……あっつい、むかつく」


 背中から外したランドセルを自分の机に、ばん、と叩き付ける。

 そして開け放たれた窓から顔を出して、ぬるい風に涼しさを求めた。

 八月は終われど、まだ夏と言っても問題はない時期。
 むろん、涼しさなんか得られはしなかった。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:11:05.62 ID:uMEqbqkoO

 家から学校に来ただけなのに、背中はもう汗でびっしょりだ。
 扇風機すらない教室、涼しさは個人で起こす、下敷きからなる風ばかり。

 わたしもその中に加わる様に、椅子に座ってランドセルから下敷きを取り出す。
 そして汗で湿った前髪を、ゆるい風で揺らした。


 肌にまとわりつく、気持ち悪い暑さと汗の湿気。
 夏なんて嫌いだ、と肌にへばりつくシャツを引っ張る。

 すると、教室の外から二つ分の足音がやって来るのを聞いた。

 みんなが慌てて席に戻り、下敷きを置く。
 わたしは下敷きで顔を扇いだまま、がらりと開かれた扉を目だけを向けた。


 背の高い担任が、紺のジャージの袖をまくっている。

 その後ろには、小さい影。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:13:04.44 ID:uMEqbqkoO

 『みんな久し振り、夏休みは楽しんだか? 今日は、みんなの新しい仲間を紹介する』


 頬杖をついて、わたしはそれを睨む様に見ていた。
 教師の影に隠れてよく見えなかったそれが、一方前へと出る。


从 ゚∀从「高岡ハインリッヒです、よろしく」


 綺麗に落ち着いたボーイズソプラノ。

 糊のきいた半袖シャツ。
 ネクタイとベスト、半ズボンに模様の入った靴下。
 身なりの良い、清潔そうな格好だった。

 けれど教室中の視線はその格好ではなく、彼の頭に向けられている。


 鮮やかな、銀色の髪に。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:15:05.15 ID:uMEqbqkoO

 みんながざわざわと、好奇心を含ませて狼狽えている。

 わたしはそれらから目をそむけて、窓の外に視線をやった。

 蝉がうるさい、じゃわじゃわじゃわ。
 七日しか生きられないなら、さっさと黙れば良いのに。


 転校生が自己紹介を終えて、空いてる席に座る。
 濃い緑の、横長のランドセルが下ろされる。

 実際に見なくても、音でそれを判断出来た。


 銀髪の転校生に、教室中がざわざわする。
 声が止んでも、不思議なざわざわは収まらない。

 転校生にも銀髪にも、興味はない。
 わたしはただ、むせかえる様な暑さに眉を寄せていた。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:17:07.29 ID:uMEqbqkoO

 転校生で手がいっぱいなのか、教師はわたしの中途半端な宿題に怒らなかった。
 それだけはラッキーだと思い、ちらと転校生を見る。

 同級生に囲まれて、質問ぜめにあっている。
 形の良い笑顔を浮かべたまま、それに応える転校生。

 どうでも良いや、とわたしは飽きる事なくぼんやり窓の外を見た。

 早く終われ。
 家に帰って、アイスを食べたい。


 その祈りが通じたのか、新学期の初日は滞りなく終えた。


 赤いランドセルを背負って、教室を出る。

 視界の端に、銀色が入り込んでいた。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:19:06.05 ID:uMEqbqkoO

 家に帰って、ランドセルを投げ捨ててアイスを食べる。
 冷房のきいた部屋は涼しくて、わたしの機嫌は一気によくなった。

 しゃり、とソーダ味のアイスをかじった。
 冷たくなった頭に、銀色が浮かぶ。

 興味は無くても、目に焼き付くもの。
 銀色の転校生は、口数は少ないが愛想が悪いわけじゃない。

 けど、あの整った顔に張り付いた偽物みたいな笑顔が、なんだか嫌だった。


 わたしは汗を吸った短い髪をぐしゃぐしゃにして、ソファーに寝そべる。

 ああ涼しい。
 ここは自然が多いくせに、やたらと暑いから嫌いだ。

 四方を森に囲まれた土地、風の流れ込む場所がない。
 田舎なんだ、ここは。
 中途半端に田舎なんだ。

 ああ、めんどくさい。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:21:12.81 ID:uMEqbqkoO
──────────


⌒*リ´・-・リ「ねぇ……あの、どこに……行くの、?」

 「さあ、どこだと思う?」

⌒*リ´・-・リ「わかんない……よ……」

 「分からなくても良いよ、さあ一緒においで」

⌒*リ´・-・リ「……うん」

爪'ー`)y‐「おやおや王様、可愛いお嬢さんをお連れで」

⌒*リ;´・-・リ「ぇ、え……?」

 「やあ狐、欲しいかい?」

爪'ー`)y‐「ああ、可愛いお嬢さんは大好きだからね」

 「まだあげないよ、まだ」

⌒*リ;´・-・リ「……あ、の……」

 「大丈夫、彼はただの狐だよ。さあ、行こう」


──────────

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:23:02.87 ID:uMEqbqkoO


 その日の晩、わたしはやっぱり森に立っていた。

 暗くてじっとりした森。
 空は真っ黒だし、背の高い木々が与える威圧感が嫌。

 わたしは森に突っ立って、どこを見るでもなく視線を泳がせた。


 その視線の先には、銀色の少年が居た。


 前髪で片目をおおい、清潔そうな服を着た彼。
 不思議な銀色の髪が、風にさわりと揺らされる。

 わたしは彼に声をかけない。
 彼もわたしに声をかけない。

 ただ、そこに立っていた。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:25:06.11 ID:uMEqbqkoO

  _,
ミセ;゚−゚)リ「…………あつい」


 ベッドから起きてすぐに、自分を包む暑さに文句を言った。
 汗でべしゃべしゃのパジャマを脱ぎ捨てて、用意しておいた服に袖を通す。

 汗っぽい前髪をぐしゃりと持ち上げれば、頭に浮かぶのは、また銀色。


 そうだ、銀色。

 奇妙な夢に突如現れた、異質なもの。


 赤いランドセルに教科書を詰めながら、わたしは彼を思い出す。
 そして、今日、彼と接触してみようと思った。

 やっと抱いた興味は、彼自身ではなく、彼が出た夢。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:27:08.87 ID:uMEqbqkoO

 腹がたつほどの日差しを受けて学校に辿り着き、教室に入る。
 教室はもう多くの同級生で溢れていた。

 そんな中、ランドセルを机を置きながら彼を探す。

 廊下に近い、一番後ろの席。
 いとも容易く見つかった銀色は、相変わらず小綺麗な格好をしていた。

 その横顔に声をかけようか、迷った。
 転校生に声をかける事自体は、別におかしい事じゃあない。

 けれどわたしが彼に聞きたいのは、夢の事。
 何をどう聞けば良いのかわからない。

 けど聞きたい、どうして彼が夢に出たのかわからないから。

 ただ、銀色の髪が印象強かったから出ただけかも知れない。
 でも、聞きたい。
 けど、聞けない。

 もやもやとしている間に、朝礼が始まり、授業が始まってしまうのだった。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:29:19.54 ID:uMEqbqkoO

 話しかけようかどうしようか、
 優柔不断に悩んでいる間に、一日はあっさりと終わりを告げようとしていた。

 五時間分の授業が終わり、終わりの会すら終わろうとしている。
 それなのに、わたしは未だに彼に声をかけられずに居た。


 終わりの会が終わる。
 みんながランドセルを背負って、教室を出る。

 銀色の転校生も、濃い緑の鞄を背負った。
 それを見て、わたしは慌てて赤いランドセルを背負う。

 彼が教室を出る。
 わたしもそれを追って、教室を出る。

 彼が靴をはきかえる。
 わたしも同じ様にはきかえる。

 彼の後ろ姿が、遠退いて行く。
 わたしはただ、困っていた。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:31:04.36 ID:uMEqbqkoO

 今日はもう諦めよう、だいたい、何をどう聞けって言うんだ。

 そう、わたしは肩を落として学校を後にした。

 すると、そんなわたしの背中にぶつけられたボーイソプラノ。


从 ゚∀从「ねぇ、」

ミセ;゚−゚)リ「っ!?」

从 ゚∀从「君、どうして僕を見ていたんだい?」

ミセ;゚−゚)リ「ぇ……あ、別に、そんな、」

从 ゚∀从「ずっと、見ていたじゃないか、ずっと」

ミセ;゚−゚)リ「…………」


 しゃらんとした耳に心地よい声が、わたしを責めている気がした。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:33:07.30 ID:uMEqbqkoO

从 ゚∀从「僕が、気に入らないの? なら、そんなに見ないでくれ」

ミセ;゚−゚)リ「ぁ……ち、が」

从 ゚∀从「じゃあ、何?」


 背中を向けていても分かる、彼の声。
 ちくちくと突き刺さる声音が、なぜだか胸に痛かった。


从 ゚∀从「そんなにおかしいかい、僕の髪が」

ミセ;゚−゚)リ「ちがっ……違うっ!」

从 ゚∀从「へぇ、じゃあ、なあに?」

ミセ;゚−゚)リ「……そ、の……あの、」

从 ゚∀从「別に何を見ようが君の自由さ、でも、そう見られたら戸惑ってしまう」


 嘘をつけ。
 戸惑うんじゃない、鬱陶しいだけだ。
 声だけで、それが理解できてしまうほどに。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:35:15.89 ID:uMEqbqkoO

 拳をぎゅうと握って、頬を伝う汗を拭う事すら出来なかった。

 この転校生は、わたしに、悪意や嫌悪に似たものを抱いている。
 じろじろ見てんじゃねぇよ鬱陶しい。
 そう言わんばかりの言葉、トゲがいやと言うほど見える。

 ごく、と唾液を飲み込んだ。
 そして、そっと口を開いた。


ミセ;゚−゚)リ「……ごめ、ん……じろじろ、見て」

从 ゚∀从「別に、気にしていないさ」

ミセ;゚−゚)リ「…………ねぇ」

从 ゚∀从「何だい」

ミセ;゚−゚)リ「……森、に……立った事、ある……?」

从 ゚∀从「何だい、突然。知らないよ、そんなの」


 突き放される。
 こいつ、なんか、怖い。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:37:04.99 ID:uMEqbqkoO

ミセ;゚−゚)リ「…………ごめん」

从 ゚∀从「……じゃ」


 わたしがぽつりと謝ると、転校生はその場を去って行った。

 ぽつんと一人残されたわたしは、拳をぷるぷる震わせる。


 何だよ、何だよあいつ、感じ悪い。
 腹の底に溜まった苛立ちが、じわじわと登って来る。

 しかしそれと同時に訪れた自己嫌悪が、わたしを責め立てる。

 何て聞き方をしたんだ。
 突然あんな事を聞いて、何も分かるわけがない。

 何してんだ、わたしは。


 がっくりと項垂れて、わたしは虚ろな目をしながら家へと帰って行った。

 ぐろぐろした色んな物が混ざりあい、気持ち悪い気分に陥りながら。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:39:04.12 ID:uMEqbqkoO

──────────


 「ああ、また違った」

 「おうさま、おうさま、またしっぱいなのかしら?」

 「失敗さ、彼女じゃあなかった」

 「あのおじょうさんはいかがなすったの?」

 「狐が欲しがっていたからね、あげたよ」

 「まあ、まあ、おきつねさまたらすきものだこと、どれだけおはながほしいの」

 「花が好きなんだよ狐は、常に花壇に花を咲かせておきたいんだ」

 「あらあらまあ、じゃあまえのおはな、かれてしまわれたのね」

 「ああ、花が好きな癖に水をやらないから」

 「いけないわいけないわ、いけないこだわおきつねさまたら」

 「今度の花は大事にして貰いたいね、全く」


──────────

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:41:09.00 ID:uMEqbqkoO


 もう、思い返すのも面倒なくらいに続けて見た。
 暗い暗い森の中で、ぼんやりと突っ立つだけの夢。

 もう、うんざりだ。
 見飽きたし、そろそろ不快なんだ。

 相変わらず世界は真っ暗で、背の高い木々がざわざわ揺れるだけ。

 昨夜は隣に居た銀色が今日はいない。
 いつもと変わらない、元に戻った、変化のない鬱陶しい夢。
 平坦で億劫でつまらない、嫌な汗をかく夢。


 そう、思っていた。

 森の向こうにさす、一筋の光を見るまでは。


 遠くにあった光が、こちらへとやって来る。

 暗い暗い森に、道を作る。

 その先には、銀色に輝く何かがあった。


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:43:04.01 ID:uMEqbqkoO


 おいで、ほら、ここに。





     【暗い森のようです】





 森の中、光を見たなら追ってごらん。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:45:05.81 ID:uMEqbqkoO


 翌朝、わたしはまた、体を濡らす汗に眉を寄せながら目を覚ます。

 事はなく、ただ、森の中に立っていた。


ミセ;゚−゚)リ「…………あれ、?」


 いつも、気が付けば目が覚めていた。
 夢の中のわたしは歩く事もなく、退屈な夢の中で景色の一部になっていた。

 そして、飽き飽きした頃には目が覚めて、汗をかいて、暑いと文句を言う。

 筈、だった。


ミセ;゚−゚)リ「……何で、あれ、え、?」


 夢の中のわたしが、わたしになってしまっていた。


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:47:02.50 ID:uMEqbqkoO

 辺りをきょろきょろと見回す。
 夢の中の無表情なわたしが、いつもはしない行為。

 奇妙な違和感にとらわれて、わたしはいつもと違う汗を流した。
 冷たい汗が、ぽつり、こめかみから頬へと流れ、首に降りる。


 おかしい。
 何かが、おかしい。

 いつも客観的に見ていた夢の中のわたしが居ない。
 わたしがわたしになっている。

 重苦しい森の闇が、強く感じられる。


 ここは、どこだ。
 どこだ、わたしはどこだ。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:49:07.83 ID:uMEqbqkoO

 夢の中に入り込んでしまった様な、気持ち悪さ。
 いやにリアル過ぎる夢みたいに、わたしの足元がふわふわと感じる。

 わけのわからない気持ち悪さに戸惑い、拳を握った。
 爪が手のひらに食い込んで、痛かった。


ミセ;゚−゚)リ「夢……なん、じゃ……」


 おかしい、おかしい、おかしい。

 どうして、どうして夢の中で痛みを感じるんだ。
 どうして、どうして、やだ、怖い、気持ち悪い。


 森の闇がわたしを責め立てる。
 薄いシャツ越しに、わたしは身を抱いた。

 息苦しさも痛みも、全てが現実そのものだった。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:51:05.71 ID:uMEqbqkoO

 えもいわれぬ恐怖に蹲りたくなった。
 けれどこのままここに居たら、飲み込まれてしまう気がして出来なかった。

 ふら、とわたしは戸惑いによたよたする足を動かす。
 足の裏に、柔らかな土と草を感じた。

 そのまま、よろよろ歩き始めた。

 どこに行けば良いのだろう。
 混乱しきっていて、何をどうすれば良いのかわからない。

 それでもわたしは足を動かして、唯一の道しるべである光を求めた。


 この闇はこわい。
 この森はこわい。

 食べられてしまう。
 明るいところに逃げなくちゃ。

 食べられてしまう。


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:53:10.90 ID:uMEqbqkoO

 ふらふらと、闇の中から光の道に入った。
 まぶしいほどに感じる光が、とても落ち着く。

 けれど、早く行かなくちゃ。
 すぐ後ろには、闇が居るんだ。
 わたしの首を狙う様に、牙を見せて笑っているんだ。

 ああ怖い、怖い、怖い。

 わたしはふらつく体を必死に支えながら、走った。
 もっともっと明るいところに行かなくちゃ。
 一人がこわい、一人はこわい、助けてこわい、こわいの。


 「何を、急いでいるんだい」

ミセ;゚−゚)リ「ッ!!」

从 ゚∀从「そんなに焦って、どこに行くんだい」

ミセ;゚−゚)リ「た……か、おか、くん……?」


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:55:25.69 ID:uMEqbqkoO

从 ゚∀从「名前で呼びなよ、ここは夢だ、君の」

ミセ;゚−゚)リ「夢……本当に、夢なの? これ、が?」

从 ゚∀从「君は森の中に立った事があるかい? 現実で」

ミセ;゚−゚)リ「……ない」

从 ゚∀从「なら夢さ、さあ行こう、夢を歩こう、芹澤ミセリさん」

ミセ;゚−゚)リ「…………名前で、良い」

从 ゚∀从「僕を名前で呼ばないのにかい?」

ミセ;゚−゚)リ「ぅ…………えと、ハイン、リッヒ」

从 ゚∀从「ハインで良いよ、ミセリ」

ミセ;゚−゚)リ「……うん」


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:57:32.79 ID:uMEqbqkoO
ミセ;゚−゚)リ「ここ……どこ、なの?」

从 ゚∀从「さっきも言った、夢だよ、君の」

ミセ;゚−゚)リ「ちが、違う、違うの、そうじゃない」

从 ゚∀从「ああ…………じゃあ、不思議の国だと思えば良い」

ミセ;゚−゚)リ「不思議の国、?」

从 ゚∀从「そう、森を抜ければハートのクイーンが要るかも知れない」

ミセ;゚−゚)リ「……」

从 ゚∀从「さあ行こう、銀色だけれど僕はシロウサギを演じよう」

ミセ;゚−゚)リ「……わたしは、アリスだって言いたいの?」

从 ゚∀从「ああ、だから目が覚めたら元通り、夢を楽しみ満喫すると良いさ」

ミセ;゚−゚)リ「…………アリスとか、がらじゃない」

从 ゚∀从「だろうね、君はエプロンドレスも黒いリボンもつけてない
      シェイクスピアの詩を暗唱する事も出来ない、でき損ないだ」
  _,
ミセ;゚−゚)リ「……失礼な」

从 ゚∀从「これは失敬」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 22:59:27.63 ID:uMEqbqkoO

从 ゚∀从「さあおいで、シロウサギについて来るんだ、不思議の国を案内しよう」

ミセ;゚−゚)リ「……何で、案内できんのよ」

从 ゚∀从「夢だからさ、夢なんて不条理で滅茶苦茶なものさ」

ミセ;゚−゚)リ「理不尽、だ」

从 ゚∀从「夢だからね」

ミセ*゚ー゚)リ「…………そればっか」

从 ゚∀从「ああ、やっと笑った、さあ行こう、手を握って」


 銀色の転校生に飲み込まれたペース。

 彼が夢だと言うのなら、これはきっと夢なのだろう。
 現実それがどうかは分からない、けれど他に信じる物がない。

 だから、彼が手を繋げと言うならそれに従う。
 わたしよりは大きな手は白く、日に焼けていない細い手だった。

 そこに重なったわたしの手は、夏を満喫した事により日焼けしている。
 わたしよりも女の子らしい手に、少しだけ嫉妬した。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:01:18.98 ID:uMEqbqkoO

 そしてわたしは、彼と手を繋いで歩き出した。

 男の子と手を繋ぐのは少し照れ臭くて戸惑ったが、
 背中に迫っていた闇への恐怖を感じなくなった事に、安心した。


 二人で、森の中を歩く。
 白い光の道を歩く。

 腕の生えた木々が並ぶ道、細い足が転がる道。
 花の代わりに咲き乱れるのは、暗い色をした何かの頭。

 夢の中を歩くのも、二人だったら不思議と怖くはなかった。

 時折おちている赤いぬるりとした物を彼が蹴飛ばす。
 赤い何かはぽんと跳ねて、木々の幹に当たってびちゃりと落ちる。

 あれはなあに
 ただの木の実さ

 頭の中が、ふわふわする。


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:03:03.22 ID:uMEqbqkoO

 この先には何があるの
 きっと不思議の国が広がってる

 不思議の国には、何があるの
 赤いクイーンが待ってるんじゃないかな

 ねぇ、これは何
 それも木の実さ、樹から落ちたんだ

 食べれるの
 おいしくはないよ、生臭くて

 食べたことがあるの
 あるよ、ほら、そこにも落ちている


 彼は赤い液体に濡れた赤い木の実を持って笑った。
 わたしはそれを受け取って、手のひらから伝わる温もりと水っぽさに首を傾げた。

 不思議な形。
 わたしの拳と同じくらいの大きさ。

 それを投げ捨てて、わたしは眉をよせた。


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:05:16.48 ID:uMEqbqkoO

ミセ*゚ー゚)リ「これは、花?」

从 ゚∀从「花だよ、ほら、かわいい」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、かわいい」


 道の端に咲く花を指差して、わたし達は顔を見合わせて笑った。

 髪を二つに結った女の子。
 地面から生えるその花を、誰かの手が撫でる。


爪'ー`)y‐「やあやあ王様、可愛いお嬢さんをお連れで」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、こんにちは」

爪'ー`)y‐「こんにちはお嬢さん、綺麗な花だろう、ねぇ王様」

从 ゚∀从「やあ狐、今度の花は枯らしていないみたいだね」

爪'ー`)y‐「ああ、このお花はお気に入りさ、綺麗な藍色だ」


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:07:05.86 ID:uMEqbqkoO

ミセ*゚ー゚)リ「ん、ハイン、王様なの?」

从 ゚∀从「さあ、どうだろうね」

ミセ*゚ー゚)リ「何よ、それ」

爪'ー`)y‐「王様、良いかい?」

从 ゚∀从「何だい、狐」

爪'ー`)y‐「もしこのお花が枯れたら、新しい花を貰えるかい」

从 ゚∀从「ああ、でもまだ駄目さ、お花だったら君にあげるよ」

爪'ー`)y‐「やあありがとう、お花は好きなんだけど、すぐに枯らしてしまうからね」

ミセ*゚ー゚)リ「ちゃんと、お水をあげなきゃ」

爪'ー`)y‐「そうだねお嬢さん、君は何色の花なんだろうね」

ミセ*゚ー゚)リ「何色だろう、ね、ハイン」

从 ゚∀从「僕としては、赤い花であってほしいんだけれどね」

ミセ*゚ー゚)リ「そう、赤かったら良いのにな」

从 ゚∀从「ああ」


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:09:06.84 ID:uMEqbqkoO

 可愛いお花と、大きな耳と尻尾が生えた狐と別れた。

 わたしはハインと手を繋いだまま、歩く。

 森の中を、木々に囲まれた光の道を。
 ただ、楽しそうに笑いながら歩いた。

 少し歩いたところで、ハインが何かを見つけた。
 あ、と声をあげたハインの視線をたどって、わたしもそっちを見た。

 紫色が、ぽつりと存在していた。
 かわいい、女の子だった。

 頭から二本の角をはやした女の子が、こっちに気付いた。
 四本の腕をうごめかせて、女の子はうやうやしくおじぎをした。

 ハインがそれに片手をあげてあいさつをした。
 わたしもちいさくあたまを下げた。

 おんなのこはやっつの目を細くして、ほほえんだ。
 かわいい女の子だった。


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:11:05.86 ID:uMEqbqkoO

从 ゚∀从「やあ、紫」

lw´‐ _‐ノv「ごきげんよう、ごきげんようおうさま、そのこがあのこなのかしら?」

从 ゚∀从「ああそうさ、君はここで何を?」

lw´‐ _‐ノv「こねこのあそびあいて、していましたの、おうさま」

ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは」

lw´‐ _‐ノv「こんにちはおじょうさん、きれいなおはな、こんにちは」

ミセ*゚ー゚)リ「その子は、ペット?」

lw´‐ _‐ノv「ええ、ええ、かわいらしいでしょう、わたしのこねこ」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、とっても」

lw´‐ _‐ノv「ふふ、うふふ、おじょうさん、のどはかわいていて?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん……うん、少し」

lw´‐ _‐ノv「ならこれをどうぞ、のどのかわきをうるおしになって」


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:13:16.78 ID:uMEqbqkoO

 女の子がさしだしたコップをうけとって、口つけた。
 あまくてにがいむらさきいろが、どろどろと喉をながれてゆく。

 それをみて、おんなのこは手をたたいてわらった。
 ハインも、にこにことわらった。

 なんとなく、わたしもわらった。

 あははははぁははは。


ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう、うるおったよ」

lw´‐ _‐ノv「どういたしましておじょうさん、もうあなたはにげられない」

ミセ*゚ー゚)リ「何からにげるの?」

lw´‐ _‐ノv「さあ、さあ、なにかしらなにかしら、うふふ」

ミセ*゚ー゚)リ「ぁは、あははっ」


 あはははははは。
 みんなわらった。
 おなかのおくから、たのしいがこみあげる。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:15:23.71 ID:uMEqbqkoO

lw´‐ _‐ノv「ねぇおじょうさん、おじょうさんはなにいろがおすきなのかしら」

ミセ*゚ー゚)リ「わたし? わたしはね、えとね、ピンク、好きだよ」

lw´‐ _‐ノv「そう、そうなの、おんなのこはももいろ、おすきなのね」

ミセ*゚ー゚)リ「そうなのかな」

从 ゚∀从「ああ、前に居た子もピンクが好きだった」

ミセ*゚ー゚)リ「そうなんだ、わたしと一緒だ」

从 ゚∀从「いや、違うよ、彼女は好きな色と同じ色になれたからね」

ミセ*゚ー゚)リ「? どう言うこと?」

从 ゚∀从「紫、シュール、手鏡は持ってるかい?」

lw´‐ _‐ノv「ええ、ええ、おうさま、どうぞおじょうさん」

ミセ*゚ー゚)リ「ふ、ぇ?」


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:17:13.97 ID:uMEqbqkoO

 よんほんあしの女の子が、わたしにぎんの手鏡をさしだした。

 わたしがそれをのぞきこむと、そこにはきれいな緑がうつっていた。

 まんなかにはわたしの顔がある。
 けど、わたしをつつむのは緑色。


 わたしの髪は、緑色。


ミセ*゚ー゚)リ「あ、れ?」

从 ゚∀从「残念だったね、ピンクじゃあないみたいだ」

ミセ*゚ー゚)リ「うん……ん、?」

从 ゚∀从「残念、だったね」

ミセ*゚ー゚)リ「う……ん?」

从 ゚∀从「君が赤だったら、良かったのに」

ミセ*゚ー゚)リ「う……?」


106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:19:12.57 ID:uMEqbqkoO

lw´‐ _‐ノv「ゆめはすてきですわね、おじょうさん」

ミセ*゚ー゚)リ「う? なん、で?」

lw´‐ _‐ノv「だってほら、いたみもくるしみもかんじない」

ミセ*゚ー゚)リ「ほんとに?」

lw´‐ _‐ノv「ええ、ためしてみましょうね」


 ぞぐん。
 なにかが、わたしの腕にあたった。

 ひだりうでを見たら、そこには何もなくって、あしもとに腕がころがっていた。

 緑色を噴き出すうでが、おもしろくてわらった。

 わらっていたら、せなかを何かがなでた。

 せなかから、なにかが噴き出すのをかんじた。


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:21:10.45 ID:uMEqbqkoO

 わらうわたしの右目が、だれかにひっこぬかれた。

 視界のはんぶんを緑にそめながら、わたしはわらった。

 あははははははは。
 あはははははははははははは。


从 ゚∀从「残念だ、ミセリ」

 あははははは

从 ゚∀从「君が赤かったら、僕になれたのに」

 あはははははははははは

从 ゚∀从「ごめんよミセリ、僕は君に嘘をついていたんだ」

 あははははははははははははははは

从 ゚∀从「この先にハートのクイーンは居ない、僕はそれを求めているんだ」


 あはははははははははははははははははははははははははははははははははは


114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:23:21.72 ID:uMEqbqkoO



 鬱陶しいほどの闇の中。
 視界はもう、緑ばかり。

 露出した腕の切断面は、もはやどうしようもなくて
 押さえて何とかしようとしても、緑の体液が手を濡らすだけ。

 緑、そう、緑色。
 泣きたいくらいの、綺麗な緑。

 痛みは確かに感じない。
 でも、苦しさは残っていた。


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:25:18.30 ID:uMEqbqkoO

 残り少ない、わたし。
 緑に染まっていないわたしの一部分が、
 子供みたいに泣き叫んで、誰かに何かを伝えようとしている。


 前を見ないで、戻ってきて。
 冷静になって、その手をとらないで。

 違うの、そうじゃないの。
 止めて、止めて、お願いだから止めさせないで。

 うで、うでが、ぁ、あ、あ゙あ゙あ゙あああああああああああああああああああ
  助けて、助けて、助けて、助げでやだやだよやめてみどりいろやだあああわたしのあし
  こわいよこわいうごかないうごかないのねぇたすけてねぇきつねさん
  ちぎらないでやめてあしをひっぱらないでぎぢぎぢいってるのぎぢぎぢぎぢぎぢ
  たすけてにんげんやめたくないやめたくないのやだやだやだやだやだやだや
  ああああああああああああああああああああああやめてよやめてええええええ



  あ、は、ぁははぁは


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:27:11.92 ID:uMEqbqkoO



从 ゚∀从「ああ、また違った」

lw´‐ _‐ノv「こんどのおじょうさん、とてもとてもたのしそうでしたわ」

从 ゚∀从「そうだね、毒を飲む前から毒されていた」

lw´‐ _‐ノv「でも、おはなになるまえにこわれてしまわれたわ
       おきつねさまをよんで、おはなはおはなをそだてるかたがわかるのね」

从 ゚∀从「そうだね……でも狐にあげるのは止めておこう」

lw´‐ _‐ノv「あら、なあぜ?」

从 ゚∀从「このお花は、僕が気に入ったからさ、それに狐は花を大事にしない
     紫、彼女を木鉢に入れておいてくれ」

lw´‐ _‐ノv「はいな、はいなおうさま、かしこまりましたわ」

从 ゚∀从「僕は、赤い花を探しに行く、僕を探しに行くよ」

lw´‐ _‐ノv「はいなおうさま、いってらっしゃいましな」


121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/04(土) 23:29:13.10 ID:uMEqbqkoO


 ぽつり、存在するのは蜘蛛の女児と緑のお花。

 銀色の少年が立ち去って、女児はお花を綺麗な木鉢をそっと入れた。

 愛らしい顔をしたお花、その頬を伝う緑の露を小さな指先で拭う。

 緑に濡れた指先を口に含んで、舌を絡めてぬるりと引き抜く。
 唾液が糸を引いて、つん、と切れる。


 女児は不恰好に愛らしいお花を見上げて、細い肩をすくめた。


lw´‐ _‐ノv「あぁあ、くものすに、かかってしまうから」


 しゅるり、銀の糸を吐き出して、女児はにっこりと笑みを浮かべた。



おわり。


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