- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:09:34.51 ID:nIKmUO6Y0
- ――VIP警察署――
( ´ω`)「ふぅ…」
川 ゚ -゚)「なかなか進展がありませんね。」
私がオフィスのデスクで一人溜息をついていると、
コンビを組んでいる同僚のクーが声を掛けてきた。
( ^ω^)「あぁ、クーかお。
奴らが資金を隠している銀行の目星は付いているんだけど、
どうしても摘発の許可が降りないんだお…」
川 ゚ -゚)「検察も手出し出来ない状態ですし…」
( ^ω^)「検察も彼以外買収された人間ばかりだしお…
一応掛け合ってはいるが果たしてどうだか…」
川 ゚ -゚)「資金源さえ絶てれば活路が開けるのですが。」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:12:16.38 ID:nIKmUO6Y0
- ( ^ω^)「やはり時間を掛けて戦って行くしかないお。」
川 ゚ -゚)「そうですね。」
( ^ω^)「ん?」
不意に署内のスピーカーからアナウンスが響いた。
『署の皆さんは至急演説室へお急ぎください。』
川;゚ -゚)「あ、召集ですね。」
( ^ω^)「急がないと。」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:14:57.34 ID:nIKmUO6Y0
- ( ´∀`)「………」
私達が演説室へ向かうと、
そこには演説台に立ったモナー本部長が仁王立ちで整列した警官達を見渡していた。
( ´∀`)「ん?」
遅れてやって来た私達にモナー本部長が一喝。
(#´∀`)「ブーン、クー、遅れて来るとは何事だっ!!」
( ^ω^)「申し訳ありませんお。」
川;゚ -゚)「申し訳ありません…」
私達は急いで整列に並んだ。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:18:13.93 ID:nIKmUO6Y0
- ( ´∀`)「それじゃあ全員揃ったな…ゴホン」
( ´∀`)「諸君毎日ご苦労。今日君達に集まってもらったのは他でもない。
今年に入っても街の犯罪率の90%以上がマフィアやギャングによるものだ。
マフィアは日々勢力を拡大し、街にはびこるならず者達も横着無人に強盗や殺人を繰り返している。
奴らとの戦いで命を落とした同胞も多く、これから更に現状が悪化することも覚悟してもらいたい。」
( ^ω^)「………」
( ´∀`)「だが君達は強い。この戦いにも我々は必ず勝利を収めるだろう。
そして次にこの街を背負って立つ未来の希望達が安全に生活して行ける街に我々はしなくてはならない。
君達の家族の為でも誰かの為でも良い、常に信念を持って取り組んで欲しい。私の話はこれだけだ。」
( ´∀`)ゝ「以上、解散!!」
( ^ω^)ゝ
川 ゚ -゚)ゝ
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:19:52.43 ID:nIKmUO6Y0
- ( ^ω^)「あの、本部長。」
それぞれが解散して各自の持ち場へ戻る中、
私は退室しようとしていた本部長を呼び止めた。
( ´∀`)「なんだねブーン?」
( ^ω^)「やはり摘発の件はどうにかならないのですかお?
もう銀行の目星は付いているんです。後は許可さえ下りれば。」
( ´∀`)y━・~~~「まぁ君の気持ちも分かるがそう急いで奴らを刺激しても意味ないだろう。
もう少し待ちなさい。」
本部長はやる気のない様子でそう答えると、
胸ポケットから葉巻を取り出し火を着けて吹かし始めた。
(#^ω^)「待て待てってこっちはどれだけ待っていると思っているんですかお!!」
( ´∀`)y━・~~~「………」
本部長は私の怒りの声を顔色一つ変えずに聞き流し、静かにこう発した。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:22:13.52 ID:nIKmUO6Y0
- ( ´∀`)y━・~~~「…君はもう帰りなさい。働き過ぎは良くないぞ。」
(#^ω^)「急に話をはぐらかさないでくださいお!
私は摘発の件について…」
( ´∀`)y━・~~~「君はかれこれ三ヶ月も家に帰っていないそうじゃないか。
かなり疲れているようだしちゃんと家族の所へも帰ってあげなさい。それじゃあ。」
(;^ω^)「待ってくださいお。まだ話は…」
本部長は一方的に会話を切り上げるとそのまま演説室を出て行ってしまった。
(;^ω^)「やはり駄目なのかお…」
またはぐらかされてしまった。
何度申し出ても返ってくる答えは少し待ての一点張り。
私は誰もいなくなった演説室に一人呆然と立ち尽くした後、一つの結論を出した。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:25:18.32 ID:nIKmUO6Y0
- ( ^ω^)「…帰ろう。」
ここで悩んでいても仕方がない。
家族の顔を見れば少しは気分が晴れるはずだ。
それに、丁度良い機会だろう。
私は演説室を出てオフィスへ向かった。
( ^ω^)「………」
川 ゚ -゚)「あら、上がりですか?」
私がデスクで帰りの仕度をしているとクーが声を掛けてきた。
( ^ω^)「あぁ、一日だけだが家族の所へ。」
川 ゚ ー゚)「そうですか、早く帰ってあげてください。」
( ^ω^)「すまないおクー。」
川 ゚ ー゚)「いいえ。」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:28:32.38 ID:nIKmUO6Y0
- 私は駐車場に止めてある車へ乗り込み早速家路に着いた。
( ^ω^)「………」
家族に会えるのが嬉しくないなどと言えば嘘になる。
だがこんな私を家族はどう思っているだろうか。
私は三ヶ月の間に六歳になった息子の誕生日を直接祝ってやる事が出来なかった。
電話越しで息子におめでとうと言う事しか出来ず、渡しそびれたプレゼントは今も車のトランクに眠っている。
( ^ω^)「…着いたお。」
そうこう考えている内に我が家へ到着。
私はトランクからプレゼントを取り出し家のインターホンを押した。
( ^ω^)つ
チャイム音が鳴りしばらくすると受話器を取る音が聞こえ、
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:31:24.12 ID:nIKmUO6Y0
- 『は〜い、だれですか?』
この声はビロードだ。
( ^ω^)「ビロード君にお届け物でーす。」
『パパです!!ママッ!!ママッ!!』
インターホンのカメラで私を確認したビロードが大声を上げる。
ξ゚听)ξ 「はいはい、落ち着きなさいビロード。」
( ><)「パパが帰ってきたんです!」
ツンが興奮するビロードをなだめながら玄関の扉を開いた。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:34:11.25 ID:nIKmUO6Y0
- ( ^ω^)「ただいま。」
ξ゚ー゚)ξ「お帰りなさい。」
ツンは優しい笑顔で私を迎えてくれた。
( ><)「パパ〜お帰りなさいなんです!」
( ^ω^)「ただいまビロード。」
すかさず走り寄って来たビロードを抱き上げる。
久しぶりに抱き上げたビロードは心なしか少し重くなったように感じた。
( ^ω^)「おっ!ビロード六歳になってさらに大きくなったお。
ほら、遅れちゃったけどプレゼントだお。」
( ><)「わ〜いなんです!!」
ビロードはプレゼントを受け取るやいなや早速包み紙を破りあらわになった箱を見てはしゃいだ。
( ><)「これは!新しい野球グローブなんです!!
パパありがとうなんです!!」
( ^ω^)「誕生日おめでとうビロード。」
ξ゚ー゚)ξ「良かったわねビロード。」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:37:11.65 ID:nIKmUO6Y0
- ( ^ω^)「ツン、ビロードごめんお…」
ξ゚听)ξ 「どうしたのブーン?」
( ^ω^)「なかなか家にも帰れず、ビロードの誕生日も祝ってやる事が出来なくて…」
ξ゚听)ξ 「仕方ないわよ、貴方は毎日毎日悪と戦っているんですもの。」
( ><)「パパはけいさつかんで悪い奴らをやっつけてるんです!!
パパは凄い人なんです!!パパは僕のヒーローなんです!!」
( うω;)「ツン、ビロード…」
ξ*゚听)ξ「な、なに泣いてるのよ。
ほら、お腹空いたでしょ?
シチューがあるから皆で食べましょ。」
( ^ω^)「あぁ、食べよう。」
( ><)「ママのクリームシチュー大好きなんです!」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:40:36.23 ID:nIKmUO6Y0
- ――VIPシティ郊外ウツダ邸――
VIPシティの街外れにあるひときわ目立つ大きな屋敷。
そこには若くして大企業の社長となった一人の青年と執事の老人が住んでいた。
('A`)「………」
月の光以外明かりのないバルコニーでドクオは一人何をするでもなく椅子に座りじっと丸い月を眺めていた。
/ ,' 3 「ドクオ様、また物思いにふけっていらっしゃったのですか?」
アラマキは運んできたスープをドクオに手渡し問い掛けた。
('A`)「今日は決して忘れ去れやしない日だからな…」
/ ,' 3 「旦那様の命日、ですな…」
('A`)「あぁ、今でも脳裏に焼きついているよ。
安らかな顔の父の亡骸は…」
/ ,' 3「ドクオ様…」
('A`)「………」
ドクオはあの時の事を再び思い返していた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:44:03.96 ID:nIKmUO6Y0
- ――2年前――
ドクオは厳格で真っ直ぐで正義感の強い父と心優しい母、執事のアラマキの許に生を受けた。
母はドクオがまだ五歳の頃に癌に侵され、闘病の甲斐なく幼少のドクオを置いて先に天国へ。
母を失い失意の底に沈むドクオ。
そんなドクオに父は失意の底から立ち直らせ強く生きて行けるようにと心身を鍛えるべく武術を教え込み、
ドクオを父同様正義感の強い真っ直ぐな男へと育て上げた。
立派に成長したドクオは父の会社を継ぐ事を夢見て大学へ進み、卒業式を父とアラマキに見届けてもらうのを心待ちにしていた。
しかし大学の卒業式の前日、強盗に襲われていた老人を助けようと立ち向かった父が強盗の凶弾に命を奪われてしまう。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:47:21.09 ID:nIKmUO6Y0
- ――VIP警察遺体安置所――
(;'A`)「ハァ、ハァ、父さんは!!」
/ ,' 3「ヒィ、ヒィ…だ、旦那様は!!」
大急ぎで遺体安置所に駆けつけてきたドクオとアラマキが息絶え絶えでブーンに尋ねた。
( ^ω^)「こちらです…」
ブーンはそう言うと担架に横たわった遺体袋のチャックを開き中を見せた。
(`-ω-´)
Σ(;゚A゚)「!!」
Σ/ ,゚ 3「!!」
あまりの驚きに声を失う二人。
悲報は事前に聞かされていたが、
こうして実際に遺体を目の当たりにしてしまっては現実を受け止めざる終えない。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:50:50.54 ID:nIKmUO6Y0
- ( ^ω^)「胴体に5発もの銃弾を受けており、我々が駆けつけた時にはすでに…」
('A`)「………」
魂の抜け殻となった最愛の人を呆然と見詰め続けるドクオ。
だがそれでいて何かを必死に堪えているようでもあった。
( ^ω^)「君のお父上はとても勇敢な方だった。
老人は助かったが、犯人はその後我々に追い詰められた所を銃で抵抗し射殺されたお。」
('A`)「………」
( ^ω^)「…ご冥福を、お祈りしますお。」
/ ,' 3「ありがとうございました。」
( ^ω^)「いえ…」
/ ,' 3「ドクオ様、行きましょう…」
今の放心状態のドクオには何を言っても分からないだろうと察したアラマキは、
ドクオを連れて一度帰宅する事を決めた。
('A`)「………」
アラマキに促されるままドクオは重い足取りで安置所を後にした。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/25(水) 23:54:41.90 ID:nIKmUO6Y0
- ――ウツダ邸――
ドクオは屋敷に帰ってからも食事を摂る事も睡眠をとる事もせず一人部屋でうな垂れ続けていた。
('A`)「………」
/ ,' 3「ドクオ様、お食事をお持ちいたしました。」
ドクオがベッドに腰掛け窓の外の月を呆然と眺めていると、
そこにオムレツと水を乗せた盆を持ってアラマキが入ってきた。
('A`)「…いらない」
/ ,' 3「左様でございますか。
お食事は机に置いておきますので、それでは…」
('A`)「待ってくれ!」
運んできた食事を置き部屋を去ろうとしたアラマキをドクオがとっさに呼び止めた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:01:03.53 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「アラマキ、僕は一体どうしたら…」
ドクオのその言葉を聞いたアラマキは意を決したかのように振り返り。
/ ,' 3「ドクオ様、お渡ししたい物がございます。」
上着のポケットから一枚の手紙を取り出しドクオに手渡した。
('A`)「これは?」
/ ,' 3「ドクオ様が大学をご卒業されたお祝いに旦那様が直接お渡しする予定だったのですが…
旦那様は不器用なお方でしたから、口では言えない感謝の意を手紙に綴ったのでしょう。」
('A`)「父さんの手紙…」
ドクオは封筒から手紙を取り出すと綴られている一文字一文字に目を凝らし食い入るように読み始めた。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:04:25.63 ID:xIw9sgs10
- 「ドクオへ、大学卒業おめでとう。
口で言うのはなんとも照れくさくてな、こんな形ですまん。
妻が亡くなってからお前は本当によく耐え強くなろうと努めてきたな。
私は憎まれる事も覚悟でお前を鍛えたが、お前は何一つ不満を述べずただひたすら私についてきてくれた。
口には出さなかったが私は本当にお前に感謝している。これは嘘偽りのない私の気持ちだ。
私は常々お前に言い聞かせてきたな。「本当の強さとは腕っ節の強さではなく心の強さだ。私が教えた武術は人を守る為に使え」と。
お前はその言葉通り弱気を労わる心と弱気を守る為に力を使う真っ直ぐな心の男に育ってくれた。
大学を卒業したら私の会社を継ぎたいと言ったが会社の事は気にするな。お前はお前の道を進みなさい。
お前がやりがいや生きがいを見出せる事を見つけ、それに全力を尽くして真っ直ぐ進んでくれる事。
そして誰かに助けを求められてもそ知らぬ顔をするような男にならない。それだけが私のお前への願いだ。
ドクオ、自分の為でも誰かの為でも良い。全力で生きろ。
最後に、大学卒業本当におめでとう。」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:06:39.23 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「………」
ドクオは呆然と手紙を見詰めたまま固まっていた。
/ ,' 3「旦那様はドクオ様の大学卒業を心から楽しみにしておられました。」
('A`)「違うよ父さん、僕は無理に会社を継ぎたいだなんて思っていないよ。
僕が父さんの会社を継ぎたいと言ったのは父さんみたいに…父さんみたいに立派な人になりたいからなんだ…」
/ ,' 3「そのお言葉を…旦那様がお聞きになられたらどれほどお喜びに…なられるか…」
アラマキは溢れ出ようとしている涙を必死に堪え震える声で呟いた。
('A`)「アラマキ…」
/ ,' 3「ドクオ様が天国の旦那様にして差し上げられる恩返しは悲しみに暮れる事ではなく全力で生きる事でございます。」
(-A-)「全力で生きる、か…」
('A`)「そうだよな。」
ドクオは自分の心が晴れて行くのを感じると元気良くベッドから立ち上がり、
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:09:16.34 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「何だか空腹だ。
このオムレツ頂くよ。」
机に置いてあるオムレツに手を伸し一口。
('∀`)「うん、美味い!!」
/ ,' 3「アラマキ特性野菜だけヘルシーオムレツでございます。」
('∀`)「また腕を上げたね。」
ドクオはそう言うとあっという間にオムレツをたいらげた。
('A`)「ふぅ、美味かった。そろそろシャワーを浴びて寝るよ。」
/ ,' 3「そうですな。明日は葬儀の手続きなどで忙しくなりますから。」
('A`)「あの…アラマキ、それは卒業式に出席してからでは駄目かな?」
ドクオのその問いにアラマキは、
/ ,' 3「いいえ、駄目なわけございません。」
満面の笑顔でそう答えた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:12:24.37 ID:xIw9sgs10
- ――現在――
/ ,' 3「あれから二年ですか。」
('A`)「もう二年か…
今までを振り返ってみると時の流れと言うのは本当にあっという間に感じるよ。」
/ ,' 3「振り返ると言えばそうそう、小中高と学生の頃のドクオ様は喧嘩ばかりするやんちゃ小僧で、
よく学校から呼び出しを受けておりましたな。」
(;'A`)「なんだい急にそんな昔の話…」
/ ,' 3「ですが喧嘩の理由は決まっていじめられている子や動物を助けてのものでした。」
(;'A`)「恥ずかしいから止めてくれって…」
/ ,' 3「喧嘩をしても旦那様には全く叱られずむしろ褒められておいでで。」
('A`)「喧嘩をして褒められるだなんて今思うと変な家庭だったかもね。」
ドクオは小さく笑い照れくさそうに言った。
/ ,' 3「今やドクオ様も二代目社長として立派に会社を支えられる程にご成長されました。」
('A`)「まだまだ周りに助けれてばかりのひよっこだけどね。」
/ ,' 3「ドクオ様はお若いのですから、まだまだこれからでございますよ。」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:15:12.26 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「あぁ、毎日が勉強だよ。」
/ ,' 3「もう冷えてまいりましたしそろそろお休みいたしましょう。
明日は早朝から会議の予定も入っておりますから。」
('A`)「そうだな。スープご馳走様、相変わらず美味しかったよ。」
/ ,' 3「それはようございました。さぁ、中へ入りましょう。」
('A`)「あぁ。」
ドクオが室内へ入ろうと椅子から腰を上げた時だった。
('A`)「ん?」
/ ,' 3「どうなさいました?」
('A`)「いや、今何かが羽ばたくような音が聞こえなかったかい?
何だか妙に聞き覚えのあるような音だった。」
/ ,' 3「はて?私には何も聞こえませんでしたが。」
('A`)「…ただの空耳か。」
外の冷たい風を肌に感じながら、ドクオはバルコニーを後にした。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:18:23.28 ID:xIw9sgs10
- ――ホライゾン家――
( ^ω^)「それじゃあ行ってくるお。」
ξ゚ー゚)ξ「行ってらっしゃい。身体にはくれぐれも気をつけてね。」
( ^ω^)「帰りはまた何時になるか分からないけど…」
私が申し訳なさそうにそう言うと、
ξ#゚听)ξ「だからそんな事気にしなくて良いの!!」
すかさずツンに一喝されてしまった。
(; ^ω^)「ごめんお…」
ξ゚听)ξ「でも、暇があったら必ずビロードに声聞かせて上げて。」
( ^ω^)「もちろん…」
( ^ω^)「ん?」
奥の廊下から何やら慌しい音が近づいてくる。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:21:13.49 ID:xIw9sgs10
- ( ><)「パパ〜ッ!行ってらっしゃいなんです!」
まだ早朝の5時だと言うのにビロードが私の元へと走り寄ってきたのだ。
( ^ω^)「まさかパパを見送るために起きて来てくれたのかお?」
( ><)「はいです!パパをお見送りするんです!」
( うω;)「ビロード…また帰ってくるまでママを頼むお。」
( ><)「はいです。ママをお守りするです!」
ξ゚听)ξ「ほらほら、遅刻しちゃうわよ。」
( ^ω^)「ツン、ビロード行ってくるお。」
ξ゚ー゚)ξ「行ってらっしゃい。」
( ><)「いってらっしゃ〜いなんです!」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:24:07.62 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「よし。」
私は庭に止めてある車に乗り込み家を出発した。
ξ゚ー゚)ξノシ
( ><)ノシ
ふとバックミラーを覗くと外に出てきたツンとビロードが遠ざかる私の車を見届けながら手を振っている。
( ^ω^)「ツン、ビロード、パパ頑張るからお。」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:27:41.07 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署――
[P]_
( ) 「おはようございますブーン警部補。」
( ^ω^)「おはようだお。」
受付の巡査官と軽い挨拶を交わした後、
自分のデスクへ着いた私は早速休んでいた間に上がった書類に目を通した。
( ^ω^)「いまだ進展はなし、か…
相変わらず尻尾を出さないお…」
( ´∀`)「やぁブーンおはよう。どうだったかね久しぶりの休暇は?
一日しか休んでいないようだが大丈夫なのかね?」
私のデスクへモナー本部長が尋ねて来た。
( ^ω^)「おはようございます。
いえ、おかげさまで妻と息子の顔を見ただけでもかなりリフレッシュ出来ましたお。」
( ´∀`)「それは良かった。出勤そうそうで悪いが早速事件だ。
ネラー通りのゴミ捨て場から死体が発見された。」
( ^ω^)「また死体ですか…」
( ´∀`)「すまないが至急出動してくれ。」
( ^ω^)「了解しましたお。」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:31:22.64 ID:xIw9sgs10
- 川 ゚ -゚)
駐車場へ向かうと既にクーがパトカーの運転席で待機しており
私は急いでパトカーに乗り込んだ。
( ^ω^)「遅れてすまないお。」
川 ゚ -゚)「いえ、私が早く来すぎただけですから。
それより一日の休みで随分リフレッシュ出来たみたいですね。前は疲労困憊な顔してたのに。」
( ^ω^)「やはり家族の力は絶大だお。」
川 ゚ -゚)「私も素敵な恋人を作って警部補のような家庭を築きたいです。」
( ^ω^)「クーならいつか見つかるお。さ、無駄話はやめて急ぐお」
川 ゚ -゚)「了解。」
私達は現場へ急行した。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:35:08.09 ID:xIw9sgs10
- ――ネラー通りゴミ捨て場――
( ^ω^)「VIP警察のブーン警部補だお。」
川 ゚ -゚)「同じくVIP警察のクール捜査官です。」
[P]_
( ) 「どうぞ。」
私達は警備の巡査官にバッジを見せ現場に足を踏み入れた。
(‘;)_-;メ)
川;゚ -゚)「酷い…」
想像を絶する暴行を受けたのだろうなぶり殺しにされた遺体の顔は血まみれで、
風船のように酷く腫れ上がっていた。
右手と左手の指も全て切断されている。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:38:12.08 ID:xIw9sgs10
- [P]_
( ) 「恐らくワカッテマスファミリーかと。」
( ^ω^)「だろうお。」
川 ゚ -゚)「それでこの男性は?」
[P]_
( ) 「マフィアを追っていたジャーナリストのようです。
わざとゴミ捨て場に遺体を放置したのは他者への見せしめの為でしょう。
遺留品はこの写真一枚だけでした。」
巡査官が私に一枚の写真を手渡した。
写真には笑顔の男性と女性、そして幼い女の子が仲睦まじそうに写っていた。
( ^ω^)「家族の写真かお…」
[P]_
( ) 「そのようです。」
( ^ω^)「…引き続き捜査を続けてくれお。」
[P]_
( ) 「了解しました。」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:41:11.67 ID:xIw9sgs10
- 川 ゚ -゚)「…こんな事、何時まで続くのでしょうか?」
パトカーへ戻るなりクーが私に問いかけてきた。
( ^ω^)「分からない、だがそれを終わらせるのが我々の使命だお。」
川 ゚ -゚)「本当に終わるのでしょうか…」
( ^ω^)「あぁ、終わらせてみせるお。行こう。」
川 ゚ -゚)「はい。」
私達は再び署へと戻った。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:44:17.30 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署――
署に着いた我々は早速署長に現状を報告。
( ´∀`)「やはりワカッテマスファミリーだったか。」
( ^ω^)「はい、きっと奴らの情報を握りはしたものの、バレた所を捕まり報復を受けたのでしょう。
ジャーナリストの握った証拠も隠滅されたかと…」
( ´∀`)y━・~~~ 「相変わらずの横着無人さだな。」
本部長はそう言いながら葉巻きに火を着けプカプカと吹かし始めた。
むせ返るような煙の匂いが私の鼻を突く。
私はこの臭いが大嫌いだ…
( ^ω^)「…我々は被害者のご遺族に会ってきます。」
( ´∀`)y━・~~~ 「頼む。」
( ^ω^)「それでは。行くおクー。」
川 ゚ -゚)「はい。」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:47:28.40 ID:xIw9sgs10
- ――クオリティエンタープライズ――
(#'A`)】「ですから、その件に関しては何度もお断り申し上げていますでしょう。
何度言われても答えは同じです。それでは!!」
('A`)「はぁ…」
ドクオは受話器を置くと小さく溜息を漏らした。
('A`)「全く、何度も何度もしつこい人達だ…」
('A`)「ん?」
一人社長室で愚痴を溢していると不意にドアをノックする音が。
('A`)「どうぞ。」
(-@∀@)「失礼します。」
顔を覗かせたのはクオリティエンタープラズ副社長兼開発事業部主任アサピー。
先代であるドクオの父とは旧友の仲であり、アサピーは企業面においてドクオをサポートしている。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:51:17.34 ID:xIw9sgs10
- (-@∀@)「お冠のようですね。」
('A`)「アサピーか。
あぁ、何度断ってもまた装備や武器を提供してくれとしつこくてね…」
(-@∀@)「我が社の技術力の高さには軍も一目置いていますからね。
先代と私は人々の為になるかと思い軍事業にも携わりましたが、
後に我が社の装備や武器が間違った方向に使われている事に気付き直ぐに手を引きました。」
('A`)「確かに君の考案、開発する装備や武器は芸術品と言っても過言ではないよ。
しかし僕はその高い技術力を人々を傷つける為ではなく人々を守り救う為に使いたいんだ。」
(-@∀@)「私も同じです。今でもあの時の過ちには後悔していますから…」
('A`)「アサピー…」
(-@∀@)「おっとすみません、こんな陰気臭い話をしてしまって。
そうだ、社長に見てもらいたい物があるのですがラボにお越し頂けませんか?」
('A`)「是非見せてくれ。」
(-@∀@)「それでは行きましょう。」
ドクオとアサピーは社長室を出るとエレベーターで地下の開発事業部のラボへ向かった。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:54:36.32 ID:xIw9sgs10
- ――クオリティエンタープライズ開発事業部ラボ――
クオリティ社の地下にある広大なラボ。
ここでは日常生活で役立つ携帯電話やパソコンなどの電子機器はもちろん安全な車作り。
消防署や慈善団体とも提携を結び救済救命機器などの様々な発明がアサピーにより開発考案され世に送り出されている。
(-@∀@)「こちらです。」
アサピーに案内されるままドクオは開発事業部の車の走行テスト場へ。
テスト場とは言っても特別コースが敷かれている訳でもなくただの殺風景な広間である。
('A`)「見せたい物と言うのは車の事か。」
テスト場にはまだ明かりが灯っておらず、
ドクオには広間に広がる暗闇しか窺う事が出来ない。
(-@∀@)「ただの車ではありませんよ。」
アサピーがテスト場の明かりのスイッチを押すとその物体が姿を現した。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 00:58:00.96 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「これは…」
(-@∀@)「なんだか分かりますか?」
('A`)「戦車、いや装甲車かな?」
ドクオの目に飛び込んできたのはまるで戦車とも装甲車とも見て取れる程重厚な車だった。
全体を覆う装甲と漆黒のボディ、50cm以上はあろうかと言う大きなタイヤが圧倒的な存在感を醸し出している。
(-@∀@)「ええ、私はこの重装甲車を「タンブラー」と名付けました。」
('A`)「タンブラーとは、コップと言う意味かい?」
(-@∀@)「いいえ、「曲芸師」と言う意味でのタンブラーですよ。」
('A`)「この無骨なデザインからしてとても曲芸師には見えないがね…」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:01:15.25 ID:xIw9sgs10
- (-@∀@)「確かにそう思われても仕方ありませんが、まぁ聞いてください。
このタンブラーは全地形に対応する前方二輪、後方四輪の計六輪のタイヤで走行し、
5,7リッターエンジンの搭載により時速を200キロまで出す事が可能なのです。」
('A`)「そいつは凄い。」
(-@∀@)「他には見てお分かりのように搭乗者を衝突の衝撃から守る為の装甲が全体に施されており。
重量2300キロのタンブラーが200キロものスピードを出せるのは、
車体後部に付いている複数のフラップ(高揚力装置)が大きく作用しているからなのです。」
('A`)「フラップとは飛行機に付いているあれか。」
(-@∀@)「その通り。フラップの働きにより車体を浮き沈みさせて速度を自在に変えるのです。」
('A`)「流石だよアサピー。それにしてもこんな代物何時の間に作っていたんだい?」
(-@∀@)「元は軍隊用の車両でしてね。実は先代がまだご存命だった頃に作った物なのですよ。」
('A`)「こんな物があったなんて知らなかったな。」
(-@∀@)「軍事業から手を引いて以来ずっと封印していたのですが、
ふと救済用に逆利用できないかと思いまして社長にお披露目しようかと。」
('A`)「そうだったのか。」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:04:22.87 ID:xIw9sgs10
- (-@∀@)「元軍隊用なのでタンブラーの前方には装備が三つ内蔵されています。
一つはグラップリングフック発射装置(ガス式磁気鉤縄発射装置)
二つ目は40mmブラスト砲
三つ目は50口径マシンガン
そして後方からは撒きビシをばら撒く事が出来ます。」
(-@∀@)「グラップリングフック発射装置はフックの付いたケーブルを飛ばし、
他の車両を引っ張る、緊急停止、方向転換など用途は様々。
ケーブルはタンブラーの重量2300キロを支える事が出来るほど頑丈に出来ています。」
(-@∀@)「40mmブラスト砲は乗用車一台くらいなら軽く吹き飛ばす程の大火力の兵器で、
左右に二門装備され、走行の妨げになる障害物の排除などに使用します。」
(-@∀@)「そしてこちらも左右に二門装備されています50口径マシンガンですが、
こちらは完全に対人用なのでもう使う事はありませんね。」
(-@∀@)「後方の撒きビシは追跡してくる車両等の追跡を絶つ為に使います。
これももう使う事はありませんが。」
('A`)「確かに「曲芸師」だな。」
(-@∀@)「お気に召しましたか?」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:07:12.87 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「あぁ、素晴らしいよ。
これを武器を取り外して災害用に大量生産すれば多くの救命活動に貢献出来るはずだ。」
(-@∀@)「その方がこの子も喜ぶでしょう。」
(-@∀@)「ですが…」
('A`)「何か問題が?」
(-@∀@)「これを一台作るのにも物凄い費用が掛かるのです…」
('A`)「そう言う事か…
社長とは言え僕一人の独断でOKを出すわけにはいかないし、
経理や社員達と話し合うしかないな。まぁ、きっとみんな分かってくれるさ。」
(-@∀@)「だと良いのですがね。」
アサピーはそう言いながらテスト場の明かりのスイッチを押し明かりを消した。
テスト場の明かりが消えると、漆黒の曲芸師は再び闇と一体化しその姿は見えなくなった。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:11:02.75 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「そう言えば今は何時だろうか。」
テスト場を出たドクオは腕時計を見て時間を確認した。
('A`)「もう直ぐ一時になるな。」
(-@∀@)「もうそんな時間ですか。」
('A`)「そろそろ帰ろう。アサピーももう切り上げてくれ。」
(-@∀@)「分かりました。ですがまだ片付けがありますので社長はお先にどうぞ。」
('A`)「それじゃあ僕も手伝うよ。」
(-@∀@)「いえ、ただこれを仕舞うだけですから。」
アサピーはそう言うと机に置いてある一つのジュラルミンケースを持ち上げた。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:14:28.53 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「それはなんだい?」
(-@∀@)「これもタンブラーを蔵出しした時に出てきた軍用装備品でしてね。
軍隊の潜入用装備なんですよ。」
('A`)「潜入用と言う事は隠密に行動する為の物か。」
(-@∀@)「そうです。主に夜間に活用する物でして、
他には防弾スーツなどもありますがご覧になられますか?」
('A`)「いや、アラマキを待たせると悪いしまたの機会に必ず見させてもらうよ。」
(-@∀@)「分かりました。」
('A`)「それじゃあお疲れ様。アサピーもあまり頑張り過ぎないでくれよ。」
(-@∀@)「社長程ではありませんよ。御機嫌よう。」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:18:22.20 ID:xIw9sgs10
- ――クオリティエンタープライズ前――
('A`)「もうこんな時間か…」
会社を出た頃には時刻はもう深夜の一時を過ぎており。
辺りは街頭の明かり以外光がなく、薄暗い闇が広がっている。
【('A`)「アラマキ、迎えを頼むよ。」
ドクオは携帯電話でアラマキに連絡した。
『ただ今向かっております。』
【('A`)「それじゃ。」
待つこと四分。
/ ,' 3「ドクオ様、お迎えに上がりました。」
('A`)「ありがとうアラマキ。」
迎えに来たアラマキに礼を言い車の後部座席に乗り込む。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:21:45.48 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「いや〜、何時もながら来るのが早くて関心するよ。」
/ ,' 3「旦那様がまだご存命だった頃も毎日送り迎えをしていましたからな。」
('A`)「通りでね。たまには他の社員のように徒歩や電車通勤なんてのも良いかなと思っているんだけど。」
/ ,' 3「ドクオ様は私の数少ない役目をお奪いになられるのですか?」
悪戯な笑顔を浮かべたアラマキがそう問いかけると、
('∀`)「そんなんじゃないさ、冗談だよ。」
ドクオもまた悪戯な笑顔で返答してみせた。
/ ,' 3「最近は毎晩遅くまでお仕事に励んでおいでですが、私はドクオ様のお身体が心配でなりません。」
('A`)「会社もやっとまた軌道に乗り始めてきたからな。」
/ ,' 3「たまにはフォックス様に全てお任せしてみてはいかがでしょう?」
('A`)「フォックスか、彼は父の無二の親友だしこんな若造の僕のアシストにも全力を尽くしてくれている。
確かに彼になら安心して任せられそうだが、やはり甘えてしまっては駄目だ。」
ドクオはそう言い終わると席の隣に置かれていた新聞を手に取った。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:25:13.63 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「昨日の夕刊か。」
新聞を開き記事を流し読みしているとある記事に目が留まった。
【今朝未明チャンネル地区ネラー通りのゴミ捨て場にて、
ジャーナリストのネクラ・ヒッキー氏(二十五歳)の遺体が発見された。
眼底骨と顎と鼻の骨折や内出血による腫れなどの外傷が見られ、
死因は過剰な暴行によるショック死と見られている。
ヒッキー氏がマフィアを追っていた事もあり、警察は事件はマフィアとの関連性が強いと見て調べを進めている。】
('A`)「………」
/ ,' 3「どうなさいました?どこかお体でも?」
バックミラー越しにドクオの暗い表情が見えたアラマキが心配そうに問いかけた。
('A`)「いや、大丈夫だよ…」
/ ,' 3「それなら良いのですが。」
('A`)「………」
ドクオは窓の外に視線を移し、
昼間の賑やかさが嘘のように静まり返った街の夜景をじっと眺めた。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:28:13.78 ID:xIw9sgs10
- / ,' 3「………」
('A`)「………」
車内はいつの間にか沈黙に包まれ、聞こえるのは車のエンジン音だけ。
アラマキはラジオをつける事もせず真顔で運転に専念し、
ドクオは人形のように固まったまま窓の外の流れる夜景を眺めていた。
/ ,' 3「………」
会社から出発して二十分程、
快調に車を運転していたアラマキがブレーキを踏み、ようやく車が信号で停車した。
('A`)「………」
/ ,' 3「………」
信号待ちの間も続く沈黙。
ドクオは相変わらず窓の外を眺め、アラマキは信号を見詰めていた。
信号待ちの間の車内はまるでそこだけ時が止まっているかのような錯覚に陥る程、
二人は微動だにしなかった。
/ ,' 3「………」
心なしか長く感じた信号が青に変わり、
アラマキがアクセルを踏もうとペダルに足を掛けた時だった…
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:31:35.00 ID:xIw9sgs10
- 「キャ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」
(;゚A゚)「!!」
/ ,゚ 3「!!」
不意に響いた悲鳴が一瞬にして沈黙を破った。
(;'A`)「今誰かの悲鳴が聞こえなかったか?」
/ ,' 3「えぇ、聞こえました…」
('A`)「声の大きさからして近くみたいだな。何かあったのかも知れない。」
/ ,' 3「警察に電話をした方がよろしいでしょうか。」
('A`)「ちょっと見てくる!」
/ ,' 3「ドクオ様いけません!!」
アラマキの制止も空しくドクオは車を飛び出し薄暗い歩道へ駆けて行ってしまった。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:35:26.80 ID:xIw9sgs10
- (;'A`)「ハァ、ハァ、どこだ?」
悲鳴の聞こえた場所を見付けるべく、
聞こえた方角を頼りにアパートなどの建物が立ち並ぶ歩道を駆け回る。
「大声出すんじゃねぇっ!!マジでぶっ殺すぞ!!」
Σ('A`)「あそこかっ!!」
路地裏の方から怒号が聞こえドクオはその場所へ急いだ。
(;、;トソン「お願いよ、お願いだから命だけは…お金ならあげるから…」
( ▼皿▼)「うるせぇ!!金以外のネックレスや指輪も寄こせっ!!」
( ^Д^) 「早く渡しなよぉ〜♪」
(;、;トソン「は、は、はい…」
女性は震える手でネックレスと指輪を外し強盗二人組みに差し出した。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:39:07.58 ID:xIw9sgs10
- ( ▼皿▼)「へへっ、こいつぁ高く売れそうだぜ」
( ^Д^)「なぁなぁ、コイツ結構美人じゃね?
ついでに俺達で姦わしちまおっか。」
( ▼皿▼)「おっ!良いねぇ。んじゃ次はお楽しみタイムといきますか。」
(;、;トソン「嫌よ。金品は全部渡したんだから許してよ…」
( ^Д^) 「へへへ、妊娠しても恨まないでね♪」
(;、;トソン「嫌、嫌…」
力なくへたり込み震え続けている女性に手を伸ばす強盗二人組みだったがそこへ。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:42:14.76 ID:xIw9sgs10
- (#'A`)「やめろっ!!」
Σ(;▼皿▼)「!!」
Σ(;^Д^)「!!」
(#'A`)「お前達なにをしているんだ!!」
( ^Д^)「んだよ誰かと思えばただのリーマンじゃねぇ〜か。
ビビらすんじゃねぇよ。」
( ▼皿▼)「正義の味方参上ってか。」
二人組みは小馬鹿にしたようにドクオを笑った。
(#'A`)「さっさとその女性から離れろっ!!」
((;、;トソン「た…助け…」
( ▼皿▼)「あのね坊ちゃん、正義の味方気取るのも良いけどさ。
威勢が良いだけじゃこの世の中生き残れないのよね。」
( ^Д^)「そうそう、それにこれ以上邪魔するならさ、殺すよ?
ほら、俺達が持ってるこれ分かるよね?
ピ・ス・ト・ルだよ?」
強盗の一人がドクオに銃口を向けた。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:46:50.52 ID:xIw9sgs10
- (;'A`)「うっ…」
m9(^Д^)「分かったんならさっさと帰ってオナニーでもしてな。
あ、なんなら俺達がお楽しみしてるのを見ながら扱いてても良いよ。」
(;'A`)「くそっ…」
( ▼皿▼)「おっとその前に兄ちゃんも金目の…」
( ▼皿▼)「ん?」
パトカーのサイレンらしき音がこちらに近づいてくる。
(;^Д^)「ちっ!やべぇづらかんぞっ!!」
(; ▼皿▼)「糞がぁ〜」
音に気付いた二人組みは奪った金品の入った鞄を抱え慌しい足取りで退散して行った。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:50:24.11 ID:xIw9sgs10
- [P]_
煤i ) 「いたぞっ!!大丈夫ですか!!」
[P]_
( ) 「二人とも怪我は!?」
駆けつけた警官二人がドクオと女性を見つけるなり叫んだ。
(;'A`)「え、えぇ、それより彼女を。」
((;、;トソン「うぅぅ…」
よほどの恐怖だったのだろう女性はまるで極寒に晒されているかの如く酷く震え続けていた。
[P]_
( ) 「もう大丈夫ですからね。」
一人目の警官が優しく声をかけながら女性をパトカーへと乗せた。
(;'A`)「………」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:54:51.79 ID:xIw9sgs10
- [P]_
( ) 「貴方はクオリティエンタープライズの社長ドクオさんですね?」
二人目の警官が呆然と立ち尽くしていたドクオに問いかけた。
(;'A`)「はい、そうです。」
[P]_
( ) 「あの二人組みは過去にも何度も強盗殺人を犯していまして。
貴方が我々が来るまでに二人を引き止めていなかったら恐らくあの女性も…」
(;'A`)「いえ、僕は何もしていませんよ…」
[P]_
( ) 「女性は我々が責任を持って保護し家に送り届けますので。」
[P]_
( )ゝ 「それでは。」
二人目の警官はドクオに一礼すると女性を乗せたパトカーに乗り込みその場を去って行った。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 01:58:38.12 ID:xIw9sgs10
- (;'A`)「………」
(#'A`)
ドクオはその場に立ち竦みしばらく放心した後、
今度は胸の底からふつふつと怒りの感情が湧いてくるのを感じていた。
(#'A`)(僕は、僕は、なんて無力なんだ!!)
強盗の銃に何も出来なかった無力な自分が憎い。
過去にこれほどまで自分を憎んだ事があっただろうか。
ドクオは止め処なく湧いてくる怒りの感情を必死に抑えていたが…
(#'A`)「くそっ、くそっ、くそっ!!
結局僕は誰も守れやしないじゃないか!!」
堪らずドクオは叫んだ。
己の中で渦巻く怒りを吐き出すかのように。
/ ,' 3「ドクオ様?」
(#'A`)「畜生畜生っ!!」
/ ,' 3「ドクオ様!!落ち着いてください!!」
Σ(;'A`)「はっ!!ア、アラマキ…」
ドクオはアラマキの声で我に返った。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:02:25.77 ID:xIw9sgs10
- / ,' 3「ドクオ様、心の強さですぞ。感情に飲み込まれてはなりません。」
(;'A`)「すまない…アラマキが警察を呼んだんだろ?」
/ ,' 3「そうです。」
(;'A`)「………」
/ ,' 3「勇敢と無謀は全く別です。
旦那様譲りの正義感は素晴らしいですが命を落としてしまっては元も子もございません。」
(;'A`)「だけど…」
(#'A`)「だけどあのまま見過ごすなんて僕には絶対に出来ない!!
父さんだって僕と同じ事をするはずだ!!」
/ ,' 3「もし少しでも警察の到着が遅れていたら、
ドクオ様も旦那様のように命を落とされてしまわれる所だったのですよ?」
(#'A`)「じゃあなんだ!
アラマキは父さんが無謀者の馬鹿だったと言いたいのか!?」
/ ,' 3「そ、そのような事は…」
('A`)「…もういい、帰ろう。すまなかったアラマキ。」
/ ,' 3「いえ…」
心にわだかまりを残したまま、ドクオは無言で車に乗り込み帰路に着いた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:43:18.92 ID:xIw9sgs10
- ――ウツダ邸――
('A`)「ハァ…」
居間のソファーに座り暖炉の火を眺めながら溜息をつくドクオ。
/ ,' 3「またそんなに思い詰めないでくださいませ。ドクオ様の悪い癖です。」
('A`)「分かっているが…」
/ ,' 3「無力とおっしゃいましても相手は銃を所持していたのですから、
動けなくなってしまったのも無理ございません。」
('A`)「銃か…父さんは銃に殺された。
人はあんな物を持っているだけで強くなった気になれるのか?
銃は人を恐怖に陥れ、服従させ、簡単に命を奪ってしまう…」
/ ,' 3「そうですな。銃は使い道によって様々な顔に変化しますが、
この街では悪用されてばかりなのが現状です…」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:44:55.20 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「僕は、自分でも気付かない内に見て見ぬふりをしていたのか知れないな…」
/ ,' 3「どう言う意味でございますか?」
('A`)「いや、なんでもない。朝も早いしもう寝る事にするよ。」
/ ,' 3「さようでございますか。」
('A`)「おやすみアラマキ。」
/ ,' 3「おやすみなさいませ。」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:47:17.96 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「僕は、自分でも気付かない内に見て見ぬふりをしていたのか知れないな…」
/ ,' 3「どう言う意味でございますか?」
('A`)「いや、なんでもない。朝も早いしもう寝る事にするよ。」
/ ,' 3「さようでございますか。」
('A`)「おやすみアラマキ。」
/ ,' 3「おやすみなさいませ。」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:50:00.58 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察遺体安置所――
(‘;)_-;メ)
(;、;*川「そんな…どうして…」
被害者の妻は嗚咽を漏らし震える声で呟いた。
無残な姿となった最愛の人を見詰めながら。
(;、;*川「どうして私達を置いて逝ってしまったの…」
*(‘‘)*「ママ、どうしてないてるの?パパがどうかしたの?」
父の死をまだ理解出来ないのだろう被害者の娘さんが母親に無邪気な質問を投げかける。
(う、;*川「…パパはね…パパは…」
(;、;*川「うぅ…」
*(‘‘)*「?」
川 ゚ -゚)「お譲ちゃん、ちょっと外に出ましょうか。ジュースでも飲みましょ。」
*(‘‘)*「う、うん…」
状況を察したクーが娘さんを安置所の外に連れ出した。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:53:56.41 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「どうぞ。」
私は涙で顔がグシャグシャになった奥さんにハンカチを手渡した。
(う、;*川「ありがとうございます…」
( ^ω^)「いえ、私にも家族がいる身ですからあなたのお気持ちはよく分かりますお。
娘さんはまだ三歳でしたか。」
('、`*川「えぇ、一週間後には幼稚園の入園式が控えていまして…」
( ^ω^)「ご主人はさぞかし楽しみにしておられた事でしょうね。」
('、`*川「それはもう、とても楽しみにしていました…とても…」
(;、;*川「毎日カメラを磨きながら楽しみだ楽しみだと口癖のように言っていたんです。なのにこんな…」
( ^ω^)「ジャーナリストとしても有能な方だったようで。」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:56:37.74 ID:xIw9sgs10
- (;、;*川「とても正義感の強い人で、街の平和の為に決定的な証拠を得ようと常にマフィアを追っていました。
仕事に情熱を燃やし娘の良い父親でもあった主人は私達家族の誇りです。
だけどやはりマフィアを相手にしての仕事ですから不安がないと言えば嘘になります。
そして今日その不安が現実のものとなってしまいました…」
( ^ω^)「………」
(;、;*川「私は自分が憎いんです。どうして主人にもうマフィアと関わるのは止めるように言えなかったのか…
私が主人を殺してしまったのではないか。私が娘から父親を奪ってしまったのではないかと…」
( ^ω^)「奥さん、あなたのせいでは決してありません。
娘さんもこれから嫌でも父親の死を理解しなければならない日が来ます。
亡くなったご主人の為にもあなたがしっかり娘さんを支えてあげないと。」
(う、;*川「ごめんなさい私ったら…
そうですね。私がしっかりしないといけませんね…」
('、`*川「夫を置いて行くのは後ろ髪を引かれますが、
娘が待っているようなので今日は一度帰ろうと思います。」
( ^ω^)「そうですか。」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 02:59:26.74 ID:xIw9sgs10
- *(‘‘)*「パパはわるいひととたたかってるんだよ。すごいでしょ〜!」
川 ゚ ー゚) 「えぇ、本当に凄い。」
クーと娘さんは安置所を出て直ぐの廊下にあるベンチに腰掛けながら会話を弾ませていた。
オレンジジュースの入っていた空の紙コップを右手で握り締めながら嬉しそうに父親の事を話す娘さん。
*(‘‘)*「さっきママないてけどどうしてないてたのかな?おねえちゃんわかる?」
川 ゚ -゚)「…何時か必ず分かる日が来るわ。」
*(‘‘)*「それはいつ?」
川 ゚ -゚)「それは分からないけど、必ずくるわ。」
*(‘‘)*「へんなの〜」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:04:04.40 ID:xIw9sgs10
- ('、`*川「ヘリカル、帰るわよ。」
*(‘‘)*「あ!ママだ!!ママ〜!!」
娘さんは迎えに来た母親の元へ駆け寄るとその足元に抱きついた。
('、`*川「走ったり大声出したりしないの。周りの迷惑になるでしょ?」
*(‘‘)* 「ごめんなさ〜い。」
('、`*川「どうもありがとうございます。この子何かご迷惑をお掛けしませんでしたか?」
川 ゚ ー゚) 「いいえ、とても良い子でしたよ、ね?」
*(‘‘)* 「いいこにしてたよ〜」
('、`*川「そうでしたか。ヘリカル良い子にしてたのね、偉い偉い。」
奥さんはそう言うと足元に抱きついたままの娘さんの頭を優しく撫でた。
*(*‘‘)* 「えへへ。」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:07:20.86 ID:xIw9sgs10
- ('、`*川「本当にどうもありがとうございました。」
( ^ω^)「何かありましたら何時でもご連絡を。」
('、`*川「分かりました。ほら、ヘリカルちゃんとお礼を言いなさい。」
*(‘‘)*「おねえちゃんジュースありがとう。」
川 ゚ ー゚) 「どういたしまして。」
('、`*川「それでは失礼いたします。」
*(‘‘)*ノシ「おじちゃんおねえちゃんばいば〜い。」
奥さんに手を引かれながら笑顔で私とクーに手を振る娘さん。
( ^ω^)ノシ「お気をつけて。」
川 ゚ ー゚)ノシ「バイバイ。」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:09:12.11 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「………」
私は親子が帰った後も署の入り口で立ち尽くしていた。
娘さんの笑顔と奥さんの涙が脳裏に焼きついている。
まだ何も知らない事はあの子にとって救いなのだろうか
奥さんもまた娘さんに父親の死を分からせなければならない時が来る。
ある意味で被害者は家族に一つの罪を残してこの世を去ってしまったのかも知れない。
( ^ω^)「………」
川 ゚ -゚)「警部補?」
( ^ω^)「すまないお。何だか思う所があって。」
川 ゚ -゚)「そうでしたか。奥さんと娘さんにはこれからまた辛い日が来るのでしょうね…」
( ^ω^)「…だろうお。
今日の昼は彼に会いに行かないといけないからすまないが後を頼むお。」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:11:05.63 ID:xIw9sgs10
- 川 ゚ -゚)「分かりました。それとこの携帯警部補のですよね?」
クーはそう言うとスーツの上着ポケットから私の携帯を取り出した。
( ^ω^)「そうだけど…」
(;^ω^)「あれ?」
私は慌ててスーツの上着とズボンのポケットを探ったが見つかるはずもなく。
(;^ω^)「何時の間になくしてたんだお…」
川 ゚ -゚)「仮眠室に置いてありましたよ。今度から気をつけてください。」
(;^ω^)「すまないおクー。」
川 ゚ -゚)「それでは。」
クーは私に携帯を手渡すとそのままオフィスの方へと去って行った。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:15:03.30 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「私とした事が、ん?」
ふと帰ってきた携帯に目をやると留守電が一軒入っている。
多分家族からだろう。
( ^ω^)】
『パパ〜!!
今日サッカーの試合で二点もとって大活躍したんですよ!!
きっとパパがくれたバットとグローブで練習したからなんです。
パパ、帰ってきたら一緒に野球するんです!約束です!!
お仕事頑張ってください!
ブーン、身体は大丈夫?
あまり無理はしないでね…なんて言っても無理するのが貴方だものね。
何時でも帰りを待ってるからねブーン。』
( ^ω^)】「ツン、ビロード…」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:18:14.27 ID:xIw9sgs10
- ――クオリティエンタープライズ――
(‘_L’)「今年はZIP社と提携を結び慈善事業の規模をさらに広げてみるのはどうでしょうか?」
('A`)「………」
部下の提案が耳に入っているのか、
ドクオは上の空と言った感じで呆然と会議室の窓の外の青空を眺めていた。
(;‘_L’)「社長?」
Σ('A`)「ん?」
(;'A`)「あぁすまない。なんだったかな?」
(;‘_L’)「ZIP社との提携の件についてです。」
('A`)「ZIP社は我が社同様老舗の会社で信用性があるがもう少し様子を見たい。
向こうも提携を望んでいるようだが互いがより良い関係を築くにはもっと互いの事を知る必要があるからな。」
(‘_L’)「わかりました。」
('A`)「会議はここまでにしよう。みんな各自の持ち場に戻ってくれ。」
会議室に集まった社員達は各自の持ち場へ戻って行った。
('A`)「ハァ…」
社員達が出て行くのを見届けた後ドクオは再び窓の外に視線を移し溜息をついた。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:21:00.99 ID:xIw9sgs10
- (-@∀@)「悩み事ですか?」
会議室に残っていたアサピーがドクオに声を掛けた。
('A`)「あぁ、大した事ではないんだが。」
(-@∀@)「私で良ければ聞きますよ?」
('A`)「…そうだな。変な事を聞くが、
もし君が銃を持った相手に闘いを挑まなくてはならなくなったらどうする?」
(-@∀@)「そうですね。私なら、予め戦うような状態に陥らないようにします。」
('A`)「どうしても戦わなければいけなかったら?
しかも一人で。」
(-@∀@)「…それなら、それ相応の装備が必要ですね。」
('A`)「それ相応の装備とは例えば?」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:22:35.54 ID:xIw9sgs10
- (-@∀@)「頑丈な防弾スーツなどでしょうか。」
('A`)「頑丈な防弾スーツか…」
(-@∀@)「急にどうなさいました?」
('A`)「いや、ちょっとね。それよりその頑丈な防弾スーツと言う物の事なんだが。」
(-@∀@)「ありますよ。前の深夜に言っていた防弾スーツの事ですがね。」
('A`)「そういえば僕自身が見せてくれと言っていたっけ。」
(-@∀@)「ご覧になられますか?」
('A`)「もちろん。」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:25:03.45 ID:xIw9sgs10
- ――開発事業部ラボ――
(-@∀@)「こちらです。」
アサピーはドクオをラボ内にある大きなロッカーの前に案内した。
('A`)「この中にあるのかい?」
(-@∀@)「えぇ、今開けますので。」
頑丈そうなロッカーの鍵を開け扉をひらくと、
中には全身黒尽くめのボディスーツ一式と様々な装備が立て掛けられていた。
('A`)「これが…」
(-@∀@)「ではご説明しましょう。」
アサピーはそう言うと立て掛けれているスーツの大胸筋部分を二度とノックした。
屈強な人間の大胸筋と腹筋の形が模られているそれは、見た目だけでもその頑丈さがうかがい知れる。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 03:28:50.66 ID:xIw9sgs10
- (-@∀@)「こちらのアーマーはケブラー繊維とカーボンファイバーで出来ていて、
何重にも織り重なったケブラー繊維が体を防護し、
カーボンファイバーが耐久性の強化と耐熱の役割を果たします。」
('A`)「耐久性はどのくらいなんだい?」
(-@∀@)「丈夫なケブラー繊維の二重織りで衝撃に強く、ナイフでも破れません。」
('A`)「耐久性は文句なしだな。」
(-@∀@)「ケブラー繊維の強度は鋼鉄の五倍ですからね。9mm程度ではびくともしませんよ。」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:00:45.07 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「胴体以外のスーツの腕や脚部分はゴムで出来ているようだが。」
(-@∀@)「胴体程の耐久性はありませんが、丈夫で柔らかいゴム素材を使っているので動きやすいですよ。
ウェットスーツのような感覚で身体にフィットします。」
('A`)「このスーツもタンブラー同様また再利用出来ると思ってとっておいたのかい?」
(-@∀@)「そうです。」
('A`)「…アサピー。」
(-@∀@)「なんでしょう?」
('A`)「このスーツを貸して欲しいと言ったら駄目かな?」
(-@∀@)「構いませんが、何に使うおつもりで?」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:05:17.68 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「えぇと…探検、かな…」
(-@∀@)「探検ですか。」
('A`)「そうだ。」
(-@∀@)「分かりました。どうぞお持ち帰りください。」
('A`)「良いのかい?」
(-@∀@)「私は社長の趣味にどうこう言うつもりはありません。
第一ここの発明品は社長の物でもあるのですから、どう使おうと社長の自由ですよ。」
('A`)「ありがとうアサピー。」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:08:23.08 ID:xIw9sgs10
- ――ダイナー――
( ^ω^)「………」
私は彼の事務所の近くにある待ち合わせ場所のダイナーで、
注文したホットコーヒーを一口飲んでは腕時計を見やり、
窓の外を眺めると言う行為を十回以上繰り返していた。
窓の外では慌しい足取りで早歩きをするビジネスマン、
元気にペダルを漕ぐ少年達、優しげな表情で乳母車を押す母親。
広がる光景は平和そのものだ。
こんな光景を見ていると、本当にこの街はマフィアや犯罪者達の脅威に晒されているのかと疑問に思えてくる。
だが私は何度もこの街が顔を変えるさまを見てきた。
光と闇、まさにそんな表現がぴったり当てはまる。
( ^ω^)「………」
私が再びコーヒーを一口飲み、
腕時計で待ち合わせの時刻から32分が過ぎた事を確認しながら窓の外に視線を移そうとした時だった。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:11:41.55 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)
扉に付いた鐘の音と共に彼が33分遅れでやって来た。
_ _
(゚∀゚ ) ( ゚∀゚)
彼は店の中を見回して私を探している。
( ^ω^)ノ
私は手を上げて彼に合図し、
_
Σ( ゚∀゚)
彼は私に気付くと早歩きで私の座るテーブル席にやって来て私の向かいに座った。
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:15:19.68 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「遅れてすまない。」
彼の名はジョルジュ。
私の大学時代の友人であり今はVIPシティで検事補として働いている。
マフィアの権力と報復に恐れ、買収までされた検事達が多い中で彼だけは常に街の平和の為に信念を貫いている。
( ^ω^)「いやいや、まだコーヒーのお変わり9杯目だから大丈夫だお。」
_
( ゚∀゚)「相変わらずだな。」
( ^ω^)「君こそ時間にルーズなのは相変わらずだお。」
ミセ*゚ー゚)リ 「ご注文は?」
_
( ゚∀゚)「ホットコーヒーを一つ。」
ミセ*゚ー゚)リ「かしこまりました。」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:19:50.65 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「本当は事務所に招きたかったんだが、生憎散らかっていてね。
ここの方がゆっくり語れるだろうと思って。」
( ^ω^)「別に構わないお。」
_
( ゚∀゚)「新聞を読んだが、君も苦労しているようだな。」
( ^ω^)「それはお互い様だお…
それで、摘発の件について答えを聞きたいお。」
_
(;-∀-)「あぁ、その件だが…」
途端に彼の表情が曇る。
口から聞かなくともその表情だけで良い答えでない事は明らかだった。
( ^ω^)「…そうかお。」
_
( ゚∀゚)「すまない…
何度も訴えたんだが、検事長が渋りに渋ってね。」
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:23:33.98 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「本当は事務所に招きたかったんだが、生憎散らかっていてね。
ここの方がゆっくり語れるだろうと思って。」
( ^ω^)「別に構わないお。」
_
( ゚∀゚)「新聞を読んだが、君も苦労しているようだな。」
( ^ω^)「それはお互い様だお…
それで、摘発の件について答えを聞きたいお。」
_
(;-∀-)「あぁ、その件だが…」
途端に彼の表情が曇る。
口から聞かなくともその表情だけで良い答えでない事は明らかだった。
( ^ω^)「…そうかお。」
_
( ゚∀゚)「すまない…
何度も訴えたんだが、検事長が渋りに渋ってね。」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:27:06.66 ID:xIw9sgs10
- 「やはり」
彼の表情を見た瞬間私は真っ先にこの言葉が頭に浮かんだ。
期待はしていたが私自身も心の奥底で「駄目だろうな…」と言う気持ちを持っていた事は否定出来ない。
何時からだろうか、
私は懸命にマフィアや犯罪者と戦っているつもりだったのにそんな気持ちを抱くようになったのは。
変わらない現状に耐えるためだけに私は懸命に悪と戦っていると自分に言い聞かせていただけなのではないか。
それとも無力な警官である現実を受け入れたくないだけなのか。
( ^ω^)「………」
_
( ゚∀゚)「ブーン?」
知らぬ間に我を忘れていたのだろう。
私はジョルジュに肩を揺すられて我に返った。
Σ(;^ω^)「ん?」
_
( ゚∀゚)「大丈夫かブーン。」
(;^ω^)「あぁ、すまないお。つい考え込んでしまって…
私の悪い癖だお…」
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:31:02.88 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「考え込むの無理はないさ。こんな現状ではね…」
ミセ*゚ー゚)リ「お待たせいたしました。」
_
( ゚∀゚)「ありがとう。」
ジョルジュは運ばれてきた無糖のブラックコーヒーを一口飲むと、
カップを置きこう続けた。
_
( ゚∀゚)「だが私は諦めないぞ。必ずマフィアを撲滅してみせる。」
( ^ω^)「君は強い男だお。」
_
( ゚∀゚)「…とは言ったものの、私もよく分からなくなる。
前のジャーナリストが報復にあった事件で周囲はさらに臆病になってしまってね。
真面目に検事の仕事をするよりもマフィアから小遣いを貰う方が良いとまで言う奴もいる…」
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 04:36:13.48 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「でも君は買収にも応じず報復も恐れずに摘発を訴え続けているお。」
_
( ゚∀゚)「マフィアの報復が怖かったら最初からこの街で検事なんて仕事やらないさ。」
( ^ω^)「本当に強い男だお。私なんかとは比べ物にならないくらい…」
_
( ゚∀゚)「強い、か…何の結果も出せていない今の私は威勢が良いだけのただの無謀者さ。
…そろそろ事務所に戻るよ。」
彼はコーヒーを一気飲みすると、伝票を持って立ち上がった。
( ^ω^)「私が払うお。」
_
( ゚∀゚)「良いさ、待たせたんだから私に払わせてくれ。
ツンさんとビロード君によろしく。じゃあな。」
彼はそう言い伝票を持ってレジへ歩いて行ってしまった。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:01:04.40 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「………」
私はダイナーを出て車に戻った後も私はしばし考え込んでしまった。
私に出来る事はなんなのだろうか。
何をすれば良いのか、だんだん分からなくなっているような気がする。
( ^ω^)「………」
だがここで考え込んでも答えは出ないだろう。
私は車を出発させダイナーを後にした。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:04:48.70 ID:xIw9sgs10
- ――VIPシティスラム街――
('A`)「………」
ビルがごった返す都市部からそう遠くない位置にあるスラム街。
普段は誰も立ち入らず、都市部とは完全に隔離されている。
今にも消えそうに点滅する街頭だけが辺りを照らし、どんよりとした重い空気が流れる空間。
周りには路上に寝転ぶ浮浪者、道端で堂々と麻薬を吸っている者、売人、目をぎらつかせた男達がたむろしていた。
('A`)(スラム街なんて本当にあったんだな…)
大企業の御曹司がスラム街に行くなど無謀な自殺行為と思われても仕方が無い。
だがドクオには理由があった。
('A`)(だが奴らはここにいるはず。)
前の夜に遭遇し何も出来ないまま取り逃がした二人組みの強盗の事を、ドクオはいまだに引きずっていた。
奴らがスラム街にいると言う確信は何もなかったが、
夜になると都市部に来て強盗や盗みを働く者達の多くがスラム街から来ている事を知ったドクオは一途な望みをかけ、
単身スラム街にやって来たのだ。
('A`)「………」
黒いジャケットとズボンに身を包み、
不安な表情や挙動不審な動きを見せたらやられる。
そう感じたドクオは顔色一つ変えず堂々と歩きながら辺りを散策した。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:08:19.56 ID:xIw9sgs10
- ('A`)(アラマキが知ったら大目玉だな。)
何がドクオをそうさせるのか。
それは奴らへの復讐か、それともただの正義感なのか。
どちらにしろ正気の沙汰でない事は明らかである。
('A`)(やはり駄目か…)
あまり歩き回ると警戒される。
ドクオはスラム街を一周だけしたら帰ろうと決めていた。
そして半ば諦めかけながら最後の通りに差し掛かった時だった…
「今日も良いカモがいると良いな」
「あぁ、若い女だと良いな。ぎゃははは」
Σ('A`)
|ミ
ドクオは聞き覚えのある声に気付くととっさに建物の影に身を潜め、
('A|
物陰から声のする方を覗き込んだ。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:12:40.03 ID:xIw9sgs10
- ( ▼皿▼)「ちゃんと銃は持ったか?」
( ^Д^)「あたぼーよ。今日こそ欲求不満を解消させてもらうぜ。」
ドクオが探していた二人組みが寂れたアパートから出てきた。
これは神の巡り合わせか偶然か。
こんなに都合良く二人組みが見つかるなんて、
ドクオ自身望んでいた事ではあったが驚きを隠せない。
( ▼皿▼)「お前金品よりそっちの方が目当てなんだろ?」
( ^Д^)「そう言うお前だって。」
( ▼皿▼)「前は変な邪魔が入ったからな。今日は気合入ってるぜ。
んじゃ行くか。」
二人組みがスラム街から街灯と建物の立ち並ぶ歩道に出て行った。
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:16:03.61 ID:xIw9sgs10
- ('A`)
(' `)
ドクオは目以外を覆った黒い覆面を被り二人組みに気付かれぬよう距離を置いて追跡を開始。
( ^Д^)「にしてもいねぇなぁ。」
( ▼皿▼)「手ぶらで帰るのだけは御免だぜ。」
後をつけているドクオに気付いていない様子の二人組みはそのまま会話を弾ませながら歩道を歩き続けている。
(' |
辺りは静寂に包まれている為少しでも物音を立てれば気付かれる。
ドクオは細心の注意を払いながら密かに後を付け、捕らえる機会を窺った。
(' |(一体どこへ向かうつもりなんだ?)
そんな疑問を抱きながら物陰から次の物陰に移ろうと歩を進めたその時…
(;' `)
不意に野良猫がドクオの前を横切った為物音を立ててしまった。
( ^Д^)
煤i ▼皿▼)
物音に気付いた二人組みはすかさず銃を構え音がした路地裏へ歩み寄ってきた。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:19:28.14 ID:xIw9sgs10
- (' `;) (;' `)
ドクオは辺りを窺い、
Σ(' `)
とっさに近くにあったボックス型のゴミ捨て場の中に身を隠した。
( ▼皿▼)「ビビらせやがって。誰かいんのか?」
ドクオの隠れている路地裏に辿り着いた二人組みは当たりを窺うが、
そこにいたのゴミ袋を漁る一匹の野良猫の姿だけだった。
( ^Д^)「んだ猫かよ。」
( ▼皿▼)「…行くぞ。」
誰もいない事を確認した二人組みは銃を仕舞い再び歩道へ。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:23:30.67 ID:xIw9sgs10
- (;' `)「ふぅ…」
二人組みが去った事を確認するとドクオは静かにゴミ箱の蓋を開き外に出た。
間一髪、不幸中の幸いと言うべきか、ドクオは自分の強運に感謝した。
(' |
ドクオは追跡を再開すべく再び物陰から歩道を覗き込んだ。
しかし…
Σ(' |
覗き込んだ歩道から二人組みの姿が消えていた。
(;' `)(見失ってしまったか…)
うろたえるドクオ。
だがそんな不安は一瞬にして消し飛んだ。
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:27:34.46 ID:xIw9sgs10
- 「キャァァァァァァァァ!!!!!!!」
Σ(' `)
あの時の夜と同じように女性の悲鳴が聞こえたのだ。
(;' `)「しまった…」
やはり慎重になり過ぎたか、被害が出てからでは遅いと言うのに。
悲鳴は100m程離れた路地裏から聞こえた。
三( ' `)
ドクオは急いで悲鳴の聞こえた路地裏へ駆けた。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:33:44.69 ID:xIw9sgs10
- ( ^Д^)「あ〜、良かった。手ぶらで帰ることにならなくて。しかも若い女だし。」
ハソ ;−;リ「お金なら上げるわ。アクセサリーも…」
女性はおぼつかない手で鞄から財布を取り出し、
身に付けていたイヤリングやネックレスを差し出した。
( ▼皿▼)「そうそう。大人しくしてれば良いんだよ。大人しくね…」
( ^Д^)「さぁ〜て、お次はメインデッシュだ。」
二人組みは奪い取った金品を持っていた袋に詰め込むと、
次は女性に歩み寄った。
ハソ ;−;リ「ま、待ってよ…金品を渡せば何もしないって…」
( ^Д^)「はぁ?俺らそんな約束守る男に見える?」
( ▼皿▼)「見えるわけねぇよな。」
ハソ ;−;リ「い、いや…」
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 05:38:44.28 ID:xIw9sgs10
- (;' `)「はぁ、はぁ…」
悲鳴の聞こえた路地裏に辿り着いたドクオ。
幸いにも二人組みはドクオに背を向けており、
なおかつ女性に気を取られているので存在に気付いていない。
三(#' `)
躊躇している暇はない。
ドクオは不意打ちをするべく背を向けている二人組みの方へ駆けた。
( ^Д^)「久しぶりで溜まりに溜まってるからしっかり頼…」
(^Д^ )「ん?」
ドクオの足音に気付いた二人組みが後ろを振り返った刹那。
三(#' `)⊃)Д゚).・∵
ドクオの右ストレートが一人目の顔面を捉えた。
(#)Д゚)「がはっ…」
ドクオの不意打ちで顎を打ち抜かれた一人目は派手にノックダウン。
白目を剥いたまま失神してしまった。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:00:26.84 ID:xIw9sgs10
- (;▼皿▼)「な、なんだてめぇ!!」
覆面を被り、
全身黒尽くめの格好のドクオに戸惑いを見せた二人目はすかさず銃を構えようとしたが…
Σ(' `)
(;▼皿▼)「ぐわっ!!」
至近距離だったのが仇となり、
銃を構えるよりも速くドクオに腕を締め上げられてしまった。
(;▼皿▼)「放せっ!!」
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:03:52.31 ID:xIw9sgs10
後ろ手に締め上げられた腕を解こうと暴れる二人目。
(#' `)「くっ!」
ドクオは暴れる二人目の握っているリボルバーを奪おうと締め上げる力を更に強くした。
(;▼皿▼)「ぎゃあああああっ!!」
二人目は激痛に悲鳴を上げながらも懸命に耐える。
が、しかし我慢の限界か徐々に抵抗する力が弱まってきた。
(' `)(よし。)
ドクオは相手の抵抗する力が弱まったのを感じ、
そのまま床にうつ伏せにしようとした。
その時だった…
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:11:49.41 ID:xIw9sgs10
- Σ(;゚ ゚)「ぐあぁっ!!」
二人目が締め上げられていた右腕から銃を発砲し銃弾がドクオの腹部を捕らえたのだ。
静寂の路地裏に響く銃声。
Σハソ ;Д;リ「キャァァァァァァァ!!!!!!!!」
女性の悲鳴。
(;▼皿▼)「へへへ」
そしてしてやったりの表情で笑みを浮かべる二人目。
これで腕が解放され反撃が出来る。
そんな期待を抱く二人目だったが、その望みはものの数秒で絶たれた。
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:14:01.67 ID:xIw9sgs10
- 煤i;▼皿▼)「何!?」
解放されるはずの腕がいまだに締め上げられたままになっていたのだ。
先ほどドクオに発砲した銃弾はドクオの腹部を貫く事なくそのまま床に落ち音を立てた。
(;▼皿▼)「ば、化け物…」
(#゚ ゚)「うおぉぉぉ!!!!!」
(;▼皿▼)「待て、待ってくれ!!」
ドクオは締め上げる力をそのまま更に強くし、
二人目の腕をへし折った。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:14:57.20 ID:xIw9sgs10
- (;▼Д▼)「ギャァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
想像を絶する痛みに悲鳴を上げながらもがき苦しむ二人目。
(#゚ ゚)「おりゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドクオは間髪入れずそのまま二人目の顔面を思い切り蹴っ飛ばした。
(゚;皿メ(#)「あ…あぁ…」
サングラスは砕け散り、血を噴出しながらくの字に曲がった鼻、
数本の歯を床にポロポロとこぼしながら二人目はそのまま失神した。
(#゚ ゚)「ふぅーっ!!ふぅーっ!!ふぅーっ!!」
覆面越しからでも伝わってくる程の険しい形相で荒い息を立てるドクオ。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:16:35.60 ID:xIw9sgs10
- ハソ ;−;リ「あ、あのぉ…」
襲われていた女性が恐る恐るおぼつかない足取りでドクオに近づいて来た。
(#゚ ゚)「んっ!!」
ハソ ;−;リ「ひっ!!」
ドクオに睨み付けられた女性は驚いて尻餅をついてしまった。
全身黒尽くめで覆面を被った得体の知れな存在と言う所も彼女の恐怖心を煽ってしまったのだろう。
((ハソ ;−;リ))「うぅぅ…」
女性はその場から逃げ出したくても足がすくんで動けず、
ただ震え続ける事しか出来なかった。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:21:30.05 ID:xIw9sgs10
- (#゚ ゚)「………」
(' `)「はっ!!」
女性が呼んだのか近隣の住民が呼んだのか、
どれ程の間立ち止まっていたのかは分からないがドクオはどこからともなく聞こえてくるサイレンの音で我に返った。
(;' `)「しまった…」
こんな格好と光景にいる所を見られたらかなり厄介な事になる。
ドクオはパトカーが来る前に急いでその場から走って逃げた。
三(;' `)
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 06:22:23.91 ID:xIw9sgs10
- ドクオが逃げてから3分もしない内に二人の警官が現場に到着。
[P]_
( ) 「ここか!!大丈夫で…」
[P]_
煤i )
[P]_
煤i )
駆けつけた警官二人はその光景に目を疑った。
(#)Д゚)
(゚;皿メ(#)
辺りには、顔を腫らし泡を吹きながら白目を剥いて失神している男と顔面血まみれで失神している二人の男。
そして傍らには膝を抱えながら震え続けている女性の姿があった。
((ハソ ;−;リ))「うぅ…うぅ…」
[P]_
( )「もう大丈夫ですよ。それで、これは誰が?」
((ハソ ;−;リ))「く、黒…黒い…」
[P]_
( )「黒い?」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:00:09.37 ID:xIw9sgs10
- [P]_
( ) 「おい!こいつ等顔の形は変わっているがよく見てみろ。」
[P]_
( ) 「え?…」
[P]_
Σ( ) 「こいつ等あの連続強盗犯じゃないか!!」
[P]_
( ) 「しかし一体誰が。」
[P]_
( ) 「とりあえず二人組みを拘束して応援を呼ぼう。」
[P]_
( ) 「そうだな。」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:03:06.24 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署オフィス――
( ^ω^)「それで、保護された女性からは明確な証言が聞けたのかお?」
川 ゚ -゚)「ええ、今はもうだいぶ落ち着いています。
それで女性の証言によると二人組みを失神させた人物は全身黒尽くめの格好で覆面をしていたそうです。
顔は分からなかったようですが風貌からして男性だったとも言っています。」
( ^ω^)「全身黒尽くめで覆面の男か…
全く変な奴が現れたもんだお…」
川 ゚ ー゚)「でもこの街にもまだ犯罪と戦おうとする勇敢な市民がいたんですね。
私なんだか嬉しくて。」
( ^ω^)「勇敢ね…」
川 ゚ -゚)「…やっぱり警部補もその男性の事をヒーローを気取った自己満足な奴とか思っているんですか?」
( ^ω^)「いや、その男が必ずしもそんな意思を持って二人組みを捕らえたのかどうかは分からないしお。
しかしその男の意思がどうあれまた同じような自警行為を繰り返すようなら我々も動かざる終えないだろうお…」
川 ゚ -゚)「やはりそうなってしまいますか…」
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:06:17.99 ID:xIw9sgs10
- ――ウツダ邸――
ミニクーパーに乗ったドクオが屋敷に到着した。
('A`)「………」
ドクオは車をガレージに停車し降りると屋敷へ向かい、
アラマキに気付かれぬよう静かにそっと玄関の扉を開けた。
(;'A`)(アラマキはもう寝ているはずだから大丈夫だろう。)
とは自分に言い聞かせるもののやはり内心穏やかではいられない。
アラマキに黙ってスラム街へ行き、挙句にあんな騒動を起こしてしまったのだから。
ばれたら大目玉である事は間違いない。
(;'A`)「………」
ドクオは細心の注意を払いながら玄関の扉を潜り。
(;-A-)「ふぅ…」
なんとか屋敷の中へ入る事に成功した。
と思われたが…
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:09:05.96 ID:xIw9sgs10
- (;-A-)
「お帰りなさいませ。」
('A`)「え?」
/ ,' 3
(;'A`)
/ ,' 3「お帰りなさいませドクオ様。」
屋敷の中に入って安心したのもつかの間。
ドクオの目の前にいつの間にかアラマキが立っていたのだ。
(;'A`)「ア、アラマキ…」
/ ,' 3「こんな夜遅くにお出かけとは関心いたしませんな。」
アラマキはとくに怒る事もせず何時も通りの様子でそう答えた。
(;'A`)「あぁ、ちょっと気晴らしにドライブに行っていたんだ…」
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:12:08.31 ID:xIw9sgs10
- / ,' 3「ドライブでございますか。
…それで、そのお洋服の破れはいかがなさいました?」
そう言いながらアラマキはドクオの着ているジャケットの破れた腹部を指差した。
(;'A`)「え?あぁこれは前からあったものさ…」
/ ,' 3「ですが破れていてはジャケットの意味がございません。」
(;'A`)「それは…その…そうなんだ……はぁ、はぁ、はぁ…」
/ ,' 3「ドクオ様?」
(;'A`)「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
ドクオは急に息遣いが荒くなり、大量の汗をかき始めた。
/ ,' 3「ドクオ様いかがなさい…」
ドクオの異変に気付いたアラマキがそう言いながら手を伸ばそうとした時だった。
(;-A-)「うぅ…ぐぐ…ぐ…」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:15:40.29 ID:xIw9sgs10
- / ,゚ 3「ドクオ様!?」
ドクオが腹部を押さえながら片膝をついてうずくまってしまった。
/ ,゚ 3「しっかりしてくださいませドクオ様!!」
アラマキは大声でそう呼びかけながら肩を貸し、
ドクオを居間に連れて行きソファーに寝かしつけた。
/ ,゚ 3「直ぐに救急車を呼びましょう!!」
(;-A-)「大丈夫だ…病院へは…行かなくていい…」
/ ,' 3「し、しかし…」
(;-A-)「それよりアラマキ…氷を持ってきてくれ…」
/ ,' 3「かしこまりました!」
アラマキは直ぐに台所へ飛んで行った。
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:19:03.38 ID:xIw9sgs10
- (;'A`)「はぁ…はぁ…」
ドクオはソファーから起き上がると着ているジャケットと、
その上に重ね着していた防弾スーツを脱いで上半身裸になった。
(;'A`)「くそっ…」
先ほどの強盗との格闘で腹部を撃たれた際、
外傷から身を守る事は出来たがかなりの至近距離から銃弾を受けた為、
衝撃によってドクオの腹部は紫色に変色してしまっていた。
/ ,' 3「ドクオ様、氷を…」
Σ/ ,゚ 3
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:23:17.29 ID:xIw9sgs10
- 台所から氷袋を持ってきたアラマキだったが、
ドクオの変色した腹部を見るなり驚いて氷袋を床に落としてしまった。
(;'∀`)「はは、まさか自分でもこんなになっているなんて思わなかったよ…」
ドクオは痛みを堪え無理に笑顔を作りながらおどけた様子で言った。
/ ,' 3「ドクオ様、やはり病院へ行きましょう…」
アラマキは落とした氷袋を拾い上げ、ドクオに手渡しながらそう促した。
(;'A`)「ありがとう。でも大丈夫だ。」
(;-A-)「はぁ…」
ドクオは氷袋を変色した腹部に当てると小さく息を吐いた。
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:28:24.52 ID:xIw9sgs10
- (;-A-)「………」
('A`)「…アラマキ。」
徐々に痛みも引き、
状態が安定してきたドクオは目の前にある暖炉の火をじっと眺めながら、
隣に座るアラマキに話しかけた。
/ ,' 3「なんでしょう?」
('A`)「…正直に言うよ。本当は僕は屋敷を抜け出してスラム街へ行ったんだ。」
そこでドクオはアラマキにスラム街へ行って二人組みを見つけ出し後を追った事。
襲われていた女性を助けようと戦った事を打ち明けた。
/ ,' 3「………」
('A`)「軽蔑するだろ?
長年仕えてきた名家の御曹司が個人的感情に駆られて無謀な事をして…
このざまさ…」
/ ,' 3「…何故です?」
('A`)「え?」
/ ,' 3「何故そこまでして二人組みを追ったのですか?
やはり復讐でございますか?」
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:32:08.67 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「…あの夜屋敷に帰った後、君は言ったよね。
「相手は銃を持っていたのだから仕方ない」って。
その言葉を聞いて、銃で人の命を弄ぶ奴らに怒りを覚えると同時に、
僕は浮かれていただけなんだなって自覚もした。」
/ ,' 3「ドクオ様のどこが浮かれていると言うのですか?」
('A`)「僕は父の意思を継ぎ会社の社長として慈善事業に尽くしてきた。
僕のしている事はたくさんの人々を救っている。そんな自信もあった。
だけど本当は違ったんだ。この街は常に暴力に溢れ、その暴力に怯えている人もたくさんいる。
結局僕は上辺だけの平和に気を取られていて、知らぬ間に見て見ぬふりをしていたんだ。」
/ ,' 3「そんなドクオ様…」
('A`)「あの夜に気付いた事は他にもある。それは僕の弱さだ。
何も出来なかった自分に僕は本当に腹が立ち、
二人組みよりも先に僕は無力な自分を憎んだ。」
/ ,' 3「………」
('A`)「そう、僕は認めたくなかったんだろうな。自分の弱さを…
僕は自分が弱い事を否定したいが為に二人組みを追って捕まえたんだ…
表面上は正義の為を繕っていたが、結局一番の理由はそれさ…」
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 07:36:20.23 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「ふぅ…」
アラマキがいなくなり、
居間に一人となったドクオは暖炉の火から窓の外に視線を移し、
窓の外に広がる闇を眺めながら思った。
('A`)(流石にこれは叱られるよな…)
('A`)(…父さん、僕はやっぱり強くなんかなかったよ。
父さんの言っていた心の強さなんて、僕は持っていなかったんだ…)
(-A-)「父さん、ごめん…」
(;A;)「ごめんよ…」
ドクオは大粒の涙を流した。
とても久しぶりに流す涙。
ドクオは母が死んだ時も父が死んだ時も涙を流さなかった。
それは涙は弱さの証拠だと思っていたから。
だがドクオには限界だった。
自分が弱い事を否定するどころか更に弱さを知ってしまったから。
(;A;)「うぅっ…くそぉ…」
ドクオはもう自分がどうすれば良いのか分からなっていた。
今まで人の為に慈善事業に尽くしていた事、学生の頃に弱い者を守る為だと証して喧嘩をしていた事。
全てが否定された気がした。
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:01:04.33 ID:xIw9sgs10
- (;A;)「父さん…僕は…どうすれば…」
自分は正しい人間なのか、
これからどんな顔をして生きて行けば良いのか、
ドクオは亡き父に問い続けた。
(;A;)「くっ…うぅっ…」
/ ,' 3「ドクオ様。」
(;A;)「アラマキ!?」
(うA;)「…すまない。戻っていたのか…」
ドクオは戻ってきていたアラマキの存在に気付くと慌てて涙を拭った。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:02:30.80 ID:xIw9sgs10
- / ,' 3「氷を入れてまいりました。」
(;うA;)「あぁ、ありがとう…」
必死に涙を拭いながら氷袋を受け取るドクオ。
/ ,' 3「よいしょ。」
アラマキは再びドクオの隣に腰を下ろした。
(;'A`)「………」
ドクオは観念したかのように一言呟いた。
(-A-)「焦った所で隠しようがないか…」
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:04:10.56 ID:xIw9sgs10
- / ,' 3「ドクオ様、涙を流す事は決して恥ずべき事ではございません。」
('A`)「…僕にはそうは思えないよ。」
/ ,' 3「………」
('A`)「…もう痛みも引いたし、シャワーを浴びてくる。
氷ありがとうアラマキ。それと、あんな事はもう二度としないよ…
心配を掛けてすまなかった…」
ドクオはアラマキに氷袋を手渡すとソファーから立ち上がった。
そう、これで良い。
全てを忘れ、朝になったら何時も通り背広を着て会社へ行き、
上辺だけの平和の中で自分が父から受け継いだ社長としての職務を全うする。
それだけで十分ではないか。
ドクオは自分にそう言い聞かせた。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:08:21.70 ID:xIw9sgs10
- / ,' 3「いえ、それよりもドクオ様が大事にいたらなくて本当にようございました。」
('A`)「…シャワーを浴びたらそのまま寝るから。
おやすみアラマキ。」
/ ,' 3「おやすみなさいませ。」
('A`)「はぁ…」
もう休みたい。
くたびれた様子のドクオが、
そう感じながらバスルームへ向かおうと床を一歩踏み出した時だった。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:11:56.69 ID:xIw9sgs10
- (;゚A゚)「!!」
/ ,゚ 3「!!」
(;゚A゚)「なんだっ!!」
/ ,゚ 3「泥棒でしょうか!?」
不意に居間の窓ガラスを破って何かが飛び込んできたのだ。
とっさに身構え辺りを伺う二人、すると。
「キィー、キィー!」
飛び込んできた犯人と思われる物体がドクオの足元で鳴き声を発しながらうごめいていた。
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:15:15.56 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「これは…」
/ ,' 3「何かの生き物のようですな。」
飛び込んできた物体に目を凝らす二人。
するとドクオが何かを思い出したかのように呟いた。
('A`)「これは、蝙蝠だ…」
/ ,' 3「蝙蝠とは懐かしい。まだこの辺りに生息していたのですな。
最近はめっぽう見なくなったのでもういないのかとばかり。」
('A`)「やはり空耳なんかじゃなかった…」
('A`)「………」
ドクオは足元でうずくまっている蝙蝠を見詰めたまま固まってしまった。
/ ,' 3「ドクオ様?」
('A`)「………」
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:19:11.04 ID:xIw9sgs10
- ――二十一年前――
(;A;)「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!」
【ドクオ当時五歳】
(;`・ω・´)「どうしたドクオ!!」
J(ヽ'ー`)し「何があったの!?」
/ ,゚ 3「ドクオ様!!」
叫び声に気付いた三人がドクオの寝室へ駆けつけてきた。
(;A;)「何かが窓ガラスを破って部屋に飛び込んできたんだ…」
(`・ω・´)「何か?」
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:20:29.35 ID:xIw9sgs10
- (`・ω・´ ) ( `・ω・´)
煤i`・ω・´)「む!?」
父が当たりを伺うと、
そこには床の上で必死に鳴き声を上げながらもがいている蝙蝠の姿があった。
「キィー!キィー!!」
周りの者全てを威嚇するかのように発せられる甲高い鳴き声と翼の音が部屋中に響き渡る。
(`・ω・´)「蝙蝠か、怪我などはしていないようだな。」
ドクオの父は床でもがいている蝙蝠をなんの躊躇いもなく拾い上げそのまま窓の外へと逃がしてやった。
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 08:21:56.20 ID:xIw9sgs10
- ((;A;))ガタガタガタ…
(`・ω・´)「ドクオ、もう大丈夫だ。
涙を拭きなさい。」
(うA;)「ヒックヒック…」
(`^ω^´)「そうかそうか、怖かったか。」
父は笑顔を浮かべると大きな手でドクオの頭を撫でた。
何時も悪戯をするとその大きな手に持ち上げられて捕まったり、拳骨をもらったりしたけれど、
その日ドクオの頭を撫でた父の手はとても優しかった。
(`・ω・´)「だがなドクオ。
怖かったとは思うが、このような事も生きて行く中での貴重な経験だ。」
('A`)「うん…」
(`・ω・´)「ドクオは蝙蝠を見たのはこれが初めてか。
まぁ、人は得体の知れない存在には恐怖を覚えるものだからな。怖がるのも無理はない。」
('A`)「う、うん…」
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:00:18.25 ID:xIw9sgs10
- (`・ω・´)「実は蝙蝠と言う動物はな。あまり飛ぶのが上手い動物ではないんだ。」
('A`)「え?そうなの?」
(`・ω・´)「飛ぶのにはかなりのエネルギーを消費するし、優雅に飛んだりも出来ない。
蝙蝠は飛ぶ時はバタバタと一生懸命翼を羽ばたかせなければいけないんだ。」
('A`)「大変そう…」
(`・ω・´)「だが自分が生きる為、家族の為にたとえ上手くなくとも小さい身体で一生懸命羽ばたく。
蝙蝠には飛ぶ事しか移動手段もないからな。」
('A`)「コウモリって凄いんだね。」
(`・ω・´)「あぁ、凄いな。
お前も自分の為でも誰かの為でも良い、一生懸命生きるんだぞ。」
('A`)「うん!!
僕もう泣いたりしないよ。」
(`^ω^´)「お前は強い子だ。」
そう言うと父は再び大きな手でドクオの頭を撫でた。
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:04:44.87 ID:xIw9sgs10
- ――現在――
/ ,' 3「ドクオ様?」
('A`)「すまない。また思い出してしまったんだ。
僕が子供の頃にも似たような事があったからね。」
/ ,' 3「そう言えばありましたなそのような事が。」
('A`)「当時の僕にとって、
突然飛び込んできた蝙蝠の姿と延々響く鳴き声は堪らなく恐ろしかった。」
/ ,' 3「あの時はビックリいたしました。
急にドクオ様の悲鳴が聞こえて」
('A`)「でもあの時父さんに頭を撫でられてだけで、僕の中の恐怖がスッと消えたんだ。」
ドクオはそう呟きながら床でうずくまっている蝙蝠を拾い上げ窓の外へと逃がしてやった。
あの夜父がドクオに教えてくれた通り、
懸命に羽ばたきながら闇へと飛び去って行く蝙蝠。
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:07:02.78 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「………」
('A`)「…アラマキ。」
ドクオは闇へと飛び去って行く蝙蝠を届けながらアラマキに話しかけた。
/ ,' 3「なんでしょう?」
('A`)「やはり…やはりもう一度。納得が出来るまで。
また独り善がりと思われるかも知れないが、もっとこの街の為に懸命に生きてみようと思うんだ。」
/ ,' 3「…また覆面をして街へ繰り出すと言うのですか?」
('A`)「いや、ただ覆面をして悪人を裁くだけでは駄目だ。
もっと得体の知れない恐怖を与えなければ…」
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:10:28.78 ID:xIw9sgs10
- ――クオリティエンタープライズ開発事業部ラボ――
(-@∀@)「………」
アサピーはデスクに腰掛けながら朝刊のある記事に見入っていた。
【連続強盗強姦犯二人組みついに逮捕。捕らえたのは正体不明の覆面男。】
(-@∀@)「ふむ…」
(-@∀@)「ん?」
不意にエレベーターの到着を知らせる音がラボ内に響いた。
('A`)「………」
ドクオはエレベーターから降りるとそのままアサピーの座っているデスクへ向かい声を掛けた。
('A`)「おはようアサピー。」
(-@∀@)「おはようござます社長。」
アサピーは読んでいた新聞をたたみデスクに置くと立ち上がってドクオに挨拶を返した。
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:14:51.51 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「新聞を読んでいたのかい?」
(-@∀@)「そうです。」
('A`)「やはり注目はあの記事かな?」
(-@∀@)「えぇ、どうやらこの街に怪傑ゾロが現れたようですね。」
('A`)「いや、怪傑ゾロになるには後マントが必要だ。」
(-@∀@)「それとサーベルと馬も必要ですね。それでご用件は?」
('A`)「あぁ、ちょっとこれを。」
ドクオはスーツの胸ポケットから二枚の紙を取り出しフォックスに手渡した。
(-@∀@)「これは…」
('A`)「僕が書いた設計図なんだが。」
(-@∀@)「ふむ、中々絵心がある。
しかしまだハロウィンの時期には早いのでは?」
('A`)「準備は早いに越した事はないだろ。
…前に譲ってもらったスーツをその設計図の通りに改良して欲しいんだ。」
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:18:19.09 ID:xIw9sgs10
- ('A`)「それと…君にも正直に話すよ。実は…」
(-@∀@)「いいですよ別に。」
ドクオがそう切り出そうとした所をアサピーが遮った。
('A`)「え?」
(-@∀@)「言ったでしょ?
私は社長の趣味にどうこう言うつもりはないと。」
('A`)「それじゃあ引き受けてくれるのかい?」
(-@∀@)「ええ、久しぶりに腕が鳴りますよ。
それにしても中々いかしたデザインですね。」
アサピーは設計図を眺めながら関心した様子で答えた。
('A`)「あぁ、ある動物をモチーフにしたんだ。」
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:22:27.82 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署――
( ^ω^)「失礼します。」
( ´∀`)y━・~~~「おおブーンか。」
本部長は相変わらずむせ返るような煙の臭いの葉巻を吸っていた。
( ^ω^)「二人組みはもう直ぐで退院出来るそうです。」
( ´∀`)y━・~~~「そうか。それと例の覆面男の調査は進んでいるのか?」
( ^ω^)「被害者女性の目撃証言と現場に落ちていた銃弾以外明確な証拠がありませんお。
後は今治療中の二人組みから証言を聞けるかどうかですが、難しいでしょうね…」
( ´∀`)y━・~~~「全くけしからん奴だ。警察の真似事をするとは。」
本部長は呆れた様子で呟きながら煙を吹き出し。
私は煙を払いたい気持ちを抑えこう返した。
( ^ω^)「…やはり彼がした事は間違った事なのでしょうか。」
( ´∀`)y━・~~~「何?」
( ^ω^)「なんでもありませんお。失礼します。」
私は一礼し部長室を出た。
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:26:13.10 ID:xIw9sgs10
- 私は疲れた身体を休める為仮眠室へ向かった。
( ^ω^)「ふぅ…」
家族の声を聞けば少しは気が休まるだろうと考えた私は、
仮眠室のベッドに腰掛けスーツのポケットから携帯を取り出した。
がしかし…
( ^ω^)「しまった…」
携帯を開きボタンを押そうした所で、
携帯に表示されている23時22分という時刻が目に入った。
( ^ω^)「もうこんな時間だったのかお…」
そんなに時間が経っている事に気付かなかった私は時刻を知って酷く後悔した。
( ^ω^)「はぁ…」
私はアラームを設定してから携帯を閉じると、
スーツの上着をハンガーに掛けベッドに横になった。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:29:41.69 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「………」
窓の外から見える夜空には星一つなく、
あるのは雲に隠れて薄っすらと見える満月だけ。
( ^ω^)「………」
あの満月が完全に雲に隠れたら、
夜空は真の闇になるのだろうか。
私はそんな取り留めのない事を考えながら瞼を閉じた。
( -ω-)
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 09:33:35.29 ID:xIw9sgs10
- (#’ ’) 「さっさとしろのろまが!!」
<ヽ#` ´>「うるせぇっ!!
てめぇこそ口動かさないで手動かせってんだ。」
(#・ ・)「馬鹿どもが喧嘩してんじゃねぇ!!」
静まり返った街の酒屋から小声で互いを罵り合う声が聞こえる。
(#’ ’) 「誰が馬鹿だと!!」
(#・ ・)「いいからさっさと運べ!」
覆面をした三人組みの男達は互いに罵り合いながらも、
テキパキとレジから現金を盗み取り、表から商品をトラックに積み込んでゆく。
<ヽ` ´>「よし、これくらいで良いだろ。」
(・ ・)「そうだな。行くぞ。」
(’ ’)「あぁ。」
あらたか商品を盗んだ三人組みは、
一人が運転席に乗り込み後の二人はトラックの荷台に乗り込んだ。
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:01:33.83 ID:xIw9sgs10
- <ヽ`∀´>「ふぃ〜」
一人目の男は被っていた覆面を脱ぐとトラックを出発させた。
(・∀ ・)「今日は大量だな。」
(’e’)「あぁ、早く一杯やりてぇぜ。」
<ヽ`∀´>「ふんふんふん♪」
一人目の男は鼻歌交じりで快調に車を飛ばし。
<ヽ`∀´>「どれ、ラジオでも付けるか。」
ラジオを付けようとカーステレオに手を伸ばした時だった。
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:02:51.48 ID:xIw9sgs10
- <ヽ;゚д゚>「!!!!!」
不意に運転席のサイドガラスをブチ破って上から何者かの腕が男の胸倉を掴んだ。
<ヽ;゚д゚>「ウワッ!!放せっ!!放せぇぇぇぇっ!!!!」
パニックに陥った男は何とか腕を振り解こうとするが、
腕は強い力で胸倉を掴んでいるため一向に放れない。
<ヽ;゚д゚>「はっ放せっ!!」
Σ<ヽ;゚д゚>「はっ、ウワッ!!!!ウワァァァァァァッ!!!!!!!」
男はそのままハンドル操作を誤り、
トラックは電柱に激突して停車した。
<ヽ;-A->「う、うぅ…」
トラックの前方部は破損し、
衝突の衝撃でハンドルに頭を打ち付けた男はそのまま気絶した。
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:03:35.44 ID:xIw9sgs10
- (;・A ・)「ななななんだよ。どうしたってんだよぉ!!」
(;’e’)「何かにぶつかって止まっちまったみてぇだ…」
荷台に乗っていた二人組みは事態を飲み込めない様子でパニックに陥っていた。
(;・A ・)「と、とにかく外に出てみるぞ…」
(;’e’)「あぁ…」
そう言い二人組みが荷台から外に恐る恐る顔を覗かせた時だった。
(;゚A ゚>と
(;゚ e゚>と
二人組みが外に顔を覗かせたと同時に待ち構えていたのであろう、
二本の腕が二人組みの胸倉を掴んで強引に外へ引っ張り出した。
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:07:29.11 ID:xIw9sgs10
- (;・A ・)「ぐわっ!」
(;’e’)「いてっ!」
二人組みは強引に引っ張り出された勢いで派手に転んだ。
(;・A ・)「ちくしょぉ…」
(;’e’)「何がどうなって…」
二人組みがそうぼやきながら起き上がろうとすると、
(・A ・)(’e’)「ん?」
一つの影が二人組みを覆った。
(;・A ・)
(;’e’)
そして恐る恐る影のある方に視線を移すと…
(;゚д ゚)
(;’д’)
- 154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:10:15.48 ID:xIw9sgs10
- 「なんだてめぇ!!く、来るなっ!!」
「うわぁ止めろぉぉぉ!!」
「頼む!止めっ!!」
「来るなって!!」
「ヒッ!!」
「「ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!」」
- 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:14:58.58 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署――
煤i -ω-)
( うω-)「うっ」
仮眠終了を告げる携帯のアラームが鳴った。
( ^ω^)「…はぁ」
時刻は深夜1時を回っている。
私は重い腰を上げハンガーに立て掛けておいたスーツの上着に袖を通した。
( ^ω^)「さて。」
私は仮眠室を出るとオフィスへ向かった。
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:15:58.82 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「………」
オフィスに着いた私はデスクに座る前に眠気を覚まそうとコーヒーを淹れに行った。
( ^ω^)「………」
ポットからカップにコーヒーを注ぎ、ブラックで砂糖は一つ。
( -ω-)
そしてまず香りを楽しんだ後。
( ^ω^)
コーヒーを飲もうとカップを口に近づけた時だった。
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:17:57.89 ID:xIw9sgs10
- 柏;゚ д゚)「警部補っ!!」
煤i ゚ω゚)「アチチチッ!!!!」
後ろから不意に叫んできたクーに驚いてコーヒーを手に引っ掛け。
その拍子にカップを床に落としてしまった。
川;゚ д゚)「警部補何やってるんですか!事件です!!」
(;^ω^)「な、なにがあったんだお…」
私は手をハンカチで拭きながら慌てた様子のクーに問いかけた。
川;゚ д゚)「いいから現場へ行きましょう!他の警官も急行していますよ!」
( ^ω^)「分かった。」
私はクーに促されるままパトカーに乗り込み現場へ急行した。
- 161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:22:47.87 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「…これは。」
既に非常線が張られた現場の道路には、
電柱に衝突しフロントが破損したトラック。
そして近くの街灯には犯人と思われる三人組の男が縛り付けられていた。
( ^ω^)「………」
私は三人組みの方へ歩み寄った。
<ヽ -A->
((#)A ;))
((#)e;))
一人は気絶しているようだ。
残りの二人は顔の腫れからして殴られた形跡が見られ、
何かに怯えるように体をガダガダと震わせている。
- 163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 10:26:42.34 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「おい。」
私はその内の一人に問いかけた。
((#)A ;))「ななななななんだよ…」
( ^ω^)「お前達を捕まえたのは誰だお?」
((#)A ;))「しし知らねぇよ…」
( ^ω^)「姿形とか、見た事はなんでも良いから話せお。」
((#)A ;))「…ま、真っ黒で…顔も覆面で見えなかった…」
( ^ω^)(真っ黒、覆面…)「他には?」
((#)A ;))「他には…角、角だ…二本の角があった…」
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:00:20.78 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「角?角とは何の事だお?」
((#)A ;))「頭の上に生えてたんだ…ありゃきっと悪魔の使いにちげぇねぇ…」
( ^ω^)「何がどうなっているんだお…」
((#)A ;))「おい!いつまでもこんな所にいたくねぇよ。早く連れてってくれ…」
縛られている男は自分から連行するよう促してきた。
( ^ω^)「連れて行け。」
[P]_
( ) 「了解。」
( ^ω^)(黒尽くめで覆面の次は角か…
一体どうなっているんだお…)
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:04:09.21 ID:xIw9sgs10
- ――その日を境にVIPシティでは犯罪者達が夜な夜な何者かによって捕らえられる事態が頻発するようになる。
新聞では毎回のように覆面男の記事が一面を飾り、
「街に現れたヒーロー」「ヒーローを気取りたいだけの無謀者」「正体不明な所が不気味」など住民達の反応も様々であった。
警察は自警行為を繰り返す覆面男の捜査を開始するが、
神出鬼没で誰も姿をはっきり見た者がいないと言う事もあり捜査は難航を極めた。
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:08:38.54 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署オフィス――
( ^ω^)「はぁ…」
依然として覆面の男の自警行為は続いている。
覆面の男の出現から数日後に市警では特別捜査班が立てられ、
私はそこの班長として指揮を任された。
( ^ω^)(本当にこれが最優先事項で良いのかお…)
本部長はこれは良い機会だと思ったのだろう。
覆面の男が出現して以来覆面男の逮捕が捜査の最優先事項となり、
いつの間にかマフィアへの捜査はうやむやになろうとしていた。
( ^ω^)(…やはり私は言われた事をやるしかないのかお。)
などと私がデスクで考えを巡らせていた時だった。
( ^ω^)「ん?」
不意に私の携帯が鳴った。
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:13:06.92 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「誰だお?」
私はポケットから携帯を取り出し着信者を見た。
( ^ω^)「ジョルジュからかお。」
( ^ω^)】「もしもし。」
『あぁ、こんな朝方に悪いな。』
( ^ω^)】「どうしたんだお?」
『今日の昼に連続強盗強姦犯の二人組みの初公判があるんだが。』
( ^ω^)】「知ってるお。」
『君も来るんだろ?』
( ^ω^)】「行けたら行くつもりだお。」
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:16:43.18 ID:xIw9sgs10
- 『そうか。例の覆面男の事で君も忙しいようだしな。』
( ^ω^)】「あぁ…君の方も大丈夫なのかお?」
『…正直かなり望みは薄いがな。』
( ^ω^)】「健闘を祈るお。」
『あぁ、やれるだけの事はやるさ。じゃあな。』
彼はそう言い残し電話を切った。
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:20:39.52 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「あいつも戦っているお…」
携帯を仕舞い、
今度はデスクに置かれたコーヒーを飲もうとカップに手を掛けた時だった。
川;゚ д゚)「警部補!!」
クーが慌しい様子で私のいるデスクへ駆けて来た。
煤i ^ω^)「事件かお!?」
川;゚ д゚)「急いで署の外に来てください!」
( ^ω^)「署の外?」
川;゚ д゚)「いいから早く!!」
(;^ω^)「わ、分かったお…」
私はクーに促されるまま署の外へ向かった。
- 172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:24:42.92 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「なんだお騒々しい。」
外には複数の警官が何かを取り囲んでいた。
( ^ω^)「ちょっと開けてくれお。」
私は警官達を掻き分けその場所へ。
( ^ω^)「一体何が…」
そしてそこは。
煤i ゚ω゚)
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:28:24.70 ID:xIw9sgs10
- (;-- ω)「うぅぅ…」
手足をロープで縛られ気絶した男が横たわっていた。
(;^ω^)「どう言う事だお…」
川;゚ -゚)「署の外に放置されていたそうです。
…きっと彼の仕業でしょう。」
(;^ω^)「だろうお…」
( ^ω^)「ん?」
ふと男の服の胸ポケットに折り畳まれた紙が入っているのが目に止まった。
( ^ω^)「何だおこれは。」
私は胸ポケットから紙を抜き取り開いてみた。
そしてそこに書いてあった内容は。
- 174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:32:11.19 ID:xIw9sgs10
- 【同じ志を持つ者よりVIP市警へお届け物。】
( ^ω^)「………」
犯罪者をのさばらせ続けている市警への皮肉とも取れる文章が書き記されていた。
( ^ω^)「…連れて行けお。」
気絶している男はそのまま警官に二人掛で担がれながら署の中へ連行された。
( ^ω^)「…くそっ」
私は小さく呟いた。
彼の自警行為が許されるものなのかと問われれば、それは違うと思う。
だがしかし何も出来ない私に比べたら彼の方が幾分かましに思えてきてしまうのだ。
そんな事を考えてしまう私はやはり警官として間違っているのだろうか…
- 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 11:38:29.71 ID:xIw9sgs10
- ――VIP裁判所――
_
(#゚∀゚)「ふざけるなっ!!」
法廷内にジョルジュの怒号が響く。
_
(#゚∀゚)「何が情状酌量の余地があるだ!
貧しさのあまり仕方なく?
こいつ等が楽しんで犯罪を犯していたのは明らかじゃないか!!」
_、_
(#,_ノ` )「静粛に!もう一度怒鳴り声を上げた場合は退出を命じます!!」
_
(#゚∀゚)「勝手にしろ!!形だけの公判なんかに何の意味がある!!
分かっているんだ。どうせこいつらは釈放なんだろ?」
_、_
(#,_ノ` )「退出しなさい!!」
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:00:01.85 ID:xIw9sgs10
- [G]_
( )
[G]_
( )
二人のガードマンがジョルジュの腕を掴んだ。
_
(#゚∀゚)「触るなっ!!自分から出て行く。」
ガードマンの腕を振り払い、
そのまま法廷を退出して行くジョルジュ。
( ^Д^)
(▼V▼メ)
二人組みはニヤニヤと笑みを浮かべながら退出して行くジョルジュを見送っていた。
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:04:44.96 ID:xIw9sgs10
- _
(#゚∀゚)「くそっ」
_
(;-∀-)「くそ…」
ジョルジュは裁判所内のベンチに腰掛けうな垂れていた。
( ^ω^)「…ジョルジュ。」
_
( ゚∀゚)「ブーン、来ていたのか…」
( ^ω^)「どうして急にあんなに怒り出したんだお?
まだ判決が出るまで分からないのに。」
_
( ゚∀゚)「…無駄だよ。あいつらの顔を見たか?
あいつ等、終始ニヤニヤと笑みを浮かべていたんだ…
私が起訴状を朗読していた時も退出する時も小馬鹿にするようにニヤニヤとね…」
( ^ω^)「………」
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:07:39.76 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「奴らは確実にマフィアと繋がっているんだ。
恐らく金品でも献上して捕まった時の為に保険を掛けていたんだろう。
中立であるはずの裁判官もその殆どがマフィアと関係を持って人間ばかりだからな。
好きなように判決の内容を決められるのさ。」
( ^ω^)「君は無理だと分かっていて公判に臨んだのかお?」
_
( ゚∀゚)「あぁ、一途な希望を胸にって奴だ。
結局はご覧の通りだが…」
( ^ω^)「そうだったのかお…」
_
( ゚∀゚)「はぁ…」
( ^ω^)「今度は私の奢りでコーヒーでもどうだお?
自販機のだけど。」
_
( ゚∀゚)「…そうだな。お言葉に甘えるよ。」
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:11:11.27 ID:xIw9sgs10
- ――VIPシティ港――
( <●><●>)
( ・∀・)
( ´∀`)y━・~~~
( ´ー`)
VIPシティの港にある寂れた一つの大きな廃倉庫。
そこでは毎晩マフィア達による集会が開かれている。
( <●><●>) 「全員揃いましたね。」
( ・∀・)「あぁ。」
( ´∀`)y━・~~~「OKだ。」
( ´ー`) 「さっさと終わらせてくれよ。」
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:15:21.88 ID:xIw9sgs10
- ( <●><●>)「それでは始めましょう。
最近ブーンとジョルジュ以外に新たな邪魔者が現れました。」
( ・∀・)「あの覆面男の事か。」
( <●><●>)「ええ、最近では私のお得意様の麻薬業者様が麻薬の密輸を邪魔されたそうです。」
( ´ー`) 「ブーンとジョルジュは良いにしても、
そいつは神出鬼没で捕まった本人ですらはっきり姿を見た奴がいないんだろ。」
( ´∀`)y━・~~~「我々も捜査網を敷いて探しているんだがな。」
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:16:14.96 ID:xIw9sgs10
- ( <●><●>)「頼りにしていますよ本部長。」
( ´∀`)y━・~~~「任せておけ。奴のせいでこいつが吸えなくなるのは嫌だからな。」
( <●><●>)「それと、最近ブーンはしつこく言ってこないのですか?」
( ´∀`)y━・~~~「あぁ、今は覆面男の捜査班の班長になってもらった。
それにもう諦めてるだろ。」
( <●><●>)「そうですか。それは良い事だ。
…後はジョルジュですね。」
( ・∀・)「あいつの法廷での怒った顔。あんたにも見せてやりたかったぜ。」
( ´ー`) 「奴が何も出来ないとは言え。これ以上飛び回られたら五月蝿くてかなわん。」
( <●><●>)「えぇ、五月蝿いハエはそろそろ落とした方が良さそうですね…」
- 187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:20:23.57 ID:xIw9sgs10
- 『明日の夜奴が事務所を出た所手下に狙わせよう。』
『頼みますよモララーさん。』
『土産に首でも持ってきてやるよ。』
『奴を始末したら後はあいつだけだな。』
( )白「………」
- 189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:25:30.79 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「………」
深夜0時過ぎ。
事務所からジョルジュが出てきた。
( ゚∋゚)「出たぞ。」
( ゚д゚ ) 「行くか。」
二人組みはジョルジュが事務所から出るのを確認し追跡を開始。
_
( ゚∀゚)「………」
まだ後ろの二人に気付いていないジョルジュは、
人気の無い歩道をそのまま歩き続けていた。
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:30:53.96 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)「………」
( ゚∋゚)「………」
( ゚д゚ )「………」
二人組みの足は徐々に速まり、距離も近づいてくる。
_
( ゚∀゚)「?」
_
(;゚∀゚)
後ろから近づいてくる早足の音で異変に気付いたジョルジュは、
そのまま振り返らずに駆け出した。
- 191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:34:11.77 ID:xIw9sgs10
- ( ゚∋゚)
( ゚д゚ )
逃がしてなるものかと、
後ろの二人組みはそのまま懐から銃を取り出しジョルジュに向かって構えた。
その時だった。
「ヒッ!!」
「ウワァッ!!」
その悲鳴を最後に辺りは静寂に包まれた。
_
(;゚∀゚)
駆け出した瞬間後ろで聞こえた悲鳴。
そして止んだ足音に気付いたジョルジュは足を止め。
_
(;゚∀゚)「何が起こったんだ…」
_
(゚∀゚;)
恐る恐る後ろを振り返った。
- 192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 12:38:13.18 ID:xIw9sgs10
- すると。
_
(゚∀゚;)
( -∋(#)「うぅ…」
( -д(#)「ぐぐ…」
後ろには何者かによって気絶させられ横たわった二人組みがいた。
_
(゚∀゚;)「こ、これは…」
事態が飲み込めないジョルジュはその場に呆然と立ち尽くした。
するとジョルジュの後ろから。
「こんばんは。」
_
(゚∀゚ )「ん?」
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:00:06.57 ID:xIw9sgs10
- _ ∧_∧
( ゚∀゚) ( <_ )
_
(;゚∀゚)「なっ!!!!!!!!」
∧_∧
( _ゝ )「こんばんはジョルジュ検事補。」
目の前にいたのは全身黒尽くめのボディスーツとマントに身を包み、
二本の角が付いたマスクで顔覆った男だった。
マスクから覗く鋭い眼孔と、
対峙しているだけで威圧されそうな男のたたずまいには圧倒されそうになる。
- 195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:04:05.76 ID:xIw9sgs10
- _
(;゚∀゚)「君があの覆面の男か?」
∧_∧
( _ゝ )「周りはそう呼んでいるようだな。」
_
(;゚∀゚)「礼がまだだったな。ありがとう。」
∧_∧
( _ゝ )「礼など必要ない。それより、
奴らはついに君を消しにかかってきたようだ。」
_
( ゚∀゚)「あぁ、この街で正義を貫こうとする者は皆消されてしまう…
君も知っているはずだ。この街に法律なんてあってないような物だと…」
∧_∧
( _ゝ )「………」
_
( ゚∀゚)「君がいくら犯罪者達を捕まえても奴らの手引きで殆どが釈放されてしまう。
そしてまた元通りだ…
根っこを抜かなければ解決にはならない…」
- 197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:06:55.14 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
( _ゝ )「…君はまだ戦い続けるつもりはあるか?」
_
( ゚∀゚)「もちろんだ。」
∧_∧
( _ゝ )「分かった。それでは私を信じて待っていてくれ。」
_
( ゚∀゚)「待つ?」
∧_∧
( _ゝ )「さらばだ。」
_
( ゚∀゚)「あっ…」
覆面の男はそう言い残すと走り去って行ってしまった。
_
( ゚∀゚)「待つとは一体…」
- 199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:17:41.34 ID:xIw9sgs10
- 『本当かお!?』
_
( ゚∀゚)】「あぁ、本当だ。」
自宅のアパートに着いたジョルジュは、
電話でブーンに自分が覆面の男と接触した事を話した。
『まさか接触出来るなんて…』
_
( ゚∀゚)】「私が帰り道マフィアの手先に消されそうになったのを彼が助けてくれたんだ。
どうやら彼は事前に私が消されそうだったのを知っていたようなんだが。」
『それじゃあ敵ではないと言うのかお?』
_
( ゚∀゚)】「格好は不気味だったが、彼が正義の為に戦っているのは確かなようだ。」
『正義の為、かお…』
_
( ゚∀゚)】「それで、どうするんだ?」
『何がだお?』
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:25:57.12 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)】「本部長に報告するのかって事だ。」
『…いや、この事は二人だけの秘密にしておくお。』
_
( ゚∀゚)】「そうだな。分かった。それと…」
『次は何だお?』
_
( ゚∀゚)】「彼が去り際に私に言ったんだ。
「私を信じて少し待っていてくれ」と。」
『どういう意味だお?』
_
( ゚∀゚)】「私にも分からない。
だが彼の言う通りに待っていれば何かがあるかも知れない。」
『何が起きると言うのだお…』
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:27:50.74 ID:xIw9sgs10
- ――工事現場――
街にあるまだ鉄骨だけの建設中のビルの工事現場。
そこは度々マフィア達の取引場として使われている。
一つの電球だけが辺りを照らす薄暗い空間に数台の黒いバンが到着すると、
ワカッテマスと数人の手下がバンから降りてきた。
( <●><●>)「お待たせいたしました。」
( `ハ´)「相変わらず早いな。邪魔でも入らない内にさっさと始めよう。
ほら、約束の金だ。」
取引相手の中国人はケースを開きびっしり埋まった現金を見せた。
( <●><●>)「よろしい。私も今日は最上級の物を持ってきましたよ。おい。」
(=゚д゚) 「へい。」
ワカッテマスに促され手下も持っていたケースを開き中の麻薬を相手に見せた。
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:31:00.89 ID:xIw9sgs10
- ( `ハ´)「素晴らしい…」
( <●><●>)「それでは交渉成立という事で。」
そして二人が互いにケースを交換しようと手を伸ばした時だった。
(;<○><○>)
煤i;゚パ)
突然ワカッテマスの乗ってきたバンが爆発炎上したのだ。
(;<○><○>)「まさか奴が!」
(;`ハ´)「どうなっ…」
(;<◎><◎>)
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」」
煤i;゚パ)
問答無用に次々と爆発炎上させられて行くバン。
辺りは爆破の煙が立ち込め辺りが見えない状態となっていった。
- 205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:35:02.97 ID:xIw9sgs10
- (;<○><○>)「ゴホッ…くそっ、見えない…」
「うわっ!!」
「ぎゃぁぁぁ!!」
「あぁぁぁ!!」
Σ(;<○><○>)
煙の中から聞こえてくる手下達の悲鳴。
「ぐはっ!!」
「ぐあぁ!!」
一人また一人と一瞬の悲鳴が聞こえては静かになっていった。
- 207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:37:17.74 ID:xIw9sgs10
- (;<○><○>)「ハァ、ハァ…」
煙は徐々に晴れ、
ようやく辺りが窺えるようになるとワカッテマスはゆっくり周りを見回した。
すると。
(;<○><○>)
(#);パ)「あ…あ…」
辺りには気絶させられた取引相手と手下達が横たわっていた。
(;<○><○>)「ち、ちくしょうが…」
「後は貴様だけだ。」
- 209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:39:39.55 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
( _ゝ ) (<○><○>;)「え?」
∧_∧
三(# _ゝ )⊃) <◎>).・∵
((#) ;<◎>))「ひぃ…ひぃ…」
ワカッテマスは覆面男のパンチを浴びると、
顔を腫らし、鼻血を流しながら派手に尻餅をついた。
(#) ;<◎>)「くそぉ…」
尻餅をついたワカッテマスは懐から銃を取り出し応戦しようとしたが。
∧_∧
(# _ゝ )ノ 三 <∨>
(#) ;<◎>)「がぁぁぁ!!」
ワカッテマスが銃を構えるよりも早く覆面男の投げた手裏剣が右手を捕らえた。
- 210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 13:44:06.22 ID:xIw9sgs10
- ――事務所――
_
( ゚∀゚)「ふぅ…」
ジョルジュは自分以外誰もいない事務所のデスクで一人考え事をしていた。
_
( ゚∀゚)(確かに彼は私を助けてくれた。だが…だが本当に信じても良いのだろうか…)
「待たせたな。」
_
( ゚∀゚)「ん?」
「後ろだ。」
_
(゚∀゚ )
∧_∧ _
( _ゝ ) (゚∀゚;)
∧_∧
( _ゝ )「こんばんは。」
_
(;゚∀゚)「脅かさないでくれ…」
- 212 名前:間違えました…[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:00:08.96 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
(# _ゝ )「無駄な足掻きは止めろ!!
私には銃など通用しない!!」
覆面男はそのままワカッテマスの胸倉を掴み凄んだ。
(#) ;<◎>)「ば…化け物…」
∧_∧
(# _ゝ )「そうだ!!。私の顔をよく覚えておけ!!
貴様らが何度逮捕され釈放されようとも私が何度でも痛ぶって送り返してやる!!
何度でもな!!」
((#) ;<◎>))「ひぃぃ…」
∧_∧
(# _ゝ )「貴様に一つチャンスをやろう。
麻薬の密輸ルートと金を隠した銀行を全て教えろ。
そうすればこれ以上痛い目を見ずに済むぞ。」
(#) ;<◎>)「そ、そんな事を言ったら私は…」
∧_∧
(# _ゝ )「分かった。ではまず指を一本頂こうか。」
覆面男はワカッテマスの右手の人差し指を握り力を入れた。
(#) ;<◎>)「わぁぁぁぁぁぁ!!!!!分かった!!言うっ!!言うっ!!」
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:04:35.09 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
(# _ゝ )「こんなにあっさり白状するとは。
マフィアが聞いて呆れるな。そんなに痛みが嫌か?
だがお前はもっと人の痛みを知る必要がある。」
(#) ;<◎>)「何だと…」
∧_∧
(# _ゝ )「ふんっ!!」
覆面男はそのまま握っていたワカッテマスの指をへし折った。
(#) ;<◎>)「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
激痛に悲鳴を上げ、
ワカッテマスはじたばたともがき苦しんだ。
(#) ;<◎>)「指が…指…私の指が…」
- 215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:07:00.94 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
(# _ゝ )「これでもまだまだ足りなくらいだ。
次は貴様に相応しいベッドへ案内してやろう。」
(#) ;<◎>)「べ、ベット?」
∧_∧
(# _ゝ )「寝ていろっ!!」
覆面男はそう言うとワカッテマスにヘッドバットを食らわせ気絶させた。
(#) ;<◎>)「がはっ!!」
(#) ;<->)
- 217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:10:55.40 ID:xIw9sgs10
- (;^ω^)「………」
急行した工事現場には大破した数台のバンと数人の男達。
そして白い粉と札が散らばっていた。
川;゚ -゚)「これも彼がやったのでしょうか…」
(;^ω^)「…大胆な行動に出たもんだお。」
川;゚ -゚)「周りで伸びている男達はマフィアの…」
( ^ω^)「ワカッテマスの手下達のようだが…」
(^ω^ )( ^ω^)
( ^ω^)「肝心のワカッテマスはいないお。」
川 ゚ -゚)「ワカッテマスはこの取引には来ていなかったのではないでしょうか?」
( ^ω^)「それか奴だけ逃げたか…」
[P]_
( )「警部補!」
( ^ω^)「どうしたお?」
[P]_
( )「床にこんな物が落ちていたのですが。」
- 219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:15:43.47 ID:xIw9sgs10
- 巡査官がそう言いながら私に渡してきた物、
それはブーメンようにも見える尖った鉄板だった。
( ^ω^)「これは…」
川 ゚ -゚)「手裏剣ではないでしょうか?」
( ^ω^)「それにしても変わった形の手裏剣だお。
何かの動物の形のようだが。」
川 ゚ -゚)「何の動物でしょうか。」
( ^ω^)「さぁ、何か鳥のようにも見えるが。」
- 222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:19:14.55 ID:xIw9sgs10
- ――事務所――
_
( ゚∀゚)「ふぅ…」
ジョルジュは自分以外誰もいない事務所のデスクで一人考え事をしていた。
_
( ゚∀゚)(確かに彼は私を助けてくれた。だが…だが本当に信じても良いのだろうか…)
「待たせたな。」
_
( ゚∀゚)「ん?」
「後ろだ。」
_
(゚∀゚ )
∧_∧ _
( _ゝ ) Σ(゚∀゚;)
∧_∧
( _ゝ )「こんばんは。」
_
(;゚∀゚)「脅かさないでくれ…」
- 223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:24:04.02 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
( _ゝ )「しっかり待っていてくれたようだな。」
_
( ゚∀゚)「…あぁ、それで一体何をしたんだ?」
∧_∧
( _ゝ )「これを。」
覆面の男はそう言うと持っていた茶封筒をジョルジュに手渡した。
_
( ゚∀゚)「なんだこれは?」
∧_∧
( _ゝ )「奴が吐いた全ての金の隠し場所と麻薬の密買ルートだ。」
_
(;゚∀゚)「えっ!?君が一人でやったのか?」
- 225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:28:19.72 ID:xIw9sgs10
- ∧_∧
( _ゝ )「あぁ、奴は思いの他簡単に吐いたぞ。
今はお似合いのベッドで眠ってもらっている。」
_
( ゚∀゚)「そうか。だが、まだこれだけでは足りないぞ…」
∧_∧
( _ゝ )「だろうな。だからまたもう少し待っていてくれ。さらばだ。」
覆面男はそう言い残すとそのまま窓から外へ飛び降りた。
_
(;゚∀゚)「ちょっと待て!ここは五階だぞ!!」
慌てて窓の外を覗き込むジョルジュだっただが。
_
(;゚∀゚)「き、消えた…」
- 227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:31:22.19 ID:xIw9sgs10
- _
(;゚∀゚)「…そうだ。」
_
( ゚∀゚)】
ジョルジュはすかさず携帯を取り出しブーンに電話を掛けた。
『どうしたお?ジョルジュ。』
_
( ゚∀゚)】「ブーン今大丈夫か?」
『あぁ、事件でビルの工事現場にいたんだがさっき署に帰ってきた所だお』
_
( ゚∀゚)】「工事現場?」
『また彼が現れたんだお。我々が駆けつけた時にはいなかったが。
どうやらマフィアの取引現場で一暴れしたようだお。』
_
( ゚∀゚)】「…そう言う事か。」
『そう言う事?』
_
( ゚∀゚)】「あぁ、実はさっきまた彼と接触したんだ。」
『何だって!?』
- 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 14:36:08.32 ID:xIw9sgs10
- _
( ゚∀゚)】「彼の方から事務所に直々にやってきて、
私にマフィアの金の隠し場所と麻薬の密売ルートを教えて去って行った。」
『そんなまさか…』
_
( ゚∀゚)】「本当だ。彼はまたもう少し待っていてくれと言い残して去って行ったよ。」
『しかし何故そこまでして彼は戦うんだお…』
_
( ゚∀゚)】「理由は分からないがやはり彼も私達と同じ志を持って戦っているようだ。
今回彼と再会して私はそう確信したよ。」
『…教えてくれてありがとう。この事はまた二人だけの秘密にするお。』
_
( ゚∀゚)】「あぁ、その方が良いだろう。
それと明日にでも会えないか?
詳しい事は会って話したいんだが。」
『分かったお。それじゃあ明日の夜君の事務所へ行くお。』
_
( ゚∀゚)】「待ってるぞ。それじゃ。」
- 231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:00:13.03 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署――
(#´∀`)「まだ奴を捕らえられんのか!!さっさと捕まえろ!!」
( ^ω^)「我々も捜査を進めている所です。」
(#´∀`)「さっさとしろ!役立たずめ!!」
( ^ω^)「………」
昨晩の覆面男がマフィアの取引現場を襲った事件以来、
本部長は覆面男の逮捕に躍起になっていた。
無理もないだろう。
本部長は彼のせいで自分の地位が揺らぐ事や甘い汁が吸えなくなる事を恐れているのだから。
(#´∀`)「もっとパトロールの数を増やせ!絶対に捕まえるんだ!!絶対にな!!」
( ^ω^)「…了解。」
柏;゚ -゚)「失礼します!警部補直ぐに来てください!!」
クーが慌てた様子で本部長室へ入ってきた。
- 232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:02:43.67 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「事件かお!?」
川;゚ -゚)「ネラー通りのゴミ捨て場でワカッテマスが発見されたそうです。」
煤i;´∀`)「何っ!!」
煤i ^ω^)「何だって!?」
川;゚ -゚)「早く行きましょう!!」
( ^ω^)「分かった。本部長、行ってきますお。」
(;´∀`)「………」
- 234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:06:53.42 ID:xIw9sgs10
- ――ネラー通りゴミ捨て場――
( ^ω^)「通してくれお。」
現場に着いた私は急ぎ足で非常線を潜った。
そして。
煤i ^ω^)
(#) ;<->)
そこには手足を縛られ、
酷く痛めつけられた様子のワカッテマスが気絶した状態でゴミの山の上に放置されていた。
- 235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:10:37.19 ID:xIw9sgs10
- ( ^ω^)「また彼か。」
川 ゚ -゚)「いないと思ったらワカッテマスだけここに連れて行かれてたんですね。」
( ^ω^)「そのようだお…ん?」
ふとワカッテマスのスーツの胸ポケットに前と同じように紙が入っているのに気付いた。
( ^ω^)「これは…」
私は紙を抜き取り中を見た。
( ^ω^)「………」
( ^ω^)「全く。憎い事を…」
【ゴミの回収には間に合ったかな?】
- 237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:17:47.90 ID:xIw9sgs10
- ――VIP警察署――
(;´∀`)「そ、それでどうだったんだ?」
( ^ω^)「はい、酷く痛めつけられてはいましたが死んではいませんお。」
(;´∀`)「そうか…」
( ^ω^)「本部長、奴を釈放させようだなんて変な気は起こさないでくださいお。」
(;´∀`)「な、何を言い出すんだブーン…」
( ^ω^)「不当に職権を乱用しないようにと言っているんですお。」
(#´∀`)「貴様!!口を慎め!!
そもそも貴様一人がいきがった所で何が出来ると言うのだ!!」
( ^ω^)「確かに私一人では無理かも知れません。
ですが、彼らとならやれると私は信じています。」
- 239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:21:27.69 ID:xIw9sgs10
- (#´∀`)y━・「ふん!」
本部長は懐から葉巻とライターを取り出し火を着けようとした。
( ^ω^)「葉巻の吸い過ぎは体に毒ですお。」
(#´∀`)y━・「黙れ!!」
( ^ω^)「本当に止めた方が良いと思いますお。」
(#´∀`)y━・「黙れと言っているだろ!!」
( ^ω^)「まぁ、もう手遅れかも知れませんが。」
(#´∀`)y━・「何?」
( ^ω^)「だってそれは、マリファナ入りの葉巻ですものね。」
Σ(;´∀`)y━・「だ、だから何だと言うのだ!」
- 241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:22:59.69 ID:xIw9sgs10
( ^ω^)「警察のトップとも在ろうお方が麻薬に手を染めているなんて言語道断だお。」
(#´∀`)y━・「黙れ黙れ黙れ!!」
( ^ω^)「単刀直入に言いましょう。
貴方を告発させていただきます。」
煤i;´∀`)y━・
(;´∀`)y━・「馬鹿が!!そんな事が許されるわけないだろ!!」
( ^ω^)「今マフィアの後ろ盾のない貴方に何が出来るのですか?
もう貴方の葉巻の臭いを嗅がなくて済むのかと思うとせいせいする。それでは。」
(#´∀`)y━・「待て!!」
(;´∀`)y━・「おのれ…」
- 242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:25:52.28 ID:xIw9sgs10
- ――事務所――
_
( ゚∀゚)「本部長を告発するだなんて。君も大胆な行動に出たな。」
( ^ω^)「彼に触発されたんだお。私も戦わなければとね。
だが、上手くいくだろうかお…」
_
( ゚∀゚)「ワカッテマスさえ落とせば殆どの悪のシステムは麻痺するだろう。
銀行の摘発も麻薬の密売を阻止する事も時間の問題となり理不尽な釈放もなくなるはずだ。
しかしそれにはまだ裏付ける証拠と買収された人間の弱みが必要だ。」
( ^ω^)「それに奴の他にもマフィアはいるお。
街を徘徊している犯罪者達も後を絶たない。
まだまだ真の平和には時間が掛かるお…」
_
( ゚∀゚)「…そうだな。だが我々は勝つさ。
絶対に諦めなければな。」
( ^ω^)「諦めないか…」
私は窓の外の夜空に視線を移した。
夜空の月は雲に隠れ、辺りを完全な闇が覆っていた。
( ^ω^)「夜が更けてきたお。」
_
( ゚∀゚)「あぁ、今夜も彼は走り回っているのだろうな。」
( ^ω^)「我々も立ち止まってはいられないお。
だから走り続けよう…」
- 243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/03/26(木) 15:28:47.79 ID:xIw9sgs10
「闇の化身と共に」
完
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