- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:19:41.28 ID:FwA9m9Xp0
最近体の調子が悪いから、病院でみてもらうことにした。
ただの風邪ならまだいいが、重い病気だったりしたら大変だしな。
_
( ゚∀゚)「…」
(-;@∀@)「うーん…」
_
( ゚∀゚)「どうでしたか、先生。風邪ですか?」
(-@∀@)「すみません、私にはなにも言えません。
もっと大きな病院を紹介します。モララー病院はご存知ですか?」
_
( ゚∀゚)「ええ、まあ」
(-@∀@)「紹介状を送っておきますので、そちらへどうぞ」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:22:52.09 ID:FwA9m9Xp0
ただの風邪…なんだよな?
_
( ゚∀゚)「あの…どうなんでしょうか」
( ;・∀・)「……申し訳ございません。もっと大きな病院を紹介しますので、そちらへ…」
_
( ゚∀゚)「はあ……」
( ・∀・)「モナー総合病院はご存知でしょうか?」
_
( ゚∀゚)「知りません」
( ・∀・)「都内にあるんです。そちらに診断結果と、紹介状を送っておきますので…」
_
( ゚∀゚)「は、はい………」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:26:41.27 ID:FwA9m9Xp0
ただの風邪だ。絶対にそうだ。
_
( ゚∀゚)「…………」
( ;´∀`)「一応診断結果は出たのですが、何とも言えない感じです。
この病院で、このような症例は過去に無いもので……」
_
( ;゚∀゚)「あの、一体どんな……」
( ;´∀`)「申し訳ございません。立場上、下手なことは言えないのです。
荒巻大学病院の、クー先生はご存知ですか?」
_
( ゚∀゚)「……あ、世界一受けたい授業に出てた、脳の…」
( ´∀`)「そうです。脳医学の若き名誉教授、素直クーさんです。彼女に…」
_
( ゚∀゚)「紹介状ですかそうですか。わかりました」
( ´∀`)「お力になれず、申し訳ございません…」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:29:08.53 ID:FwA9m9Xp0
頼むお願いします神さま風邪であってください風邪でお願いします。
_
( ;゚∀゚)ドキドキドキドキドキドキドキドキ
川 ゚ -゚)「お待たせしました」
_
( ;゚∀゚)「ど、どうも!…あの、僕はその、病気なんですか…?」
川 ゚ -゚)「その前に、こちらを見てください。MRIの診断結果です」
_
( ゚∀゚)「え…これは…」
川 ゚ -゚)「この部分をよく見てください。黒い影が見えるでしょう」
_
( ii゚∀゚)「腫瘍ですか…!?」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:35:58.57 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「ええ。しかもこれは、ただの腫瘍ではありません。
通常の腫瘍なら切除さえできれば全快します。
ただし、この腫瘍は組織の半分が脳細胞でできている」
_
( ;゚∀゚)「!?」
川 ゚ -゚)「腫瘍ができているのは、脳の人間の欲求を司る部分です。
この腫瘍のせいでドパミン、セロトニン、アセチリコリン。
その他諸々の化学物質の分泌が減少しています。また、腫瘍は成長途中です」
_
( ;゚∀゚)「治してください! 治して!」
川 ゚ -゚)「治せます。この特殊な腫瘍は病名も確立された治療法も存在します。
その名もタナカヒロシ病。治療法は、満たされない性的欲求を満たし、
脳を急速な興奮状態にして、化学物質を分泌させる。
そしてフリバンセリンの効能を5倍にしたクーニトロンという薬を投与し、腫瘍を消滅させる」
_
( ゚∀゚)「すいません、意味不明です」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:40:57.49 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「あなたが今まで抑え続けていた性的欲求を満たす行為を、ベストの状態。
つまり理想的な状態、タイミングで行うのです。その状態で薬を飲む。ということです」
_
( ゚∀゚)「性的欲求…?」
川 ゚ -゚)「あるでしょう。女の子と性行為がしたいとか。
アブノーマルなセックスに憧れているとか。
大体このタナカヒロシ病の患者は、極度のフェチズムが多いので、
通常の人間と異なる性的趣向を持っている場合が多いです。
なので、もしかすると言いづらいことなのかもしれませんが、遠慮はなさらずに」
_
( ゚∀゚)「俺の……性的欲求………」
川 ゚ -゚)「ええ。恥ずかしがらずに仰ってください。これはあくまで、治療法なのですから」
_
( ゚∀゚)「……えと、それは…」
川 ゚ -゚)「はい」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:44:54.26 ID:FwA9m9Xp0
_
( *゚∀゚)「風俗嬢とかプロの人以外で可愛くて
淫乱じゃなくさらに俺に惚れている女のおっぱいをその女の合意の下で
揉みに揉むことです!!!!」
_
( ゚∀゚)世界で1番おっぱいから遠い男のようです
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:47:42.83 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「……うん、ええ………はい…」
_
( ゚∀゚)「すいません、変なこと言っちゃって…」
川 ゚ -゚)「医者と患者という立場でなければ、間違いなく頸骨を破壊していました」
_
( ii゚∀゚)「ちょっ…冷静に恐ろしいこと言わないでくださいよ!」
川 ゚ -゚)「しかし、今までのタナカヒロシ病患者に比べれば、なんてことはありません。
ある人は5歳児と性行為をしたいという欲求を持っていました」
_
( ゚∀゚)「その人はどうなったんですか?」
川 ゚ -゚)「生き延びたところで犯罪者になるだけだろうということで、見捨てました」
_
( ;゚∀゚)「同情できるようなできないような…でも可愛そうな人ですね」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:51:50.11 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「胸を触れば、欲求が満たされるのですね?」
_
( ゚∀゚)「え? ああ、まあ…」
川 ゚ -゚)「わかりました。ではこちらで手配を…」
_
( ;゚∀゚)「ちょっと待ってください!」
川 ゚ -゚)「はい?」
_
( ゚∀゚)「駄目ですよそんなんじゃ! だって、運命の出会いじゃないじゃん!」
川 ゚ -゚)「はあ…」
_
( *゚∀゚)「もっとこう…なんですかね、ある日突然出会い、二人は恋に落ちた…。
そういう状況がいいんですよ! 純愛が欲しいんですよ!」
川 ゚ -゚)(毎度のことながら、この病気の患者は鬱陶しくて気持ち悪いなあ)
「そうですか。鬱陶しくて気持ち悪いですが、考慮してみましょう」
_
( ;゚∀゚)「心の声だだ漏れじゃないですか! 思ってても言っちゃ駄目ですよ!」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 19:57:15.09 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「ちなみにジョルジュさん、恋人関係にあるような異性はおられるのでしょうか?
私のこれまでの人生全てをいないという答えに賭けて聞きます」
_
( ;∀;)「いませんよチクショウ!」
川 ゚ -゚)「難しいですね。条件を減らしてはもらえませんか?」
_
( ゚∀゚)「え…じゃあまあ…多少は妥協しますけど」
川 ゚ -゚)「じゃあ淫乱のプロで別に好きでもない相手でも胸を揉ませてくれる
化粧をばっちり決めたら可愛い女性とかどうでしょうか。30分以内に連れてこられますよ」
_
( ;゚∀゚)「ほぼ全部妥協してるじゃないか! そんなに僕は魅力の無い男なんですか!?」
川 ゚ -゚)「魅力どうこうの前に、人として認めたくないという気持ちを私は抱えております」
_
( ;゚∀゚)「医者のくせに患者に容赦ねえ!」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:02:01.44 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「ですが、妥協をしなければ治療が受けられない可能性もあります」
_
( ;゚∀゚)「そんなこと言――――――――ウグッ!?」
川 ゚ -゚)「どうされました?
_
( ゚Д゚)「ひょおおおおおお! おっおおぅっお…ごあっあごごごご…!」
川;゚ -゚)「まずい、発作だ! チアノーゼを起こしているぞ! 酸素吸入の準備を!」
o川;゚ー゚)o「はい!」
…………ちくしょう。
…………死んでたまるか。
…………まだ。
…………お母さんのおっぱいしか。
…………見たことないのに。
………………………………………………………………あ。
……………………………………………………………………………暗い。
………………………………………………………………………………………………………………………………。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:05:35.25 ID:FwA9m9Xp0
………………………………………………………………。
…………………………………………。
………………………。
………………………明るい。
_
( ゚∀゚)
川 ゚ -゚)「私がわかりますか? ジョルジュさん」
_
( ゚∀゚)「…………クー…先生」
目を覚ましたのは、病室のベッドの上だった。
朦朧としている意識の中で、俺は様々なことを悟ってしまった。
人生というのが酷くもろくて、不安定で、どうしようもないものであるということを。
_
( ;∀;)「……………」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:12:17.94 ID:FwA9m9Xp0
o川*゚−゚)o「先生…」
川 ゚ -゚)「ジョルジュさん」
_
( ;∀;)「…………………」
川 ゚ -゚)「ジョルジュさん。よく聞いて下さい。
あなたは今まで、半ば諦めた気持ちで、あなたの欲求を抑えていたのでしょう。
どうせ自分は…という気持ちで。ですが、努力というのは侮れません。
どんなに遠い目標でも、叶いそうにない夢でも、手を伸ばし、触れることができます。
それが人間の持つ1番強い力です。これだけ発達した医学でも、その力には適いません」
_
( ;∀;)「慰めは…よしてください。僕は今まで女性とお付き合いしたことすらないんです。
この歳になって、まだファーストキスすらしたことないんですよ。
あなたのように、頭も顔もいい人には、わからない苦労なんでしょうがね」
川 ゚ -゚)「私の頭と顔がいいのは否定しません」 俳川;゚ー゚)o(しないの!?)
川 ゚ -゚)「しかし、私とて努力したんです。努力して勉強し、努力して恋愛している。
最初から全く苦労していないなどと思われるのは、勘違いも甚だしいです」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:17:42.55 ID:FwA9m9Xp0
- _
( ;゚∀゚)「…………でも」
川 ゚ -゚)「でも、はこれから禁止です」
クー先生の真剣な顔は、冷たくて恐ろしいけど、どこか優しい。
川 ゚ -゚)「頑張りましょう。ジョルジュさん」
_
( ゚∀゚)「は、はい……」
気持ちが落ち着いてきたところで、詳しい診断結果を教えてもらった。
余命はおよそ3ヶ月から半年。短い。
なんとなく、80歳くらいまで生きるだろうとたかをくくっていた自分にとって、それはあまりにも短かった。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:23:29.80 ID:FwA9m9Xp0
薬を投与し続ければ、腫瘍の成長を若干抑えることができるらしい。
しかしそれでも、もって一年らしい。
さらに薬には抗がん剤を上回る、強烈な副作用があるということだ。
薬に頼る選択肢は無かった。
俺は正々堂々と、おっぱいを揉むんだ。
川 ゚ -゚)「この病気は国際指定研究病理(ISB)の認定を受けています。
治療費は全て国連が負担してくれますので、ご心配なく。
私はこれからあなたの担当医になります。
携帯の番号を教えますので、なにかありましたら大学病院を通す必要はありません。
直接私の方に連絡して下さい」
_
( *゚∀゚)「………………」
川 ゚ -゚)「?」
_
( *゚∀゚)「先生みたいに若い女性に、電話番号を教えるのは初めてです! 感激です!」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:28:58.12 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「一応教えておきますが、治療のためです。
あなたには患者としての興味はありますが、それ以上はありませんので、勘違いなさらないように」
_
( ゚∀゚) ねえ、この人いつもこんな感じ?
o川*゚ー゚)o えっとね、今日は大分機嫌いいほうだと思う
_
( ゚∀゚) うへえ。売れ残り予備軍だね
o川*^ー^)o ぷっ……ふふ…っ
川 ゚ -゚)「発作が起きたときの薬を渡しておきます。
常備薬と緊急時のもの、二種類渡しますので、お間違いのないように」
_
(#)∀゚)「はい。これからよろしくお願いします」
川 ゚ -゚)「キューさん、午後の病室訪問は一人で全部やってください」
o川*゚3(#))o「死ぬ気で終わらせまーす」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:35:56.35 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「何か異常がありましたらすぐに連絡を下さい。
それと、一週間に一度は病院に来て、診察を受けるようにしてくださいね」
この日から、俺の生活は一変した。
スーパーの仕事を辞めて、医療保険でもらった金を治療にあてた。
治療法の第一歩は、女性と出会うことだ。
チャット、掲示板、出会い系、最近はNSNなど、ネット上には出会いが溢れている。
_
( *゚∀゚)「っしゃあ! サオリさんのメルアドゲット!」
何人かの女性とメールで連絡を取り合い、それなりに仲良くなれた。
今まで母親以外の女性とメールをしたことが無かったというのに、実にスムーズにことが運んでいる。
最初は短いと感じた3ヶ月という期限が、少し余裕に感じられるくらいである。
しかし、治療は順調に進んでいるはずだというのに、俺の心はどうしようもなく渇いていた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:40:14.34 ID:FwA9m9Xp0
一週間に一度の診察は、毎回とても時間がかかる。
MRなんとかいう機械に入って、全身をスキャンするのだが、まだ慣れない。
川 ゚ -゚)「経過は良好です。最初に診察したときより、ほんの少しだけ腫瘍が小さくなってる」
_
( *゚∀゚)「このまま腫瘍が消えたりとか…!」
川 ゚ -゚)「あり得ません。まだ腫瘍の力が弱いから、成長が不安定なのです。
いずれ、薬の力さえも受けつけなくなります。そうなったら、治療はほぼ手遅れといっていいでしょう」
_
( ゚∀゚)「あ………う…」
川 ゚ -゚)「! すいません、失言でした。
あくまでも最悪なケースのことですので、まだ心配されることはありません」
_
( ゚∀゚)(“まだ”…………かあ…)
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:44:52.27 ID:FwA9m9Xp0
川 ゚ -゚)「ところで、治療は順調ですか?」
_
( ゚∀゚)「ええ…まあ…。実は明日、maxiで知り合った女性と会います」
川 ゚ -゚)「maxi?」
_
( *゚∀゚)「え、知らないんですか? インターネットのこみゅにてーサイトですよ。
ふとくてい多数のゆーざがあかうんとでろぐいんして…という感じの」
川 ゚ -゚)「それは何でもいいんですが、とにかく治療が成功されることを祈っています」
_
( ゚∀゚)「あ、はい……」
川 ゚ -゚)「今日の診察は以上です。お薬を出しますので、ロビーで待っていてください」
_
( ゚∀゚)(うーむ…)
クー先生の目の下にくまがあるのを見つけた。
先生も先生で忙しいのだろう。
早く病気を治して、先生の仕事を減らしたいものだ。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:48:50.43 ID:FwA9m9Xp0
“昨日”にとっての、“明日”になった。
仕事をやめて、テレビも見なくなってから、曜日の感覚が全く無くなった。
明日は明日としか言えないし、来週がいつから始まるかもわからない。
もしかすると、これは一寸先も見えない状況に立たされているからかもしれない。
_
( ;゚∀゚)(寒い!)
駅前で待ち続けること、既に一時間。
セーターで来たのは間違いだった。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:52:05.80 ID:FwA9m9Xp0
_
( ;゚∀゚)(神さまー頼むぜー可愛い女の子…俺に惚れてくれる可愛い女の子…)
相手の顔はまだ知らない。
相手も俺の顔はまだ知らない。
_
( ゚∀゚)「…………んー?」
そのとき変な感覚に襲われた。
背中がぞくぞくするような、心が不安定になる胸騒ぎを覚えた。
まるで黒人のゲイにちんちんを鷲づかみされているみたいだ…。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:54:47.88 ID:FwA9m9Xp0
- _
( ゚∀゚)「………おん?」
妙だ。この感じはまえにもζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュさーん?」
_
( ゚∀゚) ζ(゚ー゚*ζ
_
( ゚∀゚) ζ(゚、゚*ζ「あれ? 違ったかな」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 20:59:38.79 ID:FwA9m9Xp0
- _
( ;∀;)「maxiやってて…よかった!」
買ト(゚、゚;ζ「えっ」
天使やでえ…!
天使が現れおったでえ……!
俺は歓喜した。
ロボドラゴンという渋いハンドルネームを使っていたデレさんは、
男勝りなボーイッシュか、あるいはちょっと変わった女の子だろうと思っていたので、
いい意味で予想を裏切られたというわけだ。
_
( *゚∀゚)「ジョ…ジョルジュ! ジョルジュ長岡! 29歳です! よろしく!」
ζ(゚、゚;ζ(うわあ悪い意味で予想を裏切られた…)
ど、どうも…デレです。メールよりテンション高いですね
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:04:21.52 ID:FwA9m9Xp0
- _
( *"∀")「はは…それほどでも。じゃあいきましょう!」
ζ(゚ー゚*ζ「え、どこに?」
_
( ゚∀゚)「どこって…ほら、メールで約束した、映画館に…」
ζ(゚ー゚*ζ「え…今お昼だし、ご飯食べましょうよ?」
_
( ゚∀゚)(もう食べてきたのに…)
「い、いいですけど…。どこ行きます? 吉野家近いですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「吉野家?……あー…じゃあいいです。映画みましょう」
_
( ゚∀゚)「え? ご飯は?」
ζ(゚ー゚*ζ「い・い・で・す。映画館で」
_
( ;゚∀゚)「あ…え…はい」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:10:49.80 ID:FwA9m9Xp0
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
デレさんはさっそく携帯をいじり始めた。
こういうとき、相手そっちのけで携帯をいじるのは、マナー違反だと思うのだが、どうだろう。
_
( ゚∀゚)「今日寒いですねー!」
ζ(゚ー゚*ζ「ですねー」
_
( ゚∀゚)「スカート寒くありません?」
ζ(゚ー゚*ζ「寒いですよ?」
_
( ゚∀゚)「あー…」
ζ(゚ー゚*ζポチポチポチポチ
_
( ゚∀゚)「ですよねー!」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:13:15.98 ID:FwA9m9Xp0
ζ(゚ー゚*ζ「セーター……」
_
( ゚∀゚)「あ、でもっ…え、なんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「え? いや、そっちからどうぞ」
_
( *゚∀゚)「いえいえいえそんな…そちらからどうぞ!」
ネットや書籍で調べた結果、女の子を相手にするときは聞き手に回るといいらしい。
危なかった。あらかじめ予習していてよかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……ジョルジュさんも、セーター一枚じゃ、寒いだろうなーって。
他にアウター無かったんですか?」
_
( ゚∀゚)「あーたーって何ですか?」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:15:39.54 ID:FwA9m9Xp0
ζ(゚−゚*ζ
_
( ゚∀゚)
ζ(゚ー゚*ζ「……ぷ……いや、何でもないです」
なにか知らないが、デレさんは笑ってくれた。
快調な出だしとはいかないまでも、及第点はいっていると思う。
ζ(゚ー゚*ζ「ところで、今なんの映画やってるんですか?」
_
( *゚∀゚)「あ、えっとですね、今エヴァと遊戯王が3D上映で見られるんですよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「エヴァって…あのエヴァ? ロボットが出てくる…」
_
( *゚∀゚)「え? いやいや、違いますよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、違ったっけ?」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:22:50.58 ID:FwA9m9Xp0
- _
( *゚∀゚)「あれはですね、機械ではなく生命体なんですよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「あー…」
_
( *゚∀゚)「アダムって呼ばれる…なんというか、全ての生命の起源がいたんですよね。
まあある人は神と呼ぶんでしょうが…。使徒と闘うにはATフィールドを中和させる必要があったんです。
それには同じようにATフィールドを展開させて打ち消すしかなかった。。
そこでアダムのコピーを作って、汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンを作ったんです!」
ζ(゚ー゚*ζ「へー……そうなんですかー」ポチポチポチ
_
( *゚∀゚)「だからロボットではないんですよ。
いやーよくいるんですよね、あの拘束具を装甲だと思ってしまって、
エヴァンゲリオンをロボットだと思ってしまう人が。
でもATフィールドは心、精神が関係するバリヤーであって、ロボットには決して…」
ζ(゚ー゚*ζ「詳しいですね、ジョルジュさん。オタクですか?」
_
( ゚∀゚)「……オタク? え…いや…」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:26:42.19 ID:FwA9m9Xp0
俺はオタクではない。
フィギュアとか興味は無いし、アニメだってよほど好きじゃない限りDVDやグッズは買わない。
というか、エヴァンゲリオンがロボットじゃないことくらい、常識じゃないのか?
ζ(゚ー゚*ζ「すいません、私アニメよくわかんないんで」
_
( ゚∀゚)「あー…そうですか。あ、じゃあ、アバターとかにします?
あれもまあ…3Dで迫力があるし…」
ζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュさんって、お仕事なにやってるんですか?」
_
( ;゚∀゚)「あ…いや…あ…今はしてないんだ。ちょっと事情があって」
ζ(゚ー゚*ζ「その歳で仕事してないの、やばくないですか?」
_
( ;゚∀゚)「え? ああ…やばいかもね…ははは!」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:31:04.67 ID:FwA9m9Xp0
ζ(゚ー゚*ζポチポチポチポチ
_
( ゚∀゚)「あの、そういえばワンピースの劇場版も…」
ζ(゚ー゚*ζ「その髪、どこで切ったの?」
_
( ゚∀゚)「あ…え、髪? 近所に床屋があって、そこで…」
_
( *゚∀゚)「あ…そういえばさ、傑作なんだよ! このまえその床屋で…」
ζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュさんって、なんか私のイメージと違いました」
_
( ゚∀゚)「馬の頭……え、なに?」
ζ(゚ー゚*ζ「イメージと全然違う」
_
( ;゚∀゚)「え? なに、ごめん。何のイメージ?」
ζ(゚ー゚*ζ「…………はー…」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:36:00.81 ID:FwA9m9Xp0
- _
( ;゚∀゚)「ど、どうしたの? 機嫌悪いみたいだけど…なんかあったの?」
ζ(゚−゚*ζ「いーえ」
_
( ;゚∀゚)「お腹空いた? やっぱりどこか寄ろうか? あ、ほら、あそこにマックあるし。
もしかして歩き疲れた? あ……寒いなら、俺のセーター貸してあげるよ!
俺さ、最近体脂肪率やばくてさー! デレさんより脂肪あるから、寒さは大丈夫!」
ζ(゚−゚#ζ「……………」
_
( ;゚∀゚)「……………デレさん?」
ζ(゚ー゚*ζ「…………うん、まあ、私も悪かった」
_
( ゚∀゚)「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと確認しない私も悪かった。ていうか運も悪かった。
とゆーわけで、反省会終わり。かいさーん」
_
( ;゚∀゚)「か、かいさーん! ははは……え、何それ? え?」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:42:40.19 ID:FwA9m9Xp0
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんね。帰る」
_
( ;゚∀゚)「……………………え……あ、デ……」
遠ざかるデレさんの後ろ姿を見て、気がついた。
彼女と会う前に感じた妙な感覚には、ちゃんと名前があって、俺はその名前を知っていたのだ。
デジャブだ。
中学三年のとき、好きだった女の子に告白する前と、全く同じ感覚だった。
あれは、心がずたずたになる前兆だったんだ。
_
( ∀ )「お……おごおごごごご…ぐうぅう! ぐ…ゲフッ…ぐうぅぅぅ!」
視界の端から黒く染まり始め、世界が縮まっていった。
内臓ごと飛び跳ねているような心臓の動悸で、頭が真白になった。
……………………死にたくない。
……………………でもそれ以上に。
……………………………………………………………………………死にたい。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:47:03.27 ID:eF76MX3E0
……………………………………………………。
………………………………………………白い。
…………………………………………明るい。
…………………………………………聞こえる。
………………………………………………誰?
川 ゚ -゚)
………………………………………………あ。
_
( "∀")「………………おっぱい?」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:51:38.66 ID:eF76MX3E0
o川*゚−゚)o「大変。まだ意識がしっかりしていないみたいですね。
クー先生の高速道路より平らな胸を見て、おっぱいだなんて…」
川 ゚ -゚)「キューさん。輸血パックから、点滴に取り替えて死んでください」
o川;゚ー゚)o「わかりま……いやその仕事はできません!」
病室で目を覚ましたのは二回目なので、慌てなかった。
ただ最初と違って、体が石のように動かない。
川 ゚ -゚)「ジョルジュさん。私がわかりますか?」
_
( ゚∀゚)「…………………売れ残り」
o川*゚ー゚)o「意識が戻ってきたみたいです!」
川 ゚ -゚)「がん細胞注入しますよ二人とも」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 21:56:38.27 ID:eF76MX3E0
倒れたひょうしに脳みそを垂れ流してしまったのか、頭が全く働かない。
声は聞こえるし喋ることもできるが、全てが億劫で、思考も纏まらなかった。
川 ゚ -゚)「急に容態が悪化して、救急車で運ばれてきたんです」
_
( ゚∀゚)「……あー」
川 ゚ -゚)「倒れるまえのこと覚えていますか?」
_
( ゚∀゚)「………デート…」
川 ゚ -゚)「女性と会っていたんですね?」
_
( ゚∀゚)「…………デレさん……」
川 ゚ -゚)「……今はまだ薬の影響で体が動かないと思います。
薬が切れてから、軽い食事をしましょう。点滴だけじゃ力が出ませんから」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:03:16.44 ID:eF76MX3E0
o川*゚ー゚)o「流動食を作らせたら日本一と名高い私が、
うんとおいしいもの作ってあげますね!」
_
( ゚∀゚)「…………………可愛い」
o川*^ー^)o「んもう、正直なんだから!」
川 ゚ -゚)「クソみたいな茶番はそのくらいにして、ゆっくり休んでいて下さいね」
o川*゚ー゚)o「先生って言葉を選ばない医者として日本一ですね」
川 ゚ -゚)「…なにせ、あなたは三日間も眠っていたんですから」
_
( ゚∀゚)「…………………」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:05:39.23 ID:eF76MX3E0
川 ゚ -゚)「ああ、それと、救急車を呼んでくれた方に、あとで連絡した方がいいかもしれませんね。
お礼をするかどうかは任せますが。名前は、デレさんです。可愛らしい女性でした」
……………………………白い。
……………………………布団が重い。
……………………………病院の匂い。
……………………………慣れない。
……………………………しょっぱい。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:09:55.98 ID:eF76MX3E0
それから一週間、ベッドの上で過ごした。
流動食は評判(というか自画自賛)と違って苦くて甘くてぬるくてまずかった。
ようやく歩けるようになってから、ちゃんとした診察を受けた。
MなんとかIという機械にはまだ慣れていない。
川 ゚ -゚)「悪化してます」
_
( ゚∀゚)「……はっきり言いますね」
川 ゚ -゚)「じゃあ濁します。
どうやら症状の方がやや進みがちな雰囲気をかもし出している可能性が低くないと思われ…」
_
( ;゚∀゚)「そ、そんな意味の無い思いやり初めて受けた!」
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:15:24.18 ID:eF76MX3E0
川 ゚ -゚)「今から少し、怖いことを言うつもりですが、聞いてくれますか?」
_
( ゚∀゚)「え?」
o川*゚−゚)o「………………」
_
( ;゚∀゚)「………………はい」
川 ゚ -゚)「この病気が治療されずに、最悪のケースに陥った場合のことです」
_
( ;゚∀゚)「うっ……ううっ……はい…」
川 ゚ -゚)「まだこの病気が特殊な脳腫瘍であることがわかっていなかった頃、私のところに
あなたと同じ症例の人間が何人も訪れました。
治療法が確立されていなかった頃なので、彼らはただ死を待つしかありませんでした」
_
( ;゚∀゚)「……………………」
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:23:07.94 ID:eF76MX3E0
川 ゚ -゚)「タナカヒロシ病はヨーロッパでは、マーシフルデスと呼ばれています」
_
( ゚∀゚)「まーし…」
川 ゚ -゚)「慈悲深き死、という意味です。
脳腫瘍は薬で痛みを抑えなければ、あまりの苦痛で精神がおかしくなってしまうほど
辛い病気である、というのが一般的なのですが、タナカヒロシ病は違う。
患者はみんな、眠るような最期を迎えます。痛みも、苦しみもない」
_
( ;゚∀゚)「眠るように……」
死を突きつけられてから、すでに1ヶ月が経っている。
しかし具体的な恐怖を覚えたのは、今が初めてだ。
川 ゚ -゚)「いわば安楽死です。
腫瘍が起因して分泌されるキロチンという化学物質が、痛みやストレスを抑えるのです。
同時にキロチンは、腫瘍そのものの成長を抑える働きもあり、薬にも利用されています」
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:29:32.16 ID:eF76MX3E0
- _
( ゚∀゚)「じゃあ、苦痛はないんだ…」
川 ゚ -゚)「しかしキロチンは、過度のストレスによって分泌が止まることがあります。
そのとき起こる症状が、例の発作なのです」
_
( ;゚∀゚)「ストレスで発作…そうか、身に覚えがある…」
川 ゚ -゚)「これはとても、恐ろしいことなんですよ」
_
( ゚∀゚)「ど、どういうことでしょうか」
川 ゚ -゚)「性的欲求を満たすことで腫瘍は成長を止める。
しかしひとたび失敗してしまえば、キロチンの分泌が止まり、発作が起こる。
発作が起これば症状が進み、腫瘍の成長が早まる。
ここまで言えば、わかりますね?」
_
( ;゚∀゚)「う……ううぅぅ……!」
川 ゚ -゚)「つまり、治療に失敗する度に寿命が早まり、苦痛が増えるということです。
だからときに患者は、ある瞬間を境に一切の治療を辞める。
そうすれば発作から解放され、快適な生活を送れるからです。
安楽死を選ぶか、治療に賭けて苦痛と闘うか、あなた自身で選ばなければならない」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:36:11.69 ID:eF76MX3E0
- _
( ;゚∀゚)「……ほ、発作を」
川 ゚ -゚)「抑える薬はありますが、絶対ではありません。
治療法はご存知の通り、あなたの抑えられ続けている欲求を満たすことだけ。
それと、安楽死についてですが、国連は一つの見解を公式に発表しています」
_
( ゚∀゚)「ど、どんな……」
川 ゚ -゚)「通常、安楽死を選べるのは患者が植物状態になり、意識がなく回復が見込めない状態で、
家族などの近しい人物たちから要請があった上で、ということになります。
しかしタナカヒロシ病の患者の場合、意識はあるけれど、治療が叶わない場合がある。
そのとき本人の要請で、全ての治療を辞めることができる。
最期の瞬間まで、まともな意識を保って死にたい、そういう主張が出たからです。
これはタナカヒロシ病の患者にのみ、国連が認めている、生命の権利なのです」
_
( ゚∀゚)「ああ……」
川 ゚ -゚)「すみません、喋りすぎました」
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:40:11.77 ID:eF76MX3E0
o川*゚−゚)o「選べるのはあなただけです。
でも私たちとしては、きちんと治療をして治したいと思っています」
川 ゚ -゚)「答えは急がせませんよ」
_
( ゚∀゚)「教えて下さい。俺の寿命は…あとどのくらいなんですか…?」
川 ゚ -゚)「…………発作のせいで、症状がかなり悪化しました。
今動けているのは、この腫瘍がかなり特殊で、身体能力にあまり影響が出ないか…」
_
( ;゚∀゚)「俺の寿命は……!」
川 ゚ -゚)「…およそ三週間です」
_
( ゚∀゚)「…………あ……三週間…18日? 20日くらい……」
川 ゚ -゚)「……三週間弱、だという意見が多かったです。私も、同じ意見です」
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:45:49.24 ID:eF76MX3E0
- _
( ゚∀゚)「三週間……弱…?」
o川* − )o「……」
川 ゚ -゚)「はい」
_
( ゚∀゚)「………み、みじけええ……三週間弱って…17日間とか、16日間とか…でしょ?
うは……はははは……みっじけええ…夏休みよりみじけえ…冬休み…くらい?」
川 ゚ -゚)「はい」
_
( ゚∀゚)「ははは…マジでみじけええ……薬は…? 進行を抑える薬があるとかなんとか…」
川 ゚ -゚)「ありますが、もうあまり意味は無いでしょう。伸びたところで、5日くらいです。
おまけに副作用で、ベッドの上から離れられなくなります」
_
( ゚∀゚)「駄目じゃん。はははは…駄目じゃん、なにそれ……く、はは…」
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:50:31.54 ID:eF76MX3E0
o川*゚−゚)o「ジョルジュさん、あの…」
_
( ゚∀゚)「いやーわかってるわかってる。やけになったりしないよ。
自殺したりとかさ。だって、死ぬまで一応健康でいられるんでしょ?」
川 ゚ -゚)「運動などはできませんが、歩行や食事などの日常生活には支障ありません」
_
( ゚∀゚)「なんだっけ、慈悲深き死、だっけ。確かにそうだよなあ。
病気になったら、苦しいもんなあ。今のうちに死ねてラッキーかも」
川 ゚ -゚)「どう捉えるかは自由です」
_
( ゚∀゚)「いやあ、よかったよ。もう発作は嫌だからなあ。
残り三週間、ゆっくりしようかな」
川 ゚ -゚)「それも、あなたの自由です」
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 22:55:08.38 ID:eF76MX3E0
- _
( ゚∀゚)「でもさ、安楽死とかよく認めてくれたもんだね」
川 ゚ -゚)「というと?」
_
( ゚∀゚)「宗教的にそういうのまずい国とかあるじゃないですか。
国連って、世界中の国が集まってる組織なんでしょ?」
川 ゚ -゚)「ええ」
_
( ゚∀゚)「安楽死は駄目って、誰か言わなかったのかな」
川 ゚ -゚)「反対意見は多数ありました。せめて治療を促すべきだという意見も。
ただし、世界的に有名な日本人医師が、安楽死という選択を猛烈に主張したのです。
彼には権威があり、また国連を動かすほどの説得力も持っていました」
_
( ゚∀゚)「すごいやつもいたもんだなあ。俺なんか、ただの無職だからなあ」
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:01:29.95 ID:eF76MX3E0
川 ゚ -゚)「実はそのとき、彼自身もその病気にかかっていたのです。
医者であり、患者でもある彼の言葉は、国の代表者たちの心を打った」
_
( ゚∀゚)「へえ……」
川 ゚ -゚)「彼の名前は田中浩。
タナカヒロシ病を発見し、さらに治療法も確立させた、世界最高の名医です」
_
( ゚∀゚)「……ああ、そいつだったんだ……」
川 ゚ -゚)「最期の瞬間まで、彼は笑って過ごしたと言われています。
彼の死後、遺志を受け継いだ有志の団体が行動を起こし、安楽死を公式に認めさせました」
_
( ゚∀゚)「すげえなあ…国連を動かしたんだ……すげえなあ…」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:04:57.26 ID:eF76MX3E0
言葉が言葉としてではなく、音として聞こえていた。
虚無感というような仰々しい感覚ではなく、もっと単純に、そう、俺はからっぽだった。
_
( ゚∀゚)「……もう、いい」
川 ゚ -゚)「なので選択は自由…はい?」
_
( ゚∀゚)「もう先生でいい。揉ませて」
川 ゚ -゚)「私はあなたに好意は持っていませんよ」
_
( ゚∀゚)「やだ。揉む」
_
((( ゚∀゚) (((゚- ゚;川
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:08:20.62 ID:eF76MX3E0
- _
( #゚∀゚)「うおおおおおおおおおお!!!」
川;゚ -゚)「きゃああああああ!」
o川;゚−゚)o「ジョルジュさんしっかりして!
それはおっぱいではありません! 胸板です!」
_
( #゚∀゚)「キューちゃんでもいいいいい! 揉ませろおおおおおお!!」
o川;゚ー゚)o「ちょちょちょっと待っ…!」
_
( #゚∀゚)モミモミモミモミモミモミモミモミ
o川ii゚ー゚)o「いやあああああああああああああああああああ!!!」
川;゚ -゚)「誰かクックル先生を呼んで! 別の意味で発作が!」
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:13:35.98 ID:eF76MX3E0
さんざん暴れた俺は、筋肉の塊みたいな医者に取り押さえられた。
医者なのにあの筋肉はなんなんだ。
ボディービルダーとヘヴィ級ボクサーを足して2で割らなかったような体をしていた。
看護師のキューちゃんは泣いていた。
あとで謝ったらビンタを喰らった。
しかし、その日流動食は出なかった。
用意された食事は、吉野家の牛丼のテイクアウトだった。
久しぶりに肉をがっついた。
何だか、そんな単純なことでも、生きてるって感じがした。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:17:17.72 ID:eF76MX3E0
からっぽだった体に、安い牛肉と生気が詰め込まれる。
_
( ゚∀゚)「……あ」
そうえいば、デレさんにまだお礼を言っていなかった。
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:20:57.35 ID:eF76MX3E0
学生の頃から、宿題を終わらせるのは早かった。
しかし取りかかるのも遅かった。
小学生の頃は、夏休みの宿題を8月31日の朝から始めて、日付が変わる頃に終わらせるというのは、
もはや俺の中で普通のことだった。
時間が無いと、人は迅速に動けるのだ。
数少ない人生経験で得た、人間の真理だ。
安楽死のことを教えられた日の翌日、俺はデレさんと会う予定を取り付けた。
時間が無いと言うと、彼女はすぐに了承してくれた。
俺が思っている以上に、彼女は「いい人」なのだろう。
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:25:12.57 ID:eF76MX3E0
ζ(゚ー゚*ζ「お久しぶりです」
_
( ;゚∀゚)「あ、ど、どうも」
ζ(゚ー゚*ζ「座ります?」
_
( ゚∀゚)「え? でもズボンが汚れませんか?」
ζ(^ー^#ζ「地べたに座るわけないでしょ。そこのベンチですよ」
_
( ;゚∀゚)「あ……いやーははは…! かたじけない」
今日も出だしは最悪だ。
早くも死にたくなってきた。
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:28:50.49 ID:eF76MX3E0
_
( ゚∀゚)「………あ」
ζ(゚ー゚*ζ「あの…」
_
( ;゚∀゚)「あーあー…! そちらからどうぞ!」
ζ(゚ー゚*ζ「……この前は急に帰ったりしてごめんなさい。
怒ってるでしょう?」
_
( ;゚∀゚)「え? 怒っ…」
_
( *゚∀゚)「ははは…そんな訳ないでしょう!
だってあなたは命の恩人なんですから!」
ζ(゚ー゚*ζ「…そう」
_
( ゚∀゚)「ええ…命の………」
ζ(゚ー゚*ζ「………………」
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:35:21.34 ID:eF76MX3E0
デレさんは俯いて、黙り込んでしまった。
よくよく考えてみれば、ほぼ他人の俺が急に会いたいとか言ってきたから、さぞかし気味が悪かっただろう。
ただお礼を言いたかっただけなのに、逆に気を使わせてしまったかもしれない。
何とかしなければ。
ζ( − *ζ「……」
_
( ;゚∀゚)「…あっ……あーそうそう、すごい面白い話があるんですよね。
僕がよく行く床屋があるんですけど、なんとその店主が、馬の頭を……」
ζ(゚−゚*ζ「ジョルジュさん……病気なんですか?」
_
( ゚∀゚)「落ち武者のように……え?」
ζ(゚−゚*ζ「盗み聞きするつもりはなかったんですけど、聞こえちゃったんです。
あの美人の医者の人が話してるのを…」
_
( ;゚∀゚)「あ……あの……」
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:39:32.47 ID:eF76MX3E0
ζ(゚−゚*ζ「何のご病気か知りませんけど…とにかくごめんなさい。
ひょっとしたら私のせいで、あんなことになっちゃったんじゃないかと…」
_
( ;゚∀゚)「いや……いやいやいやいや! そんなことは無いよ!
全部俺のせいなんだ。俺がクズ過ぎるだけでさ……君はなにも悪くないよ!」
ζ(゚−゚*ζ「美人の先生も、同じことを言っていました…」
_
( ;゚∀゚)(…あのアマ)
ζ(゚ー゚*ζ「……元気そうで、少し安心しました。
でも無理はしないで、ちゃんと治療してくださいよ。
私にできることがあれば、力を貸しますから」
_
( ゚∀゚)「ほ、本当に!?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ」
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:42:47.97 ID:eF76MX3E0
- _
( *゚∀゚)「じゃあおっぱい揉ましてくれる!? 生で!!」
ζ(゚ー゚;ζ「ええもちろ……ふざけんな!」
_
( ;゚∀゚)「だ、だって今なんでもしてくれるって…!」
ζ(゚ー゚;ζ「だからってどうしておっぱいが出てくるんですか!」
_
( ゚∀゚)「そういう病気なんだよ!!」
ζ(゚ー゚;ζ「もはや心の病気じゃないですか!!! 私じゃどうにもなりませんよ!!」
_
( ;゚∀゚)「でぇーいもはや数打ちゃ当たるだああああ!!」
_
( ゚∀゚)モミモミモミモミモミモミモミモミ
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ…ちょっと……やめ……ん…んんっ……!!」
('A`)「母ちゃん。なにあれ」
J( 'ー`)し「あなたには無縁のイベントよ。見てはいけません」
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:48:26.35 ID:eF76MX3E0
デレさんのおっぱいはビーズクッションよりも柔らかかった。
その後体重の乗ったストレートを二発もらったが、俺は満足だった。
病院に戻ってから、脳の検査をした。
最近は毎日のように検査を受けている。
なんとかRI検査にも、ようやく慣れてきた。
いまさらこの検査に慣れたからって、どうということは無い気がするけど。
川 ゚ -゚)「腫瘍の状態は変わらず、です」
_
(#)∀゚)「そうですか…一応、治療はやったんですけどね」
o川*゚−゚)o「セクハラ眉毛!」
_
(#)゚∀゚)「今日も外で治療をしてきました」
川 ゚ -゚)「セクハラ眉毛公爵」
- 154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/28(木) 23:53:25.68 ID:eF76MX3E0
- _
( ゚∀゚)「無駄に爵位が高いですね」
川 ゚ -゚)「検査はこれからも、毎日受けてもらいます」
_
( ゚∀゚)「わかりました」
川 ゚ -゚)「治療はどうしますか?」
_
( ゚∀゚)
o川*゚−゚)o
川 ゚ -゚)
_
( -∀-)「……………………」
スーパーのバイト時代を思い出していた。
毎朝段ボール箱を運ぶ作業から始まって、パートのおばちゃんに媚びへつらいながら、
あくせく働いてあぶく銭をもらっていた。
せめて正社員になれればまだ救われていたけれど、仕事の遅い俺に、
そんな魅力的な誘いは気配すら無かった。
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:01:25.35 ID:H2AEyAGK0
「いつまでこの仕事続けてるの?」最も恐れている質問がこれだった。
高校を卒業してから、ずっとバイトを続けている俺は、社内でも異端だった。
いつの間にか、昼休憩のとき、一緒にご飯に誘われることが無くなっていた。
高校生のバイトが、ときどき俺の陰口を言っているのが聞こえた。
辛いのは、陰で俺のことを愚痴っているやつも、顔を合わせれば笑顔で挨拶してくることだ。
不器用な愛想笑いをする俺より、向こうの方がよほど大人だった。
そうして俺は自分の限界を悟った。
無限にあるはずだった未来の可能性を、自分のスケールに合わせて縮めていくと、
小さな小さな俺の世界ができあがった。
合言葉は「でも」。
「でも」、どうせ俺の力じゃ―――。
「でも」、俺なんかが―――。
「でも」、そうは言っても―――。
「でも」、無駄に決まってるだろ―――。
「でも」は全てを否定して、あとにはなにも残してくれなかった。
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:06:46.88 ID:H2AEyAGK0
…………でも
―――でも、はこれから禁止です
_
( ゚∀゚)「……まあ、頑張っちゃおうかなって、思ってます」
川 ゚ー゚)「…そうですか」
今は「でも」から、前進できそうな気がする。
やり残した宿題を、日付が変わる前に。
例え全てやりきれなくとも。悪あがきはしてみよう。
最後の8月31日が始まった。
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:11:33.96 ID:H2AEyAGK0
_
( *゚∀゚)「……で、とりあえずキューちゃんのおっぱいから始めてみよっかな!」
o川;゚ー゚)o「ふざけんな! このまえ試したでしょ!?」
_
( ゚∀゚)「失敗は成功の母…らしいですから!」
_
( *゚∀゚)「いただきマリオー!!!」モミモミモミモミモミモミモミモミ
o川ii゚ー゚)o「ルイイイイイイイィィィィジイイィィィィィ!!!!」
川;゚ -゚)「クックル先生を…! 自衛隊かクックル先生を呼んでええ!」
- 164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:16:16.98 ID:H2AEyAGK0
時間は無い。マジで無い。
思いつく方法は全て試す。
これくらいの気概が無ければもう間に合わないだろう。
o川*゚−゚)o「腫瘍ごと脳みそ吹っ飛ばしますよ」
_
(#メД;)「はい…」
川 ゚ -゚)「いつもありがとうございます」
( ゚∋゚)「………」
幸い、クー先生とキューちゃんは、病院そっちのけで付きっきりで手伝ってくれるらしい。
しかもキューちゃんが連絡してくれたおかげで、デレさんもサポートしてくれるのだそうな。
もてる男が辛いなんて誰が言ったのだろうか。
俺の春が来ている。いまさらだが。
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:22:33.35 ID:H2AEyAGK0
o川*゚ー゚)o「全世界でテレビ放送して、恋人募集をしてみました!」
_
( ゚∀゚)「どうだった?」
o川*>ー<)o「会ってみたいっていう人が70人います!」
_
( *゚∀゚)「ま…マジかああああ! やったああ!」
ζ(゚ー゚*ζ「キューちゃんお手柄!」
川 ゚ -゚)「さっそく合コンを開きましょう」
_
( ;゚∀゚)「やべえ…初めての合コンが1対70かあ…。
レベルたけえなあ…水嶋ヒロクラスがこれくらいかな」
川 ゚ -゚)(全世界なのに70人……70/6000000000……)
テレビ放送はなかなかいい線いっていたと思う。
これはキューちゃんのアイディアだ。
ただ実りは無かった。
なぜなら、俺が相手に惚れることができなかったからだ。
なにせ70人中69人がマサイ族だったから…(残り一人がアマゾネス)。
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:27:13.75 ID:H2AEyAGK0
ζ(゚ー゚*ζ「私の友達を連れてきました!」
ξ゚听)ξ「こんにちは」
|゚ノ ^∀^)「初めましてー」
从 ゚∀从「どっもー」
_
( *゚∀゚)「ふっふぅー! いい匂いがしてくるぜ!」
ζ(^ー^*ζ「めちゃくちゃいい人ってアピールしておきました。下準備はばっちりです」
_
( ゚∀゚)「ありがとう。あとでおっぱいを揉んであげるよ」
ζ(゚ー゚*ζ「それはいいです」
友達の紹介というのは、見知らぬ相手との合コンよりもよほどやりやすかった。
ただし、これも失敗だった。
全員彼氏がいたのだ。
_
( ;∀;) ζ(゚、゚*ζ「ごめんなさい…知らなくて」
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:33:12.03 ID:H2AEyAGK0
川 ゚ -゚)「インターネットをいろいろと勉強して、女性と知り合える方法を調べました」
_
( ゚∀゚)「医療機械以外はうんちのクーさんが……ありがとうございます」
川 ゚ -゚)「せめて機械オンチと言ってください。
その結果、発見しましたよ。あなたに惚れてくれる女性の探し方が」
_
( *゚∀゚)「本当ですか! ああ…なんか上から目線が微妙に気になりますけど…。
でもいいです! 満足です! 是非その方法を教えて下さい!」
_
( ゚∀゚)「………て、出会い系とか、風俗じゃないですよね?」
川 ゚ -゚)「大丈夫です。そのようなスケベなサイトではありませんから」
_
( *゚∀゚)「や…やったー! ありがとう…! ありがとう……!」
メイドカフェのサイトだった。
売り文句は「いつでも どこでも あなたに従順」。
_
( ゚∀゚)「………」
川;゚ -゚)「ごめん…」
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:37:18.29 ID:H2AEyAGK0
MRIなんとかの検査は、この間も毎日行っていた。
川 ゚ -゚)「……体調はどうですか?」
_
( ゚∀゚)「悪くないです。ただ、食事がちょっと…」
川 ゚ -゚)「胃が受け付けないのですか?」
_
( ゚∀゚)「まずすぎて………吉野家とか行っちゃいけませんか?」
o川#^ー^)o「牛丼なら私が作ってあげますよ」
クー先生は、腫瘍の状態をあまり教えてくれなくなった。
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:40:54.76 ID:H2AEyAGK0
ζ(゚ー゚*ζ「朗報です! 以前紹介した友達で、また会いたいっていう子がいました!」
_
( *゚∀゚)「本当か!? だ、誰!?」
ζ(゚ー゚*ζ「ショボ子ちゃんです。5回目の合コンだったかな?で一緒だった子!」
_
( ii゚∀゚)。0 ○ ( ζ*´・ω・`)「その眉毛…食べちゃいたいわあん」 )
_
( ゚∀゚)「チェンジ」
ζ(゚ー゚;ζ「酷い!」
日々は怒濤に過ぎていった。
- 192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:46:24.59 ID:H2AEyAGK0
o川*゚ー゚)o「テレビ放送を見た子からファンレターが届いてますよ!
できればお会いしたいです…ですって!」
_
( ゚∀゚)「ふぅーん。どうせアフリカのどっかの人からだろ。
言葉が通じないと会話もできないし、あと他にも問題が…」
o川*゚ー゚)o「違いますよ! 近所に住んでる女子高生からです!」
_
( *゚∀゚)=3「がぜん盛り上がってきたじゃねかああ!
会う会う会う! 今夜にでも!」
o川*゚ー゚)o「えっと、手紙にはこうも書いてありますよ。
ワタシ。ツヨイ男、好キ。オマエ、ダンナニモラウ。ですって!」
_
( ;゚∀゚)「それ女子高生じゃねえアマゾネスだ!!!!」
思いついては試し、失敗してはまた策を練る。
落ち込んでいる暇は無かった。
- 201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:52:44.61 ID:H2AEyAGK0
_
( ;゚∀゚)「ふぅ…ふぅ……」
川 ゚ -゚)「では軽い睡眠薬を取ることにして、昼間は……ジョルジュさん?」
_
( ;゚Д゚)「ごぉ…ごおおぐううううう……がはっ! ゲホっ! ぎぃぃいっごおごおごおあああっっ!!」
川;゚ -゚)「キューちゃん! 酸素…」
o川;゚ー゚)o「酸素吸入器です! どうぞ!」
_
( ;゚Д゚)「ごおおおおおごおごごっっあがあああああっ!」
川;゚ -゚)「ジョルジュさん! 暴れないで!」
ときどき発作が突然起こる。
まあ、あらかじめ起こるのがわかってたら発作じゃないんだろうけど。
発作は辛い。100キロのデブが胸の上で地団駄を踏んでる感覚を、10倍痛くしたくらい辛い。
涙もヨダレも鼻水も………小便やクソだって垂れ流す。
掃除してくれるのは、キューちゃんだ。
白衣の天使というのは大げさでもなんでも無い表現だと、最近よく思う。
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:54:58.57 ID:H2AEyAGK0
_
( ゚∀゚)
それと、夜、眠れなくなった。
朝が来るまで、膝を抱えて、待つことにした。
- 205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 00:57:34.00 ID:H2AEyAGK0
病室は、VIP待遇だ。
俺以外、誰もいない。
_
( ゚∀゚)
窓から見える景色は最高だ。
大学のケヤキ道が見える。
その上に月が浮かんでいる。
_
( ゚∀゚)
とても充実した日々だった。
それと最近気がついたんだが、人見知りと、口べたが直っていた。
- 207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:01:18.32 ID:H2AEyAGK0
_
( ゚∀゚)
もう三日間、寝ていない。
_
( ゚∀゚)
三週間は、とっくに過ぎていた。
_
( ゚∀゚)
膝をかかえて、ベッドの上に座っていた。
_
( ゚∀゚)
俺は一人だった。
- 210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:05:32.01 ID:H2AEyAGK0
_
( ゚∀゚)
睡眠薬をもらった。
_
( ゚∀゚)
全く効かなかった。
_
( ゚∀゚)
MRI検査は毎日受けていたが。
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( ゚∀゚)
なぜか昨日はしなかった。
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:08:28.17 ID:H2AEyAGK0
月がきれいな夜だった。
_
( ゚∀゚)
俺は一人だった。
- 216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:10:52.94 ID:H2AEyAGK0
後ろで扉の開く音が聞こえた。
それでも俺は月を見続けた。
川 ゚ -゚)「………眠れないですか?」
_
( ゚∀゚)「…はい」
川 ゚ -゚)「睡眠薬は、飲みましたか?」
_
( ゚∀゚)「昨日までは。でも効かなかったので、もう飲んでません」
川 ゚ -゚)「そうですか…」
クー先生は、白衣のポケットに入れていた手を抜いた。
手には時計―――のような機械が握られていた。
- 220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:15:48.56 ID:H2AEyAGK0
川 ゚ -゚)「これをつけてくれますか?」
_
( ゚∀゚)「これなんですか……とか、訊かないほうがいいでしょうか」
川 ゚ -゚)「聞きたいのであれば、答えます」
_
( ゚∀゚)「どうしようかな…うーん…いや、いいです」
右手を差し出すと、皮のバンドで機械を手首に巻かれた。
クー先生がスイッチを押すと、電源が入った。
小さなランプが赤く点灯し、規則的なリズムで点滅を始める。
_
( ゚∀゚)「おお、かっくいいー。レンジャー隊のアイテムみたいですね」
川 ゚ -゚)「ああ。ありますよね。腰に巻くベルトタイプが多い気がします」
_
( ゚∀゚)「あれ、クー先生、そういう話題わかるんですか?」
川 ゚ -゚)「博識ですので」
- 221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:19:21.05 ID:H2AEyAGK0
- _
( ゚∀゚)「……博識って、maxiは知らなかったくせに」
川 ゚ -゚)「……………」
_
( ゚∀゚)「…………エヴァってロボットでしたっけ」
川 ゚ -゚)「いいえ違いますあれはリリスもしくはアダムと呼ばれる生命体のコピーで
ATフィールドを操る使徒に対抗するために作られた汎用人型決戦兵器です」
_
( ゚∀゚)
川 ゚ -゚)
_
( ゚∀゚)「オタク……………」
川 ゚ -゚)「……………常識……ではないのですか?」
吹き出した。きょとんとするクー先生の表情が。
あまりにも。馬鹿らしくて。
どうにも笑いが。
止まらなくて。
- 224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:23:24.30 ID:H2AEyAGK0
- _
( ;∀;)「あははははは! か、完全にオタク…オタクの領域ですよそれ…!
あははは! ははははははは……ははははははははは……!」
川;゚ -゚)「いや、で、でも、間違いを訂正するのは、知っている者としては当然の……」
_
( ;∀;)「た……確かに……! あはははははは!」
川 ゚ -゚)「むぅ…」
ひとしきり笑ったあと、急に声が出なくなった。
病室が静まりかえると、辺りにまた、夜の気配が漂い始めた。
_
( ゚∀゚)「………………」
川 ゚ -゚)「…………………ぱい」
_
( ゚∀゚)「…はい?」
聞き返した。クー先生の目は真剣で、怖くて、優しかった。
- 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:26:44.94 ID:H2AEyAGK0
川 ゚ -゚)「おっぱい、触っても、いいですよ」
_
( ゚∀゚)「……………本当に?」
川 ゚ -゚)「ええ」
_
( ゚∀゚)「生で?」
川 ゚ -゚)「ええ」
_
( ゚∀゚)「揉みしだきますよ?」
川 ゚ -゚)「痛くない程度に、優しくしてください」
- 240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:34:16.07 ID:H2AEyAGK0
クー先生は白衣のボタンに手をかけようとして、直前で止めた。
それから手を降ろし、白衣の裾をつかんで、たくし上げる。
白衣と共に、中に着ているTシャツがまくり上がり、クー先生のへそが見えた。
月の明かりを受けて、青白く浮かび上がる腹に目を奪われた。
川 ゚ -゚)「どうぞ」
シャツのすき間に下から両手を入れる。
自分の右手首に取り付けられた機械が、不規則に激しく点滅していた。
胸を探った。
指の先にブラジャーの感触がある。
肌を滑るようにしてブラの下をくぐり抜け、生の胸を探した。
_,、_
( ゚∀゚)
……………………………………………………………………………………無かった。
- 250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:38:37.12 ID:H2AEyAGK0
- _,、_
( ゚∀゚)
川 ゚ -゚)
_,、_
( ゚∀゚)「なんも無いんすけど」
川 ゚ -゚)「乳首はあります」
確かに、指の腹がひときわ硬いなにかに当たっている感触はある。
撫でる度に、クー先生が小さく体を震わせているのも、見てわかる。
しかし、これほどまでに貧乳だとは思わなかった。
貧しい乳というか………無い。乳が無い。
川 ゚ -゚)「んっ……一時期、本気で豊胸手術を考えたことがあります」
乳首をいじり過ぎたせいか、もう触らせないとばかりに、クー先生は一歩後ろに退いた。
たくし上げていた白衣から手を離し、またいつもの姿に戻る。
- 258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:45:03.63 ID:H2AEyAGK0
川 ゚ -゚)「手首を見せてください」
右手をひっつかまれて、取り付けている機械を覗き込まれた。
さっきまで激しく点滅していた光が、今は弱々しく、不安定な点滅を繰り返していた。
機械には他に、いくつかデジタルメーターが付けられている。
クー先生が見ているのは、そのメーターの値らしい。
しばらく機械を舐めるように見ていたクー先生だったが、ふっと力を外し、俺の腕から手を離した。
彼女は無言だった。
表情は、暗くてよくわからなかった。
笑っていないことは確かだった。
川 ゚ -゚)「……………」
_
( ゚∀゚)「………………」
俺が窓の方を見ていると、なにも言わずに、クー先生が隣に座った。
お互い無言で、顔を合わせることもなく、しばらく一緒に月を見続けた。
- 261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:48:15.15 ID:H2AEyAGK0
月がきれいな夜だった。
_
( ゚∀゚)
川 ゚ -゚)
もう一人じゃなかった。
- 266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:50:50.91 ID:H2AEyAGK0
ふわっと、意識が浮いた。
ジェットコースターで、高い所から急降下するときに感じる、あの寒気に近い感覚。
それを1000分の1にまで小さくしたような悪寒を感じた。
_
( ゚∀゚)「……眠くなってきました」
川 ゚ -゚)「そうですか」
_
( ゚∀゚)「膝借りてもいいですか?」
川 ゚ -゚)「ええ。どうぞ」
- 269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:53:03.22 ID:H2AEyAGK0
_
( ゚∀゚)「……あー気持ちいい。膝の方が柔らかいってすごいですね」
川 ゚ -゚)「………………」
クー先生の顔を下から見上げる。
とてもまつげが長い。
きらきらして見えた。
……なにが光ってんだろう。
- 275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 01:59:35.57 ID:H2AEyAGK0
手を伸ばそうとしたが、うまく動かなかった。
手が震えている。
でも、両手を使って、半ば強引に、右手を胸に届かせた。
彼女の胸を、今度は白衣の上から触る。
やっぱり、無い。なんど確認しても………無い。
川 ゚ -゚)「やっぱり、豊胸手術、してればよかったですね」
- 283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 02:02:55.99 ID:H2AEyAGK0
_
( ゚∀゚)「………………ん」
しかし、それでもさわり続けていると、何かの感触を見つけた。
胸では無かった。
もっと大切なもの。
彼女を構成する要素の中で、最も重要で、美しいもの。
それは規則正しく、力強く動いていた。
_
( ゚∀゚)「……エヴァンゲリオン………」
川 ゚ -゚)「………はい」
_
( ゚∀゚)「映画……観に行きましょう。明日……」
川 ゚ -゚)「………ええ」
右手の機械が、激しく点滅していた。
弱々しい光だったが、それでも確固たる存在を示すように。
クー先生のように、力強く点滅していた。
- 287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 02:07:14.54 ID:H2AEyAGK0
_
( ゚∀゚)「寝るまで、膝、借りてて、いいですかね」
川 ゚ -゚)「……いいですよ」
_
( ∀ )「明日、早めに起こして、下さい。せっかくの、デートだから、準備したいので…」
川 ゚ -゚)「わかりました……」
俺は目を閉じた。
彼女の気配を感じながら、朝を待つことにしよう。
目が覚めたらきっと、9月1日が始まっている。
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