- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:16:04.98 ID:H235GNko0
- 敵に見つからないように、気配を探り、
闇夜に紛れて移動すること約1時間半。
ドクオとクールは10キロほどの距離を進んでいた。
住宅の密集地帯であった場所に辿り着いたようだが、
隣接しあった家々は、連鎖的な火災を起こし、
周辺を焼き尽くしているようであった。
未だに燃え続けている家もあり、
この周辺だけを空がほんのりと茜色に照らしている。
(・A・) (炎上している場所は、避けた方が無難だな。発見される)
内心にドクオが呟くと、隠れていた瓦礫の山の蔭から抜け出そうとする。
が、クールの様子がおかしい。踵を返して振り返ると、
川; - ) 「う………」
彼女は、苦しげな表情に汗を浮かべて、
その場で膝をついてしまっていた。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:19:28.47 ID:H235GNko0
- (・A・) 「クー、どうしたの? 怪我が痛む?」
彼女は、瓦礫の下敷きになっているところを救助された後、
応急処置を受けたが、そうそうすぐに良くなるものでも無い。
クールが歩いている時、少々苦しそうな顔をしているのを思い出し、
ドクオはしまった、と後悔する。
川;゚-゚) 「すまない……ペニサスさんに診てもらったが、
肋骨に罅が入っているみたいなんだ。歩く度に、痛むし、呼吸が苦しい」
(・A・) 「そうなんだ」
肋骨に罅が入っている。なんだ、それだけなんだ。とドクオは思うが、
民間人であり、今まで戦いを経験したことの無いはずであろう彼女にとっては、
辛いものなのかもしれないと考えを改める。
(・A・) 「じゃあ、また背負おうか?」
川;゚-゚) 「それじゃあ、君が無防備になるだろう?」
(;・A・) 「そりゃそうだけど、敵を上手くかわせばなんとかなるよ」
川;゚-゚) 「無理だ。私が耐えるよ」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:21:06.31 ID:H235GNko0
- 川 ゚-゚) 「そうだ、こうすればいい」
クールは何かを思いついたかのように言い、
ドクオの手に自分の手を伸ばし、掴み取る。
川;゚-゚) 「私が辛そうにしていても、君が引っ張ってくれればいい。
何とか耐えてみせるから、気にしないでくれ」
Σ(;・A・) 「ん!? あ、あぁ。そうさせて貰うよ。限界になったら言ってね?」
狼狽したように応え、ドクオは彼女の手を引いて進んでいく。
燃え上がっている住宅から離れ、暗い場所をつたっていくかのように。
敵を警戒する緊張感。ドクオの中にはそれが常に存在していた。
だが、彼の胸の中には、その類とは別の緊張感が生まれつつあり、
ドクオは普段以上に神経を擦り減らすこととなる。
彼は、右手にはライフルの冷たい鉄の触感と、
左手には少女の柔肌の感触と、人肌の温もりを感じていた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:23:21.05 ID:H235GNko0
- ******
更に歩き続けていくと、四角い、屋根の残った廃屋を見付けた。
既に20キロメートル程進んでおり、
ハインリッヒ達が居る基地を包囲している敵からは遠く離れており、
もう周辺には敵はいないものだと、ドクオは判断する。
(・A・) 「クー、あそこで休もう。そろそろ限界だよ、君」
川;´-゚) 「いや、まだ大丈夫だよ。私はまだ行ける」
クールは痛みのせいか、玉のような汗を額に浮かべており、
頬に汗のしずくが垂れていく。
ドクオは彼女の手を無理やりに引いていき、廃屋へと向かう。
彼女の掌は既に汗でべたべたに湿っており、
クールの体力の限界に近いかもしれない、とドクオは意思を固めた。
廃屋の正面入り口は空いていて、侵入は容易だ。
ドクオは足元にトラップの類は無いか、夜目を利かせて見渡していき、
人の気配や殺気を感じ取る為に、神経を研ぎ澄ませる。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:26:31.45 ID:H235GNko0
- クールの手を引き、ゆっくりと侵入していき、奥へと進む。
この廃屋の構造は、中心に部屋が4つあり、
それを取り囲むようにして廊下が設けられていた。
裏口付近には二階への階段があるが、
そこは爆撃でも受けたのか、瓦礫が飛び散っており、侵入は困難だ。
人の気配もしない上に、ここが廃屋となった後に人が訪れた形跡も無い。
とりあえず、中央の裏口近くの部屋の中に入って行く。
広くも無く、狭くも無い正方形の室内には、
コンクリートの粉末を被ったベッドと、倒れた本棚がある。
ドクオはベッドに被った粉末を払うと、クールの手を引いてそこに寝かせた。
川;´-゚) 「すまない……」
苦しそうに彼女は呟く。
ドクオはバックパックから懐中電灯と地図を取り出し、位置を確認する。
(・A・) 「あやまることないよ。僕だって疲れてるんだ」
彼はそう言ったきり、口をへの字に結んで、
一切口を開こうとはしない。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:29:44.50 ID:H235GNko0
- ******
20分程たった頃だろうか。
砲声と爆音をドクオの耳は聞き取り、
彼は反射的に部屋の外へと飛び出していった。
川 ゚-゚) 「ドクオ……?」
一人、ポツンと残されたクールは、
覚束ない足取りでドクオの後を追って行く。
彼は、廃屋の正面入り口で立ち尽くしていた。
茜色に染まっていく空を見据えており、
その向こうには、ハインリッヒ達のいる基地がある。
ここからではよく見えないが、方角だけは覚えている。
この方角の20キロ程向こうからは絶え間ない銃声と、
大地を揺るがさんがばかりの轟音が、ここまで届いて来ている。
(・A・) 「クー……」
ドクオは、ポツリと彼女のことを呼んだ。
彼の視線の先にはハインリッヒ達がおり、その瞳の奥には彼女達が映っている。
(・A・) 「僕……行ってくるよ。戦ってくる」
川 ゚-゚) 「今更君一人戻ったところで、戦況は変わらない」
(・A・) 「それでも、僕は行かなきゃならない」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:33:42.51 ID:H235GNko0
- 川 ゚-゚) 「何故だ? 命令違反を犯してでも、
任務を放り捨ててでも、行かなければならない理由があるのか?」
(・A・) 「あぁ、ある。ハイン達は、
僕にとっての家族なんだ……家族は、守らないといけない」
川 ゚-゚) 「大丈夫だ。ハインさん達は負けやしない」
(#・A・) 「知ったような口をっ!」
ドクオが廃屋から飛び出そうとするが、
クールは彼の腕を引っ張って止める。
川 ゚-゚) 「行くな。むざむざ死にに行くだけだ。
君に任務を与えたのは誰だ? ハインさんだろう? だったら、彼女の意志を尊重するべきだ」
悪魔でも冷静にドクオを諭すクール。
しかし、この時のドクオは完全に頭へ血が上りきっていた。
川;゚-゚) 「えっ?」
クールは、気が付いた時には宙を浮いていた。
ドクオがほんの一瞬のうちに彼女の足を払い、
左腕を引っ張っていた彼女の右腕を捻り上げると、
ドクオはクールの両腕を片腕で押さえつけ、彼女を押し倒した。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:36:25.01 ID:H235GNko0
- クールの首筋に、サバイバルナイフの肉厚の刃が当てられる。
( A ) 「一人分、一人分の戦力が足りないかもしれない。後一人分の力があればもっと耐えられた。
後一人分の力があれば、敵を倒し切れた。後一人分の力があれば、逃げ切れた」
( A ) 「たった1人の戦力だ。たった一人の、ちっぽけな力だ。
だけど、そのたった一人分の力が足りなかったばかりに負けてしまう。
そんな状況なのかもしれない。だから、僕はその可能性の為に行かないといけない」
(・A・) 「お前を殺してでもな」
ドクオはクールに馬乗りになり、彼女を見下ろしている。
彼、鬱田ドクオは、今までの人生全てを戦いに費やしてきた。
その果てに身につけた物は戦闘の技術と、
人を物でも壊すかのように、殺気を微塵も発さずに殺すことだ。
彼はどのような状況であっても、殺気を相手に感じ取らせたりはしない。
長年戦い続けることによって辿りつける、熟練の兵達の境地。
ドクオは、この少年兵は、12歳にしてそこに至っているのだ。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:39:42.20 ID:H235GNko0
- だが、今ナイフの刃を向けられている少女。
素直クールは、殺気を発さないことが出来る彼の殺気を、
痛いほどに感じ取っている。
川 ゚-゚) 「………」
ドクオは感情に飲み込まれている。自分でもわけが分からない程にパニック状態へ陥っている。
彼が彼女に向ける殺気こそが、その証拠だ。
クールは、怖い、と思う。
先程までは優しかったというのに、今では掌を返したように自分に殺意を向けてくる、彼の事が。
裏切られる者の気持ちとは、こんなものなのかもしれない。
ドクオの怒りに満ちた視線で睨みつけられ、
息も出来ない程の恐怖を、全身で感じ取ってしまう。
頭痛がしてくる。喉がカラカラに乾いてくる。
目が痛くなってくる。腹の奥底が抉られるようだ。
瞼の奥から、熱い物が込み上げてくる。
殺される。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:43:17.97 ID:H235GNko0
- 彼女の頭は恐怖で埋め尽くされた。
が、彼女は口を開く。
ハインリッヒ達の意志を伝える為に、極めて冷静な口調で。
川 ゚-゚) 「ドクオ。ハインさんはお前に何を求めた?」
(・A・) 「――――ッ!」
川 ゚-゚) 「ハインさんは、全部承知の上だろう。自分が成せることは、全て成したのだろう。
いや、今もまだ成そうとしている最中なのかもしれない」
川 ゚-゚) 「ハインさんはお前に生きていて貰いたかったんだ。死んで欲しくなかったんだ。
お前にとってハインさん達が家族であったように、彼女達にとってもお前は家族だった。
みんな、お前に死んでもらいたくなかったんだ。だけど、自分たちではお前を守りきれない」
(・A・) 「………」
川 ゚-゚) 「あの人たちはそう悟っていたんだ。覚悟していたんだ。
ハインさんがお前に与えた任務には、彼女たち全員の意思が詰まっていたんだ」
川 ゚-゚) 「ここから逃げろ、死ぬんじゃない。生き残れ、って。そういった意思が詰まっていた。
ドクオ。お前は戦争屋に成り下がるつもりか? ただ戦い続けるだけの、愚者に」
(・A・) 「………」
川 ゚-゚) 「ハインさんはお前に意思を託した。私を助けるためなんかじゃない。
私なんか、お前を、実の息子のように愛したお前を助ける為の口実でしか無い」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:47:27.45 ID:H235GNko0
- 川 ゚-゚) 「彼女の最後の命令。意思を果たせよ。
生き延びろ。私を守れウォードッグ!」
(; A ) 「――――ッ!」
クールは凛とした声で言い放った。静かな声ではあったが、
声以上の衝撃が彼女の言葉にはあり、ドクオはハッ、と息をのみ込んだ。
彼女の首に押し当てられたナイフが、離れていく。
腰のホルスターへとナイフを収め、
彼はクールから離れて行き、
(;A;) 「………ゴメン」
涙を零しながらクールに謝った。
川 ゚ー゚) 「フン、謝れば警察はいらないんだ」
彼女は悪戯のように微笑み、そう吐き捨て、
ドクオが落ち着いたことに安堵の息を吐く。
(;A;) 「俺はケーサツよりも強い軍隊に所属してんだよー」
泣きながらわけのわからない弁解をして、
先程まで休憩をしていた部屋に戻って行く。
川 ゚-゚) 「なんだ、強いのは力だけか。案外弱い奴だったんだな」
彼女は呆れたように呟き、ドクオが向かった部屋へと進んだ。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:51:04.46 ID:H235GNko0
- ******
ドクオは、一頻り泣いた後。
クールの手を引いて再び難民キャンプが設置されている、
イミフへと向かって歩きだした。
夜の黒い空が、彼等の後方で茜色に染まっており、
ドクオはそれを気にしつつも進んでいく。
自分が手を引いている少女を守る為に。自分が生き延びる為に。
任務を達成する為に、ハインリッヒ達の意志を果たす為にだ。
15分ほど歩いた頃だろうか。
ドクオとクールが廃ビルが立ち並ぶ道を進んでいると、
不意に、ドクオが銃を構えた。
すると、ビルの蔭から声が上がる。
「待て、撃つな。俺達はお前を撃たない」
ビルの蔭から、黒い装甲服を見に纏い、
強固なヘッドギアを被って肩にサブマシンガンを掛けた、
男女三人が両手を上げて出てきた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:54:22.78 ID:H235GNko0
- (・A・) 「何が目的だ! お前達は味方か!?」
ドクオが三人に照準を合わせて、銃を突きつける。
距離は6メートルほど離れており、この距離ならば、
ドクオはヘッドギアや装甲服など物ともせずに、露出した顔を撃ち抜くことだろう。
黒い装甲服を着た男の内、目付きの鋭い、
意志の強そうな男が口を開く。
(,,゚Д゚) 「両手を上げてこうして降参の証をみせているというのに、
それでも銃口を突き付けてくるとは、余程の臆病者らしいな」
(・A・) 「要らないことは言うな。こちらの質問に答えろ」
(,,゚Д゚) 「やれやれ、勇ましいガキだな。お前のような奴が犬死にするんだ」
(・A・) 「次に無駄口を叩けば―――撃つ」
ドクオが今までの言葉よりも力を込めて、
最後通告を行う。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 21:57:44.38 ID:H235GNko0
- (*:゚ー゚) 「ちょっと待ってよ! ギコ君、挑発しないで!! 私達は味方よ」
目付きの鋭い男を、女はギコと呼んで慌てて諌め、
味方であると宣言した。
(・A・) 「証拠はあるのか?」
(,,゚Д゚) 「お前を殺していないのがその証拠だ」
ドクオの眼光が、更に鋭くなっていく。
照準をギコと言う男の眉間に合わせ、
(・A・) 「なら、僕がお前を殺したら僕が敵であるということになるな」
(,,゚Д゚) 「だろうな。俺もそろそろ、どちらかはっきりしたくなってきたところだ」
(*#゚ー゚) 「やめてよっ! 私達は……詳しくは言えないけど、≪国家総合案内所≫っていう、
特務機関のエージェントよ。証拠は見せてあげられないけど、信じて貰える?」
(・A・) 「国家総合案内所……? 目的は何だ」
(`・ω・´) 「私達の目的は、逃げ遅れた避難民の救助だ。
周辺を捜索していたところ、君達を発見した、というわけだ。
私達と共に来てくれないか?」
今まで沈黙していた、逆ハの字に眉が釣り上がった男が言う。
目的は避難民の救助というが、
ドクオはその言葉を聞いても警戒を解こうとしない。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:00:31.07 ID:H235GNko0
- (・A・) 「特務機関がどうしてコソコソと救助を行う!?
お前等ニーソク側の人間なんじゃないのか? 全く信用出来やしない」
(`・ω・´) 「………仕方ない、我々の組織については語れないが、
私達の目的については、全てを語ろう」
(,,゚Д゚) 「シャキン、面倒だ。そんな必要はない」
ギコは眉の釣り上がった男を、シャキンと呼ぶ。
(`・ω・´) 「この場で殺し合うよりは面倒では無い。しぃ、良いか?」
しぃ、と女が呼ばれ、頷きだけで返答した。
(`・ω・´) 「まず、≪チャネラー≫と呼ばれる存在から話そう。
チャネラーという人間がいる。彼等は、人間の遺伝情報によって制限された、
身体能力や知的能力を解放することが出来、
通常の人間よりも遥かに優れた潜在能力をもつ先天的な優性人種だ」
(`・ω・´) 「その、遺伝情報による制限を解除できる素質を秘めた子供を持つ家庭を、
一か所に集めたのがカラマロスDN。そこでニューソク軍はチャネラーの研究を行っていたのだ」
(`・ω・´) 「だが、情報が漏れてしまい、
カラマロスDNはニーソク軍による強襲を受けてしまった。というのが、今回の戦いの火種だ」
(・A・) 「信じられないな。お前達が、じゃない。そのチャネラーの話が、だ」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:04:53.29 ID:H235GNko0
- (`・ω・´) 「普通は、そう言うだろうな。だが、現にハインリッヒ高岡のような、
『ニューソク最強の兵士』と呼ばれるようなチャネラーもいるのだ。
チャネラーは、一般的には全く知られていない。その理由は知らされていないからだ」
(;・A・) 「――――ッ!」
(`・ω・´) 「私達、国家総合案内所が情報を揉み消しているからな」
(`・ω・´) 「君の後ろにいるその少女は、チャネラー候補だ。
私達にその娘を渡せとは言わない。私達に、付いて来てはくれないか?」
(・A・) 「…………」
ドクオは、そこで安堵感を得る。
少なくとも、クールの命の安全保証はされたからだ。
恐らく、この者達が言っていることは真実であろうと。
ドクオが銃を降ろそうとする。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:07:26.97 ID:H235GNko0
- すると、彼の迷彩服の背中を掴む者がいた。
川 ゚-゚) 「………」
クールだ。
彼女は、不安そうな眼差しでドクオを見つめ、繋いだ手を更にきつく掴み、
絶対に聞きとられぬように小声で彼に言う。
川 ゚-゚) 「嫌だ、逃げよう」
ドクオは否定も肯定もせずに、肩にアサルトライフルを掛け、
自分の腰へと片腕を伸ばし、
(・A・) 「無理だな。信頼できない。僕は僕の任務を果たして、ハインの意志を果たす」
器用に片手でピンを外したスモークグレネードを、
装甲服を着た三人の目前に放る。
ドクオはクールの手を強く握り、
空いた手で彼女の体を屈めさせて、その場から全力で逃げ出す。
白煙がドクオ達の背後から巻き起こり、ギコの放った弾丸がドクオの脇腹を抉る。
彼はクールを庇う様にして走って行く。
今日で、何度目とも知れない全力疾走であった。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:10:26.07 ID:H235GNko0
- ******
何とか逃げ切ったドクオとクールは、
前に休憩した、屋根の残った廃屋に辿り着いた。
裏口近くにある、さっきも休んだ部屋に入り、
ドクオはバックパックの中身を確認し、包帯を取り出して、
先程抉られた脇腹に巻き付けていく。
川;゚-゚) 「ドクオ、大丈夫か?」
(;・A・) 「あぁ、ちょっと掠めただけだ。骨は砕けてない」
包帯を引き締めると、ドクオは次にバックパックから、
ピアノ線と手榴弾、それから地雷を取り出す。
(;・A・) 「あいつら、絶対追ってくるよ。でも、心配しなくて良い。
逃げる必要は無い。っていうより、逃げ切れないんだけどね」
(・A・) 「数の上では不利。だけど、僕が負けるはずも無い。
特務機関だか何だか知らないけど、あいつらに痛い目をみせてやろう、クー」
(・A・) 「『ニューソク軍最強の兵士』高岡ハインリッヒが『最初で最後の弟子』
鬱田ドクオが送り届ける。ハインに下された最後の任務を、絶対に果たしてみせる」
川 ゚-゚) 「あぁ、頼んだぞウォードッグ」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:14:03.67 ID:H235GNko0
- ******
廃屋の裏口で、黒い装甲服を着た男、シャキンがある物を発見した。
(`・ω・´) 「む? これは……ピアノ線とグレネードのトラップか。
どうやら、歓迎されているようだな」
裏口の中に入った先、廊下へと続くドアに、
細長いピアノ線が伸びていたのだ。
これに足を引っ掛けると、固定されたグレネードのピンが抜け、
爆発すると言うブービートラップの一種だ。
特務機関≪国家総合案内所≫のエージェントに抜擢された彼には、
このようなトラップを見破ることぐらい、容易いことだ。
ピアノ線を踏み越えて行き、その一歩を踏み込んだ、
更にその先に足を踏み入れて行き、シャキンは溜息をついた。
やれやれ、といった顔で、
(`‐ω‐´) 「ピアノ線を踏み越えた先に置かれた地雷の二重トラップ……幼稚だ。
戦力差をトラップで補おうとする考えだろうが、私達には効かんよ」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:18:12.16 ID:H235GNko0
- そう呟くが早いか、
(・A・) 「だろうよ」
目の前の部屋から、先ほどの少年兵が飛び出してきた。
彼の腕には、サプレッサーが装着されたハンドガンが構えられており、
銃口はシャキンでは無く、その背後を狙っている。
(;`・ω・´) 「―――ッ!」
少年兵は、壁に貼り付けられた、
ピンにピアノ線を括りつけたグレネードを正確に撃ち抜いた。
衝撃波と爆炎がシャキンと少年兵の身を襲い。
地雷とグレネードといった、二重の爆発に身を焼かれたシャキンは絶命する。
衝撃波によって吹き飛ばされた少年兵は、背中から地面に激突してしまう。
痛みが肺を突きぬけて行き、彼の口から嗚咽となって吐き出された。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:21:08.22 ID:H235GNko0
- ******
(メ;・A・) 「ゲハッ! ゲフ!」
爆発によって地面に叩きつけられたドクオは、痛みに咳込む。
が、すぐにむくりと立ち上がり、シャキンの死体へと近づき、
彼が肩にかけていたサブマシンガンを手に取る。
即座に点検を行い、動作不良がないか確かめる。
(メ・A・) 「故障はしてないみたいだな」
顔に拵えた火傷に顔を顰めながら、サブマシンガンの点検を完了する。
すぐ後ろを付いて来たクールへと振り返り、
(メ・A・) 「クー、これを使って。使い方はわかるよね?」
川;゚-゚) 「いや、私は銃を持ったことがないんだ……」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:24:48.58 ID:H235GNko0
- (メ・A・) 「じゃあ、僕が教えるよ」
(メ・A・) 「ここにある安全装置を倒して、相手に向けて引き金を引く。これだけだよ」
川;゚-゚) 「それは分かるが……やるしかないか…」
クールが何か反論をしようと思ったが、
やったことがなくても、やってみせるしかない、と自分に言い聞かせる。
川 ゚-゚) 「それより、大丈夫なのか?
爆発を受けて吹っ飛ばされていたが……」
(メ・A・) 「見れば分かるけど、打撲と火傷しただけだよ。
痛いけど戦闘に支障はない。後二人、返り討ちにするだけさ」
ドクオはハンドガンをホルスターにしまい、肩にかけている、
ハインリッヒに渡されたアサルトライフル“M4カービン”を構える。
(メ・A・) 「クーは急いで部屋の中に隠れて。僕は正面入口に向かう」
クールは元来た道を辿り、すぐに部屋に戻って行く。
ドクオは四角い廃屋の中を逆時計回りに進み、曲がり角で隠れる。
バックパックから手鏡を取り出し、正面入口方面を照らすと、
目付きの鋭い、ギコという男が鏡に映し出された。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:27:36.06 ID:H235GNko0
- ドクオは、壁に背をぴったりと引っ付ける。
バックパックへと手を伸ばし、手鏡を収めてスタングレネードを取り出す。
ピンを抜き、左腕で掴んで、後ろに手首を返すようにギコへと放った。
(メ・A・) 「………」
スタングレネードがコロン、という軽い金属音が響かせると、、
即座にM4カービンを両腕で構え、スタングレネードが発光するのを待つ。
何時でも曲がり角から飛び出せるようにと身構えるが、その瞬間はいつになっても来ず、
自分の足もとに、何かが転がって行く音がした。考えるよりも早く体が動き、地面に伏せて目と耳を塞いだ。
突如、轟音と閃光が廃屋の中に満ちていく。
音が痛みとなって耳から体中を駆け巡り、ドクオの三半規管を破壊した。
辛うじて目は開くが、こればかりはどうしようにもない。
彼の目前には、ギコが立っていた。
サブマシンガンを構え、こちらを狙っている。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:32:43.19 ID:H235GNko0
- (メ# A ) 「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
絶叫を上げて、定まらない照準で無理やり撃ちまくる。
肉を穿つ音が鳴り響き、ドクオの右肩と脇腹から血が撥ね散って行く。
構わずドクオが撃ち続けていくと、奇跡的にギコのサブマシガンに銃弾が命中し、
破片を散りばめながら宙へと浮かび上がっていく。
が、ドクオはM4カービンの反動に耐えられず、前のめりに倒れて行ってしまう。
(,,#゚Д゚) 「面倒な奴だ!」
ギコが咆哮し、ドクオへと向かって疾走していき、
ナイフを構えて切り裂かんとする。
装甲服に内蔵されている、人工筋肉が彼の身体能力を助長し、
凄まじい速さでドクオへと接近した。
ドクオは千鳥足のようにふらふらとしながら、銃を捨て、
ナイフをホルスターから抜刀し、
ギコが振るったナイフを受け止める。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:35:08.66 ID:H235GNko0
- (,,#゚Д゚) 「ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ギコは受け止められたナイフの刃先をずらし、ドクオのナイフをいなす。
フラフラとした不安定な動きで、ドクオはバックステップをして距離を置く。
刃の構えを振るう物から貫く物へと変え、ギコはそれを追撃。
息つく暇も無い、刺突の連撃。
ドクオは辛うじて受け切ってはいるが、三半規管に支障をきたした彼では、
後何分も保つようには思えない。
左胸へとナイフの切っ先が迫り、ドクオはナイフの腹でそれを受ける。
だが、反撃に転じる程の余裕は彼に無い。
ドクオはされるがままに、追い詰められていく。
受け止められた刃を、そのまま腹への一閃にもっていかれ、
寸でのところでドクオは後ろに踏み込んで避けた。
不意に、背中に衝撃を感じる。
後方の壁にぶつかってしまったのだ。もう、後には引けない。
ギコは深く踏み込んでいき、ドクオの喉元へとナイフの切っ先を向ける。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:38:49.12 ID:H235GNko0
- ドクオは首を僅かに傾げて避け、ギコは空を裂く刃を、
そのまま横に、ドクオの首を狩るように振るった。
肉を打つ音が響きわたり、ギコのナイフが宙を舞う。
ドクオはギコの斬撃の軌道を読んで、ナイフを持つ手へと拳をぶちあてたのだ。
(,,゚Д゚) 「ギコハハハハハハ」
ギコは快活に笑うと、壁際に追い詰められたドクオに肩から激突していき、
彼の首を両腕で締め付ける。
(,,゚Д゚) 「さて、息が絶えるが速いか? それとも、首が折れるが早いかな?」
(メ; A ) 「ぐ……」
(,,゚Д゚) 「人工筋肉で強化されているんだ。折られないようにせいぜい気張ってみせろ」
みしみし、と骨が軋む音が聞こえる。
ドクオは必死に首に押し付けられている右腕を両腕で引き離そうとするが、ビクともしない。
がむしゃらに、更に思いきり腕に力を入れるが、刃が立たない。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:42:11.00 ID:H235GNko0
- ドクオの顔が真っ赤に染まり上がり、酸欠状態に陥っていく。
(,,゚Д゚) 「その程度か? お前の戦いはこの程度で終わるのか?」
終いと言わんばかりにドクオの首に掛けた力を増すと。
骨が砕ける音が鳴り響き、ギコの頭に血の花を咲かせた。
力を失った右腕が放され、ドクオは自由の身となる。
(メ; A ) 「はぁ……はぁ……はぁ…はぁ」
空気が足りない身体が新しい酸素を求め、
肩を大きく上下させて息を吸いこんでいく。
ギコの血がこびり付いた顔を拭き、正面を見ると、
クールがサブマシンガンを構えていた。
川 ゚-゚) 「………」
ドクオの頭は、何をするべきか真っ先に判断を下す、
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:44:17.41 ID:H235GNko0
- 彼はクールまで近づいていくと、彼女の頭の上に手を乗せ、
(メ A ) 「ありがとう」
と短く礼を言い、彼女の頭を撫でる。
もう大丈夫だ、と言い聞かせ、何度も何度も頭を撫でていく。
ドクオの脳裏に、自分が初めて銃を握った日の事が過ぎり、
あの日の自分にどうしても重ね合わせてしまう彼女を、クールを落ち着かせようとする。
初めて人を殺めてしまった、言いようの無い罪悪感を消し去る為に。
そんな人らしい感情が消え失せてしまった戦争犬は、必死に彼女を慰める。
川 ゚-゚) 「ドクオ……」
クールは唐突に彼の名を呼ぶ。
川 ゚-゚) 「私は今、人を殺したんだな」
感情を窺わせない、無感動な顔でクールが呟く。
瞳は、何も写してはいない。
(メ・A・) 「うん……お前は人を殺した。でも……僕ほど殺してないよ」
ドクオはクールを見据えて言い、その奥へと視線を送る。
そこには装甲服を着た女性。しぃが立っていた。
(*゚ー゚) 「みんな……死んだのね」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:48:00.28 ID:H235GNko0
- (メ・A・) 「あぁ、僕が殺したよ」
(*゚ー゚) 「ギコ君はそこの女の子が殺したんでしょう? 話し聞いちゃったよ」
(メ・A・) 「今更一人減ったところで、一人増えたところで、
僕が人を殺した数は、対して変わりないよ」
(*゚ー゚) 「そうね……君は……そうよね。臭いからして、全然違うもの。
私は、今回の作戦が嫌だったわ。必死に戦ってる人たちがいるのに、
私達はモルモットを拾い集めているんだもの。嫌になっちゃう気持ちも知れたもんでしょう?」
(*゚ー゚) 「私達の誘い、蹴って正解だったよ。その娘にとって」
(*゚ー゚) 「でもね、君にとってはどうかな? 君の身元、もう割れてるんだ。
国家総合案内所の老害達は、しつこいわよ?」
しぃは、からかう様にしてドクオに疑問を投げかける。
何故かはわからないが、彼女からは敵意が感じられない。
(メ・A・) 「僕は、多分。戦い続けていくだけだよ」
(*゚ー゚) 「そう……私達は仕事で戦ってたけど……君は戦うのが仕事なんだね」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:51:25.64 ID:H235GNko0
- (*゚ー゚) 「仕事は仕事。人殺しは人殺し。君は分かってないね。
ハインリッヒの知り合いってみんなそう。みんな、戦争の犬なんだよ」
(メ・A・) 「国家総合案内所に、僕の身元を伝えたのはアンタか」
(*゚ー゚) 「うん、そう。仕事だからね。
でも、私がこれからやる殺しは、仕事とは何の関係も無い、
あたし個人の復讐でやる殺しなんだ。ギコ君もシャキンも殺されちゃったから……」
(* ー ) 「死になさい、ウォードッグ」
しぃが言葉よりも早くサブマシンガンを抜き、
銃口をクールへと向けて引き金を引く。
ドクオは憔悴しきった体に鞭を打ち、
咄嗟にクールの前に立ちはだかって盾となる。
彼は、電流が駆け巡るかのような速さで、
腰のハンドガンを抜いてしぃに照準を合わせるが、
挙動が僅かに遅れてしまう。
渇いた銃声が鳴り響き、しぃの弾丸が放たれ、
血の花びらが宙へと二つ散っていった。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:54:20.61 ID:H235GNko0
- 弾丸を放った二人は、ほぼ同時に倒れる。
しぃは構えていたサブマシンガンを着弾の衝撃で滑り落す。
彼女の頭は拉げてしまい、頭蓋ごと中身全てを吹き飛ばされ、
大量の血液が廃屋の壁を赤く汚した。
ドクオの顔は血で真っ赤に染まり、
突き飛ばされたかのようにその場に倒れてしまった。
彼の腕にはハインリッヒに託された御守りである、デザートイーグルが辛うじて握られている。
銃口からは白煙が立ち昇り、ドクオの血が地面に赤い水溜りを作った。
川;゚-゚) 「ドクオ、大丈――ッ」
銃撃戦が終わり、ドクオを心配してクールが声をかけるが、
彼の姿を見た彼女は息を飲み込んでしまう。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 22:57:36.75 ID:H235GNko0
- (メ;・A ) 「なんとか……大丈夫だよ」
そう応える彼の左目からは、血が諾々と流れ出していた。
先程のしぃが放った弾丸をそこに受けてしまったのだ。
距離感を掴むこともままならず、左目を失った痛みによって、
ドクオはフラフラと覚束ない足取りでクールへと近づく。
川;゚-゚) 「じっとしてろ、今手当てするからな」
(メ;A ) 「いてぇ……」
あまりの激痛に、無事であった片目からドクオは涙を浮かべる。
失った物は、兵士生命に関わるものであり、大きな代償ではあったが、
彼にはクールが生きていた喜びの方が大きかった。
クールはドクオの腰のバックパックから、
治療用キットを取り出そうとするが、ドクオはそれを止めた。
(メ;A ) 「少し、大騒ぎし過ぎた。急いでここを出よう。
歩きながらでも止血は出来る。どうせもう見えないんだ、気にする必要はないよ」
ドクオの言葉に、クールは渋い顔をして頷きを返した。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:00:36.25 ID:H235GNko0
- ******
廃屋を飛び出すと、彼等の視界には戦場が広がっていた。
しかし、広いとは言ったところで途轍もないと言う程でも無い。
彼女と彼の眼には、数字では表せられない、無限にも思われる程の広大さで広がり。
実物以上の衝撃を彼等に与え、絶望にも似た感情に彼女は翻弄された。
打って変わり、彼は戦場をじっと見据えている。
弾丸と怒声の入り混じる地獄を。少年の隻眼に鋭利な、
彼の今までの人生を以って研ぎ澄まされてきた、光が宿る。
この瞬間、あどけない少年は戦争犬へと変貌した。
戦争犬は少女を見やり、肩に手を置く。
視線だけで大丈夫?と問い掛け、少女は頷きで返答を行う。
川 ゚-゚) 「私を守ってくれ、ウォードッグ。約束だ」
少女と隻眼の戦争犬は、戦場を、
無限大に続く戦火の只中を駆け抜けていった。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:03:36.85 ID:H235GNko0
- エピローグ
*******
茶色いレンガの壁で覆われ、木製のテーブルとイスが設置されている。
あまり広くはない喫茶店で、私はテーブルの上に置かれたコーヒーを飲んでいた。
白いカップには青い花が幻想的に描かれており、綺麗だと感心させられる。
片手で本を読みながらコーヒーを口に運び、
口内が心地良い苦みによって満たされていく。
カップをテーブルに戻すと、黒い液体を微かに残して白い底が覗いていた。
これで三杯目か……
私は些か緊張しているのかもしれない。
まぁ、それも無理はあるまい。これから滅多に会うことのできない、
十年来の大切な友人と会うのだから。
私は通りかかった店員に再びコーヒーを注文する。
ふと、壁に立て掛けられた時計が目に入り、今は12時20分であることを確認する。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:06:08.83 ID:H235GNko0
- 川 ゚ -゚) 「後10分か……」
呟くと、暇だからという理由で、
待ち合わせから一時間も早く来たのは失敗であった、と後悔する。
本を読みたかったというのもあるが、それももうすぐ読み終えてしまう。
上下巻合わせて1200ページはある長編小説も、
私のようなチャネラーという存在には、大した長さでも無いらしい。
十年前からだった。このような速読が出来るようになってしまったのは。
十年前、あの戦場を駆け抜けてから、私はチャネラーとして目覚めた。
遺伝子に抑制された知覚能力が、戦時下での過重ストレスによって解放され、
それ以来私は、あまり自覚は無いが情報把握能力や記憶力が異常に冴えているらしい。
小説の後書きを読んでいると、客の入店を報せるベルの音が、
店内に小気味よく響きわたって行く。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:09:24.90 ID:H235GNko0
- 私がその音に反応して顔を上げると、待っていた友人が私の目の前に立っていた。
(メ'A●) 「久しぶりだな、待たせたか」
頬に十字傷と火傷を拵え、かつて私を庇って失われた左目に。
海賊のような黒い眼帯をした男が、場にそぐわないような軍服と、
前を開けた黒い軍用コートを身に纏って登場した。
川 ゚ -゚) 「ドクオ……」
川 ゚ -゚)≡つ#;)A●)・∴「何故軍服なんだ!?」「モルスァッ!」
咄嗟に右拳がドクオの頬を捉えた。
私も普段は兵器開発を行っている身だ。
普段は白衣を着ているが、今日はテーラードジャケットにシルクスカートを履いている。
(メ'A●)「いや、俺これ以外に服無い……
何だお前、装甲服でも着て来いってのか?」
川 ゚ -゚) 「誰が戦う準備してこいって言ったんだ。
もう少し普通の格好をしてくれればいいんだ」
(メ'A●)「これが俺の普通なんだよ」
少し捻くれたようにドクオは言う。
これが普通だと言ってしまえば彼にとってはそうなるのだろう。
こいつにとっては戦場が日常で、今が非日常だ。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:12:37.01 ID:H235GNko0
- 川 ゚ -゚) 「それもそうだな……後で服を買ってやるよ」
(メ'A●)「着る機会は無いかもしれないけどね〜」
嬉しそうに口元を緩めて、ドクオは席に着く。
右ストレートを受けた頬を摩りながら、コーヒーを注文した。
店員は上官から命令を受ける兵士のように注文を承る。
川 ゚ -゚) 「今は……大尉だったか?」
(メ'A●)「いや、もう少佐だ。上の連中はバタバタと死んでいくから、
席がドンドン空いていって、こんなガキでも少佐に成れる」
川 − −) 「そうか、もう少佐か」
早いもんだな……私は過去を逡巡する。
あの日この男は、少年だったこの男は私を連れて戦場を駆け抜けた。
一等兵であった彼が、あの人に拾われたこの少年兵が、
あの人と同じ少佐に成り上がったのだ。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:15:54.65 ID:H235GNko0
- 何とも言えない、不思議な感覚だ。時の流れを感じる。
嬉しいとも思うが、その分心配にもなる。
ドクオは、まだ銃を捨ててはいないのだ。
(メ'A●)「あぁ、ハインと同じだ」
(メ'A●)「もっとも、十年前にあの人は大佐になったけどな」
この男も、恐らくは私と同じ気持ちになっているのだろう。
あの時のハインさんと同じ階級になった、不思議な気持ち。
店員がコーヒーを持って来て、テーブルの上に置く。
ドクオはコーヒーに手を伸ばし、口に運ぶ。
(メ'A●)「クーはゾロ社の……兵器開発部だっけか?」
川 ゚ -゚) 「そうだ。忙しいのだが、今日ばかりは都合してもらったよ」
(メ'A●)「悪いな、忙しいところ……そろそろ、行くか」
川 ゚ -゚) 「もう少しゆっくりしていけばいいだろう」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:18:10.15 ID:H235GNko0
- (メ'A●)「ここじゃ話せないことがあるんだ。俺には、敵が多い。
それに、クーの休みを削りたくも無いしな」
川 ゚ -゚) 「貴重な休日とはいっても、やりたいことはないんだ。
今日一日お前に吐き合うよ。久しぶりに会えたんだ。
ゆっくりと話しをしたい。何なら、ホテルにでも行くか?」
(メ゚A●)・;゙.:ブフォ
ドクオがコーヒーを噴き出し、咽返ってしまう。
ゴホゴホと咳をしながら、苦しむ。
(メ;'A●)「からかうな」
冷静を装ってドクオが言うが、苦し紛れもいいところだ。
こいつ、スパイとかに色仕掛けとかされたら、絶対に何でも話すな。
少佐になったのはいいが、私は不安になっていく。が、
川 ゚ ー゚) 「これだけで動揺するとは、随分な少佐殿だ」
自然と頬が緩み、笑みを浮かべてからかった。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:21:33.48 ID:H235GNko0
- ******
車に乗り、一時間近く走り続けると、私達は墓地に辿り着いた。
元々、ここに来る予定だったのだ。
駐車場に車を停めると、ドクオは助手席に座っていた私に振り返り、
(メ'A●)「もし俺がお前を裏切って、
国家総合案内所の任務の為に、お前を騙していたらどうする?」
何時かのように、私の首元にナイフを押し当てて言った。
殺気は……見事なものだ。あの時とは違い、
彼は一切気配を感じ取らせずに、私を鋭い眼光で貫いてくる。
川 ゚ -゚) 「お前は、お前の意志を果たす。私はそう信じる。
守ってくれると約束したじゃないか、ウォードッグ」
何時ぞやのように、私は冷静に言い放つ。
(メ'A●)「その約束すらも反故にして、だ」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:24:23.78 ID:H235GNko0
- 川 ゚ -゚) 「その時は、私はお前と戦うよ。お前を信じて、な」
(メ'A●)「………」
ドクオは黙りこくり、場に沈黙が訪れる。
どんよりとした、重く肩にのしかかるような緊張感に満ちた空気。
皮のホルスターが擦れる音と共に、ドクオはナイフを収めた。
(メ'A●)「俺は―――」
川 ゚ -゚) 「隙ありだ!」
何かを言い掛けたドクオに私は咄嗟に襲いかかり、
運転席のシートに組み伏せていく。
私はドクオを押し倒し、馬乗りになる。
腰のホルスターから十年前に私の首筋に触れたナイフを奪い取り、
彼の首筋に刃の腹を押し当てる。
(メ;'A●)「な……っ!?」
ドクオは予想もしていなかったのだろう。
驚きの声を上げて、私を見上げる。
それを私は冷徹に見下ろす―――何かに目覚めそうだ。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:27:56.28 ID:H235GNko0
- 川 ゚ ー゚) 「あれから私は身体を鍛えることを怠っていなくてね。
気まぐれに私にCQCを教えたのが間違いだったな」
(メ−A●)「そうか、チャネラーか……これが……」
勝利の笑みを浮かべて言う私に、ドクオは何かに納得しているようだ。
私は彼のホルスターにナイフを差し込んで返す。
(メ'A●)「殺さなくていいのか?」
川 ゚ -゚) 「これは警告だ。お前の警告に、私を嘗めるなといった警告で返してやったまでだ」
(メ;'A●)「だったら早く退いてくれないか……?」
川 ゚ -゚) 「お前が話を終えたらな」
(メ;−A●)「フー」
ドクオは溜息を吐いて一拍置き、
私を見上げて――見下ろす側とは良い物だな――口を開く。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:30:32.80 ID:H235GNko0
- (メ'A●)「俺は、国家総合案内所の調査を開始した」
(メ'A●)「一切表の舞台に顔を出さず、他組織との情報交換の、
一切を行わない、秘匿された特務機関“国家総合案内所”」
川 ゚ -゚) 「………」
(メ'A●)「俺は先日、その研究所に潜入した」
川 ゚ -゚) 「――――ッ!」
あまりにも唐突に伝えられた事実に、思わず息を飲み込んでしまう。
急に私を呼び出したのはその為であったのか、と納得する。
(メ'A●)「部下達に、トソンって部下が特にやってくれてな。
国家総合案内所が関わっているその場所を、特定してくれた」
(メ'A●)「これは俺の個人的な用事だ。部下には任せられず、俺がそこに潜入した。
初めは、いや、十年前から俺は、国家総合案内所とは単なるチャネラーの研究機関だと思っていた」
(メ'A●)「だが、違った。あそこはもっと大きな組織だ。
国家を、ニューソクの全てを左右するような巨大な目的を遂行する組織」
(メ'A●)「ニューソクの政治も、経済も、戦争すらも、奴らの手中だ」
川 ゚ -゚) 「………」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:34:09.88 ID:H235GNko0
- (メ'A●)「国家総合案内所とは―――国家をあるべき姿へと導く規範」
川;゚ -゚) 「話が大き過ぎる。国家のあるべき姿とは、何だというんだ」
私は彼の言うことが分からなくなってきた。
だんだんと、話がオカルトじみてきた気がする。
(メ−A●)「俺にも分からない……だけど、俺はあそこで見てきた。
隠された、職員ですら見ることが困難なファイルの数々……」
ドクオがそれらの文字列を思い返すように、目を閉じて、
(メ'A●)「そこには、軍が使っている装甲服などの新装備の原案となるものが沢山あった。
それらは国家総合案内所が作り出した物であるというのが、確定した情報だ。
詳しく言えないけど、俺が今断言できるのはそれだけだ。引き続き調査する」
川 ゚ -゚) 「そうか……無茶はするなよ」
釘を刺しておくが、恐らく、この男にそんなことを言っても無駄だろう。
命ある限り、戦い続ける筈だ。
(メ'A●)「話しは終わったんだ。そろそろ降りてくれない?」
ドクオが私を見上げたまま、そんな歴戦の兵士には似つかわない、
情けない恰好で頼むと、私は異変に気付く。
川 ゚ -゚) 「ん? 太ももに何か固い物があたっているんだが……」
(メ;゚A●)「――――ッ!」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:36:29.27 ID:H235GNko0
- ******
地面に小石が敷き詰められた駐車場から出ていくと、
数多くの石碑が建てられた、草原のような場所に私達は足を踏み入れた。
とても静かな場所であり、人の声もせず、
墓地に吹いていく風の音だけが耳に届いてくる。
暖かい空気を運んでくるそれは、とても気持ちが良い。
草を踏みつけて目当ての墓標に辿り着く。
墓には、短くこう刻まれている。
己の守るべきものの為に戦った
誇り高く勇敢な名も無き戦士達が
英霊となりてここに眠る
私は墓前に花を添え、両手を合わせて黙祷を行う。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:38:26.43 ID:H235GNko0
- 川 − −)人 「………」
目を閉じているからハッキリと分からないが、
ドクオも私の隣りで黙祷を捧げているようだ。
捧げる、とは言っても、私達は宗教に入信してるわけじゃない。
所謂、無神論者と言う奴だ。
しかし、墓の前ではこういうふうに合掌をして、
相手を敬うことが、墓参りというものなのだろう。
今は亡き人の事を思う、憩いの場。
ハインさんの事を思う。
私を見付けてくれたジョルジュさんという人、
救助の為に瓦礫を撤去してくれた、ブーンさんとモナーさん。
怪我の手当をしてくれたペニサスさん。
救助までの時間を稼いでくれた、つーさん、ビコーズさん、アサピーさん。
彼等全員に私は感謝の祈りを捧げる。
そして、隣にいるドクオにも。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:41:39.80 ID:H235GNko0
- 私が目を開けると、彼は黙祷なんかしていなかった。
(メ'A●)ゝ「………」
やはり、彼は兵士なのだ。
兵士らしく、墓に向かって敬礼をしていた
私がその姿を見ると、彼は口を尖らせて敬礼を解く。
川 ゚ -゚) 「ハインさん」
川 ゚ -゚) 「あなたが命を捨ててまで助けた命が、
あなたに後ろを押されて、戦場を駆け抜けて生き延びた命が」
川 ゚ -゚) 「今、大勢の命を奪う兵器を作る為に駆け抜けています」
川 ゚ -゚) 「私の能力を活かすには、あなたのような人を生み出さない為には、
私はこうするのが一番だと思っています。
ですが、その反面。私の作った兵器で大勢の命が失われていきます」
川 ゚ -゚) 「それでも、私の兵器は人を守りきれません」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:44:39.96 ID:H235GNko0
- 川 ゚ -゚) 「ハインさん。あなたは自分が死んでまで、こんな命を生かして良かったのですか? 」
日夜、私が作り出していく兵器が人の命を守り、人の命を奪う。
私は最近、どうにもこの重みが辛くなってきていた。
人を守っても、守れなくても、私が作った兵器が扱われる場所では、人の命が失われていく。
それは当然のことで、今この瞬間にも人は死んでいる。
戯言だ。世界を知らない、ガキの戯言で、
下らない平和主義者共の幼稚で無知な戯言。
唾棄すべき、忌むべき思想。
その思想を持つ者達は、大概が銃を握ったことも無い連中だ。
自分達が言っていることの、重みと意味が分かっていない、大馬鹿者共。
だが、私は銃を握ったことがある。
この兵器を作る指で引き金へと指を掛け、引いた。
この掌で銃の内で起こる、弾薬が爆発する衝撃を感じた。
人を殺す虚しさが手に残った。その時から私は殺人者だ。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:47:18.49 ID:H235GNko0
- でも、ドクオは、その時のドクオは、
ありがとうと私に礼を言ってくれた。
何度も、何度も私の頭を撫でて。
あの時の罪悪感は、忘れられるものではない。
ドクオにも、そんな感情があるのだろうか?
川 ゚ -゚) 「ドクオ、ハインさんは……」
(メ'A●)「ハインリッヒはただ、目の前の可能性を守りたかっただけだ。
目の前の命を、死にかけていた女の子の命を守りたかった」
(メ'A●)「クーだから守ったんじゃない。お前だから守ったんじゃない。
目の前に拾える命があるから、自分よりも長く生きていくだろう命を、守りたかった。
自分よりも人らしく生きていけるかもしれない命をな。俺もハインに生かされているんだ」
川 ゚ -゚) 「………」
(メ'A●)「最近、あの人の気持ちが分かる気がするよ……」
ドクオはそう言って墓を見つめる。
彼は私にではなく、もしかしたらハインさんに話しかけていたのかもしれない。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/01(金) 23:50:40.63 ID:H235GNko0
- 川 - ) 「なら、これからも一緒にいてくれるか?」
川 ゚ -゚) 「私を一生守ってくれるか? 共に駆けてくれるか? ウォードッグ」
私は彼を見据え、覚悟をして言う。この覚悟が何なのかは分からない。
本能的に、女がある局面で固める覚悟、と言えばしっくりくるかもしれない。
私はこの男に、そんな覚悟をして尋ねた。
(メ'A●)「それが俺の仕事だ。戦うのが、な」
緊張感を持って尋ねた私に対し、
けろりとした声でドクオは応えると、
深刻そうな、緊張感に支配された顔で口を開く。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/02(土) 00:05:32.39 ID:Gs04FzGF0
- (メ;'A●)「悪い、トイレ行ってくるわ」
そう言ってドクオはゆっくりとした足取りで、
墓地にある公衆便所へと向かっていった。
先程の緊張感が嘘のように四散していく。
私は溜息を吐き、目の前にある、無名戦士の墓に眠る筈のハインさんに語りかける。
川 ゚ -゚) 「ハインさん、あいつは非常に鈍いです。あの戦争犬が私の言葉を理解できるようになるには、
まだまだ時間が掛かりそうです。その時まで、私達は駆け抜けていきます」
どうか見守っていて下さい。そう付け加えて、私は苦笑ともとれる表情で黙祷を捧げた。
川 ゚ -゚) ('A`) 美女と戦争犬が駆け抜けていくようです 終わり
(メ'A●) 「いや……綺麗だけど、このタイトルはナルシスト臭い。でも、少女って歳でもないよなぁ……」
川 ゚ -゚)≡つ#;)A●)・∴ 「躾けのなってない犬だっ!」「あばばばば!」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/02(土) 00:07:00.86 ID:4DHeevZu0
- おまけ
******
(メ;'A●)「う〜トイレトイレ」
今トイレを求めて全力疾走している俺は戦場に通うごく一般的なニューソク陸軍少佐。
強いて違うところを挙げれば、22歳で少佐はありえないってことぐらいかな〜
名前は鬱田ドクオ。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/02(土) 00:08:13.59 ID:4DHeevZu0
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ゞァ''゙ぐ _,、-'゙_,、-'゙ _,、-'゙,、-''" .|_ た レ るけ
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└i'゙-ニ,ニエ,.:|ニ「 _エ ┴ ''"_|_ だ
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- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/02(土) 00:09:27.08 ID:Gs04FzGF0
- ふと見ると、墓の上に若い男が座っていた。
(メ'A●)(ウホッ、罰あたり)
そう思ってると、
突然その男は俺が見ている目の前でツナギのホックをはずし始めたのだ。
N| "゚'` {"゚`lリ 「やらないか」
(メ'A●)y=
俺はハインリッヒの御守りである、デザートイーグルを男の額に照準を定め、
引き金を引いた。躊躇いは無かった。
******悪乗り終了******
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