北風と竜のようです(´・ω・`)

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:14:01.82 ID:72OjFIsvO
‐序‐

とある世界の、北の果て。

そこに、小さな小さな王国がありました。

その王国は、とても冷たく強い北風と、


(´・ω・`)


 空を知らない一匹の竜の存在に、護られていました。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:14:59.82 ID:72OjFIsvO



北風と竜のようです(´・ω・`)


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:16:11.56 ID:72OjFIsvO
‐1‐


( ^ω^) ショボン、おはようお

川 ゚ -゚) おはようございます、ショボン様

川 ゚ -゚) 朝のご飯を持って参りました

(´・ω・`) やぁやぁ王さまにメイドさん、おはよう

(´・ω・`) いつもおいしいご飯をありがとう

( ^ω^) お礼なら、クールさんに言うお

(´・ω・`) ありがとう、メイドさん

川 ゚ -゚) お礼だなんて、とんでもない

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:17:05.95 ID:72OjFIsvO
川 ゚ -゚) これが私の仕事ですから

(´・ω・`) うん。それでも、ありがとう

川 ゚ -゚) ……

川 ゚ー゚) どう致しまして


 お城の塔のてっぺんに横たわるのは、ショボンという名の竜。

その小さな翼を優しく撫でるのは、この国の王さまです。


( ^ω^) たくさん食べて、飛べるようになれお

(´・ω・`) うん、がんばるよ


 ショボンは、お空を知りません。

ショボンが空を飛ぶ練習を始めた頃、
この国の強い北風に煽られて、ひどく翼を痛めてしまったのです。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:17:59.52 ID:72OjFIsvO
( ^ω^) いつかショボンが大空を飛べる日が来ますように


 ショボンを見下ろし、王は微笑みました。

こどもに恵まれなかった王さまにとって、ショボンは可愛い息子のような存在なのです。


川 ゚ -゚) 王様、そろそろ

( ^ω^) 分かったお。ショボン、いい子にしてるんだお

(´・ω・`) うん


 少々名残惜しそうな王さまは、メイドさんに促されて城内へと戻っていきました。


(´-ω-`) ……王さま達はやさしいなぁ

(´-ω-`) いつもおいしいご飯をくれるし

(´-ω-`) ぼくが飛べなくても、おこらない

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:20:07.37 ID:72OjFIsvO
 大きく長い身体を丸め、ショボンはぼんやりと町を眺めます。

小さいけれど、資源と人が豊かな北風の国。

少し太っているけれど、いつもにこにこ微笑んでいる王さまに、
言葉は厳しいけれど、優しくてきれいな、お妃さま。

お城の塔に横たわるショボンは、そんな彼らの生活を眺めるのが大好きでした。


(´・ω・`) あぁ、お空を飛べたら

(´・ω・`) あの広くて青いお空を飛べたら、どんなにすてきなことだろう

(´・ω・`) …………

(´-ω-`) ぼくには、無理なんだけれど……


 竜としての性が、空に対するショボンの憧れを掻き立てます。

ですが、このいびつな翼では、空はおろか、身体を浮かすことさえ出来ません。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:21:16.23 ID:72OjFIsvO
(´-ω-`) このまま、ぼくはずっとここを守るんだ

(´-ω-`) 『お前がいるから、この国は襲われないんだお』って

(´-ω-`) ちょっと前に、王さまもいってたしね……


 おいしいご飯を食べたら、なんだか眠くなってきました。

ショボンは、大きな眼を閉じて、夢の世界へと落ちていきました。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:22:19.37 ID:72OjFIsvO
‐2‐

川 ゚ -゚) ―――王さま、隣国から、資源を少し譲ってほしいという文書が届いています

(;^ω^) またかお……最近多いおね……

川 ゚ -゚) どうしましょう?

(;^ω^) うーん、あまり気は乗らないけど……少しなら、仕方ないおね

川 ゚ -゚) では、そのように


 ショボンがお空を飛ぶ夢を見ている頃―――


ξ ゚听)ξ 『少しだけだから』って、なんて便利な言葉なのかしらね

ξ ゚听)ξ こっちは損をするだけだわ

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:23:13.73 ID:72OjFIsvO
ξ ゚听)ξ あなた、そろそろ強気にならないと

(;´ω`) おー……

(;´ω`) 僕はあまり、そういうのが得意じゃないんだお……

ξ ゚听)ξ それは知っているけれど……

ξ ゚听)ξ 民のことも、考えてあげて

ξ ゚听)ξ このままうちの資源を搾るだけ搾り取られたら、困るのは民よ

ξ ゚听)ξ 資源だって無限じゃないのだから

(;´ω`) それは分かっているんだお……

(;´ω`) 次、また譲ってほしいと言われたら、考えるお


 お城では、王さまが珍しく困った表情を浮かべていました。

隣国であるニューソクから、たびたび資源を「少し譲ってほしい」と言われているのです。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:24:15.38 ID:72OjFIsvO
ニューソク国はたくさんの兵隊を持っているし、色々お世話になっているからと、
最初の頃こそは王さまも快く資源を分けていたのですが―――

最近、ニューソク国は少し図々しくなったようです。


( ´ω`) はぁ……

( ´ω`) 僕は、みんながお腹いっぱいに食べられるような国でいられれば、それでいいんだお……

( ´ω`) でも、僕は王さまなんだお

( ´ω`) みんなのことも、考えて行動しなきゃならないんだお……


 何も考えていないように見える王さまにも、悩みはありました。

どうも考えに詰まってしまったときは、王さまはショボンの元へ行きます。

ざらざらとした鱗を、

破れてしまった翼を、

ふわふわした鬣を、

長い長いひげを、

撫でて抱きしめてやると、不思議といい考えが浮かぶのです。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:25:29.70 ID:72OjFIsvO


( ^ω^) ショボンや

(´・ω-`) ……ん?

(´・ω・`) ああ、王さま

( ^ω^) お前は僕の自慢の息子だお

(´・ω・`) なんだい?

(´・ω・`) いきなりどうしたの?

( ´ω`) この国のために、一度ニューソク国とゆっくり話し合う必要がありそうなんだお……

(´・ω・`) 王さまは、むずかしいお話が苦手だもんね

(´・ω・`) ぼくは王さまのお話を聞くくらいしかできないけれど、

(´・ω・`) がんばって、王さま

( ´ω`) おー……。めんどうな話はきらいだお……

(´・ω・`) …………

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:26:29.06 ID:72OjFIsvO
 難しいことはショボンもよく分からないけれど、
王さまが困っているというのは分かります。

でも、ショボンは竜。

王さまの愚痴を聞いてあげることしかできません。


(´・ω・`) 王さま、なんだかとても大変そうだったな

(´・ω・`) ……どうにかできないかな


 大好きな王さまのために、何かをしたい。

けれど、満足に動き回れる身体ではないことは、ショボンだって分かっています。

ひゅるひゅると強く吹き付ける北風は、ショボンの立派な鬣を揺らしました。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:27:19.22 ID:72OjFIsvO
‐3‐

  _
( ゚∀゚) ―――では、資源は譲れないと。そうおっしゃるのですね

( ´ω`) 譲れないのではないのですお

( ´ω`) うちの国の財産である資源を無償でお渡しすることが、これから先も続くのなら…

( ´ω`) 買って欲しいと、言いたいのですお


 王さまのお部屋には、何やら難しい顔をした男の人がいました。

ニューソク国の、ジョルジュ王です。


( ´ω`) うちの資源も、無限にある訳ではないのです

( ´ω`) 国の頂点に立つ者としては、やっぱり民の生活のことも考えないと―――

  _
( ゚∀゚) なるほど、あなたの言いたい事はよく分かりました

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:28:37.73 ID:72OjFIsvO
  _
( ゚∀゚) 確かに、我々は少し甘えすぎていたかもしれません

( ^ω^) 分かっていただけますかお!

  _
( ゚∀゚) えぇ、もちろん

  _
( ゚∀゚) これからは、お金を払います

( ^ω^) 安心しましたお!

川 ゚ -゚) ―――失礼いたします。お茶をお持ちいたしました


 話が穏やかにまとまった頃、お城に仕えているメイドさんが、
お茶を持ってやって来ました。

  _
( ゚∀゚) ―――あぁ、ありがとう

  _
( ゚∀゚) 相変わらずここのお城は美人な女性が多いですね

( ^ω^) おっおっ、美人の多さも、我が国の自慢ですお

  _
( ゚∀゚) うらやましい限りです

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:30:04.85 ID:72OjFIsvO
  _
( ゚∀゚) そういえば……件の竜は元気ですか?

( ^ω^) ショボンのことですかお

( ^ω^) とても元気ですお

( ^ω^) 飛べないのが不思議なくらいですお

  _
( ゚∀゚) おや、……飛べないのですか? 初耳ですね

( ^ω^) この北風に煽られて翼を痛めてしまったきり、ショボンは飛べないんですお

( ^ω^) それでも、ショボンは僕のかわいい息子ですお!

  _
( ゚∀゚) ……

  _
( ゚∀゚) ここの北風は、強く厳しいですからね……

  _
( ゚∀゚) そうだ。今度、うちの国から竜に詳しい医者を寄越しましょう

  _
( ゚∀゚) 今まで資源を分け与えてくれた、せめてものお礼です

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:31:02.59 ID:72OjFIsvO
( ^ω^) それは、ショボンも喜ぶと思いますお

  _
( ゚∀゚) えぇ、今度ぜひ、『息子さん』に会わせてくださいねw

( ^ω^) おっおっ、喜んで!
  _
( ゚∀゚) では、そろそろ私は引き上げます

( ^ω^) あぁ、もうですかお?

( ^ω^) それでは、クー

川 ゚ -゚) はい

( ^ω^) ジョルジュ王を、お見送りしてくれお

川 ゚ -゚) かしこまりました


 ジョルジュ王とメイドさんが立ち去った後、王さまはほっとため息をつきました。

話し合いはもっと長く、難しくなるかと思っていたのです。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:31:55.59 ID:72OjFIsvO
ξ ゚听)ξ あなた、どうでした?

( ^ω^) 無事に話はついたお

( ^ω^) 今度から、資源を買ってくれるそうだお!

ξ ゚听)ξ あら、良かったわ

ξ ゚听)ξ お疲れ様、あなた

( ^ω^) ありがとうお

( ^ω^) 報告がてら、ショボンの所に行って来るお!

ξ ゚听)ξ えぇ、行ってらっしゃい

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:33:23.20 ID:72OjFIsvO
‐4‐

 にこにこ顔で塔の階段を昇って来た王さまを見て、
『難しいお話』は解決したのだと、ショボンは思いました。


( ^ω^) ショボンや

( ^ω^) ニューソク国との話し合いが、うまくいったんだお!

(´・ω・`) おめでとう、王さま

( ^ω^) 良かったお、本当に良かったお

( ^ω^) みんなを苦しませずに済みそうだお!

(´・ω・`) 王さまが元気になったみたいで、ぼくもうれしいよ

( ^ω^) あぁそれと、今度ニューソク国からお医者さんが来てくれるそうだお

( ^ω^) もしかしたら、お前の翼が治るかもしれないお!

(´・ω・`) ほんと?

(´・ω・`) 空を飛べるようになるかもしれないの?

( ^ω^) もちろん、飛べるようになるお!

(´・ω・`) ……

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:34:46.10 ID:72OjFIsvO
 お空を泳ぐ自分を想像して、ショボンは大きな目を閉じました。

夢にまで見たお空を、飛べるかもしれないのです。

ショボンは嬉しくて仕方ありませんでした。


(´・ω・`) 楽しみだなぁ、楽しみだなぁ

( ^ω^) おっおっ!

( ^ω^) お前が飛べるようになったら、僕とツンを乗せておくれお

(´・ω・`) うん!

( ^ω^) 高い高い雲の上まで昇って、お日さまに会いに行くんだお

( ^ω^) 雲の上は、きっとふわふわして、気持ちいいお!

( ^ω^) みんなでゴロゴロして、お昼寝するんだお!

(´・ω・`) うん!!

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:36:37.40 ID:72OjFIsvO

 冷たすぎて痛いくらいの風を受けながらも、
王さまはずっとショボンの全身を撫でていました。

それは、まるで我が子の頭を撫でるかのよう。
我が子に惜しみない愛を注ぐように。

そして――――その晩、

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:37:44.22 ID:72OjFIsvO


王さまたちの住むお城が、炎に沈みました。




55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:38:54.16 ID:72OjFIsvO
(;´゚ω゚`) 王さま! 王さま!!


 城の上からいくらショボンが呼びかけても、王さまもお妃さまも、
使用人も、誰も返事をしてくれません。

国を守っていたはずの北風は炎を巻き込み、
あっという間に国中は火の海に飲み込まれました。

王さまが大切に守ってきた国の人達は、必死に炎を消そうと水を運びます。

ですが、とても火の回りには追いつけません。


(;´・ω・`) あ、ああ……


 ショボンのいる場所も、安全ではありませんでした。

炎は城の全体を包み込もうと、もう、すぐそこまで迫っています。

決して広いとは言えない空間を、ショボンは慌てたように行き来しました。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:42:15.26 ID:72OjFIsvO
(´;ω;`) あ、あつい

(´;ω;`) あついよ、誰か……

(´;ω;`) 王さま……お妃さま……たすけて……

(´;ω;`) ん……?

(´・ω;`) ……あれは…


 国の入り口に、ニューソクの旗を掲げた集団がいるのが見えました。

彼らは剣を以って、ヴィップの国民を一人ひとり殺していきます。


(´;ω;`) ああ、ああああ


 為す術もなく、ショボンはその様子を、涙をこぼしながら見つめていました。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:43:52.50 ID:72OjFIsvO
火の手が、ショボンのしっぽの先を焦がします。

熱さに耐え兼ねて、ショボンは破れた翼を必死に震わせました。

本能が知っているように、翼を何度もばたつかせます。

何度も、何度も。


(´;ω;`) うう


 ですが、

こんな翼じゃ、飛べません。

身体は地面から離れず、ばさばさと羽ばたく翼は、炎を煽るばかり。

勢いを増した炎によって、
ショボンはどんどん塔の端へ追いやられていきました。

固い鱗で覆われた脚が、塔の石壁を踏み外します。


(;´・ω・`) あっ……!!

 バランスを崩した竜の身体は、塔の上から真っ逆さまに落ちていきました。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:46:40.92 ID:72OjFIsvO
‐5‐

(´メω;`) ……うう


 転落し、色んな所に身体をぶつけたショボンは、
傷だらけの身体を起こしました。

鱗は剥がれ、脚は変な方向に折れ曲がり、
澄んだ眼には、瓦礫の破片が食い込んでいます。

ですが、それでもなんとか、ショボンは生きていました。


(´メω;`) うう、ううううう

  _
( ゚∀゚) やぁ、君がヴィップ王の『息子』―――ショボンくんだね


 痛みをこらえるショボンの前に現れたのは、ニューソクの長。

ジョルジュ王でした。

その横には、ショボンも見覚えのある女の人が立っています。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:48:08.36 ID:72OjFIsvO

  _
( ゚∀゚) 思えば、こうやって竜を間近で見るのは初めてだな

  _
( ゚∀゚) 長い間、よくやってくれたな。―――クー

川 ゚ -゚) 祖国の繁栄の為ならば、これくらいどうという事はありません

(´メω;`) ……メイド、さん……?

川 ゚ -゚) どうも。ショボン様

  _
( ゚∀゚) おう、竜よ

  _
( ゚∀゚) こんな国で死ぬのは嫌だろう

  _
( ゚∀゚) 俺と一緒に、ニューソクに来い

  _
( ゚∀゚) 腕のいい医者がいるから、その翼も治せる

  _
( ゚∀゚) そしたら、空も飛べるようになるはずだ

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:49:26.37 ID:72OjFIsvO
川 ゚ -゚) ニューソクの広大な土地に、屈強な兵

川 ゚ -゚) そして、この国から奪った、豊富な資源

川 ゚ -゚) 我が国は、未来永劫の幸福を約束されたも同然

川 ゚ -゚) ショボン様。……あなたの幸せは、この地にはありません

(´メω;`) うう、うぅ

(´メω;`) 何で、なんで……?!

川 ゚ -゚) ……これは人間たちの問題

川 ゚ -゚) 竜であるあなたには、関係のない事です

(´メω;`) そんな……

  _
( ゚∀゚) 竜、空を自由に飛びたいだろう?

  _
( ゚∀゚) 俺らと一緒に来いよ

(´メω;`) やだ……いやだよ

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:50:34.33 ID:72OjFIsvO
 なぜヴィップのお城に仕えていたはずのメイドさんが、
ニューソク国の王さまと一緒にいるのか―――

そんなことは、ショボンにとってどうでもいいことでした。

折れ曲がった脚よりも、潰れた片目よりも、

ただ、ただ、こころがひどく痛みました。


(´メω;`) いやだよ……

  _
( ゚∀゚) 俺はお前の為を思って言ってるんだぞ?

(´メω;`) ……うう……

  _
(#゚∀゚) このままだとお前も死んじまうんだぞ!! いいから来いっつーんだよ!

(´メω;`) いやだ!

(´メω;`) 王さまとやくそくしたんだ! 王さまとお妃さまを乗せて飛ぶんだって!

(´メω;`) お日さまに会いに行くんだって! 雲の上でお昼寝するんだって!

(´メω;`) やくそくしたんだ!

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:51:55.48 ID:72OjFIsvO
川 ゚ -゚) ……

川 ゚ -゚) ジョルジュ様、そろそろここも危険です

川 ゚ -゚) この竜は空を飛べず、幼いゆえに火を吐くことも出来ません

川 ゚ -゚) 竜としては、なんの価値もない生き物です

川 ゚ -゚) この傷では、自力で炎の海を突破することも不可能

川 ゚ -゚) このまま放っておいても、そのうち炎に巻かれて焼け死ぬだけです

  _
( ゚∀゚) ……

川 ゚ -゚) 父と呼ぶほど敬い、愛していたヴィップ王と同じ地で死ねるならば、彼も本望でしょう

川 ゚ -゚) ジョルジュ様、ニューソク国へ帰りましょう

  _
( ゚∀゚) ……

  _
( -∀-) ……ああ、そうだな。分かった

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:53:02.69 ID:72OjFIsvO
 ジョルジュ王は、メイドさんを連れ、
ショボンの前から去って行きました。

がらりがらりとお城は崩れ行き、炎はすでに国中に燃え広がっています。

もう、誰の悲鳴も聞こえません。

(´メω・`) ……


 潰れた目でお城を見上げ、
折れ曲がった脚で、お城の中へと入りました。

王さまが褒めてくれた鬣やお髭を、炎は容赦なく焼いていきます。

とても熱くて苦しいけれど、
ショボンは、どんどんお城の奥へと進んでいきました。

落ちてくる瓦礫が、ショボンの尻尾や背中に当たって、新しい傷を作ります。

お城の中のありえない場所から、お空が見えました。


(´メω・`)

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:54:05.69 ID:72OjFIsvO
 一際大きな扉を壊して進むと、黒く焦げた人が、誰かを庇うかのように、
うずくまっているのが見えました。

王さまと、お妃さまです。


(´メω・`) ……

(´メω・`) 『父さん』『母さん』

(´メω・`) …………

(´メω;`) ……


 返事のない『両親』を見下ろし、ショボンは涙を零します。

天井が崩れ、出入口は完全に封鎖されました。


(´メω;`) 父さん……


 崩れた天井からは、ガラス玉をちりばめたような夜空が見えます。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:54:55.79 ID:72OjFIsvO

ショボンは、『両親』の身体をそっと抱え、
もうほとんど使い物にならない翼を揺らしました。

熱さも、痛みも、もう何も感じません。

ただ、あのお空だけを見て、

ただ、父との約束だけを思って―――




82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:57:15.52 ID:72OjFIsvO


傷だらけの『息子』は、空へと舞い上がりました。




85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:58:19.20 ID:72OjFIsvO
(´メω;`) ―――

(´メω;`) 父さん、母さん

(´メω;`) 飛べたよ

(´メω;`) こんな翼でも、飛べたんだ

(´メω;`) やくそく……守ったよ……


 両親を抱えたショボンは、お城の真上へと飛び上がり―――


そのまま、炎の踊るヴィップ城へ、ゆっくりと落ちていきました。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 02:59:10.26 ID:72OjFIsvO
‐終幕‐

 ―――北の果ての国が滅び、何百年も月日が経ちました。

北風は国があった場所一面に生えたお花を優しく揺らし、
城跡はすっかり朽ちて、土に還りつつありました。


ノハ ゚听) おーい、シュー姉っ! みつかった?!

lw´‐ _‐ノv みつかったよ

ノハ ゚听) どれどれっ?!

ノハ;゚听) ……なぁんだ、ずいぶん分かりにくいお墓だなぁ!

lw´‐ _‐ノv そんなお墓をみつけた私、すごくない?

ノハ;゚听) あ、うん、そうだね……

lw´‐ _‐ノv さぁ、さっさとお参りして、かえろうよ

ノハ ゚听) うんっ!

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 03:00:02.09 ID:72OjFIsvO
 お花畑の真ん中で、そっと手を合わせる二人の少女。

彼女たちの前には、花に埋もれかけた『お墓』がありました。


ノハ ゚听) シュー姉っ、このお墓は、誰のお墓なんだ?!

lw´‐ _‐ノv 母さんは、『おとぎばなし』の王さまのお墓だって言ってたよ

ノハ ゚听) おとぎばなし?

lw´‐ _‐ノv うん

lw´‐ _‐ノv 昔、ここにあった国には、やさしい王さまと、よわむしな竜がいたんだって―――




 ―――それは、昔むかしの物語。

北の果てには、小さな王国がありました。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 03:00:52.32 ID:72OjFIsvO

その国には、ちょっと弱気だけれど、優しく、
いつも微笑んでいた王さまがいて―――


( ^ω^)




92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 03:02:42.87 ID:72OjFIsvO

 言葉は厳しいけれど、心の奥底では、民を大切に思っていたお妃さまがいて―――


ξ ゚听)ξ


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 03:03:55.85 ID:72OjFIsvO

 そんな『両親』を誰よりも愛した、


(´・ω・`)


 空を飛べない竜がいました。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 03:05:09.94 ID:72OjFIsvO

―――これは、北風の国と竜の物語。

滅んだ国は美しい花畑を育み、北風は周りの国に、お伽話を運びます。

どんなに月日が経とうとも、北風が吹く限り、
そのお伽話は人々の間で語り継がれていくのです。



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/11/15(月) 03:06:14.68 ID:72OjFIsvO



北風と竜のようです(´・ω・`)


おしまい




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