- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:37:31.56 ID:it/HoVfBO
-
──
( ^ω^)「……」
判決はやはり死刑だった。
この判決に、特に驚きはしなかった。
自分が今までやってきたことを考えれば、それは社会的には至極当然な報いであり。
それ以前に、既に二度、死刑を言い渡されてきたのだ。
死刑宣告なんて一回で充分なのに、弁護士が何やらはりきっていたのが理由なのだが。
いずれにしても、もう裁判というチャンスは無い。
だから、この判決に今更どうこう言うつもりはない。
…ただし、死ぬつもりもさらさらない。
──
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:39:30.17 ID:it/HoVfBO
-
──
ζ(゚、゚*ζ「ハァ……」
また気怠い朝が来た。
一人で朝食をとり、一人で学校に行く準備を済ませ、一人で広大な家を出る。
いわゆる名家の令嬢として、社会的にラベリングされてきた人生。
普通の生活がしたかった。
それなのに、生まれて17年、今まで一瞬たりともそのような生活に触れたこともなかった。
周りからしてみれば、それは贅沢すぎる悩みなのかもしれない。
しかし、自分にとっては死にたいくらいの悩みだった。
普通になりたい。
普通を楽しんでいきたい。
こんな人生なら、捨ててしまいたい。
──
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:40:35.99 ID:it/HoVfBO
-
( ^ω^)エル・アニージョの呼ぶ方へ、のようですζ(゚ー゚*ζ
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:41:55.72 ID:it/HoVfBO
-
──
『続いてのニュースです。昨夜、入即刑務所から、内藤ホライゾン死刑囚が脱獄しました』
ζ(゚、゚*ζ「へえ…」
『内藤死刑囚は14年前、南米で──』
朝食を食べながらテレビを観ていた辻本デレは、そのニュースに釘付けになった。
その名前と顔は、何度かテレビで見たことがあった。
内藤ホライゾン死刑囚。デレが物心ついた頃、南米で大量殺人を犯した男だ。
本当に同じ日本人かと疑うほどの、残虐で大胆な犯行。さらに「脱獄」ときたものだから、デレはそのニュースに興味津々だった。
ζ(゚、゚*ζ(今時脱獄なんてあるんだ…)
内藤死刑囚は未だに行方がわからず捜索中のため、注意するように。
とキャスターが伝え、そのニュースは終わった。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:43:07.21 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚*ζ(何に注意するんだか…)
朝食を食べ終え、学校に行く準備をする。
セーラー服の制服に着替え、いつものように鏡の前に立ってみた。
ζ(゚、゚*ζ(やっぱり似合わないな、制服)
いつまで経っても似合わない、「女子高生」の自分。
それもそうだ。社会的に見れば、女子高生なんて身分はデレが経験すべきものではないのだから。
各専門分野に特化した人間達を家庭教師としてでも呼んでしまえば、それでいいのだ。
それを実現できるレベルの金もコネクションも、デレは腐るほど持っている。
それでも、普通な生活がしたくて、「普通」に触れてみたくて、デレはわざわざ高校に通う道を選んだ。
しかし、それがいけなかった。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:44:42.38 ID:it/HoVfBO
-
一人きりの家を出て、学校に向かう。
家から学校までは徒歩20分ほどの距離。
いつものように閑静な通学路を歩き、学校に入り、教室へと進む。
いつもと同じく、足が重い。
ζ(゚、゚*ζ「……」
教室のドアを開けると、やはりいつもと変わらない光景が広がっていた。
朝から騒がしい男子グループ、ガールズトークに華を咲かせる女子達。
そんなクラスメート達から離れた教室の隅の机に、デレは鞄を置いた。
ζ(゚、゚*ζ「……」
慣れているとはいえ、辛い。
同級生にはいつも距離を置かれ、普通を知らないデレは周りに馴染む術を知らなかった。
まるで空気のように、一人で学校生活を過ごすデレ。
友達はいない。かといって虐めに遭っているわけでもない。
普通を求めただけなのに。
何もない毎日が、とても苦しく、つまらなかった。
──
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:46:13.78 ID:it/HoVfBO
-
──
(;ヽ^ω^)「ハッ、ハッ…」
夜。
死刑囚かつ脱獄犯というレッテルを貼られた男──内藤ホライゾンが、閑静な住宅街を駆け抜けていた。
隠れ場所がほしい。というより、走り続けた体を休ませられる場所がほしい。
住宅街を駆けていくうちに、内藤はある大きな家に目をつけた。
(;ヽ^ω^)「……」
どこかの名家のような、大きな家。
まだ夜もそこまでふけていないのに、その家は一室以外の全ての部屋の電気が消えていた。
おまけに、人の気配がほとんど無い。
好都合だ。
門を飛び越え、内藤は家の中へと静かに侵入していった。
──
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:48:05.58 ID:it/HoVfBO
-
──
午後10時。
「お嬢様な教育」のおかげだろうか。この時間になると、デレはいつも眠気に襲われてしまう。
ζ(ー、ー*ζ「ふあ…」
明日は金曜日だ。明日さえ我慢すれば、今週の学校は終わり。
眠い目をこすり、ベッドに入る。
その直後、家のチャイムがけたたましく鳴りだした。
ζ(ー、゚*ζ「…何よもう」
この時間に来客とは珍しい。
だるい体を起こし、部屋にある玄関のモニターを見る。
途端、デレは腰を抜かしそうになった。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:49:47.94 ID:it/HoVfBO
-
おびただしい数の、警察官の格好をした男達。
それが、デレの家の前にいる。
先頭に立つコートをまとった男が、またもインターホンを押してきた。
ζ(゚д゚;ζ「ひゃ、ひゃい!?」
(´・ω・`)『夜遅くにすみません、辻本さんのお宅ですか?』
ζ(゚、゚;ζ「そ、そうです、けど…」
(´・ω・`)『突然で申し訳ないですが、門を開けてくれませんか?事情は中で説明します』
ζ(゚、゚;ζ「わわ、わかりました!」
門の電子ロックを開け、震える足で玄関に向かう。
なぜ大勢の警察がいる?
何かとんでもない罪を犯した?
頭の中が混乱するなか、大勢の警官が入り込んできた。
先ほどのコートの男が、早足でデレに近付く。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:51:16.94 ID:it/HoVfBO
-
(´・ω・`)「辻本さんですね?」
ζ(゚、゚;ζ「ハイ…」
(´・ω・`)「私、ヴィップ警察署刑事一課の礎見ショボンといいます。失礼ですが、少しこの家を捜索させていただきます」
デレの許可を得る前に、大勢の警官達は散らばって家の中を回り始めた。
デレが慌てて理由を聞く。
ζ(゚、゚;ζ「ちょ、どうしてですか!?私何かしました?」
(´・ω・`)「いえ、辻本さんが何か悪いことをしたわけではないですよ」
怖がるデレをなだめるように、優しい口調で返すショボン。
安堵の標準を浮かべるデレに、ショボンが話を進める。
(´・ω・`)「えっと…辻本さんは今一人で?」
ζ(゚、゚*ζ「はい、この家には一人で住んでます」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:52:47.98 ID:it/HoVfBO
-
そうですか、と呟きながら、険しい顔で家中を見渡すショボン。
そのショボンの様子を見て、デレはまた不安に襲われた。
ζ(゚、゚;ζ「あの…どうかしました?てゆうか私に関係ないならどうしてこの家に?」
(´・ω・`)「あ、いやね、実はついさっき……」
ショボンが理由を説明しようとした、その刹那。
遠くで、誰かの悲鳴が聞こえた。
ζ(゚、゚;ζ「!?」
(´・ω・`)「!やはりこの家に…全員確認に向かえ!もし奴がいたらすぐさま確保しろ!!」
ζ(゚、゚;ζ「え、ちょ、何!?」
(´・ω・`)「辻本さん、心配なさらず。すぐに済ませますから」
デレにそう言い残し、ショボンは悲鳴がした方へと走り出した。
声がしたのは二階の奥。銃を取り出しながら、その場に向かう。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:54:06.92 ID:it/HoVfBO
-
二階の廊下にさしかかると、ショボンは強い血の臭いに圧倒された。
壁や床に飛び散った血液。
今確認できるだけでも、10人ほどの警官がそこ倒れている。
その中で、まだ攻撃されていない数人の警官が拳銃を構えている。
その銃口の向きに統一性は無い。まだ相手の場所を確信できていないのだろう。
(´・ω・`)(チッ…)
厄介な相手だ。殺しの腕はまだ鈍っていない。
銃を構えながら、ショボンもゆっくりと歩き出す。
途端、その体が一瞬のうちに締められた。
(;´・ω・`)「なっ…!?」
(ヽ^ω^)「動くなお!!」
警官達が、一気に銃口ごと振り向く。
その先には、脱獄犯の内藤と、内藤に銃をつきつけられているショボンの姿があった。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:55:34.34 ID:it/HoVfBO
-
(ヽ^ω^)「全員、銃を捨ててこっちに蹴るお!!」
戸惑いながらも、言われた通りにする警官達。
こめかみに銃口を当てられているショボンが、静かに口を開く。
(;´・ω・`)「内藤…貴様、こんなことをしてタダで済むと思ってるのか」
(ヽ^ω^)「死刑囚に吐く台詞かお」
(;´・ω・`)「お前の狙いはなんだ」
(ヽ^ω^)「…復讐はまだ未完成なんだお」
直後、内藤はこめかみに当てた銃口を警官達に向け、引き金を引いた。
内藤の放った銃弾は、全て警官達の膝を貫いた。
倒れる警官達を尻目に、火照った銃口を再度ショボンのこめかみに当てる。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:57:12.33 ID:it/HoVfBO
-
(ヽ^ω^)「復讐さえ終われば、後はどうだっていいんだお。僕の命も好きにするといいお」
(;´・ω・`)「……」
(ヽ^ω^)「…邪魔すれば殺すお」
残弾数が一発となった銃を、ショボンの膝に向ける。
そして、当たり前のように、内藤はショボンの膝を撃った。
(;´・ω・`)「ぐはあっ!」
(ヽ^ω^)「ふん…」
倒れるショボンに背を向ける内藤。
別の銃を拾い、階段を降りる。
あまり休めなかったが、とりあえず武器は手に入れた。
移動はパトカーを使えばいい。
後は──
ζ(゚д゚;ζ
(ヽ^ω^)
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 22:58:39.50 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚д゚;ζ「………」
見知らぬ少女──デレが、玄関に立ったまま、茫然としている。
顔を見られたからには殺すしかない、と銃を向ける。
ζ(;д;*ζ「……あ、あわ、わわわ…」
(;ヽ^ω^)「!?」
血みどろの男に銃を向けられ、震えながら涙を流すデレ。
しかし、内藤が驚いたのは、そんなことではなかった。
ζ(;д;*ζ「あ、あう…」
──
ξ )ξ
──
(;ヽ^ω^)「……」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:00:16.50 ID:it/HoVfBO
-
似ている。
内藤がかつて愛した、ある女と。
(;ヽ^ω^)「クソ…」
時間が無い。もう警察が応援に駆けつけてくる時間だ。
しかし、どうしても、引き金を引けない。
ζ(;д;*ζ「イヤ…だ……」
(;ヽ^ω^)「……」
(;ヽ^ω^)「……クソッ!!」
銃をしまい、デレを強引に抱え、外に飛び出た。
そのまま適当なパトカーに乗り込むと、デレを助手席に放り、内藤はすぐに車を動かした。
何が起こったのかもわからないまま、デレは気を失った。
──
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:02:01.71 ID:it/HoVfBO
-
──
ζ(ー、゚*ζ「ん…」
気がつくと、綺麗なベッドの上にデレは寝かされていた。
見知らぬ部屋だ。しかし、この部屋がホテルの一室であることは一瞬で理解できた。
窓から漏れる陽の光。
その手前のソファーで、見覚えのある男が、一心不乱に何かを食べている。
( ^ω^)「…起きたかお」
ζ(゚、゚;ζ「……」
ここでようやく、デレは全てを思い出した。
銃声の鳴り響く家、血まみれの男。
そして今、その男とホテルにいる。
日本人なら知らない者はいないほどの、有名な死刑囚と。
ζ(゚д゚;ζ「…っっぎゃあああああああ!!?」
( ^ω^)「騒ぐなお。殺すぞ」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:04:04.32 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚д゚;ζ「ななななんで死刑囚とホテル!?何もしてないでしょうね!!」
( ^ω^)「お前殺すぞマジで。ガキの体に興味ねーお」
ζ(゚д゚;ζ「……」
確かに、何も衣服に触られた形跡がない。
というより、内藤は自分に対して全く敵意を持っていない。
黙り込むデレに、内藤が紙袋を差し出した。
( ^ω^)「マックだお。食べろお」
ζ(゚、゚;ζ「……食べたことない」
( ^ω^)「は?」
内藤が見開いた目をデレに向ける。
世界中に店舗を持つ超有名ファーストフード店の食べ物を、食べたことがない?
デレの表情を探るように見てみるが、それは嘘ではないようだった。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:05:27.24 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚;ζ「食べたことないの、それ…超体に悪いって聞くし、食べ物なら家にあるから」
(;^ω^)「はぁ…?」
なんだその理屈は。
確かに家に食べ物があるなら外食の必要はないが、そういうことではないだろう。
しかし、今までの会話で、内藤は何となくデレのことが大体わかった。
その風貌といい、あの家の大きさといい、価値観といい。
恐らく、どこかの名家のご令嬢、ってところだろう。
( ^ω^)「お前、名前は?」
ζ(゚、゚;ζ「……デレ」
( ^ω^)「デレか…僕は内藤だお。ほら、朝食は大事だお」
自己紹介とも言えないやりとりを済ませ、内藤はまた紙袋を差し出した。
しかし、目の前のデレはやはり渋る。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:08:17.85 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚;ζ「でも…体に悪いんでしょ?」
( ^ω^)「量さえわきまえれば無害だお」
ζ(゚、゚;ζ「……」
恐る恐る紙袋を受けとり、中を見る。
そこには、何やら小さく丸い袋と、フライドポテトのようなものが入っていた。
ζ(゚、゚;ζ「…何、これ」
( ^ω^)「てりやきセットだお」
内藤と同じように、ポテトを一本手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。
ζ(゚ー゚;ζ「…」
( ^ω^)「どうだお?」
なんて塩と油の効いたフライドポテトだろう。
やはり体には良くなさそうだ。
…でも、不思議なことに。
ζ(゚ー゚*ζ「おいしい…」
( ^ω^)「だお?」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:11:23.56 ID:it/HoVfBO
- デレの様子を見ながら、内藤が小さく笑う。
ポテトを一本ずつ口に運びながら、デレは内藤の横顔を眺めた。
不思議な気分だ。
まるで死刑囚で脱獄犯とは思えない、むしろ気の良いオジサンにしか見えない。
つい昨夜、この男に殺されかけたというのに。
ζ(゚、゚*ζ「あの…」
( ^ω^)「ん?」
ζ(゚、゚*ζ「どうして、私を誘拐したの?」
純粋な疑問として尋ねるデレ。
口に含んでいたものを大きく飲みこみ、内藤は本心でそれに答えた。。
( ^ω^)「…殺せなかった」
ζ(゚、゚*ζ「へ?」
( ^ω^)「今警察に行方がバレちゃ困るから、僕の姿を見た奴は全員殺すつもりだったんだお」
ζ(゚、゚;ζ「……」
( ^ω^)「…でも、お前だけは殺せなかったんだお」
ζ(゚、゚;ζ「…どうして?」
( ^ω^)「教えないお、今は」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:13:03.37 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚*ζ「……」
自分の分を食べ終え、内藤は紙袋を小さく丸めてゴミ箱に投げた。
そのまま洗面所へ向かいながら、内藤が声をかける。
( ^ω^)「それを食べ終わったら、急いで出発の準備をするお。長居はできないお」
ζ(゚、゚*ζ「うん…」
( ^ω^)「それと…お前はあくまで誘拐されている身だお。勝手なマネしたら今度こそ殺すお」
ζ(゚、゚;ζ「……」
デレがこくこくと頷くのを確認して、内藤は洗面所へと入っていった。
デレの食欲は、もうすっかり無くなっていた。
──
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:14:05.04 ID:it/HoVfBO
-
──
帽子とサングラスで顔を隠す内藤と、家着のままのデレ。
ホテルに待機していたタクシーに乗り込み、内藤が行き先を伝える。
ζ(゚、゚;ζ(なんてサングラス…)
( ◎ω◎)「鬱田製鉄所まで頼むお」
ζ(゚、゚*ζ(製鉄所?)
聞けば、その製鉄所は隣町にあるこじんまりとした工場で、内藤の友人が経営しているとのことだった。
それより、デレは個人的にかなり気になることがあった。
ζ(゚、゚*ζ「ねえ、さっきの朝食代といい、タクシー代といい、どこでお金を手に入れたの?」
運転手に疑われないよう、小さな声で尋ねてみる。
そう、脱獄犯が一人で脱獄直後にお金を使えるのが、デレは不思議でならなかった。
内藤の答えは、至ってあっさりしていた。
( ◎ω◎)「え?お前ん家からとった」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:15:14.15 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚*ζ
( ◎ω◎)
ζ(゚、゚*ζ「…いくら?」
( ◎ω◎)「10万」
ζ(゚、゚*ζ
( ◎ω◎)
ζ(゚д゚#ζ「はああああ!?」
(;◎ω◎)「ごめ…近いうちに返すから許してくれお」
ζ(゚д゚#ζ「こんの盗人が!!」
(;◎ω◎)「ごめんって」
騒がしい車内。
おかげで、目的の鬱田製鉄所まで、ひどく時間が短く感じた。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:17:22.12 ID:it/HoVfBO
-
タクシーは殺風景な工場地帯の中で止まった。
ほとんどの工場は閉まっているようだが、目の前の小さな工場だけが、シャッターを開けていた。
( ◎ω◎)「おっ、あいつはまだ健在なようだお」
ζ(゚、゚*ζ「……」
タクシーを降り、小さな工場の中に入る二人。
そこには、一人でせっせと作業を進める、やせ細った男がいた。
('A`)「ふー…」
( ^ω^)「ようドクオ。久しぶりだお」
('A`)「ああ内藤か……」
(゚A゚)「内藤!!!?」
ドクオと呼ばれた男は、内藤の姿を見て文字通り腰を抜かした。
何故ここにいるんだ。と、その見開いた目が語る。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:19:08.04 ID:it/HoVfBO
-
( ^ω^)「まったく変わらないお、ドクオ」
(;'A`)「いや…てかお前てっきり死んだのかと…」
( ^ω^)「テレビ見ない生活も変わらないのかお…脱獄してきたんだお」
(;'A`)「脱獄!?」
('A`)「……そっか、そうだよな」
ドクオは一人でぶつぶつと呟くと、壁に掛かった鍵を内藤に投げた。
( ^ω^)「おっと」
('A`)「…地下倉庫に用があんだろ?」
( ^ω^)「感謝するお」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:20:40.58 ID:it/HoVfBO
-
('A`)「ところで」
奥へ向かおうとした二人を、ドクオが制する。
('A`)「そっちのお嬢さんは何だ?」
目を合わせる内藤とデレ。
真面目な顔で、内藤がそれに答えた。
( ^ω^)「人質だお」
(;'A`)「あ、やっぱそういうこと…」
ζ(゚、゚;ζ「……」
('A`)「…まいいや、とりあえずお前らの痕跡は一切残さないでくれよ?」
( ^ω^)「わかってるお」
改めて、工場の奥の階段へ進む二人。
よほど使わないのか、地下への階段はやけに埃が溜まっていた。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:23:00.52 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚;ζ「うっわ…」
( ^ω^)「なんだ、埃もダメなのかお?」
ζ(゚、゚;ζ「うん、ちょっと…」
( ^ω^)「この程度の埃なら体に悪くないお。それともそこで待ってるかお?」
ζ(゚、゚;ζ「あー…」
階段から作業場を見る。
やはり、そこには黙々と作業をするドクオ一人しかいない。
なんというか、気まずい。
ζ(゚、゚;ζ「う、ううん!行く!」
( ^ω^)「じゃあ来いお。…ドクオが不憫な気がするけど」
ζ(゚、゚*ζ「え?」
(;^ω^)「なんでもないお」
地下倉庫の鍵を回し、扉を開ける。
中は真っ暗でよくわからなかったが、内藤が室内灯をつけると、その全貌が一気に見えてきた。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:25:06.46 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚*ζ「うわあー…」
見渡す限り、室内には武器が詰め込まれていた。
重火器やナイフ、手榴弾など、デレにとっては全てが初めて見るものだった。
茫然とするデレをおいて、室内を物色する内藤。
何やら銃を手にとって、それをいじっては、大きな鞄の中に入れていく。
ζ(゚、゚;ζ「…ってか内藤さん、この武器で何するつもりなんですか?」
( ^ω^)「……」
内藤の手がピタリと止まった。
少し考えるように固まると、内藤は横顔だけをデレに向けた。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:26:24.91 ID:it/HoVfBO
-
( ^ω^)「…武器が無ければ、その時まで生きられないお」
ζ(゚、゚*ζ「その時?」
( ^ω^)「……」
これ以上は何も答えず、また武器を鞄に詰める。
暫く武器を詰めると、もう行こう、とデレを促した。
工場の作業場まで戻り、ドクオに鍵を手渡す。
('A`)「…もう行くのか?」
( ^ω^)「世話になったお」
('A`)「あ、ちょっと待ってくれ」
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:28:17.92 ID:it/HoVfBO
-
内藤達を止め、作業場の奥の金庫から何かを取り出したドクオ。
見てみると、なにやら小さなケースのようなものだった。
デレにはそれが何なのかわからなかったが、内藤には理解できたようだった。
( ^ω^)「ドクオ…」
('A`)「全部終わったら、どうせ死ぬつもりなんだろ?」
小さく笑い、内藤の肩を強めに叩く。
内藤も笑顔を返し、そのケースを羽織っていたジャケットの内ポケットに入れた。
('∀`)「じゃあな。二度と来んなよ」
( ^ω^)「ドクオこそ、二度とその面見せんなお」
互いに背を向け、ドクオは作業に、内藤は工場の外に向かった。
そのやりとりをただ見ていたデレは、慌てて内藤のあとを追った。
──
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:30:49.84 ID:it/HoVfBO
-
──
( ゚∀゚)(…内藤が動き出したか)
脱獄した内藤死刑囚が、一般の家に侵入し警察を攻撃したというニュース。
テレビを眺めながら、男が薄暗い部屋で呟く。
( ゚∀゚)(腕は鈍ってないってことか…うかうかしてらんねえな)
胸ポケットから携帯電話を取り出し、誰かに電話を繋げる。
テレビの画面を静かに見据えながら、男は電話の相手に話し始めた。
( ゚∀゚)「…俺だ。仕事中わりいな」
( ゚∀゚)「内藤の件だ。奴はまだ復讐を企んでるに違いねえ」
( ゚∀゚)「……ああ、そんで、お前に頼みがあるんだ」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:32:22.14 ID:it/HoVfBO
-
( ゚∀゚)「知ってると思うが、もう俺は組織を持ってねえ。14年前、南米で奴に壊滅させられたきりだ」
( ゚∀゚)「もはや俺一人になっちまった。個人で奴の復讐を受けるのは無理な話だ」
( ゚∀゚)「…ああ、奴の復讐は俺を殺さなければ完成しない」
( ゚∀゚)「そこでだ」
テレビを消し、静かになったその部屋で、男は囁くように続けた。
( ゚∀゚)「お前らの兵の動員を頼みたい。死刑囚を捕まえるんだから、無茶な話ではないはずだ」
( ゚∀゚)「……ああ。SATの動員をな」
男の口元が、不気味に歪む。
( ゚∀゚)「頼んだぜ、警視総監どの」
──
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:34:19.45 ID:it/HoVfBO
-
──
タクシーの後部座席に、無言で座る内藤とデレ。
ζ(゚、゚*ζ(…これからどうなるんだろ、私)
内藤に連れまわされて、もう半日をとっくに過ぎている。
人質として連れ回される「非日常」のなか、デレは悪い気がしない自分に気づいた。
気が重かった学校には、今日はもちろん行ってない。
デレの家が内藤に襲われたと知れば、さすがにあのクラスメート達も驚いただろう。
内藤に連れまわされることで、つまらない日常が変わってくれる。
そんな気がしていた。
( ◎ω◎)「着いたお、デレ」
ζ(゚、゚*ζ「えっ、あ、うん」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:35:46.42 ID:it/HoVfBO
-
着いた、と言われても、そこは人通りの多いビル街だった。
人の多いところを堂々と歩いて大丈夫なのか、とデレが心配する。
( ◎ω◎)「大丈夫だお、普通にしてればただの通行人なんだから」
ζ(゚、゚;ζ「そ、そうね…」
タクシーから降り、堂々と歩き出す内藤。
不安になりながらも、普通の通行人を演じるデレ。
歩き始めて間もなく、内藤はおもむろに携帯電話を取り出した。
( ◎ω◎)「えーと番号は…あ、そうそう、確か…」
ζ(゚、゚*ζ「……」
ζ(゚д゚#ζ「…って私の携帯!!何普通に持ってんの!?」
(;◎ω◎)「あっごめん、家にあったから」
ζ(゚д゚;ζ「手癖半端ねえ!!」
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:37:37.91 ID:it/HoVfBO
-
それから少し歩き、古いビルの中に二人は入った。
どうやら今は使われていないビルらしく、まだ昼なのに薄暗く不気味な雰囲気が漂っていた。
ζ(゚、゚;ζ「こわ…」
( ^ω^)「もしもし、ギコかお?」
ζ(゚、゚*ζ「あっ」
サングラスを外した内藤が、誰かに電話を繋げた。
そのまま二人は階段に向かっていく。
『…な、内藤!!!??』
(;^ω^)「うおっ」
ζ(゚、゚;ζ「!」
デレにまで聞こえるほど、携帯の向こうの男は素っ頓狂な大声をあげた。
階段を上りながら、話を続ける。
『おま、生きてたのか!!』
(;^ω^)「お前もテレビか新聞見る癖つけろお」
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:39:28.97 ID:it/HoVfBO
-
『そんで、何の用だ?』
( ^ω^)「実は、ギコにお願いがあるんだお。といってもすぐ終わるけど」
ビルの屋上から一つ下である6階まで上り、奥の部屋の窓まで歩く。
( ^ω^)「僕は今A36の6Gにいるお」
ζ(゚、゚*ζ(は?)
『ちょっと待て確認…あ〜はいはい、で?』
( ^ω^)「夜になったら、ここからA21を攻撃するお」
ζ(゚、゚;ζ(???)
『A21…攻撃パターンは?』
( ^ω^)「S式のEX-1」
『へえ、古典的だねえ』
ζ(゚、゚;ζ(?????)
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:41:23.50 ID:it/HoVfBO
-
何がなんだかわからない会話をする内藤に、デレは混乱した顔を向ける。
しかし、内藤はそれに構うことなく話を続けていく。
( ^ω^)「結構だお。僕の痕跡さえ掴みづらければそれでいいお」
『それもそうだな』
( ^ω^)「A21をまるごと倒壊させる為の、ターゲットポイント設置箇所と個数を今すぐ教えてほしいお」
『オッケー。電話を切ったら、すぐにその携帯でワンセグを開いてくれ。チャンネルはどこでもいい』
( ^ω^)「頼んだお」
電話を切り、そのまま携帯を操作する内藤。
デレが不安そうに横から見つめる。
( ^ω^)「デレ、ワンセグってこれかお?」
ζ(゚、゚*ζ「そうだけど…」
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:42:42.35 ID:it/HoVfBO
-
ワンセグを開き、内藤は鞄の中から紙とペンを取り出した。
直後、テレビとは明らかに違った画面が、デレの携帯に現れた。
そこには、青白く光るパソコンの画面と、男の声のみが映っていた。
『あー、聞こえるな?説明を始めるぞ』
( ^ω^)「……」
ペンを持ちながら、食い入るように携帯の画面を見る内藤。
男の声だけが、説明を進めていく。
ζ(゚、゚*ζ「……」
デレにはその内容がまったくわからず、それでもなんとなく内藤の様子を眺めるうちに、説明は終わったようだった。
( ^ω^)「なるほど…」
ワンセグを切り、紙に何やら一生懸命書き込む内藤。
それを見ながら、デレはようやく内藤に話し掛けてみた。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:44:32.91 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚*ζ「…ねえ、さっきのわけわからない会話、あれなに?」
( ^ω^)「暗号だお」
何かを書き込みながら、顔を上げずに答える。
ζ(゚、゚*ζ「暗号?なんで普通に喋らないの?」
( ^ω^)「警察はこの携帯がこっちが持っていることを間違いなく把握してるお。その個体情報からGPS、電波通信まで血眼になってチェックしているはずだお」
ζ(゚、゚;ζ「え?それって…」
( ^ω^)「そう、警察はすでにこっちの居場所を掴んでいると見てもいいお」
ζ(゚、゚;ζ「えええダメでしょそれ!早く逃げなきゃ!」
( ^ω^)「もう出るお。それで、僕達が捕まらないためにも、デレに協力を願いたいんだお」
ζ(゚、゚*ζ「協力?」
内藤は書き込んだ紙をデレに渡し、ニヤリと笑った。
( ^ω^)「これを見ながら、今から僕の言う通りに動いてほしいお」
──
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:46:36.12 ID:it/HoVfBO
-
──
ζ(゚、゚*ζ(このビルだよね…)
夕方。
内藤に命令され、デレは大きな荷物を持ってとあるビルにやってきた。
見る限り、このビルにも人の気配はない。…気がする。
先ほど内藤と上ったビルとは、300メートルほど離れている。
ζ(゚、゚*ζ(えっと…)
内藤に渡された紙を開く。
その指示内容とは、内藤が指定した数ヶ所に、この荷物の中に入っているものをくっつけること。
ζ(゚、゚*ζ(一階正面の柱の向かって右から二番目と左から二番目…あ、これだけ?)
まず右から二番目の柱の前で、デレは荷物を下ろした。
内藤の指定通り、荷物の中から小さな紙包みを取り出した。
ζ(゚、゚*ζ(この両面テープを使って紙包みを柱に貼り付ける…)
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:48:02.32 ID:it/HoVfBO
-
その場で両面テープを切り取り、紙包みを柱にくっつける。
ζ(゚ー゚*ζ「あっこれ楽しい…」
左から二番目の柱にも、同じように紙包みを貼り付ける。
あっけなく作業を終え、デレは再度内藤からの紙を開いた。
ζ(゚、゚*ζ(次は…っと)
ζ(゚、゚*ζ(さっきのビルの6階の部屋に火を付けて、密室にしておく…)
ζ(゚、゚;ζ「………火?」
──
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:49:18.49 ID:it/HoVfBO
-
──
夜。
内藤達が居たビルを取り囲むように、数十人もの武装した男達が構えていた。
( ・∀・)「……」
警視庁特殊急襲部隊、通称SAT。
その隊長務める男、モララーが、無線機で隊員達に確認をとる。
( ・∀・)「内藤と辻元デレは恐らくこのビルにいる。内藤はただちに逮捕し、辻元デレの安全を確保しろ」
昼間に辻元デレの携帯電話の通話を聞き取り、警察は会話の暗号をすぐさま解読できた。
というのも、14年前に内藤を逮捕し事情聴取した際、この暗号解読法を自白させたことがあるからだ。
それが生きたのか、暗号の通りの場所と、辻元デレの携帯のGPSが示す場所も完全に一致した。
内藤もまさか14年前の自白が墓穴を掘るとは思わなかったのだろう。
( ・∀・)(バカめ…すぐに捕らえてやる)
普通ならまずは交渉にあたるのだが、間違いなく交渉に応ずる相手ではないと判断したモララー。
静かに、ビル内への突入を命じた。
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:51:30.96 ID:it/HoVfBO
-
( ・∀・)「第一小隊、突入せよ」
これだけの数を揃えておいて、たった6名程度で構成されたチーム一つのみを送るモララー。
勝ち誇った顔で、道路を挟んだ向かいのビルへ振り向く。
( ・∀・)「…釣れると思ったか?」
(;^ω^)「!」
ζ(゚、゚;ζ(内藤さん!あいつこっち見て…)
(;^ω^)(しっ!わかってるお)
向かいのビルの二階の窓から、目だけを外に見せていた二人。
しかし、SATの隊長らしき男が、こっちを見ている。
( ・∀・)「釣れると思ったのか?こんな子供だましで」
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:53:54.04 ID:it/HoVfBO
-
なぜモララーには二人の居場所がわかったのか。
筋書きはこうだ。
( ・∀・)(まず、あの携帯での暗号会話。携帯を使うこと自体がおかしい)
内藤もバカじゃない。
携帯電話を使えば電波通信はすべてキャッチされてしまうことぐらい、奴には読めていたはず。
しかし、内藤は敢えて携帯電話で連絡をとった。
それはわざわざ警察をこのビルに誘導させる為に違いない。
さらに、内藤は会話に暗号を組み込むことによって、その居場所に信憑性をつけた。
( ・∀・)(そして、我々を誘導しておいて、奴はそのまま逃げたわけではない)
それはほとんど不可能だ。
逃げるための足を内藤は持ってないし、かといってこの一帯で隠れられる無人の建物は、非常に少ない。
つまり、内藤は何らかのサボタージュ(破壊工作)を企んでいる。
例えば、最初に誘導したビルにSATが突入したとたんに爆破、など。
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:55:23.56 ID:it/HoVfBO
-
それが可能な距離で、内藤が隠れられる場所といえば、ただ一つ。
( ・∀・)「…向かいの無人のビル、のみだ」
( ^ω^)(そろそろかお…)
( ^ω^)(デレ、ここで待ってろお。何があっても絶対にここから離れるなお)
ζ(゚、゚;ζ(内藤さん!?どこに!?)
( ^ω^)(いいから!すぐ戻ってくるお)
窓から離れ、武器の入った荷物からスナイパーライフルを取り、ビルの反対側の窓へと静かに走る。
その窓から、内藤はスナイパーライフルを構え、スコープで必死に的を探した。
( ^ω^)(柱のド真ん中…デレも良い仕事するお)
その的は、先ほどデレが取り付けた、二つの紙包み。
まずは右側の紙包みを狙って、引き金を引く。
途端、そのビルが爆発を起こした。
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/05(金) 23:57:18.47 ID:it/HoVfBO
-
ζ(゚、゚;ζ「!?」
(;・∀・)「!!」
( ^ω^)(あと一つ…)
すぐに装填されたスナイパーライフルで、今度は左側の紙包みを狙って、引き金を引く。
やはりビルは爆発を起こし、徐々に此方側に倒れてきた。
( ^ω^)(よし…)
デレのもとへと駆け戻る。
下では、SATが困惑した様子で構えていた。
(;・∀・)(読み違えた!?しかし、このビルから銃声がしたような…)
(;・∀・)「第二、第三小隊、向かいのビルに突入せよ!!急げ!」
此方のビルに向かって、10数名の隊員達が駆け込んでくる。
デレの焦りが最高潮に達し始めた。
ζ(゚д゚;ζ「ななな、内藤さん!こっち来ますよ!?」
(;^ω^)「え、まさか…」
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:00:12.75 ID:Q3OUy/mLO
-
対する内藤は、ニヤリと笑った。
( ^ω^)「まさかこんなに上手く行くとは、ね」
ζ(゚、゚;ζ「え?」
途端、此方のビルに突入しようとした隊員達から、悲鳴のような怒号があがった。
直後、彼らに覆い被さるように、内藤達の背後の方向から黒煙が現れた。
ζ(゚、゚;ζ「え?え?」
( ^ω^)「何百メートルも離れた廃ビルを爆破させたのはこのためだお。風向きも、風の通る地形もちょうど良かった」
ζ(゚д゚;ζ「…じゃあ私が柱にくっつけたアレ、爆弾だったの!!?」
( ^ω^)「はいその通りですお」
黒煙が待機中のSAT隊員達をも飲み込んだ直後、今度は向かいのビルの六階で爆発が起きた。
デレが予め火をつけていた場所だ。
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:02:43.24 ID:Q3OUy/mLO
- 飛び散った大量のガラスの破片が、ちょうどSAT達がいた辺りの黒煙へと降り注ぐ。
ζ(゚д゚;ζ「……!!!」
( ^ω^)「うん、ちょうど良いタイミングだお」
ζ(゚д゚;ζ「な、なんで爆発…!?」
( ^ω^)「バックドラフト現象だお。密室内で火をつけると、酸素が減って火は弱まる。そこに急激に酸素を送り込むことによって、火は勢いを取り戻し、爆発する」
ζ(゚、゚;ζ「急激に酸素を…」
( ^ω^)「最初に突入したSATの小隊が、部屋の扉を開けたんだお」
ζ(゚、゚;ζ「……」
なんということだ。
テレビや映画でしか見たことないような特殊部隊が、内藤に踊らされている。
唖然とするデレの腕を、すでに荷物を持った内藤が掴んだ。
( ^ω^)「さ、飛び降りるお」
ζ(゚、゚;ζ「え?」
( ^ω^)「よいしょっと」
ζ(゚、゚;ζ「え、まっ、ぎゃああああ!!」
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:04:40.19 ID:Q3OUy/mLO
-
デレを抱えた内藤が、二階から飛び降りる。
黒煙の中に着地し、内藤はそのまま走り出した。
飛び乗った先は、SATの護送車。
ζ(゚、゚;ζ「えええダメでしょさすがに!!」
( ^ω^)「大丈夫、わざわざ護送車まで戻ってくる奴なんかいないお」
ζ(゚、゚;ζ「そういう問題じゃ…ぎゃあっ!?」
運転席に座ると、内藤はすぐさま護送車を荒々しく運転し始めた。
運転席の後ろの席にしがみついているデレが、内藤に尋ねる。
ζ(゚、゚;ζ「ね、ねえ、今からどこに向かうの?」
( ^ω^)「警察は一時的に振り切ったお…今から、ある男を殺しにいくお。それで僕の脱獄生活は終わりだお」
ζ(゚、゚;ζ「……」
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:06:04.48 ID:Q3OUy/mLO
-
黒煙を抜け、ビル街を抜け、護送車は一般道へ出た。
ようやく運転が落ち着いたところで、デレがさらに尋ねる。
ζ(゚、゚*ζ「殺す、ってどうして?」
( ^ω^)「復讐だお」
ζ(゚、゚;ζ「復讐?」
何故か、背筋に冷たいものが走る感覚がした。
( ^ω^)「…愛した女が、いたんだお」
──
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:09:25.24 ID:Q3OUy/mLO
-
そのジョルジュの目が、ツンの姿に止まった。
内藤はジョルジュを必死に止めた。
怒り狂って、殺すつもりでかかった。
( ゚∀゚)「やってみろ。この女を殺す」
(;#゚ω゚)「……!!」
しかし、いとも簡単に彼女はジョルジュに連れ去られた。
彼女は、内藤の子を身ごもったままだった。
彼女が南米で死んだと聞いたのは、それから三年後のことだった。
──
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:11:40.81 ID:Q3OUy/mLO
- ──
( ^ω^)「簡単に説明するとこんな感じだお」
( ^ω^)「……デレ?」
ζ(;、;*ζ「……」
何故かボロボロと泣きじゃくるデレ。
すべてを理解したデレは、涙を流しながら話し始めた。
ζ(;、;*ζ「…やっと、やっとわかった」
( ^ω^)「?」
ζ(;、;*ζ「わ、私、父親が小さい頃に亡くなって、物心つくころまで、お母さんに育てられたの」
ζ(;、;*ζ「でも、お母さんも、死んじゃって」
( ^ω^)「……」
ζ(;、;*ζ「私の、名前は…つ、辻元デレ」
(;^ω^)「……え?」
内藤が思わず振り返る。
デレは細いネックレスを取り、その先にある指輪を内藤に渡した。
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:13:35.65 ID:Q3OUy/mLO
-
(;^ω^)「まさか…」
指輪を受け取り、それを眺める。
(;^ω^)「これ、は…」
ζ(;、;*ζ「エル・アニージョ。スペイン語で指輪って意味なんだって」
(;^ω^)「エル・アニージョ……」
(;^ω^)「もう、20年前の…なのに…」
(;^ω^)「20年前、僕はこれをツンに…」
なんという奇跡だろうか。
復讐の理由である女の、その娘と、脱獄して出会えるなんて。
しかも、その関係は。
ζ(;д;*ζ「……お父…さん…」
お互い絶対に会えないと思っていた、唯一の家族なのだ。
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:16:42.39 ID:Q3OUy/mLO
- その時だった。
『そこの護送車!止まれ!』
(;^ω^)「!」
ζ(;、;*ζ「!」
いつの間にか、後ろには複数のパトカーがついていた。
上空にはヘリコプターまで現れている。
(;^ω^)「ちいっ…デレ、しっかり捕まるお!!」
ζ(;、;*ζ「う、うん」
強引に涙を拭き、座席にしがみつくデレ。
内藤は強引にハンドルを切り、高速道路に進入した。
パトカーも、ヘリコプターも、その後を追っていく。
(;^ω^)「くそ、護送車ごときじゃ追いつかれるお」
このままでは間違いなく捕まってしまう。
なんとしても、逃げ切らなくてはならない。
『内藤!もうお前に逃げ道はない、諦めるんだ!』
(;^ω^)「……」
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:18:17.18 ID:Q3OUy/mLO
-
(;^ω^)「…デレ!座席の下に身を隠すお!」
ζ(゚、゚;ζ「え!?」
(;^ω^)「いいから早く!!」
指示通りに、座席の下で固まるデレ。
内藤が、静かに呼吸を整える。
(;^ω^)「ふーっ、ふーっ…」
(;^ω^)「行くおおおお!!」
ζ(゚、゚;ζ「!?」
(#`ω´)「おおおおお!!!」
ζ(゚д゚;ζ「待っ、ここ橋、なんで壁に向かってんの、え、ぎゃあああああああああ!!!」
直後。
護送車が、高速道路の壁を突き破り、落下していった。
(#`ω´)「おおおおおおおおおおおお!!!」
ζ(゚д゚;ζ「ああああああああああああああ!!!」
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:20:42.70 ID:Q3OUy/mLO
-
衝撃。一度地面についた護送車は、大きく跳ねて横転した。
そのまま滑るように移動し、建物にぶつかったところで、護送車はようやく止まった。
(;^ω‐)「いててて…デレ!無事かお!」
ζ(゚д゚;ζ「…無事だけど…アンタ何無茶してんの!!死ぬかと思ったじゃない!」
(;^ω^)「これも予定通りだお!ほら、行くお!」
荷物を取り、デレの手を引き、内藤は住宅街へと走り出した。
内藤の走るスピードがデレにはとても速く、おぼつかない足で引っ張られるように走る。
五百メートルほど走ったところで、内藤は小さな家の前で立ち止まった。
ζ(゚、゚;ζ「ハァ…ハァ…無理、死ぬ…」
( ^ω^)「…デレ」
ζ(゚、゚;ζ「?」
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:22:35.03 ID:Q3OUy/mLO
-
( ^ω^)「お別れだお、デレ」
ζ(゚、゚;ζ「………え?」
( ^ω^)「今から警察が来て、お前を保護してくれるお。警察が来たら、『内藤はこの家の中にいる』と言うんだお」
ζ(゚、゚;ζ「ちょ、ちょっと待って、お別れって…」
( ^ω^)「デレ、ありがとう」
デレの手を取り、先ほどの指輪を返す。
ζ(゚、゚;ζ「そんな…嫌…」
( ^ω^)「もう生きて会うことは無いお」
ζ(;、;*ζ「イヤ、嫌……」
また涙の溢れてきたデレに、笑顔を向ける内藤。
まるで、父親が子供にそうするように、デレの頭を撫でた。
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:24:06.93 ID:Q3OUy/mLO
-
( ^ω^)「デレ、お前は一人じゃないお。強く生きるんだお」
ζ(;、;*ζ「ウッ……ヒック…」
( ^ω^)「さよならだお」
それだけを言い残し、内藤はその家へと入っていった。
唯一の家族である、デレを離して。
──
- 185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:27:14.92 ID:Q3OUy/mLO
- ──
( ゚∀゚)「……来たか」
酷く殺風景な、小さく暗い部屋。
その部屋の中で、二人の男が向き合う。
( ^ω^)「……」
資産家のジョルジュと、死刑囚の内藤。
無表情を向ける内藤に、ジョルジュがせせら笑う。
( ゚∀゚)「…まーさかSATに勝つとはねえ」
( ゚∀゚)「あんな女一匹の為に、ここまでやるなんてな」
( ^ω^)「……」
懐から銃を取り出し、ジョルジュに向ける。
しかし、当のジョルジュは大袈裟に驚いたように動き、笑った。
( ゚∀゚)「ハハハ!あーあ…お前、あの女一匹のためにどれだけ人を殺したの?」
( ^ω^)「……」
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:29:31.47 ID:Q3OUy/mLO
-
( ゚∀゚)「釣り合わねえ、釣り合わねえ、釣り合わねえ!人の命ってなんなんだろうなぁ?」
( ^ω^)「…何が言いたいんだお」
( ゚∀゚)「お前の殺しは、理にかなった復讐でもなんでもねえ。ただのエゴだ」
( ゚∀゚)「そうだろ?死んだあの女が、お前が復讐に走る姿をみて、果たして喜ぶのかねえ?」
(;^ω^)「…」
( ゚∀゚)「お前は女の為に動くヒーローじゃねえ。ただの殺し屋、死刑囚だ」
(; ω )「……」
( ゚∀゚)「…返す言葉もねえってか」
部屋にあった拳銃を取り、内藤に向けるジョルジュ。
対する内藤は、銃を持つ手をゆっくりと下げていく。
( ゚∀゚)「なんなら俺が殺してやるよ。首吊りの刑よっか楽だろ」
(; ω )「……出会ってしまったんだお」
( ゚∀゚)「あん?」
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:32:05.31 ID:Q3OUy/mLO
-
( ω )「今の僕は復讐なんかでお前を殺さない…守るべき人と、出会ってしまったんだお」
(;゚∀゚)「……!!」
( ^ω^)「さよならだお、"辻元"」
内藤の銃弾が、ジョルジュの眉間を貫いた。
そして、ジョルジュが崩れ落ちると同時に、家のドアが乱暴に開いた。
( ^ω^)「!!」
現れたのは、大勢の警官。
全員が銃を構え、近づいてくる。
(´・ω・`)「発砲しろ!殺す気でいかねば奴は捕らえられん!!」
(;^ω^)「!」
直後、数多もの銃弾が、内藤の体を貫いた。
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:33:31.07 ID:Q3OUy/mLO
-
仰向けに倒れた内藤に、ショボンが銃を向けて近づく。
( メ^ω^)「…アンタか……」
(´・ω・`)「ああ、確保させてもらうぞ」
( メ^ω^)「フ…アンタには謝らなければならないお」
(´・ω・`)「?」
( メ^ω^)「あの時、僕の命は好きにしろと言ったけど…訂正させていただくお」
震える右手をジャケットの内ポケットに突っ込み、ドクオから貰ったケースを取り出す。
ショボンの目が、大きく見開かれた。
(;´・ω・`)「…全員退避!!ここから出ろォォ!!!」
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:35:57.60 ID:Q3OUy/mLO
-
( メ^ω^)「自分の命は、自分でどうにかさせていただくお」
(;´・ω・`)「──っ!!」
閑静な住宅街に、鳴り響く爆音。
警察に囲まれた小さな家は、内藤の命ごと、大きく爆発した。
ζ(;、;*ζ「嫌…お父さ……!」
死刑囚の脱獄生活の1日が。
名家の令嬢の、非日常な1日が。
今、幕を下ろした。
──
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:38:42.77 ID:Q3OUy/mLO
-
──
警察の保護がようやく解かれたのは、それから三週間が経った後だった。
久しぶりに帰った家は、綺麗に掃除されていて、血痕も弾痕も残っていなかった。
ζ(゚、゚*ζ「……」
あの衝撃だった1日が終わり、デレの「日常」がまた戻ってくる。
しかし、デレはもう気分が落ちたりはしなかった。
あの日のおかげで、あの人のおかげで、自分が強くなれた気がしたから。
普通じゃないことに悩んだいたなんて、馬鹿らしく思えてきたから。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
明日からも、きちんと学校にいこう。
自分らしく居られれば、それは苦なんかじゃないはず。
少なくとも、辻元デレは一人ではないのだから。
- 202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/06(土) 00:40:01.49 ID:Q3OUy/mLO
-
ネックレスにかかった指輪を見つめ、小さくデレは呟いた。
ζ(゚ー゚*ζ「エル・アニージョ…」
これには、たくさんの思い出が詰まっている。
家族の思い出が詰まったものが、ここにある。
ζ(゚ー゚*ζ「…おやすみ。お父さん、お母さん」
( ^ω^)エル・アニージョの呼ぶ方へ、のようですζ(゚ー゚*ζ
おわり
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