- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:18:30.91 ID:rqQTVqpi0
朝、日が昇る。
いつものことだけど、ぼくはそれが楽しみだ。
楽しいおしごと、始まるから。
「二番」の表札の下の「CLOSE」の板をひっくり返す。
( ^ω^) 「さーて…今日も一日がんばるお!」
ぼくは花だんの管理人。
頼まれたわけじゃないけれど
お金をもらえもしないけど
(*^ω^) 「おっ!クローバーの花が咲いてるお!」
ぼくはこの仕事が大好きだ。
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:19:11.81 ID:rqQTVqpi0
( ^ω^) はなひらくようです
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:19:56.13 ID:rqQTVqpi0
( ^ω^) 「おっおっおっ〜♪」
鼻唄まじりに土いじり。
ときおり雑草抜きながら
お花に水やり肥料やり。
お花は自分で育つけど
ぼくが助けてあげるんだ。
一番最初に育てたお花は
きれいで元気でかわいくて。
まるでメイドさんみたいだなぁって思ったっけ。
でも何ぶん初めてだから
いろいろ苦労もあったっけ。
そんな思い出あったよなぁ
なんてニヤニヤ考えてたら
今日のお仕事おーわり!
これじゃあお昼は暇だなぁ
うーんと腰をのばして
お空を見たら晴れもよう。
そうだ!
( ^ω^) 「新しいお花探しに行くお!」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:20:53.11 ID:rqQTVqpi0
お花は市場に売ってるよ
「お花師」さんが売ってるんだ
お花師さんはすごいんだよ
だって
( ^ω^) 「お花を作っちゃうんだもんなぁ…」
ぼくはお花の世話がかり。
だけどお花は作れない。
だからお花師さんてすごいんだ!
だけどぼくだって負けてない。
だって
( ^ω^) 「ブーンの花だんのおかげで、お花がみんな元気だお!」
お花師さんはお花を作る。
お花は自分で育ってく。
だけど花だんがなかったら
しばらくしたら枯れちゃうんだ。
お花を見たい人がいて
けれども「枯れて見れません」
そんなのさみしいよね?
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:23:38.49 ID:rqQTVqpi0
( ^ω^) 「だからブーンががんばるんだお!」
こぶしをふりあげそう叫ぶ。
「おやおや今日も元気だねぇ」
いきなり言われておどろいて
気付けばいつものお客さん。
(;^ω^) (はずかしいとこ見られたお…)
毎日花だんを見に来てくれる。
やさしいやさしいおばあさん。
見てこのお花、きれいでしょ?
「おやまぁ、りっぱに育って。」
きれいに咲いたクローバー。
それ見て笑顔のおばあさん。
それ見てうれしいぼくの顔も
きっと照れくさい笑顔なんだろう。
(*^ω^)
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:24:21.20 ID:rqQTVqpi0
このときがイチバン好きなんだ。
ぼくが育てたお花が咲いて
それを見に来るお客さん。
ぼくが育てたお花だよ!
こころでいっぱい叫ぶんだ。
初めはお客も少なかったけど
だいぶ仕事も慣れてきて
気付けばいっぱい来てくれる。
バンザイ!
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:25:01.97 ID:rqQTVqpi0
「そうそう、そういえば今日はねぇ」
おばあさんがぼくに言う。
「このクローバーのお花師さんが来てたよ」
(*^ω^) 「本当ですかお!?」
こうしちゃいられない。
慌てて家に駆け込んで
お花を入れるうえきばちと
えいようたっぷりの土を袋に入れて
飛びだせ 目指すは市場なり!
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:25:42.77 ID:rqQTVqpi0
─────────
─────
──
( ^ω^) 「うおぉー、いつ見てもすごいお」
右見ても左を見ても
赤白黄色にピンクに水玉
香りに鼻をひくひくさせて
ぼくは市場を歩いては
色んなお店をのぞき見る
市場のちょうど真ん中あたり
少しひらけたとこがある
そこに集まる学生たちが
葉っぱ片手に勉強中
花びら片手に議論中
「こんなお花を作ったよ」
「うーん、も少し色を濃い目にしたら」
「なるほどそれならいいかもね」
今日もお花師見習い所は
未来のお花師で大賑わい
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:28:12.67 ID:rqQTVqpi0
それを見てると元気が出てきて
ふふふと笑って歩いていると
隊長お店を発見しました!
( ^ω^) 「おっ!この花は!」
白くて素朴でけなげな花
この花はなあに?
「ああ、それは大根の花だよ」
( ^ω^) 「おじさん!このお花おくれお!」
「あいよ。大事に育てとくれよ」
お花の市場にお金はいらない
ありがとうのお礼だけ
(*^ω^) 「ありがとうだお!いっしょうけんめい育てるお!」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:29:01.41 ID:rqQTVqpi0
お花師さんはみんなのために
お金ももらわずお花を作る。
それはみんなの笑顔のために。
やっぱりお花師さんてえらいんだなぁ…
そんなことをかんがえながら、
ふらふら市場を歩いていたら
見れば黒山、人だかり
( ^ω^) 「もしかして…」
はいはいごめんよ
ちょっと失礼
人をかき分け頭をつっこみ
目の前ひらけたその先に
「…」
いた。
クローバーのお花師さんだ。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:29:53.37 ID:rqQTVqpi0
「相変わらず すごい技だのう」
「あら、今日はちょっと悲しいお花ね」
「うーん。何て深い青色だろう」
「見てるとこう、胸の奥に染み込むような」
みんな口ぐちに思いをこぼして
だけど目だけはしっかり釘付け
お花師さんの手先を見てる。
ぼくもやっぱり目がはなせない
葉ができ 根ができ
あっ!花びらができた!
今日のお花は哀しい色で
見てると胸がチクチクするような
だけど悪い気分じゃない
今日のお花も最高だ…!
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:31:32.96 ID:rqQTVqpi0
「はい、おしまい。今日も見てくれてありがとう。」
お花師さんがお花をかかげる。
愛娘を自慢するように。
もう誰も何もしゃべらない。
胸いっぱいでしゃべれない。
パチ…
やっと、誰かが手を叩いた。
みんなハッとして、でも急に笑顔になって
いきなりワッとはじけたように
割れんばかりの拍手と歓声
ぼくもいっぱい手を叩いた
やっぱりお花師さんてすごいんだなぁ
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:37:39.94 ID:rqQTVqpi0
( ^ω^) 「あの、あの、」
人ごみをかきわけ
やっとの思いでたどりつく。
「ん?なんだい?」
今日もすばらしいお花をありがとう。
そんな気持ちとソンケーをこめて
ぼくは大きな声でお願いする。
( ^ω^) 「ぼ、ぼくの花だんに植えさせてください!」
頭を下げて
目をキュッとつぶって
しばらくお辞儀
その時間はドキドキだ
断られたらどうしよう…
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:38:50.28 ID:rqQTVqpi0
(;-ω-) 「…」
「…」
(;-ω^) 「…」
「…」
(;^ω^) 「…」
「いいよ」
( *゚ω^)
!! やったー!!!!!
きっと今のぼくは
世界でイチバン幸せ者の顔だろな
何度もお礼を言いながら
うえきばちにお花を入れて
そっと土を入れていく。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:48:14.74 ID:rqQTVqpi0
(*^ω^)ノシ
また来ますと手を振りながら
お話師さんとさようなら。
足が勝手におどり出しそう
ウキウキ ふわふわ おっとっと
危ない危ない 手にはうえきばち
そっと運んでおうちに帰ろ
それ行けやれ行け豊作じゃ。
揺れる花びら大漁旗。
目指す我が家が見えてきた!
(*^ω^) 「とうちゃーく!」
いてもたってもいられなくて
カバンを家に投げ込んで
急いで花だんへ駆け足で。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 18:59:30.40 ID:rqQTVqpi0
軍手よし。
スコップよし。
お花よし。
土よし。
立て札よし。
( ^ω^) 「…ショータイムだ」
かっこうつけてつぶやいて
かまえたスコップ我が愛器
いざゆかん花園への道。
お花を植えるの楽しいけれど
気合いと根性 真剣勝負
いい加減にしちゃったら
お花に傷が付いちゃうし
お花がきれいに見えないし。
それになにより…
( ^ω^) 「お花師さんに失礼だおね…」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:06:31.65 ID:rqQTVqpi0
これで完了ひと仕事。
腰をのばしてひと休み。
ポケット取り出すこの一本。
それをくわえてほっと一息。
仕事のあとにこの一服。
( ^ω^) 「へっ…仕事のあとの一服は格別だぜ…」
じゃがりこボリボリ食べながら
しばし休息 至福の時間。
なぜってぼくの目の前には
(*^ω^) 「きれいなお花がいっぱいなんだおー…」
目の前広がる花畑。
畑というには小さいけれど
ぼくにはこんなに愛おしい。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:09:12.92 ID:rqQTVqpi0
お昼を過ぎたら人も増え、
ぼくの花だんを見に来てくれる。
ほら見て、この花、きれいでしょ?
新しいお花もやって来た!
ねえこの大根、よく見てよ!
それに今日は…
(*^ω^) 「クローバーさんのお花師さんのお花が来たんだおー!」
「おっ」という声がお客さんからあがる。
どれどれ、これこれ、おおキレー
あっという間に人だかり。
人が押し合いへし合いの、
人気の花だんになっちゃった…
やっぱりすごいやクローバーさん…
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:11:51.85 ID:rqQTVqpi0
はいはい並んで押さないで
ぼくの花だんが人気になった…
くすぐったくてうれしくて
顔がほころぶ 胸おどる
前途揚々 順風満帆
これでぼくも人気者…
だけどお客さんの一言で
「ああ、これ七番の花だんでも見たなぁ」
ぼくは…
「え?マジで?」
「七番の花だんって最近できたとこだろ?」
「でも育ててる花も多くて人気らしいぜ」
「じゃあそっち行こうぜ」
「だな、ここあんまりパッとしないし」
きびすを返してぞろぞろと。
見送るぼくはポカンと口あけて
だけど上手く飲み込めなかった。
( ^ω^) 「え…?」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:14:13.11 ID:rqQTVqpi0
─────────
──────
──
ぼく…いや、ぼくたち花だんの管理人は、一人じゃない
花だんを開くのは自由だし、閉めちゃうのも、まあ、自由っちゃあ自由だ。
みんな自分の好きな花を植えて、
好きな飾り方をして、
来る人を楽しませてる
ぼくが花だんを始めたのだって
別の花だんを見たのがきっかけ。
ある日偶然見かけた花だんは
おっきなおっきな花が咲いてて
その素晴らしさに圧倒されて
( ^ω^) 「それで花だんを始めて…」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:15:35.91 ID:rqQTVqpi0
-
慣れないながらにお花を育て
育てるお花も増やしていって
だんだん来る人も増えてきて
お花師さんやお客さんからお礼を言われて
それだけでうれしくて
うれしかったのに
僕のこころに
何かドロドロしたものが
池の底から
吹きあがるみたいに
「悔しい」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:19:05.16 ID:rqQTVqpi0
-
────────────
───────
──
ぼくは自分が変わるのを感じた
だけど変わりたくて変わったのか、今では分からない
だって
変わるのを止められなかったから
( ^ω^) 「…今日は50人だったお…昨日より少ないお…」
まず、ぼくは花壇を見に来る人数を気にするようになった。
入場者を毎日ノートにメモって、その増減に一喜一憂した。
そして…
( ^ω^) 「もっと人増やしたいお…」
どうしたら人が増えるんだ
そうだ。花の種類を増やそう。
今まで少ししか育てられなかったけど
無理すればもっと行けるはず
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:22:40.22 ID:rqQTVqpi0
ぼくは市場に向かうことが多くなった。
少しでも人気が出そうな花を、ロクに見ることもせず持ち帰って植えた。
育てる花が増えると、必然的に一つ一つの花にかける時間も削がれた。
雑な仕事はすぐそのほころびを見せ始めた。
葉が傷つき、花びらが取れ、立て札も書き間違えた。
そのたびに客から指摘を受け、そのたびに修正することも多くなった。
だんだん自分が何をしたいのか分からなくなっていた。
だけど、もう止められない。
ノートのグラフとにらめっこする回数が多くなった。
入場者は右肩上がりだった。
よし、いいぞ。このまま他の花だんなんか追い抜いてやれ。
俺が最大手の花壇になるんだ。
一番多くの人間に見てもらうんだ。
見てもらうんだ。
見てもらう。
何を。
何を見てもらうと言うんだ。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:30:00.67 ID:rqQTVqpi0
自分が変わってから、すでに半年が過ぎていた。
無理な管理を続けた花壇は世辞にも綺麗とは言えず、
自分の心も同じように荒んでいった。
花を愛でる心はとうに失われ、ただの客寄せパンダほどにしか思わなくなっていた。
だがそのパンダだって、飼育員にはもっと愛されていただろうよ。
しかしそのときは唐突にやってきた。
いや、むしろそれまで目を背けていたことに、やっと気付いたというべきか。
花壇を見る。
ところどころ傷痕の残る花々が、「早く世話をしろ」とせっついているようで。
それでも懸命に自分で咲き誇ろうとしているようで。
この半年、ひたすら数字に追われて無理して働いて、自分は何を得たんだ?
おい、お前。 人を増やして、 「何を」見てもらおうってんだ?
こ の 花 だ ん を 見 て 何 も 思 わ な い の か ?
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:35:50.15 ID:rqQTVqpi0
ぼくは悟った。
今まで手段にすぎないとみなしていた花達は
一つ一つが生きている。自分の思い通りになんかならない。なってはいけない。
逆らい、認め合い、自分が「お世話させてもらってる」それらに、自分の矮小さを見抜かれたようだった。
(;゚ω゚)
ぼくは恐れた。
そして
逃げた。
怖かった。
自分の周りは全て敵に見えた。
実際そうだったのかもしれない。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:38:26.72 ID:rqQTVqpi0
-
しばらく花壇にも、市場にも行かず、ずっと家にひきこもった。
でも、仕方なく外に出ると、嫌でも立ち話が耳に入る。
「あの花壇。最近どうしちゃったんだろうな。」
「もう市場では新しい姉妹花が出来てるってのになぁ。」
「早く姉妹花を植えてもらわねぇと、未完成って感じで気持ち悪ぃよなぁ」
やめろ!やめてくれ!
ぼくはもう花壇を世話する資格なんか無いんだ!
ぼくは逃げ出すように駆けだして
その何かに捕まらないように、右に左に無茶苦茶に曲がって逃げた。
(;^ω^) 「も、もう走れないお…」
よろよろとした歩みで近くにあったベンチに座り込む。
なんでこんなことになっちゃったんだ…
頭を抱え込んで、嫌な考えを追い出すようにグシグシと掻いた。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:40:46.70 ID:rqQTVqpi0
-
ん…
ふと、鼻をくすぐるいい匂い。
これは…
頭をあげると、
目の前には見事な花壇が広がっていた。
思わずおお…と声が漏れる。
普通の花だんとは違って、適度に雑草が残してある独特の花壇だった。
だけど、それが自然な野原を思い起こさせるようで、見る者の心を躍らせる素晴らしい演出だ。
自分が花壇を飛び出して野生の花を愛でているような雰囲気を醸し出して、何より花が生き生きと咲き誇っていた。
すごい…誰の花壇だろう…
入口の表札を見ると、
「七番」と書かれていた。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:44:47.78 ID:rqQTVqpi0
(;^ω^) 「ッ…」
軽く胃が痛んだ。
そっか、ここなんだ。
でも…
なんて素敵な花壇だろう
新しい花壇とは思えないほどの花の種類の豊富さ、多彩さ。
なのに、仕事は全く手抜きが見られない。
雑草を一度に抜くのは簡単だが、ここは適度に残してしかも花を引き立てている。
これだけの作業を、この量で…
噂はかねがね聞いていた。
類まれなモチベーションと勢い、加えて独特の植え方。
なるほど、これには敵わないな…
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:46:57.90 ID:rqQTVqpi0
でも、いい噂だけじゃなかった。
そのほとんどは理不尽な要求ではあったけど、
「見辛いから雑草は全部抜いてくれ」「花だけを植えてほしい」など、色んなクレーム混じりの文句があったそうだ。
でも、
( ^ω^) 「…貫いてるんだおね…自分の、植え方を…」
人を気にして、何になる
数字を気にして、何になる
七番さん、すごいよ
やっぱり、敵わないや
その日はとぼとぼと家路についた。
だけど
また、何かが「変わった」。
そんな気がした。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:48:30.94 ID:rqQTVqpi0
-
────────────
───────
──
自分の中で、ひとつの意志が固まった。
「逃げるのをやめよう」
だけど、それは新たな岐路を示す決断。
僕は一枚の板を両手に持ち、それをじっと見ていた。
くるりと裏返し、それをまた裏返し
OPEN CLOSE
結論は出ないまま
板を眺めては裏返し
昼
裏返しては眺め
夕方
気がつけば
深夜
もう、迷ってはいられない
だけど…
( ^ω^) 「…結論は、出ないお…」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 19:51:37.07 ID:rqQTVqpi0
心にわだかまりを残したまま、僕は…
CLOSEの板を表にかけた。
花壇業界の暗号、『404』という言葉を書きくわえて。
( ^ω^) 「…終わった…」
終わりたくない。
けど
このまま自分が花壇を続けても
お花師さんやお客さんに迷惑を掛けてしまう…
模範解答、だと思う。
僕が長い、長い溜息をついたとき
後ろから何人かやってくる気配がした。
「いやーwwwwしかしすごかったなwww」
「ああwwwまさか花壇はあんなに様変わりしてるとは思わなかったぜwwww」
「いやー、やっぱ優勝はあそこかな!クオリティ高かったしな!ww」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:00:58.59 ID:rqQTVqpi0
どうやらぼくには気づいてないらしい。
ぼくは門の影に隠れてやり過ごすことにした。
花壇の閉鎖について色々聞かれたくはなかった。
お互いに、傷つくことは目に見えてたから。
「ってオイ…この花壇…」
「『404』…?閉鎖か?」
「えー!マジかよ!ここ楽しみにしてた花があったのに!」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:02:20.66 ID:rqQTVqpi0
チクリ、と胸が痛む。
その痛みで、頭の奥から昨日のことが浮かんでくる。
『人を気にしない 数字を気にしない』
『自分の好きな花を植える』
お前はどうしてそんなに胸が痛いんだ?
なんで花壇を始めたんだ?
ノートとにらめっこするためか?人気者になるためか?
違う
好きな花を植えたい
花を育てたい
もっと、もっと、花を…
ぼくは…
( ^ω^) (花壇を続けたい…!)
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:03:22.40 ID:rqQTVqpi0
やっと気付いた自分の本心。
だけど、
( ω ) (気付くのが遅かったお…)
もう、戻れない。
永久閉鎖の暗号──404を使ってしまったのだ。
今さら続けたいと言っても、許してもらえる訳…
「…あれ?でも待てよ?もしかしてここも…」
「あ、そっか! あーやっべwwww騙されるとこだったwww」
「いや、ここがやると洒落にならねぇよwwwwww」
「だよなwwwリアルなネタやるんじゃねーよって話だよなwww」
?
何だか様子がおかしい
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:13:00.73 ID:rqQTVqpi0
-
「よっしゃwwwそんじゃ次見に行こうぜwwww」
「もっと笑える奴探そうぜwwww」
???
訳が分からない
気になったぼくは
よたよたと、夜の市場へと向かったのであった。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:23:56.32 ID:rqQTVqpi0
-
────────────
───────
──
市場に着いて息を飲んだ。
深夜だというのに、何だこの人の量は。
顔が赤い人も何人かいて、
今日は何やらお祭りのようだ。
吸い寄せられるように見習い所へ近づくと、
喧騒の中から興奮した会話が聞こえてきた。
「やっぱり優勝は一番さんだろwww」
「ああ、一夜で花壇が真っ赤に塗られててびっくりしたぜwww」
「三番さんもすごかったぜwww行ったら花壇がレストランに変わっててなぁwww」
なんだろう。リフォームでも流行ってるんだろうか?
でも、それだとさっきの二人組の会話がよく分からな…
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:31:58.68 ID:rqQTVqpi0
「二番は404だったぜ!」
心臓が飛び出しそうになった。
そうだ。ぼくの花壇は閉鎖したんだ。
もうくつがえせない。馬鹿げた決断。
ぼくはうつむき、目をぎゅっとつむって、皆の次の言葉に構えた。
「マジかよwwwwあんまパッとしねーなぁwww」
「もっと笑えるネタにしてほしいよなぁwwwww」
ネタ…?
「いやー今年も皆頑張ったなーwwww」
今年も…?
ハッと顔をあげて、ひときわ明るい隣の広場へ目を向ける。
(;^ω^) 「まさか…」
もう一つの特設会場が作られて、ネオンサインで派手に飾られた看板が立っている。
『エイプリルフール祭』
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:35:42.41 ID:rqQTVqpi0
しばらく、呆然。
どれほど長い時間突っ立っていたか分からない。
我に返ると、はじかれたように市場を飛び出した。
一路
花壇へ
走った
走った
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:47:44.92 ID:rqQTVqpi0
─────────
─────
──
朝、日が昇る。
いつものことだけど。
OPEN
( ^ω^) はなひらくようです 完
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/08(水) 20:56:50.19 ID:rqQTVqpi0
※ この物語は、フィクションです。
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