川 ゚ -゚)クーは天才ネット小説家のようです

1 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 20:59:16.60 ID:5ocRh4Cs0

私はクー。
ネット小説家歴二年の高校生だ。

川 ゚ -゚)「さて、そろそろ新作を書くか」

ブクマからいつものサイトを開く。
『小説投稿掲示板 パラパラ』
私が中学生の頃から入り浸っている小説投稿サイトだ。

川 ゚ -゚)「ようし、まずは更新されてる小説に感想をつけるか」

2 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:05:09.53 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「お。ブーンさんの連載小説が更新されてる」

ブーンさんは、ファンタジー物を書く作者で
私よりも一年程先にネット小説デビューした先輩だ。

川 ゚ -゚)「うーむ、やっぱり面白いな。感想をつけとこう」

『すごく面白かったです! 続きがすごく気になります!』

……とまあ、基本的に一回の更新における量は短いので
感想を端的に言ってしまうと、一行で終わってしまうのだが

川 ゚ -゚)「新人じゃあるまいし、そんな失礼な事はせぬせぬっと」

『久々の更新! 待ってました! 相変わらずの安定感で
 今回も楽しませていただきました。
 特に、今回はフィレンクトに焦点が当たっていて、
 なるほど、彼にはこういう動機があったのか! と
 思わず口に出してしまいました(笑)』

4 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:09:50.98 ID:5ocRh4Cs0

私が感想をつける場合、最低でも五行は書く。

これは、書き手に対して『ちゃんと読み込んでますよ』という
意志を伝える為でもある。

感想というのは、書き手のモチベーションにモロにかかってくる部分だし
やはり同じサイトの同じ書き手、という関係を考えると五行くらいは……という
考えに落ち着くのだ。

川 ゚ -゚)(まあ、『パラパラ』はそういうルールがある訳じゃないけど
     私も長文感想もらうと嬉しいし、長文感想をもらったら、礼儀として
     相手の小説も読もう! と思うからなぁ)

そんな事を考えながら感想欄を眺める。
すると、『とある人物』の感想が嫌でも目についた。

5 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:15:44.58 ID:5ocRh4Cs0

『すごく面白かったです! さすがブーンさんなんです!
 もしよろしければ、僕の作品も読んで下さい><駄作ですが(笑)』

川 ゚ -゚)「まーたビロードか……」

ビロード。
最近、パラパラに作品を投稿するようになった
新参の作家だ。

低レベルな(こう言っては悪いが、本当にオチ無しヤマ無し魅力無しなのでこう表現するしかない)
短編を書いては、感想を求める、いわゆる感想乞食。構ってチャンである。

あとがきにて、中学一年生だと言っていた。
まあ、年齢を考えれば、この幼稚で軽率な行動にも納得がいく。

川 ゚ -゚)「まったく……。自分の行動がいかに失礼で、いかに自分の評価を
     下げているか気付かないのか?」

『感想を下さい』

この一言は、パラパラにおいて、いわゆる暗黙のタブーになっている。
感想返しは基本的に強制ではない。
パラパラのローカルルールにも、そんなルールは明記されていないのだ。

あくまで、好意。
きちんと読んで頂いた礼儀として感想を返しているにすぎない。

6 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:21:22.18 ID:5ocRh4Cs0

かつて、その件にて論争はあった。
感想返しをしない人間を、デレさんが掲示板で批判したのがキッカケだった。

ζ(゚ー゚*ζ「ツンデレさんが感想返しをしてません。
     この間、感想欄でその事を指摘したのですが」

ξ゚听)ξ「私は読みたいものだけ読むの。何で強制されなきゃいけないわけ?
     ついでにいうと、感想欄はあくまで感想をいう場所でしょ。
     そこで指摘するなんて、どういう神経してるの?」

ζ(゚ー゚*ζ「これってどうなんですか……? 中傷ですし、アク禁にすべきだと思います」

まあ、この問題は荒れに荒れた。
このトピックのレスは50を超え、感想返しは必須派と必須ではない派にわかれ
とうとう『人それぞれ。強制すべきではない』という結論に至った。

しかし……まぁ、新参はそんな事は知らないわけで、
こうして時々、配慮にかけた感想があったりするのだ。

7 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:25:16.25 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「まぁ、レス返しでブーンさんが優しく諭してくれるだろう」

レス返しとは、いわゆる感想に対する返信である。
蚊帳の外から、わざわざ私が注意すべき事でもないだろう。

さて。
私は今日あがっている新作をぱぱーっと目を通した。
新作はNew! のマークがついているので分かりやすい。

しかし。

川 ゚ -゚)「今日は不作だな。グッとくるやつはなさそうだ」

パラパラは、利用者が多い分、面白い物もあるしつまらない物もある。
しかし、皆、感想や批評をお互いにやったりと、切磋琢磨している。
雰囲気がいいのだ。

私はそんな空気に心地よさを感じて、二年もやっている訳だ。

10 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:28:13.56 ID:5ocRh4Cs0

さて、新作チェックはこれくらいにして、私も書くか。
――その時だった。

川 ゚ -゚)「ん? この作品、新作にしては感想が多いな」

タイトルは『京都アンダーグラウンド』。
ジャンルは……未選択。

何だろう? 気になる。
私は引きつけられるように、その作品のタイトルをクリック。

本文を、読み始めた。

12 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:33:43.15 ID:5ocRh4Cs0


川;゚ -゚)「なんだ……これ!」

一時間後。
一話分を読み終えた私は、パソコンの前で震えていた。

川;゚ -゚)「面白い……すごく面白い」

ここまで引き込まれる作品と出会ったのは、生まれて初めてだった。

作品の内容は、異能バトル。

現代の京都の地下に、もう一つの世界があって、
そこでは特殊な能力を持った人々がいて……という
一見すれば陳腐でありがちな設定なのだが

川;゚ -゚)「なんだこれ? 作者プロじゃないのか?
      このスピード感は何だ? ていうか、量も半端じゃないぞ」

一話なのに、ほぼ文庫本一冊分に近い分量。
パラパラの一般的な作者なら、長編といっても過言ではない分量を
一話で消化したのだ。

量、クオリティ、どちらも申し分ない。
それは、明らかに異常だった。
アマチュアが書き連ねるネット小説の中に、一つだけ紛れ込んだ異分子。

当然、その作品は日を追う事に人気を増していった。
私も書く手をとめて、連日、読みふけったのであった。

15 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:40:30.82 ID:5ocRh4Cs0

その作品の評判は、瞬く間に『パラパラ』に広がった。
設定の深さから、議論や考察のための専用トピックまで出来上がった。

川 ゚ -゚)「いや、ギコの能力なら余裕であいつには勝てるだろ。
     よって今のとこ最強はギコ」

もちろん、私も議論に参加。
作品への感想は毎回つけた。
五行では収まらない。行数が長すぎてはじかれることもあった。

川 ゚ -゚)「これは凄い人が現れたもんだ。むむむ、私も頑張るぞ!」

私と同じように、この作品に感化された人が多かったのか、
パラパラは『京都アンダーグラウンド』を中心に、

より良い作品を。
京アンに引けをとらないくらいの作品を。

と、より一層、切磋琢磨の色合いが強くなったのだ。

当然、京アンにつられるように、長編中編短編、
まんべんなく良作が生まれた。

16 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:46:43.77 ID:5ocRh4Cs0

ただ、一つだけ気になったのは

川 ゚ -゚)「やっぱりレス返しはないかぁ」

京アンの作者であるハインさんが、一切レス返しも感想返しも
しなかった事だ。

今まで、レス返しをしなかった作者は大抵叩かれていた。
当然だ。
コミュニケーションを全くとらないで、作品だけを更新しているのだから。

しかし、ハインさんは一切、感想も書かないしレス返しもしないが
作品が面白いので、誰も文句を言えなかった。

まぁ、中にはやっかみ混じりの感想を書く人もいたが
熱心なファンに逆にボコボコにされていた。

19 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:49:03.17 ID:5ocRh4Cs0

小さな火種があったりもみ消されたりしつつも、
パラパラの盛り上がりは、夏休みという事もありピークに達していた。

('A`)「この作品は、背景描写がまだまだだと思う。
    描写には比喩を使った方がもっとよくなるかも」
ξ゚听)ξ「ちょっと、誤字が多いわよ。推敲、ちゃんとしてる?」
ζ(゚ー゚*ζ「ガールっていう小説は女性描写がうまくて、参考になりますよ。
     おすすめです。アマゾン置いときますね。ttp〜」

そんな、誰もが批評しあい、腕を磨いていく中。
掲示板で、とある企画が立ち上がった。

( ^ω^)「みんなで短編の品評会をしないかお?
       夏休みだし、お祭りって感じでどうだお?」

古参であり実力者の、ブーンさんからの企画提案。
もちろん、私は大賛成だった。

川 ゚ -゚)「おお、いいですね! お互いにもっと勉強が出来る!」
('A`)「僕も賛成です。ルールやテーマはどうしますか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うわぁ、ドキドキするっ」

20 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:52:49.51 ID:5ocRh4Cs0

やんややんやのお祭りで
ルールや開催日はあっという間に決定した。

『パラパラ品評会祭り』

短編を書き、参加者同士で批評しあう。
また、初の点数制度も執行された。

今までは、感想数が点数のかわりになっていたが
今回の祭りでは、作品の評価が完全に数値化されることになる。

('A`)「優勝は難しそうだなぁw まぁブービー狙いで」
ζ(゚ー゚*ζ「今持ってる実力を出し切りたいです」

などなど、
皆、「優勝は無理」などと謙遜していたが
だれもかれしも鼻息が荒くなっているのが、画面越しに感じられた。

21 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:55:24.23 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「ようし、私も頑張るぞ」

その日から、私はプロットを必死に考えた。
短編ということで、どちらかというとオチが大切だ。
しかし

川 ゚ -゚)「おもいつかん……」

川;゚ -゚)「うまいオチ。うーむ、う――――む……」

川 ゚ -゚)!

川 ゚ -゚)「思いついた!」

一人称を利用したトリックだ。
病気の妹を見舞う主人公が、実はすでに死んでいて幽霊だった。
これをうまくやれば、かなりの評価に繋がるだろう。

23 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 21:58:09.37 ID:5ocRh4Cs0

川;゚ -゚)「あー、違う。こーでもないあーでもないぃ」

私は納得のいく描写が出来ず、
何度も何度も書き直しをした。

川;゚ -゚)「文章力は大切なチェックポイントだからな。
      マイナス評価に繋がらないように、しっかり書き込まなくては」

濃くなりすぎない程度に、しかし情景が目の前に浮かぶように
意識して地の文を書いた。

一人称は、登場人物の心情が思い切り書ける分、
安っぽくなりやすい。

私はかなり硬めの文章で、作品を書いた。

27 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:01:35.05 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「うーむ……」

しかし、筆が止まる。

川 ゚ -゚)「ここで、実は医者が宇宙人だった、っていう設定をいれたいな」

それは、いきなり天から降ってきたアイデアだった。
宇宙人。まあ、突拍子もないアイデアである。

しかし、この作品の中盤シーンで
医者が宇宙人だった、という設定をつけ加えると
驚くほど面白くなる……ような気がしたのだ。

川;゚ -゚)「いや、しかし宇宙人はないだろ。ないない。ありえない」

私はその設定を頭から消去した。
宇宙人? そんなものを出せば、間違いなく設定に突っ込まれる。

今回、私は優勝を狙いにいっている。
マイナス評価に繋がるものは、極力避けたいのだ。

29 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:04:10.87 ID:5ocRh4Cs0

そして、作品は完成した。

川 ゚ -゚)「……」

完璧な出来だった。
描写は今持てる力をすべて当てた。
ストーリーや設定に破綻もなく、伏線もオチも申し分ない。

しかし、何だ
しかし。
しかしだ。

川 ゚ -゚)「このモヤモヤは何だ……?」

確かに、これは完成度としては高い。
けど、宇宙人を入れたら、もっと面白くなる。
フィクションラインはあがるが、面白くする自信がある。

31 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:06:09.53 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「品評会開始まで、あと一時間か……」

どうするべきか。
宇宙人という、ヘタしたら小学生レベルの設定を入れるか。
入れまいか。

……。
…………。

そして、悩んでいるうちに品評会の作品投稿がスタートした。

川 ゚ -゚)「ふむ。やはりどれもレベル高いな」

私はひとまず投稿は置いておき
品評会スタートダッシュ組の作品を読み始めた。

33 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:09:23.78 ID:5ocRh4Cs0

('A`)作 『夏。おばあちゃんと、僕』

川 ゚ -゚)「うむ。ドクオさんらしい、あったかい作品だな」

ドクオさんは、何気ない日常の一こまや、
思春期の複雑な心の揺れを表現する技法に長けている。

この作品も、最初から最後まで、一人称でキッチリと仕上がっていた。

川 ゚ -゚)「◎、と」

私はメモをとりながら、参加作品を読む。
参加者は、祭り終了後の品評会には絶対参加なのだ。

これは、祭りだけの限定ルールなのだが、
やはり品評し合う事によって切磋琢磨を、という事らしい。

36 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:12:10.17 ID:5ocRh4Cs0

その後も、参加作品をメモをとりつつ一通り眺めた。
流石にレベルが高く、誤字脱字や視点のブレ。
表現の誤りなど基礎的なミスはほとんど見かけなかった。

ところが。

川;゚ -゚)「うわ」

出た。

( ><)作 『勇者VS萌え魔王!!!やべぇ魔王さん超可愛いへん!』

川;゚ -゚)「ビロードも参加してたんかい……」

例の、構って中学生のビロードである。
タイトルからしてもうお腹いっぱいだ。
……しかし、品評会である以上、仕方ないので読む。

43 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:16:16.94 ID:5ocRh4Cs0

女魔王「勇者様ぁ、わ、私、一緒にお風呂入ってもいいよ?」
勇者「ちょwwww俺勇者なんすけどwww」
僧侶「ま、待ちなさいよ!勝手に勇者をとらないでよね!私がヒロインなんだから!」
勇者「僧侶キャラ変わってね?wwwww」


私はパソコンの前で頭を抱えた。

川;゚ -゚)「どーすんだよこれ」

文章作法完全無視である。
!や?の後に一文字あけない。
台詞の前に名前入れちゃう。
ニコニコ動画とかで見かけるwを使っちゃう。
台詞ばっかり。
誤字脱字がひどい。
視点がぶれまくってる。
男一人に対して女4人。

川 ゚ -゚)「マイナス五点」

私は、この作品にだけ最高のマイナスポイントをつけた。
これは小説ではない。
ただの落書きだ。うん。

44 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:19:28.74 ID:5ocRh4Cs0

――結局。
私はビロードの作品を見て、自分の作品に宇宙人設定を入れるのをやめた。

川 ゚ -゚)「投稿っと」

私もどうかしている。

川 ゚ -゚)「宇宙人、だって……ははっ」

馬鹿馬鹿しい。
私が書いたのはSFではない。
幽霊と宇宙人を組み合わせるなど、ありえない。
SFとオカルトの融合? あほか。

川 ゚ -゚)「さーて、品評会の作品に目を通す作業に戻るか」

そして、品評会の投稿期間が終わった。
総作品数47作品。
かなりの大盛況であった。

47 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:22:44.03 ID:5ocRh4Cs0

事件は、非公開にされていた感想&点数公開の時に起こった。

川;゚ -゚)「うーむ……点数はそこそこだが、上位には食い込めなかったな」

私の作品の評価は、悪くはなかったがよくもなかった。
曰く、よく書けているけど意外性がない。以上。

川;゚ -゚)「やっぱり宇宙人を入れた方がよかったかな?」

なんて思いつつ、点数欄を見ていて

川 ゚ -゚)「うわ! 何だこれ!」

ものっそい赤を見つけた。
(赤は総点数がマイナスの場合のみ表示される)

川;゚ -゚)「マイナス112点ってどんだけだよ」

その作品は、予想通り――

( ><)作 『勇者VS萌え魔王!!!やべぇ魔王さん超可愛いへん!』


52 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:26:16.38 ID:5ocRh4Cs0

・感想欄

感想を書く気にもなれません。基礎からやり直した方がいいのでは?
一行目で読むのをやめた。
これは……過去最低レベルです。文章のルールを学んで下さい。
人に見せていいものではないね。
品評会の面汚し。評価に値せず。
これはマイナスでしょ。
作者のためを思ってマイナス。読んでないけど。

川;゚ -゚)「あーあーあー、やっぱ皆そうなるわな」

誰もが予想した通り、マイナス祭りである。
恐らく、今、この瞬間も他の書き手は「やっぱり」と笑っているだろう。

ま、厳しいようだが仕方ない。
品評会は、批評しあって切磋琢磨するのが目的だ。
可哀相だが、同情は出来ない――っと。

一つだけ
たった一つだけ、+点数をつけている人物が、いた。

川;゚ -゚)「え?」

それは

从 ゚∀从「面白かった」

京アンの――作者。ハインだった。

57 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:29:11.51 ID:5ocRh4Cs0

川;゚ -゚)「え? え? 嘘だろ?」

私は何度も見直す。
偽物か? 自作自演か?
IPを確認する。

川;゚ -゚)「……ホンモノだ」

私は慌てて、品評会専用雑談チャットをクリックした。

(;'A`)「おい、どうなってんだ?
     あのハインさんが、あんな作品に点数入れてるぞ」

ζ(゚ー゚;ζ「何かの間違いじゃないの? 誰か聞いてみてよ」

ξ;゚听)ξ「どうやって? メールアドレスは公開してるけど
      何を送っても返事は返ってこなかったのよ?
      私なんて、三通もラブメール送ったのに!」

いや、それは迷惑メールだろう。

60 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:33:32.72 ID:5ocRh4Cs0

チャットは、その話題でもちきりだった。

同じマンションから接続した偽物説。
感想を入れる作品を間違えた説。
超天才ハッカーのイタズラ。
これぞリアルミステリー。

などなど、色々な案が出たし、
メールで問い合わせた人もいたが――結局、答えがでないまま、
品評会の最後、チャットでの批評会へともつれこんだ。

ξ゚听)ξ「デレさんの描写は綺麗だったわ。けど、後半が少し駆け足気味かな?」

ζ(゚ー゚*ζ「そっかぁ。書いてる時は気付かなかったなぁ」

('A`)「僕はいいと思いましたよ。やっぱり文章力は大事ですね。
    ビロードは論外ですけど」
ξ゚听)ξζ(゚ー゚*ζ「あははは」

62 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:37:05.43 ID:5ocRh4Cs0

ひとまず、くだんの件に関しては
『何らかの間違い』という事で落ち着いたようだった。

が、私は納得していなかった。

川 ゚ -゚)(なんでだろう……?)

間違い、と片付けるのは簡単だ。
だが、私はハインさんは、間違いでも何でもなく、純粋に

从 ゚∀从「面白かった」

そう、評価したのではないかと思った。

ちなみに、品評会では、作品の投稿者は批評会に絶対参加だが
参加しなかった人々に関しては、単発感想だけでオーケーとされていた。

以降、ハインさんは相変わらず感想返しもレス返しもしなかったし
他の作品に感想を書いたのは、それが最後だった。

65 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:40:56.92 ID:5ocRh4Cs0

それから半年が過ぎた。
京アンは絶賛の中、完結を迎えた。

ζ(゚ー゚*ζ「感動しました……ああ、次回作がたのしみ!」
ξ゚听)ξ「ハインさんはパラパラの星です! 私の目標です!」
('A`)「これは書籍化いけます!」

そんな声があがっても、ハインさんは際後まで無言を貫き通した。
あとがきも無し。
次回作はまだかまだかと皆待ちわびたが

結局、それからハインさんはパラパラには戻ってこなかった。
ちなみに、ビロードもあきたのか、パラパラから姿を消していた。

輝かしい天才を失ったパラパラは、まるでキャンプファイヤーの
火が消えたかのように、どよん、とした空気になってしまった。

ξ゚听)ξ「ああ、ハインさん戻ってこないかなあ。不作ばっかり」
ζ(゚ー゚*ζ「新作は文章力いまいちなのばっかだしー」
('A`)「僕達がしっかり育ててあげないとね」

66 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:44:42.79 ID:5ocRh4Cs0

私も、パラパラから少し距離をとっていた。
書く事が嫌になったわけじゃない。
ただ、パラパラの何ともいえない形式感に、飽き飽きしたのだ。

川 ゚ -゚)「暇だ」

私は漫画を放り投げて、パソコンのスイッチを入れる。

川 ゚ -゚)「あー……そういえば、ビロードの作品。
     あれ、ちゃんと読んでなかったな」

ふと、そんな事に気付き、私はパラパラの祭り特設ページに飛ぶ。
私はビロードの作品を読み始めた。

川 ゚ -゚)「相変わらず酷いな」

そこには、小学生の落書きのような小説もどきがあった。
読み進める。

川 ゚ -゚)「……」

カチリ。

川 ゚ -゚)「……ぷっくく」

カチリ。

川 ゚ -゚)「こ、これは……ぷぷっ」

68 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:47:33.98 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「だははははっ! こ、こいつ馬鹿だ! ほんきで馬鹿だ!」

私は声をあげて笑ってしまった。
あまりにもあり得ない展開。
バカバカしいやり取り。

なんというか、全力で馬鹿をやっている。
そんな小説もどきだった。

川;゚ -゚)「いや……なんだこりゃ。ほんきでやばい。
      乳首プテラノドーンおぉーんってレベルじゃないぞ」

確かに、この作品は色んな意味で酷い。
しかし……

川 ゚ -゚)「文章だけで人を笑わせるとは……」

あれ? これって、凄くないか?

私は他の作品をもう一度読み直した。
描写はうまい。
オチも伏線も申し分ない。破綻もしていない。

けど

川 ゚ -゚)「物足りない……」

70 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:49:18.18 ID:5ocRh4Cs0

この作品も。

川 ゚ -゚)「高得点だが、今見ると別にって感じだな」

この作品も。

川 ゚ -゚)「描写が重すぎて、逆にストーリーがわかりにくい」

この作品もッッッッ! あれも、これもッッッ!

川 ゚ -゚)「……」

――ああ、なるほど。

私はそこでようやく理解した。

この品評会の点数は、作品の面白さではなく――

川 ゚ -゚)「文章力に、つけられているんだな」

72 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:52:42.37 ID:5ocRh4Cs0

思い返してみれば、パラパラは

『基礎の文章力を鍛える事こそ創作の近道』
『正しい小説作法こそ至高』
『破綻なくまとめてこそ一人前』

そんな暗黙の価値観が、蔓延っていた。

誤字を出せばぐちぐち注意される。
突っ込みどころがあればすぐ文句をつけられる。

だから皆、描写や設定の整合性にこだわった。
だから品評会で、ビロードの作品は読まれもしなかった。

川 ゚ -゚)「けど……」

違うんじゃないか?
小説っていうのは、決まり事とか整合性とかも大切だけど、何よりも

面白いか否かが、重要なんじゃないのか?

73 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:54:44.20 ID:5ocRh4Cs0

私はハインさんにメールを送る事にした。
別に返信を期待しているわけじゃない。

ただ、伝えたかったのだ。

川 ゚ -゚)「ハインさんへ」

余計な言葉はいらない。ただ、一言だけ

川 ゚ -゚)「ビロードの作品、私も面白いと思いました。ていうかリアルに笑った」

かなり砕けた文体で、私はメールを書き送信した。

何だか、すがすがしい気分だった。

肩にのしかかっていた重荷を、ようやくおろせた気分だった。


77 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 22:57:12.70 ID:5ocRh4Cs0

ピコン。

川;゚ -゚)「え? へ、返信がきたぞ?」

私は慌ててメールをチェックする。
ハインさんからだ。

川;゚ -゚)「一体何が……?」

初めてのコンタクトである。
私はごくりとつばを飲み込み、覚悟を決めてメールを開いた。

そこには、URLが張り付けられているだけだった。


件名:無し
本文:http://yutori.2ch.net/news4vip/


80 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:00:34.21 ID:5ocRh4Cs0

川;゚ -゚)「何だろう? このURL……」

私はウイルスか? と一瞬疑ったが、それでも好奇心の方が勝り
URLをクリックした。
すると

川 ゚ -゚)「うわっ、何だこれ。見にくっ!」

そこは……恐らく、掲示板だった。
幾多ものトピックが立ち並んでいた。
しかも、どのトピックも

うんこが語りかけてきたんだけど(3)
夜行バスだが乗客がうんこもらした(322)
1000いったら妹のおっぱいうpします(1001)

川;゚ -゚)「荒らしばっかり……」

これでもか! というほど荒れている。
管理人は何をやっているんだろうか?
……というか、ハインさんは何故、こんな掲示板のURLを?

82 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:02:56.25 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「……ハインさんの事だ。何か意図があるに違いない」

私はそれから、その掲示板について調べてみた。
どうやら、ここは悪名高い掲示板『2ちゃんねる』の
ニュー速VIPという掲示板らしかった。

2ちゃんねる、というのは名前だけ聞いた事があった。
何でも、犯罪者とかがいっぱいいるヤバイ掲示板だとかなんとか。

川;゚ -゚)「ハインさん、何故、そんなところに私を……?」

とりあえず、グーグルでVIPについて調べた。
すると

川 ゚ -゚)「まとめ、ブログ……ニャー速……?」

84 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:05:49.47 ID:5ocRh4Cs0


あれから、一ヶ月の月日が流れた。

川 ゚ -゚)「うはwwwww400いったらおっぱいうpするおwwww」

私はVIPにのめり込んでいた。
最近では、おっぱいスレをたてるとめちゃくちゃレスの消費が
速いことに気付いた。

川 ゚ -゚)「おらwwwIDつきだおwwwwwネカマじゃねーよwwww
     さっさと伸ばしてみろやクズどもwwwww」

F5をおすと、kskが一斉に並んだ。
100、200、300……と。

スレがどんどん伸びていく。

川 ゚ -゚)「やべぇwwwwwまじかよwwwwwwクソがwwww」

88 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:08:23.75 ID:5ocRh4Cs0

 400いったぞ!勢い止めろ!

一気にスレの勢いが止まる。

川 ゚ -゚)「何こいつらwwwww連帯力ぱねぇwwwwww」

パシャパシャ!
携帯で写メをとってピクトに送った。

川 ゚ -゚)「おらwwwwwこれでどうだ馬鹿野郎どもwwwww」

うおおおおwwwww
きたぁぁあぁああwwwwww本物wwwww
……ふぅ。お前らやめろよ。逮捕されるぞ
PC許可頼む!!

川 ゚ -゚)「あ、やべPC許可忘れてた」

よくあるミスである

95 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:12:25.82 ID:5ocRh4Cs0

そんな風に、私は女VIPPERとして活動を始めた。
例えばオフ会。

川 ゚ -゚)「メイド服でうまい棒くばるおwwwww」
(´・ω・`)「ちょwwwwwwまじクオリティ高須wwwww高須くんwww」
コテ「女VIPPERレベルたけぇwwwwwやらせろwwww」
川 ゚ -゚)「それは引くわ」
コテ「あ、すません……」

或いは、ねとらじスレ。

川 ゚ -゚)「凸してみましたー」
「ちょwwwwおにゃのこきたこれwwwwwww」

まぁ、ねとらじはローカルルールで禁止にされてしまったが。

99 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:16:51.12 ID:5ocRh4Cs0

或いは、凸。

川 ゚ -゚)「もしもし? 宇宙人には興味ありません!
     ブログで犯罪アピールしてる痛い子だけ私のとこにきなさい!」
「は!? 何あんた!? なめてんの!?」
川 ゚ -゚)「なめてるってレベルじゃないわよ!」

ハルヒモノマネうめぇwwwwwww
またおまえかwwwww
相手わかってないwwwwww

――もちろん、マジレスをつける事だってあった。

川 ゚ -゚)「いや、告白はまだ待った方がいい。私女だけど
     いきなり告られたら間違いなく引く」

隣の席の子にケシカスぶつけた男「ま、まじか……」

103 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:20:34.05 ID:5ocRh4Cs0

かなり充実した生活。
今までになかった刺激。
堅苦しい空気のない、リアルタイムで分かりやすい反応。
名無しの気楽さ。

川 ゚ -゚)(ああ、ハインさん。わかります。わかりますとも。
     この感覚は、至高だ。これを知ったら、もうあそこには戻れない)

そして私は、とうとう見つけた。

川 ゚ -゚)「あー、なんかいいスレねーかな」

川 ゚ -゚)「ん?」

新ジャンル「ゴミ箱女」

川 ゚ -゚)「何だこれ?」

新ジャンルというスレは、時折見かけたが何をやってるのか
さっぱり意味不明だったのでスルーしていた。

しかし、今日は他にめぼしいスレがなかったので覗いてみる。
すると、

川 ゚ -゚)「あれ? 何だこれ。小説……じゃないか」

104 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:23:18.81 ID:5ocRh4Cs0

私は新ジャンルでググってみる。
すると、すぐにまとめブログが見つかった。

川 ゚ -゚)「うお! 何これ! めっちゃクオリティ高い絵つきじゃん!」

私はまとめを読む。
なるほど。
この新ジャンルスレは、いわゆる新しい『萌え』を探す
いわばキャラクター創作スレみたいなものらしい。

地の文はほとんどなく、登場人物も男、友、女友、妹、○○デレなどだ。

おまけに、
ビロードがやっていた、台詞の前に人物名をつけるという事が
このスレでは普通らしい。


106 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:25:32.77 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「これなら、時間をかけなくても軽く書けそうだな……」

そして私は新ジャンルスレで書き始めた。
最初は、すでにあるスレから、面白そうなものを選び
>>1の設定にもとずいて簡単な会話を書く。

すると

「やべぇwwwありかもしれんwwww」
「俺>>1だがカレー食ってたらめっちゃ伸びてた。おまいらもっと頼む」
「絵師よんでこいwwww」

反応。反応。反応の嵐。

川;゚ -゚)「うわ、やばい……なんだこれ」

やばい。
これ


 
       面 白 い ッ !

110 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:30:44.13 ID:5ocRh4Cs0

それから、私はひたすら新ジャンル系を書き続けた。
スレをたて、新しい萌えを開拓し、時にはネタにはしり……。

川 ゚ -゚)「うはwwwwまとめにのったwwwwイミフwwww」

川;゚ -゚)「絵師きたぁぁぁぁ! 誤解殺気の絵師きたよこれぇぇえぇ!!」

まぁ、そんなこんなでやっている内に

「あの絵師さんくると描きにくい」
「保守」
「何かもう秋田」

川 ゚ -゚)「あらら、何かつまんねぇ流れになってきたな」

何だかパートスレだ何だと凸撃されるし、微妙な空気になってきたし
いい加減、普通の会話劇ではなく物語を書きたくなってきたので、
私は新ジャンルを離れる事にした。

113 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:32:56.77 ID:5ocRh4Cs0

次に出会ったのは

15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界だったら。

というスレだった。

川 ゚ -゚)「うはwwww初代>>1のおもしれぇwwwww」

いわゆるTSもののスレだった。
ここでもいくつか作品を書いた。
しかし

川 ゚ -゚)「やっぱり設定も自分で考えたいな……」

ハルヒSSやゼロ魔SSなど、二次創作も色々あったが
やっぱり私は創作者。
なるべくオリジナルで、勝負がしたい。

115 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:34:20.85 ID:5ocRh4Cs0

私はもう一度、ハインさんにメールをした。

川 ゚ -゚)「おいすー。何かいい小説スレねーの?wwwwww」

と。

すると返信。

件名:なし
本文:オムライスでググれ。あたしはそこで待っている。

川 ゚ -゚)「厨二くせぇwwwwww」

さっそくググる。

119 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:37:33.35 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「何だ? このジャンルは。ブーン系小説?」

それは、いわゆるVIPやAAサロンでおなじみの顔文字で
紡がれる小説だった。

川 ゚ -゚)「キャラが決まってるのか……うーん。
     まぁ、一応読んでみるか。おススメ作品? ほうほう、どれどれ」

その日の事を、私は生涯、忘れる事はないだろう。

私が最初に読んだ作品は、ブーンと猫と神様。

私は


「あ、あぁ……あぁぁぁああ……ッ!」


ボロ泣きした。


122 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:39:48.65 ID:5ocRh4Cs0

それから、私は見よう見まねでスレを立て、
ブーンの一人称を俺にしてしまったり、素直クールがクールじゃなかったりと
ミス? を犯しながらも、このある種何でもありな不思議な世界にのめりこんでいった。

川;゚ -゚)「くそwwwまとめつかねぇぇええええ!」

面白い作品には、スレにまとめさんがあらわれ
「まとめていいですか?」
と言うのが習慣らしい。

が、当然つまらん作品にはまとめがつかない。
逆に面白い作品は、複数のまとめがつく事もあった。


126 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:42:32.97 ID:5ocRh4Cs0

オムライスにまとめられたら勝ち組。
芸は敷居が高い。傾向的にSFとかなら意外といける。
Beは見づらい。あと中の人が電波。
蛇はコメント欄がありがてぇ。

などなど……

川 ゚ -゚)「へぇぇ、色々あるんだなあ」

まとめられる所によって、特色があったりするのも面白かった。
そして何より、スレの伸びで作品の善し悪しが分かる。
これが最高によかった。

匿名のため、面白ければおもしれぇと言うし
つまらなかったら素直につまらんと書く。
時々、パートスレ潰しの爆撃にあったり変なのがわいたりしたが

そういうのも含めて、面白い世界だった。

128 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:46:13.97 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「いやー、この間は投下中にちくわの話されて
     一気にスレがちくわスレになってしまいましたよ」

从 ゚∀从「あるあるwwww」

私はハインさんと、スカイプで話をしていた。
そう。ハインさんは、ブーン系に活動の場所をうつしていたのだ。

从 ゚∀从「いやー,しかし面白ぇだろ? ルール無用って感じでよ」

川 ゚ -゚)「はい。何だか真面目にやってたのがバカバカしくなりました」

从 ゚∀从「ブーン系は真面目なのもあるし、不真面目なのも、まぁその千倍くらいある。
     けどよぉ、基本は一緒だ」

ハインさんはすぅ、と息をすって

从 ゚∀从「面白ければおkッッ!」

川 ゚ -゚)「それがVIPクオリティwwwwww」

从 ゚∀从「おまwwwwwスカイプで何いってんだwwww家族にきwこwえwるwww」

川 ゚ -゚)「ベジータァァッァ!」

从 ゚∀从「窓空けて一斉にベジータ乙wwwww」

131 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:50:23.44 ID:5ocRh4Cs0

从 ゚∀从「あたしさー」

川 ゚ -゚)「はい?」

从 ゚∀从「嫌いじゃなかったよ。パラパラも」

ハインさんはいきなりマジなトーンになった。

从 ゚∀从「みんな真面目に取り組んでるのが目に見えて分かったし
     すげー文章について勉強してて、なんつーか、すごかった」

ハインさんは、けど、と付け足して

从 ゚∀从「あそこは真面目過ぎた。真面目すぎて、創作の根本を忘れてたような気がする」

川 ゚ -゚)「根本」

从 ゚∀从「そ。読んで面白いか否か、ってことをさ」

从 ゚∀从「あそこはみんな、書き手の目線しかなかった。
     書き手の目線で、感想ではなく批評することが正しい世界だった」

从 ゚∀从「面白いもんに、ただ一言面白いって言えるだけの軽さもなかったな」

134 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:53:32.97 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「そうですね。VIPみたいに、草をはやせなかった」

从 ゚∀从「やっぱ匿名じゃないし、他の人と違うことをしたら嫌われる……
     っていう感覚が、無意識的にしろあったのかもな」

川 ゚ -゚)「そう、ですね。誰だって嫌われたくない。だから感想返しをする。
     レス返しをする」

从 ゚∀从「けどよー。作品の面白さと、なんだ、作者が嫌いとか仲いいとか関係ねーだろ?
     あと、文章力だって武器の一つにすぎない。破綻のないストーリーだって
     いってしまえばソツがなさすぎてつまらないとも捉えられる」

川 ゚ -゚)「うーん……あれ? 何かと似てますね、その閉鎖感」

从 ゚∀从「日本の村社会かな」

川 ゚ -゚)「あ、あ〜〜〜〜! それそれ!」

私はぽんと手を打った。

138 名前: 投稿日:2010/03/14(日) 23:57:15.35 ID:5ocRh4Cs0

从 ゚∀从「それが悪いとは一概にはいえねぇよ。
     ――けど、アタシはあわなかった。だからVIPにきた。それだけだな」

川 ゚ -゚)「ん〜〜。でも、ここだと普通に『つまらん死ね』とか書かれますし
     メンタル弱い子には厳しいかもですね」

从 ゚∀从「へっへっへ。そこがいいんじゃねーか」

从 ゚∀从「死ねは挨拶。つまらんは礼儀。なんてな」

川 ゚ -゚)「まったく……私達って、不良ですね」

从 ゚∀从「ああ、不良だな。はじかれもんだ。
     仲良しこよしができねぇ。つまらんもんをつまらんと言っちまう。
     ネット上の社会不適合者かもしれねぇ」

从 ゚∀从「けどよ」

从 ゚∀从「そんなアタシらには、VIPはお似合いじゃないか。そうだろ?」

141 名前: 投稿日:2010/03/15(月) 00:00:13.53 ID:L3RZXbeu0

川 ゚ -゚)「そうですね。名前も何も関係ない。
     大切なのはクオリティ。正直なのはスレの伸び」

从 ゚∀从「地の文ぎっしりな作品でも、後々まとめで評価される」

川 ゚ -゚)「……完璧ですね」

从 ゚∀从「ああ、完璧だ」

私はふと、ビロードの事を思い出した。

川 ゚ -゚)「ビロードも、こっちのがあってたかもですね」

从 ゚∀从「あれ? お前気付いてねーの?」

――と、ハインさんがニヤニヤ声で

从 ゚∀从「ブーンが乳首の作者、ビロードだぜ」

川 ゚ -゚)「え?」

149 名前: 投稿日:2010/03/15(月) 00:05:13.50 ID:L3RZXbeu0

川;゚ -゚)「でぇぇええええええ!あれがぁぁぁぁああまじでぇええええwwwww」

从 ゚∀从「まじまじ! ったくよwww笑えるだろ?wwwwあっちじゃボコスカだったのが
     こっちじゃ神扱いだぜ?wwwwww」

川 ゚ -゚)「くっそwwwwwやられたwwwwくやしいwwwくやしいですwww」

なんてことだ。
あのマイナス三桁作家が、ここでは大御所とは。

从 ゚∀从「だははははは!よっしゃ、いっちょスレたててながら投下でもするか!」

川 ゚ -゚)「お、やりましょうやりましょう!」

金曜日の深夜二時。
私とハインさんは、本当に、心の底から笑いながら――

ブーン系のスレッドを、たてるのであった。

素直クール。後に、ブーン系で天才と呼ばれ、ネットから書籍化まで果たした
――天才ネット小説家である。


川 ゚ -゚)「タイトル関係ねぇwwwwwながらきつwwwきつwww」
从 ゚∀从「あるあるwwwwwwww」

150 名前: 投稿日:2010/03/15(月) 00:07:36.78 ID:L3RZXbeu0

       川 ゚ -゚)クーは天才ネット小説家のようです

原案:>>1

シナリオ:>>1

スクリプト:>>1

音響:>>1

プロデューサー:>>1P

スタジオ:有限会社>>1

※この物語はフィクションです。実在の団体名作品名とは関係ありません。


Fin



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