( ・∀・)そんな君へハッピーバースデーのようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:16:27.42 ID:skymniPjO
Happy Birthday to you! Wishing you many more!

誕生日おめでとう。あなたにもっと多くの幸せが訪れますように。

And.....

そして―――





( ・∀・)そんな君へハッピーバースデーのようです






4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:19:25.84 ID:skymniPjO
教会の神父という仕事は、俺に取ってはなんら魅力の感ぜられないものだ。
毎日神様に祈って、わけのわからないことを相談してくる人に適当なことを言って追い返す。
良いことがあったらすぐ神様に感謝をするし、頭沸いてんじゃねぇの?って思った。


( ^ω^)「モララー、心の声が聞こえてるお」

( ・∀・)「ごめん」


生まれてすぐに俺はこの教会に預けられた。
……まぁ、正確には教会の前にゴミのように捨てられてたらしいけど。
捨てるくらいなら生むなっつーの。
どうせ醜い性欲を満たすために行われた情事の副産物だったんだろうな、俺は。

そんな経緯があって、俺はブーンって名前の神父さんにお世話になってる。
しかしまぁどこの馬の骨かわからない子を押しつけられても文句を言わずに育てるなんてとんだお人好しだ。


( ・∀・)「……やっぱ頭沸いてんのかな」

( ^ω^)「……モララー」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:23:07.83 ID:skymniPjO
だが、俺はこの神父さんが好きだ。
普通神父とか牧師って言ったら善の塊が服を着て歩いてるようなものだけど、この人は違う。

それでも常人よりはかなりお人好しだが、この人はすごい人間らしい感情を持っている。
低俗といわれる物に興味津々だし、怒った時は容赦なくキレる。
そりゃもうぷっつんと。
一度お祈り中の神父さんのおでこに鼻くそつけたらぶん殴られたもん。

それに……


ξ゚听)ξ「ブーン、来てやったわよ」

(*^ω^)「おっツン!よく来たお、上がってくお」

ξ゚听)ξ「モララーも、おはよう」

( ・∀・)「よっ。絶壁女」

(#^ω^)「こらモララー!ツンに失礼だお!一応クッキー二枚ぶんくらいの厚さはあるお!!」



(メ#ノ∀メ)「前が見えない……」

(#)ノωメ)「……」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:26:27.57 ID:skymniPjO
この2人は幼なじみで、今もこうやって仲良くやっている。
それにお互いまだ独身だってんだ。

別に結婚しちゃいけないって決まりもないんだし、とっとと結婚しちゃえばいいのに。
2人して恥ずかしがり屋だからどうしようもない。


(#)ノωメ)「モララー、悪いけど街へ行ってパンとミルクを買ってきてくれないかお?」

(メ#ノ∀メ)「また切らしてんの?そういうのは無くなる前に買いに行けって言ったろ」

(#)ノωメ)「めんどい」

(メ#ノ∀メ)「……まったく。金」


神父さんから銅貨を2枚受け取って教会を出た。
これであそこには彼ら2人きりだが……進展を期待するだけ無駄だろう。

その日はいい天気で、風も心地よかった。
教会裏の原っぱで昼寝でもしたらどんなに気持ちいいだろう。
それなのにこれから街へ行かないとならないなんて。
あーあ、養子の辛いとこね、これ。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:29:48.39 ID:skymniPjO
街はあまり好きじゃない。
なんていうか、臭い。人も、街も。
街行く人の笑顔も、臭い。


「……あら……あの子……」
「……捨てられて……外れの教会で……」
「……まあ……かわいそう……」


( ・∀・)


ああ、臭い臭い。
なんで同情してるフリなんかするかね。
本当は微塵もかわいそうと思ってないくせに。

こういうとこはさっさと通りすぎるに限る。
少し歩を速めて、人の間を縫うようにさっさと進んでいった。

とっとと買い物を済ませて早く帰ろうっと。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:32:48.84 ID:skymniPjO
パン屋のおっさんは無愛想だった。
特に言葉を交わすことなくやるべきことだけさっさと済ませた。
やっぱり人間はこうでなくっちゃ、世間話とかはただの時間の無駄だよね。
と、道路の端で何かを話してるおばさん達を見て思ったり。

おばさん達は「やあねぇ……」と残し、また何かを話ながらどこかへ歩いていった。
何を見ていたかちょっと気になるし、覗いてみようか。


( ・∀・)


(#゚;;-゚)


そこには毛布を被った小汚い少女がいた。
着ている服も……いや、あれ服って呼べるのか?

まるで奴隷みたいな格好だ。
おかしいな、奴隷制はもう廃止されたはずなのに。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:35:34.98 ID:skymniPjO
道行く人達はたいていそれを一瞥するだけ。
たまーに変なおばさんが「気の毒ね」とか言うけど、言うだけで何もしない。

さて、一応神父見習いってことになってる俺はどうすべきだろうか。
せめてパンを分けてやるくらいはしておかなきゃいけないかな。


( ・∀・)「おい、お前」

(#゚;;-゚)「!」

( ・∀・)「……きったない格好だな。こんなとこでなにしてんの?」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「……なんか言えよ。言わなきゃわかんないだろ?」

(#゚;;-゚)「……」


やはりその少女は何も言わなかった。
ただ俺の目をじぃっと見つめてくるのだ。
悲しみでも怒りでも憎しみでもない、空っぽな、無機質な瞳で。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:38:20.64 ID:skymniPjO
( ・∀・)「……パン、食う?」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「なんだ、いらないのか」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「お前、親は?」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「……って、いないか」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「住むとこはないのか?」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「ないなら、一緒に来るか?」

(#゚;;-゚)「!」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:41:29.84 ID:skymniPjO
ずっと無機質だった瞳に一瞬光が射した気がした。
どうやら住むところが欲しいみたいだ。
確かにこんな雨ざらしになる道の端っこなんかより、雨風凌げる場所で寝る方がいいもんな。
それにあの神父さんなら文句も言わずに彼女を受け入れてくれるだろう。


( ・∀・)「決まりだな。ほら、行くぞ」


そう言ってさっさと歩き出すが、なぜか少女は着いてこない。
足かせでもついてんのかと思ったけど、そんなものついてなかった。


( ・∀・)「おい、来ないのか?」

(#゚;;-゚)「……」


また無機質な瞳。
このままじゃラチがあかないので、とりあえず拉致することにした。
腕をつかみ、無理矢理に引っ張って行くと、少女はようやっと立ち上がって後ろをトコトコとついてくる。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:44:13.37 ID:skymniPjO
道行く人たちが俺たちを見てひそひそと何かを話している。
俺はそんなの気にしないが、少女の方は大丈夫かと思ってちらと確認してみた。
相変わらず何考えてんだかわからない表情のままだった。
まぁ、気にしないのならいいか。

臭い大人達の集まる大通りを抜けて、狭い路地を通って街から出る。
街から出ても少女はずっと無機質なまま。
脈を確認したら動いてたから安心した。


( ・∀・)「お前、名前は?」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「名前がわかんないとなんて呼びゃあいいかわかんないんだが」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「ちなみに俺の名前はモララーだ。なんでも『道徳を守る者』って意味らしいぞ」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「……」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:48:27.49 ID:skymniPjO
結局少女は教会に着くまで一言も喋らなかった。
裏口から仲に入ると、なにやら罵声が聞こえてきた。


( ・∀・)「ただい……」


(##ノωメ(#)「もう耐えられないお!!大体ツンは昔からそういう細かいことですぐ怒って!!」

ξ#゚听)ξ「細かいこと!?細かいことですって!?えぇ細かいでしょうね!
半年以上も部屋の掃除をしないくらいずさんなあんたに取ってはね!!」

(##ノω(#)「今掃除の話は関係ないお!!」


( ・∀・)「……」

(;#゚;;-゚)「……」


喧嘩するほどなんとやらと言うが、この2人に関しては喧嘩しすぎな気がする。
いつも神父さんフルボッコにされてるし。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:52:05.37 ID:skymniPjO
( ・∀・)「神父さん、ツンさん」

(メ#ノω(#)「お……モララー、帰ったのかお」

ξ゚听)ξ「あら……ごめんなさい。大声なんか出したりして」


(;#゚;;-゚)「……」

(メ#ノω(#)「……お?モララー、その子は?」

( ・∀・)「神父さんの隠し子だろ?」

(;#゚;;-゚)そ「!?」

(;#ノω(#)そ「うそぉ!?」


ξ::::ー)ξ「へぇ……ブーン。……いつの間に子供なんか作ったのかしらねぇ……」

(;#ノω(#)「ちょ……ツン、待って……」

<いぎゃああああああああああ!!とれる……とれるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!

( ・∀・)ニヤニヤ

(;#゚;;-゚)「……」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:55:35.80 ID:skymniPjO
(メ#ノω(#)「……で?本当は?」

(#ノ∀メ)「家無き子ですごめんなさい」

ξ゚听)ξ「……あーあ。かわいい顔が傷だらけじゃない」

(#ノ∀メ)「照れる」

ξ゚听)ξ「あんたじゃないからね」

(;#゚;;-゚)「……」ビクビク

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。何もしないから」


(#ノ∀メ)「……ツンさんみたいな凶暴な生物が近づいたらビビるに決まってるっしょ」

(メ#ノω(#)「しっ。聞こえるお。顔AAが【自主規制】になってもいいのかお」

ξ゚听)ξ「してあげてもいいのよ?2人とも」

(#ノ∀メ)「すいませんマジごめんなさい」

(メ#ノω(#)「あーツンちゃんかわいい。ツンちゃんマジ天使」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 20:58:29.89 ID:skymniPjO
ξ゚听)ξ「あなた、名前はなんていうの?」

(;#゚;;-゚)「……」ビクビク

ξ゚听)ξ「……大丈夫。怖がらないで」


(#ノ∀メ)(さっきの惨劇を目の当たりにして怖がるなってのは無理だろ……)ヒソヒソ

(メ#ノω(#)(あんな凶暴なのに自分が優しい人間だと思いこんでるからどうしようもないんだお)ヒソヒソ

ξ゚听)ξ「あんたたち聞こえてるからね」

(#ノ∀メ)#ノω(#)「ソーリー、マム!」

(;#゚;;-゚)「……」

ξ゚听)ξ「……まあ、血の惨劇を見せたのは謝るわ」

(メ#ノω(#)「そうだお!神聖な教会に暴力を持ち込むなんて!!」

ξ#゚听)ξ「その神聖な教会にエロ本を持ち込んだのは誰だったかしら?」

(;#゚;;-゚)「……」ビクビク

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:01:27.13 ID:skymniPjO
( ・∀・)「まーた始まるかな?」

(;#゚;;-゚)「!」


再び口論を始めた2人を眺めながら、先ほど買ってきたパンを片手に少女の隣に移動する。
かわいそうに、すっかり怯えてしまっている。
だが、無機質な表情よりはこっちの方がずっといいと思った。


( ・∀・)「ほら、パン。食べな」

(;#゚;;-゚)「……」


パンを割って、少女の手に握らせてみた。
彼女は困った様子でこちらを見ている。
パンに毒が入ってるとでも思ってるのか。
ちょうどその時、ツンさんのラリアットが神父さんに直撃していた。


(;#゚;;-゚)「……たない?」

( ・∀・)「……え?」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:04:04.39 ID:skymniPjO
(;#゚;;-゚)「ぶたない……?」

( ・∀・)「しゃべった」

(;#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「しゃべった」


今まで全く喋らなかった少女が突然言葉を発したので、驚いて思考が止まってしまった。
ツンさんのジャーマンスープレックスが炸裂した音で意識が戻ったけど。

一方の少女は怯えるような瞳でこちらをじっと見つめている。


( ・∀・)「ぶたないぶたない。……つーか、今日会ったばかりのお前をなんで殴らなきゃいけないんだよ」

(;#゚;;-゚)「……」


俺がそう言っても少女はまだ心配そうな表情を崩さなかった。
何がそんなに心配なんだろうか。
もしかしたら、以前虐待を……受けてたろうな、体のあちこち傷だらけだし。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:07:08.66 ID:skymniPjO
( ・∀・)「あー、お前が過去にどんな目に遭ってたか知らないけどさ」

(#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「お前を殴るような奴は、ここにはいないから安心しろよ」

(#゚;;-゚)「……」


俺の言葉で安心してくれたのか、瞳の中から困惑と恐怖の色は消えたみたいだ。
手に持ったパンにもやっと口を付けた。
その頃神父さんはツンさんの壁際ハメで瀕死になっていた。


(#゚;;-゚)「……でぃ」

( ・∀・)「え?」

(#゚;;-゚)「名前……でぃ」

( ・∀・)「そっか。よろしくな、でぃ」

(#゚;;-゚)「……うん」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:10:47.94 ID:skymniPjO
ξ゚听)ξ「あら、どうやらそっちも片が付いたみたいね」

( ・∀・)「まぁね。ツンさんみたいに凶暴じゃないし」

ξ゚ー゚)ξ「あらあら。モララーもブーンみたいになりたいのかしら」

↓ブーン
【自主規制】「……」

( ・∀・)「やめてください。泣いてる子もいるんですよ」

(;#゚;;-゚)「……」

ξ--)ξ「そうね、今日は見逃してあげるわ」

( ・∀・)「『今日は』のとこだけ強調すんのやめてくれません?」

ξ゚听)ξ「ならあんたも少しは口の利き方に気をつけなさい。今はいいけど将来が大変よ」

( ・∀・)「はいはい。善処するよ」

(#゚;;-゚)「……」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:13:30.58 ID:skymniPjO
ξ゚听)ξ「……さて。それにしても泥だらけね。ちょっと洗いましょうか」

(#゚;;-゚)「……?」

ξ゚听)ξ「ブーン、お風呂借りるわよ」

【自主規制】「お……おk……」

( ・∀・)「神父さん、なんかちょっとはみ出てるから動かない方がいいぞ」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *


(;^ω^)「ふぅ……死ぬかと思ったお」

( ・∀・)「神父さんの回復力ってすげぇよな」

( ^ω^)「おっおっ。これが我が主のご加護だお」

( ・∀・)「さすがの俺もこれには神様の存在を信じざるを得ない」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:16:22.12 ID:skymniPjO
ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「おっ?ツンどうしたんだお?そんな顔して……」

ξ゚听)ξ「ブーン、ちょっと来て」

( ^ω^)「……お?なんd

ξ゚听)ξ「いいから」

( ・∀・)「なんだなんだ?」

ξ゚听)ξ「モララーはここであの子の事待っててあげて」

( ・∀・)「……」


ツンさんの真剣な様子に、俺はそれ以上何か言うことは出来なかった。
理由には大方予想がついてる。
とにかく今はここででぃのことを待ってるのが一番だろう。

そういえばでぃの服はどうしたんだろう。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:20:57.61 ID:skymniPjO
(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「なんだ俺のおさがりか」

(#゚;;-゚)「?」

( ・∀・)「いや、こっちの話だ」


ツンさんの真剣な面持ちと打って変わって、でぃは相変わらずの無表情。
だが、体の汚れが取れた分、体中のいろんな傷が目立っていた。

顔や腕であれなら、服の中はどうなっているのやら。
……いや、決していやらしい意味ではなくて。


( ・∀・)「なぁ、でぃ」

(#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「……いや、やっぱいいや」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:23:24.62 ID:skymniPjO
俺は彼女になんと声をかけようとしたのか。
彼女がかわいそうだと思った?
彼女に同情した?

そっと自分のにおいを嗅いでみた。
大丈夫、臭くない。


(#゚;;-゚)「……モララー」

( ・∀・)「なんだ?」

(#゚;;-゚)「……変なにおい」


でぃは自分の体のにおいを変だと言った。
隣にいる俺にもその香りは届いている。


( ・∀・)「それは石鹸のにおいだ。覚えておけよ」

(#゚;;-゚)「……落ち着かない」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:27:11.14 ID:skymniPjO
石鹸のにおいで落ち着かないとは、彼女はいったいどんな生活をしてきたのだろうか。
見たところ14、5歳くらいだろうと思うが、まさか10年以上も風呂に入ったことがないのか。

奴隷制があった昔ならまだしも、今の社会では考えられないことだ。
僕は、彼女に対して憐れみでも同情でもない何かが生まれたのを感じた。


( ^ω^)「戻ったお、モララー」

( ・∀・)「おう、思ったよりも早かったな」


戻ってきた神父さんの表情もどこかしら堅かった。
それでもまだいつもの笑顔を崩さないところは彼の魅力だろうか。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:31:40.31 ID:skymniPjO
( ^ω^)「おっ。そういえば自己紹介がまだだったおね。ブーンはブーンだお。ここで神父をやってるお」

(#゚;;-゚)「……」


でぃはまだ俺以外には心を開いてないのか……いや、俺に心を開いてるのかと聞かれたらはいとは言えないが。
ただ、まだ神父さんと言葉を交わすまでにはいたってないようだ。
最初会った時のあの無機質な瞳で神父さんのことをじぃっと見つめている。


(#゚;;-゚)「……」

(*^ω^)「やだ……照れる」

( ・∀・)「おっさんちょっと黙ってろ」

ξ゚听)ξ「私はツンよ。街で薬屋をやってるわ」

(#゚;;-゚)「……」

ξ゚听)ξ「何かあったら遠慮無く言って頂戴ね」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:34:33.02 ID:skymniPjO
2人は優しく、穏やかな表情のままでぃに自己紹介を済ませた。
そこに同情や憐れみなどの感情は見受けられない。
息を吸ったら、石鹸のにおいが鼻腔をくすぐった。


( ・∀・)「あの2人は信頼できる人だぞ。俺が言うんだから間違いない」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「そのうち神父さんを『パパ』とでも呼んでやるんだな。喜ぶぞ、あの人」

(#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「で、『ママは?』って聞かれたら『パパに捨てられたショックで井戸に身を投げました』って答えるんだ」

(#゚;;-゚)「……??」

( ・∀・)「覚えてたらでいいよ。そのうち使ってみな」

(#゚;;-゚)「……わかった」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:38:02.71 ID:skymniPjO
こうしてでぃとの生活が始まった。
……と、思ったら―――

―翌日―


(;^ω^)「モララー!!起きるお!」

( -∀-)「んー……あと1日」

(;^ω^)「どんだけ寝るつもりだお……ってそうじゃなくて!!大変なんだお!でぃちゃんがいなくなったんだお!!」

( ・∀・)「……え?」


普段寝起きの悪い俺だが、神父さんの言葉ですぐに目が覚めた。
でぃがいなくなったってそんなバカな。
昨日だってここで暮らせって言ってもまんざらじゃない様子だったし。


( ・∀・)「どういうことだよ」

(;^ω^)「それはブーンが聞きたいお……。とにかく探しに行くお!」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:41:14.19 ID:skymniPjO
神父さんは大慌てで部屋を出ていった。
俺もすぐに探しに行く準備をしないと。

しかしなんで出ていったのだろうか。
何か不満があったか。
……あるとしたらツンさんだろうけど。

昨日のでぃとの数少ない会話を思い出してみても、特に変な点はなかったはず。
やっぱり無理矢理連れてきて『ここで暮らせ』というのは無理があったか。


( ・∀・)(……いや、でも)


あの時、俺が彼女に一緒に来るかと聞いた時。
彼女は明らかに嫌悪以外の反応を示した。
それもそうだ、ここに来ることのデメリットなんてないのだから。


……デメリット?

ここに来ることで何らかのデメリットが生じるとすれば……

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:44:43.58 ID:skymniPjO
( ・∀・)「……あそこか」


でぃの居場所に見当がついた。
神父さんと一緒に迎えに行ってやりたいとこだが、神父さんはもうすでにどこかに行ってしまったようだ。

……仕方ない、一人で行くか。


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *


(#゚;;-゚)

( ・∀・)


でぃはやはり俺の考えた通りの場所にいた。
昨日、俺がでぃと初めて会った場所。
彼女は道路の隅で虚空に視線を漂わせながら、ただ座っていた。


( ・∀・)「コラ」

(;#゚;;-゚)「!?」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:48:24.36 ID:skymniPjO
( ・∀・)「勝手に一人で出ていくなよ。心配したぞ」

(;#゚;;-゚)「……モララー」

( ・∀・)「まったく……こんなとこでなにやってんだよ」

(;#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「……どうした?そんな怯えた目でこっちを見て」

(;#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「ほら、神父さんが心配してるから帰るぞ」

(;#゚;;-゚)「……ぶたない……の?」

( ・∀・)「……は?」

(;#゚;;-゚)「ぶたない……の?」

( ・∀・)「……?」

(;#゚;;-゚)「……?」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:51:17.16 ID:skymniPjO
( ・∀・)「なんで?」

(;#゚;;-゚)「モララー……怒った……から」

( ・∀・)「……」


確かに少し怒った口調にはなったが、それは彼女を心配したからだ。
……だが殴るほどに怒った感じにはならなかったはずだ。

昨日もそうだ。
神父さんとツンさんが喧嘩していただけなのに、なぜか殴られる心配をしていた。
一体今までどんな仕打ちを受けて育ってきたのだろうか。


(;#゚;;-゚)「怒ったら……ぶつ……」

( ・∀・)「そんなことするのは馬鹿な大人だけだ。ほら、帰るぞ」


でぃの手を掴んで、足早に歩き出した。
でぃは抵抗せずについてきたが、しきりに後ろを気にしていた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:54:23.52 ID:skymniPjO
(;#゚;;-゚)「モララー……」

( ・∀・)「……」


でぃの言葉は耳に入らなかった。
多分、腹が立っていたからだ。
「何に?」って聞かれても「わからない」と答えるしかないけど。

俺は教会に戻るまでずっと無言でいた。
でぃもほとんど言葉を発することはなかった。


( ・∀・)「神父さんもそのうち戻ってくるだろうから、先に飯食ってようぜ」

(;#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「どうした?そんな顔して」

(;#゚;;-゚)「なんで……ぶたないの……?」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 21:57:31.51 ID:skymniPjO
( ・∀・)「なんだ?殴って欲しいのか?」

(;#゚;;-゚)「……いたいのは……やだ」

( ・∀・)「だろ?俺だってやだ」

(;#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「『己の欲せざるところ、人に施すなかれ』……神父さんの受け売りだけどな」

(#゚;;-゚)「どういう……こと……?」

( ・∀・)「自分がされて嫌な事を他人にしてはいけませんって意味だとよ」


( ・∀・)「で、俺は殴られるのは嫌だ。だからお前を殴ったりはしない。……よっぽどのことがなけりゃの話だけど」

(#゚;;-゚)「モララー……へん」

( ・∀・)「俺が変なのは自覚してるが、この件に関してはお前が変だぞ」

(#゚;;-゚)「……?」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:01:07.93 ID:skymniPjO
不思議そうに首を傾げるでぃ。
その仕草がなんとも哀しかった。

大人は勝手だ。
子供を捨てるのも自由、虐待するのも自由、間違った教育をしても、金儲けの道具にしても、大人は損しない。

「国が豊かになって、奴隷がいなくなり、人々の心が貧しくなった」
いつか神父さんが言った言葉だが、今更になってその言葉の重みがわかる。


( ・∀・)「でぃ、お前の知ってる『当たり前』と、俺の『当たり前』は大分違う。
だから、ここにいる間は俺の『当たり前』に従ってもらうぞ。いいな?」

(#゚;;-゚)「……」


でぃはしばらく無言で俺の瞳を見つめた後、静かに頷いた。
相変わらず瞳の中に光はなく、無機質なもののままだった。

そう、まるで『人形』だ。
小さい頃神父さんに連れられて人形劇を見に行ったことがあるが、無表情な人形がとても怖かった記憶がある。

人の手によって意志なく動かされ、されるがままに動く人形。
それゆえのこの無機質さだったか。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:05:02.87 ID:skymniPjO
( ・∀・)「おし、でぃ。早速お前にいいことを教えてやろう」

(#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「やりたくないことをやれって言われたら『嫌だ』って言って断っていいんだぞ」

(#゚;;-゚)「……なんで?」

( ・∀・)「それが『当たり前』だからだ」

(#゚;;-゚)「……わかった」

( ・∀・)「よし、んじゃあ……」



( ・∀・)「脱げ」

(#゚;;-゚)「わかった……」スルスル


( ・∀・)

( ・∀・)「えっちょ……」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:08:01.90 ID:skymniPjO
(;・∀・)「おおおおおおい!!何本当に脱ぎ始めてんだよ!嫌なことは嫌だって言えっつたろ!」

(#゚;;-゚)「……?服……脱ぐだけ……。……嫌じゃない……」

(;・∀・)「そういうことか……ってストップ!ストォォォーップ!!それ以上はマズい!服を着ろ!!」


(;^ω^)「ダメだお……見つからなかったお……」

ξ゚听)ξ「あきらめちゃダメよ。次は街へ行ってみm」


( ・∀・)

(#゚;;-゚)

( ^ω^)

ξ゚听)ξ




( ・∀・ )


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:11:41.16 ID:skymniPjO
(メ#ノ∀%)チーン

( ^ω^)「言い訳は?」

(メ#ノ∀%)「ありません」

ξ゚听)ξ「辞世の句は?」

(メ#ノ∀%)「書けません……てか殺さないでください」


(;#゚;;-゚)「あ……あの……」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。あなたに手を出そうとしたグズは死んだわ」

(メ#ノ∀%)「いや……生きてるけど」

(;#゚;;-゚)「そうじゃなくて……」

( ^ω^)「?」

(#゚;;-゚)「モララー……ぶったら……いや」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:14:47.12 ID:skymniPjO
( ^ω^)キュン

ξ゚听)ξキュン

(メ#ノ∀%)


(メ#ノ∀%)(えー……。このタイミングで嫌だを使うのかよ……嬉しいけど)


(#゚;;-゚)「人にされたら……いやなこと、……人にしちゃ……ダメ」

(*^ω^)「おっおっ。その通りだお」

ξ*゚听)ξ「でぃちゃんは優しいわね」

(#゚;;-゚)「……?違う……。モララーに……教えてもらった……」


( ^ω^)「うそ」

ξ゚听)ξ「それは幻覚よ、きっと」

(メ#ノ∀%)「おい、コラ」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:17:36.92 ID:skymniPjO
( ^ω^)「いや……だって」

ξ゚听)ξ「あんたモララーでしょ?」


( ^ω^)ξ゚听)ξ「「ないわー」」


(メ#ノ∀%)「すっげぇ久しぶりに泣きそう」

( ^ω^)「……まぁ、仮に本当だったとするお」

(メ#ノ∀%)「だから本当だっての」

( ^ω^)「だったとしても、あの言葉をモララーが言う資格があるのかが問題だお」

ξ゚听)ξ「そうね。人の嫌がることを喜んでするのがモララーだもの」

(メ#ノ∀%)「……否定できねぇ」

(#゚;;-゚)「……?」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:20:06.86 ID:skymniPjO
( ^ω^)「まぁいいお。でぃちゃんも無事だったし、今日のところはここまでにしといてやるお」

ξ゚听)ξ「でも、次はないわよ」

(メ#ノ∀%)「……そもそもあれは誤解だってのに……」

ξ゚听)ξ「何か言った?」

(メ#ノ∀%)「いえ、何も」

( ^ω^)「でぃちゃん。次から出かけるときはブーン達に一言断ってから行くようにしてくれお」

(#゚;;-゚)「……わかった」


……こうして、本当にでぃとの生活が始まった。
ここが安全な場所とわかったためか、少しずつでぃの口数も増えていった。


( ^ω^)「さぁ、お祈りの時間だお」

( ・∀・)「めんどい、パス」

( ^ω^)「許さん」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:23:13.89 ID:skymniPjO
(#゚;;-゚)「……お祈り?」

( ^ω^)「そうだお。神様に感謝するお祈りだお」

(#゚;;-゚)「何を……祈るの……?」

( ・∀・)「何でもいいんだよ。俺は空から美味しいものが降ってこないかなーとか祈ってる」

( ^ω^)「……モララー?」

(#゚;;-゚)「美味しいもの……降ってくる?」

( ・∀・)「神さま次第だな。毎日元気でいい子にしてたら降ってくるんじゃね?」

(#゚;;-゚)「……頑張る」

( ^ω^)「……」


俺はでぃに教えられることは大体教えた。
……勉強とかは俺も教えられてないからてんでダメだけど。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:26:40.44 ID:skymniPjO
( ・∀・)「ほら、ここに寝っ転がってみろ」

(#゚;;-゚)「こう……?」

( ・∀・)「そうそう。どうだ?気持ちいいだろ」

(#゚;;-゚)「……チクチクして……ちょっと痛い」

( ・∀・)「慣れればそんなの気にならなくなるさ」

(#゚;;-゚)「……やっぱり……チクチク」

( -∀-)「そんなんよりさ、他のこと考えろよ。風の匂いとか、雲の動きとかさ」

(#゚;;-゚)「……チクチク」

( ・∀・)「……原っぱでの昼寝の素晴らしさがわからないなんて」

(#゚;;-゚)「チクチク……だけど……」

( ・∀・)「だけど?」

(#゚;;-゚)「だが……それがいい……」

(・∀・ )「神父さんだな、でぃに変なこと吹き込んだの」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:29:22.32 ID:skymniPjO
そのおかげか、でぃは少しずつ常識を覚えていった。
一緒に暮らし始めた時とは全然違う。


( ・∀・)「おーい。準備できたか?」

「もう少し……待って……。着替えてる……から」

( ・∀・)「早くしろよ。先行くぞ?」

「ダメ……!すぐに……着替える……から!」

( ・∀・)「……」

(;#゚;;-゚)「……お待たせ……」

( ・∀・)「服、前後ろ逆だぞ」


街へ出ても大人達の好奇の目に晒されることはなくなった。
相変わらず俺のことをかわいそうだとか言う臭い大人はいるけども。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:32:47.06 ID:skymniPjO
( ・∀・)「えーと……。後は何を買うんだっけ」

(#゚;;-゚)「ろうそく……葡萄酒……あと、玉ねぎと、いも」

( ・∀・)「よく覚えてんな。俺パンしか覚えてなかったわ」

(;#゚;;-゚)「……」


それと、最近わかった事だがでぃは存外頭がいい。
ついでに掃除もできるし、料理もできる。
それを見た神父さんは「ツンもでぃちゃんを見習うお」と言ってアルゼンチンバックブリーカーを食らっていたが。

だが、それだけ打ち解けても、彼女は自分の昔の話をしてくれない。
さりげなくその話題を出すと、彼女は無言になり、人形のような表情のまま固まってしまうのだ。


( ・∀・)「よし。これで全部だな」

(;#゚;;-゚)「……ろうそくと玉ねぎ……まだ」

( ・∀・)「おぉ、忘れてた」

(;#゚;;-゚)「……」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:36:36.08 ID:skymniPjO
そんなある日の夜。


(#゚;;-゚)「おやすみ……なさい」

( ^ω^)「おっ。おやすみだお」

ξ゚听)ξ「いい夢を見てね」

( -∀-)「俺も今日は疲れたから寝るわ」

( ^ω^)「おっ。そうかお」

ξ゚听)ξ「さっさと寝なさいよ」

( ・∀・)「なんかでぃの時と温度差を感じるんですけど……」





( ・∀・)「……さてと、こんな夜更けに2人っきりにしてみたけども……なんか面白いこと起こってないかなー」

<……、…………

<……?……

( ・∀・)(何話してんだろ)

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:39:12.54 ID:skymniPjO
( ^ω^)「……何年も聖職者やってきたけど、今回の出来事ほど神様の導きに感謝したことはないお

ξ゚听)ξ「……でぃちゃんのこと?」

( ^ω^)「おっ。そうだお」

ξ゚听)ξ「確かに……彼女は運が良かったわよね」

( ^ω^)「運が良かったのはでぃちゃんだけじゃないお」

ξ゚听)ξ「どういうこと?」

( ^ω^)「モララーだお」

ξ゚听)ξ「モララーが?」

( ・∀・)(……俺?)

( ^ω^)「そうだお。……ブーンはモララーを学校に行かせてやれなかったから、モララーに同世代の友達はいないお。
モララーがひねくれてるのも、きっとそれが原因だと思うんだお」

ξ゚听)ξ「……そう、ね。考えて見れば、あいつも辛い思いをしていたのね」

( ^ω^)「でも、でぃちゃんのおかげでモララーも楽しそうだお。……過去が苦しかったとしても、今が楽しかったらいいんだお」

( ・∀・)(神父さん……)

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:41:55.05 ID:skymniPjO
( ^ω^)「ま、これでモララーもコミュ障で将来苦労することも無くなると思うおwww」

( ・∀・)(なんだとこら)

ξ゚听)ξ「口の悪さも治らないかしら」

( ^ω^)「あれは死んでも治らないお」

( ・∀・)(言いたい放題だな)


ξ゚听)ξ「そういえば、一つ気になってたんだけど」

( ^ω^)「なんだお?」

ξ゚听)ξ「でぃちゃんってやけにモララーに懐いてるわよね、何でかしら?」

( ^ω^)「そりゃあ……モララーが拾ったからじゃないのかお?」

( ・∀・)(捨て犬か)

ξ゚听)ξ「……うーん……それだけじゃない気がするんだけど……」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:45:07.88 ID:skymniPjO
( ^ω^)「……まさかあいつ、でぃちゃんを誑かしたんじゃ……」

ξ゚听)ξ「あー……顔だけはいいもんね、あいつ」

( ・∀・)(……安心のフルボッコっぷりだ。こいつら俺になんか恨みでもあんのか)


( ^ω^)「でも、でぃちゃんと一緒にいるときはいいお兄さんだお」

ξ--)ξ「普段からあああって欲しいものね」

( ^ω^)「でぃちゃんにモララーを変えてもらうのを祈るしかないね」

ξ゚听)ξ「そうね。あの子、モララーよりしっかりしてるし」

( ・∀・)(……否定できない)


( ^ω^)「本当に彼女が来てくれて良かったお」

ξ゚听)ξ「えぇ……そうね」

( ・∀・)(……)

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:47:17.13 ID:skymniPjO
確かに、でぃのおかげで最近は退屈しなくなった。
神父さんの言うとおり、俺達はでぃが来てくれて本当に良かったと思う。

だが、でぃはどうだ。
彼女は幸せか?ここに来て良かったと思っているか?
そんなことはわからない。

ただ、一つだけわかっていることは、まだでぃにとってここが安心して心を開ける場所ではないということだ。


―翌朝―


(#゚;;-゚)「……モララー」

( -∀-)「んー……あと二年……」

(#゚;;-゚)「街……行きたい……」

( ぅ∀・)「……んぁ?」


その理由の一つが、これだ。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:50:43.99 ID:skymniPjO
でぃは未だに街へ行きたがる。
そして、俺達が初めて会ったあの場所で何かをひたすら待ち続けるのだ。
何を待っているのかは、やはり教えてくれない。

もしかして仲良くなれたつもりでいるのは俺達だけで、本当はそんなことないんじゃないか。
ふと、そんな不安が浮かんだ。


(#゚;;-゚)「あっ……」

( ・∀・)「……?」


でぃが不意に声をあげた。
その視線の先には1人の美しい女がいた。
その服装、立ち振る舞いから見るに、きっとどこかの富豪の娘だろう。

一方のその女の子も、こっちを見て固まっていた。
そして従者らしき人に何かを言うと、急ぎ足でこちらに向かって来た。


(;*゚ー゚)「でぃ……こんなところで……何を?」

(#゚;;-゚)「……」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:53:24.32 ID:skymniPjO
その女の子は、確かにでぃの名を呼んだ。
なんと彼女はでぃの知り合いだったのか。
俺は驚いて何も言えなくなった。
決して彼女の美しさに見とれてしまったわけではない、うん。

しかしでぃも何も喋らなかった。
このかわいい女の子がでぃの待ち人ではないのだろうか。


(*゚ー゚)「あの……そちらの方は……?」

( ・∀・)「えっ?俺?」

(*゚ー゚)「はい」

(;・∀・)「えぇと、俺……じゃなかった、僕は……その……神父見習い……そう!神父見習いです!」

(*゚ー゚)「あら……神父さんでしたか」


彼女は、俺と同い年くらいだろうか。
それなのに何故かすごく大人びて見えて、思わず敬語を使ってしまう程だった。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 22:57:22.46 ID:skymniPjO
( ・∀・)「あの……あなたは?」

(*゚ー゚)「失礼しました。申し遅れました。私、シィ・シャルル・ショボリーヌと申します」

( ・∀・ )(イニシャル書くとSSSだ!)

(*゚ー゚)「……そして彼女は、私の双子の妹……ディ・シャルル・ショボリーヌです」

( ・∀・)「……」

(#゚;;-゚)「……」

( ・∀・)「……」


(*゚ー゚)「あの……どうなさいました?」

( ・∀・)「いや、今度は本当に驚いて何も言えなかった」


でぃが彼女の双子の妹?
……ってことはこの子はでぃと同い年ってことだから……俺より年下?
じゃなくて、でぃがお嬢様?

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:00:24.04 ID:skymniPjO
( ・∀・)「でぃ……マジ?」

(#゚;;-゚)「……」


でぃは彼女が現れてからずっと無言だった。
目も、初めて会った時と同じ、人形のようなものになっていた。


(*゚ー゚)「……すいません。きっと、私がいるからです」

( ・∀・)「……それ、どういうこと?」

(*゚ー゚)「話せば長くなるのですが……」



本当に長かったので要約させてもらう。
この地域の大地主であるショボリーヌ家に2人は生まれた。
しかし、双子というのはなにやら体裁が悪いらしく、2人は隠されて育てられた。

あまり外に出られなくとも、2人は5歳までは幸せに暮らしていた。

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:04:55.30 ID:skymniPjO
しかし雲行きが変わったのは2人が6歳になった時だ。
突然2人は隔離されて、別々の生活を強いられた。

しぃは学問、音楽、ダンスなどお嬢様らしいことを、
でぃは掃除、選択、料理など侍女がやるようなことを学ばさられた。

なぜこうなってしまったか。
それはしぃの方が多方面に才能があったからだ。

そして、しぃはショボリーヌ家の長女として、でぃは侍女―――いや、奴隷として扱われるようになった。


(*゚ー゚)「父の……でぃの扱いは目を覆いたくなるほどでした。彼女は父が許可を出さない限り発言することすら許されませんでした」

( ・∀・)「……」

(*゚ー゚)「そして、ショボリーヌ家の娘であることを他言することは固く禁じられています」

( ・∀・)(だから……でぃは昔のことを話さなかったのか)


色々と線が繋がっていく。
今のでぃを縛っている鎖の正体も、でぃを人形たらしめている原因も理解できた。

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:08:26.82 ID:skymniPjO
(*゚ー゚)「彼女にとって……いや、私達にとって父は絶対の存在です。
……父がでぃを解放しない限り、その子は永遠に父に縛り続けられるでしょう」

( ・∀・)「でぃがこの場に来るのは、その父親の命令か?」

(*゚ー゚)「……いえ。きっと父がよくこの道を通るから……ここにいれば父に会えると思ったのでしょう」

( ・∀・)「……その父親はでぃを捨てたんだよな?」

(*゚ー゚)「……」

( ・∀・)「なのになんででぃはそんな奴を待ち続けるんだよ」

(*゚ー゚)「……先ほど言ったとおり、私達にとって父は絶対なのです」

( ・∀・)「意味がわかんねぇ。それじゃあお前は父親が死ねって言ったら死ぬのかよ」

(*゚ー゚)「……わかりません」


ふと、しぃはその視線を空に泳がせた。
その瞳の色は、でぃと少し似ていた。

……が、似ているだけだ。
全然違う。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:11:27.75 ID:skymniPjO
(*゚ー゚)「……神様って残酷ですね。もし、私が生まれなければ、でぃは豪邸で何不自由なく暮らせていたのに」

( ・∀・)「……」

(*゚ー゚)「……できるなら、代わってあげたい」


しぃも、道端でこそこそと何かを言ってる奴も一緒だ。
こうやって同情してる気になって、自分の責任を逃れようとする。
私は悪くないと暗に主張する。


( ・∀・)「……だったら、代わってやれよ」

(#゚;;-゚)「!」

(*゚ー゚)「……え?」

( ・∀・)「代わってやればいいだろ?双子なんだし、能力的にはそこまで差はないだろ」

(;*゚ー゚)「で……でも」

( ・∀・)「そうだな。お前が行方を眩ますか死んじまうかしたらお前の父親は代わりにでぃを可愛がるんじゃないか?」

(;*゚ー゚)「そんなこと……できるわけが」

(#・∀・)「だったら代わってやりたいとか軽々しく言うんじゃねぇ!!」

(;*゚ー゚)「ひっ!?」

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:14:20.10 ID:skymniPjO
(#・∀・)「可哀想だけど、代わってやれないから仕方ない、だから自分は悪くない。そう言いたいだけなんだろ!!」

(;*゚ー゚)「そ……それは……」

(#・∀・)「確かにあんたは悪くないさ!それはわかってる!!」

(#・∀・)「なのに同情すんな!!自分が幸せなら不幸な人間に干渉しようとすんな!!」

(#・∀・)「そうやってお前らは自分が幸せなんだって事を確認したいだけなんだよ!!」


俺の怒鳴り声を聞いてか、わらわらと人が集まってきた。
何が面白いんだ、野次馬共め。


(#・∀・)「じろじろ見てんじゃねぇ!!」


(*゚ー゚)「……」


俺の怒りはどこへ向かうのか。
いや、そもそもなんで俺は怒ってるんだっけ。
でも、なんだか無性に腹が立った。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:17:40.01 ID:skymniPjO
そんな俺の手を何かが引っ張った。
弱々しく、でも力強く。

振り返ったらでぃと目があった。
熱く、込みあがって来た何かが腹の底へ引っ込んで行くのを感じた。


(#゚;;-゚)「モララー……怒っちゃ……ダメ」


何で俺は怒ったんだっけ。
でぃが辛い思いをして、しぃは恵まれた生活をして、
でぃがどれだけ苦しかったか知らないくせに、代わってあげたいとか言い出して―――


そうか

俺自身が、でぃに同情したんだ。
親がいないから、勝手に自分とでぃは同じだと思い込んで。
勝手に教会へと連れ帰って、勝手に満足して。

そっと自分のにおいを嗅いでみた。
臭かった。

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:20:15.99 ID:skymniPjO
( ・∀・)「……ごめん」


誰に対する謝罪か、一言ごめんと呟いた。
でぃはまだ俺の手を握っている。


( ・∀・)「……ごめん、怒鳴って」

(*゚ー゚)「……いえ」


今度はしぃの目を見て謝った。
集まった野次馬達はいつの間にか散り散りになっていた。


( ・∀・)「……帰ろうぜ」

(#゚;;-゚)「……」


手を繋いだまま、しぃに背を向けて一歩歩き出した。
でぃもすぐに俺の隣まで歩み寄ってきた。

心配をかけてしまっただろうか。

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:23:18.92 ID:skymniPjO
(*゚ー゚)「あの……待ってください」

( ・∀・)「……」


しぃに呼び止められて、足を止めた。
だけど、振り返る気力はない。


(*゚ー゚)「……確かに、私がその子の身を案じる資格なんて、ないのかもしれません」


そんなことはない、とは言えなかった。
そんなことを言う資格は俺にはないから。


(*゚ー゚)「でも、せめてその子の幸せを祈らせてください」




(*゚ー゚)「どこへ行こうと、どんな姿になろうと、でぃは私の妹ですから」

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:26:55.99 ID:skymniPjO
その日は酷く気分が悪かった。
思わず神様にお祈りするくらい気分が悪かった。


(;^ω^)「も、モララー!?どうしたんだお!?熱でもあるのかお!!」

( ・∀・)「あー、そうかもな」

( ^ω^)「モララー……?」


神父さんは俺に何かあったことを悟ったのか、無言で隣に来て何かを祈りはじめた。


( ・∀・)「……何祈ってんだよ」

( ^ω^)「モララーの悩みが解消されますように、って」

( ・∀・)「……おい。それも神様に丸投げかよ。自分が相談に乗ろうって気にはなんなかったのか?」

( ^ω^)「だったら最初からブーンに相談しろお。これでも一応モララーの父親だお」

( ・∀・)「……父親、か」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:29:11.97 ID:skymniPjO
俺は今日あったことを洗いざらい神父さんに話した。
神父さんはいつもの優しい表情のまま、俺の話を聞いてくれた。

全部話し終えたら気分が随分楽になった。
今ならわけのわからないことを相談してくる人達の気分もわかる。


( ^ω^)「そうかお。でぃちゃんのお姉さんと……」

( ・∀・)「……俺はどうすればいいのかな」

( ^ω^)「何もしなくていいお」

( ・∀・)「でも……」

( ^ω^)「大丈夫だお。何もしないで、自然にしていれば、きっとでぃちゃんも自分の居場所を見つけてくれるお」

( ・∀・)「……神父さんって楽天家だよな」

( ^ω^)「おっおっ。頭の中がお花畑ってよく言われるお」

( ・∀・)「それ馬鹿にされてるからな」

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:32:09.34 ID:skymniPjO
神父さんは本当に不思議だ。
普段の生活を見る限りは馬鹿でどうしようもない大人だけど、
言葉の一つ一つに重みがあって、その声を聞くと何故だか安心できる。


( ・∀・)「……神父さん」

( ^ω^)「おっ?」

( ・∀・)「……ありがとう」

( ^ω^)「おっ?」





( ^ω^)「おっ?」

( ^ω^)「え、今モララーがブーンにありがとうって……」

( ^ω^)「え、多分初めて……」

( ^ω^)「……」

( ;ω;)ブワッ

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:35:11.42 ID:skymniPjO
( ・∀・)「でぃ、いるか?」

(#゚;;-゚)「……うん」

( ・∀・)「今日は悪かったな。突然大声出したりして」

(#゚;;-゚)「ちょっと……怖かった」

( ・∀・)「そうか……ごめん」

(#゚;;-゚)「……?なんで……謝るの?」

( ・∀・)「謝りたいからだ」

(#゚;;-゚)「……変なの」


( ・∀・)「でぃは、しぃのことが好きか?」

(#゚;;-゚)「……うん」

( ・∀・)「父親は?」

(#゚;;-゚)「……わからない」

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:39:14.59 ID:skymniPjO
( ・∀・)「俺は?」

(#゚;;-゚)「……好き」

( ・∀・)「しぃと俺とどっちの方が好きだ?」

(#゚;;-゚)「しぃ……」

(・∀・ )(即答かよ)


( ・∀・)「まぁいい。そのうち逆転してやる」

(#゚;;-゚)「?」

( ・∀・)「しぃが双子の姉だからまずはポジションからだな」


( ・∀・)「よし!でぃ、今日から俺のことをお兄ちゃんと( ^ω^)「モララー、そういえば言いわs」呼ぶんだ!!」


( ・∀・)

( ^ω^)

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:42:04.96 ID:skymniPjO
( ^ω^)「言い訳は?」

(メ#ノ∀メ)「ありません……」

( ^ω^)「でぃちゃんも、モララーの性癖に付き合わなくていいお」

(メ#ノ∀メ)「いや、性癖じゃ……」


(#゚;;-゚)「……?モララー……は、モララー」

(メ#ノ∀メ)「ですよねー」

( ^ω^)「まったく……モララーだけいい思いしようとして……」

(メ#ノ∀メ)「えっ?」

( ^ω^)「なんでもないおー」


(メ#ノ∀メ)「……で?どうしたんだ?」

( ^ω^)「ああ、次から2人で街に行く時はブーンも連れてくお」

(メ#ノ∀メ)「……わかった」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:45:54.02 ID:skymniPjO
それからはまたしばらくいつも通りの日々が始まった。
俺は神父さんの言ったようにいつも通りを心がけた。
……というか、神父さんとツンさんの掛け合いがいつも通りすぎで不自然に振る舞う方が難しかった。


ξ#゚听)ξ「ふんっ!!」

【自主規制】「……で、でぃちゃん……助けて」

(;#゚;;-゚)ビクビク

( ・∀・)「こっちくんな正体不明」


街に行けば、たまにしぃに会うことがあった。
あの日以降、気まずい空気になることはない。


( ^ω^)「お嬢さん、ちょっとお茶でもしていきませんか?」

( ・∀・)「歳の差考えろおっさん」

(*^ー^)「クスクス……」

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:48:14.20 ID:skymniPjO
だが、それでもでぃが縛られた鎖から解き放たれることはなかった。
いつものあの場所で、いつも人形のような瞳をしているのだ。

やはり、彼女にとって父親の存在はかなり大きいようだ。
そんな時だった。しぃからその話を聞いたのは。


(*゚ー゚)「……すいません、モララーさん。ちょっといいですか?」

( ・∀・)「俺?」

( ^ω^)「えっ、ブーンは……」

(*゚ー゚)「すいません、神父さんはでぃのそばにいてあげてください」

( ^ω^)「お任せください」

( ・∀・)「……」

(#゚;;-゚)「……」

( ^ω^)「やだ、モララーとでぃちゃんの視線がなんか痛い」

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:52:01.17 ID:skymniPjO
( ・∀・)「……で、なに?」

(*゚ー゚)「明日の昼、ここを父が通ります」

( ・∀・)「!」


ようやくでぃの父親に会える。
これできっとでぃを自由にしてあげられるはずだ。

そう思ったのに、しぃが続けたのは予想外の言葉だった。


(*゚ー゚)「ですから……」





(*゚ー゚)「明日はでぃを、ここに連れてこないようにしてください」





( ・∀・)「……え?」

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:55:29.83 ID:skymniPjO
(;・∀・)「なんで……なんでだよ!せっかく全部のケリをつけるチャンスなのに!!」

(*゚ー゚)「初めて会ったとき、モララーさんが私に言った言葉を覚えてますか?」

(;・∀・)「は……?」

(*゚ー゚)「『父親が死ねって言ったら死ぬのか』……。私はたしかわからないと答えました」

(;・∀・)「そう……だけど」

(*゚―゚)「私は、どうするかわかりません。……ですが、あの子は……」


しぃは視線を伏せる。
その先の言葉を想像するのは難くない。
だが、俄には信じられないことだった。


(;・∀・)「そん……な……」

(*゚―゚)「父は、精神的にも肉体的にもあの子を痛めつけ続けました……。もう、壊れてしまうほどに」

(;・∀・)「だからと言って、必ず言うことを聞くとは……!」

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/29(木) 23:58:32.19 ID:skymniPjO
(*゚―゚)「……違うんです。モララーさん。あの子にとって父は神も同然なのです」

(*゚―゚)「生かすも……殺すも父次第」

(;・∀・)「そんなの憶測だろ!?確証はない」

(*゚―゚)「じゃあモララーさん。なんであの子は毎日のようにここに来るのですか?」

(;・∀・)「っ……!」

(*゚―゚)「……仮に、父があの子を解放したとしましょう。でもそうしたらあの子は自分の存在意義を失います」

(*゚―゚)「……哀しくもあの子の心を支えているのは父ですから」

(;・∀・)「……」

(*゚ー゚)「……すいません。ですがどうか、私の言葉を忘れないで下さい」

(;・∀・)「……」


何かが音を立てて崩れていった。
頭がガンガンして気持ち悪い。
あれ、俺今何してんだっけ。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:01:22.38 ID:d3Bc0caCO
( ^ω^)「おっ。モララー……あれ?しぃちゃんは?」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「モララー……?」

( ・∀・)「あ?……ああ、帰ったよ」

( ^ω^)「……そうかお」


( ^ω^)「じゃあ、ブーン達も帰るお。行くお」

( ・∀・)「ああ……」

(#゚;;-゚)「?」


神父さんは極めていつもの調子で話しているが、きっと俺の事に気づいてるはずだ。
でぃも俺の事を心配しているのか、俺の左手をぎゅうと掴んで離さない。

ふとそっちを振り返ったらでぃと目があった。
……この無垢な少女の心に、醜い大人が巣食っているのか。

やるせない。

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:04:17.69 ID:d3Bc0caCO
教会に戻った後、俺は神父さんと2人で話をした。
もちろん、明日の事についてだ。


( ^ω^)「しぃちゃんがそんなことを……」

( ・∀・)「神父さん……俺、どうしたらいいかわかんねぇよ……」

( ^ω^)「モララー……」



( ^ω^)「モララーは今、幸せかお?」

( ・∀・)「……ああ。これ以上ないくらい幸せだって最近気づいたよ」

( ^ω^)「じゃあ、でぃちゃんは幸せかお?」

( ・∀・)「……俺は、でぃじゃない」

( ^ω^)「モララーはどう思うんだお?」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:07:30.24 ID:d3Bc0caCO
でぃは幸せなのか。
一度自分に問うた覚えがある。
あの時はどんな結論を出したか。
出なかったはずだ。


( ^ω^)「……ブーンは幸せなんだと思うお」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「モララーといる時、でぃちゃんは楽しそうだお」

( ・∀・)「……そんなの、神父さんの思い込みだ」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「神父さんは、あいつが笑ったとこ見たことあるか?」

( ^ω^)「モララーが笑ったとこも見たことないお」

( ・∀・)「神父さんに鼻くそつけたとき大笑いしたろ」

( ^ω^)「そういう笑いはなんか違うような」

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:10:34.93 ID:d3Bc0caCO
( ・∀・)「……そうだな。じゃあ、あいつがなんらかの感情を表に出してるの見たことがあるか?」

( ^ω^)「おっ……」

( ・∀・)「せいぜい恐怖と心配くらいだ。喜怒哀楽が抜けてる」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「そんなんで生きていて幸せか?」

( ^ω^)「……ブーンはでぃちゃんじゃないからわからないお」

( ・∀・)「……結局、わかんねぇんだよ」

( ^ω^)「モララー……」


( ^ω^)「モララー、君がでぃちゃんは幸せだと思ったら、彼女は行かせない方がいいお」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「けど、このままだと彼女が不幸になると思ったら、彼女を連れて行って、全部にケリをつけるんだお」

( ・∀・)「俺が……決めるのか」

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:14:04.13 ID:d3Bc0caCO
( ^ω^)「彼女の心の中から父親を取ったら、支えが無くなってしまうお。その代わりに成りうるのは、ブーンじゃないお」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「モララー、君が彼女の支えになれるかどうかが、一番の問題だお」

( ・∀・)「……はっ、そんなよくあるおとぎ話みたいなこと言われても」

( ^ω^)「お姫様を助ける王子様はドラゴンと戦うんだお。おとぎ話のハッピーエンドにもリスクはつきまとうんだお」

( ・∀・)「おとぎ話と……一緒にすんなよ」

( ^ω^)「……ブーンから言えるのはここまでだお。よく、考えるんだお」

( ・∀・)「……」


神父さんはいつもの表情のままそう言った。
だけど、唇から血が垂れていたのを俺は見逃さなかった。
辛いのは、俺だけじゃない。
だけど、決めなきゃならないのは俺なんだ。

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:17:41.75 ID:d3Bc0caCO
もしも俺がでぃだったら。
そんなことを考えても仕方ない。
そんなことしてもでぃの気持ちはわかりっこない。

だから俺は、俺にとってでぃがどうあればいいかを模索するしかない。
人形みたいに生きる彼女がいいか、リスクを背負ってでも彼女を解放してやるか……。

だけど、リスクが大きすぎる。
彼女を失うかもしれない、そうなったら俺は……いや、俺達は……。



どっちが、エゴだ。



「モララー……?」

( ・∀・)「!」

(#゚;;-゚)「大丈夫……?」

( ・∀・)「……ああ」

(#゚;;-゚)「でも……辛そう」

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:20:57.63 ID:d3Bc0caCO
( ・∀・)「なぁ……でぃ。俺のこと好きか?」

(#゚;;-゚)「……?……うん」

( ・∀・)「しぃとどっちが好きだ?」

(#゚;;-゚)「……んと……、……しぃ」

( ・∀・)「……そうか」


やはり、血のつながりには敵わないか。
少し自嘲気味に笑った。

つまり俺はでぃの父親には敵わないのだ。



……だが。
しぃはどこへ行こうと、どんな姿になろうと、でぃは自分の妹だと言った。
なら父親はどうだ。
でぃが彼の元から離れたら……もう他人か。
血はつながっていても、他人。
それなら俺にも勝ち目はあるか。

190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:24:36.83 ID:d3Bc0caCO
なんとも自分勝手な考えだろうか。
そんなにことがうまく運ぶのなら、神様に祈る人はいなくなる。


( ・∀・)「……なぁ、でぃ。お前は、家に帰りたいか?」

(#゚;;-゚)「……?家……ここ……」

( ・∀・)「!」


なんてこった。
でぃは、ちゃんと自分の居場所を見つけていた。
でぃは、ここでの暮らしに幸せを見つけていたんだ。


ならば、悩むことはない。
俺の出した答えが、俺のエゴだとしても知ったことではない。

俺の『当たり前』の中で、彼女を幸せにしてやるんだ。

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:28:13.15 ID:d3Bc0caCO
―翌日―


( ・∀・)「でぃ、神父さん」

(#゚;;-゚)「……?」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

( ・∀・)「……街、行こうぜ」


( ^ω^)

(#゚;;-゚)「……わかった」

( ^ω^)「……わかったお」


でぃの居場所はここにある。
でぃの幸せもきっとここにある。

だったらきっと、でぃの心の中に俺もいるはずだ。
支えになれるかどうかは知らない。
支えになればいいだけだ。

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:32:20.76 ID:d3Bc0caCO
太陽がほぼ真上に来た。
神父さんはパンをいくつか買ってきてくれた。
ツンさんもついてきてくれた。

後は待つだけだ。


( ^ω^)「モララー……」

( ・∀・)「大丈夫。俺が決めたんだから」

( ^ω^)「……おっ」

ξ゚听)ξ「2人でなに話してんのよ」

( ・∀・)「あそこのお姉さんの尻がいいって神父さんが」


( ^ω^)

ξ#^ー^)ξ

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:36:06.81 ID:d3Bc0caCO
(;*゚ー゚)「え……?モララーさん?」

( ・∀・)「よっ」


ξ゚听)ξ「あら、あの子は?」

(メ#ノω^)「でぃちゃんの双子の姉で、しぃちゃんだお」


(;*゚ー゚)「な、なんでここに……」

( ・∀・)「やっぱりさ、何かをケリ付けずにほっとくのって性に合わないんだ」

(;*゚ー゚)「そんな……」

(メ#ノω^)「大丈夫だお。心配いらないお」

(;*゚ー゚)「でも……、というか私は神父さんの方が心配です」

(メ#ノω^)「これも大丈夫だお。いつものことだお」

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:40:21.86 ID:d3Bc0caCO
(;*゚ー゚)「……」

( ・∀・)「……で、いつ来るの?でぃの父親は」

(;#゚;;-゚)「!?」

(;*゚ー゚)「……もう、来ますよ」

( ・∀・)「もう……ってあの馬車か?」


(´・ω・`)「しぃ、何をやってるんだ」

(*゚ー゚)「あ……」


しぃの後ろから馬車がやってきた。
そこから1人の紳士が顔を出す。


(´・ω・`)「そのような下賤なものに話しかけるのはやめなさい」

(*゚ー゚)「……失礼しました、お父様」

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:44:01.39 ID:d3Bc0caCO
しぃは一度お辞儀をした後、そそくさと馬車の元へと歩いていった。
神父さんは、失礼な物言いをした紳士に食ってかかろうとするツンさんを抑えている。

そしてでぃはというと、俺の背中に隠れてガタガタと震えていた。


(´・ω・`)「まったく……おや?」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「そこの君……どこかで会ったかね?」

( ・∀・)「……は?」

(´・ω・`)「うーむ……」


(´^ω^`)「ああ!思い出したよ。昔かわいがってやった女にそっくりだ!はっはっはっ!!」

(・∀・ )「……人違いかよ。びっくりしたじゃねぇか」

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:48:12.52 ID:d3Bc0caCO
(´・ω・`)「さて君たち、そこをどきたまえ。これでは馬車が通れないではないか」

( ・∀・)「そうは行かないな。ちょっとこっちの話も聞いてもらおうか」

(´・ω・`)「なんだい。土地の話なら聞かないよ」

( ・∀・)「違う。あんたの娘の話だ」

(´・ω・`)「娘……しぃがどうかしたか?」

( ・∀・)「そのしぃの妹だよ」

(´・ω・`)「おいおい。何を言っているんだ。ウチに娘は1人しか……」


(;#゚;;-゚)「ご……ご機嫌うるわしゅう……ございます……。お父様……」


(´・ω・`)

( ・∀・)

(;*゚ー゚)

イヤダメダオ
(;^ω^ξ#゚听)ξハナシナサイヨ!

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:51:36.82 ID:d3Bc0caCO
でぃが一歩前に出てお辞儀をした。
紳士は無言のままだ。
その後ろには心配そうな表情のしぃさんがいた。


(´・ω・`)「ああ……でぃか。なんでこんなところにいるんだ?」

(;#゚;;-゚)「え……あ……その……」


紳士がでぃの存在を認めた。
だが問題はこの後だ。
この後、どんな残酷な言葉が彼女を襲うか―――


(´・ω・`)「元気にしてたか?」

(#゚;;-゚)「……え?」


( ・∀・)(……え?)

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:54:41.88 ID:d3Bc0caCO
(´・ω・`)「そうか。追い出したりしてすまなかったな」

(;#゚;;-゚)「い、いえ……そんな……」

(´・ω・`)「辛くはなかったかい?」

(#゚;;-゚)「いえ……彼らの……おかげで……」

(´・ω・`)「そうか。あなた達には感謝せねばなりませんな」

(;^ω^)「えっ!?いや、そ、それほどでも……」

(;・∀・)


想定外の事態だった。
まさか、紳士がでぃに優しい言葉をかけるなんて。

もしかして、でぃがいなくなってから反省したのか。
だとしたら……。


(´・ω・`)「でぃ、乗りなさい。また一緒に暮らそう」


(#゚;;-゚)「……」

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 00:57:39.98 ID:d3Bc0caCO
おとぎ話でも類の見ない、ハッピーエンドがそこに見えた気がした。
優しそうな紳士の顔に、他の意図は見えない。

でも、なぜだろうか。
なんだか、すごい臭かった。


でぃは一歩馬車に歩み寄る。
そして一言、そう言った。







(#゚;;-゚)「イヤです」






僕は耳を疑った。

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:00:38.14 ID:d3Bc0caCO
(;・∀・)

(;^ω^)

ξ;゚听)ξ

(;*゚ー゚)


(´・ω・`)


(´・ω・`)「……今、何と言った」

(#゚;;-゚)「お父様と……一緒には……暮らしません」

(´・ω・`)「何故だ」

(#゚;;-゚)「私の……家はもう……あそこでは……ないから……です」

(´・ω・`)

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:03:33.58 ID:d3Bc0caCO
予想外だった。
でぃは俺たちの想像よりも強かったのだ。
……姉のしぃですらも、この展開は考えつかなかったろう。


(#゚;;-゚)「ですから……、お父様と……一緒には……参れません」

( ・∀・)「でぃ……」


(´・ω・`)「……クソが」

(;*゚ー゚)「お……お父様……?」

(´・ω・`)「なんであいつは僕の思い通りにならないんだ」


(´゚ω゚`)「あ゙ぁっ!?何でだよ!!」


(;^ω^)「ちょ……落ち着いてくださいお!」

(´゚ω゚`)「黙れ!!虫けらのくせに!!」

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:06:08.21 ID:d3Bc0caCO
(´゚ω゚`)「せっかく僕好みの人形にしてやったのに!!すぐに反応が悪くなりやがって!!」

ξ゚听)ξ「反応……?」

(´゚ω゚`)「どれだけ痛めつけても何の反応もしない!!それじゃあ余計ストレスがたまるだろ!!だから捨てたんだ!!」


紳士は先ほどまでとの冷静な様子から打って変わって、狂ったように叫びだした。
でぃはそんな父親の姿を見ながら、プルプルと震えている。


(;#゚;;-゚)「……」

(;・∀・)「……でぃ」

(;#゚;;-゚)「……大丈夫」


そっと手を握ってやると、強く握り返してきた。

本当に、でぃは強い。
自分の父親から、聞きたくないことを聞かされているというのに、目を背けようとしない。

支えなんかなくても、1人で立てるのではないか。

220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:09:35.44 ID:d3Bc0caCO
(´゚ω゚`)「直ったみたいだからまたかわいがってやろうと思ったのによぉ!!反抗しやがって人形のクセに!!」

(;*゚ー゚)「お、お父様落ち着いて……」

(´゚ω゚`)「うるさいうるさいうるさい!!」

(;*゚ー゚)「きゃ……!?」


発狂した紳士は馬車の中で暴れ始めた。
しぃは慌ててその場から避難し、他の付き人達が抑えようとする。

でぃの震えはまだ止まっていない。
手を握る力を強くすると、さらに強く握り返してきた。


(´゚ω゚`)「でぃ!!こっちへ来い!!お前をここまで育ててやったのは誰だと思ってるんだ!!」


(;#゚;;-゚)「!」

( ・∀・)「……大丈夫だ。行く必要なんてない」

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:12:39.64 ID:d3Bc0caCO
ξ゚听)ξ「ねぇ、ブーン。私、よくがまんしたと思わない?」

( ^ω^)「おっ。近年稀に見る耐えっぷりだったお」

ξ゚听)ξ「でしょう?」

( ^ω^)「そうだおね。おーい、地主さーん?」

(´゚ω゚`)「やかましい!!だいたいなんなんだお前達は!!」

( ^ω^)「おっおっ。ブーンは神父ですお。だから……」



(#゚ω゚)「説教の時間だ覚悟しろゲス野郎ぉぉぉぉぉ!!」

ξ#゚听)ξ「神様に懺悔しながら命乞いをしなさい!!」


<オラオラオラァァァ!!
<ウワァァァ!!ナンダコノオンナツエェェ!!
<ダンナサマハヤクオニゲゴファッ

( ・∀・)「……」

(;#゚;;-゚)「……」

226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:16:22.22 ID:d3Bc0caCO
<ギャブン!!
<オイ、シンプノホウハヨワイゾ!!
<アンタラブーンニナニシテンノヨ!!
<ミギャァァァァ!!


( ・∀・)「でぃ」

(#゚;;-゚)「……?」

( ・∀・)「帰ろうか」

(#゚;;-゚)「……うん」


僕らは手をつないだまま教会へと歩き出した。
……僕らの家へと。




( ・∀・)(……でぃの親父さん、生きてるかなぁ)

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:19:28.46 ID:d3Bc0caCO
それからは、本当になんでもない日々が続いた。
件の騒ぎで、ショボリーヌ家はすっかり失脚してしまったらしい。
まぁ、あんなことを道路で叫んでたら普通はそうなるだろう。
ちなみにでぃの父親は、病院にかつぎ込まれるのを見た人がいるので、死んではいないようだ。

しぃには迷惑をかけてしまったが、彼女は笑って許してくれた。
今はパン屋で働いているらしい。

でぃはしがらみから解放されたからか、最近よく笑うようになった。
でも、どこか寂しそうでもある。

だからちょっとしたサプライズを用意してあげることにした。


(#゚;;-゚)「モララー……?」

( ・∀・)「おっと、悪いな。今はちょっと取り込んでるんだ」

(#゚;;-゚)「あ……」

( ^ω^)「おっおっ。しばらくブーンと遊ぶお。……右足はまだ治ってないけど」

ξ゚听)ξ「……両腕は治ったのね」

( ^ω^)「……まさかあの時ツンの攻撃に巻き込まれて大怪我するとは思わなかったお」

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:23:21.55 ID:d3Bc0caCO
( ・∀・)「悪いな、でぃ。しばらく神父さんで遊んでてくれ」

( ^ω^)「えっ?……神父さん『で』?」

(#゚;;-゚)「わかった……」

(^ω^;)「しかも了解!?」


( ・∀・)「じゃあ、ツンさん。行こうぜ」

ξ゚听)ξ「えぇ。ブーン、でぃに何かしたらまた両腕が使えなくなると思いなさいよ」

( ^ω^)「しませんから」


(#゚;;-゚)「……行っちゃった」

( ^ω^)「そうだおね。じゃあブーン達はブーン達で何かやるお!」

(#゚;;-゚)「パパ……」

( ^ω^)「」

(*^ω^)「えっ?パパ?ブーンが?」

238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:28:37.61 ID:d3Bc0caCO
(*^ω^)「えーと、ちなみに聞くけど、ママは誰だお?」

(#゚;;-゚)「パパに捨てられたショックで……井戸に身を投げました……」

( ^ω^)「何その設定怖い」

(#゚;;-゚)「モララーが……神父さん喜ぶって……」

(^ω^ )「あいつでぃに何吹き込んでんだ」


(#゚;;-゚)「モララー達……どこ行ったの……?」

(;^ω^)「おっ?えーと、買い物と準備だお!」

(#゚;;-゚)「なんの準備……?」

(;^ω^)「そ、それは秘密だお!」

(#゚;;-゚)「……みんな、教えてくれない……」

( ^ω^)「でぃ……」

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:34:49.96 ID:d3Bc0caCO
(#゚;;-゚)「たまに……思う。私は……いらない子なんじゃ……って」

( ^ω^)「……」

(#゚;;-゚)「私が……いなければ……しぃも、幸せ……。モララーも……神父さんも……私のことで……迷惑かけなかった……」

( ^ω^)「こら」

コツン
(;#゚;;-゚)「ぴっ!?」

( ^ω^)「そういうこと言うんじゃないお。モララーが相手だったらひっぱたかれてるお」

(#゚;;-゚)「……?」

( ^ω^)「でぃがいなかったら、ブーンも、モララーも、ツンも、でぃと出会えなかったお。それは哀しいことだお」

( ^ω^)「それにでぃはもうブーン達の家族の一員なんだから、昔のことよりこれからの事を考えるお」

(#゚;;-゚)「これから……?」

( ^ω^)「そうだお。これから君がどれだけ幸せになれるかが大事なんだお。
だから自分のことを悪く思うのはダメだお。幸せが逃げてっちゃうお」

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:38:57.54 ID:d3Bc0caCO
(#゚;;-゚)「これから……幸せに……」

( ^ω^)「おっおっ。そうだお」


( ・∀・)「おーい!準備できたぜ!」

( ^ω^)「おっ。早いおね」

ξ゚听)ξ「えぇ。かわいいパン屋の娘さんが手伝ってくれたからね」

(*^ω^)「おっ!しぃちゃんかお!」

(#゚;;-゚)「しぃ……が?」

( ・∀・)「おう!さぁ行こうぜ、でぃ」

(#゚;;-゚)「行くって……どこに?」

( ・∀・)「決まってんだろ。俺たちの家だ」

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:44:45.04 ID:d3Bc0caCO
教会のドアが音を立てて開く。
窓には布がかけられていて、とても薄暗くなっていた。


(#゚;;-゚)「モララー……暗い……よ?」


前方に何か障害物がないかを確かめながら一歩、二歩と歩くでぃ。
そして三歩目を踏み出した瞬間……


パン!パパン!パン!!


(;#゚;;-゚)「ぴっ!?」ビクッ!


(*^ω^)ξ*゚听)ξ(*゚ー゚)「「ハッピーバースデー!!でぃ!!」」


(;#゚;;-゚)「えっ……えっ?」


クラッカーが弾け、祝いの言葉が飛ぶ。
主役のでぃは何がなんだかわからないと言った表情だ。

251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 01:50:31.83 ID:d3Bc0caCO
(;#゚;;-゚)「な、何……?」

( ・∀・)「何って、お前の誕生日祝いだよ」

(#゚;;-゚)「誕……生日?」

( ・∀・)「そうだ。しぃの誕生日でもあるけどな」

(*゚ー゚)「でも、今日の主役は私じゃありませんよ」

(#゚;;-゚)「私の……?」


(*^ω^)「はい!プレゼントだお!できるだけかわいい服を探したんだお!」

(#゚;;-゚)「……」

ξ゚听)ξ「私からはこの手袋。一応手作りよ?」

(*゚ー゚)「私はこのネックレス。あなたに似合うと思って」

(#゚;;-゚)「……」

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/09/30(金) 02:01:15.18 ID:d3Bc0caCO
(#ぅ;;-゚)「みんな……ありがとう……」

( ・∀・)「おっと、まだ俺のプレゼントが残ってるぜ。……とは言っても金がないから物は買えなかったけど」

(#゚;;-゚)「ううん……気持ちだけでも嬉しい……」

( ・∀・)「そう言うと思ったぜ。そんなお前にこの言葉を贈るよ」



           ―Happy Birthday to you!―
           ―Wishing you many more!―
        ―And,thank you for coming into our life―
          ―Please be with me forever!―





     ( ・∀・)そんな君へハッピーバースデーのようです 〜fin〜



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