- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 16:24:48.39 ID:PCh7iXtP0
- 昔から電車が好きだった。
俺を知らない場所まで連れて行ってくれる。
知らない景色を見せてくれる。
そんな電車が大好きだった。
('A`)「……」
先日、自殺を決めた。
ただ、自殺するまえに電車に乗りたかった。
何線かは分からない。
とりあえず、乗れるところまで乗ってみたかった。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 16:33:01.14 ID:PCh7iXtP0
- 窓から見える景色。やっぱり美しい。
田園地帯だろうか。僅かに稲穂が揺れ、まるで金粉を空に舞わせているようだ。
コマ送りのようにどんどん変わってゆく景色。
普段目にしても何の感情ももたらさないであろう景色も、この時ばかりは目に残る。
あっ、今度は川が見える。
昼のこの時間帯だからか、日の光をいっぱいの反射させ、輝いていた。
暫くぼーっと景色を眺めていたかった。
ある程度人は乗っているが、車内は驚くほど静かで、電車が揺れる音しか聞こえないようだった。
お陰で集中して景色を見られた。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 16:38:25.95 ID:PCh7iXtP0
- ぼーっと景色を眺め、少しウトウトしだした頃だった。
( ^ω^)「隣……いいですかお?」
('A`)「……ハッ、あの、何ですか?」
ウトウトしていたせいか突然話し掛けられ、ちょっと驚いた。
突然話し掛けてきたのは30代前半くらいの肉付きのいい男だった。
男は、俺の反応にびっくりしたらしく、
( ;^ω^)「おっ?大丈夫ですかお?」
ちょっぴり焦って反応した。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 16:44:49.75 ID:PCh7iXtP0
- ('A`)「すみません、ちょっとウトウトしていたもので」
( ^ω^)「あ、そうでしたかお」
('A`)「隣……でしたっけ、どうぞ」
( ^ω^)「ありがとうだお」
隣に座った男。やっぱり肉付きがいいせいか圧迫感を感じるぞ。
景色を眺めるのを止め、しばし吊り革を眺めていた。
俺だって一応マナーくらい分かってる。
沈黙が続く。
男はどう思っているか知らないが、俺は慣れっ子なので普通に吊り革を眺め続けていた。
この吊り革は、随分と古いなあ。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 16:53:54.32 ID:PCh7iXtP0
- ( ;^ω^)「……」ソワソワ
しかしやっぱり数分後。
男はこの沈黙に耐えかねたらしい。
予想通り、俺に話し掛けてきた。携帯電話でも弄ればいいのに。
( ^ω^)「あなたは何処へ行かれるですかお?」
('A`)「ん……俺ですか?」
何処へ行く。単純な質問だ。
しかし、単純な質問に俺は答えられなかった。
俺は、何処へ行くんだろう。
('A`)「うーん……あなたは何処へ行かれるんですか?」
( ;^ω^)「ぼ、僕ですかお?」
少し焦って、男は反応した。
何かまずいことでも聞いただろうか俺は。
( ^ω^)「僕は、まあ近くの丘を見に行くだけですお」
余りにも普通の答えに、ちょっぴりがっかりした。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 17:02:56.53 ID:PCh7iXtP0
- ('A`)「俺は……俺は……何処へ行くんだろう?」
( ^ω^)「おっおっおっ、自分探しの旅って奴ですかお」
('A`)「まあ……そんなもんですかね?」
自分探し?いや、厳密には違うはずだ。
この旅は一体なんのためにしているんだっけ。
俺はこの男を何故か気に入り、少しだけ話を続けたくなった。
('A`)「何ていうんですか?名前」
( ^ω^)「僕の名前は、内藤ホライズンですお。あなたは?」
('A`)「鬱田ドクオです」
( ^ω^)「そうですかお……」
そう言うと、内藤さんは何か考え込んでしまった。
どうしたんだろう。
しかし、俺に内藤さんのことなど分からない。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 17:08:52.78 ID:PCh7iXtP0
- ('A`)「実は、俺、自殺考えてるんです」
あっ。何を言っているんだ俺は。
ふっと頭によぎった事が、ぽっと口から出ていた。
すると、内藤さんは、
( ^ω^)「……そうでしたかお」
と確信するように呟いた。
なんで俺はこんなことを喋ったんだろう。
( ^ω^)「僕は止めたりはしませんお」
( ^ω^)「ただ、聞いておいて欲しいことがありますお」
('A`)「はあ」
急に真面目な顔になった内藤さんは、少し俯きがちで話し始めた。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/04(火) 17:57:16.74 ID:PCh7iXtP0
- 意識が飛んでたすまん
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 18:03:21.18 ID:PCh7iXtP0
- ( ^ω^)「人生は、楽しかったですかお?」
('A`)「……」
楽しくなかったから自殺考えてんだよ!!と言い出しそうになったが、抑えた。
それを察したのか、内藤さんは、
( ^ω^)「そうだおね、そうかもしれないお」
と俺の心を見透かした様に話した。
( ^ω^)「しかし、人生って電車に似ていると思わないかお?」
('A`)「へ……?」
考えたことも無かった。
俺は人生はとはつまらないもので、だから今こうして考えているんだと。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 18:09:55.31 ID:PCh7iXtP0
- ( ^ω^)「終点に着くまでが電車だお、人生も死んだら終了。終点だお」
( ^ω^)「生きている今の君は、何を思う?」
何って、つまらない。
( ^ω^)「つまらない。楽しくない。」
そうだよ。
( ^ω^)「本当にそうだったかお?」
穏やかに、静かに、俺に問い掛けた。
('A`)「……つまらないですよ、楽しくないですよ」
きっぱりと答えた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 18:22:36.56 ID:PCh7iXtP0
- ( ^ω^)「そうかお」
全く微動だにしない内藤さん。
凄い事だと思った。
( ^ω^)「じゃあ、少し外の景色を見るといいお」
俺は再び窓の外へと目を向けた。
いつの間にか時間が経っていたらしく、赤い夕日。
それに染められた雲。空。
正しく絶景、と言ってよかった。
夕日から離れるほど空は淡い紫色に染まり、幻想的にすら思える。
僅かに輝き出した星。それを見届けるかの様に、夕日はどんどん地に落ちてゆく。
俺は暫く呆然とその景色に見とれていたが、内藤さんの声で現実へと引き戻された。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 18:38:21.09 ID:PCh7iXtP0
- ( ^ω^)「どうだったお?」
('A`)「すごく……綺麗です……」
( ^ω^)「ウホッ…じゃなくて、この景色、綺麗だおね」
( ^ω^)「これを人生に例えるお」
( ^ω^)「君はつまらない、つまらない、って言うけどさ」
( ^ω^)「もしかしたら、窓の外の景色を眺めていないからだからかも知れないお?」
つまりどういうことだ、と言う前に、内藤さんは続ける。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 18:46:01.48 ID:PCh7iXtP0
- ( ^ω^)「君は、ただじっと電車の中で移動をするために座っているだけなんじゃないのかお?」
( ^ω^)「ただ、成人を迎えるために今を生きている。ただただ淡々と」
( ^ω^)「それだけじゃだた座っているだけだお」
( ^ω^)「視界を広げて見るお」
( ^ω^)「窓の外……綺麗だったおね?」
うん、と頷く。
( ^ω^)「そういうことだお、今を生きる=ただ成人行きの電車に乗っているとしか君は思ってないお」
( ^ω^)「それじゃ駄目だお。窓の外も眺めてみるといいお」
( ^ω^)「そうすれば、きっと人生観も変わるはずだお」
はっとさせられた。
確かに、こんな考え方も有りかもしれない。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 18:54:33.37 ID:PCh7iXtP0
- ( ^ω^)「まあ、勿論外もトンネルで見えない時もあるかも知れないお」
( ^ω^)「そういう場所も乗り越えてこそ、外の景色は輝いて見えるんだお」
('A`)「そう……かもしれないですね」
今更、なんで自殺しようと思ってたんだろうという気持ちが込み上げてきた。
うまくこのオッサンにやられたもんだ。
止める気はないと言いつつ、俺は見事に丸め込まれた。
(+^ω^)「後僕はオッサンじゃないお、花の30代だお」キラーン
('A`)「それをオッサンっていうんだよね」
( ^ω^)「ひどいお…」
少し内藤さんのテンションが下がった。
いつの間にか、日は地に落ち、空は黒く彩られていた。
しかし、星がある。零れ落ちそうなほどの星が。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/10/04(火) 19:02:00.88 ID:PCh7iXtP0
- ……
('A`)「……のわっ!?」
起きたら、そこには内藤さんも電車も無かった。
ただ、無人駅に立っていた。
すっかり日も沈んでしまっている。
あの電車は何線だったんだろう、結局。
そう考えつつ、俺は駅を離れた。
( ^ω^)「おっおっおっ、君が降りた駅は「今」かお」
('A`)「……?内藤さん?」
内藤さんの声が聞こえた気がした。
( ^ω^)「いい駅だお。終点はまだまだ遠いお?ドクオ君」
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