- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 18:33:11.86 ID:udWXl38X0
- ここは噂でしか知ることができない場所、何でも屋。
特に名前はなく、良い事であろうが悪い事であろうが、依頼主に依頼されたら何でもこなす人がいるから何でも屋と呼ばれているだけの場所。
その何でも屋は、人っ子一人通らないであろう裏通りというべきところにこじんまりとあった。
ぱっと見は骨董品を置いている古ぼけた店。
置かれている商品は、古そうだが手入れはされているようで埃は被っていなかった。
よく見れば、商品は同じカテゴリーごとに置かれており、骨董品店にしてはスッキリしていた。
そして店内の奥にあるカウンターに一人の男が座っていた。
男は一つの時計を手に持ち、丁寧に磨いていた。
その時、店の入り口にある古びたドアが開くのと同時に、ドアについていたベルがカランカランと来客を知らせた。
その音で男は時計を磨く手を止め、来客の方を向き、お決まりの台詞を言った。
(´・ω・`)「やあ、大した物は置いていないがゆっくりしていってくれ」
店に入ってきた男は、入り口のところで突っ立ったまま店内を見渡してから、奥のカウンターのところにいる男の方へと真っ直ぐ歩き出した。
(,,゚Д゚)「…」
そしてカウンターの前で立ち止まり、二つ折りにされた一枚の紙を無言で時計を再度磨き始めていた男へ差し出した。
紙を渡された男は手に持っていた時計を静かにカウンターへ置き、二つ折りにされていた紙を開き、内容に目を通す。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 18:39:46.38 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「…そちらのお客様でしたか。
私はここの店主であるショボンという者です。
とりあえず、右手にある階段で上の部屋で待ってもらっていていただいてもよろしいですか?」
(,,゚Д゚)「…わかった」
ショボンに言われた通りに男は、男から向かって右手にある階段を静かに上がっていく。
それを見届けたショボンは静かに立ち上がり、店の入り口にOPENの札をCLOSEDにひっくり返して、カウンターの奥へと戻っていった。
階段を上がっていった男は、上がりきったすぐ左にドアがあったのでそこを開けた。
そこには白い長方形のテーブルと、そのテーブルを挟んで黒いソファーが二つ置かれているだけの部屋だった。
他にも観葉植物などがあったが、それ以外は何も置かれていない簡素な部屋だった。
とりあえず男は下手のソファーに座り、ショボンが来るのを静かに待った。
ショボンはカウンターの奥にある、キッチンで珈琲を入れていた。
自分用に淹れる珈琲はこだわりの豆から用意するのだが、今淹れているのは客に出すためだけの物なので、インスタントにしていた。
珈琲を淹れてスティックシュガーとミルクを一個ずつ用意し、それらとさっき受け取った紙をお盆に乗せて男の待つ部屋へ、男と同じ階段を使って向かった。
(´・ω・`)「さて、今回はどんな話かな…」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 18:45:49.22 ID:udWXl38X0
- 独り言を呟きながら階段を上がりきり、左手にあるドアを開けた。
中にいた男は、ドアが開く音も気にせず、ずっとテーブルの一点を見つめたまま動かなかった。
ショボンは気にせずドアを閉め、男とは反対側のソファーに座り、お盆に乗せていた珈琲とスティックシュガーとミルクをテーブルの男側に置いた。
(´・ω・`)「さて、お待たせいたしました。
ご依頼とはどのようなものでしょうか?」
依頼とは、二つ折りにされた紙に書かれていたことだった。
ショボンの何でも屋に依頼をするときは、カウンターに座っている男に『頼みたいことがある』とでも書いた紙を二つ折りにして渡すことが条件となっているのだ。
紙には依頼内容を書かないことも条件となっている。
何時、何処で依頼内容が洩れるかわからないからである。
そして、紙に書く内容を『頼みたいことがある』など簡単にしてあるのも、他の客と見分けるためだった。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 18:50:22.63 ID:udWXl38X0
- (,,゚Д゚)「簡単に言おう、闇金に渡してしまったペアリングを取り返してほしい」
(´・ω・`)「闇金…つまりお金を借りたんですよね?」
(,,゚Д゚)「あぁ、でも利子もつけて全額返金したんだ。
なのにあいつらは知らないととぼけて担保として渡したペアリングを返してくれないんだ」
(´・ω・`)「ふむ…成る程。
では、そのペアリングの詳細と闇金の名前を教えていただいてもよろしいですか?」
(,,゚Д゚)「ペアリングは写真があるから渡しておく。
そして闇金の名前は渋澤組だ」
(´・ω・`)「それはまた…凄い所から借りましたね」
(,,゚Д゚)「その時はどうしても金が必要でね。
条件がゆるい所がそこしかなかったんだ」
(´・ω・`)「そうですか、まぁ詳細は聞きません。
とりあえず何が何でも写真のペアリングを澁澤組から取り返す、というご依頼でよろしいですね?」
(,,゚Д゚)「あぁ」
(´・ω・`)「ではこちらの契約書にサインと、ご依頼が終わったときの連絡先とお名前をお願いします」
(,,゚Д゚)「…それで依頼金の話だが」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 18:55:14.51 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「ざっと見て三桁は覚悟しといてください。
その額から多少前後することはありますが、極端に前後することはありません。
そして金額が確定するのは依頼が終了してからです、よろしいですか?」
(,,゚Д゚)「わかった、じゃあ頼んだぞ」
(´・ω・`)「かりこまりました」
ショボンの何でも屋では、この簡単なやり取りがいつものことである。
内容を聞いて、サインをしてもらい、金額の説明。
そして依頼主が帰ってからが本格的作業になるのだ。
依頼主が帰ったことを確認して、ショボンは一階へ下りキッチンへ向かう。
そしてキッチンにある食器棚についている引き出しを開け、そこにあるテンキーに数字を10桁ほど入力しエンターキーを押す。
するとどこからかはわからないが、カチャっという音がする。
ショボンはその音を確認すると、食器棚の隣にあるドアのドアノブに手をかけ、開けた。
そこには一台のパソコンとプリンタ、そしてシュレッダーが置かれていただけであった。
そしてショボンはパソコンの電源を入れて、パソコンの前にある椅子へと座った。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:00:13.80 ID:udWXl38X0
- まずは依頼主の情報。
本人から聞き出さずに、自らの情報網で調べ上げる。
聞き出したところで嘘か本当かわからないので、このようなことをするのだ。
そして次に依頼主の依頼内容の情報。
今回で言えば、渋澤組の情報だ。
どこにあって、どんな人たちが何人いて…他にも調べられることは調べ上げる。
そして最後に金額の見積もり。
今まで調べた情報を元にどれだけ費用がかかるのかを見積もるのだ。
どんな依頼かによって頭の中で大まかな金額は計算できるようになっているのだが、細かい所までは調べて見なければわからないのだ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:05:13.89 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「依頼主は…サイン通りの名前だな」
プライバシーに関わるために本名は伏せておくが、とりあえず『ギコ』と呼ばせていただこう。
ギコは確かに渋澤組から1千万借りている、そして担保としてアンティークのペアリングも渡している。
どうやらこのアンティークのペアリングは、有名なデザイナーに特注した物のようだ。
(´・ω・`)「渋澤組が返したくないのも少しはわかるな…」
アンティークで保存状態がよく、さらには有名デザイナーの特注品。
高価なわけがない。
(´・ω・`)「ギコについてはこんなもんでいいかな…。
さて、次は渋澤組についてだが…正直関わりたくないなぁ」
渋澤組というのは、この裏通りでは有名な組なのだ。
聞きたくなくても情報ははいってくる。
表向きはただの金貸し、裏ではなんでもやってしまう組…詳細は伏せておこう。
(´・ω・`)「怖い所だから隅から隅まで調べ上げますかね」
この情報収集で自分の命が左右される、それならばやりすぎと言われるまで調べるのが当然である。
ましてやこの何でも屋、一人でやりくりしているのだから。
(´・ω・`)「まぁ、呼ぼうと思えば助っ人は呼べるけど…別に一人でなんとかなるしね」
そしてこの男、強がりである。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:10:13.71 ID:udWXl38X0
- 渋澤組について調べて数時間後、ようやく調べ終わったショボン。
一息いれるために一度キッチンへと戻り、珈琲を淹れることにした。
(´・ω・`)「今回の仕事はちょいと難しそうだなぁ…」
豆を取り出してから淹れるまで、手馴れた手つきでこなしながら呟く。
そして珈琲を淹れ終わり、その場でカップに口をつけた。
一口飲んで、一息ついて、空いている片手で体中のポケットを探り煙草を探す。
吸っている銘柄はセブンスター、メジャーすぎる銘柄だ。
(´・ω・`)「中の人の頭の中では、イケメン=セブンスターの方程式が成り立ってるらしいよ」
黙れ垂れ眉金玉口。
(´・ω・`)「何だったら中の人の情報でもあげようか?
この人の煙草を始めた理由はねぇ、好きな人がマルボロ吸っててその香りが忘r
すいません、もう口出しませんから話進めさせてください。
(´・ω・`)「わかればいいんだよ。
僕に敵うやつなんていないんだから」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:15:17.56 ID:udWXl38X0
- そう言って左のポケットに入っていた煙草を一本口に咥え、次にライターを探し始めた。
ライターは煙草より早く見つかって、煙草と同じ左のポケットにはいっていた。
そして見つけたライターで煙草に火を点け、煙草の一口目を味わう。
(´・ω・`)y-~~「やっぱセブンスターの一口目はほんの甘みを感じられて最高だね」
本当の一口目、火を点けた瞬間だけ味わえる甘みがショボンは気に入っていた。
煙草をしばらく吸っては珈琲を一口飲む、という動作を繰り返しながらしばらく静かに立っていた。
そして煙草も珈琲もなくなった時点で、先ほどのパソコンがある部屋に戻る。
(´・ω・`)「さってと…今回はどのくらいかかるかなぁ」
次に取り掛かったのは経費の見積もりだった。
(´・ω・`)「なんせボスである渋澤自身が反則なくらい強いからなぁ…」
渋澤組のボスである渋澤という男は、よほど自分の腕に自信があるのか護衛はつけずに一人で歩き回っているのだ。
それでも無傷で今まで過ごしている。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:20:51.57 ID:udWXl38X0
- その理由は、第一に見た目。
近づきがたい雰囲気が漂っているのだ。
渋澤を一目見た瞬間、身が凍るような気になってしまうらしい。
第二に実力。
有段者というわけではないのだが、柔道も空手もでき、挙句の果てには剣道もできる。
そして銃の扱いも一流だとか。
第三に性格。
男らしい男と言っても過言ではないくらい無口で、一言で何事も済ませてしまうようなやつ。
部下も見捨てず助けてしまう、まさにボスに相応しい男だった。
(´・ω・`)「しかも指輪はその渋澤の部屋に保管してあるっていう、最悪の事態だ」
こんなに強い男の部屋にある指輪…そう簡単に取ることはできないだろう。
しかし、逆に言ってしまえば───
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:25:17.31 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「渋澤さえなんとかすれば取れるな。
部屋にセキュリティ関係は設置してないみたいだし。
でも何があるかわからないからできれば外で奪いたいなぁ…」
パソコンの前に座ってはいるが、キーボードには触れようとせずしばらく腕を組んで悩んでいた。
(´・ω・`)「…しょうがない、あいつを使うか」
ショボンは右ポケットに入っていた携帯を取り出し、アドレス帳からある番号を呼び出し、電話をかけた。
呼び出し音が鳴っている間、煙草をつけ味わいながら待つショボン。
そしてつながったのだが、相手は無言で喋ろうとしない。
(´・ω・`)「俺だ、ショボンだ」
('A`)「なんだ、ショボンか。
どうした?」
ショボンの言っていたあいつとは、電話の相手のドクオのことだった。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:30:17.96 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「うん、すまない。
頼みがあるんだがいいか?」
('A`)「その話は危険か否か」
(´・ω・`)「俺に対しては前者だがドクオに対しては後者を保障しよう」
('A`)「よし、聞いてやろう」
(´・ω・`)「助かるよ。
とりあえずご飯でも奢るよ」
('A`)「サンキュー。
じゃあいつものところでな」
(´・ω・`)「把握、いつものとこでいつもの時間に」
そう言ってお互い電話を切る。
具体的な話をせずとも、これでわかる仲なのだ。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:35:15.32 ID:udWXl38X0
- そしていつもの時間───午後七時。
ショボンはとあるバーのドアの前にいた。
このバーのお得意様であるショボンは、いつも裏側にある個室を使わせてもらっているのだ。
バーの名前は『裏屋』、そのまんまの意味である。
ひねりがなさすぎるだろうと思いながらも初めて入ったときの感覚をショボンは忘れていない。
こんな危険な匂いがする店を切り盛りしているのは、女なのだ。
∬´_ゝ`)「いらっしゃいませ」
(´・ω・`)「やぁ、今夜も借りるよ」
∬´_ゝ`)「個室一室につき、一晩体を借りることになりますがよろしいですか?」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
∬´_ゝ`)「やーねー、冗談よ冗談。
とりあえずこれ鍵ね」
部屋の鍵を店主である姉者から受け取り、部屋へ向かおうと店の奥側にある扉を開けようとしたとき姉者が声をかけてきた。
∬´_ゝ`)「たまには相手が来るまで私と話しない?」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:40:19.21 ID:udWXl38X0
- 部屋にはいる前に引き止められるのはいつものことだった。
店には客がまったくと言っていいほどいないので、姉者も寂しいのだろう。
ショボンもそれを察していつも軽く話をしていた。
(´・ω・`)「いいよ、大事な話以外はここでできるしね。
たまには姉者さんの美しい声を肴に酒を飲むのもいいかもしれない」
∬´_ゝ`)「ふふ、ありがとう。
そんなショボンには一杯目をサービスしてあげるわ。
何を飲みたい?」
サービス精神たっぷりな姉者、こんなので経営は成り立つのだろうか?と思ったこともあるのだが…。
ここは悪まで『裏屋』。裏の関係でやっていけるのだろう。
そう、ショボンのような客のおかげで。
(´・ω・`)「とりあえず姉者さんのオススメのカクテルでもいただこうかな」
∬´_ゝ`)「わかったわ、ちょっと待っててね」
姉者はオススメのカクテルを作るための作業にはいる。
その間、ショボンは姉者の姿を見つめていた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:45:21.43 ID:udWXl38X0
- 凄く明るい茶髪を右側に一つにまとめ、毛先の方が少し巻いてある。
メイクは薄めで、姉者の元の綺麗さがわかる。
そして胸の開いた服を着ているため、そこの大きさが強調されていた。
カクテルを造っている姉者の姿は、美しい人にしか見えない。
それなのに夫、そして彼氏すらいないという。
このような仕事をしているからだろうと、ショボンは自己解決していたが、姉者から直接聞いたわけではないので詳細は不明だ。
(´・ω・`)y-(まぁ調べようと思えば調べられるけどね)
∬´_ゝ`)「じゃあ今日のショボンにオススメのカクテル、マタドールをどうぞ」
(´・ω・`)y-「ん、ありがとう…。
あと灰皿もらえるかな?」
∬´_ゝ`)「はいはい、程ほどに吸いなさいよ?」
(´・ω・`)y-「喫煙者の姉者さんに言われたくないね」
「はいはい」といいながら姉者は灰皿がある棚へ向かった。
ちなみに姉者の吸っている煙草の銘柄はマイルドセブン・ワン、これもメジャーな銘柄だ。
ワンとついているくらいなので、重くはない煙草だ。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:50:18.62 ID:udWXl38X0
- ここで簡単に説明しておくと…。
姉者の吸っているマイルドセブン・ワン、通称マイセンは1mg、ショボンの吸っているセブンスター、通称セッタは14mg。
数字を見ただけで重さがどれだけ違うか理解してもらえるだろう。
ちなみにmgというのはタールの部分を見て言うのだ。
喫煙者には常識、非喫煙者にはあまりにも無駄な知識である。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 19:55:18.27 ID:udWXl38X0
- ∬´_ゝ`)「はい、灰皿」
(´・ω・`)y-「ありがとう、これで心置きなく吸えるよ」
灰皿が来たのを確認してからショボンはいつの間にか手に持っていた煙草に火を点けた。
いつも通り、火の点いた煙草の一口目をじっくりと味わうショボン。
それを見ていた姉者が自分の煙草を取り出した。
∬´_ゝ`)「そういえば最近、いろんな銘柄を吸うのにはまってるのよねー」
(´・ω・`)y-~~「ほう、今は何を吸っているんだい?」
∬´_ゝ`)「ピース」
(´・ω・`)y-~~「…重すぎだろう」
Peace、重さは21mg。
1mgのマイセンからいきなりピースは重すぎだろう…常考。
香りはいいのだが、重くて続けて吸うことはあまりできない煙草だ。
姉者はピースを一本取り出し、火を点けて吸い始めた。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:00:15.73 ID:udWXl38X0
- ∬´_ゝ`)y-~~「最近欲求不満なのよ、相手がいないからね」
(´・ω・`)y-~~「ん?
最近相手してたやつはどうした?」
∬´_ゝ`)y-~~「あんまり吐いてくれないから捨てちゃった」
吐いてくれないというのは、情報を吐いてくれないということだろう。
姉者は体を使って情報収集をしているのだ。
勿論、必要な情報があるときだけだ。
(´・ω・`)「確か…渋澤組のやつだったっけ?」
姉者が相手していたのは、偶然にも渋澤組の男だった。
自分で調べた情報以外にも何か話が聞けないかと、姉者に少し突っ込んでいった。
∬´_ゝ`)y-~~「そうそう、結構イケメンだったんだけどねぇ。
やっぱあそこは情報に関してはしっかりしてるらしくて内部のことまでは聞けなかったの」
内部のことまでは…つまりそれ以外は聞けたということか。
頭の中で考えながら、姉者に出されたマタドールを一口飲むショボン。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:05:35.47 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「何か面白い話はなかったのかい?」
∬´_ゝ`)y-~~「そうねぇ…近々ボスが出かける話くらいかしらねぇ」
───チャンスだ。
(´・ω・`)「出かける?
旅行にでも行くのかい?」
∬´_ゝ`)y-~~「売りたい物があるらしくて、それを買ってくれる人を探す旅みたいw」
(´・ω・`)「売りたい物ねぇ…どうせ高額の物だろうね」
∬´_ゝ`)y-~~「あそこはそういう物しか持ってないからねぇ。
まぁ何を売るかまでは聞けなかったけどね」
(´・ω・`)「そうか、ありがとう」
そこで話は一区切り。
姉者は吸い終わった煙草をショボンの目の前にある灰皿で火を消し、自分の飲み物を作り始めた。
姉者のカクテルは…エンジェル・キッスだった。
∬´_ゝ`)「あーあ、今度は可愛い男の子でも捕まえようかしら」
(´・ω・`)「姉者さんならすぐ捕まるだろう」
∬´_ゝ`)「そうね…でもただ可愛いだけじゃ駄目ね。
例えば、ちょっと頼りなさそうで無愛想な人だけど、実は仕事が凄く出来る。
だけどベッドの上では…って感じの…」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:10:13.75 ID:udWXl38X0
- 姉者が語っているときに、ガチャッというドアの開く音がした。
そして姉者はお客だと思ったのでそちらを見て、いつも通りの挨拶をしようとしたのだが。
('A`)「ショボン、腹減った。
姉者、チキンのトマト煮パスタを多めで頼む。
あと飲み物はジンベースのカクテルで」
∬´_ゝ`)「ドクオ君あたりがぴったりね」
('A`;)「何がっ?!」
(´・ω・`)「確かに今の話の通りのやつならドクオがぴったりだね」
(;'A`)「だから何がっ!!」
来て早々ツッコミとはお疲れ様です、ドクオさん。
とりあえずショボンの隣に座って煙草を取り出すドクオ。
裏の仕事をしてるやつらは喫煙者が多いようです。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:15:13.82 ID:udWXl38X0
- ∬´_ゝ`)「とりあえず作ってくるから待っててね」
('A`)y-~~「把握、腹減ってるから早めに頼むよ」
∬´_ゝ`)「じゃあ早めに作るから今晩体貸して?」
('A`)y-~~「だが断る」
∬´_ゝ`) …チッ
わざとらしく舌打ちをした姉者は、パスタを作るべく厨房へと入っていった。
その後姿を見ながらショボンはマタドールを飲み干した。
ドクオは煙草を吸いながら呆然としていた。
('A`)y-~~「…お前、姉者と何の話をしてたんだよ」
(´・ω・`)「ちょっとした情報をもらってただけだ。
今回の件にも関わる情報をね」
('A`)y-~~「それならいいが…とりあえずは飯だ」
ドクオが吸っているのはラーク、12mg。
作者のイメージ的には、おっさんがよく持っている赤いパッケージの煙草である。
(´・ω・`)「姉者さーん、次のオススメよろしくー」
一杯目を飲み干したショボンは、厨房にいる姉者に聞こえるような声で注文をした。
すると奥から「はーい」という綺麗な声が聞こえた。
これで飲み物はすぐ来るだろうと思い、ショボンは次の煙草に火を点けた。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:20:20.97 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)y-~~「さてドクオ君、仕事の話をする前に質問がある」
('A`)「なんだよ」
一本目を早々と吸い終えたドクオが無愛想な声で返事をする。
(´・ω・`)y-~~「君、今彼女いないよね?
ていうか年齢=彼女いない歴=童貞だよね?」
(;'A`)「どどど童貞ちゃうわ!
彼女いない歴はあってるが…童貞は仕事のために捨てたわ!」
(´・ω・`)y-~~「ほーう。
じゃあ最近したのはいつだい?」
('A`)「…一年以上してねーよ」
(´・ω・`)y-~~「君、今幾つだっけ?」
('A`)「…二十代後半です」
(´・ω・`)y-~~「やりたいとは思わないのかい?」
('A`)「そりゃ思うが、仕事優先だ」
(´・ω・`)y-~~「成る程、ありがとう」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:25:13.93 ID:udWXl38X0
- ('A`)「ていうかお前はどうなのよ」
(´・ω・`)y-~~「素人童貞がこの僕に聞いちゃうの?」
(;'A`)「素人童貞言うな!
この際聞いてやる!!
今彼女はいますかー!!!」
(´・ω・`)y-~~「いねーよカス。
だけど腰振る女なら数え切れない程いるんだよタコ」
('A`)
∬´_ゝ`)「はい、チキンのトマト煮パスタ大盛りと、アースクエーク。
そしてショボンには私のオススメのレッド・アイねー」
(´・ω・`)「レッド・アイを出すには早すぎないかい?」
右手で煙草の火を消しながら、左手で姉者からレッド・アイを受け取るショボン。
ドクオは固まったままなので、目の前にパスタの皿とカクテルのグラスを置いた。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:30:15.28 ID:udWXl38X0
- ∬´_ゝ`)「早めの二日酔い対策がいいのよ」
(´・ω・`)「心遣いありがとうございます。
だが僕は二日酔いしない人なんでね」
∬´_ゝ`)「念の為よ、ありがたく受け取りなさい」
(´・ω・`)「ありがとう。
それと今日の部屋代の話だけど、最初の条件でいいよ」
ショボンの言う最初の条件とは、一晩体を姉者に貸すという話だろう。
それを聞いた姉者は頬を染めながら確認してきた。
∬*´_ゝ`)「本当に?
私激しいわよ?」
(´・ω・`)「大丈夫、相手するのはここで固まってる馬鹿だから。
部屋にはいったら適当に強いのジャンジャン持って来てくれればいいから。
ちなみに代金は全部僕につけといて」
∬*´_ゝ`)「わかったわ!
仕事の話が終わったらいつものアレを注文してくれればジャンジャン持って行くから!」
興奮しながらもしっかりと会話をする姉者。
これで部屋代が浮いた、とショボンは心のどこかで安心した。
姉者の部屋代は、普通に借りるとなると結構な額になるのだった。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:35:13.45 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「よし、契約成立。
つーことでドクオさっさと起きて飯食え」
('A`)「…あれ?
なんかしばらく意識が飛んでた気が…」
(´・ω・`)「確かに飛んでたからとりあえず飯食え。
姉者さん、僕にはチーズ系のサンドイッチをよろしく」
∬´_ゝ`)「了解ー、急いで作ってくるわね」
今の姉者ならサービスしてくれるだろう、ありがたい。
レッド・アイを飲みながら待つショボン。
その隣では、パスタの香りで空腹を思い出したのか、無言で姉者の作ったパスタを食べるドクオがいた。
(´・ω・`)「ドクオって細い割には大食いだよねー」
('A`)「よく女の敵って言われます」
(´・ω・`)「だろうね、でも料理好きにはモテるよ」
(*'A`)「mjd?!」
(´・ω・`)「きっと、ね」
('A`)「…もうさっさと食って仕事の話しようぜ」
(´・ω・`)「はいはい」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:40:16.48 ID:udWXl38X0
- ドクオがパスタを半分位食べ終えたところで姉者がショボンの注文したサンドイッチを持ってきた。
予想通りサービスをしてくれたようで、チーズ系のサンドイッチ以外にも二種類ほど違うサンドイッチが乗っていた。
ショボンはそのサンドイッチを「ありがとう」と一言言いながら受け取り、食べ始めた。
ドクオの食べるペースに合わせてサンドイッチとレッド・アイを口に含む。
レッド・アイに入っているトマトジュースのおかげか、姉者の腕のおかげか、サンドイッチはとても美味しかった。
食事をしながらも、姉者とドクオとショボンは世間話をしていた───まぁドクオは主にツッコミをしたり、黙ったりしていただけだけども。
そしてショボンとドクオが食事を終え、食後の一服をしていたとき、やっと仕事の話が切り出された。
切り出したのは予想外にも…。
∬´_ゝ`)「さて、そろそろ特別注文があるんじゃなくて?
飲み物はどうする?」
姉者だった。
と言っても、部屋へ案内するのはいつも姉者だったし、空気を読むのが上手いのでいつも切り出すのは姉者の役目となっているのだ。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:45:19.64 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「そうだね、僕は珈琲をもらおうか。
もちろんノンアルコールのブラックで」
('A`)「俺はこのまま酒でいいや。
でも軽くて飲みやすいのを頼む」
∬´_ゝ`)「わかったわ。
鍵はショボンに渡してあるし、部屋はいつものところだから案内はいらないわよね?」
(´・ω・`)「うん、大丈夫だよ。
それじゃあ奥に引っ込みますか」
('A`)「把握」
ショボンとドクオは煙草の火を消し、店内の奥にあるトイレの隣にある扉を開けていつもの個室を目指した。
歩いている間は会話などなく、ただひたすら静かに部屋へ向かう。
特別長い距離ではないのだが、この間にショボンは頭の中の整理をしておく。
そして整理している間にも目的の部屋に辿りつき、姉者から受け取っていた鍵で開錠し部屋へはいる。
部屋の中には大きめのソファー二つと黒いテーブルが置かれており、奥は長いカーテンで仕切られている。
以前に、そのカーテンの奥が気になりドクオが姉者に聞いたら「酔いつぶれた客のためとかのダブルベッドが置いてあるのよ」と笑顔で返された。
そのときの姉者は頬を少し赤らめ、妖しい空気を漂わせていた。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:50:16.51 ID:udWXl38X0
- とりあえず上手のソファーにはドクオが、下手のソファーにはショボンが座った。
そして座ってすぐにドアが開かれ姉者が注文した飲み物を持ってきた。
∬´_ゝ`)「珈琲とXYZと灰皿。
そしてサービスのフライドポテトでーす」
('A`)「俺弱いのって言ったのに…」
∬´_ゝ`)「いいじゃない。
せっかくだから飲んでよ」
('A`)「出されたものはちゃんと最後まで飲む主義だが…」
∬´_ゝ`)「ならよし」
(´・ω・`)「わーい、フライドポテトだー。
コーラ追加ー」
∬´_ゝ`)「あとで持ってくるわね」
追加注文を聞いた姉者は早々に部屋を退出した。
そしてショボンはフライドポテトを黙々と食べ始めた、よほど好きなのだろう。
ドクオはそれを見ながらXYZを飲み、煙草に火を点けた。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 20:55:14.01 ID:udWXl38X0
- ('A`)y-~~「んで、ショボンちゃん。
今日はどんなご依頼?」
(´・ω・`)「コーラ来るまで待ちやがれ。
あとお前、オカマバー行けばいいんじゃね?」
('A`)y-~~「さわりだけでも聞かせろよ」
オカマバーの部分はスルーして仕事の話を聞きたがるドクオ。
どうやら仕事モードに入ったようだ。
(´・ω・`)「今回は電話して金をちらつかせるだけでいい。
金は勿論こっちで準備するさ」
('A`)y-~~「内容kwsk」
(´・ω・`)「えっとねー…」
口ごもるショボン。
なぜならば…。
∬´_ゝ`)「仕事話の前に私の登場。
はい、コーラ。
んじゃごゆっくりと」
姉者が来るのがわかっていたからだ。
そして姉者が部屋を出たのを確認すると、ショボンはジャケットの内側から一枚の紙を取り出した。
その紙には画像と、少しだけ文章が書かれていた。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:00:15.91 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「今回のターゲットは渋澤組にあるこの指輪。
そして僕はこの指輪を渋澤が一人で持ち出したときに奪いたい。
その機会を作るのがドクオの今回の仕事」
三行にまとめて簡潔に伝えた。
ここからはドクオの質問責めが始まる。
('A`)「ふむ、つまり俺は渋澤に接触して指輪を買い取ると伝える。
そして日時と場所を決めてそれをショボンに伝える、ということだな?」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「そして渋澤が場所にたどり着く前にショボンが奪う、ということだな?」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「把握した。
とりあえずポテトを頬張りつつ、コーラを飲むのやめてくれないか?」
(´・ω・`)「やだ」
真剣な話をしているにも関わらず、フライドポテトを食べ続けるショボン。
本当に好きなようだ。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:05:22.13 ID:udWXl38X0
- ('A`)「んじゃとりあえずだな…。
指輪の定価と…
(´・ω・`)「紙に書いてある」
('A`)「その前金の額と準備と…
(´・ω・`)「はい、これ」
ショボンはポテトを食べながらも茶封筒をジャケットの内側から取り出し、ドクオに渡した。
ドクオはその茶封筒を開けて中身を確認する。
ざっと二百万は入っていた。
('A`)「最後に俺への報酬金は…
(´・ω・`)「はい、これ」
先ほどと同じ台詞でジャケットの内側から水色の封筒を取り出したショボン。
どんだけジャケットに物を入れているのかは秘密だ。
ドクオは水色の封筒を開けずに厚みで確認する。
('A`)「まぁ危険がないからこんなもんか。
確かにいただきました」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:10:14.27 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「他に質問は?」
('A`)「ねーよ。
何かあったらマメに連絡くれればいい」
(´・ω・`)「了解。
じゃあポチッとな」
仕事の話が終わったので、テーブルの上にあった姉者を呼び出すボタンを押した。
そして一分もせずに姉者が部屋へやってきた。
∬´_ゝ`)「どうしたのー?」
(´・ω・`)「僕帰るけど、おかわりのポテト」
∬´_ゝ`)「了解、ドクオ君はどうする?」
('A`)「今度こそ軽いの頼む」
∬´_ゝ`)「了解、すぐ持ってくるわね」
姉者は空になったカクテルグラス、珈琲カップ、フライドポテトの皿を持って部屋を出て行った。
仕事の話は終わったので、ここからは世間話オンリーとなる。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:15:13.83 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「まぁ僕はポテト食べたら帰るけど、ドクオはゆっくりしていくといいよ。
ここの支払いは全部僕につけておくように姉者さんに言ってあるし」
('A`)「ゴチになります!
じゃあたんまり飯食っていくかね、ここは美味いし」
(´・ω・`)「直接本人に言えばサービスしてくれるよ?」
('A`)「じゃあ今度言ってみるわ。
今日はサービスなくても大丈夫そうだし」
(´・ω・`)「僕の支払いだからってそれは酷いんじゃない?」
('A`)「別にいいじゃねぇかよ、仕事引き受けてやるんだし」
(´・ω・`)「そうだけ…まぁいいか、飲食店の支払いなんてたかがしれてるし」
∬´_ゝ`)「そう?
じゃあ私の分も上乗せしとこっと」
いつの間にか姉者がポテトとカクテル二つを持って入ってきていた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:20:16.74 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「カクテルが二つ…ということは姉者さんも飲むのかい?
お店の方はどうするの」
∬´_ゝ`)「閉めてきた」
('A`)「早っ」
∬´_ゝ`)「別に客なんてこないしねー、いいじゃない。
どっ君、お姉さんと一緒に飲みましょう?」
(´・ω・`)「とりあえずポテトもーらい」
∬´_ゝ`)「ちなみにどっ君に持ってきたカクテルはサムライね」
('A`)「何この新人歓迎会にでも来たような気分は」
∬´_ゝ`)「姉者、弱いカクテルの作り方わからなーい☆」
('A`)「貴様の飲んでるそれはなんだ」
∬´_ゝ`)「ウィスキーコーク、ウィスキーとコーラの割合は1:9よ」
('A`)「数秒前の台詞を思い出しやがれ」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:25:12.36 ID:udWXl38X0
- ∬´_ゝ`)「私、過去は振り返らない主義なの。
だってくだらないじゃない?」
('A`#)「俺にそれをよこせぇぇぇぇぇ!!!!!」
(´・ω・`)「ポテトうまー」
楽しそうにやり取りをしてる二人を尻目に、黙々とポテトを食べるショボン。
なんとも平和なひと時である。
そして黙々と食べているからポテトはすぐになくなった。
ショボンはポテトを食べ終え、一息つくと静かに部屋を出て行った。
それに気づいていないのか、ドクオと姉者は未だにウィスキーコークの取り合いをしていた。
('A`#)「俺は客だ!
それを飲ませろ!」
∬´_ゝ`)「口移しでいい?」
('A`#)「よくNEEEEEEEEEEE!!!!!」
まぁドクオが一方的に奪おうとしてるだけにも見えるが、そこは気にしないでおこう。
ちなみに姉者とショボンが会話していたときに言っていた「いつものアレ」というのは、ショボンがいった「おかわり」という言葉だった。
ショボンがこれを言ったときは、もう好きにしていいよという意味合いも含まれているのだ。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:30:28.43 ID:udWXl38X0
- ショボンは裏屋を出て、真っ直ぐ自宅へと向かった。
自宅といっても、あの骨董品店と同じ建物内にある。
一階は骨董品店、二階は何でも屋、そして三階が自宅となっていた。
(´・ω・`)「ただいまー」
一人暮らしなので当然返事は来るはずもなかった。
だが、ショボンの部屋の中から物音がした。
小さな音だったがショボンはそれを聞き逃さなかった。
とりあえず靴を脱ぎ、リビングへと向かう。
玄関とリビングを区切る扉を開けると、何かがショボンにぶつかってきた。
(´・ω・`)「相変わらず乱暴なお迎えだなぁ」
そう言ってショボンはリビングの電気をつけた。
電気をつけたことにより、先ほどショボンにぶつかってきた正体が明らかとなった。
ミ*゚∀゚彡
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:35:52.88 ID:udWXl38X0
- 嬉しそうにショボンに顔を擦り付ける正体は…ショボンがペットとして飼っているモモンガのふーであった。
ミ*゚∀゚彡「(まぁご主人には聞こえないのが残念だけど、実は喋れます!)」
ふーは、ショボンが何でも屋を開業したときから飼われているアメリカモモンガという種類のモモンガだった。
ショボンは一人暮らしということもあって、ふーの事を部屋の中でだけ放し飼いをしていた。
そしてふーは頭がいい子なのか、悪さはせずに主人であるショボンにひたすら甘えるだけという可愛いやつだ。
(´・ω・`)「よしよし、餌は食べたろうけど少しおやつでもあげるか」
ミ*゚∀゚彡「(やった!)」
ふーは喜んでショボンの肩まで登り、ショボンの顔にほお擦りをした。
(´・ω・`)「相変わらず可愛いなぁ。
ふーがいる限りは絶対彼女なんていらないね」
ショボンはふーに溺愛していた。
大きな黒い瞳に可愛らしい小さな耳、そしてもふもふの尻尾。
溺愛しないはずがない、可愛いんだもの。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:40:12.34 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「おーやーつーはー…ミルワームでいいか」
肩にふーを乗せたまま、ふー関連の餌や道具が置かれているリビングの一角へ向かう。
そこには白いカラーボックスがあり、一番上にはふー専用のかごが置いてあり、一段目から三段目まで色々な物が入っている。
その中からピンセットを探し出し、台所へ向かう。
ピンセットを軽く洗い、冷蔵庫からミルワームの入った容器を取り出す。
そして蓋を開けてピンセットでミルワームを取り出し、ふーへ差し出した。
ミ*゚∀゚彡「(ミルワーム!美味そう!いただきます!)」
美味しそうに頬張るふー。
グロテスクな光景なんて言ってはいけない、溺愛者からすると、これさえも可愛いのだから。
一匹目のミルワームをすぐに食べてしまったふーへ、もう一匹差し出すショボン。
(´・ω・`)「今ので最後だからね」
そう言ってショボンは容器に蓋をして冷蔵庫にミルワームを戻し、使ったピンセットを綺麗に洗って元の場所へと戻した。
(´・ω・`)「さて、僕は着替えるからちょっと離れててね」
ショボンはふーを手に乗せて、その手をカーテンレールへと差し出した。
ふーはショボンの言っていることをちゃんと理解しているため、カーテンレールへ飛び移り、そこで大人しくしていた。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:44:12.21 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「相変わらずいい子だ、流石ふーだな」
愛するペットをベタ褒めするショボン。
着ていた服を全て脱ぎ捨て、そのままシャワーを浴びるために浴室へと向かった。
ミ*゚∀゚彡「(男のシャワーシーンなんて書いてもしょうがないから省略!)」
一通り洗い終えたショボンが腰にタオルを巻いてリビングに戻ってきた。
ふーはそれを見て、肩に飛びつきたくてうずうずしているのだが、まだ服を着ていないため我慢していた。
ショボンはそのふーの様子に気づき、一言声をかけてあげた。
(´・ω・`)「今すぐ服着てくるから待っててね」
そう言ってショボンはリビングの隣の部屋にある寝室の扉を開けて、タンスの中にある服を適当に漁り着替えた。
黒の普通のパジャマだった。
着替え終わってから床に置いたバスタオルを拾い、リビングへ戻り先ほど脱ぎ捨てた服を拾い、脱衣所にある洗濯機への中へと放り投げた。
脱衣所から台所へ戻り、冷蔵庫の中にあった缶のミルクティーを取り出し、リビングに置いてある二人掛けのソファーへと腰を落ち着かせた。
そのタイミングを見計らい、ふーがショボンの膝に飛んできた。
ミ*-∀-彡「(ご主人の膝あったけー…)」
膝にしがみついたかと思ったら、そのままよじ登ってきて太もものあたりで丸くなっていた。
缶のミルクティーを飲みながらふーの頭を人差し指だけで撫でるショボン。
ショボンはこのひと時が一番好きだった。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:47:13.14 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「さて、明日ドクオが生きていることを祈って寝ますかね」
裏屋に置いてきたドクオのことをほんの少しだけ思い出して、すぐ仕事のことを考える。
ドクオは仕事が速いから明日にでも渋澤組に接触して、取引の日時を決めるだろう。
そうするとショボンはドクオからの電話をいつでも取れるようにしておかなければならない。
そのために明日は早起きしておく必要があるだろう。
膝で丸くなっていたふーを優しく手のひらに乗せて、寝室へと向かう。
寝室には大きなダブルベッドがあり、枕もそれ相応に長い。
その枕の上にふーを乗せて、ショボンは隣で眠りについた。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:50:31.66 ID:udWXl38X0
- 次の日、朝八時にアラームが鳴り、それによってショボンは目を覚ます。
ふーを起こさないようにベッドから降りてトイレへ向かい用を足す。
そしてそのまま台所へ向かい、朝食の用意をする。
パンの上にピザソースを塗り溶けるチーズを乗せて、トースターで焼く。
その間に珈琲の準備、ショボンの朝ごはんはこれで終了である。
これで足りないときは常に冷蔵庫にはいっているヨーグルトを食べる。
(´・ω・`)「一人暮らしの男なんてこんなもんさ。
僕は料理が苦手だし、ふーが満足してくれていればそれでいいしね」
この男、溺愛しすぎじゃないかと思う。
(´・ω・`)「そっかー、中の人は溺愛する人がいないのかー。
そりゃそうだよね九月にフr
やめて、マジでやめてください。
本当に暴露とか泣いちゃう。
(´・ω・`)「ふー最高と言ったら許してやろう」
ふー様最高です、モモンガ大好きです。
(´・ω・`)「よろしい。
ちょうどトーストもできたし食べるかな」
お食べくださいませ、ショボンさん。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:53:12.17 ID:udWXl38X0
- ということで淹れ立ての珈琲を味わいながらトーストを少しずつ食べるショボン。
テレビもラジオもついていないためあまりにも静かだが、ふーが起きたら困るという思いだけで静かな朝食を過ごした。
一人の朝食というものは何事も起きることなくすぐ終わってしまう。
ショボンも同様で、十分もせずに朝食済ませて寝室へ向かった。
寝室のドアを開ける音でふーがピクリと反応する。
ミ*゚∀-彡「(んー…朝かぁ…?)」
(´・ω・`)「ふー、おはよう。
もう朝だよ?
おいで、ご飯あげるから」
ミ*゚∀゚彡「(わーい!)」
ショボンの呼びかけで完璧に目覚めたふーは、ベッドで助走をつけてドアのところにいるショボンに飛びつく。
胸にしがみつき、その後ゆっくりと肩へ登り、朝の挨拶かのように顔へ頬擦りをする。
(´・ω・`)「おはよう、ふー」
それに応えるかのようにショボンは挨拶をしながら、ふーの頭を優しく撫でてやった。
ミ*-∀-彡「(ふにゅー…)」
撫でながら、ショボンは台所へ行き冷蔵庫を開けて野菜を少しとミルワームを三匹ほど手にとった。
そしてそれらを左手に乗せ、右手でふーに与えていく。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:56:12.11 ID:udWXl38X0
- ミ*゚∀゚彡「(野菜もミルワームもうまうま)」
ふーは新鮮な野菜とミルワームを、大好きなご主人から与えられご機嫌で食べていく。
好き嫌いもしないので、こちらも早々と朝食を済ませてしまう。
(´・ω・`)「さて、じゃあ僕はお店に行く準備するから遊んでてくれ」
朝食を終えたふーはショボンの肩の上でまったりとしていたのだが、ショボンがソファーへと無理やり降ろした。
そして寝室へ向かったショボンは適当な服を選ぶ、もちろんポケットが多い物を。
簡単に着替えを済ませて、寝室においてある姿見で全体を見て変な所がないかを確認して部屋を出る。
携帯と鍵と煙草を持って、きっとふーがまだいるであろうソファーへと歩み寄った。
ソファーの上を見てみると、やはりふーはそこにまだいて、ちょこんと座っていた。
(´・ω・`)「それじゃあ僕はお店に行くから、お留守番よろしくね?」
ミ*゚∀゚彡「(把握した!
いってらっしゃい!)」
声に出ているわけではないが、ショボンにはちゃんと伝わっているようだ。
なんせ一人と一匹は見詰め合っているのだから。
お互いに伝わったことがわかると、ショボンは玄関に向かって歩き出し、ふーはソファーの上で再び寝始めた。
靴を履いて、携帯と煙草の位置を確認して、玄関のドアを開けて外へ出てしっかりと施錠して、一階にある骨董品店を目指して階段を降りていった。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 21:59:12.41 ID:udWXl38X0
- 骨董品店内にはいってすぐに、キッチンへと向かい珈琲を淹れる。
そしてそれを持ってカウンターへ行き、昨日磨いていた時計をカウンターの上に出して座った。
(´・ω・`)「今日も暇つぶしとして時計磨くかねー」
そもそもこの骨董品店はすべて、ショボンの趣味でかき集めた物である。
どれもシンプルなデザインな物があり、ショボンにぴったりといえるものばかりであった。
本人も気に入ってるようで、気が済むまで商品一つ一つを何日もかけて磨いている。
今磨いている時計も結構お気に入りのようで、ショボン本人がつけたいと思ったくらいだ。
だがショボンは、身につけているより眺めている方が好きということで店に並べている。
それを気に入って買ってもらえれば、嬉しい半分寂しさもこみ上げてくる。
珈琲を少しずつ飲みながら、ひたすら時計を磨くという作業は朝から午後一時近くまで続いた。
作業の手を止めさせたのは珈琲であった。
(´・ω・`)「…珈琲を淹れてくるか」
飲みながら作業をしていたため、大きめのカップに入っていたはずの珈琲はかなりの時間はかかったものの一滴も残らずなくなっていた。
新しい珈琲を淹れるために台所へ向かおうと立ち上がったとき、ショボンのズボンの右ポケットに入れていた携帯が鳴り始めた。
それを落ち着いて取り出し、電話を取る。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:02:13.33 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「もしもし」
('A`)「昨日はごちそうさん。
そして死ね」
(´・ω・`)「生きてたんだからいいじゃない」
('A`)「堪能はさせてもらった。
だが死ね」
(´・ω・`)「何を堪能したわけ?」
('A`)「死ね」
(´・ω・`)「用件それだけなら切るけど」
電話の相手は、昨日裏屋で会ったドクオだった。
語尾につけるのが癖になってしまったかのように「死ね」という言葉を連呼している。
昨日姉者と何があったかは…ショボンには想像がついていたが、ここでは言わないことにしておこう。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:05:12.19 ID:udWXl38X0
- ('A`)「渋澤と約束取り付けたぞ」
(´・ω・`)「kwsk」
('A`)「明日の午後二時、俺の店で取引だ。
前金はお前からもらった半分を渡しておいた」
(´・ω・`)「なんで全額じゃないのさ」
('A`)「半分は俺が慰謝料としていただきました」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
('A`)「約束取り付けてやったんだからいいじゃねーかよ。
とりあえず俺の仕事はこれで終わりだよな」
(´・ω・`)「あぁ、その件に関してはありがとう。
必ず店には行かないようにするから安心してくれ」
('A`)「了解。
とりあえず適度に頑張れやー」
言いたいことだけ言ってドクオは一方的に電話を切った。
仕事のやり取りはいつもこのような感じである。
学生やカップルの電話ではないのだから、簡単に済ませるのが当たり前になっているのだ。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:08:12.29 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「…さて、珈琲淹れよっと」
とりあえずショボンは、カウンターの上に置いていた時計をいつもの引き出しにしまい、台所へ向かい新しい珈琲を淹れた。
その後はカウンターに戻らず、パソコンの部屋へと真っ直ぐ向かった。
手馴れたてつきでパスワードを入力し、エンターキーを押す。
パソコンのある部屋へ入り、椅子へ座って珈琲を飲む。
何も言葉を発せずに、ゆっくり珈琲を飲み続けた。
そして珈琲が飲み終えた頃にやっと一言呟いた。
(´・ω・`)「いつも通りでいっか」
この男、楽観的である。
明日の仕事もいつも通りにこなすと決めたショボンは、立ち上がり、部屋にロックをかけて骨董品店のカウンターへと戻る。
再び時計を磨き始めるのかと思いきや、カウンターに置かれていた時計を磨くための道具などをしまい、手に持っていた珈琲カップを台所へ置いた。
そして、カウンターの上に一つだけ残しておいた骨董品店の鍵を持って、店の出口へと歩いていった。
(´・ω・`)「明日は仕事だからこっちはもう閉店にしてゆっくり休ませてもらうかね」
骨董品店のドアにかかっている札をCLOSEDにひっくり返し、内側から鍵を閉める。
そして店内の窓に設置されているカーテンを全て閉め、台所にある窓のカーテンも閉める。
カーテンを全て閉めたことと、全ての施錠をしたことを確認して二階へ上がる。
二階は何でも屋の部屋だが、そこの部屋に入っていき、そこは窓が閉まっているのかの確認だけをしてすぐに出た。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:11:12.43 ID:udWXl38X0
- そして愛しいペットが待つ三階の自宅へと戻っていった。
煙草と一緒に入れていた左ポケットから自宅の鍵を取り出し、自宅のドアを開ける。
(´・ω・`)「ふー、ただいまー」
まだ見えぬふーへ、帰ってきたことを知らせる言葉を発しながら靴を脱いでリビングへ向かうショボン。
今日は何の物音もしないので少しばかり違和感を覚えたが、とりあえずリビングのドアを開けた。
(´・ω・`)「…ふー?」
ドアを開けても飛びついてこないふー。
少し辺りを見渡して、変な所がないことを確認して、ソファーへ近寄ったらそこには丸い物がいた。
(´・ω・`)「お昼寝中か…邪魔しないでおくか」
現在の時刻は午後三時。
普段なら帰ってこない時間なので、ふーはいつも静かに過ごしているのだろう。
流石いい子だ。
ミ*-∀-彡
ふーを起こさないように静かに歩いて寝室へ向かい、ラフな格好へ着替えるショボン。
そしてソファーへ向かい、できる限り静かに座ってふーを抱きかかえるように持ち上げた。
起きるかと思いきや、ふーはショボンの指をぎゅっと掴み、甘える赤子のようにすやすやと眠っていた。
(´・ω・`)「…」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:14:18.47 ID:udWXl38X0
- 表情には出さないが、ショボンは内心凄く喜んでいるし、癒されていた。
人の温かさではないが、生き物の温かさに触れられることに喜び。
ふーの可愛い寝顔に癒されていた。
左手に乗っているふーを右手の人差し指で優しく撫でてやる。
そんなことをしばらくしていると、ふーが静かに起きた。
ミ*゚∀-彡「(んー…なんか暖かい…)」
まだ少し寝ぼけているようで、動きは鈍い。
手のひらの上で座る体制になってから、今自分がいる位置に気づく。
ミ*゚∀゚彡「(いつの間にかご主人がいる!
おかえりー!)」
(´・ω・`)「ただいま、ふー。
今日は早く仕事が終わったからいるんだよ」
ミ*゚∀゚彡「(そうだったのか…起こしてくれればよかったのにー…)」
ふーはショボンの指を掴み、頬を摺り寄せる。
本当に甘えん坊のようだが、愛があるゆえの行動だった。
(´・ω・`)「やっぱり可愛いな…。
ふーを飼ってよかったよ」
ミ*゚∀゚彡「(そう言ってもらえると嬉しいよ!)」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:17:12.27 ID:udWXl38X0
- (´・ω・`)「久しぶりに三時のおやつでもあげようか」
ミ*゚∀゚彡「(やった!)」
ふーを左手に乗せたまま台所に行き、冷蔵庫を開けて林檎を取り出した。
果物ナイフを取り出すのが面倒なショボンは、その林檎を大きめにかじり、それを右手で取り出してそのままふーに与えた。
(´・ω・`)「今日は林檎だ、一緒に食べようね」
ミ*゚∀゚彡「(うん!)」
林檎を受け取ったふーは両手で持って嬉しそうに食べる。
それを見ながらショボンは再びソファーへ戻り、かじりかけの林檎を食べ始めた。
ふーが林檎を食べ終わってしまったら、また少しかじってあげるという行為を少しの間続け、ゆっくりとした時間をすごした。
そしていつの間にか夕方になり、夕飯時になった。
(´・ω・`)「もうこんな時間か…」
時刻は六時すぎ。
夕飯の準備をし始めてもおかしくない時間だが、ショボンはそれをしようとはしなかった。
仕事の前日はいつも夕飯は食べないのだ。
(´・ω・`)「僕は明日早いからそろそろお風呂にはいるよ」
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/04(金) 22:20:43.08 ID:udWXl38X0
- そういってふーをソファーに置き、ショボンはシャワーを浴びに行った。
いつものように服をそこら辺に脱ぎ捨てながら浴室に向かう。
バスタオルは脱衣所に置いてあるので問題ない。
体の隅々まで洗って、髭もしっかりと剃ってから浴室から出てきた。
一人暮らしなので浴槽にお湯を張ることがない。
なので十五分程度で出てきてしまう。
バスタオルでしっかりと体全体についた水を拭き取り、パジャマを着るべく寝室へと向かう。
バスタオルをそこら辺に投げ捨て、タンスから適当なパジャマを取り出しすぐさま着替える。
着替え終わったら今日はベッドにはいって寝るだけだ。
あえて寝室の入り口であるドアを開けてきたので、寝ることをふーに伝える。
(´・ω・`)「ふー、早いけど寝るからおいで」
それだけでふーは、リビングから飛んできた。
ベッドに着地すると枕元まで走っていき、枕の上で寝る体制にはいる。
(´・ω・`)「明日は大事な仕事だから朝早いけど、ふーは寝てていいからね。
それじゃあおやすみ」
ミ*゚∀゚彡「(おやすみ、ご主人)」
一人と一匹は深い眠りについた。
- 2 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:20:01.24 ID:rgsZj9C30
- 次の日、午前七時にアラームが鳴る。
いつもの電子音で目が覚めるショボン。
すぐに体を起こして台所へ向かう。
野菜サラダと、何もつけていないただの食パンを用意し、食べ始める。
朝食と一緒に飲んでいるのは牛乳だった。
黙々と食べて朝食を済ませて食器を片付け、朝のシャワーを浴びに行く。
昨日より簡単に済ませて、寝室に仕事用の服を取りに行く。
いつもよりポケットの数が多いジャケットを羽織り、仕事道具をしまっていく。
道具をしまったあと、どこに何を入れたかを確認する。
忘れ物はない、作戦は全て頭に叩き込んである、ぬかりはない。
全て確認し終えた所で、ふーには何も告げずに自宅を出る。
自宅を出て向かったのは渋澤組の事務所があるビルの近くだ。
朝から渋澤の動向を伺って、タイミングよく接触するようだ。
しかし時刻はまだ午前九時。
取引の時間である午後二時まではまだまだ時間がある。
だがショボンは、渋澤は絶対早くに事務所を出る確信があった。
午後十時、予想通り渋澤がビルから出てくる。
- 3 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:23:01.01 ID:rgsZj9C30
- _、_
( ,_ノ` )「今日は大事な取引だから誰もついてくるんじゃねぇぞ」
一同「わかりました!」
_、_
( ,_ノ` )「それじゃあいってくる」
一同「いってらっしゃいませ!」
部下であろう者達が渋澤を見送る。
そして渋澤に言われたとおりに誰もついていこうとしない。
渋澤のことを信頼しているからであろう。
(´・ω・`)「…よし、やつは絶対散歩をしてから向かうはずだ」
ショボンが早めに渋澤がビルを出ることを知っていたのは、前もって調べていた情報によってわかったものだ。
渋澤は耳で仕入れた情報だけではなく、自分の目で見た確かな情報を仕入れるためによく歩き回るのだ。
それゆえに趣味は散歩とされている。
昔からよく歩いていたらしく、目撃情報が多かったためショボンはこの情報を信用して作戦を立てたのだ。
渋澤が歩いていき、ビルを離れ始めた所でショボンの尾行が始まった。
今日の取引場所に指定されているドクオの店はこの町の中心部にはなく、本当の町外れにある。
なので散歩するには十分すぎるくらいの機会だった。
- 4 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:26:00.74 ID:rgsZj9C30
- 渋澤は煙草を吸いながら取引場所へ向かう。
ショボンはばれないように、そして接触のチャンスを見つけるために尾行を続けた。
一時間ほど歩いて、人気がない道に入っていった渋澤。
そろそろ狙うべきか…と思っていたショボンの耳に、ドスの聞いた声が響いた。
_、_
( ,_ノ` )y━・~ 「俺の後ろを歩くな…」
急に立ち止まった渋澤に対してショボンは物陰に隠れていたが、その言葉でばれているのがわかったので大人しく姿を見せた。
(´・ω・`)「やれやれ、これでも尾行に自信はあったんだけどね。
いつから気づいてたのさ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「俺を舐めるなよ?
ビルを出てから数分で気づいたさ、変な視線にな」
(´・ω・`)「変な視線とは失礼だな」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「変な視線じゃなければ俺は気にしないさ、いつものことだからな。
さて、貴様は俺に何の用だ?」
- 5 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:29:00.64 ID:rgsZj9C30
- 流石渋澤、と言っておこうか。
いつも散歩をしているうえに、見た目のせいでいつも見られていたので視線の種類がわかっていたようだ。
一般人から見る渋澤とショボンから見る渋澤、前者は怯えるような珍しい物を見るような視線で、後者は獲物を狙う視線。
次からは気をつけなきゃいけないな、と考えながらもショボンは渋澤の質問に答える。
(´・ω・`)「率直に言おう、貴方の持っている指輪をもらいたい」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ほう…この指につけている指輪かい?」
渋澤は煙草を持っている左手の親指を指す。
そこにはシンプルな太目のリングがつけられていた。
(´・ω・`)「違うね、アンティークのペアリングを持っているだろう?
それを寄こせと言っているんだ」
アンティークのペアリングと聞き、渋澤は少し反応を見せる。
間違いなく持っていることを確信するショボン。
そのまま会話を続ける。
- 6 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:32:06.40 ID:rgsZj9C30
- (´・ω・`)「僕、無駄な争いは疲れるから嫌なんだよね。
貴方は強いらしいしね、だからタダでそれくれないかな?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「…お前俺が誰だかわかってるんだろう?
それなら口の利き方がなってないんじゃないか?」
(´・ω・`)「合ってると思うよ?
だって、タダでくれなくても僕が貰うことになるしね」
渋澤が手に持っていた煙草を路上に捨て、靴底で火を消した。
そして少しだが、眉間に皺がよっていた。
_、_
( ,_ノ` )「とりあえずこの指輪は渡せないな。
そうだな…一千万準備するなら考えてやろう」
(´・ω・`)「やーだね、そんな無駄金出したくないね。
さっさとよこせやコラ」
今の言葉で渋澤の額に青筋が浮かんだ。
_、_
( ,_ノ` )「小僧…俺を怒らせたことを後悔するなよ?」
(´・ω・`)「お手柔らかによろしく」
戦闘開始の挨拶が終わった所ですぐさま渋澤は懐から拳銃を取り出した。
それに合わせてショボンもウエスト部分に差し込んでおいた拳銃を取り出す。
そしてほぼ同時に一発はなった。
_、_
( ,_ノ` )「…」(・ω・` )
- 7 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:35:01.26 ID:rgsZj9C30
- 見詰め合う二人、続く沈黙。
しばらくしても、どちらも倒れなかった。
_、_
( ,_ノ` )「…やるな小僧」
(´・ω・`)「貴方も流石ってところだね」
_、_
( ,_ノ` )「次の一発で決める…」
(´・ω・`)「じゃあ僕もそうしよっと」
瞬きさえ許されない時間が続く。
ずっと見つめあい、微動だしない二人。
そこに缶を蹴ったような音がどこからともなくして、それが二人を動かすきっかけとなった。
パンッパンッ
二発銃弾が放たれた音がした。
二人の拳銃からは煙が見える。
数秒固まったあと、膝をついたのは…。
_、_
( ,_ノ` )「てめぇ…最初から足を狙ってたな?」
渋澤だった。
右足に銃弾を受けたらしく、そこからは血が流れていた。
そして、その銃弾を放ったショボンは左胸を抑えているが倒れてはいない。
- 8 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:38:01.30 ID:rgsZj9C30
- (´・ω・`)「当然だ、胸に指輪があったらどうするんだよ」
左胸を少しさすってから手を離す。
ジャケットに穴は開いているが、血は流れていなかった。
_、_
( ,_ノ` )「…なんでてめぇは死なねーんだよ」
(´・ω・`)「企業秘密です」
_、_
( ,_ノ` )「いちいち苛つく野郎だな…」
(´・ω・`)「ていうか僕さ、殺すつもりはないんだよね。
殺すのって一応犯罪だしさ、今回は奪えばいいだけだし。
だから死にたくなかったら指輪くれない?」
_、_
( ,_ノ` )「…だが断る」
(´・ω・`)「じゃあ死んでも知らないからね?」
_、_
( ,_ノ` )「それはこっちの台詞だ…!」
- 10 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:41:01.57 ID:rgsZj9C30
- 渋澤は足首辺りに仕込んでいた短刀をショボンに向かって投げた。
ショボンは冷静にジャケットの左胸側に手を突っ込み何かを取り出し、その短刀をはじいた。
そして手に持っていたものを渋澤に向かって素早く投げた。
_、_
( ,_ノ` )「てめっ…!」
(´・ω・`)「どうだい、僕のカードの切れ味は」
カランカランという音のする方向を見てみると、そこにはプレートが落ちていた。
四角いプレートはよく見てみると、一辺以外全てが研がれていて包丁のような色合いをしていた。
そう、これがショボンの隠し玉だった。
_、_
( ,_ノ` )「死なない理由はそれだったのか…」
(´・ω・`)「結構痛いけど役に立つからねー。
愛用させてもらってるよ」
_、_
( ,_ノ` )「だがそれだけじゃ俺は倒せないぜ?」
(´・ω・`)「倒すつもりないし」
_、_
( ,_ノ` )「じゃあさっさと死ね…!」
膝をつきながらも拳銃でショボンを狙う。
左胸からプレートを取り出して投げたということは、もうそこには心臓を守る物は何もないと思った渋澤はひたすら左胸を狙って発砲する。
ショボンはそれを上手く物陰を使いながらかわしていく。
- 11 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:44:01.67 ID:rgsZj9C30
- _、_
( ,_ノ` )「どうしたぁ?
指輪はいらねーのかー?」
口元に笑みを浮かべながら弾を補充する渋澤。
それを物陰から見るショボン。
(´・ω・`)「(流石に強いな…)」
_、_
( ,_ノ` )「さっさと出て来いやっ…」
ドスのきいた声を発する渋澤。
ショボンは自分の拳銃に弾を少し補充し、飛び出す。
(´・ω・`)「仰せの通りに」
パンッ
ショボンが一発撃って、渋澤がそれを地面を転がりながらかわす。
その転がる先にショボンはたくさんあるポケットからプレートを出しては投げていくという作業を走りながら繰り返した。
そしていつの間にか渋澤とショボンの距離は近づき…。
_、_
( ,_ノ` )「なっ…」
(´・ω・`)「やっぱり持ってきてよかったー」
ナイフを渋澤の利き腕である右腕に刺していた。
そのナイフから手を離し、もう一本ナイフを取り出し左手を刺そうとした瞬間渋澤が動く。
- 12 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:47:01.08 ID:rgsZj9C30
- _、_
( ,_ノ` )「調子にのんなよ!」
(´・ω・`)「あっ」
ショボンが危険を察知したため、最後のナイフをさらに取り出し、両手にあるナイフを両方とも渋澤の体へと刺した。
刺された場所からは大量の血が流れ出し、渋澤は何も言わずに倒れた。
(´・ω・`)「やっべ、死んじゃった」
ナイフから手を離し渋澤の死を確認する。
そして少し考え込むポーズをとり、出した結論は。
(´・ω・`)「まぁいっか。
指輪持ってさっさと帰るか」
いたってシンプルなものだった。
渋澤のジャケットの内側を漁り、指輪がはいっているであろうケースを取り出す。
そしてそのケースを開けて中身が依頼されていた指輪であることを確認する。
(´・ω・`)「…依頼完了」
一言呟き、ショボンは早々と立ち去った。
- 13 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:50:06.60 ID:rgsZj9C30
- 自宅へ向かう前にショボンは裏屋へと向かった。
現在の時刻は午後一時、結構時間がかかったものだ。
∬´_ゝ`)「あら、こんな時間に来るなんて珍しい」
(´・ω・`)「うん、ちょっとシャワー貸してほしいんですよ。
あと電話もお願いします」
∬´_ゝ`)「わかったわ。
とりあえず電話はそこのを使っていいから。
電話してる間に私はシャワーの準備しておくわ」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
言われた通りにショボンは、カウンターの上に置いてある電話の受話器を持って、とある番号をダイヤルしていく。
そして呼び出し音がなり、二回鳴ったところでつながった。
(´・ω・`)「俺だ、ショボンだ。
仕事終わったから」
('A`)「おう、お疲れさん」
(´・ω・`)「じゃあ、また今度も頼むよ」
('A`)「危険がない仕事なら任せろー」
用件だけ伝えて電話を切る。
そしてもう一度受話器をあげて、違う番号をダイヤルして相手が出るのを待つ。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/06(日) 16:53:01.38 ID:rgsZj9C30
- (,,゚Д゚)「はい、もしもし」
(´・ω・`)「もしもし、何でも屋のショボンですが」
(,,゚Д゚)「あぁ、あんたか。
依頼の方はどうなった?」
(´・ω・`)「無事終わりましたよ。
なので明日以降にウチに来てください。
今回の金額は五百万でお願いします」
(,,゚Д゚)「…わかった。
本当にありがとう」
(´・ω・`)「いいえ、僕は依頼をこなしただけです。
それではまた明日以降に」
依頼主であるギコに、依頼完了の連絡を入れて受話器を置く。
そこで一息つくと、姉者がタイミングを見計らったかのように現れた。
- 15 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:56:01.55 ID:rgsZj9C30
- ∬´_ゝ`)「シャワーの準備が出来たわよ。
バスタオルと替えの下着だけ置いといてあげたから」
(´・ω・`)「ありがとうございます。
ついでにシャワー浴びてる間に注文していいですか?
お腹減ってるんですよ」
∬´_ゝ`)「いいわよ、何がいい?」
(´・ω・`)「がっつり食べれるものをよろしくお願いします」
∬´_ゝ`)「りょーかい、じゃあシャワー浴びてらっしゃい」
仕事終わりに裏屋でシャワーを浴びるのはいつものことなのだ。
だから姉者は「どうしたの?」などと聞かずにすんなりとシャワーを貸してくれる。
そしてお得意の絡みなどもない、姉者なりの気遣いなのだろう。
(´・ω・`)「ふぅ、さっぱりした」
∬´_ゝ`)「ご飯できてるわよー」
(´・ω・`)「ん、ありがとうございます。
今日はなんですか?」
- 16 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 16:59:03.20 ID:rgsZj9C30
- ∬´_ゝ`)「ハンバーグとポテトの山盛り、飲み物はコーラ」
(´・ω・`)「流石姉者さん、僕の好みをわかってますね」
∬´_ゝ`)「当たり前でしょ、何年付き合ってると思ってるのよ」
(´・ω・`)「いつも本当にありがとうございます」
∬´_ゝ`)「いーえ。
いい金づるを手放すわけにはいかないからね」
(´・ω・`)「今のは聞かなかったことにしましょう。
それじゃ、頂きます」
できたての大き目のハンバーグとポテトを黙々と食べるショボン。
姉者はそれを少し見ながら店内を片付けていた。
言葉を交わさなくても相手が何を望んでいるかわかっている姉者、まるで妻のようだ。
ひたすら食べることに集中していたため、すぐに食事は終わった。
(´・ω・`)「…ご馳走様、今日も凄く美味しかったです」
∬´_ゝ`)「お粗末様」
(´・ω・`)「さて、じゃあ御代は?」
∬´_ゝ`)「大体三千円ね」
(´・ω・`)「大体って…まぁいいか。
はい、三千円」
- 17 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:02:00.93 ID:rgsZj9C30
- ショボンは姉者に食事代を確認してから、ズボンの後ろポケットに入っていた二つ折りの財布から三千円を抜き出し、カウンターに置いた。
それを姉者は手に取り、金額を確認してから営業スマイルで「ありがとうございました」と言った。
(´・ω・`)「それじゃあ僕は帰ります」
∬´_ゝ`)「わかったわ。
たまには仕事以外の時も来てねー」
(´・ω・`)「わかりました、それではまた」
挨拶を交わしてから、ショボンは裏屋を出て自宅へと向かって歩く。
その間は仕事のことなど頭になく、ただ疲れたと思うだけだった。
(´・ω・`)「…今日はすぐ自宅に戻るか」
一階の骨董品店、二階の事務所に寄らずに三階の自宅へと真っ直ぐ向かうショボン。
鍵を開けて靴を脱ぎ捨て、急ぎ足でリビングへと向かう。
リビングのドアを開けるときのガチャッという音で、ふーが反応した。
ミ*゚∀゚彡「(ご主人、おかえりなさい!)」
(´・ω・`)「ふー、おいで。
君を抱かせてくれ」
傍から聞いたら、性欲の溜まってる男の台詞にしか聞こえないだろう。
だが、ショボンは一刻も早くふーに癒されたいだけであって、そんな下心はまったくなかった。
ふーは、すぐさまショボンに飛びついた。
- 18 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:05:01.26 ID:rgsZj9C30
- (´・ω・`)「…今日も疲れたよ。
だからちょっと一緒にお昼寝しようか」
ミ*゚∀゚彡「(わかった!
ふーは添い寝するねー)」
ふーの頭を撫でながら寝室へと向かう。
寝室にはいって、ふーをとりあえず枕元に置いたらショボンは今着ている服を全て脱ぎ捨て、全裸でベッドの中へと入った。
そして横になりながらも、ふーの頭を撫でる。
(´-ω・`)「今日はね、良い事をしてきたんだよ」
ミ*゚∀゚彡「(流石ご主人!)」
(´-ω-`)「これでまた、良い事をした回数が増えたよ…良い夢が見れそうだ。
おやすみ、ふー」
ミ*゚∀゚彡「(ゆっくり休んでね、ご主人)」
ショボンはふーの頭から手を離し、深い眠りへと引きずり込まれていった。
そしてショボンは昼寝と言いながらも、朝まで目を覚ますことはなかった。
- 21 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:10:01.19 ID:rgsZj9C30
- (´・ω・`)「…寝すぎたか」
ショボンが目を覚ましたのは午前八時。
十二時間以上寝たことになる、明らかに寝すぎだろう。
(´・ω・`)「今日は一日骨董品店で時間を潰しますかねー」
ベッドで状態だけを起こし、伸びながら言った。
そして枕に視線を移してみると、そこにふーはいなかった。
流石に十二時間も寝るモモンガはいないだろう。
(´・ω・`)「とりあえずご飯食べるかね」
ベッドから降りて着替えてから台所へと向かう。
リビングを通り、台所にある冷蔵庫を開けようとすると、冷蔵庫の上にふーがちょこんと座っていた。
ミ*゚∀゚彡「(ご主人やっと起きたか!
おはよー!)」
(´・ω・`)「ふー、おはよう。
中々起きなくてごめんね、今ご飯にするよ」
ミ*>∀<彡「(やった!
もうお腹ぺこぺこなんだよ!)」
- 22 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:13:09.72 ID:rgsZj9C30
- 昨日眠りについたのは夕飯前だったので、ふーは夕飯を食べれずにいたのだ。
そのせいで凄くお腹が減っているようで、我慢できずに冷蔵庫を開けようと四苦八苦していたのだ。
なんとも可愛らしいやつである。
ショボンは冷蔵庫から野菜と果物を取り出し、それらを適当な場所に置いてからまな板と包丁を取り出す。
まな板に野菜を置いて切っていく。
きゃべつ、とまと、きゅうりを切って綺麗に器に盛り、仕上げに小さめのコーン缶を取り出して汁をしっかりきってから乗せる。
果物は林檎を小さめのサイズに切り、小さめの皿に乗せた。
どうやらふーのために切ったようだ。
出来上がったサラダと林檎の乗った皿をリビングにあるテーブルの上に持って行き、また台所へ戻る。
次に冷蔵庫からプレーンヨーグルトを取り出し、器に少し出し、スプーンを刺す。
そして飲み物として牛乳をコップに注ぎ、リビングのテーブルへ持っていった。
(´・ω・`)「ふー、ご飯食べるよー」
ミ*゚∀゚彡「(はーい)」
ショボンに呼ばれて、未だに冷蔵庫の上にいたふーは、そこから飛んでショボンの背中に飛びついた。
そこから肩によじ登り、テーブルの上に飛ぶ。
(´・ω・`)「よし、じゃあいただきます」
ミ*゚∀゚彡「(いただきます!)」
- 24 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:16:01.05 ID:rgsZj9C30
- そこからは静かな朝食が始まった。
会話ができるわけではないので、お互いひたすら食べてるだけだった。
たまにショボンが食べてるサラダをふーがつまみ食いする程度だ。
量もさほど多くなかったため、朝食の時間はすぐに終わりを迎えた。
(´・ω・`)「ご馳走様、ふーもちゃんと全部食べれたね」
ミ*゚∀゚彡「(ご主人も一緒に食べてくれたからね!
ご馳走様でした!)」
テーブルの上に並んでいる空の皿などをすべて重ねて台所へ持っていく。
それらをすべて洗ってから、ショボンはシャワーを浴びに行った。
シャワーを浴びてさっぱりしたところで、寝室へ戻り服を着る。
今日は昨日に比べてポケットの数が少ない服を選んでいた。
ポケットの数が多いときは仕事のときだけのようだ。
(´・ω・`)「今日はアクセサリー類を磨くかね…」
今日からは、骨董品店でギコを待ち続ける日が続く。
報酬の準備もあるので、すぐには来ないとは思ったが日にちを決めていないため、店にはいなくてはいけない。
そして今回の依頼が指輪だったということもあって、時計からアクセサリー類に磨く物を替えたのだ。
着替え終わったショボンは、寝室・リビング・台所を簡単に確認をして、窓などの戸締りも確認する。
そして携帯と財布、煙草にライターと鍵を持って出る準備をする。
- 26 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:19:00.90 ID:rgsZj9C30
- (´・ω・`)「じゃあふー、僕は仕事に行ってくるから今日もいい子でお留守番しててね」
ショボンはソファーで大人しくしていたふーに声をかける。
ミ*゚∀゚彡「(わかった!
いってらっしゃーい)」
(´・ω・`)「いってきます」
玄関を出て、真っ直ぐ一階の骨董品店に向かうショボン。
店内に入ってから、カーテンを全てあけて、表のドアにかかっていたCLOSEDの札をOPENにひっくり返す。
そしてカウンターに戻るときに、店内に並べてあるアクセサリーを2、3個持っていく。
カウンターのところにある椅子に座り、カウンターの周りに設置されている引き出し等からアクセサリーを磨く専用のクロスや液を取り出す。
そこからはひたすら磨くことに集中した。
午前九時、開店してから四時間程集中して作業をした。
そして午後一時、そろそろお昼にしようかなと思い、ショボンは立ち上がろうとした。
しかし、来客を知らせるドアの音がそれをさせてはくれなかった。
(´・ω・`)「いらっしゃいませー」
(,,゚Д゚)「こんにちは」
(´・ω・`)「やぁ、ギコさん」
- 28 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:22:01.56 ID:rgsZj9C30
- 来客として現れたのは、先日何でも屋に依頼してきたギコだった。
彼はアタッシュケースを左手に持っていた。
(,,゚Д゚)「依頼完了の報告が早く聞きたくてね。
今は大丈夫か?」
(´・ω・`)「もちろんですよ、二階の事務所でお待ちください」
(,,゚Д゚)「わかった。
あぁ、あと今日は用が済んだらすぐ帰るから珈琲はいいよ」
(´・ω・`)「わかりました、それなら僕もすぐに行きますね」
(,,゚Д゚)「おう、わかった」
ギコは前と同じように店内の右手にある階段を登り、事務所へ向かった。
ショボンはカウンターの上に並んでいる道具やアクセサリーなどを引き出しに適当にしまって、ギコのいる事務所に向かった。
もちろん、ジャケットの内側のポケットに指輪を入れて。
二階の事務所のドアを開けて、上手にギコが座り、下手にはショボンが座る。
(´・ω・`)「さて、依頼されていた物ですが…。
こちらでお間違いないですか?」
ショボンはジャケットの内側から指輪の箱を取り出し、テーブルの上に置いた。
それをギコは手にとり、中身を確認するために蓋を開けた。
- 30 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:25:01.51 ID:rgsZj9C30
- (,,゚Д゚)「おぉ…間違いないよ!
ありがとう…」
(´・ω・`)「いえいえ、僕は依頼されたことをこなしただけですから」
(,,゚Д゚)「大変だったろうに…本当に無茶言って悪かったよ。
これが依頼料だ、ちょっと色をつけといたが気にせず受け取ってくれ」
(´・ω・`)「わざわざありがとうございます」
ギコはアタッシュケースから分厚い茶色の封筒を取り出し、テーブルの上に置く。
ショボンは静かにそれを受け取り、中身を確認せずにジャケットの内側へしまった。
ショボンは枚数をわざわざ数えなくても、厚さで金額がわかるのだ。
(´・ω・`)「今回の依頼でちょっと渋澤組と色々ありまして…。
とりあえずしばらくは身の回りに気をつけながら生活してください。
報告はそれくらいです」
(,,゚Д゚)「わかった、本当にありがとう」
ギコは指輪を大事そうにアタッシュケースにしまってから、頭を下げてショボンにお礼を言った。
ショボンはそれを見て少し微笑んだ。
- 32 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:28:01.17 ID:rgsZj9C30
- (,,゚Д゚)「また何かあったらここを頼ることにするよ、信頼できるしな」
(´・ω・`)「それは凄く嬉しいことですね。
でもやはり、あまり頻繁に通わないほうがいいですよ。
一応危ない店ですからね」
(,,゚Д゚)「わかってるよw
どうしてもっていうときだけ来ることにするさ」
(´・ω・`)「わかりました。
ちなみに次来るときは、今回のときよりサービスしますよ」
(,,^Д^)「あぁ、ありがとう」
(,,゚Д゚)「それじゃあ俺はそろそろ行くぜ」
(´・ω・`)「またのご来店をお待ちしております」
お決まりの台詞を言って、二人の依頼の話は終わった。
ギコは立ち上がり、ドアの前でショボンに軽く頭を下げて出て行った。
(´・ω・`)「礼儀正しい人だったなぁ…」
ショボンも立ち上がって、一階の骨董品店のカウンターの席へと戻った。
そこからまたアクセサリー磨きを再開させようとしたときに、店のドアが開いた。
- 33 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:31:00.96 ID:rgsZj9C30
- ('A`)「よう」
(´・ω・`)「おや、どうしたんだい?
まさかいつものアレかい?」
今度の来客はドクオだった。
そしてそのドクオに対してショボンは驚きを見せずに、疑問を投げかける。
('A`)「そうだ、一ヶ月ほどお世話になるぜ。
なんせ今回は相手が渋澤組だったからな。
怖くてしょうがねーよw」
(´・ω・`)「わかったよ。
とりあえずいつも通り家事全般を頼むよ。
必要な物があるときはカードか現金渡すから」
('A`)「把握、しっかり守ってくれよな」
今回のショボンの仕事は渋澤組と絡みがあった。
そしてドクオはその渋澤組に直接連絡をいれた。
なので、ギコやショボンだけでなくドクオにも危険が及ぶ可能性があるのだ。
ショボンがドクオに仕事を頼んで、それが終わったあとは毎回ドクオがショボンの家にしばらく泊まりにくる。
ショボンに守ってもらうためだ。
- 34 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:34:01.34 ID:rgsZj9C30
- ('A`)「つーかぶっちゃけさ、俺ここに住んだ方が早くね?
最上階は空いてるんだろ?
家賃払うから住ませてくれよ」
ショボンがいる建物は実は四階建ての屋上つきのビルなのだ。
ドクオの言うとおり四階は空室なのだが…。
(´・ω・`)「お断りします」
ショボンはいつも断り続けている。
('A`)「なんでだよ…」
(´・ω・`)「お前が上にいるとうるさいんだよ」
ドクオは大音量でエロゲをやったりしているので、それが嫌で断り続けているのだ。
ショボンの部屋にはふーもいる、なので悪影響を及ぼさないか心配でしょうがないのだ。
('A`)「じゃあ俺が三階に住むかr
(´・ω・`)「家具移動させんの面倒だし」
('A`)「俺が手t
(´・ω・`)「ガリガリのてめぇが何言ってんだよ、ぶち殺すぞ」
('A`)「本当に申し訳御座いませんでした」
- 36 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:37:01.43 ID:rgsZj9C30
- これがいつものやり取りだ。
ドクオはどうしてもショボンの近くにいて、常に安全な状態でいたいのだが、ショボンがそれを拒否する。
ドクオは諦めるということを知らず、毎回来るたびに色々言っていく。
ショボンはどうしても拒否をしたいため、なんだかんだ理由をつけて断っていく。
なんだかんだ言って、仲はいいのだ。
ショボンはこれからもこの仕事を続けていく。
そしてドクオにまた何かを頼むことがあるだろう。
その度にこのやり取りは繰り返される。
これはこれで一つの楽しみだ、とショボンは密かに思っていた。
- 37 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:39:01.42 ID:rgsZj9C30
- この何でも屋がある裏通り。
何もなければ静かな場所。
揉め事があれば銃声が飛び交うほどうるさくなる場所。
それでもショボンは気に入っている。
ここが自分の一番の居場所であると思っているから。
( ´∀`)「ぶえっくしょい!」
たまに通る人のくしゃみが、店の中にまで聞こえるほどの静かな通り。
今日は静かに過ごせる日だな、とショボンは心の中で思った。
くしゃみするような、普通の人が通っているのならば揉め事は起きていないということだから。
ドクオが何か言っているの聞き流しながら、ショボンは今日も静かに骨董品を磨き続けた。
何でも屋に依頼が来るのを待ちながら。
−完−
- 39 名前: ◆/EuDX7Lz.M 投稿日:2009/12/06(日) 17:40:22.54 ID:rgsZj9C30
- 支援、アドバイス等ありがとうございました。
あと、本当に申し訳なかったです。
今回はお題消化でした
お題:
_、_
( ,_ノ` )y━・~ 「俺の後ろを歩くな・・・」
風邪っぴき( ´∀`)
(´・ω・`)「やっべ、死んじゃった」
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