lw´‐ _‐ノvと不思議な贈り物のようです

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:40:00.76 ID:CpH/aLT10


クリスマス・イブの夜、
家の大広間ではパーティーが行われます。

幼年学校もこの日はお休み。
なんたって、明日にはクリスマスです。


シューは朝から、髪にこてを当ててもらったり、
可愛い服を用意して、鏡の前でくるくると回ってみたりと、大忙し。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:42:52.12 ID:CpH/aLT10

ピンクと白の可愛らしい服を着て、シューはにこにこ。
上機嫌で、

lw´‐ _‐ノv ねえ、この服どう?

なんて、召使に聞いて回ったりします。

(‘_L’) とてもよくお似合いでございますよ、お嬢様

執事のフィレンクトさんは、シューにそういいながらも、ばたばたと早足で歩き回ります。


というのも、朝から大忙しなのは、執事の彼も同じことで、

表の通りに馬車のがたがたいううるさい音がして、だれかが屋敷に到着するたびに、
玄関の大きな扉の前にすっとんでいっては、

( ^ω^) おいすー

と気楽に入り込んでくる客の傍に立ち、うやうやしくコートと帽子を預かりながら、

(‘_L’) ブーン様のおなりで御座います

と、家中に聞こえる大きな声で、来客を告げなければならないのです。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:45:13.09 ID:CpH/aLT10


lw´‐ _‐ノv あっ、ブーンおじさん!

( ^ω^) おおシューかね、大きくなったもんだ

ふとっちょのブーンおじさんは、シューの親戚。
この日は親戚の一族みんなが、シューのお家の大きな屋敷に集まる習慣です。

執事のフィレンクトさんの声が、次から次へと大広間へと抜けていく。
いまや夕闇も迫り、来客は、ひっきりなしです。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:47:50.76 ID:CpH/aLT10

( ^ω^) シューちゃんは可愛いねえ

lw´‐ _‐ノv ほんと?!

( ^ω^) ほら、そのベロアのショールなんか、いい色じゃないか

lw´‐ _‐ノv えへへ

肩にかけた濃い紅色のショールは、シューのお気に入りでした。
つやつやしたベルベットの光沢が大好きなのです。


じつはこの生地は、ブーンおじさんが、
おととしのクリスマスにプレゼントとしてシューにあげたものだったのですが、

二年も前のことなんて、シューはもう、すっかり忘れてしまっています。

だって、シューは小さな子供なのですから。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:51:05.49 ID:CpH/aLT10

ブーンおじさんに可愛いと褒められたシューは、うれしくなって、
来る客来る客みんなに、自分のおめかしした姿を見てもらおうと、
どんどん、玄関のほうに進んでいきました。

するとだれかが、シューの襟首を後ろからつかみました。

('A`) こらっ じゃまをするな

lw´‐ _‐ノv あっ 兄さん

('A`) いまはお客様のお出迎えで、みんな忙しいんだ。
    お前は奥に引っ込んでいなさい

lw´‐ _‐ノv でも、でも

もんくを言おうとしたシューの頭を、ドクオ兄さんはげんこをつくり、
ぽかりと一つぶちました。

lw´‐ _‐ノv いたーい!

シューはしぶしぶ、大広間へと帰っていきました。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:53:37.63 ID:CpH/aLT10

やがて、盛大なパーティーが始まりました。

たくさんの料理がはこばれ、皆にお酒が配られました。
楽団は楽しげな曲を演奏し、人々の輪がいくつもでき、
大広間は笑い声であふれました。

かわいいシューは、
どこへいっても大人気です。

('、`*川 あらシューちゃん、可愛いわねえ

lw´‐ _‐ノv えへへ

川 ゚ -゚) どれ、プレゼントをやろう

lw´‐ _‐ノv わーい!

クーおばさんは、とても大きな、きらきら光る綺麗な石をくれました。

川 ゚ -゚) エジプトに行って来たみやげだ。

lw´‐ _‐ノv ほえー

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:55:57.95 ID:CpH/aLT10

('A`) これはクー様。ご無沙汰しております

川 ゚ -゚) あらドクオさん。お久しぶり

lw´‐ _‐ノv ねえ、おにい。これもらった!

シューは、親指の爪ほどもある大きな虎目石を、
両手でささげもって、ドクオのほうに突き出しました。

('A`) …! こんな高価なものを!
    ク、クー様! そんな、こんなものを頂くわけには…!

川 ゚ -゚) ほほほ。いいのよ、エジプトではそんなものごろごろ出てくるんだから。
     クリスマスプレゼントよ

('A`) あ、ありがとうございますクー様。
    ほらシュー、お前もお礼をいうんだ!

ドクオはシューの頭をわしづかみにして、むりやり下げさせます。

lw´‐ _‐ノv いてて、いてて

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 20:58:31.32 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv なにすんだよ、いてーよう

('A`) こらっ! 何て口のきき方をするんだ!

ドクオはまた、こぶしで、シューのあたまをぽかりとやりました。
シューはむくれて、頭を両手で押えて、ほほをふくらませます。

('A`) 皆様申し訳ありません、妹のしつけが行き届いてませんで…

川 ゚ -゚) いえいえ、いいんですのよ

('、`*川 シューちゃんはまだ小さいんですから

ほほほ、と笑う輪を抜け出して、
シューはぷくっとふくれたまま、
とことこと、別のところに歩いていきました。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:00:43.14 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv ちえっ

lw´‐ _‐ノv ドクにいなんか、きらいだ

lw´‐ _‐ノv ああしろこうしろと、いじわるばっかり言って

シューは早足であるいて、
パーティーの大広間をくぐっていきます。


いまや、パーティーは大盛り上がり。
人々の顔はお酒で赤くなり、陽気な話し声があふれています。

(‘_L’;) ああ いそがしい、いそがしい

ふだんは落ち着いた執事のフィレンクトさんも、
今日ばかりは、飲み物を持ったり、召使に指示を出したりとおおいそがし。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:03:07.71 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv あれっ…?

ふとシューは、きがつきました。
かべぎわにぽつんと、しょぼくれた紳士がひとり、すわっています。

lw´‐ _‐ノv ショボンおじさん、どうしたのかな

このにぎやかなパーティーでも、
だれとも話さず、ひとりぽつんと座っています。

シューはショボンおじさんの前に、とことこと歩いていきました。


lw´‐ _‐ノv おじさん、こんばんは

(´・ω・`) おお、シューちゃんか。こんばんは

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:06:03.60 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv おじさんは、みんなとお話しないの?

シューがそういうと、
ショボンおじさんは、かなしそうに笑いました。

(´・ω・`) ははっ。
      おじさんには、誰もお話してくれる人がいないんだ

lw´‐ _‐ノv えっ どうして?

(´・ω・`) 我がショボン家は、ちょっとした投資に失敗して、いまや破産寸前なんだ。
      だから僕に近づいて話しかけたりしたら、借金の申し込みをされたり、
      もしかしたら抵当債権や船荷証券や何やで、
      破産のあおりを食うんじゃないかって、みんな恐れてるんだ

lw´‐ _‐ノv は…さん……? なにそれ

(´・ω・`) シューちゃんには、ちょっと難しい話しだったかな

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:08:03.26 ID:CpH/aLT10

(´・ω・`) つまりおじさんは、もうすっかりお金をなくしちゃったんだ

lw´‐ _‐ノv おかね、ないの…

シューは、ショボンおじさんの悲しそうな顔を見ていると、
なんだか、きのどくな気持ちになりました。

lw´‐ _‐ノv じゃあ、おじさんは、ことしはクリスマスプレゼントをくれなくて、いいよ。
      おかね、ないんだものね

(´・ω・`) おっと、プレゼントか。プレゼントね

じつをいうとショボンは、このときまですっかり、
シューにあげるプレゼントのことなど、忘れてしまっていました。

(´・ω・`) しまったなあ…

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:10:09.23 ID:CpH/aLT10

(´・ω・`) そうだ

ショボンは上着の内ポケットから、おもちゃの人形をひとつ、とりだしました。

lw´‐ _‐ノv わあ!

その人形は、兵隊の赤い服をきていました。
とてもきれいで、よくできた人形でした。

金糸や銀糸できらきらに縫いこみの入った、手の込んだ縫製で、
腰の剣や手に持っているマスケット銃も、本物そっくりです。

(´・ω・`) これを、プレゼントしよう。
      これは、おもちゃ輸入業者である僕が持っている、最高の見本品なんだけど、
      事業のほうは、もうだめだからね……

lw´‐ _‐ノv これ、くれるの?!

シューは目をきらきらさせて、人形をみつめています。
さっき、プレゼントはいらないよと言った事なんか、もう、とうに忘れているのです。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:12:35.83 ID:CpH/aLT10

(´・ω・`) インドのふしぎな香木をつかって、フランス一の人形師さんが作った人形なんだよ

lw´‐ _‐ノv こう…ぼく?

(´・ω・`) シターズウッドと言って、それはそれは古くて珍しい、いい香りのする木なんだ。
      ああ、インド駐在時代を思い出すなあ。
      この木はね、インドでは神様の木と言われていて、
      現地のいいつたえでは、この木にお願い事をすれば、どんな願いでもかなえて……

ショボンおじさんが、目をほそめてインドの思い出話のことを話しても、
もう、シューの耳には届いていません。

シューは、兵隊のお人形のりっぱなカイゼルひげを、つんつんとつついています。

lw´‐ _‐ノv わあ… わあ…

シューはもう、ことばも出せずに、もらった人形をかかげたり、おろしたり、
あちこち眺めるのにいそがしいのです。

それは、パーティーの大広間で、
ろうそくの芯切り(これが、大きなパーティーではとても大変なのです!)をはじめた執事のフィレンクトさんより、
シューにとってはいそがしい仕事だったのです。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:15:33.45 ID:CpH/aLT10

てく、てく。
シューはもらった人形を両手にもって、うっとりとながめながら歩きます。

人形の着ている、立派な服のよそおいは、
この大広間を埋めるたくさんの紳士・淑女のひとたちの、
かざりたてた豪華な格好よりも、いっそうすばらしいものです。

きっと、この人形は、名のある将軍にちがいありません。

lw´‐ _‐ノv うふふ

こんな素晴らしいおもちゃをもらって、
シューはうれしくなって、ひとりにやにやと、笑っていました。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:18:03.02 ID:CpH/aLT10

目の前に、すっと、影ができました。
シューが顔を上げると、ドクオ兄さんが、立っていました。

シューは人形に熱中するあまり、
気づかずに、ドクオのほうにむかって歩いていたのです。

('A`) ん? 何だ、何を持っている?

lw´‐ _‐ノv あっ、これは

シューはおもわず、人形を後ろ手に、かくしました。

('A`) 何だ。見せなさい

ドクオはらんぼうに、シューの手をとって、前にひきだしました。
その手には、立派な兵隊の人形が、握られていました。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:20:09.30 ID:CpH/aLT10

('A`) あっ…

人形をひとめみて、ドクオも、言葉を失いました。
それがあまりにも、きらきらとして、立派なものだったからです。

('A`) こ、こんな高価なもの、どうしたんだ

lw´‐ _‐ノv …ショボンおじさんに、もらった

('A`) なにっ! ショボンおじさん!

ドクオのかおが、さっと、けわしくなりました。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:22:03.15 ID:CpH/aLT10

('A`) だ、だめだだめだ!
    あのおじさんから、こんなものをもらってはだめだ!

ドクオはいって、人形をとりあげようとしました。

('A`) みろ、この人形がつけている勲章なんか、本物の金が使われているぞ。
    こんな立派な人形、いったいいくらすると思っているんだ!
    ショボンおじさんがいまお金に困ってるのは知ってるだろう、
    こんな高価なものを貰ってはだめだ! 返してきなさい!

そういって、ドクオはシューの手から、人形をとろうとします。

だけど、シューは、もうこのときばかりは、兄さんの言うことを聞く気はありませんでした。
すっかり、この兵隊の人形が好きになっていたのです。

lw´‐ _‐ノv いやだ! いやだ! 返すのいやだ!

シューも、人形をとられまいと、ひっぱりかえしました。

そうして、ひっぱりあいをしたら、
人形の左の手が、ぷちっと、もげてしまいました。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:24:03.36 ID:CpH/aLT10

('A`) あっ

lw´‐ _‐ノv あっ


('A`) ……

lw´‐ _‐ノv ……

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:29:26.51 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv うわあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!

シューは、おおごえで、なきだしました。


そしてシューは、
人形と、取れてしまった左の手をもって、
パーティー会場の大広間から、外の廊下へととびだしました。

そうして、長い廊下をいちもくさんにかけて、
階段をあがって、
また二階の長い廊下をかけて、つきあたりの自分の部屋へと飛び込みました。


ばたん!
うしろでに、らんぼうに、扉をしめました。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:31:55.36 ID:CpH/aLT10

ドアをしめると、遠くにパーティーの喧騒が聞こえます。

静かなシューの部屋ですが、
ときおり誰かの笑い声が、大広間から廊下を通って、ちいさく届きます。


シューはしくしく泣きながら、とことこと部屋をよこぎって、自分のベッドに座ります。

そして、人形と、折れてしまった左の手を、
そっと、サイドテーブルに置きました。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:36:18.36 ID:CpH/aLT10

lw´; _;ノv うう うう

シューは、折れてしまった人形の腕を、
なんとか修理しようと、やってみました。

そのままつなげてみようとしましたが、
まるい玉になっているところが、ぽっきりと折れていて、つながりそうにありません。

lw´‐ _‐ノv てが おれちゃった…

それでシューは、このりっぱな姿をした人形がかわいそうに思えてきたので、
また、涙があふれてきました。

ふとおもいついて、シューは裁縫箱からはさみを持ち出してきました。
そして、自分の服の胸元の、白いフリルのはしのほうに、はさみを入れました。

lw´‐ _‐ノv うんしょ、うんしょ

白い絹を細長く切って、包帯をつくろうと、がんばります。

シューは子供なので、まだはさみの使い方が、下手です。
あれこれとやっているうちに、たくさんの白い裁ち屑ができてしまいましたが、
それでもなんとか、包帯が一巻き、できあがりました。

シューはそれで、人形の折れたうでを、
まるでけがをした軍人さんがするみたいに、くるくると巻いて、くっつけました。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:40:16.67 ID:CpH/aLT10

ひとまずにもくっついた腕を見て、シューはすこし、安心しました。
包帯をまいたおもちゃの兵隊を、シューはベッドわきのサイドテーブルに寝かせます。

しばらくそのままで、兵隊の人形を見つめていましたが、
やがて、

lw´‐ _‐ノv けがをして寝てるのに、からだがひえちゃ、いけないな

と思いました。


そこでシューは、こんどは自分の肩にかけていたお気に入りの紅色のベロア、
そのはじっこに、はさみを入れました。

そうしてとれた端切れに、ああでもない、こうでもないと、さまざまな形にはさみを入れ、
ようやく、人形にぴったり合う大きさの、立派でふかふかしたふとんができました。

lw´‐ _‐ノv これでよし


シューは、サイドテーブルにちらばった、赤や白の裁ち屑をよせあつめて敷布団をつくり、
その上に人形をのせ、
さらにその上から、できたばっかりの、つやつやの紅色のふとんをかけてあげました。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:44:45.05 ID:CpH/aLT10

一仕事を終えて、シューはふう、と息をつきました。


夜はすっかり遅くなっていました。

部屋の中には明かりがありません。
大広間からあかりを持ってくるのを、忘れたのです。

真っ暗で、月明かりの寒々しい青だけが、窓から差し込んできています。

とおくの大広間では、まだパーティーが続いているようです。


ひとりでぽつんと部屋にいると、
シューはきゅうに、悲しい気持ちになってしまい、
また涙がでてきてしまいました。

lw´; _;ノv うっ うっ

手のとれてしまった兵隊さんがかわいそうだったし、
それにいまは、いつもいつも口うるさくていじわるをする、ドクオ兄さんのことを、思い出したのです。

シューは、しくしくと泣きながら、

lw´; _;ノv あんないじわるおにいなんか、いらない!
       もっと優しいおにいが欲しい!

と、おもいました。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:46:38.41 ID:CpH/aLT10





そのとき、壁の柱時計が、12時の鐘を打ちました。





52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:49:05.38 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv ……?

目の前で寝ている兵隊さんが、シューと同じ大きさになっています。

lw´‐ _‐ノv あれ。
       兵隊さんが、大きくなった…

ふと気づいてシューが顔を上げると、
ペン立てに立っている羽ペンが、みあげるほどの大きさです。

lw´‐ _‐ノv ……

あたりをぐるぐる見渡すと、
まるで砂漠のかなたの地平線かなにかのように、サイドテーブルは端で切れており、
その上にシューが、ちょこんとたっています。

部屋の壁の、みなれたピンクの壁紙が、
空の景色のように、とおくに、とおくに見えています。


そうです。
シューは、小さくなっていたのです。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:52:05.72 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv わあ

シューは、びっくりしました。
そうして、きょろきょろとあたりを見回しました。

lw´‐ _‐ノv まわりが、おおきくなった!

シューがなおも、あたりを珍しげにながめまわしていると、
ふと、テーブルのはしに、何かのかたまりを見つけました。

よくみると、それはお昼のおやつにたべちらかした、ビスケットのくずでした。

lw´‐ _‐ノv わあ。ビスケットくずが、こんなに大きい

シューはよろこんで、そちらのほうに駆け寄りました。
いまのシューの背たけよりもはるかに大きい、ビスケットくずです。

シューはその端にかじりついてみました。
あまあいおかしの味が、口いっぱいに広がりました。

lw´‐ _‐ノv これぜんぶ、お菓子だ!

ただのビスケットくずが、まるでお菓子のおうちのように、大きいのです。

こんなに大きいビスケットが、ぜんぶ自分のものだと思うと、
シューはたちまち、気分がたのしくなりました。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:54:28.56 ID:CpH/aLT10

シューは、ビスケットくずをすこし取って、ポケットにいれました。
それから、じぶんの部屋のなかで、ぼうけんをはじめました。

インクつぼの山を越えました。
ティーカップの湖に、残っていた紅茶を飲みました。
サイドテーブルから勇気をふるって飛び降り、じゅうたんの平野を歩きました。


床に下りて、ベッドの下に入ったシューは、

lw´‐ _‐ノv あっ ここは、まっくらだ

と思いましたが、
なにやら、ドレスのポケットが、ぼんやりと緑に光っています。

lw´‐ _‐ノv なんだろう?

と取り出すと、
それはクーおばさんにもらった虎目石でした。

lw´‐ _‐ノv わあっ


ほんのり緑色に光るその石は、
ベッドのしたのまわりの暗闇を、照らし出してくれました。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:56:47.43 ID:CpH/aLT10

シューはその光る石をあかりにして、ふだんは覗きもしない、ベッドの下を探検しました。

そこには、たくさんの発見がありました。

ベッド下の奥深くに落としてしまって、忘れてしまっていたシリング銀貨が、やっとみつかりました。
上からのぞきこむと、その銀色のコインの表面に、シューの顔が鏡のように映りました。

ほつれた糸くずが、まるで立派な船に、縦横に使われているロープのように積み重なっています。

lw´‐ _‐ノv たのしいな たのしいな

シューはどんどん、ベッドの奥のほうへ進んでいきました。


そして、壁際まできたとき、

lw´‐ _‐ノv …なんだろう?

床から、ちょうどいまのシューの背の高さくらいの穴が、
壁にぽっかりとあいていたのです。

lw´‐ _‐ノv こんなところに、どうくつ?


シューは光る石をかざして、きょうみしんしん、
その穴のなかに入っていきました。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 21:59:29.12 ID:CpH/aLT10

ちょうど、そのころ。

('A`) わるいこと しちゃったな

妹をなかせてしまったことを、
ドクオ兄さんは、とっても反省していました。

それで、自分がだいじにしていた、べつのおもちゃの兵隊を、
かわりにシューにあげようと、おもいつきました。


ドクオのおもちゃ箱にあるのは、ごうかな服や、すばらしい細工はない、ふつうの兵隊の人形ですが、
これは五人ぐみの人形だし、それにこれは、ドクオがとても大切にしていたおもちゃです。

('A`) でも、シューの人形を、こわしちゃったしな…

この五人ぐみの人形をあげようと、ドクオは、シューの部屋を訪れたのです。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:01:56.30 ID:CpH/aLT10

ところが、シューの部屋は、もぬけのからです。

('A`) あれっ?

そして、おどろいたことに、シューのベッドのわきのサイドテーブルでは、
シューのりっぱな人形が立ち上がり……

いや……

それはもう、人形ではありませんでした。
それは、きびきびと軍人らしい動作で動いている、小さな人間でした。

('A`) えっ

と、みるまに、ドクオの持っていた五人の人形も、動き出します。

('A`) うわっ

ドクオはびっくりして、人形から手をはなします。

五人の赤い服の兵隊さんは、とつぜん手をはなされて、
どさどさと折り重なって、ベッドのふとんの上に落ちました。

そして、腰をさすりながら起き上がり、みんなでドクオに非難するような視線をむけました。

('A`) えっ、あっ、あ、ごめん……

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:05:16.12 ID:CpH/aLT10

シューのりっぱな人形は、どうやら、兵隊たちの隊長さんのようでした。

カイゼルひげの隊長さんは、
ドクオのもってきた五人の人形にてきぱきと指示を出して、隊列をくませました。

そして、号令一下、おもちゃの兵隊たちの隊列は、ベッドの下へと駆けていきます。

('A`) お、おい、どこへ行くんだ…?

ドクオは兵隊たちのあとをついて、走りました。

そうです。
いつしか、ドクオの体も、ちいさくなっていたのです。


そのとき、兵隊たちと、ドクオの耳に、
遠くから女の子の悲鳴が聞こえてきました。

('A`) !!!

ききまちがえようのない、シューの声でした。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:08:01.46 ID:CpH/aLT10

隊伍をくんだ六人の兵隊は、ベッドの下をよこぎって、
壁際にあいている、例の穴の前まできます。
彼らはそのまま、ためらわずに、穴の中に飛び込んでいきました。

ドクオもそのあとをついて、飛び込みました。

なかは、くらい洞穴でした。

壁際に、シューが座っています。
小さくなって、震えています。

('A`) シュー!

シューは、おびえきった目を、ドクオに向けました。

('A`) シュー! どうした!

シューはふるえる指で、洞窟の奥のほう、暗闇の中をさします。

闇の中に、鋭く赤い小さな目がいくつか、光っています。
それはじっと、不気味なくらいじっと、こちらを見据え、狙っているような目です。

('A`) そうか!

ドクオはぴんときました。
この洞窟は、はつかねずみの穴なのです。

シューは、ねずみに襲われて、壁際までおいつめられてしまったのです。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:11:27.37 ID:CpH/aLT10

ドクオはシューにかけより、たすけおこして、
そして、じりじりと闇の中から迫ってくるねずみたちを、きっ、とにらみつけました。

lw´‐ _‐ノv おにい、こわい

シューやドクオは、自分たちよりずいぶん大きな体をしているねずみを、見上げました。
こんなばけもののようなやつらに襲い掛かられては、二人はきっと、ひとたまりもないでしょう!

('A`) だいじょうぶだ ぼくが ついてる

ドクオは、いさましいことをいいながらも、
体の大きなねずみたちが、それもたくさん、暗闇の奥でうごめいている気配があったので、
体がかたかたと震えるのを、とめることができません。


そのときです。

人形の隊長と兵隊たちが、シューとドクオをかばうようにして、
二人の前に、横一列に並びました。

隊長がなにごとか、号令をかけました。

すると、部下の五人の兵隊がそれにこたえて、
肩にかついでいたマスケット銃を、ねずみたちにむけて、水平にかまえました。

('A`) ん?

lw´‐ _‐ノv えっ

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:14:01.52 ID:CpH/aLT10

隊長はフランス語で、なにごとか、叫びました。
そのとたん、

ばーん!! ばばーん!!


号令にあわせて、五丁のマスケット銃がいっせいにはっしゃして、
あたりに、ものすごい音をひびかせます。

('A`) うわーっ!

lw´‐ _‐ノv ひゃあーっ!


ものすごいおととひかりに、ねずみたちはびっくりして、ひるみます。
そのすきに、人形の隊長は部下に命令して、
みんなのマスケット銃に、着け剣をさせています。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:16:10.07 ID:CpH/aLT10

隊長はドクオに、身振りでなにかを伝えようとしています。


「ここは我々にまかせて、

 きみは妹さんをつれて、

 はやくこのねずみ穴から出なさい」


みぶりの意味がつたわると、ドクオは大きく頷きました


隊長はバックルの金具を操作して、じぶんの腰から大きなサーベルをはずし、
それを、ドクオにてわたしました。

「これで、妹さんを守りなさい」

と、みぶりで示しながら。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:18:21.02 ID:CpH/aLT10

('A`) シュー、明かりをよこしなさい

ドクオはシューから、緑色に光る虎目石を受け取り、
そしてシューの手を引いて、ねずみ穴の出口へと走りました。

後ろでは、体勢をたてなおしたねずみたちと、
兵隊たちがどたばたと戦っている音がしています。

lw´‐ _‐ノv まって、まって おにい

シューは、こわさのあまり足がふるえて、うまくはしれません

('A`) はしるんだ、もうすぐ出口だぞ

ドクオは片手にシューの手をにぎり、もう片手に虎目石で行く手をてらして、
けんめいに走りました。

そしてようやく、二人はねずみ穴から外に出て、
元のシューの部屋に帰ってくることができました。

ところが…

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:21:14.35 ID:CpH/aLT10

ところが、ねずみはがんらい、ずるかしこい生き物です。
まして、ねずみのなかでもいちばんえらい、ねずみの王様ともなると、
そのなかでもいっとう悪知恵が働くものです。

一度ねらったえものは、けっして逃がしません。

lw´; _;ノv おにい…

('A`) あっ!!

なんと、あなのでぐちのわきには、いっぴきの大きなねずみの王様が、
まちぶせしていたのです。

ねずみの王様はこっそりと、
用意してあったべつのねずみ穴からぬけだして、
シューたちが穴から出てくるのを、まちうけていたのです!

ねずみが、シューにとびかかります!

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:23:39.72 ID:CpH/aLT10

ドクオはとっさに、手にもっていた虎目石を、
ねずみの鼻っ面に、おもいきり投げつけました!

ねずみは鼻っ柱に石をぶっつけられて、痛そうにキッと鳴いて、ひるみました。

('A`) 今だ、にげろっ!

ドクオはふたたび、シューの手を引いて、走り出しました。
ねずみの王様も、痛い鼻っ柱をおさえつつも、
こんどこそ逃がすものかと、すごい勢いで追いかけてきます。

lw´; _;ノv おにい、もう 走れないよう

('A`) くそっ!

ドクオは、シューのからだを、ひょいと、抱え込みました。
そして、まどのほうへ、まどのほうへと、けんめいに逃げました。

lw´; _;ノv ねえ、どうするの

('A`) 窓から逃げるんだ ねずみも、そこまでは追ってこれまい!

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:27:18.20 ID:CpH/aLT10

二人はようやく、まどべまで、たどりつきました。
ドクオはいそいで、窓のさんを押します

だけど、ふつうの人間だったときは、あんなに軽がると開いていたまどが、
この小さいからだでは、そう簡単にはいきません。

('A`) シュー! おまえも、窓を押せ!

lw´; _;ノv だって だって

力いっぱいまどを押すのですが、それでも、窓はすこしも開いてくれません。

たちまち二人は、ねずみの王様に追いつかれてしまいます。
大きなねずみの影が、二人の背後に迫ります。


ドクオは、兵隊の隊長にもらったサーベルを抜いて、
ねずみの王様のほうに、向きなおりました。

そして、カーテンの端に、シューを隠します。

lw´; _;ノv おにい!

('A`) シュー、ここに隠れてろよ!

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:30:02.51 ID:CpH/aLT10

ねずみとドクオは、まあいをとって、むかいあいました。

じりじりとしたにらみあいが、とてもながいあいだ続いたようにおもえましたが、
じっさいには、一瞬のあいだの出来事だったに、ちがいありません。

ねずみの王様が、前足をふるって、ドクオを叩き潰そうとします。
ドクオはなんどか、それを剣でいなします。
が、ねずみの王様は、力が、すごく強かったのです。

打ち合うたびに、ドクオはゆっくり、ゆっくりと、後ろにさがってしまいます。

そしてとうとう、窓わくのぎりぎりのところまで、追い詰められてしまいました。

lw´; _;ノv おにい!

兄の危機に、シューがおもわず、隠れ場所から叫びます。

ねずみの王様は、ぎろりとシューをにらみますが、
まずは邪魔者のドクオをかたづけてから、ゆっくりと獲物をいただくつもりなのでしょう、
ふたたびドクオのほうに、その凶暴な目をむけました。

するどい前足の一撃が、ドクオを襲います。
防ごうとしたサーベルが、高い音をたてて、ついに、ふたつに折れて、飛んでしまいました。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:34:11.25 ID:CpH/aLT10

ドクオは、ぜったいぜつめい。
前には大きな体の、ねずみの王様。
後ろには、開かない窓わく。

lw´; _;ノv おにい、もうにげて! おにい!

シューは、かくれ場所からけんめいに叫びます。
それでもドクオは、短くなったサーベルをねずみに向けて、にらみ合っています。

('A`) いいや、にげない。
    おまえのことは、ぜったいにまもるぞ!

ねずみが迫ります。
ずり下がったドクオの足が、壁につきます。
もう、にげばはありません。

lw´; _;ノv おにい!

('A`) シューは ちきゅうでいちばん だいじな妹なんだ!

ドクオは剣を両手で持って、そう、さけびました。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:37:34.19 ID:CpH/aLT10

ねずみの王様は、いよいよ、けっちゃくをつけようとしました。
その大きな図体からは想像できないほどみがるに、
ぴょーんと飛び上がって、ドクオにとびかかってきたのです。

きょたいが、まどぎわのドクオにせまります。

ドクオは、なにか決心したような顔つきをすると、
サーベルをぎゅっと握りなおして、それを迫り来るねずみに、突き出そうとしました。

相打ちを、狙っているのです。



が、あわやドクオの小さいからだが、押しつぶされようとしたときです!

ばーん!!

おおきな銃声が、部屋の中にひびきました。


ドクオがおどろいて、音のしたほうを見ると、

硝煙の立ち込めるむこうで、
きずだらけになった兵隊の隊長が、折れていない、ぶじなほうの右手に、
煙のまだ上がっているピストルをかまえているのが、見えました。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:39:49.36 ID:CpH/aLT10

ねずみは、豆つぶほどの銃弾でも、よっぽど痛いのか、
地面によこたわって、はじかれたように、からだをくねらせています。

('A`) いまだ!

ドクオはとっさに機転をきかせます。
身をひるがえして、
ころがって痛がっているねずみの王様に、おもいきり体当たりを、くらわせました。

ちからいっぱいの体当たりと、ねずみの王様の大きな体重がくわわって、
しまっていた窓が、ついに、いきおいよく開きました。

ねずみの王様は、そのあいた窓のすきまから、屋根のうえに落ちていきます!

('A`) やった!


どたん、どたんと、そうぞうしい音をさせて、
ねずみの王様は一階へと、急勾配の屋根を、転がり落ちていきました。

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:42:39.50 ID:CpH/aLT10

静けさが、シューのへやに、もどってきました。
しばらく、ドクオとシューは、ぼうぜんとしていました。

下の地面に、どさりとねずみが落ちる音がしても、
二人はまだ、ぼうっとしていました。

そしてやにわに、シューはドクオにとびつきました。

lw´; _;ノv わああああああん!!!!!
       おにい! こわかったよー! こわかったよー!


('A`) シュー! まったくお前は、、無茶なことばかり…!

ドクオはいつものように、シューにお説教をしようとおもいましたが、
泣いている妹をみると、やっぱり思いなおして、
そして、頭をなでました。

lw´; _;ノv わあああああああん……

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:45:24.68 ID:CpH/aLT10

シューはしばらく、ドクオにだきついて、泣いていましたが、
やがて、大きな泣き声もやんで、すすりなきに変わりました。

lw´; _;ノv くすん くすん

シューはひとしきり、泣きました。


まどべに、二人のかげが、うつっています。
銀色の月のひかりが、シューとドクオを、やわらかに照らしていました。


開いたまどから、つめたい夜気がはいってきます。
シューはくしゅんと、くしゃみをしました。

('A`) こんやは ひえるな

ドクオは、床に落ちていたベロアの裁ち屑をひろってきて、
シューの体にかけてやりました。

それでシューは、ふかふかで、つやつやした「ふとん」に包まれて、
とてもあたたかくなりました。

lw´‐ _‐ノv えへへ

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:49:18.77 ID:CpH/aLT10

lw´‐ _‐ノv えへへ。やさしいおにい。

('A`) ん?

シューは、ドクオにだきつく腕に、すこし力をこめました。

lw´‐ _‐ノv だい…しゅ…




すう、すう…。
なにかをいいかけたシューですが、
もうそのときは、ドクオに抱きついたかっこうのまま、
あたたかなベロアの裁ち屑にくるまって、ねむってしまっていました。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:51:31.77 ID:CpH/aLT10

月の光が、やさしく二人を照らしました。
ドクオは、眠ってしまったシューのかみをなでながら、考え事をしていました。

('A`) それにしても、ふしぎなことも、あるもんだなあ

ドクオは、小さくなった自分たちのことを、かんがえていました。
それから、おもちゃの兵隊がうごきだして、シューを助けてくれたことも。

('A`) シューが、あの隊長に、やさしく手当てしてあげたおかげなのかな?

ドクオは、小さく寝息を立てているシューのかおをながめます。
膝のうえに頭をのせて、気持ちよさそうにしています。

ドクオはおもわず、にっこりとほほえむと、

('A`) ふわああ

おおきくひとつ、あくびをしました。


いつしかドクオも、沈むように、ねむりにはいっていきました。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:54:51.79 ID:CpH/aLT10

次の朝。
すずめがせわしなくなきかわしている中、
明るい朝の光に照らされて、シューは、目をさましました。

lw´‐ _‐ノv あれっ

シューは、自分の手足をながめました。

昨日のことはまるで何事も無かったように、元の大きさにもどっていて、
いつものベッドの中で、いつものふとんにくるまって、眠っていました。

むくり。

lw´‐ _‐ノv あれは、ゆめだったのかなあ

そういって、ベッド脇のテーブルに目をやります。

昨晩、サイドボードにおいておいた、人形の隊長は、
きのうとおなじばしょに、ちゃんと横になって、やすんでいます。

そして、その傍らには、ドクオがもってきた、五人の兵隊のおもちゃがありました


ただ、すこしだけきのうと違う点があったとすれば、
それは、こころなしか、六人の人形がみな、つかれたような顔をしていて、
いまはたとえ国王陛下がやってきたとしても、起きるつもりはないぞ、とでもいいたげに、
横になってやすんでいたところだけです。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 22:58:08.04 ID:CpH/aLT10

(‘_L’) おはようございます、お嬢様

lw´‐ _‐ノv おはよー…

フィレンクトさんからお湯と歯磨き粉をもらって、シューが洗面台で歯磨きしていると、
後から、ドクオもやってきました。

シューとドクオは、顔をあわせても、
おたがい、ふしぎそうな顔をするだけで、一言も声をかわしませんでしたが、
ドクオはしきりに、何かいいたげにしています。

そしてとうとう、こんなことをいいました。

('A`) なあシュー。
    昨日の晩、ひょっとして僕たち、小さくなっ…いや。

そこまで言いかけて、ドクオは止めました。
シューも、なんといっていいかわからなかったので、黙っていました。


('A`) 変な夢、だったなあ

ドクオはそんなふうに、ぶつくさいいながら、自分の部屋に去りました。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 23:00:08.96 ID:CpH/aLT10

歯磨きがおわって、
衣装だんすから、シューの今日の服を出してもらっているあいだ、

(‘_L’) おや、冷えると思ったら、外はいちめんの雪ですな。
     夜の間に、降ったのでしょう

フィレンクトさんは、いいました。

lw´‐ _‐ノv う、うん

(‘_L’) ホワイトクリスマス、ですな。
     良いクリスマスです

シューの服のよういが終わると、
フィレンクトさんは一礼して、去っていきました。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/24(日) 23:04:03.76 ID:CpH/aLT10

シューはひとり、自分の部屋にもどりました。
そして、フィレンクトさんが用意してくれた服をかかえたまま、
ベッドのはしに、腰掛けました。

窓の外では、つもった雪に朝の光が反射して、
梢につもった雪にも、きらきらときれいです。

lw´‐ _‐ノv あれっ

シューは、おかしなことに、気がつきました。

窓が、すこしだけ開いています。
その窓は、いつもなら、しっかりと閉まっているはずなのです。

そして、昨日の晩は、たしかにそこで、ふたりで休んだはずの…。


シューはとっても嬉しくなって、
ベッドの上でふとんをぎゅっと抱きしめて、ふふふふっと、笑いました。

だって、ふしぎなおもちゃの兵隊さんがくれた、クリスマスのいちばん素敵な贈り物は、
世界でいちばん誰よりも大好きな、やさしいドクオ兄さんだったのだから。






おしまい。


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