(  ω )と    ようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/01/29(金) 19:24:45.73 ID:B3DcBo0w0
四月。

桜が咲き乱れ、新しい学年が始まる時。


一人の青年も、期待に胸を膨らませていた。





暗闇が口を開けて迫ってきているとは知らずに・・・・・・

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:26:58.10 ID:B3DcBo0w0
( ^ω^)「明日は入学式・・・・・・。スーツの準備は出来たお」


地方の大学に合格した内藤は、一人暮らしを始めてまだ三日目。
食事はカップラーメンと冷凍食品だけだ。

( ^ω^)「新しい生活! サークル活動! 全部楽しみだお・・・・・・」



翌日の準備を済ませ、布団に寝転がる。
目をつむって、明日からの日々を夢想するだけで、ときめきが止まらない。


( ^ω^)「今日はもう寝るお」


初日から寝坊するわけにはいかない。
パソコンの電源を切る。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:30:03.20 ID:B3DcBo0w0


田舎なだけあり、布団にもぐってしまえば、無音の世界。
車の通り過ぎる音さえも、ほとんど聞こえない。


内藤はすぐに眠りについた。


しかし・・・・・・数時間もしないうちに妙な違和感で目を覚ます。
神経を張り詰め、耳をそばだてるが、何も聞こえない。


寝付きのいい内藤にとって、深夜目を覚ますというのはめったにないことであった。
上半身だけを起こすが、目が慣れていないせいか、何も見えない。


ぞぞぞ


芋虫が背を這うように、じわじわと滲み出てくる悪寒が全身を痺れさせる。


相も変わらず部屋の中に変化はない、ように見える。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:33:29.56 ID:B3DcBo0w0

( ^ω^)「なんだお・・・?」


布団から体ごと起き上がり、電気をつける。


寝る前と変わりのない、質素な部屋が照らされているだけであった。
その様子に、一安心し、再び布団にもぐりこむ。



・・・・・・静かだ。


それは、田舎のいいところだと、納得しようとしていた。


( ^ω^)「・・・・・・」


本当に、そうだろうか?


田舎では、車の音一つしないものなのだろうか?

学生ばかりが住んでいる地域が、これほどまでに静まり返ることがあるのか?

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:35:41.88 ID:B3DcBo0w0


明らかに、おかしい。


耳が聞こえなくなったのかと、声を出す。

自分の声が、部屋の中に響く。

(; ^ω^)「お・・・・・・」


冷や汗が流れ出てくる。


超がつくほど、内藤は怪談話が苦手だ。
一人このような状況にいて、落ち着けるはずもなかった。


携帯電話を取り出し、最も仲の良い友人の番号にかける。
同じ大学に受かっている彼は、日夜パソコンを弄っており、
未だ起きているはずであった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:39:13.63 ID:B3DcBo0w0


何度かの呼び出し音の後に、めんどくさそうな彼の反応が返ってくる。


(; ^ω^)「ど、ドクオかお?」

('A`)「こんな時間になんだ? 早寝早起きが信条のお前にしちゃ、珍しいじゃないか」

(; ^ω^)「お・・・・・・いや・・・・・・」


質問に応える内藤の言葉は歯切れが悪い。
長い中であっても、夜が怖くて、と言ってしまえば
笑われるのは目に見えていた。


ドクオは、オカルトなど全く信じない。
それをよく知っている内藤は話を濁すしかなかった。


(; ^ω^)「い、いや、明日は入学式だお・・・・・・緊張して」

('A`)「ふーん、そうか。ところでさ、さっき面白いものを見つけたんだが」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:41:44.83 ID:B3DcBo0w0



(; ^ω^)「な、なんだお?」

('A`)「いやさ、この辺のオカルト話、総編集版」


(; ^ω^)「お・・・ブーンはちょっと・・・・・・」


ドクオは内藤が超絶ビビりなのを十二分に知っている。
怖がらせるために、あえて調べていたのだろう。
嬉々として話し始める。


('A`)「例えば、これ。衣女。この辺りを夜歩いてると、薄い布が舞っているらしい
    よくよく見てみると、暗闇の中でかすかに光ってるみたいでな。
    近づいてみると」


( ;ω;)「ぎゃああああああああああああああああああああああ」


('A`)「まだオチまで言ってねえよ」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:47:03.27 ID:B3DcBo0w0

半ば嬉しそうに、半ば残念そうに話すドクオ。

('A`)「次、いこうか」


(; ^ω^)「もう勘弁してくれお・・・・・・」


('A`)「なんだよ、一晩は語りあかせるくらい調べたのによ」

電話向こうから聞こえるのは本気で残念そうにする声。
勿論、こんなことでは友人関係が壊れないことを知っているからこその、御遊びであろう。

('A`)「まぁ、いっか。他のはどこも似たようなものしかねぇし・・・・・・ただな」

(; ^ω^)「なんだお?」


本能的に嫌なものを感じ取り、身構える内藤。


('A`)「本物、が一つあったぜぇ・・・・・・」


舌舐めずりするような声に変わる。
先程ドクオはオカルトは信じない、と言ったがこれは間違いだ。
正確には、自身が全て試し、その上で否定してきたからこそ、信じない。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:49:39.94 ID:B3DcBo0w0

('A`)「実はな、俺もこいつばっかりは嫌な予感がするんで、まだ開いてねぇんだよ」

ドクオが弱気を吐き出すのは、これが初めてであった。

数ある心霊スポットにも向かい、(内藤も嫌々付き合わされた)
事あるごとに霊を憤慨させるようなことを行ってきたドクオが、
初めて、その行為を躊躇ったのだ。

内藤にとって、それほど恐ろしいことはない。


(; ^ω^)「嫌な予感がするなら、やめとこうお・・・・・・。
       そういうのは碌でもないことが起こるって相場が決まってるお」


今まで以上に強くひきとめる。
が、ドクオは止まらない。


('A`)「いくぜっ」

電話口の向こうでカチッとマウスをクリックする音が聞こえた。


ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ
ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ
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15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:51:58.66 ID:B3DcBo0w0
ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ
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16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:54:17.22 ID:B3DcBo0w0

携帯から聞こえる、不可解な音。
其処からは、笑い声が聞こえてくるかもしれないような。

砂嵐のような音が無情になり続ける。


(; ^ω^)「ドクオ!?」


(; ^ω^)「ドクオおおおおおおおおおお!!!」


真夜中だというのに、一切のためらいなく叫ぶ内藤。


(; ^ω^)「お・・・・・・お・・・・・・」


冷や汗が止まらず流れ続け、全身がガタガタと震え、
恐怖、というものが止まることなくあふれ出てくる。


ただのカレンダーに女の顔が


背中に冷たい手が


想像だけが暴走し、身の回りすべてのものに悪霊が乗り移っているかのように錯覚される。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:56:28.06 ID:B3DcBo0w0

心臓は胸を突き破ってしまうのではないかと思うほど強く脈打つ。



部屋の気温は真冬に匹敵するのでは、と思えるほど低く感じる。




(; ^ω^)「ドクオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」










('A`)「ん? 呼んだ?」



(; ^ω^)「                                            」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 19:59:30.72 ID:B3DcBo0w0




('A`)「面白かったろ?」


(; ^ω^)「くぁwせdrftgyふじこlp;@」


内藤は混乱している!


('A`)「まぁ、タチの悪い冗談ってやつさ」


(; ^ω^)「に、二度としないでくれお・・・・・・」

('A`)「いや、まぁ悪かったとは思うが、許してくれ。仕方なかったんだ」

(; ^ω^)「どういうことだお?」



('A`)「んー・・・・・・。そっちになんか【いる】様な気がしたんでな。
   今のは霊を呼ぶための特殊な電磁波を混ぜた砂嵐(俺特製)
   電話や、パソコンの画面を通して霊の移動を試みる、とかいうやつだ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:02:48.92 ID:B3DcBo0w0

('A`)「こんな時間に連絡してくるなんて、そんなこったろうと思ったからな」

(; ^ω^)「じゃあ、ブーンのところにいた霊はドクオのところに行ったのかお?」


はぁ・・・、とため息が電話口から漏れる。
ドクオはやっぱりオカルトを信じない。


('A`)「まぁ、いりゃぁこっちに来るわな。電子機器と水場はよく霊を呼ぶって言うしな」


(; ^ω^)「た、助かるお・・・・・・。怖くて眠れなかったんだお」


一安心したのか、正直な気持ちを吐き出す。
先程までの気持ちが打って変って楽なものになっていた。


('A`)「そっか、なら寝ろ。こっちは、まだまだやることがあるんでな」

(; ^ω^)「お・・・・・・ありがとうだお。おやすみ、ドクオ」


('A`)「んじゃな」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:05:48.75 ID:B3DcBo0w0


携帯が切れたことを確認すると、机の上に置いた。
明滅していた光が消え、再び部屋は暗闇に包まれる。

だが、ドクオと電話したおかげで、多少なりとも内藤は落ち着きを取り戻していた。


(; ^ω^)「びびったけど、頼りになるお・・・・・・」


心なしか、遠くから叫び声えが聞こえる気もする。

時計を見ると、既に二時を回っていた。


( ^ω^)「早く寝ないと、明日にひびくお・・・・・・」


目を閉じて直ぐに内藤は眠りについた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:09:47.50 ID:B3DcBo0w0


( ^ω^)「おー・・・・・・気持ちのいい朝だお」


柔らかい太陽の光の舞台で、小鳥が囀る。
新鮮な空気を吸うために、窓を勢いよく開け放つ。

目下に見えるおんぼろの大学は内藤の目には輝きを放っていた。
でかでかと、入学式、の看板が立てかけられている。


( ^ω^)「おし!」

スーツを着込み、ネクタイを締める。
初めて結んだにしては、なかなかうまくいっていた。


鍵を閉めたのを確認し、大学に向かう。
内藤が下宿している建物から大学までは自転車で数分。


入学式の時間には十分に間に合う計算であった。


隣の人間が出てくるまでは。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:11:56.71 ID:B3DcBo0w0
( ^ω^)「お、おはようございますお」


階段に向かう途中、目の前で扉が開き、男が一人出てきた。
紺色のスーツを身にまとった男は気さくに話しかけてくる。


(,,゚Д゚)「よぉ、あんたも新入生か?」


( ^ω^)「そうですお」


(,,゚Д゚)「そうか、俺ぁ、生物学部ネコ科のギコってもんだ、よろしくな」

( ^ω^)「ブーンは法学部法学科、内藤ですお」


(,,゚Д゚)「ところでよぉ、おめぇさん昨日はエライ騒いでくれたよな?」


一瞬だけ考え込むが、その原因はすぐにはっきりと思い出した。

(; ^ω^)「ご、ごめんなさいですお」

(,,゚Д゚)「俺ぁ起きてたからかまわねぇが、二度としないでくれ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:14:12.25 ID:B3DcBo0w0


(; ^ω^)「は、はい、気をつけますお」


(,,゚Д゚)「・・・・・・」

話は終わったのだと思い、階段を降りようとする内藤だが、
ギコがその前に立ちふさがる。

体は内藤の方が大きく、無理に通ろうとすれば出来ないことはないだろう。
だが、本来気の弱い内藤は、ギコが言葉を発するまで待つことにした。

数分間、内藤のことを見ていたかと思うと、ギコはぼそっと呟いた。


(,,゚Д゚)「やべぇな・・・・・・」

(; ^ω^)「お?」


(,,゚Д゚)「・・・・・・噂は本当だったのか」


それだけ言うと、ギコは逃げるように走り去っていった。

取り残された内藤はしばらくボケっとしていたが、
我を取り戻し、大学に向かった。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:20:05.48 ID:B3DcBo0w0


ドクオと校門で落ち合う約束であったが、内藤が其処についたのは
入学式が始まってから数分が経過してからだった。


ギコに言われたことが気になり、考え事をしながら自転車を漕いでいたせいで
道に迷ってしまい、付近をウロウロしていたのだ。


(; ^ω^)「ついてねぇお・・・・・・」

途中から入学式に入るのを躊躇い、構内を一人で歩きまわる。
上期生の姿は見えず、まるで別の世界に迷い込んでしまったかのようであった。


と、その時、ポケットの中で携帯が震える。
とりだして着信を見てみると、ドクオからであった。

(; ^ω^)「おー・・・・・・。」

其処に書いてあったのは、小言と説教。
申し訳ないとの旨を書いた文をすぐに返信し、携帯を仕舞う。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:22:18.03 ID:B3DcBo0w0

刻々と時間は過ぎ、ざわざわと騒がしい声が聞こえ始めた。
入学式が終わったのだろうと見当をつけ、体育館に向かうと、
ふてくされた顔の(普段からだが)ドクオが歩いてくる。

('A`)「おいおい、不良のブーンちゃんは入学早々さぼりですかぁ?」


嫌らしい皮肉をやり過ごし、ドクオの機嫌が良くなるまで内藤は
数十回は謝っていただろう。


(; ^ω^)「この後はどうなるんだお?」


('A`)「んーとりあえず、同学部新入生ばっかりで集まって話す機会があるらしい。
    俺はご免なので、さっさと家に帰りたいところなんだが」

昔から人づきあいを嫌うドクオは、このような会には梃子でも参加しない。
そんなことは、やはりとうの昔から知っていた内藤である。


(; ^ω^)「じゃあ、ドクオの家にでも遊びに行くお」


そうとだけ答えた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:24:49.23 ID:B3DcBo0w0
('A`)「そっか、ならついてこいよ」


おそらく教授であろう、男の制止も聞かず、二人は学内から飛び出した。
ドクオの家は内藤の家とは反対方向にあり、割と距離もある。

本人曰く、学校から遠くても、近くにコンビニ、本屋、漫画喫茶、があれば十分だ、とか。
さらに、自転車を買うはずの金を、新しいパソコンゲームかなんかにつぎ込んだため、
徒歩で通っていた。


ドクオに合わせるために、自転車を押して隣を歩く。
家までの道のりの半分以上を自身のオカルトに関する持論と、
その場その場の勝手に心霊スポットの説明をしていた。


勝手に心霊スポットは、ドクオが「霊が集まる」と考えている場所のことで、
大学付近にはそれが多いらしい。


(; ^ω^)「嫌いだって言ってるお・・・・・・人の話を聞く気ねぇおね?」


('A`)「まぁ、いいじゃねぇか。幽霊さえ怖くなくなりゃ、一人暮らしほど楽しいもんはねぇぞ」


俺は、お前が慣れるために話してるんだよ、と。
何様だ、と思う内藤であったが、口には出さない。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:28:06.38 ID:B3DcBo0w0
('A`)「ついたぜ」


たどり着いたところは、これでもか、というほどのおんぼろアパートであった。
幽霊が出ます、と言われればまず信じるであろうし、
出ません、と言われても絶対に信じられないような、そんな物件だ。


しかし、中は以外にもこぎれいで、最新のネット環境もそろっていた。
ドクオは早速、パソコンの電源をつける。

( ^ω^)「ゲームでもして遊ぶかお?」

('A`)「そうだなぁ、新しいゲーム買ったし、どうよ?」


( ^ω^)「やってみたいお」

('A`)「そうか、お前がついにそういう日が来るとは・・・・・・」


感極まって泣きそうな臭い芸をしだすドクオ。
何かと思い、その手に持っているソフトを確認し、内藤は凍りつく。

('A`)「【呪われた子羊】完全版。高かったんだぜぇ・・・・・・・」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:31:57.63 ID:B3DcBo0w0

( ^ω^)「パス」


('A`)「そうか・・・・・・。まぁ、そういうと思ったよ」

結局、当たり障りのない格闘ゲームをひたすらプレイする二人。
といっても、ドクオが内藤をフルボッコにしているだけであったが。


('A`)「そういや、昨日の話の続きなんだけどさぁ」


ドクオが画面から目を離さずに話し始める。

('A`)「この町って、かなり霊が集まりやすいみたいなだな。
   風水の関係上とか、地形上とか、歴史上で」


( ^ω^)「パス。ブーンは夕方一人で帰るんだお? そういうのはやめてくれお」


('A`)「まぁ、そういうな。俺が送って行ってやるから」


そういうことなら、と話を聞きはじめた内藤はすぐに後悔することになる。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:38:50.04 ID:B3DcBo0w0

('A`)「まず、風水で言うとだな。詳しくは俺も知らないんだが、守護神のいるべき土地が
    この地方では欠けているらしくて、本来なら悪鬼悪霊を塞ぎこむべき存在がいないらしい」


( ^ω^)「守護神のいるべき土地ってなんだお?」


('A`)「龍とか、虎とか、あんなやつら。なんで欠けてるかは、歴史の方に関係するんだけどな」

( ^ω^)「なんでだお?」

聞かれるのがうれしくてたまらないのだろう。
ドクオはいつも以上に饒舌になっている。


('A`)「この地方では、昔強大な神々がいた。
    だが、新しい都を作った時、そこに様々な霊的存在が跋扈し始めて、
    どうにも手がつけられなかったそうだ。」

( ^ω^)「もしかして・・・・・・」


('A`)「この地方の神を無理やりそっちへ移したのさ。そのせいで、霊的損傷が激しく、
    そういうモノが溢れ回ってるらしい」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:42:19.17 ID:B3DcBo0w0
( ^ω^)「おー・・・・・・信じられねぇお。神様を無理やり移動させるなんて」


('A`)「噂が事実ならな、この町はそこらじゅうにいるってことさ」


その時、ふと過去のことが内藤の頭をよぎった。
高校三年の頃の話・・・・・・。

地元私立へ合格していたドクオは、急に内藤を地方の大学に誘った。
内藤はその誘いに乗り、同じ大学へ進学することにしたのだ。

( ^ω^)「おめぇ、まさか知ってて?」


('A`)「悪いなぁ・・・・・・」

全く悪びれもしないドクオを一発しばいてやろうかとも考えた内藤だが、
機嫌を損ねて送りをしてもらえなくなった時のことを考え、
舌打ちをするにとどまった。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:46:42.98 ID:B3DcBo0w0

( ^ω^)「ひでぇお・・・・・・」

('A`)「まぁ、幽霊なんて存在するはずはねぇ。今までもそうだったんだしな
   別にどうってこたない」

( ^ω^)「そうだったけどお・・・・・・」


ドクオがパソコンに向き直り、いくつかの動作を行う。
真っ黒なページが画面に広がる。

( ^ω^)「それは?」

('A`)「とっておき、さ」


赤い文字がすぐに浮かび上がってきた。
血液を連想させるかのように、乱雑なフォントで。


( ^ω^)「おー・・・・・・もうやめようお・・・・・・」


('A`)「おいおい、こんなおもしれぇこと、他にはねぇ」

だが、全く面白いことはなく、
たった四つの漢字で、内藤は震えあがることになる。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:51:12.34 ID:B3DcBo0w0



音無伝説



( ^ω^)「おと・・・・・・なし・・・・・・?」

('A`)「ここいらじゃ一番有名な伝説なんだけど、おかしいんだよな・・・・・・。
   この界隈の人間なら誰でも知ってるはずなのに、それについての情報はほとんどない。
   ネットの掲示板なんかで語りだすやつがいれば、半分も話さずに、どっかにいっちまう」


( ^ω^)「このサイトが・・・・・・?」

('A`)「いや、ハズレだな。ここからどうやっても進みようがない」

内藤の心の中では二つの意識がぶつかり合っていた。
それぞれが、恐怖と好奇心を掲げて。

( ^ω^)「それは、どんな伝説なんだお?」

結局、勝ったのは好奇心の方であった。
猫を滅ぼすはずの毒牙に、自ら飛び込んでしまったことも知らずに。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:55:05.52 ID:B3DcBo0w0

('A`)「だから、ほとんどしらねぇんだって。ただ、そうだなぁ。音無伝説っつうのは、
   よくある悲劇とかがもとになった階段じゃないんだ」

( ^ω^)「どういうことだお? 幽霊は未練でこの世に残るんじゃないかお?」

('A`)「いるとすれば、な。普通はそうだ。だが、音無伝説は違う」


('A`)「そいつらはな、ただ悪意をもって存在していると言われてる。
    ・・・・・・人から音を奪う、それだけのために」

内藤の心臓がひときわ大きくはねた。
思わず、口元を押さえてしまう。

そんな様子にはまったく気づかず、ドクオは続ける。

('A`)「それだけじゃない。普段聞こえている当たり前の音から奇怪な【音を為す】。
   二重の意味で音無(音為)伝説ってよ」


( ^ω^)「でも、それって全く害悪ないお? なんというか霊的なというか・・・・・・」


強がって見るも、心は崩壊寸前であった。
実際に同じような現象にあってさえなければ、もっと余裕を持てていたかもしれない。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 20:59:19.61 ID:B3DcBo0w0

('A`)「わかってないな。夜中独りでいるときに、完全に周りの音が消えてみろ。
   その孤独感は精神を圧迫する。
   そして、普段の生活の音から女のうめき声が聞こえ続けてみろ。
   精神崩壊は確実だな」

( ^ω^)「う・・・・・・」


('A`)「んまぁ、ありえねぇけどな。そろそろ帰るか?」

時計の長針は六を超えようとしていた。
町全体が夕暮れに包まれ、不穏な雰囲気を放っている。

少なくとも、内藤にはそのようにしか見えなかった。


( ^ω^)「お、頼むお」

('A`)「よし、行くか」


おんぼろアパートを出発し、内藤の家に向かう二人。
並んで歩く影は、しだいに町の闇に飲み込まれていく。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:02:19.53 ID:B3DcBo0w0

('A`)「元気ないなぁ・・・・・・。幽霊なんて存在しねぇよ」

ドクオは無言で歩く内藤に励ましの言葉をかける。
多少なりとも、怖がらせ過ぎたと、反省しているのかもしれない。

( ^ω^)「お・・・・・・大丈夫だお」


一方、内藤は「音無伝説」のことが頭を離れない。
昨日、身に降りかかった恐ろしい出来事。
それは夢だと割り切れるほど曖昧なものではなかった。


だが、オカルトを信じていないドクオに対し説明しても無駄であろう、と
諦めていた。

( ^ω^)「ありがとうだお」

内藤の家についたころには日が完全に沈み、
人工的な明かりが町を照らす。

('A`)「なに、話につきあってもらったからな。まぁ、夜中に怖くなったらいつでもかけてきていいぞ」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:05:36.76 ID:B3DcBo0w0


それだけ言うと、ドクオは背を向けて去って行った。


( ^ω^)「ふぅ・・・・・・」

出来るだけ嫌なことを思い出さない内に、すぐに風呂に入る。
頭の中で同じ曲を何度もリピートさせながらシャワーを浴びた。

コンビニで買ってきた食事を済ませ、パソコンを起動する。


( ^ω^)「ネトゲでもやって気を紛らわすかお・・・・・・」

最近サービスが始まったばかりのゲームをダウンロードし、プレイし始めた。
黙々とチュートリアルにしたがってレベル上げをこなしていく。

気がついた時には十二時を回っていた。


( ^ω^)「おー寝るかお・・・・・・」


パソコンはそのままに、布団にもぐりこむ内藤。
流れ続けるBGMを子守唄にしようとしてのことだ。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:10:58.80 ID:B3DcBo0w0


穏やかな音楽が止まることはあるはずもなかった。







ぴたり、と音が消えた。

すぐさま起きあがり、ネットの接続状況を調べるが、
鯖落ちやメンテナンスではない。

キャラクターは確かに画面内を動き回っている。


(; ^ω^)「お・・・・・・」


一切の音が聞こえない。
まるで、世界から隔離されてしまったかのよう。


(; ^ω^)「そうだお・・・・・・ドクオに」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:13:16.34 ID:B3DcBo0w0


震える手で電話をかける。

1コール

2コール

3コール

四つ目の途中でドクオから返事が聞こえる。

('A`)「なんだ、いきなり」


( ^ω^)「音無し・・・・・・・音無しが来たお!! 助けてくれお!」

('A`)「マジか!? 今すぐ行くから待ってろ」

( ^ω^)「携帯切らないでほしいお・・・・・・」


壁に背を預けて座り込む内藤の耳に届いているのは、携帯を通ってくる「音」だけ。
人々の喧騒、動物の遠吠え、全ては携帯から。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:19:17.33 ID:B3DcBo0w0


('A`)「ああ、わかった。ほんとに音が聞こえないのか?」


(; ^ω^)「早く来てくれお・・・・・・」

今にも泣き出しそうな声で助けを求める内藤。
ドクオは全速力で走る。

('A`)「もうすぐ着く!」


どん!!!


扉が大きな音を立てて一度鳴った。


(; ^ω^)「か、鍵を閉めてたお・・・・・・」

('A`)「ああ、そっか。早く開けてくれ」


立ち上がり、鍵を開けると同時にドクオが部屋に飛び込んでくる。
そして、内藤の耳に雑音が帰ってきた。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:23:08.22 ID:B3DcBo0w0

( ;ω;)「怖かったおぉぉ・・・・・・」


('A`)「泣くな、みっともない。音無は? どこにいる?」

( ;ω;)「姿は見てないお・・・・・・ただ、音が聞こえなくなって・・・・・・怖くて・・・・・・」


あからさまに残念そうにするドクオ。
言外に、姿が見えてないのに呼んだのかよ、と含まれている。

(; ^ω^)「し、仕方ねぇお。そもそも、音を奪う幽霊なら姿なんかないんじゃないのかお?」

ドクオが来たことで多少元気づく内藤。

('A`)「それもそうだな・・・・・・」

(; ^ω^)「き、今日は泊っていけお」


('A`)「断る。男の部屋に寝る趣味はねぇ。まぁ、一日何度も現れないだろ。
   今日のところは帰るわ」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:26:08.02 ID:B3DcBo0w0

内藤の言葉を欠片ほども聞かず、靴を履いて家を出て行った。

( ^ω^)「ひでぇやつだお・・・・・・」


だが、ドクオの言葉通り、その日は何もなく、
疲れ切っていた内藤は、翌日昼過ぎまで寝てしまっていた。


( ^ω^)「また、大学サボっちまったお・・・・・・」


携帯を開くと同一人物から複数のメールと着信履歴があった。

('A`)「おいおい、寝坊か?」

('A`)「面白い話を聞いたぞ。音無についてだが、どうやらネットに新しい情報が出てるらしい」

('A`)「いい加減起きたか? 起きたらうちに来い」


( ^ω^)「おー・・・・・・」

寝ぼけた頭でドクオのメールの内容を何とか理解すると、
目を覚ますために洗面台に向かう。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:29:02.78 ID:B3DcBo0w0

勢いよく水を流し、手をつける。
顔を洗おうと水を掬って、そこで動作が止まった。

( ^ω^)「・・・・・・」


水が流れているだけのはずなのだ。

ではなぜ、声が聞こえる。
どうして、女の声が聞こえる?

(; ^ω^)「ひぃ・・・・・・」


ざぁざぁと蛇口から出る水と一緒に、か細い声が漏れ聞こえる。


「こ  ろ  し  て  や  る」



( ;ω;)「何で・・・なんでブーンなんだお!」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:31:19.89 ID:B3DcBo0w0


水の流れが止まると同時に、声も消えた。


何の準備もせず、家を飛び出した内藤の目に映ったのは、
隣の家から荷物が運び出されている光景。

(,,゚Д゚)「ああ、世話になったな」


( ^ω^)「ギコさん、どうして引っ越しを?」

(,,゚Д゚)「見ちゃいけねぇもんを見ちまったからな」

( ^ω^)「見ちゃ・・・いけないものですかお?」


言いづらそうに、目をそむけるギコ。
そんなことをされれば、問い詰めたくなるのも当然だ。

( ^ω^)「教えてくださいお!」

(,,゚Д゚)「・・・・・・俺んちはなわりと大きな神社の神主やってんだけどよ・・・・・・。
    ここの大学に来る前に一つだけ忠告されててな。
    ある現象を見ちまったら、すぐに実家に帰ってこい、って」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:33:29.77 ID:B3DcBo0w0


( ^ω^)「何を・・・・・・見たんですかお?」


恐る恐る尋ねる内藤。
その手は震えるほど強く握られている。

(,,゚Д゚)「白い煙だよ。白い煙を耳から出してる人間・・・・・・。
     音無様に目をつけられた人間にな・・・・・・」

反射的に両の耳を押さえる内藤だが、ギコは首を振って応える。

(,,゚Д゚)「うちみたいに特殊な家系じゃないと見えないさ・・・・・・」

( ^ω^)「音無に目をつけられると・・・・・・どうなるんだお?」

(,,゚Д゚)「・・・・・・身も心も、周りの人間さえも全て奪われる」


ギコの言葉が内藤に突き刺さる。
がらがらと、音を立てて自分が壊れていくのを感じていた。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:38:10.87 ID:B3DcBo0w0

( ^ω^)「・・・・・・どうすれば、助かるんだお? 何でもするお! だから教えてくれお!」

(,,゚Д゚)「悪いが・・・・・・俺も親父から聞いた話なんでな・・・・・・」

必死に縋りつくが、軽くあしらわれるだけであった。
荷物運びが終わったのか、ギコ自身もトラックに乗り込む。

(,,゚Д゚)「じゃーな」



どうしようもなく立ちつくす内藤に、非情な言葉だけが残された。


( ^ω^)「ドクオのところに行くお・・・・・・」

ようやく我を取り戻した内藤は自転車でドクオの家に向かう。
通り過ぎる風景は何の価値もないものとしか映っていない。

ギコは周りの人間も奪われると言った。
ドクオのところに行くのはよくないのかもしれない、そうは思っても
他に頼るべき人もおらず、ぼろアパートの前で悩む。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:46:07.05 ID:B3DcBo0w0

('A`)「お、やっぱ来てたな。ぼろいからな、自転車の音でわかる」


( ^ω^)「ドクオ・・・・・・」

('A`)「なんだ? また、なんかあったのかよ?」


(; ^ω^)「音無は・・・・・・周りの人も巻き込むらしいお・・・・・・」


('A`)「っぷ。はははっは。何だ、そんなこと考えてたのか?
   俺にとっちゃ、むしろ巻き込まれた方が幸運だって、思わなかったのか?
   まぁ、どのみち、俺は信じちゃいねぇよ。さっさと入ってこい」


変わらず接してくれたドクオに心の中で感謝しつつ、
家の中に入った。


('A`)「で、だ。俺の方も新しい情報をてに入れたんだが・・・・・・なんでお前知ってたんだ?」

(; ^ω^)「隣の部屋の人に教えてもらったんだお・・・・・・」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:51:24.12 ID:B3DcBo0w0

('A`)「そっか。他には何か?」


(; ^ω^)「今日・・・・・・聞こえる筈のない声が聞こえたお。
      蛇口から流れ出る水の音と一緒に・・・・・・」


('A`)「音為し、か。まぁ、見てみろ。珍しく掲示板の方に書かれてやがる」


其処に書かれていたのは、音無伝説の一部。
起こる現象がひたすらに羅列されていた。

(; ^ω^)「これは信頼できるのかお?」

('A`)「さぁな。俺は知らん。読んでみろ、あてはまることがあったら教えてくれ」


そういうと、ドクオはテレビをつけ、そちらに意識を向けた。
抑揚の少ないアナウンサーの声を背景に、
指示された場所を読んでいく。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 21:57:16.68 ID:B3DcBo0w0

───

音無伝説

ランク1

音が聞こえなくなる
生活音から奇怪な音が聞こえ始める。


ランク2

身近な人が豹変する。
肉体的な変異が起こり始める。
(頭痛が多い)


此処までは、まだ助かる。


もし、幻覚が見えはじめたら、諦めろ。
「音」の霊が「視覚」を犯しはじめたら、お前は直に乗り移られる。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:03:26.41 ID:B3DcBo0w0

(; ^ω^)「ドクオ・・・これ・・・・・・」


('A`)「うおっ・・・すげぇ事故・・・・・・」

テレビに映っているのはこの地方にある高速道路の映像だった。
巨大なトラックが派手に横転している。

(; ^ω^)「!?」


見覚えのあるトラックだった。
そして、テロップに情報が掲示されていく。

事故を起こしたのは・・・・・・



なお、この事故で19歳の息子さんが頭部をうち、なくなりました。


無機質な声が脳髄を揺らす。

(; ^ω^)「そんな・・・・・・」

事故で死んでいたのをギコだと断定するのは十分であった。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:09:03.65 ID:B3DcBo0w0

('A`)「派手に事故ってるなぁ・・・ってどうした?」


(; ^ω^)「この人・・・・・・今朝まで、ブーンの家の隣に住んでた人だお・・・・・・」


('A`)「ってことは、だ。もしこの掲示板の情報が正しければ・・・・・・」


絶望が内藤に降りかかる。


(; ^ω^)「ブーンは・・・・・・ランク2だお・・・・・・」

('A`)「んじゃ、俺にもなんかありそうなんだがなぁー」

そんな内藤の心境を知ってか知らずか、ドクオは呑気なものである。
立場を変わることができるのなら、喜んで変わったあであろう。

(; ω )「帰るお・・・・・・」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:13:14.50 ID:B3DcBo0w0

立ち上がりかけた内藤の腕をドクオが強く掴んだ。
予想外の負荷がかかり、バランスを崩して派手に転んでしまう。

('A`)「心配するな、たまたまさ。・・・・・・それに、俺は恐れない。知ってるだろ?
   心配してくれるのはうれしいが、俺の傍から離れる必要はねぇよ」


(; ω )「ドクオ・・・・・・」

('A`)「さて、あわよくばお前さんに降りかかってる災いを解決するために、だ。
    この掲示板の情報通りにしてみようぜ」


(; ^ω^)「でも・・・・・・」


先程の投降者が次の書き込みをしたらしい。
ブラウザが下にスクロールされていく。


('A`)「マジかよ・・・・・・」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:16:15.30 ID:B3DcBo0w0











             こいつの世界はもう奪った。




                                 次はお前らの番だ。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:25:50.97 ID:B3DcBo0w0

(; ^ω^)「おっお・・・・・・ブーンはもう終わりだお・・・・・・」


('A`)「なんか露骨だなぁ・・・・・・今までは急に書き込まれなくなったりしただけなんだが・・・・・・
   ただの脅しって可能性もある」

(; ^ω^)「でも・・・・・・上の方にブーンは当てはまってるお・・・・・・」

('A`)「あんま言いたかねぇんだがな。このランク1の症状ってさ、精神病に似てるよな。
   霊的なモノの攻撃でこうなったのか、こうなったやつらが霊的な症状だと言いふらしてるのか」

(# ^ω^)「ブーンが精神病んでると言いたいのかお?」


歯に衣着せないドクオの言葉に怒りをあらわにする内藤。


('A`)「いや、そうじゃない。落ち着け。ただ、病院に行ってみるのもいいんじゃないかな、と」

(; ^ω^)「おー・・・でも」

('A`)「悩むのもわかるが、考えすぎるのも毒だって言うしな?」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:31:25.55 ID:B3DcBo0w0

(; ^ω^)「じゃあ、明日・・・・・・行くお・・・・・・」

('A`)「評判がいいとこ調べて、予約取っといてやるよ。
   まだ、授業が始まってないし、昼間でいいよな?」

内藤が折れ、病院に行くことに承諾する。
その段取りはドクオがすることになった。

('A`)「んで、今日はどうする? まだおやつの時間だわな」


(; ^ω^)「もうちょっと、音無について調べてくれお」

('A`)「よしわかった」


「音無」というキーワードで検索する。
出てくるのは大抵、全く関係のないワードだ。

そこで、「怪談」や「呪い」という言葉を足してみるものの、
結果は芳しくない。


('A`)「どうして、こんなに音無、に関する記述が少ないんだ・・・・・・・?
   途中で消えるにしろ、もっと残っていてもおかしくないんだが」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:40:58.72 ID:B3DcBo0w0

(; ^ω^)「誰かが消して回ってるのかお?」

('A`)「もしくは、【音無】自身が、だな」


(; ^ω^)「他には・・・方法はないのかお?」

ネットでの情報収集の限界にぶつかった時だった。
ドクオが急に叫ぶ。

('A`)「そうだ! 図書館に行くぞ!」

(; ^ω^)「中央図書館かお?」

('A`)「郷土歴史とか、呪い、とかの本があるかもしれねぇしな」


言ったが早い。
ドクオはすぐに玄関に向かう。
遅れまいと、内藤もすぐ後に続く。

図書館は家から歩いて数分の距離にあるのだが、
二人は全速力で走った。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:47:13.48 ID:B3DcBo0w0

最近回想されたばかりの図書館には、
読みたい本を様々なソートで検索できる機械が置いてあった。

ドクオはそれを使い、片っぱしから郷土怪談の本を漁っていく。

六人がけの大きな机が資料で埋め尽くされた。


('A`)「流石に多いか・・・・・・」


(; ^ω^)「多いおね・・・・・・」

('A`)「とりあえず、音無って単語を目次から探そう。見つけたやつはこっち、
   なかったのは仕舞ってくること」

静かにページをめくる音だけが聞こえる図書館で、
猛スピードで本をめくっては動かしていく二人の存在はかなり奇異に映っていた。

(; ^ω^)「だいぶ片付いたお」


残された本は数冊。
山のような中から、音無に関しての記述が見つかったのは、たった数冊であった。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 22:55:42.14 ID:B3DcBo0w0

('A`)「やっぱり、少ないよな・・・・・・噂にはなるのに、どうしてこうも少ない?
   どう考えてもおかしいだろう」

(; ^ω^)「おー・・・・・・」

手分けして細かいところまで読む。
気になったところは紙にメモし、読み終わったら次の本に取り掛かる。


数時間かけて、おおよそ図書館にある全ての【音無】関連の
知識を纏め終わった。


【音無】【音為】

・音を奪う

・音を作り出す


出てきたのは殆どが既知のものだ。

('A`)「【音為神】【音無神】新しく出てきたのは、この言葉だけか?」

(; ^ω^)「こっちにも神様だって書かれてるお」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:02:45.56 ID:B3DcBo0w0

('A`)「理由とか、起源とか乗ってるか?」

(; ^ω^)「待ってくれお・・・・・・あ、あったお」



音無神は古くからこの地方に伝わる神様である。
四神が都に奪われ、不安定になったこの地を守るために、
わざわざ顕現なされた。

その力は、音の操作。

癒しの音楽をもって、人を病から救ってくださり
静かなる音楽をもって、天災を鎮めてくださっていた。


しかし、ある日。


(; ^ω^)「っと、次のページがねぇお・・・・・・」

('A`)「ほんとだな・・・・・・ちょっと司書の人に聞いてみようぜ」


結果から言うと、続きを知ることはかなわなかった。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:11:15.93 ID:B3DcBo0w0

司書の人間はかなり若かったためか、伝承には詳しくなく、
音無という存在自体を聞いたことがないようだった。

また、内藤が手にしていた本は一冊しか置いていないらしい。


('A`)「せっかくヒントみたいなのを手に入れたのになぁ・・・・・・」

(; ^ω^)「仕方ねぇお・・・・・・帰ろうお」


('A`)「五時か・・・明日の予約取っとく必要があるし、今日はもう帰るか?」

(; ^ω^)「そうするおー」


内藤とドクオはその場で別れた。


(; ^ω^)「独りになると急に心細くなるお・・・・・・」


コンビニ弁当で食事を済ませ、すぐに布団に入った。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:18:45.15 ID:B3DcBo0w0

今夜も音が無くなるのでは、そう思うとなかなか寝付けなかった。

こちこち、と時計の秒針が時を刻む音だけが鼓膜を通る。


急に携帯が鳴り響く。
着信音から電話だとわかったので、
相手を確認せずに、すぐに出る。



「きぃ─きぃ─きぃ─」


電話口から聞こえてきたのは金属のこすれる音。
ドクオからの悪戯だと思いきっていた内藤は、電話を切らなかった。


「きぃ─きぃ─きぃ─」


ただの金属音に混じって理解のできる言葉が聞こえてくる。
気付いた時には遅かった。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:22:26.63 ID:B3DcBo0w0






                 「もうおそい」

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:34:40.41 ID:B3DcBo0w0


((; ゚ω゚)))「ああああああああああああああああああああああああ」


がしゃん


全力で携帯電話を壁に叩きつけた内藤は、布団にもぐりこみ、
背中を壁際にぴたりとくっつける。


決して寒くないはずなのに、歯がガチガチと鳴り続ける。


((; ゚ω゚)))「ああああ・・・・あああ・・・・ああ・・あ・・・・ああああ・・」


もはや声にならない音が喉から漏れる。
鈍いナイフで身も心も削られていく。



ドン


ひときわ大きな音が鳴った。

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:37:51.55 ID:B3DcBo0w0

((; ゚ω゚)))「ひ・・・・・・・・・」


玄関の方からである。







ドン    ドン    ドン




繰り返し、繰り返し叩かれる。



ドン    ドン     ドン     ドン     ドン     ドン

ドン    ドン     ドン     ドン     ドン     ドン

ドン    ドン     ドン     ドン     ドン     ドン

ドン    ドン     ドン     ドン     ドン     ドン

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:44:18.48 ID:B3DcBo0w0


止むことなく、鳴り続ける。

それは、一つの声となる










ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドン             ドンドン             ドンドン            ドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドンドンドンドン  ドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドンドンドン  ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドンドン    ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドンドン  ドン  ドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドン  ドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドン  ドンドンドン  ドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドン             ドンドン             ドンドン  ドンドンドンドン  ドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/29(金) 23:49:43.63 ID:B3DcBo0w0


ただ一つの救いさえないと思えた、その世界。

確かに、その世界に、内藤を助ける者はいなかった。
その世界、には。


「    !     !」



((; ゚ω゚)))「な、なんだんだお! ブーンが何をしたっていうんだお! 
       もうやめてくれお!」


「     !   ろ!」


((; ゚ω゚)))「うわああああああああああああああああああああああ」






('A`)「ブーン! 起きろ!!!」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:00:57.75 ID:Ti1DZkKq0


((; ゚ω゚)))「お?」


目を覚ました内藤の前には、ドクオが屈みこんでいた。


('A`)「起きたか? すげぇ、寝汗かいてるじゃねーか」

((; ゚ω゚)))「ドク・・・・・・オ?」


('A`)「ああ、そうだ。あの後、家に帰ってな、本の作者で調べてみたんだよ
   そこから、たまたま本文を見つけてな・・・・・・」


内藤を安心させるために、コンビニの飲み物を取り出しながら話をする。


('A`)「音無はあくまで肉体を持たない。生きている正常な人間に近づくことは難しい、ってな」

('A`)「だから、お前を一人にさせるより、せめて俺がいた方がいいかな、と思って来たんだが、
   予想通りだった。数少ない友人が廃人になったら困るからな」

そう言って笑うと、袋から暖かいチキンと飲み物をとりだした。


('A`)「とりあえず、食え、んでもって、飲め。落ち着くぞ」

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:07:06.06 ID:Ti1DZkKq0

((; ゚ω゚)))「ありがとうだお・・・・・・」


震える手で飲み物を受け取り、口に含む。
安心という温もりが全身にゆっくりと広がっていく。


(; ゚ω゚)「でも、どうやって入ったんだお?」


('A`)「ああ、それなんだが・・・・・・」


そこでドクオは玄関を振り返った。
つられて内藤もそちらを見る。


(; ゚ω゚)「・・・・・・」


夜の風が其処から吹き込んでいた。


('A`)「中からうめき声が聞こえたんでな・・・・・・ちっとばかし思いっきりやっちまった・・・・・・」


外に面していた窓が粉みじんになっており、
大小の欠片が散らばっている。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:13:39.03 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「悪いな。だが、先に言っとくが弁償する金はねぇぞ。
   俺はお前を助けてやったんだから、むしろ礼を言われるべきであって、
   霊退治だけにな。だから、今月の食費を削るつもりは毛頭ない」


夜風のように颯爽と通り抜けていくドクオのセリフは、
内藤の耳には一言足りとも入ってこなかった。

ただ、

(; ゚ω゚)「感謝・・・してるお・・・・・・」


覚めない悪夢から助けてもらったのだ。
ガラス代くらい安い、との判断が内藤の頭で下された。


('A`)「まぁ、ちょっくら片づけるわ。ほっといたら怪我しかねないしな」


(; ゚ω゚)「明日・・・・・・精神科の病院に行くのかお?」

('A`)「いや、やめだ。俺は金輪際、例は信じてなかったが、今回のことで信じるようにしよう。
   で、お前を助ける努力をしてやる」

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:24:59.10 ID:Ti1DZkKq0

ガラスのゴミを片づけながら、ドクオは言った。
その小さな背が、かつての数十倍頼もしく見えたのは内藤の心に秘められていたが。

('A`)「明日は、音無を祓ってもらおうかと思う」


そして、振り向くとそれが台無しになることも。


(; ^ω^)「どこでだお?」

('A`)「すぐ近くにある神社で、だ。とりあえず、寝ればいい。
   俺はお前のパソコンいじらせてもらうぞ」


(; ^ω^)「それじゃあ、頼むお・・・・・・」


再び布団に入った内藤は、静かな寝息を立て始めた。
傍に友人がいるだけで、緊張の糸が切れたのだろう。



('A`)「ふー、っじゃあ、このパソコンを俺スペックに改造しちまうか」


ドクオが鞄から取り出した電子機器をつけ足したり、
元からあったものと交換したりしているうちに、夜が明ける。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:33:53.90 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「起きろ、いつまで寝てるんだ」


(; -ω-)「おー、昨日は遅かったから、もうちょっとだけ・・・・・・」

('A`)「俺は寝てねえんだけどな? さっさと起きろ。神社に行くぞ」

布団をはがし、軽い蹴りを入れる。
諦めたのか抵抗をやめ、顔を洗いに洗面所に向かった。

(; ^ω^)「ふぅ・・・・・・まだこっちに来て数日なのに、
      こんなに怖い思いをするとは思ってもみなかったお」

('A`)「残念ながら、まだその怖い思いは終わってねぇよ。
   準備できたなら、行くぞ」


(; ^ω^)「場所はわかるのかお?」

('A`)「窓から見えるぞ」


ドクオの案内で町内最大の神社に向かう。

狭い境内と大きな鳥居は不釣り合いだった。

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:44:07.99 ID:Ti1DZkKq0

(; ^ω^)「ちっちぇ癖に鳥居だけは立派だお・・・・・・」

('A`)「何とも言えんバランスだな・・・・・・」


/ ,' 3「失礼な奴らじゃのう、わざわざ文句でも言いに来たのか?」

二人を出迎えたのは、年老いた爺だった。

つつけば倒れそうな格好をしているが、
その言葉は現役を思わせる力強さがある。

('A`)「ところで、ここは除霊をやってるか?」

/ ,' 3「勿論だとも。安産祈願から憑依まで、なんでもやっておる」


(; ^ω^)(怪しいお)

('A`)(そう言うな。由緒ある神社だからな)


('A`)「なら、除霊で頼む。【音無】のだ」



/ ,' 3「断る!」

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 00:55:23.63 ID:Ti1DZkKq0

返ってきたのは空気が裂けてしまうような鋭い言葉。


(; ^ω^)「なっ!」

('A`)「どうしてだ? 金は払う」


/ ,' 3「音無様を除霊しろだと? ふざけるなよ?
    そもそも、音無様は神様なんじゃ。人を呪ったりはせん。
    もし本当に呪われたんだとしたら、それだけのことをしでかし」


('A`)「音無伝説、どういう意味だ?」


ドクオが男の言葉を遮る。

/ ,' 3「巷で噂になっているモノじゃろう? そんな馬鹿なことありゃせん。とっとと帰れ」


黙ったかと思うと、最後まで一気にまくしたて、
ドクオとブーンの呼びかけには応じず、背を向けて歩いてった。

(; ^ω^)「どういうことだお・・・・・・?」

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 01:07:46.23 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「音無伝説・・・・・・あんまりいいようには思われてないみたいだな」


(; ^ω^)「じゃあ、どうするんだお?」

('A`)「ちょっと待て、今考えてる」

(; ^ω^)「は、早くしてくれお! まだ死にたくないお!」

打つ手が無くなった、という事実が内藤を焦らせる。


('A`)(音無が神だと仮定しよう・・・・・・。俺達だけで対応するのは不可能だろう。
   神社の神主は相手にしてくれない。ならどうする・・・・・・?)

(; ^ω^)「ドクオ・・・・・・」


('A`)(あーっくそ、分かんねぇ・・・・・・。何でブーンが狙われた?
    そもそもネットの情報はどこまで正しい・・・・・・)


神社を出て、内藤宅への道をたどる。

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 01:23:38.05 ID:Ti1DZkKq0


(; ^ω^)「っぅぅぅ!!」

唐突に頭を押さえてしゃがみこむ内藤。

('A`)「どうした?」

(; ^ω^)「頭が・・・・・・割れそうだお・・・・・・」


咄嗟に内藤の頭に浮かんだのはネットに書いてあった情報。

───肉体的変異が起こり始める



(; ω )「おぉ・・・・・・」

('A`)「おい、しっかりしろ! おい!」

ドクオが肩を支えて立ち上がらせようとするが、
体格に差がありすぎる。

倒れ伏さないように支えていることが精一杯だった。

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 01:33:22.59 ID:Ti1DZkKq0

(;  ω )「うぅぅうぅ・・・・・・」

('A`)「ちょっと我慢しろ、今、救急車を呼ぶから!!」


携帯電話を取り出し、三桁をコールする。
対応に出た女に、状況を手早く説明するドクオ。

数分も待たずに、救急車が到達した。
二人を近くの病院まで運ぶ。



白いベッドの上に、内藤は穏やかに眠っている傍で、
医者はドクオに状況を説明する。

「ただの頭痛です。今夜は病院に泊らせた方がいいでしょう。
あなたは友達かね?」

('A`)「はい、あの、えっと、一緒に泊ることはできませんかね?」


「残念だけど、個室は割り振れないから。
心配なのはわかるが、今日は帰って休みなさい」


ドクオの努力空しく、病院を追い出されてしまった。

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 01:44:11.88 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「っち、分からず屋の医者め・・・・・・。まぁ、病院なら他の人間もいるしな・・・・・・」


搬送された病院は幸いにも、ドクオの家のすぐ側。
家に帰り、机の上にレポート用紙を広げる。

('A`)(【音無】から逃れる方法は、いったいどこにある・・・・・・)


広大なインターネットの海から必要な情報を得るため、
ドクオはパソコンを立ち上げた。





(; -ω-)「むにゃ・・・むにゃ・・・」



カツカツカツカツカツカツ

                ・
病院のリノリウムの床は、音が良く響く

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 01:49:53.02 ID:Ti1DZkKq0

(; -ω-)「む・・・・・むぅ・・・・・・」




カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ




(;; -ω-)「う・・・・・・・・ん・・・・・・・・」




カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ





廊下を歩いているはずの足音は止まらない。

鳴り続ける。


166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 02:16:40.99 ID:Ti1DZkKq0

(;  ω )「ブーンにまとわりつくなお! もうやめてくれお!」



カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ

カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ



カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ

カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ




足音に紛れて聞こえる確かな「声」



「ぜったいにゆるさない・・・・・・さきにころしてやる・・・・・・」

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 02:23:30.25 ID:Ti1DZkKq0

そして、音が無くなった。


風邪が窓を揺らす音も

廊下を歩くナースと音も

病院特有の機械的な耳鳴りも


全て、消え去った。



(;  ω )「音・・・・・・無・・・・・・」



先程までなっていた音が恋しくなるほどの完全なる無音。


自分の声でさえ、飲みこまれていく。
助けを求めても、誰にも聞こえないのではないか、そう錯覚してしまう。


頼みの綱であるドクオは傍にいない。

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 02:34:46.14 ID:Ti1DZkKq0

(;  ω )「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」


無音の世界は終わらず、眠ることは許されない。
時間が経つことを感じることができない。


(;  ω )「はぁ・・・はぁ・・・うっ・・・おうぇぇえぇ」


吐き出されるのは胃酸。
そのせいで、喉が焼けるように痛む。


内藤の精神は限界まで痛めつけられ、悲鳴を上げている。
何も考えず、ただ生きているだけの存在になろうとしていた。



その時、ポケットに入っていた電話が鳴った。


割れた液晶からは相手を伺うことができない。
前回と同じように、音無からかもしれない。

ただ、こんなタイミングでかけてくれるのは、あの友人しかいないと信じ、とった。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 02:41:01.76 ID:Ti1DZkKq0


      「                           」

(;  ω )「ド、ドクオかお・・・・・・?」

相手は応えない。
聞こえなかったのかと思い、再び声をかける。


(;  ω )「ドクオ?」


      「ニゲゲゲッゲゲゲゲゲゲエゲエゲゲゲゲ」


(;  ω )「!?」

余裕はなかった。
今度は完全に壊すために、携帯を思いっきり振りかぶった。

    「いや、すまん。大丈夫か? おーい?」


電話口から聞こえてきたのはドクオの声だった。
思いなおし、会話するために定位置に持ってくる。

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 02:59:52.99 ID:Ti1DZkKq0

(;  ω )「ドクオ・・・かお?」

('A`)「ん、そうだが、どうしたんだ?」

紛れもなくドクオだった。
最初に聞こえた不可解な音は、携帯が壊れかけているからだと
納得してしまう。



(;  ω )「音無が・・・・・・音無が来てたんだお・・・・・・」

('A`)「そうか、なら、丁度いいタイミングだったわけか」


(;  ω )「今どこにいるんだお?」

('A`)「普通に家だ」

(;  ω )「そうかお・・・・・・」


(;  ω )「電話・・・・・・切らないでほしいお」

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 03:04:49.10 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「ああ、別にかまわないが・・・・・・」


(;  ω )「助かるお・・・・・・」

携帯を枕元に置く内藤。
友人の声が聞けただけで安心感が得られる。

いつでも話せる状況にしておくことで内藤は
眠りにつくことができた。

('A`)「寝たのか・・・・・」


携帯の液晶がその光を失った。

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 03:15:41.78 ID:Ti1DZkKq0



「おはようございます。内藤さん。気分はどうですか?」

営業スマイルを張り付けた医者が、脈をとる。


(;  ω )「まぁまぁですお・・・・・・」

「そうですか。まだ病院に寝泊まりされても結構ですよ?」


(;  ω )「いや、いいですお・・・・・・」


内藤が携帯を手に取ったと同時に鳴りだす。


「困ります。院内でのご使用はご遠慮いただきたい」

医者の苦言を背中に受け、病室を飛び出した。
通話可能と書かれたボックスの中まで走り、すぐに出る。


(; ^ω^)「もしもし?」


208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 11:25:29.36 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「起きてたか、ちょうどいいや」

少しの無言の後、ドクオの声が聞こえる。

(; ^ω^)「どうしたんだお?」

('A`)「昨日、音無について調べてたんだがな。
   どうやら山の頂上に顕現するための【依代】があるらしいんだ。
   俺は、調べすぎて疲れたから寝る。おそらくだが、そいつをぶっ壊せば全て終わるはずさ」


(; ^ω^)「本当かお!? 助かるお」

携帯から聞こえるドクオの声は疲れていた。
ここ最近は音無について調べ続け、夜も寝ていないのだから当然だろう。

(; ^ω^)「行ってくるお!」

解決の方法が見つかった内藤の足取りは軽い。
携帯をポケットにしまい、退院手続きをとると、病院から飛び出した。

そして、愕然とする。
病院から見えるのは二つの山。

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 11:28:28.39 ID:Ti1DZkKq0


(; ^ω^)「どっちだお・・・・・・」

既に寝ているはずのドクオに尋ねるのも気が引け、
病院から見て左側の山に登ることにした。

(; ^ω^)「一発で当たってくれお・・・・・・」

音無の精神破壊を受け続けた内藤の体力は、
数日前よりもずっと低下していた。
それほど高くもない山を登るのでさえ、息が切れる。

そして、何よりも・・・・・・山中は昼間であっても、音が少ない。


(; ^ω^)「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」


(; ^ω^)「出るなお・・・・・・絶対に・・・・・・」



しかし・・・・・・容赦なく、警告なく、音は消える。


(; ^ω^)(っ!
      音無は精神にしか干渉することはできないはずだお・・・・・・。
      気を強く持てお・・・・・・・・・・・)

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 11:31:54.48 ID:Ti1DZkKq0


自らの心を奮い立たせる。
そんな内藤をあざ笑うかのように世界は歪む。

肌に風を感じるが、音として聞こえない違和感。
決意を揺るがすように、強い風が吹く。


(; ^ω^)「ドクオ・・・・・・」


階段の終わりはまだ見えない。

内藤は膝をついて蹲ってしまう。


(; ^ω^)「もう・・・駄目だお・・・・・・」


ポケットから液晶の壊れた携帯を取り出し、
強く握りしめて立ち上がる。

電話がかかってくることはない。
田舎の山の中まで電波が届かないことぐらいは分かっていた。

(; ^ω^)「でも・・・・・・せっかくのヒントなんだお・・・・・・」

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 11:37:06.12 ID:Ti1DZkKq0


(; ^ω^)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

大きく息を吸って、声とともに吐き出す。

一段飛ばしで階段を駆け上がる。


(; ^ω^)「はぁ・・・はぁ・・・・・・」

体力は既に限界寸前だが、内藤はたどり着いた。

(; ^ω^)「ここの何処かに・・・・・・依代が・・・・・・」


小さな境内。

目的のはずであったものはすぐに見つかった。



大人の半分ほどしかない石の像が。
おそらく、女の像であったに違いない。


(; ^ω^)「そん・・・・・・な・・・・・・」

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 11:42:44.40 ID:Ti1DZkKq0


境内の中心に依代であったはずの像が立っていた。






                     その上半身を失いながらも










一際強い風が吹き、山全体が唸った。

そして同時に、呻き声が響く。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


憤怒と苦悶に満ちた、恐ろしい声が。

220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 12:07:52.03 ID:Ti1DZkKq0

(((;  ω )))「う・・・あ・・・・・・・」


     ぽつ ぽつ


突然降り始めた豪雨が内藤の全身をうつ。



(((;  ω )))「ドクオ・・・・・・・助けてくれお・・・・・・」


ずぶ濡れになりながら階段を下りる。

依代であるはずの像は壊されていた。
そこから思考が続かない。


雨の音が身体を犯す


風の音が精神を犯す


心臓の音が魂を犯す

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 12:15:14.21 ID:Ti1DZkKq0

ただ、ドクオに会いたい一心で山を降りる。

その足取りは覚束ない。
足を滑らせば、急な階段を転がり落ちてしまう。


そうなれば、確実に命はない。


(((;  ω )))「ドクオ・・・・・・・誰か・・・・・・誰でもいいから助けてくれお・・・・・・・」


呪いに対する護符のように呟き続ける内藤。



(((;  ω )))「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・」



一段下りて立ち止まり    


一段下りて立ち止まり

226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 12:25:45.26 ID:Ti1DZkKq0

(((;  ω )))「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・」


木々の合間から町が望める。

楽しい新生活が始まるはずであった町。
人生で一番輝けるはずだった場所。



(((;  ω )))「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・」



階段の終わりが見えた。








同時に、意識が闇に落ちた。

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 12:37:16.76 ID:Ti1DZkKq0




どれ程眠っていたのだろうか。

体が震えている。

いや、震えてるのは指先にある・・・・・・




(((;  ω )))「お・・・・・・・?」



携帯が震えていた。
一通のメールの着信を告げるために。

(((;  ω )))「誰から・・・・・・だお?」


壊れた液晶では宛名も確認することはかなわない。
だが、それがただのメルマガでないことは何とか理解できた。

(((;  ω )))「携帯・・・会社に」

中身を確認するために、内藤は立ち上がる。

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 12:50:28.79 ID:Ti1DZkKq0

一歩一歩、しっかりと進む。

(((;  ω )))「すい・・・ません」

ドアを開け中に入る。

店内の床が泥に塗れていくが、そんなことには目も向けず、
店員に携帯電話を突き出した。


「あ、あの、なんでしょうか?」


(((;  ω )))「これに来た、一番新しい・・・メールを見せてくれお・・・・・・」


壊れた携帯を見て、店員が受け取り、作業を始める。
どうなっているのかはわからないが、一枚のA4用紙が渡された。


「携帯、代用品にお代えしましょうか?」


(((;  ω )))「お願いしますお・・・・・・」

メールの内容を印刷したのであろう紙。
宛先は、ドクオからだった。

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 13:08:57.47 ID:Ti1DZkKq0

('A`)「まだ生きてるか?
   勿論、死んでもらっては困る訳だがな。

   黙ってたんだがな、俺の方にも来てたんだ・・・・・・。音無。
   このメールを読んでるってことは、俺はもう死んでるだろうな。
   まぁ、もしかしたら設定消すの忘れてるだけかもしれないから気にしないでくれ。

   音無について、俺が考えてることをこのメールに書かせてもらう。
   少しでも、お前に助けになるように。   
   今、俺の周りでも、小さな物音から声が聞こえる。
   ずっとな。気が狂いそうだ。
   
   音為には人の声を作る力がある。もし、このメールが届いた後、
   俺の声しか聞いたことがなければ、疑ってくれ。

   音無はその依代がなければ、力を振るうことができない。
   一番怪しいのは、双子山の頂上にあるらしい神社だ。

   もし、其処になければ・・・・・・これは最悪の可能性だが・・・・・俺を依代にしている可能性がある。   
   つまり・・・・・・・俺を殺せば、全てが終わる。
   
   ああ、気にするな。その場合、俺の心はとっくに死んでることになる。
   パソコンでも爆発させてくれ。

   それで全部終わる。ははh・・・・・・・死ぬのは怖ぇな。
   頼んだぜ。俺の分も生きてくれよ」

239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 13:21:48.55 ID:Ti1DZkKq0

( ;ω;)「ドク・・・・・・オ・・・・・・」

鼻水と涙で、手紙が汚れる。


( ;ω;)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

膝をついて雄たけびを上げる。
周りの目など気にせずに泣き続けた。


ドクオの手紙通り、病院から姿は見ず、声しか聞いていなかった。
生きていたのなら、どれ程眠くても、山に一緒に来るはずだ。

( ;ω;)「ドクオ・・・・・・・今から行くお」


唖然とする店員を残し、店から飛び出した。

全速を超えて走る。

全力を超えて走る。


何処か冷静な頭は考えていた。
音無は、精神を壊す存在である、と。

( ;ω;)(まだ、助けることができるかもしれないお!)

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 13:30:37.89 ID:Ti1DZkKq0

土砂降りの雨が力を奪おうと、猛威をふるう。
耳から入る音は全てが呪詛になっていた。

だが、立ち止まらない。
速度を緩めない。



ポケットにしまった手紙から、心に直接声が響く。
その音は、その音だけは音無の力をもってしても犯すことはできない。


───黙ってたんだがな、俺の方にも来てたんだ・・・・・・。音無。

( ;ω;)「なんで、なんで、教えてくれなかったんだお!」


───つまり・・・・・・・俺を殺せば、全てが終わる。

( ;ω;)「そんな終わり方! 納得できるわけねぇお!!」


───頼んだぜ。俺の分も生きてくれよ

( ;ω;)「断るお! 一緒に大学生活楽しむって決めてんだお!!!!!!!!」

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 13:44:29.41 ID:Ti1DZkKq0

おんぼろアパートは目の前にある。

部屋の前に立ち、扉を叩く。


反応は・・・・・・ない。

( ;ω;)「ドクオ・・・・・・」


カギはかかっていなかった。


パソコンの前に座っているドクオは眠っている。
その手首を持つと、ゆっくりとした心臓の動きが感じられた。


(  ω )「・・・・・・・」

音無は精神を殺す。
其処にいるのは、ドクオではなく、ドクオであったモノ。

呼吸をしているだけの、人形。

そう分かってしまっても、傷つけることなど内藤には到底できなかった。

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 13:57:31.69 ID:Ti1DZkKq0


カタカタカタ、と音が鳴る。
まるで、笑っているかのように。

(# ω )「音無しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」


次第に酷くなっていく音。

笑い声。


内藤は怒りを無理やり押さえこみ、頭を働かせる。
心を殺された人間を元に戻す方法はないのか。
たどり着いた答え、それは。


(  ω )「・・・・・ドクオを助けてください」

(  ω )「貴方様のお力で、ブーンの友達を返してくださいお」


その場で空虚に向かって、土下座をする内藤。
むやみやたらに鳴っていた音が止まった。

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 14:09:16.25 ID:Ti1DZkKq0


(  ω )「お願いしますお・・・・・・」


音が鳴り止んだのはその間に思考があったからなのか。
それとも・・・・・・・静寂は長く続かなかった。


再び鳴り始めた雑音は何倍も酷くなっている。

(  ω )「怒っている・・・・・・のですかお?」


音無に感情のようなものがあることに驚く内藤。
その一方で音無伝説について調べていた時のことを思い出す。

(  ω )(人々を助けていた神様が・・・・・・どうして・・・・・・)


(  ω )(ドクオが知ったあのページの続きって・・・・・・・)


やかましい音が鳴る中、無意識にパソコンを起動する。
相変わらず立ち上がりは早い。

件のページはすぐに見つけることができた。

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 14:16:35.94 ID:Ti1DZkKq0

音無神は古くからこの地方に伝わる神様である。
四神が都に奪われ、不安定になったこの地を守るために、
わざわざ顕現なされた。

その力は、音の操作。

癒しの音楽をもって、人を病から救ってくださり
静かなる音楽をもって、天災を鎮めてくださっていた。


しかし、ある日。
都から来た使者が音無神をも連れ去ろうとした。

当然、音無神は申し出を断ったのだが、
帝はそれが気に食わず、村の住民を全て殺してしまう。

音無神は村人の怒りを一身に受け、豹変する。
付近の村に災厄を齎し始めたのだ。


最終的に、優秀な陰陽師の力によって、音無神は封印された。


そして長い時が経ち、再び人が集まり集落ができた。
音無神は、封印されていた像を媒体に顕現し始める。

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 14:34:36.31 ID:Ti1DZkKq0

以前ほどの力を持たなくなったが、
新しく村に来た人間を狙った呪いを放つ存在となった。

狙われた人間は、二つの音で精神を壊される。

すなわち、完全なる無音と日常音に混じって聞こえる病んだ音。



音無様に目をつけられて無事であった人間はいない。
特殊な系統を持つ人間には、音無様の狙う人間が分かるようだ。


そして、音無し様から逃れる方法だが・・・・・・

私にはわからなかった。


(  ω )「・・・・・・」

その一文が内藤に与えた衝撃は大きかった。
唯一の退路が絶たれてしまったのではないとまで思ったが、
文はまだ終わっていない。

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 14:48:53.10 ID:Ti1DZkKq0

・・・・・・顕在するために必要なのは依代である。

音無様の依代を破壊することができれば、その力を失わせることができるであろう。
このようなことをかけば、村人は私を許さないかもしれない。

しかし、無関係な人間が呪いにあうなど、本来あってはならないないことなのだ。
これを読んだ貴方のそばに「音無様」の被害にあっている若者がいれば、
どうか手を差し出してやってほしい。



そう締めくくられていた。

(  ω )「そんな・・・・・・」

そこには音無伝説の全てが書かれていた。
内藤が最も欲した情報を除いて。


音無の依代を破壊すれば呪いは遠ざかる、と。
では、人間がより代になってしまった場合はどうすればいいのだろうか?

作者はそこまで考えていなかったのであろう。

(  ω )「くそぉ・・・・・・」


───激しい音は鳴り続ける。

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 14:59:19.12 ID:Ti1DZkKq0

内藤は諦めてなどいなかった。

音のカーニバルの中で必死に考える。


命をかけてまで救おうとしてくれた友人を助けるために。

感謝の気持ちを言葉で伝えるために。


(  ω )(依代が壊されていたのに、音無は存在した・・・・・・。他の場所に依代があるのかお?)


(  ω )(依代は、そんな簡単に作れないはずだお)


集中し、骨から振動させる音が完全に止む。
今まで集めた資料の中から矛盾点を手繰り寄せる。

(  ω )(壊された像はどうだったお? 砕けてそんなに時間は経ってないと思うお)


(  ω )(依代なくして、どうやって力を使ったんだお?)


(  ω )(壊される前に移動した・・・・・・?)

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 15:11:34.05 ID:Ti1DZkKq0

ある一点を通り過ぎ、一つの結論に内藤の考えが収束する。
音無は、依代を変え続けているのだ、と。

(  ω )(壊される前に、像から人間に依代を移したんだお・・・・・・。
      でも、人間はそんなに弱くないお・・・・・・。普通の人間には絶対にとりつけない
      だからこそ、音の拷問で精神を弱らせる・・・・・・)


(  ω )(人間はすぐに死ぬお・・・・・・だから依代を作り続ける必要があった・・・・・・
      依代ごと殺されてしまうと、復活できない、もしくは時間がかかるから)


一つの結論を何度も何度も磨き、
必殺の刃に作り上げる。
友を救い、敵をうち滅ぼすための強靭な武器に。


(  ω )「・・・・・・音無! アンタはもう終わりだお・・・・・・」


おもむろに、足元に転がっていたナイフを拾い上げる。
柄が太く、刀身は鋭く細い。

内藤の手で握るのにはちょうどいい大きさのそれを
目を瞑って動かないドクオに向けた。


ガンガンと喧しかった音がピタリと止まる。

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 15:30:10.73 ID:Ti1DZkKq0

(  ω )「サヨナラだお・・・ドクオ・・・・・・ありがとう」


正面に立って心臓の位置に狙いを定める。
一撃で、苦しまないように。


(  ω )「音無・・・・・・消えてなくなれえええええええええええええええええ」


勢いよく腕を突き出した。
嫌な感覚が腕を痺れさせる。

鍔はドクオの胸にたどり着く。


最後に聞こえた音に混じって
音無しは嘲笑を交えった声で笑っていた。


   「つぎはお前だ」


狂ったような笑い声は次第に弱くなっていく。



そして・・・・・・

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 15:42:08.49 ID:Ti1DZkKq0

そして・・・・・・笑い声は内藤がとってかわった。


(  ω )「くっくっく・・・・・・うまくいったお」


ガンガンと訝しげに音が鳴る。


( ^ω^)「面白いおね? 音無し?」

音から感情を読み取ることが出来た内藤は、
可笑しくてたまらないらしい。

大仰に右手を持ち上げる。

( ^ω^)「これ、なんだと思うお?」


その先にあるのは真っ赤な血液が付いたナイフのはずであった。
だが、その先にあるはずの刃物は見当たらない。


ドクオの胸にも裂傷はない。


('A`)「う・・・・・・あ・・・・・・」

それどころか、ドクオは内藤が部屋に来て初めて声を出した。

294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 15:52:12.05 ID:Ti1DZkKq0

ガンガンガンと荒れ狂ったように音が鳴り出す。
内藤は自分の声が聞こえない中で、
目に見えない敵に丁寧に、状況を説明する。

( ^ω^)「あんたの時代にはこんなものはなかったお。ナイフで刺されれば死ぬしかなかった。
      依代を殺されればあんたの存在に深刻なダメージが出るお」


( ^ω^)「だから、ドクオの体から逃げた。でも、こういう仕掛けになってるんだお」

ナイフを持っている手と反対側の手で、柄の底を強く押す。

カチッと言う音で、刀身が撥ね出てきた。


( ^ω^)「ブーンが近くにいれば、強い意志を持つ人間が近くにいれば、アンタは憑くことができないお」


ガリガリガリ

( ^ω^)「消えろ!」


抵抗するような、しがみつくような音は次第に小さくなる。
音が完全に消えてなくなるまで待ち、救急車を呼ぶ。

298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 15:58:45.11 ID:Ti1DZkKq0

声を出してはいるが、ドクオは口から涎を垂らしており、
目は中空を見ていた。


まるで、子供に戻ってしまったかのように。

(  ω )「ブーンのせいで・・・・・・すまねぇお・・・・・・」


救急車で一緒に病院まで向かう。
不可解な症状に隊員も手を出しかねていた。

(  ω )「無事であってくれお・・・・・・」


強く手を握り、祈る。
ドクオが医者に診てもらっている間、待合室で待つ。

雑音からは聞こえる筈のない声が聞こえ、
内藤を苛む。


(  ω )(音無はもう消えたお・・・・・・消えたんだお・・・・・・)


「内藤さんー? 内藤さんはいらっしゃいますかー?」

自分の名前が呼ばれたことに気づき、名乗り出る。
通された部屋には、ドクオと医者が座っていた。

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 16:05:42.34 ID:Ti1DZkKq0

(; ^ω^)「先生、ドクオは・・・・・・?」


「原因は分かりませんが・・・・・・一時的な幼児退行です。
 強いショックや不安を与えることがありましたか?」

(; ^ω^)「おそらく・・・・・・治りますおね?」


「時間が解決してくれるのを待つしかありませんね・・・・・・。
 体の機能に障害は出ていないので、いつかは戻るはずですが」


(;  ω )「そう・・・・・・ですかお・・・・・・」

医者の言葉は内藤を打ちのめすのには十分であった。


「五感から、思い出を引き起こすものを感じさせてあげると、思い出すかもしれません。
 彼の良く聞いていた音楽や、よく食べていた食べ物などを用意してあげてください」


(;  ω )「はい・・・・・・ありがとうございましたお」

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 16:15:09.52 ID:Ti1DZkKq0

「個室をあてがいますので、暴れたりしないように一緒にいてあげてください。
 親御さんには連絡されていますか?」


(;  ω )「ブーンがしときますお」


ドクオはベッドに寝かされたまま病室に運ばれた。
内藤の時とは違い、一人部屋である。

ベッドに横になったドクオはすぐに寝てしまった。

(;  ω )「ドクオ・・・・・・」

命の恩人であるはずのドクオを救うことができなかった。
横に座り、自分を責め続ける。



ぐぅ、と腹の音が思考を止める。



(;  ω )(そういえば、今日は何も食ってなかったお・・・・・・)

腹を満たすために、院内の売店に向かう。

311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 16:22:16.62 ID:Ti1DZkKq0

(;  ω )「パンを五つくださいお」

適当に選んだパンと飲み物を買う。
それを袋に入れて、病室に持って帰った。

ドクオはまだ気持ちよさそうに寝ている。

(;  ω )「はぁ・・・・・・」


顔を見ていたって腹は膨れないし、
いつ音無が戻ってくるかもわからない。

(;  ω )(ドクオを守るためには、ブーン自身が強くないといけないんだお・・・・・・)


パンを無理やり飲み込み、
渇いたのどをジュースで潤わせる。


カツカツカツ



廊下を歩く音はよく響く。
それは、共同部屋でも、個室部屋でも同じだ。

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 16:27:20.25 ID:Ti1DZkKq0

目を閉じて背もたれに体を預けているだけで、
寝てしまいそうになる。

それだけ、疲れているのだろう。


カツカツカツカツカツカツカツ


廊下を誰かが歩いている。


カツカツカツカツカツカツカツ


反復する同じ音が、内藤に忘れていた事実を思い出させる。
全て解決したと思っていた。
少なくとも、暫くは後腐れがないほどに。


カツカツカツカツカツカツカツ


だが、それは違った。
最も重要な点を見逃していたのだ。

320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 16:34:06.60 ID:Ti1DZkKq0

カツカツカツカツカツカツカツ


(;  ω )(誰も気づくはずがなかったお・・・・・・。
      音無の姿を見たことがある人は、いないんだお)


安心感が誤った考えに至らせる。
先入観が、判断を鈍らせる。


カツカツカツカツカツカツカツ


(;  ω )(前提が間違ってたんだお・・・・・・)


カツカツカツカツカツカツカツ


(;  ω )(最後まで戦うお・・・・・・ブーンを助けてくれたドクオを、今度はブーンが護るお)

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/30(土) 16:36:58.98 ID:Ti1DZkKq0










                          カツカツカツカツカツカツカツカ












                                音が、消える



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