从 ゚∀从 素直になれないようです

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:22:35.08 ID:66vTffRrO

ぴろりんこ、ぴろりんこ、ぴろりんこ、

無機質な電子音が部屋に響いた。
枕元にだらしなく寝転がっている携帯電話に渋々手を伸ばすと、ディスプレイには”ツン”と示されていた。

从 -∀从「……もし、もし」

『やっぱり寝てたわね、まったくこんな日くらいきちんと学校来なさいよ』

从 ゚∀从「ん……いま、なんじ?」

『部屋に時計くらいないの? 今は10時半よ』

从 -∀从「…………」

重く固まった脳みそをを必死に動かして、今日するべきことを思い出す。

確か今日はアルバムの配布があって、最後の練習があって、それで、それで、……それで終わりだったはず。
そうだ、学校は午前中で終わりのはずだ。で、今が10時半ってことは……

从 ゚∀从「……今から行ってもほぼ意味ねぇだろ」

『じゃあ、卒業アルバムどうするのよ?』

从 ゚∀从「うーん……、ツンが俺の家までもってきてくれよ」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:25:10.66 ID:66vTffRrO

『いやよ、あれ意外と重いんだから』

いつのも如く、きっぱりと拒否された。
迷いのないその声は、断られて不愉快になるよりは、むしろ清々しい気分になる。

从 ゚∀从「……モララーに頼んで」

『モララーをそう都合よくパシリにするもんじゃないわ』

从 ゚∀从「じゃー、どうすればいいんだよ……」

『ばかねぇ、普通に考えてアンタが学校来ればいいだけの話でしょ』

『今日学校おわったらみんなでいつものファミレス行くの。 あんたも来るでしょ? そのついでに学校よればいいじゃない』

从 ゚∀从「あい、そうすんよ。 じゃあな」

携帯電話を枕元に放りなげて、ゆっくりと身体を起こした。
腕を天井に向って持ち上げ、大きく背伸びをする。が、それでもけだるさはぬぐえなかった。

从 ゚∀从「……学校、行くかぁ」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:31:44.48 ID:66vTffRrO

明日、3年間通い続けた中学校を卒業する。

この言葉を聞いたら、友人はみんな呆れたように笑うかもしれない。
俺の中学生活は堕落した怠惰なものだった。1年間の半分は遅刻・早退を繰り返し、月に数回は自主休日をつくった。

面倒くさがりで、飽きっぽくて、逃げ癖があって、すぐに諦める。
それが昔からの俺の性格だった。そんな性格は、この3年間でさらに磨きをかけた。

改めて中学生活を振り返ると、今までの俺は幼馴染であるデレに支えられていたように思う。
散々負担を掛けて頼っていた癖に、最後には傷付けてしまった。なんで、こんなことになってしまったのだろう。
あんなに毎日一緒にいて、楽しく過ごした日々は、いつのまにかどこかに消えてしまった。いや、俺が勝手に壊してしまった。

今でも思い出す、あの日。
俺はこのことを一生後悔し続けるのだろうか。

そして、明日を境に、本当にデレとは疎遠になってしまうのだろうか。

もし、自分がデレみたく素直で優しい性格の持ち主だったのならば、きっとこんな後悔をすることもなかった。
たとえ、同じ過ちを繰り返しても、一言「ごめんね」と言うことができるはずだ。
だけど、素直じゃないひねくれ者の俺は、その一言をどうしても言うことができずにいる。

そう、俺は一生このもやもやを引きずって生きていくに違いない。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:33:22.33 ID:66vTffRrO

(,,゚Д゚)「あ、ハインー! こっちこっち!」

从 ゚∀从「おっす」

( ・∀・)「おー」

(*゚ー゚)「ハインちゃんおはよー、せんせ呆れてたよぉ。 明日は絶対来てくれってさぁ」

从 ゚∀从「いやぁ、先生には悪いと思ってんよ」

(*゚ー゚)「あははっ、どうだか!」

ξ゚听)ξ「アンタ、学校行ってきたの?」

从 ゚∀从「まだ、これから」


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:35:29.29 ID:66vTffRrO

ξ゚听)ξ「もう起きてから何時間もたってるじゃない。 なんでまだなのよ」

从 -∀从「……二度寝」

ξ゚ー゚)ξ「呆れた、でもアンタらしいわね」

( ・∀・)「まだ飯食ってるから、先に学校行って来れば?」

从 ゚∀从「えー、腹減ってんだよ」

(*゚ー゚)「あとでじゃ絶対行かないと思うよ? ふふふ」

从 ゚∀从「ん、じゃあ行ってくっか」

(,,゚Д゚)「いってらー」

( ・∀・)「おー! あ、そういえば教室に……って無視して行くなっ」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:41:42.16 ID:66vTffRrO

从 ゚∀从(あー階段だりぃ)

ファミレスから20分ほど歩いて、何段もの階段を上り、ようやく3階にある自分の教室にたどり着いた。

冷んりと張りつめた静かな廊下を歩く。
3年はすでにみんな帰宅なり、飯を食いに行くなりで、きっともう誰もいない。他の学年はもちろん授業中。
なんだか、いつもの学校じゃないみたいだ。

がらがらがら、

教室のドアを開けると、ひとりの少女と目があった。
デレだ。

从 ゚∀从「あ、」

ζ(゚ー゚*ζ「ハイン、ちゃん」

教室には彼女がたったひとりきりで椅子に座っていた。
つまり、今教室の中には、デレと、俺の、ふたりきなわけだ。心臓が激しく波を打つ。

从 ゚∀从「なにしてんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ん、忘れものしちゃって」

从 ゚∀从「デレが、忘れものなんて珍しいじゃねーか」

ζ(^ー^*ζ「そんなことないよ? 私だって忘れものくらいするもん」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:43:06.85 ID:66vTffRrO

動揺する鼓動をごまかすように話をかけた。ふたりでちゃんと会話をするのは、本当に久しぶりだった。
彼女は相変わらずの愛らしい笑顔で、甘い声で、俺の問いに答えてくれる。

ζ(゚ー゚*ζ「ハインちゃんこそ、今頃学校来ちゃだ…………ごめん、なんでもない」

从 ゚∀从「…………」

デレは笑った顔を崩し、俯いてしまった。

俺の悪い感情が、湧き出てくる。
デレのこんな表情見たくない、逃げたい、逃げたい、逃げたい。

从 ゚∀从「俺、卒業アルバム取りに来たんだ……お、あったあった」

苦しい。

从 ゚∀从「じゃ、先帰るな」

苦しい。

ζ(゚ー゚*ζ「うん、気を付けてね!」

でも、きっとデレのほうが苦しい。
そんな悲しい顔で笑わないでくれよ、デレ。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:48:34.74 ID:66vTffRrO

从 ゚∀从「あ、あのさ!」

ζ(゚ー゚*ζ「ん?」

从 ゚∀从「デレは、帰らないのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……帰るよ」

じゃあ、途中まで一緒に帰ろう。

そう言えば、彼女は笑顔に戻ってくれるんじゃないか。
……いや、こんなのは自惚れだ。
彼女は、とっくに俺に愛想を尽かしているに決まってる。いつまでも、依存しているのは俺だけだ、きっと。

从 ゚∀从「そっか! じゃあな!」

床を蹴るようにして、教室を飛び出した。
そのまま一気に階段を駆け降りて、校門の外に足を踏み出し、それからもしばらく走った。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:50:41.04 ID:66vTffRrO

ファミレスに辿りつくまで、夢中で足を動かした。
入口に着くと、モララーがひとりで座っていた。

俺はモララーを見つめながら、静かに息を整える。

( ・∀・)「どした、そんなに息切らして……変な奴でもいたか?」

从;゚∀从「なん、でもねぇよ……なんで、ひとりでっ、……ひとりでいるんだ?」

( ・∀・)「あーあー、無理して喋んなって。 みんなはカラオケに移動してるよ」

从 ゚∀从「待ってなくても、メールしてくれれば良かったじゃねぇか」

( ・∀・)「まま、こまかいことは気にすんなよ!」

にっかりと笑うモララーの顔をみると、なんだか少し気持ちが落ち着いた気がした。
このしまりのない顔には、何度か助けられた気がする。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:57:41.05 ID:66vTffRrO

从 ゚∀从「じゃ、行こうぜ」

( ・∀・)「おう! あ、そういやデレさんまだいた?」

从 ゚∀从「は? 何でお前そんなの知ってるんだ?」

( ・∀・)「いやー、言おうとしたらお前無視して行っちゃったじゃん。 お前のこと、心配してたみたいだぞ?」

俺の、心配?

( ・∀・)「今日お前が学校来るのずっと待っててさ、友達に飯行こうって言われてもその誘い断ったみたいだ」

どうしてそんなことするんだ

( ・∀・)「そんなデレさんをみて、クラスの奴がさ、ハインに関わろうとするだけ無駄だってちょっとキツめに言ったみたいで……」

( ・∀・)「そしたらデレさん、怒って”そんな風に言わないで!”って。 大きい声なんて出したの初めて聞いたからびっくりしたぜ」

( ・∀・)「お前のこと悪く言うのは許さないって……ずっとお前たち喧嘩してたのかと思ったけど、お互い誤解してただけなのか?」

なんで、デレは俺のためにそんなことしてくれるんだ?
どうして、どうして、こんな……俺の……

(;・∀・)「じゃっ、行くべーってどこ行くんだよ!?」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/16(土) 23:59:16.17 ID:66vTffRrO

気付けば来た道を再び走っていた。

忘れものは嘘?
本当はずっと待っててくれた?
自分の身勝手でひどいことをした俺を待っててくれた?
どうして!どうして!どうして……!

从 ゚∀从「デレ……! デレ……!」

長い階段も駆け上った。
喉が痛い、髪が乱れて頬にぶつかる、アルバムの入った鞄が肩に食い込む。
それでも、早く、1秒でも早く、教室に行かなくちゃ。

教室のドアが見えた。

急いで足を止めようとしたら足が縺れて転んだ。
震える腕と足に力を入れてなんとか立ちあがる。

がらがらがら、

从 ゚∀从「はぁ……はぁっ…………」



教室は、からっぽだった。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:00:29.45 ID:rhPvJhtkO

从 ゚∀从「そりゃ、そう……だ……」

足ががくんと折れた。

その場に座り込んで必死に乱れた息を元に戻そうとするが、なかなか治まらなかった。
ごほごほと咳込むと喉が掠れた。首すじはうっすらと汗ばんでいる。

俯くと膝の上に雫が落ちた。

从 ;∀从「ごめ……な……ごめんな……デレ……ゴホッ、……うっ……はぁ…………」

デレに面を会わせて言うべき台詞を独りごちた。
なんて意味の無い、ちっぽけな言葉。





足の震えが止まっても、喉の痛みがひいても、その場から動くことができなかった。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:08:01.51 ID:rhPvJhtkO

デレとは幼稚園の頃からずっと一緒だった。

家が近かったため、同じ幼稚園に通い、同じ小学校に通い、同じ中学校に入学した。
登校するとき、遊びに行くとき、必ず近くの煙草屋の前で待ち合わせをして一緒に出掛けた。帰りももちろん一緒。

毎日のように同じ時間を過ごし、多くの言葉を交わした。

だけど、会話が尽きることは一度だってなかった。

デレは俺とまったく違った性格をしていた。

ふわふわしてるように見えて、実はしっかり者。
勉強もできて、学級委員によく任命されるような、先生からの信頼の厚い優等生。
運動はどちらかというと苦手だけど、ずば抜けた音楽の才能を持っていた。彼女の歌声もやピアノの演奏は、すべての人の心を癒す力があった。

今思えば、そんなデレを幼いながらに尊敬していたように思う。
みんなが憧れ羨ましがる彼女の友人であることを常に誇りに思っていた。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:09:22.63 ID:rhPvJhtkO

デレもよく俺のことを褒めてくれた。

勉強も音楽も図工も不得意だったが、スポーツの才能だけは神様から恵んでもらった。
別に”どちらかといえば得意”に入る程度のものだったが、彼女は目をきらきらとさせて周りに俺の自慢する。
褒められ慣れてないからくすぐったかったけど、すごくすごくうれしかった。

宿題をサボれば、先生以上に俺を怒った。
小学4年生のとき、2回続けてサボったことをきっかけに、宿題が出た日はデレが俺の家にきて一緒に宿題をやるのが日課になった。

勉強で分からないところがあれば、丁寧にわかりやすく教えてくれた。
時間をかけてやっと問題を解くと「やったね!」と自分のことのように喜んだ。

リコーダーや粘土の工作がうまくできずに居残りさせられたときは、一緒に学校に残り最後まで付き添ってくれた。

投げ出しそうになったとき、諦めそうになったとっき、逃げそうになったとき、必ずそばにデレがいる。
楽しいときも、嬉しいときも、必ずそばにデレがいる。

どんな時だって一緒だった。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:11:25.46 ID:rhPvJhtkO

そんな関係のまま中学に入学した。

1年のとき、クラスが離れてしまった。
ひどくショックで拗ねたりしたけど、デレが笑顔で今までと変わらないよ、と言ってくれたので俺も笑顔になった。

いつもの場所で待ち合わせて、一緒に登校した。
放課後はデレが俺の教室まで迎えにきてくれて、一緒に入部したテニス部に向かった。
帰りは、今日1日のことを話しながら下校した。

デレの言った通り、何も変わらない、そう思っていた。

2年になって一緒のクラスになった。

それからは、休み時間も一緒にいるようになった。
でも、それは二人きりじゃない。少し寂しくもあったけど、デレとならそれでもよかった。
他の子とも仲良くなれるように頑張った。

しかし、なかなかうまく行かなかった。

授業中に眠ってしまうと、「大丈夫なの?」と心配より軽蔑の声色で言われる。
「一緒にトイレ行こうよ」と言われたとき催していないので断れば、不満そうな顔をする。
誕生日を忘れてしまうと、「ひどーい」と冗談とも本気ともとれる言葉を投げる。

様々なことに違和感を感じた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:19:35.20 ID:rhPvJhtkO
授業中の居眠りに対して真剣に注意を促し、大抵なことを「仕方ないな、ハインちゃんは」と
心からの笑顔で許してくれるデレとずっといた俺は、思春期によくある”女の子のルール”を守ることができずにいた。

次第に、学校に行くことがひどく面倒に感じ、いやでいやでどうしようもなくなった。

その頃から、遅刻を繰り返すようになる。

待ち合わせ時間をすぎるとわざわざ家まで迎えに来てくれるデレに「先に行ってて」と一言いうだけでドアを閉めた。
彼女は眉を下げて「ちゃんときてね」と言った。その言葉にいつも心苦しくなるのに、俺は寝坊癖を直すことができない。

学校に着くと、すぐさまデレが俺にかけ寄ってくる。
そして俺たちは決まった会話をした。

从 ゚∀从「今日は、ごめんな」

ζ(゚ー゚*ζ「気を付けなきゃだめだよっ! 今度VIPストアのシュークリーム奢りね!」

从 ゚∀从「はーい、了解」

デレはいつだって優しい声で甘い罰を下した。
俺はいつだってそれに甘えた。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:21:11.37 ID:rhPvJhtkO

そんなある日。

遅刻して学校に行くと、いつもかけよってくるデレが来ない。
どうやら他の人と話していて、俺が来たのに気付かなかったらしかった。
彼女だって、ずっとドアを見張ってるわけじゃない。話が盛り上がって夢中になることだってある。
そもそも、かけ寄ってくる義務なんてない。

でも、それでも、すごくショックだった。

わざと彼女の横を通りすぎた。
それに気付いた彼女は「ハインちゃん、おはよう!」と言ったが、俺は無視した。

俺は本当に子供だ。わがままだ。
その日は1日、彼女との会話をそれとなく避けた。
頭にへばりつくデレの悲しそうな顔を必死で叩き壊す。
休み時間毎に俺の席にきてくれたが、午後には来なくなった。自分の席で、ただただ黙って下を向いていた。

(*゚ー゚)「なぁーに、喧嘩?」

そんな様子を見ていたしぃが楽しそうに聞いた。
彼女と会話らしい会話をしたのは、それが初めてだった。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:26:20.64 ID:rhPvJhtkO

从 ゚∀从「べつに」

(*゚ー゚)「ふぅん?」

从 -∀从「……楽しそうだな」

(*゚ー゚)「んふふ、そう?」

ξ゚听)ξ「アンタら何で仲いいの?」

頭の上から落ちてきた台詞に顔をあげるとツンがすぐ横で立っていた。
彼女と話すのもほぼ初めてだったし、美人で近寄りがたいで有名な人だったので、少し緊張が走る。

从;゚∀从「何でって……えーと、幼馴染だから」

ξ゚听)ξ「ああ、なるほどーなつ。 納得したわ」

从;゚∀从「な、納得?」

(*゚ー゚)「だってぇ、周りから見れば不思議だったよ? あのグループで……正直ハインちゃんだけ浮いてたし」

ξ゚听)ξ「優等生グループに、ひとりだけサボリ魔だもんねぇ」

彼女たちの言葉に目を丸くし、それと同時に胸の奥がちくちくと痛んだ。それは、ぴしゃりと的を得た意見だったからだ。

俺とデレはまるで正反対で、彼女の友達とはまるで気が合わなかった。デレは優しいから、俺に合わせていただけなのかもしれない。
もし、もしそうなら、俺はデレと一緒にいちゃだめなんじゃないか?俺は、デレの友達として釣り合わないんじゃないか?

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:32:48.30 ID:rhPvJhtkO

がたん、

(*゚ー゚)「あれ、怒った?」

从 ゚∀从「や、トイレ」

逃げるようにして教室をあとにした。
トイレの個室に入ると自然とため息がでた。と、同時にデレたちの声が聞こえた。
俺は思わず息をひそめる。

「ねね、今日のハインちゃん態度なんなの? ひどくない?」

ζ(゚ー゚*ζ「たぶん、私、悪いことしちゃったんだよ……」

从;゚∀从(ち、ちが……!)

「ていうか、なんでハインちゃんと仲いいの? なんかだらしないし、自分勝手だし」

「幼馴染だからって、無理して仲良くすること……」

ζ(゚ー゚#ζ「無理なんかしてないもん! なんで、なんでそういうこと言うの?」

「あ、ごめん……でも先生からの評判も悪いし……」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなの関係ない……、お願い、大切な友達なの……そんなこと言わないで」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:35:32.08 ID:rhPvJhtkO

その日の夜、デレに電話をかけた。

『もしもし! ハインちゃん?』

从 ゚∀从「……ああ」

『よかった! このままお話できないと思っちゃった!』

从 ゚∀从「あの、さ」

『うん?』

从 ゚∀从「これから、朝、別々に行こう……たぶん、寝坊直らないと思うし」

『えー? あ、じゃあさ! 待ち合わせをハインちゃんのおうちにしよう? 早めに行って起こしてあげる!』

从 ゚∀从「……そこまでしなくていいよ」

『いいのいいの! だって心配なんだもん、ね? そうしよー!』

从 ゚∀从「……いい。 そういうの、いいよ。 本当に要らねーから」

『…………』

ざくり、と心が切り裂ける音がした。
俺が作りだした刃物が、彼女に突き刺さった感触は、今でも忘れていない。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:41:15.09 ID:rhPvJhtkO

それから、挨拶程度しか話すことがなくなった。
俺は一緒に入った部活も辞めた。

デレとは関わることがぐんと減ってしまったが、新しい友達もできたし、毎日が苦痛ではなかった。

3年ではクラス替えがなく、学校に行けば必ず彼女を目にした。
デレも変わらず周りの友達と楽しそうに過ごしていたので、俺達の会話がなくなったこと以外何の変化もなかった。

そして、明日は卒業式。

俺は卒業後、地元の高校に進学する。
デレはバスで30分もかかる場所にある進学校に進む。
もう、何の接点もなくなってしまう。クラスメイトでさえもなくなってしまうのだ。

今日あった出来事を思い出す。

彼女が本当に俺のために学校に残ってくれていたとしたら、それはすごく勇気のいることだ。
今度は、俺が勇気を出して、素直になるべきなんだ……。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:48:46.96 ID:rhPvJhtkO

――――――
――――
――

(*;ー;)「うぇぇぇ、寂しいよう」

(,,゚Д゚)「泣くな泣くな」

ξ゚听)ξ「まったく、大袈裟ねぇ」

(*;ー;)「ギコとは高校一緒だけど……みんなとはバラバラになっちゃうんだよ!?ツンの薄情者ぉ」

ξ゚ー゚)ξ「ふふふ、私だって寂しいわよ? それなりにね」

从 ゚∀从「またすぐにみんなで遊ぼうぜ!」

(*;ー;)「うえーん、ハインちゃんが優しいぃ! こわいよう」

从# ゚∀从「あん?」

( ・∀・)「おい、ハインー」

モララーはにっこりと口角をあげたまま黙って、少し離れたところを指差す。
その先には、多くの先生と友人に囲まれたデレの姿があった。

( ・∀・)「がーんばれ」

彼のふやけた笑顔に、またもや背中を押された。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:50:16.74 ID:rhPvJhtkO

「ねー、そろそろ移動する?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうしよっか!」

从 ゚∀从「デレ!」

ζ(゚ー゚*ζ「!、ハインちゃん……?」

从;゚∀从「デレ……! デレ、あの……」

ζ(゚ー゚*ζ「ごめん、先行ってて? あとから行くから」

「りょうかーい」

デレは、他のクラスメイトに小さく手を振って、俺のそばに来てくれた。
風でふわりと揺れる彼女の曲線の髪が、今にもぶつかってしまいそうな距離だ。

ζ(^ー^*ζ「ハインちゃん、卒業おめでとう」

ふっくらと笑う彼女の表情は、俺の目を熱くさせた。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:52:17.40 ID:rhPvJhtkO

从 ;∀从「ごめん! 今までごめん! 傷つけたよな、本当にごめん!」

深く深く頭を下げた。
それでも、彼女の傷ついた心には届かないかもしれない。

从 ;∀从「ひどいことして……、俺、おれ、デレが……」

俺の言葉を制すように、デレの柔らかい手が肩に触れる。
おそるおそる顔をあげると、さっきよりも満面の笑みで、俺を見つめていた。

ζ(゚ー゚*ζ「ね、写真とろっか! ふたりで! ね?」

从 ;∀从「あ、ああ……」

デレは近くの人にカメラを渡し、再び隣にかけ寄った。
自然にゆるりと俺の腕をとり、ぴったりとくっついた。それはまるで恋人同士のような格好で、なんだか少し照れてしまった。



ぱしゃり、


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 00:54:33.09 ID:rhPvJhtkO

彼女はするりと腕を離し、カメラの回収に向かう。
「ありがとう」とお礼を言われた男は嬉しそうに、手を振ってその場を離れていった。

ζ(゚ー゚*ζ「うまく撮れてるといいね!」

从 ゚∀从「ああ、そうだな」

ζ(゚ー゚*ζ「やっと、笑った……」

そう言ったデレの目にはみるみるうちに涙が溜まっていった。

从 ゚∀从「なんだよ、俺が笑うの嫌なのか?」

ζ(;ー;*ζ「おばか! そんなわけ、ないでしょ……嬉しいの」

目を瞑った瞬間にぽたりと雫が落ちた。
デレは両手で顔を覆い、しゃくりをあげながら泣いた。いや、俺が、泣かせてしまったんだ。

从 ゚∀从「デレ……ごめんな」

ζ(;ー;*ζ「本当だよっ! おばかおばか! ずっと、このままかと思った……もうっ……今度VIPストアのシュークリームっ、奢りね!」

从 ゚∀从「……りょうかい!」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 01:00:01.85 ID:rhPvJhtkO

ζ(゚ー゚*ζ「これからはね、学校違うけどね……」

从 ゚∀从「おう」

ζ(゚ー゚*ζ「それでもね、仲良くしたいの」

从 ゚∀从「ああ」

ζ(゚ー゚*ζ「私ね、やっと携帯買ってもらえるんだ……だから、メールとかいっぱいしようね」

从 ゚∀从「うん」

ζ(゚ー゚*ζ「たまにはね、私と遊んでくれなきゃ、やだよ?」

从 ゚∀从「うん、遊ぼうな」

ζ(゚ー゚*ζ「今度、いろいろ問い詰めるんだからね……?」

从 ゚∀从「おー、何でも答えるよ。 何度でも謝るよ」

ζ(゚ー゚*ζ「ううん、もう”ごめん”は要らないの……お話、できればそれで、いいの」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 01:02:08.01 ID:rhPvJhtkO

素直で優しいデレ。

俺が言いたいこと、お願いしたいことを全て言ってくれた。
これからも仲良くしてほしいのも、遊んでほしいのも、連絡取り合いたいのも、たくさん話したいのも、全部全部俺の方だというのに……

ζ(゚ー゚*ζ「私、たとえ嫌われてても、ずっとハインちゃんのこと好きだったんだよ?」

从 ゚∀从「嫌いなんて……言ってねぇだろ」

ζ(゚ー゚*ζ「でも……これは、今度問いただすからいいや!」

从 ゚∀从「ああ」

ζ(^ー^*ζ「覚悟してよねっ」

デレにやっと笑顔が戻った。
どうやら、彼女の涙は俺に写ったようだ。徐々に視界がぼんやりと歪む。

ζ(゚ー゚*ζ「これからも、友達でいてね」

ひねくれ者の俺は、この期に及んでも素直になれない。
それならば、せめて。自分らしく気持ちを伝えよう。熱い喉を震わせて伝えよう。

从 ゚∀从「ばーか、俺たちはこれからも……、ずーっと、ずっと! 親友だろうがっ!」

デレにならきっと、届くはずだから。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/17(日) 01:03:12.62 ID:rhPvJhtkO
 


从 ゚∀从 素直になれないようです


おわり


 


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