- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:36:18.40 ID:bWxRaVFY0
*(‘‘)*
おはな、如何ですか?
(ぽくぽく、馬車とすれ違った。
通りすがる子供は、プレゼントを買って貰ったのかご機嫌にくるくると石畳の上でターンを繰り返し、あなたの歩行をじゃまする。
空からは今にも雪が降り出しそうだ。
いつもは無機質な顔つきで花を差し出してくる花売りが、今日ばかりは紅をさした頬で献上の為の花を売りさばいている。
とう昔に処刑された救い主の生誕の日、あなたは一人きりで街を歩いていた)
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:37:56.85 ID:bWxRaVFY0
(茶色に煤けた町並みが緑と赤に染まっている。
あなたは重い足を引きずるようにして家路を急ぐ。終始耳をつく賛美歌紛いが耳に付いた。
幸せそうに笑い合う家族連れや恋人達が恨めしく感じられた。
あなたはちかりちかりと輝く蝋燭の炎から目を逸らすように裏路地の方へと視線を移す。
汚く煙った路地が、自分にはふさわしいとあなたは感じた)
( ・∀・)
あなたは随分不機嫌そうだけど
(積まれた金属製のダストドラムの上、不意になにかが陰を揺らす。
呼びかけられたのだと気付いたあなたは、肩を跳ね上げた。
声の主はダストドラムの上、マフラーで口元を隠して上品に笑う。
浮浪者だろうか。それにしては小ぎれいな格好をしている。
それは、猫のような男だった。
若しくは、男のような猫だった。)
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:40:01.14 ID:bWxRaVFY0
( ・∀・)
何かお困り事なのかな
恋人へのクリスマスプレゼントが決まらない?
もしそうだとしたら、僕はあなたの力になれると思うんだ
(その言葉をあなたは不快に感じる。恋人の居ないあなたに対しての皮肉のように取れたからだ。
苛立ちに任せて警戒心も忘れ、怒りをぶつけるように、
プレゼントを渡すような恋人も居なければ家族も無いと否定を突きつけると、彼は僅かに眉を下げる)
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:44:04.86 ID:bWxRaVFY0
(; ・∀・)
ああ、落ち着いて
そりゃ悪い事を言ったね。そんなに怒らないでくれよ
紅茶はいかが?
蘭の花のお茶なんだ。南の海にぽっかり浮かぶ、香料と土の香り香しい島。
滝のそばにある小さな奥地の村の奥様から買い付けた特別なものだよ
やぁ、ご機嫌取りにこのクッキーもつけよう。角のパン屋で買ったんだ。
彼処のお菓子は宇宙一だよ。これを買う為に金塊一つ投げ出す顧客も、僕には居るんだ
こっちへおいでよ、ほら、美味しいよ
(機嫌を伺うような声と甘い香りに誘われ、思わずあなたはふらりと裏路地へと入っていく。
どうせ家へ帰っても誰も居ない。浮浪者に身ぐるみ剥がされて困るのは自分だけだ、とあなたはすっかり捨て鉢になっていた。
ひゅうひゅうと木枯らしの吹き荒れる表通りとは裏腹に、路地の中はほっかりと暖かかった。
すぐに用意しよう、
と彼は魔法のような手つきでマッチに火を付け、はばかりもせずにたき火を始める。
何処から取り出したのか、たぷんと水の詰まった薬缶を火にかけた)
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:48:15.48 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
火にあたりなよ。この町は寒くてかなわないね
クッキーをどうぞ。おっと、ナッツが載ったのは僕が食べるんだ。残しておいてくれよ
湯が沸いたな。そう焦ったら駄目だよ。
きちんとポットとカップを暖めなくちゃあ、美味しい紅茶が飲めない
僕は身なりには気がない変わり、口に入るものにはいっとう気をつけるんだ
(たき火に照らされた彼は、少しくたびれた、しかし小綺麗なズボンとコートを着ている。
マフラーとコートの襟の下からは白いシャツとボウタイが覗いていた。
小さな旅行鞄をがさりがさりとやって、小さく上品なティーカップとポットを出す。
あなたは誘われるままにしゃがみ込み、手をたき火にさしのべる。冷えていた指先が暖まった。
それをみた彼は満足そうに頷き、もぐもぐと大きく堅いクッキーを頬張る)
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:50:43.95 ID:MVuT5EWA0
( *・∀・)
ああ、やっぱりここのクッキーは天下一品だ。売ってしまうのが勿体無いや
あなたはこの街のひと?
こんな美味しいものをいつも食べられるだなんてあなたは幸福だね
そうだ
さっき、クリスマスのプレゼントのお話をしたよね
やだな、とたんに不機嫌な顔にならないでよ。
ほら、紅茶が入ったよ。飲んで、飲んで。美味しいだろ?
奥様得意のブレンドなんだ。
こうやってストレートで飲むのがいっとう旨いんだよ。
僕は? 少し冷ましてから飲むよ。猫舌なんだ
それで、ね。クリスマスのプレゼントの話なんだけれどね
例えばのお話。プレゼントを送りたい女の子が居るとするよ……
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 13:53:48.22 ID:MVuT5EWA0
『ξ゚听)ξ』
その女の子はとっても不思議なものが大好きで、そしてとってもたくさんの不思議なものを売っているんだ
そんな彼女が満足するようなプレゼントが何だか、君分かるかい?
分からない?
僕も困っているんだ。
(彼から差し出された紅茶は甘く、後口に程良い酸味が弾けた。
あなたの目はぱちりと開き、そのおいしさに感動する。
が、同じ紅茶を啜りながらも、彼の表情は暗く沈んでいた)
( ・∀・)
そう、そうなんだよ
僕のプレゼントを送りたい女の子はとっても不思議なお店の店主で、しかも不思議なものが大好きときた!
だから彼女は生半可な不思議なものじゃあ喜んではくれやしないのさ
ああ、だから僕はとっても悩んでるんだ。何が彼女のお気に召す贈り物かってね
……やぁ、物は相談なんだけれどさ、あなた。僕の手助けをしてくれやしないかな
彼女のお気に召すような品が何なのか、一緒に考えておくれよ
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:00:44.31 ID:MVuT5EWA0
(神様を拝むように手を合わせる彼に萎縮して、あなたは思わず頷いてしまう。
途端、彼はまん丸く目を見開いてにっこりと笑った。
ありがとう、親愛なる友よ!
勝手に友へと格上げされたあなたは片眉を寄せた)
( *・∀・)
じゃあ、それじゃあ僕の自己紹介をさせておくれよ!
僕の名前はモララー・モララーと言うんだ。ゴリラの学名みたいだろ? 気に入ってるんだ
ともかく、僕は時計を売って歩いているんだけれど、
時と場合によっては、小鳥やすてきな箪笥、押しつぶした花の飾りなんかも取り扱っていて、
記念の日や趣味の品、贈り物をする時なんかにも中々お役に立てるんだ。
そう、だからあなたに声をかけたんだよ
それで、自慢じゃあないけれどね
幾万の車窓の向こうから、幾千の国境を越えて、
僕は実に不思議なものをたくさん持っているんだ。
彼女に負けないくらい、本当にたくさん
だから、そうだな、まずはこんなのはどう思う?
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:09:24.24 ID:MVuT5EWA0
(そう言って彼は傍らの旅行鞄を漁り出す)
( ・∀・)
少しばかり高価なチョコレート・ボンボンの入っていた上等の桐の箱の中に、僕はいくつかのドレスを持っているんだ
そのうちの一つ! 飛びきり丁寧に畳んで持ってるのを送ろうかと思うんだけれどね
それは世にも美しいドレスだよ
蜘蛛の女王様がしつらえた、とても綺麗な糸で出来たものなんだ
朝露が光って、世界中のダイヤを縫い合わせたように綺麗なんだ
そのドレスを彼女が着たら、さぞかし可愛らしいことだろうな!
そうだ、そいつにこれを合わせたらきっと大層麗しいぜ
そう、森の中で踊り続ける足からそうっと拝借した真っ赤な靴!
あの足だけの見事なダンスを中断させてしまったのは残念だけれど、これは中々の一品だ
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:11:46.76 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
どうだろう?
蜘蛛の女王の紡いだドレスに、真っ赤なエナメルグラスの靴なんて、
こんなものが、すてきで女の子の喜びそうなプレゼントじゃないかなぁ?
ん?
彼女にサイズは合うのかって?
冗談じゃあないよ、彼女はまだ小さな女の子なんだ。靴はともかく、ドレスなんて、……あれぇ?
参ったなぁ
(; ・∀・)
(彼は頬を掻き、取り出した桐の箱の蓋を丁寧に閉めた。
その顔には困ったような笑みが浮かんでいる。)
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:17:58.16 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
とっても良い品だと思うんだけれどな
あなたは如何? 特別お安くするよ?
って、プレゼントを送るような相手が居ないんだったね。失敬、失敬
ああやだな、そんな怖い顔をしないでよ。ほら、紅茶のおかわりは如何? まだ良い?
うぅん、それじゃあこれは、彼女が立派なレイディになってから送り直そうかな
そうだ、こんな胸元の開いたデザインでは、ねぇ?
(下世話に口元を弛め、彼はいそいそと桐の箱を旅行鞄へしまいこんだ。
次に出てきたのは、大仰な革閉じの本。枯れた蔓草のような縄で絡げられ、簡単には開きそうもない)
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:20:24.64 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
それじゃあ代わりに、小さな彼女の為にお勉強道具なんてどうだろう
僕はね、リュウノヒゲを寄り合わせた縄で頑丈に縛られた本を一冊持っているんだ
僕の商人友達から譲って貰ったこの本はすてきだぜ
縄を解いて開いた瞬間、広がるのは剣と魔法の世界!
知恵と勇気を駆使して生き残る愉快な冒険が味わえる! ……本当の本当にね
おっと、だめだよ。縄をほどいちゃ
これはとっても良く出来た商品で、一度開いたら百年遊べるお得な品なんだ
憂鬱な浮き世から逃げ出したい方にぴったり!
え? 駄目、駄目だよ
今君が居なくなったら、僕はこれから誰に彼女へのプレゼントの相談をすればいいんだい?
……え?
なんだって? もう一度言ってくれよ
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:26:20.01 ID:MVuT5EWA0
(# ・∀・)
……ああ、なんてことだ! そうだ、これじゃあ百年も彼女に会えない事になる!
そんなのって、ないぞ! あのやろう、とんでもない物掴ませやがって
全く、こんな、忌まわしい
よし、誰かに売ってしまおう。少し待っていて。すぐに終わるさ
商売は得意なんだ
(そう言って彼はティーカップをあなたに押しつけ立ち上がり、たき火を越えて路地から飛び出していく。
僅かに耳を澄ませば、彼が快活に話す声が聞こえてきた。どうやら商売が得意というのは、嘘ではないらしい)
( ・∀・)
やぁそこの君! 君だよ、君
コートを着て急ぎ足で通り過ぎようとしてる君!
おうちへお帰りかな? 今からパーティ? 違うのかい?
だったら丁度良い、ほらこれを上げるよ。百回遊べる愉快な小説!
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:31:05.52 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
僕は嘘は吐かないよ
何て言ってもこの商売、信頼と実績が大切だからね!
現実に飽き飽きしてるんだろう? 見ればわかるさ
さぁ、手にとって
……お代? いいさ、持ってお行きよ
ああ、拾ったとでも思ってさ
うんうん、それじゃあ、良いお年を
頑張ってね
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:36:50.35 ID:MVuT5EWA0
(程無くして彼は軽い足取りで舞い戻ってきた。
寒い寒い、と冷め欠けたカップに薬缶を傾け紅茶を注ぎ足す。湯気を顔に受け、あなたの方にも薬缶を差し出した。
あなたはそれに応え、カップを掲げる。冷め始めた紅茶がカップの下の方で揺れている。
空気に振れさせるように、高い位置から紅茶が落ちてきた。
湯気立つ其れに口をつけると、再び爽やかな酸味が口の中に広がる。)
( ・∀・)
やぁ、美味しいだろ?
(彼はまるでそれが自分の手柄のように胸を張った)
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:39:49.56 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
当たり前だよ、だって僕が買い付けたんだもの
その紅茶を作る奥様というのが、またやっかいな方でね。僕が買い付けに行く度、振る舞われるお茶ときたら
あの、砂糖のたっぷり入ったミントティ!
あればっかりは僕も辟易しているんだ。奥様自体はとても可愛らしいお方なんだけれどね
聞いてくれよ
この前なんか、セイレーンの髪で作った鎖をまるまる一本買い取っていったんだ
何に使うのかって聞いたら、
('、`*川『主人の時計に丁度良いと思いまして』
だってさ
ご主人がご自分の為に、同じ僕から毒を抜いた白雪姫の櫛を買っているとも知らずにね
全く、なんて贅沢で幸せな賢者の贈り物なんだろう!
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:44:34.20 ID:MVuT5EWA0
- ( ・∀・)
うん? ああ、そうだね、そんな話は、また今度にしようか
そうだなぁ、そうだ、彼女の喜びそうなもの!
(名案が浮かんだ、とでも言うように彼は両手をたたく)
( ・∀・)
物は残ってしまうものな、食べ物なんてどうだろう
そう、そう。丁度良いものがあるんだ
悪魔と知恵比べをした百姓が作った小麦に、金色のがちょうが産んだ卵を使って、ケーキを作ろうか?
ミルクなら、そうだ。眉唾ものも眉唾もの
インドの商人が空飛ぶトランクに乗って、そっと救ってきたっていうミルキーウェイが一瓶あるんだ
お誂え向きにたくさんの果実も持っている。飾り付けには事欠かないよ
それに、取り崩したお菓子の家から持ってきたお菓子の欠片や、飴細工の鳥籠なんかもつけたらどうかな
飲み物ならとっときのが残ってる!
かの有名な僕らの妖精、パックが化けた焼き林檎の薬酒に、やまなしのお酒だよ
どうだい? 美味しそうだろ
やまなしなんて、ぷかぷか浮いていたのをそうっと拾い上げて、オツベルが大事に飲んでいたのを貰ったのだぜ
うん、いいな、彼女も喜びそうだ
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:48:19.40 ID:MVuT5EWA0
(にこにこと、彼は楽しそうにあれこれと話続ける)
( *・∀・)
あ、そうだ!
食べ物も良いけど、人形なんてどうだろうな?
彼女は人形遊びも好きなんだ
僕が上等なびろうどの布に包んでいるこれ
錫の兵隊と、バレリーナ
こいつらは凄いぞ。夜になると、二人でラブロマンスを見せてくれる
ああ、それともこっちの、どこぞ王女が使っていたっていう鏡も、お年頃の彼女なら喜んでくれるかなぁ
割れてしまったハンプティ・ダンプティの欠片? これはがらくただねぇ
何処から紛れ込んだんだか、分からない
うーん、迷うな
なぁあなたは何が良いと思う?
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:52:06.70 ID:MVuT5EWA0
(彼が問いかけてきたので、あなたは思わず黙りこくってしまう。
カップの中の紅茶はすっかり冷めていた。
あなたは其れを一気に飲み干す。冷えて尚、甘く爽やかな味は変わらない。
ふと、あなたは先ほどから気になっていた事を彼に問うてみる事にした)
( ・∀・)
え?
彼女がどんな娘かって?
そりゃあ、あなた、とてもかわいい娘だよ
手も足も小さくて、かわいいものや不思議なものに目の無い、小さな女の子なんだ
金の髪がとても綺麗で、まぁるいひとみは何時だってトルマリンよりきらきらしてる
僕は彼女と、時々会うといつも一緒にお茶をするんだ
なりこそ小さいけれど、彼女はとても洗練されたマナーを身につけているよ
ナプキンの折りたたみ方から、電車に飛び乗らなくてはならない時、どう席を立てば失礼にあたらないかというところまでね
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:56:18.61 ID:MVuT5EWA0
『ξ*゚ー゚)ξ』
そう……、それでね、彼女は小さな小さなお店を引いて旅をしていて、そのお店ときたら不思議なんだ!
彼女が引いてる時は小さくて、車輪がついてからころ鳴るような代物なのに、
小さな扉を開いたら、とたんに広くて不思議なものがたくさんのお店になるんだよ
それでね、僕はそのお店の中でうたた寝するのが大好きなんだ……
彼女の声がしてね、起きる時でさえ幸せなんだよ
彼女は本当に甘え上手でね、僕らはいつでも仲良しなんだ
僕は彼女が大好きなんだよ
彼女も、僕を好きでね
(ああ、そう。
あなたは辟易した顔でそう言い放つ。其れを見てさっと彼が青ざめた)
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 14:58:30.75 ID:MVuT5EWA0
(; ・∀・)
ああっ、ごめんよ
違うんだ、あなたを不機嫌にさせる積もりは、ないんだよ
やめてよ。そんなに顔をしかめないで
ほらほら、紅茶は?
感謝してるんだよ、相談に乗ってもらえて
ああ、これじゃあ恩を仇で返す事になっちゃうじゃないか!
ね、友達だろう?
(先ほどまでの穏やかな表情とは打って変わって、おろおろと彼はまなじりを下げる。
おもちゃのように表情を返る様がおかしくて、あなたは笑ってしまいそうになりながら彼から顔を背けた。
路地の向こうでは変わらず、賛美歌まがいが横行している。
幸せそうな街並みだった。怒りよりも先に、寂しさがあなたの心を支配する。
隣に居る彼も、『彼女』とこの夜を過ごすのだ。仲間ではない、とあなたは感じた)
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:01:38.48 ID:MVuT5EWA0
(; ・∀・)
頼むよ、機嫌を直してよ
鬱陶しかったなら、後は自分で考えるからさ
(彼はあなたを拝み倒さんばかりだ。少し笑ってしまいそうになる。
あなたは立ち上がり、尻についた埃を軽く払った。)
(『おまえのすきにあげたら、そのこもきっと喜ぶよ』)
(あなたは先ほど、彼の品物達の講釈を聞きながらからずっと思っていた事を言った。
ぽかんと口を開けて彼はあなたを見上げている。
ある意味彼の今までの行動を全否定してしまったあなたは、うんと無意味に頷いた)
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:05:45.90 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
……
…………それも、そうかな
(彼はあなたを見上げたまま、ぽつりとつぶやく。
それじゃあとあなたは彼からきびすを返して、路地から出ようと一歩踏み出す。
後ろから彼の声がしたが、あなたは聞こえないふりをした)
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:10:10.48 ID:MVuT5EWA0
(そのままあなたは歩いて、家路に戻る。気がつけば街はすっかり夜になっていた。
蝋燭や明かりのきらびやかさが更に増し、あなたの目を刺す。
だが、紅茶とたき火のおかげか足や指先は暖かく、あなたの足取りも幾分軽かった。
その軽い足を不意に止める。
先ほど彼に振る舞われたクッキーを売っているパン屋の前だった。
ガラスの向こうに見える店内には客は居らず、暖かそうなランプの光の中、カウンターに座った店員がぼんやりとしている。
その棚に小さなクッキーの小袋が置いてあるのを見て、あなたはふらりとその扉を開いた。
ベルが慎ましやかに来客を告げ、とたんに店員の背筋がしゃんと伸びる。
一人きりで店に入ってきたあなたに、店員は暖かな笑みでいらっしゃいませと告げた。
あなたは棚を指さし、詰め合わせのクッキーを二袋注文して視線を落とし、ふと言葉を詰まらせる。
その視線に気づいたらしい店員は、恥ずかしげににこりと笑って小さな手でそれを隠すようにした)
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:12:13.10 ID:MVuT5EWA0
ζ(^ー^*ζ
売れないんですよ
(カウンターの前の机に積まれているのは、質素に包装されたケーキの箱とその値札だった。
見本に出された一つは、載った果実やクリームが乾いてはいるが、尚甘そうな香りを漂わせている)
ζ(゚ー゚*ζ
少し待って下さい
クッキー、クリスマス用に包装させていただいているんです
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:15:27.09 ID:MVuT5EWA0
(店員が笑って言うのでそれに頷き、彼女ががさごそとやっている間、あなたは店の中を眺め回す。
棚には焼きたてとは言えない、しかしふっくらとしたパンがところ狭しと並んでいる。
そういえば、この店にはあまり客が入っているのをみない)
ζ(゚ー゚*ζ
今日はクッキーを買って下さるお客様、二人目なんです
プレゼントなんですか?
(包みを終えない店員が、視線はそのままで問うてくる。
簡単に違いますとは言い難く感じられ、あなたは思わず頷いた)
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:18:22.50 ID:MVuT5EWA0
ζ(^ー^*ζ
そうなんですか
(かさりとカウンターに小さな箱が二つ置かれる。
あなたの視線はカウンター前の机に落ちていた。
店員がクッキーの代金を告げる)
ζ(゚ー゚*;ζ
……あの、だいぶ多いですよ?
(カウンターに置かれた紙幣を取り、戻そうとする店員にそれを断った。
あなたは机から白い箱を一つ取り上げる。カウンターに出した金額は、これで丁度だ。
店員の目が見開かれて、数瞬後、笑顔を形作る)
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:20:52.41 ID:MVuT5EWA0
ζ(^ー^*ζ
ありがとうございました
メリークリスマス
お客様、良いお年を!
(酷く恥ずかしい行動をしてしまったような気がして、あなたは慌てて店を出る。
その背中に跳ね飛んだような店員の挨拶が降り懸かった)
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:23:24.87 ID:MVuT5EWA0
(手の中にある白い大きめのケーキの箱を見遣り、あなたはため息を吐く。クッキ
ー程度ならば兎も角、ケーキまでは一人では食べきれない。
あまり長い時間をかけて食べても悪くしてしまいそうだ。
処理に悩んでいる内に、あなたは自分の部屋の扉の前まで来ていた。ノブに手をかけ、開く、)
( *・∀・)
やぁ! 待ってたよ!
(閉じた)
( ・∀・)
何だよ、何で閉じるんだい
ほら、あなたの家だろ。お入りよ
ちゃんと部屋は暖めて置いたからさ
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:27:48.21 ID:MVuT5EWA0
(扉を押して開け直した彼に手を引かれ、部屋に入る。
暖炉に火がともり、ランプと共に部屋を照らしている。
質素を絵に描いたようだったあなたの部屋の隅で、小さめのクリスマスツリーが光っていた。
大きいばかりだったテーブルには白いクロスがかけられ、ところ狭しとお菓子や料理のたぐいが並べられている。
あなたが呆気に取られて口を開いていると、背後で彼が扉を閉める。
無意味に四つあったいすの一つに深く腰をかけた少女が、こちらを振り向いた)
ξ*゚听)ξ
あら、はじめまして
失礼しております
今夜は、お呼ばれして大変うれしく思いますわ
(少女は小さな足で床に降り立ち、ちょこんと礼をしてみせる。
耳元で彼がほら、とっても洗練されてるだろと言った)
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:31:29.06 ID:MVuT5EWA0
( ・∀・)
あ! それって角のパン屋のクッキーじゃないのかい?
ケーキもだ! あなた、ずいぶんとたくさん食べるね
(あなたの手元を見て、彼は大仰に騒ぎ立てる。
なんだか気の抜けたあなたは、その箱を彼に押しつけた。プレゼントだ、と)
( *・∀・)
え? いいの?
……やったね!
ほら、おいで、プレゼントだってさ! うれしいな!
ケーキは皆で食べよう!
僕、切る物を用意するよ
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:33:37.03 ID:MVuT5EWA0
(小さな箱の一つを、よってきた少女に渡すと、彼はあわただしい様子で部屋の奥に行ってしまう。
あなたは自分の家じゃないみたいだと思った。
ふと気がつくと、少女があなたのズボンを軽く引いてほほえんでいる。いすに座れと言う意味らしい)
ξ*゚听)ξ
クリスマスには、いつもモララーはすてきなプレゼントをくれるけれども、
今年は一等すてきだわ
(ちょこんといすに腰掛ける少女の向かいにあなたは座った。
料理から沸き上がる湯気と、唾のわき出るようなにおいがあなたの顔にかかる)
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:35:34.67 ID:MVuT5EWA0
ξ*゚ー゚)ξ
新しいお友達だなんて、こんなにすてきなのって、凄いわ!
ねぇ、モララーって私より大きいのに、子供みたいでしょ? 私大好きなの
なんて、こんな事言えるの、あなただけだもの!
それにね、私がもっとあなたを知ったら、あなたの事、モララーと話せるの!
それも楽しそうだわ、悪口なんて言わないもの!
あなたとモララーが会ってる時には、私の事はなしてるかな、ってわくわくするのね!
こんなにすてきなプレゼントって、初めて!
(あなたの背後から湯気の立つ紅茶が差し出される。
あなたは思わず振り返った)
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:37:14.94 ID:MVuT5EWA0
( *・∀・)
そいつは良かった。悩んだ甲斐があった!
僕は友達へのプレゼントには惜しまない奴だからね
今回のプレゼントには、僕も自信があったんだ
それで、
(モララーがにっこり笑う)
( ・∀・)
あなたは、僕からのプレゼント、どう思う?
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/24(木) 15:38:02.40 ID:MVuT5EWA0
- ( ・∀・)はプレゼントが決まったようです
end
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