- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:28:46.66 ID:Dgknz+BpO
- 嘘だと 思った
嘘だと 言って欲しかった
君はまだこの世界にいる
いると 信じています
だから 嘘だと言ってください
だから 僕の傍で笑ってください
お願いだから
そんな写真の中で笑うのは
やめてください
( <●><●>)「ビロード…」
最果ての君を想うようです
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:30:50.99 ID:Dgknz+BpO
- 君と些細な喧嘩をしたのは、一昨日
君が 家へ僕を誘った時のことでした
君は
わかんないんです と
まるで女の子みたいに癇癪を起こして喚いていました
( ><)「ワカッテマス君が何言ってるのか、僕にはわかんないんです!」
(#<●><●>)「君が何でもかんでも「わかんないんです」で済ますことはわかってます」
( <●><●>)「だからもう一度、ちゃんと言います。聞いてください」
( <●><●>)「僕と君は、友達であって、
それ以上でもそれ以下でもありません」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:33:34.56 ID:Dgknz+BpO
- 彼は 僕に、
「僕達、なんだか『友達』の域を越えてる気がするんです」
なんて言ってきました
最初は何を言っているのかわからず、
「は?」と疑問符を投げたくらいです
そういった感情を『恋』と呼ぶことはわかってます
異性間の そういう関係を『恋仲』と呼ぶこともわかってます
稀に 同性間にもそういった間柄がうまれることがあることも わかってます
ですが、自分自身にそれが降りかかってくることは
全くの予想外でした
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:35:36.10 ID:Dgknz+BpO
- ( ><)「……ワカッテマス君は、僕のこと嫌いですか?」
癇癪の勢いでベッドに僕を押し込んで両足の間に入り込んだと思ったら、
そこでしゃがみこんだまま俯いて、シーツを固く握っています
癇癪を抑えたと思ったら、いきなり逆走を始めました
思わず「君の思考考の方がわかんないです」と発破をかけそうになりましたが、我慢です
( <●><●>)「嫌いではありません。
むしろ好意的でした。
あくまでも『友達』として ですが。」
僕はきっぱりと言い切ります
今 押し切られてはいけないとわかってます
( )「………」
彼の表情は、前髪に隠れて見えません
それでも僕は、彼を見つめ続けました
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:38:06.55 ID:Dgknz+BpO
- ( )「………」
彼の表情は、前髪に隠れて見えません
それでも僕は、彼を見つめ続けました
( )「……ってたんです」
( <●><●>)「?」
( ,)「……わかってたんです。
ワカッテマス君が、こんな話を受け入れることがないことくらい
ででもわかんないです
……わかりたく…ないんです…」
彼の声は震え、手はキリリと鳴るくらいシーツをきつく掴み、
頬を伝うものがあることさえ気にしないようでした
しかし、仕方のないことです
僕は
彼はおろか、人にそういった感情を抱いたことがありませんそして 彼に想いを打ち明けられた今も 彼をそういう目で見ることが出来ません
同性である という理屈を抜いたとしても
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:42:40.16 ID:Dgknz+BpO
- ( <●><●>)「期待に応えてあげられなくて、ごめんなさい」
彼は、嗚咽を隠せなくなったようです
肩を震わせ しゃくりあげて、
声を出して泣きました
僕はそんな彼に
何もしてあげることが出来ませんでした
彼はシーツを手放し、
僕の立てられた左膝と、、腰の隣に手を突きました
そのまま這い、彷徨うように手を伸ばし、
僕のシャツを鷲掴みにしました
両手で掴み、捻り上げるようにして引っ張られましたが、そのうち力は抜け、彼はそのまま僕の胸に倒れ込んで
そこで彼は泣きました
拳で何度か、力無く叩かれましたたが、僕は黙ってされるがまま 彼を見つめていました
小さく小さく 言葉を紡ぎながら泣き続ける 君を
報せを聞いたのは、翌朝でした
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:45:28.91 ID:Dgknz+BpO
- 彼は真っ白な便箋に
「ごめんなさいなんです」
と、一言だけ走り書きを遺し
この世を去りました
朝、家族が見つけた彼の遺体は
血が抜けて真っ白になり、まだ固まっていない赤で染まったベッドで、
安らかに眠っているような顔をしていたようです
それから葬儀は慎ましく進み
葬儀に出席した僕は、彼の最期の顔を見ました
死化粧を施されてはいましたが
それすら必要ない程 綺麗な死に顔でした
本当に眠っているだけのような彼の死に顔に
僕はぽつりと 別れを告げました
( <●><●>)「……さようなら、ビロード」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:47:11.33 ID:Dgknz+BpO
- 棺は閉ざされ、火葬場へ
あとは親族しか関われません
僕は家に帰り
久々に泣きました
彼のようにしゃくりあげることも 嗚咽を漏らすこともなく
拭いもしない涙が次々と溢れて
ただ流れてくる雫が 指先を濡らしていました
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:48:31.23 ID:Dgknz+BpO
- それから一週間程 部屋に引き篭もりました
両親に心配をかけているとわかってましたが、
僕は一人で、悲しみに暮れていました
同時に 自責の念にかられていました
(´<●><●>)「僕の…せいだ……」
死の前日
彼は僕に想いを告げた
気が動転して やんわりり断ることが出来なかった
それどころか 感情に任せて拒絶すらしてしまった
全部 僕のせいでした
僕は彼の言葉を聞いていることしか出来なかった
泣きながら呟かれる言葉を ずっとずっと聞いてあげることしか出来なかった
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:51:10.93 ID:Dgknz+BpO
- 結局
あれが彼の最期の言葉になってしまった
あれは 遺言だった
なら僕は
せめて彼の遺言の全うしなければならない
拒絶してしまった
命の灯火を自ら消す程に追い詰めてしまった
彼はこの世界からいなくなってしまった
僕のせいで
ならせめて 最期の願いだけでも…… ーーーー
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:53:10.32 ID:Dgknz+BpO
- 僕は家を飛び出しました
久々の外は眩しくて、
少し肌寒くて
そして 彼が居なくなっても少しも変わらない世界に
少しだけ眩暈を覚えました
僕は走ります
慣れた道を
君の家まで
今ならまだ間に合う
そう頭で唱えながら
彼の家族は、僕僕に優しく接してくれました
僕のせいだと 知らないから
これから罪を犯すと 知らないから
僕は一人
彼の部屋にいました
部屋の鍵を 後ろ手で閉めます
生前最後の 彼のように
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:56:04.44 ID:Dgknz+BpO
- 仏壇などはまだ用意されておらず
代理として彼の勉強机に 遺影と、風呂敷に包まれた小さな壷がありました
線香も供えてあります
僕はそれら形式をあえて無視し、彼が笑う遺影を手に取りました
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 14:57:53.13 ID:Dgknz+BpO
- ( <●><●>)「……ビロード」
僕は彼に 語りかけます
( <●><●>)「君は何故 そんなことをしてしまったのですか」
( <●><●>)「痛かったでしょう」
( <●><●>)「寒かったでしょう」
( <●><●>)「寂しかったでしょう」
硝子の表面 その奥にある
君の頬辺りを親指で撫でる
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:00:16.40 ID:Dgknz+BpO
- (´<●><●>)「何故君は 僕なんかを意識してしまったのですか」
(´<●><●>)「いくら君でも、結果はわかっていたでしょう」
(´<●><●>)「僕の何が そんなに君を引きつけたのですか」
(´<●><●>)「僕の何が 君をそこまで追い詰めたのですか」
声の震えが 止まらない
(´<●><●>)「ビロード……」
(´<●><●>)「僕達は、
『友達』では いられなかったのでしょうか?」
- 25 名前:801と見せかけて鬱入ります 投稿日:2010/10/03(日) 15:03:16.50 ID:Dgknz+BpO
- シン…
自分の声だけが、部屋に小さく広がる
返事はない
そのくらいわかってます
答えが返ってこないことくらい わかってます
どのくらいでしょうか
しばらくの沈黙の後、君の遺影を元の場所へ戻しました
目尻に溜まっていた涙を拭い 覚悟を決めました
今日はその為に来たのですから
彼の遺言を 全うしに来たのですから
( <●><●>)「君の遺言、しかと承知しました
君が望むのなら、
君が満足するのなら、
僕は法を犯してでも
人道を捨ててでも やり遂げてみせましょう」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:07:20.02 ID:Dgknz+BpO
- 僕はそっと
骨壺を包んでいた風呂敷に手をかけた
するりと音を立てて、中身を露わにする
そこには 小さな小さな
真っ白い壷
この中に、ビロードは眠っている
この中に、ビロードは収まっている
( <●><●>)「また、ちいさくなりましたね」
戯言でも呟いて…話しかけていないと、心が折れてしまいそうで
骨壺をそっと 両掌で包み込んだ
涙を堪え、ベッドに腰掛ける
ひとつ、大きく深呼吸をして
蓋に手をかけた
( <●><●>)「ビロード、いきますよ」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:09:28.89 ID:Dgknz+BpO
- ちいさなちいさな骨壺をそっと開けて
彼だったものを、口に含む
灰と化した彼は
とてもざらざらとしていました
( <●><●>)「……っ」
舌で絡めて ころがして
灰の中から彼の欠片を探し出す
君を 探し出す
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:12:16.46 ID:Dgknz+BpO
- 一際大きい欠片が
ざらり と、舌に感触を残した
目を瞑って 噛み締める
さくっ
君の骨は 軽いスナック菓子のような音をたてて
さく さく
喉を傷付けない大きさになるまで 咀嚼
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:15:35.99 ID:Dgknz+BpO
- 君の存在を 噛み締める
君は居たのだと 噛み締める
君はもう居ないのだと 噛み締める
ごくり
飲み込む
ざらざらしたものが、喉を下っていく…
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:19:59.98 ID:Dgknz+BpO
- ( <ー><ー>)「……ビロード、感じていますか?」
また一摘み 口に入れる
( <ー><ー>)「君の望んだ、願いです」
さく さく
( <ー><ー>)「『ひとつになりたい』」
(.><)『ワカッテマス君と、ひとつになりたかったんです…』
(.><)『ワカッテマス君と、二人で生きていきたかったんです…』
(.><)『………ごめんなさいなんです…』
ごくり
(.<ー><ー>)「『こんな、馬鹿げた願い』」
( <●><●>)「………確かに、叶えましたよ」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/10/03(日) 15:31:56.63 ID:Dgknz+BpO
- 僕は君を 食べました
僕は君を 取り込みました
君は今から 僕の一部です
共に 生きていきましょう
少し歪んだ 共生だとしても
終
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