- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:35:55.87 ID:9IRMyCdv0
- VIP商店街のとある一角に一つのお店がある。
店自体はバーのような店。
店内は電気がついているにも関わらずどこか薄暗い雰囲気をかもし出す。
一応BGMも流れてはいるが、それすらも薄暗い雰囲気を増す要素だった。
何かしらの違和感を感じる。それがこのB店である。
そのお店の店主は欝田ドクオ('A`)
この店主の出すオーラも薄暗さを増させている一つの要因かも知れない。
店主を含めて従業員は僅か3人。
そのうちの一人は月1で顔を出せば良い方だった。
もう一人は週2回ほど、店に顔を出す。
アルバイトである二人だが、クビにしようとは考えなかった。
たまにしか来ない二人にも、きっちりバイト料を支払っているドクオ。
自分ひとりでも十分客には対応出来るからだ。
それは裏を返せば一人で対応出来る程度の客しか来ないと言う事だ。
1日に20人程度くれば良い方だった。他の店に比べて客は遥かに少ない。
それでもお店はやっていけた。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:36:49.42 ID:9IRMyCdv0
- VIP商店街には他にもさまざまなお店がある。
一つはO店。
卵料理がメインのお店だが、その集客率は凄かった。
常に満席状態。さまざまな品の卵料理があるVIP商店街の老舗の一つだ。
もう一つはG店。
店主が芸達者で、その面白い芸が集客率を上げているのだろう。
料理の味も悪くない。さまざまなお客が店主の芸を目当てにこのお店にやってくる。
N店もある。
店主自身が描く絵は人を引き付ける魅力もある。
そして料理も上手いと来た。店主に似顔絵を描いて貰おうとする客は多い。
E店は知る人ぞ知る名店である。最近ではすっかり有名店に。
ここの店主の作る料理にハズレはないと言われるほどだ。
一度ここに訪れると味を忘れられないらしい。
β店は他とは違う味があるお店である。
店の奥にはなんと温泉があるのだ。流石に温泉に入りながら料理は食べれないが酒はOK。
温泉に入りながらの酒は格別らしい。そんなお店だけに当然集客もある。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:37:22.55 ID:9IRMyCdv0
- H店は店内が色とりどりの花が飾られている綺麗なお店だ。
店主の絵もN店とは違った味があるとの事。
様々なニーズに答え多くの料理を用意している。
ν店もある。
少し神経質な面もある店主だが、料理の腕は一流だ。
最近では多くの料理を作りだしているとか。
小店舗がグループを組み一つの店となっている店もある。
その小店舗を代表する店主の経営手腕は実に凄い。
無駄を省き、良い所は徹底的に伸ばしているのだ。集客もさぞあることだろう。
他にもお店はいくつもある。
それぞれがそれぞれの店独自の経営を行っている。
それゆえ、VIP商店街は日々賑わいがある。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:38:13.78 ID:9IRMyCdv0
- 話はドクオのB店に戻そう。
まだこの店は開店から1年も無い、半年ほどを過ぎたお店だ。
新興の店は中々集客が悪い。
この店の近寄りがたい雰囲気、そして、知名度が無いと言うのが一番の原因かも知れない。
('A`)(今日も客がすくねぇな…)
ふぅ…とため息をつきながらもコップを磨く。
一応、いつ客が来てもいいようにする為だ。
カランカラン
客が入ってきた事を知らせるドアの鐘がなる。
コップへ向けていた視線をドアに向ける。
(´・ω・`)「……」
客が少ないこの店は来る客が限られる為、顔はある程度覚えている。
が、この客は始めてだった。
('A`)「いらっしゃい」
そう言うと、客は何も言わずに店主の目の前の席に座った。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:40:09.09 ID:9IRMyCdv0
- ('A`)「……」
物好きもいるものだ。ドクオはそう思った。
こんな薄暗い店は活気のある商店街からどこか近寄りがたいからだ。
(´・ω・`)「アイスコーヒー」
('A`)「かしこまりました…」
ドクオは手馴れた作業でアイスコーヒーを作る。
(´・ω・`)「……」
何も言わずに出されたコーヒーを手に取り、口へと運ぶ。
数分で彼がコーヒーを飲み干す。
ドクオも彼も一言も言葉を発しなかった。
店内にはただBGMだけが流れる。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:41:35.28 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「……」
飲み干したカップを数分見つめて、勘定を置いて出て行った。
店にはまた、客がいなくなり、店主のドクオだけとなった。
その夜、ドクオはいつもの様にとある掲示板を覗き込んだ。
その掲示板はVIP商店街について雑談をしたりする場所である。
有名店であるOやGはいつも話題になる。
しかし、我がB店が話題になる事はほとんど無い。
話題になるときは決まって悪い話題ばかりだ。
13 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
あのB店に行った事ある奴いるか?
なんか薄気味悪くて入れないんだよな。店主も外から見たんだがすげー暗そうだったし。
14 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
>>13あんな店誰も入ろうなんておもわねーよwwwwwwwww
店の雰囲気があんなんじゃ料理や飲み物の味もたかが知れてるwwwwwww
15 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
そんな事よりG店での新作メニューがマジで美味かった件!
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:42:57.47 ID:9IRMyCdv0
- ('A`)「……」
この話題も何回目だろうか?
開店当初はこれに似た話題を見て、やる気を失い、ものの数ヶ月で店を閉めたままにした。
しかし、復帰を心待ちにしていると言う極少数の書き込みを発見。
やる気を取り戻してまた店を再開した。復帰してから自分なりに色々と努力をしてきた。
それでも客はまばら。ドリンクや簡単な料理などを増やす。それでもまだ、客はまばら。
自分なりには頑張っているつもりだったが、どうにもならなかった。
翌日、また昨日のお客が顔出した。
(´・ω・`)「……」
('A`)「いらっしゃい」
昨日と同じ椅子に座る。
(´・ω・`)「アイスコーヒー」
('A`)「かしこまりました…」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:44:06.60 ID:9IRMyCdv0
- 昨日と同様に、無言のドクオと名も知らぬお客。
飲み干して空のカップを数分見つめて、立ち上がる。
カップのそばには丁度の勘定。
('A`)「ありがとうございました…」
出て行く名も知らぬ客にそう言った。
翌日も、また翌日もそのお客が来た。
無言で席に着き、ドリンクを頼み、飲み干すと無言でカップを見つめる。
それから勘定を置き、店を出て行く。
そんな事が一ヶ月程度続いた。
相変わらずお客はまばらだった。
ある日、いつものように彼が来た。
(´・ω・`)「……」
('A`)「いらっしゃい」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:46:26.09 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「アイスコーヒー」
('A`)「かしこまりました…」
いつも通りならまた空のコップを見つめて勘定を置いて出て行くだろう。
しかし、今日は違ったのだ。
(´・ω・`)「このコーヒーの豆は…何処から仕入れてるのかな?」
始めて彼から注文以外で言葉が出てきた。
それに内心は驚きながらも、表面上は冷静に対応した。
('A`)「××店ですよ。安く仕入れてましてね。まぁ、うちに来るのはいつも残り物ですが…」
(´・ω・`)「そうかい…ありがとう」
そう言うと勘定を置き、立ち上がる。
(´・ω・`)「美味しかったよ」
始めて彼からそんな言葉が聞けた。
その事はとても嬉しかったが、表情には表さない。
('A`)「ありがとうございました…」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:48:28.80 ID:9IRMyCdv0
- 翌日、O店に凄い行列が出来ているのを見た。
何でも新メニューを追加とか。それだけであの行列。
うちでは新メニューなんて看板を出した所でいつもより客が数人多く来る程度だ。
あれだけ店が賑わえばさぞや仕事が楽しい事だろう。
何でうちには客が全然来ないんだ。うちだって頑張ってるんだ。
そんな考えが頭に幾度も浮かんだ。
ひっそりとやる方が性にあっているのは自分でも自覚している。
しかし、店を開いているからには多くの客に来て欲しいのも事実だ。
そんなジレンマがドクオを幾度となく襲うのだ。
確かに常連がいるのは嬉しいが、まばらな客では詰らなく感じる時もある。
(´・ω・`)「客が少ないのは嫌かい…?」
('A`)「!?」
気づけばいつもの様に彼が来ていた。
何事も無かったかのように冷静を繕う。
('A`)「ははは、自分にはこれぐらいが丁度良いですよ…」
(´・ω・`)「だけど君の目はO店の行列に向けられていたよ…」
(´・ω・`)「羨ましいとも憎悪ともとれる目でね…」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:51:58.74 ID:9IRMyCdv0
- (;'A`)「ははは…勘違いですよ…」
内心を完全に読まれている事に驚いた。
彼が入ってきたほどに気づかないほどだったのだ、もしかすると声にも出ていたのかも知れない。
(´・ω・`)「アイスコーヒー」
('A`)「かしこまりました…」
飲み干して、またカップを数分見つめる。
そして勘定を置き、立ち上がる。
(´・ω・`)「明日、知り合いを一人連れてくるよ…簡単な料理…そうだな…」
そう言うとメニュー表に目を移す。
(´・ω・`)「サンドイッチでも用意してて欲しいな…」
そして、ドアに向かう。
カランカランとドアの鐘がなる。
('A`)「ありがとうございました…」
店にはまたいつもの静けさが戻ってきた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:53:26.71 ID:9IRMyCdv0
- 翌日、開店して10分足らずで彼が店に来た。
(´・ω・`)「……」
いつものように無言。
彼の後ろには彼の知り合いと思わしき人物が立っていた。
( ・∀・)(なんかパッとしない店だなホントに。掲示板どおりだ)
( ・∀・)「あんたが店主さんか、今日1日宜しく」
('A`)「?」
何がなんだか分からないという顔をするドクオ。
それを見た彼の知り合いは彼に話しかける。
( ・∀・)「なんだ?説明してないのか?」
(´・ω・`)「知り合いと来るって言っただけだったんだ」
( ;・∀・)「おいおい、そこはしっかり説明しといてくれよショボン」
(´・ω・`)「だから今から説明するんだ…」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:55:34.00 ID:9IRMyCdv0
- ('A`)「ショボン…?」
その言葉に反応する彼。そして、あぁと思い出したかのような顔になる。
(´・ω・`)「そういえば自己紹介すらしてないね。僕はショボン。一応、作家志望のフリーター」
( ;・∀・)「自己紹介すらまだって…普通ある程度話つけてからこういう事するだろ?」
(´・ω・`)「彼はモララー。僕の友達。この辺の店は彼に聞けば詳しい情報が手に入るんだ」
( ;・∀・)「ん、まぁ、よろしく…」
('A`)「あ、ドクオです…よろしく…お願いします」
(´・ω・`)「彼はね、結構お店を見る眼があってね、それでこの店を見て貰おうって思ってね…」
('A`)「店を…見る…?」
( ・∀・)「簡単さ。一日中店に居て、店主の仕事ぶりとか客数とか見るだけ」
('A`)「はぁ…」
( ・∀・)「ぶっちゃけると、この店を評価してあげるって事。俺なりにね?」
('A`)「はぁ…」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 20:57:12.20 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「まぁ迷惑は掛けないよ。改善点とかは分かればそこを治せばいい店になるって事だしね」
('A`)「まぁ…お願いします…」
( ・∀・)「あいあい。お願いされますよっと」
いきなりの話に戸惑うドクオだが、確かにこれで店の改善点が見つかるかも知れない。
自分なりには治してきたつもりだがやはりお客としての評価は欲しい所だ。
自然といつも以上に気合が入る。
( ・∀・)「まぁ、力まないでいつもどおりやってれば良いよ」
( ・∀・)「俺らは端のテーブルで座ってるんで。ほら、お客が来たよ」
('A`)「あ、いらっしゃいませ…」
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:00:01.72 ID:9IRMyCdv0
- こういう日の1日は経つのが早く感じる。
あっという間に閉店時間を迎えた。
('A`)「ふぅ…」
( ・∀・)「お疲れさん」
(´・ω・`)「………」
労いの言葉をかけるショボンとモララー。
( ・∀・)「今日1日の感想は?」
('A`)「いつもより少しお客が多かった程度かな…」
(´・ω・`)「………」
( ・∀・)「ん、ありがとう。早速だけど俺なりの結論を完結に述べさせて貰うよ」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:02:16.32 ID:9IRMyCdv0
- ( ・∀・)「仕事ぶりは──、店の清潔感もある、んで───」
(´・ω・`)「………」
( ・∀・)「まぁ、こんなところだね」
('A`)「……」
( ・∀・)「まぁ、あくまで俺個人の評価だしあまり気にされても困るんだけどさ」
( ・∀・)「あんたは結構良い仕事してるよ、何気ない事でやったりしてるかもだけど」
( ・∀・)「例えばグラス磨きにしたって中々丁寧にやってたし、何気ない気配りが良かったよ」
( ・∀・)「清掃も小まめにやってる点は評価できるし、後はやっぱり客だね」
('A`)「………」
( ・∀・)「まぁ、この店のムード自体は関係ないね。薄暗い感じはするけどさ」
( ・∀・)「決定的な知名度不足じゃないの?もっとさ新メニューの看板を派手に出したりとか」
( ・∀・)「少なくともこの店のムードは俺は好きだぜ?今日はじめて来たけどな」
( ・∀・)「他には………」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:05:12.73 ID:9IRMyCdv0
- モララーの評価を聞くドクオとショボン。
ショボンは終始無口で、ドクオも黙って聞いていた。
( ・∀・)「以上!俺の意見終わり!」
(´・ω・`)「………」
('A`)「どうも…」
( ・∀・)「さて、ある程度の評価はしたし、報酬でも貰おうかな」
(;'A`)「え?」
( ・∀・)「いや、誰も無償でなんて言ってないし」
(;'A`)「いや、うちは大して儲かってないから金が…」
( ・∀・)「ん?金なんて誰も言ってないよ」
(´・ω・`)「昨日言ったでしょ。サンドイッチでも用意しててって…」
(;'A`)「あ、そっち、です、か…」
それからしばらくしてサンドイッチを持ってくるドクオ。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:08:21.43 ID:9IRMyCdv0
- ( ・∀・)(普通のサンドイッチだなホント…ひねりもないシンプルさ…)
(´・ω・`)「………」
それからサンドイッチを食すモララーとショボン。
食べ終わる頃を見計らってドクオはドリンクのアイスコーヒーを持っていく。
( ・∀・)「サンキュー」
(´・ω・`)「………」
コーヒーを飲み干して、一息をつく二人。
そしてモララーがややぁと声を上げる。
( ・∀・)「おぅ。味の評価をしてなかったな…」
( ・∀・)「今のサンドイッチで評価すると…中々だな」
('A`)「あ、え?ホントですか?」
( ・∀・)「うん、ホント。シンプルだけどね。んじゃ、そろそろ帰りますか?」
(´・ω・`)「そうだね…」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:10:29.70 ID:9IRMyCdv0
- 立ち上がり、ドアへと向かう二人。
先にモララーが出ようとするが、思い出したかのように振り返る。
( ・∀・)「そういや、ドクオも掲示板見てるの?」
('A`)「え?あ、一応…」
それからまじまじとドクオの顔を見るモララー。
自然と目が合わないように視線をそらすドクオ。
( ・∀・)「話題になっても悪い話題ばかりだよねぇ…」
('A`)「………」
モララーが何を言わんとしているかがすぐに分かったドクオ。
自然と顔が歪む。
( ・∀・)「まぁ、あそこの掲示板にさ、たまに店の感想みたいなスレ立ってんだけどさ」
( ・∀・)「どんな店でも必ず感想が一つや二つあるからさ、それを探してみると良いよ?」
( ・∀・)「じゃあね!」
カランカランとドアの鐘が鳴る。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:12:22.69 ID:9IRMyCdv0
- ('A`)「ありがとうございました…」
頭を下げるドクオ。
その姿勢を数秒維持して頭をあげるとまだショボンが残っていた。
(´・ω・`)「………」
('A`)「………」
(´・ω・`)「今月の終わりの××日にVIP商店街のお店で一つの祭みたいなのがあるんだ」
(´・ω・`)「一つの作品を皆に食べて貰って順位を競うんだけど…参加するかい?」
('A`)「一つの作品って…?」
なぜか心は既に参加するつもりでいた。
参加したって上位に入る事は不可能だと分かっていながら。
(´・ω・`)「作る料理はね簡単だよ…サンドイッチさ…」
('A`)「………」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:14:11.01 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「良い顔になって来たね」
(´・ω・`)「頑張ってね?参加表明はO店のホムペを見れば出来るよ…一応参加資格はあるわけだし…」
('A`)「教えてくれて、ありがとうございます…」
(´・ω・`)「………」
ショボンはそのままドアを開けて帰っていく。
そして、気づけば既に参加の申し込みまで終わらせていた。
モララーの言った感想スレも覗いた。
だいぶ前の書き込みだが、嬉しいレスを幾つか見つけた。
145 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
B店のアイスコーヒーは独特の味で良い。
美味いともまずいとも言えない味なんだけど、その微妙な味が凄く良かったんだ。
189 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
B店の店主は話してみると意外と面白い
267 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
地味に美味いぞB店の飯。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:15:15.32 ID:9IRMyCdv0
- 全部が全部、良い感想であったわけではない。
中にはVIP商店街一の不味さだとか、店内の雰囲気が最悪だとか。
店を畳んでしまえという書き込みもあった。
やはりO店やG店、E店などに比べると感想は圧倒的に少なかった。
それでも、嬉しい書き込みのおかげで祭へ向けてのやる気は出た。
しかし、支持してくれる人がいるだけで嬉しかった。
祭の日まで、あっというまだった。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:18:16.85 ID:9IRMyCdv0
- 迎える祭当日。
VIP商店街の至る所で祭り開催の広告やらが貼り出されていた。
開始早々にO店は満席に、卵の味を活かしたサンドイッチは新感覚の味らしい。
G店は芸達者の店主がネタともガチともつかない多くのパターンのサンドイッチを作っていた。
N店は具で描いた絵を挟んでいるとか、食べるのがもったいない気がする…。
そしてB店はというと…
('A`)(今日も客がすくねぇな…)
しかし、いつもより客が多い程度だった。
いつもと違う点を言えば知らぬ客が既に数人サンドイッチを食べに来た程度だ。
一応参加表明はしているが、完全に有名店の影に隠れてしまった。
('A`)(結局この程度の知名度か…)
確かにいつも以上のお客が来ている気がする。
だけど、想像以上ではない。いや、あるいはこの程度だと想像していたかもしれない。
しかし、もしかするとと言う希望を捨て切れなかったのだ。
結局現実はこの程度で、希望は夢と消えたのだ。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:20:43.14 ID:9IRMyCdv0
- しかし、祭はまだ終わっていない。
始まってまだ少しだ。
いつもより客足は良いじゃないか。頑張れ自分。
そう自身に言い聞かせるドクオ。
カランカラン。
また客が入ってきた。
('A`)「いらっしゃい」
ドアには二人。片方は男。片方は女。
畜生がカップルかこの野郎。羨ましいなおい。
( ^ω^)「おっおっ、ここも祭りに参加してるのかお?」
('A`)「えぇ、一応参加してます」
ξ゚听)ξ「冴えないお店ねぇー」
('A`)「よく言われます」
( ^ω^)「んじゃサンドイッチを頼むお!」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:22:34.95 ID:9IRMyCdv0
- カップルが妬ましいとは言え、祭の作品に手を抜くわけには行かない。
少々お待ちをと言い、料理の準備をする。
('A`)「どうぞ」
( ^ω^)「おっおっ!ありがとうだお!」
ξ゚听)ξ「普通…」
ドクオが出したサンドイッチは市販のお店でもありそうなごく普通のサンドイッチだ。
他の店とは違い、これと言った特徴も無い。
アイディアも浮かばなかったのでシンプルにやってみたのだ。
他の店が工夫を凝らしてるだけに、うちのはたいそう普通に見えるだろう。
( ^ω^)「おっおっ。結構美味いお!」
ξ゚听)ξ「うん。そこそこ美味しい…」
('A`)「ありがとうございます…こちらのコーヒーはサービスです…」
( ^ω^)「どうもだお!サンドイッチ美味しかったお!」
('A`)「ありがとうございます」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:24:14.98 ID:9IRMyCdv0
- あのカップル以降もそこそこ客が来た。
いつもが20人程度だとすると
今日は50人ほど来たんだろうか?
祭効果と言うのはすげぇな…改めてそう思った。
('A`)(今日は働いた感があるな…)
もうすぐ閉店時間だ…流石にこれ以上の客は望めないだろう。
店の外に目を向ける。有名店にはまだ客が店内にたくさんいる。
('A`)(頑張っても、やっぱりこの程度なのかな…?)
改めて理想と現実の差を見せられた気がした。
老舗とは言え同じ商店街で店をやりながらどうしてここまで差があるのか?
うちだってあそこ以上に頑張ってるはずなんだ…。
なのに評価はされない。そもそも評価する客が少ないのかも知れない。
一つの考えがドクオに浮かび始めた。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:26:26.09 ID:9IRMyCdv0
- 店を畳むか、あの書き込みどおりに。
いくら頑張っても客は大して増えないし。
俺の努力なんて所詮そんなもんだよな。
自然とため息がでる。
あれこれメニューを増やしても駄目。
ショボンやモララーにアドバイスを貰い、それを実行したがその時だけ客が増える。
他の店に比べて遥かに固定客が少ない。
やってる意味あるのかこれ?
誰が得するんだこんな店?
あっても無くてもいいような感じだよなまったく。
今まで頑張ったよな俺。
もうやめだやめだ。
大体儲からない店なんてつまんねーつまんねー。
O店でバイトしたほうがまだ稼げるんじゃねーかこれ?
今までの時間が全部無駄って事か。
なんかスッキリしたな。
やっぱ店畳もう。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:28:32.04 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「………」
気づけばまたショボンが自分の目の前の席に座っていた。
('A`)「…いつの…間に…」
(´・ω・`)「うん。ちょっと通りかかってね。まだ閉まってなかったから入ったんだ」
(´・ω・`)「そしたら君が泣きそうな顔をしてたんでね…」
('A`)「店を畳もうかなと思いましてね…」
(´・ω・`)「そう言えば僕の知り合いが来たんじゃないかな?」
まったく別の話をされて、話の腰を折られるドクオ。
('A`)「…知り合い?」
(´・ω・`)「カップルみたいなのかな?片方はちょっとぽっちゃりで片方は金髪ロール」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:30:39.65 ID:9IRMyCdv0
- ('A`)「えぇ、確かに…来ましたね。知り合いだったんですか…」
(´・ω・`)「うん。この店の事を教えたんだ」
(´・ω・`)「あ、別に宣伝料を貰おうとか思ったわけじゃないんだよ?」
('A`)「分かってます…」
(´・ω・`)「それで、お店畳むんだって?良いんじゃないかな…別に」
あっさりと肯定されてしまった。
心のどこかで引きとめて欲しいと願っていた自分を打ち砕く。
('A`)「そう…ですか…」
(´・ω・`)「だけど畳むのは、2・3日後ぐらいにして欲しいな」
('A`)「なんでですか…?」
ドクオは肯定されて、内心では半ば自暴自棄になりかけていた。
この人なら引き止めてくれると甘く考えていたからだ。
その人にすら肯定された。
今からでもすぐ、閉店の貼紙を出したかった。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:32:32.46 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「見せたいものがあるんだ…」
('A`)「………」
('A`)「分かりました…」
(´・ω・`)「まぁ、祭でつかれたでしょ?明日は店を閉めてゆっくり休むと良いと思うよ」
(´・ω・`)「そうだね…2日後の…閉店間際にまた来るよ」
('A`)「2日後…分かりました…」
その日、ドクオは掲示板を見る事をしなかった。
見ても話題になるのはいつもの有名店だ。
もう店を閉めるんだ。
悪い話題は…もう…見たくない。
そのままドクオは深い眠りについたのだった。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:34:30.16 ID:9IRMyCdv0
- 翌日、いつもどおり店へと出る、が、開店にはしない。
店の掃除をしたり、グラスや食器を洗ったりで祭の後の片付けと言った事をやった。
結局祭の順位は最下位だ。
やっぱりそうなるよな…と自分で自分を納得させる。
明日で閉店。
そう思うとどこか迷いがある。
自分の努力も泡と消えるのか。
もしかすると店を続ければ老舗以上になるかもしれない。
希望が浮かべば別の絶望が浮かび上がってくる。
そもそも俺は何の為にこんな店を経営してる?
集客率?儲け?暇つぶし?
誰の為だ?分からない。分からナイ。ワカラナイ。
考えれば考えるほど分からなくなる。
有名店に目を向ければ、店内はお客が一杯だ。
向こうは俺の店をどう思ってるんだろうか?
それとも眼中にすらないのだろうか?
知名度の無い店なんて相手にしないのだろうか?
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:37:40.05 ID:9IRMyCdv0
- あれこれ考えるうちに日は沈む。
そして当然如くまた朝日は昇る。
ショボンが言った2日後。それが今日だ。
一体何を見せると言うのだろうか?
('A`)(今日も客がすくねぇな…)
いつもそう思うがその事についてふと思った。
俺は何を基準に客が少ないと考えているのか?
冷静に考えれば当然、他の店を基準にだ…。
しかし、自分の店を基準に考えれば客は多いと考える事も出来る。
毎日20人程度。大した集客率じゃないか。
その20人のうち10人は常連だ。2分の1も常連がいる。
素晴らしい事じゃないか。
裏を返せば知る人ぞ知る店じゃないか…。
こういう店こそ隠れた名店…なんてな…。
何だ…うちの店も…頑張ってるじゃないか…。
('A`)「はは…」
自然と自虐的な笑い声が口からこぼれる。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:40:12.51 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「………」
気づけばまたショボンがいつもどおりの席に座っていた。
(´・ω・`)「もう閉店間際だからね…」
('A`)「そう…ですね」
(´・ω・`)「うん、で渡すものはこれなんだ」
('A`)「手紙…?」
(´・ω・`)「見てみるといいよ」
封を破り、中の紙を取り出す。
1枚だけは無く、10枚程度の束だった。
一枚目から手紙を見始める。
1枚目……2枚目……3枚目……。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:42:35.27 ID:9IRMyCdv0
- 気づけばドクオの目からは涙が出ていた。
書いてあるのはただのコピーされた物だ。
その内容は、祭での感想。
50人程度しか来なかったこのB店に対する感想だった。
掲示板のものをテキストにでもコピーして、それを印刷して持ってきたんだろう。
103 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
B店のサンドイッチの味が個人的に一番良かった。
他の店は派手すぎた。自分にはあれぐらいシンプルなのが丁度良い。
109 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
シンプルな割に結構味があった。
サービスで出してくれたコーヒーも美味かった。
また食べに行こうと思う。
116 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
なんだろうね?美味くいえないけど魂が篭ってると言うか…
説明べたでごめん!B店の奴美味かった!
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:44:44.40 ID:9IRMyCdv0
- 119 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
味は普通だったけど、あの店のムードは俺に丁度良いわ
124 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
地味な店ほど味があるもんなんだな。B店の事バカにしてた
145 VIP商店街の提供でお送りします投稿日:200X/XX/XX(Y)
サンドイッチはシンプルな物が一番美味いと分かってる店主に惚れた。
他にも感想は続いている。
10枚全て、B店への祭の感想だ。
(;A;)「う…ぐずっ…」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「君の店で喜んでる人が祭でこんなにいたんだよ」
(´・ω・`)「参加してよかったね」
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:46:29.36 ID:9IRMyCdv0
- 全部読み終わる頃には紙は涙で濡れていた。
評価されていないと思っていたのは自分だけだったのだ。
お客はしっかりと評価してくれていた。
全部自分の勝手な考えだったんだ。
他の店を意識するあまり、自分の店が見えていなかったのだ。
店主失格だな…。
心の底からそう思った。
(´・ω・`)「それで、お店はやっぱり止めるのかい…?」
その質問はもはや聞くまでもない。
ドクオは涙目ながらもはっきりと告げる。
(;A;)「いや…続けますよ」
(´・ω・`)「………」
その言葉を聞いて、安心したかのようにショボンはそのまま店を出た。
ドクオは一人、涙を流す。
悔し涙ではない、店を続ける意味も見つけた、喜びの涙だ。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:48:13.03 ID:9IRMyCdv0
- こうやって支持してくれる人がいた。
ならばその人達の為に、自分は店を続けよう。
他の店と比べてなんになる。
うちはうちで堂々と店をやっていくんだ。
たとえバカにされたって構わない。
それでも支持してくれる人はいるのだから。
初対面ながらも仕事っぷりを認めてくれる人もいた。
無口だけど気づけば常連になってくれた人もいる。
店をやっていて良かった。本気でそう思った。
儲けや集客は度外視だ。
俺は俺の道で、俺の店をやる。
もう、迷いは無い。
支持してくれる人がいる限り、自分は店を続けよう────
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:50:35.59 ID:9IRMyCdv0
- その日からドクオは他の店を意識するのを止めた。
うちはうち。よそはよそ。そう割り切る事が出来たのだ。
掲示板には、たまに話のネタになる程度で良い話題も悪い話題も上がる。
ドクオは自分なりに努力して、頑張っている。
薄暗い店に、少し、明かりが灯される。
それでも店はまだ薄暗い。それがこの店の特徴だ。
もはやこの雰囲気は店に無くてはならない物だ。
メニューも豊富ではないが、一つ一つに味があるとお客の誰かが言った。
客数は少しだけ増えた。20人が30人だ。
自称、隠れた名店はこうでなくちゃなと自分で思う。
しかし、あれ以降ショボンが来なくなった。
ショボンの知り合いは、祭以降、何度も来てくれる。
ありがたい事だ。
彼らも常連となりつつある。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:52:29.50 ID:9IRMyCdv0
- 祭から数週間が経った。
自分の経営方針を見つけて、毎日が楽しくなってきた。
バイトの二人は相変わらず気ままな日にしか来ないが別にどうと言う事はない。
一人でも十分に対応出来る程度の客数しか来ないのだから。
しかし、ショボンが来なくなってどこか寂しさを感じる。
自分の目の前の席には誰も座らせないようにしていた。
もう来る事は無いのだろうか?
時間は閉店間際だ。そろそろ店を閉めなければ。
このグラスを磨き終えたら店を閉めよう。
カランカラン。
ドアの鐘が鳴る。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:54:43.65 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「………」
('A`)「…いらっしゃい」
ショボンは何も言わずにいつもの席へ。
(´・ω・`)「アイスコーヒー」
それも変わらない。
ゆっくりと飲み干し、カップを数分見つめる。
いつもと変わらないショボンの動作だ。
(´・ω・`)「実はね…作家デビューが出来たんだよ…」
('A`)「!…それは、おめでとうございます…」
(´・ω・`)「うん、ありがとう。自分でも結構驚いてるんだ」
(´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「ちょっと昔話だけどね、しても良いかな?」
('A`)「えぇ…」
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 21:58:01.42 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「うん…ありがとう」
(´・ω・`)「僕が最初にこの店に来たのはね、実を言うと掲示板どおりの悪評判かを確かめに来たんだ」
('A`)「………」
(´・ω・`)「入ってきたときから、色々と考えてたんだよね。暗い店だなとか、客がいないなとかね」
(´・ω・`)「それでまぁ飲み物を頼んだわけだ、アイスコーヒーをね」
(´・ω・`)「アイスコーヒーの美味さで自分なりに店の評価を決めてるんだ」
('A`)「………」
(´・ω・`)「僕が君に始めて自己紹介をした時、作家志望だって言ったよね」
(´・ω・`)「ここのアイスコーヒーを始めて飲んだときにね、ふと1本のストーリーが浮かんだ訳さ」
('A`)「………」
(´・ω・`)「カップを見つめていた時、自分の頭でストーリーがどんどん生まれていってね」
(´・ω・`)「あぁ、味の方はね結構普通だなって思ったんだけど、なんとなく良い味もしたんだよね」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 22:00:18.32 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「それからだね、毎日ここに来て、アイスコーヒーを頼む」
(´・ω・`)「飲んだ後にね、不思議と構成やら内容がすらすらと頭に浮かんでくるのさ」
(´・ω・`)「あ、アイスコーヒーおかわり」
注文に答えて新しいカップにアイスコーヒーを注ぎ、ショボンの前に。
それを手に取り、またゆっくりと飲み干す。
カップを数分見つめて、また語りだす。
(´・ω・`)「だから、僕なりの恩返しでね、モララーを連れてきて評価して貰ったりしたんだ」
(´・ω・`)「集客の事で悩んでたみたいだからね、祭の事もその為に教えたのさ」
('A`)「………」
(´・ω・`)「だけど祭が終わる頃に来たら君は苦しそうな、泣きそうな表情でね」
(´・ω・`)「話をすれば店を畳む…恩返しが仇になるなんてね…」
('A`)「………」
(´・ω・`)「それで2日間の猶予を貰った。少なくともこの店の祭での良い感想を少しでも見せたくてね」
(´・ω・`)「それがあの手紙。あんなに感想があるとは僕も作ってて驚いたよ」
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 22:02:33.09 ID:9IRMyCdv0
- (´・ω・`)「ここ最近来なかったのは物語が完結しそうだったからね」
(´・ω・`)「それでこの前、完成した奴を出版社に持ち込んだら高評価でね」
(´・ω・`)「そのまま小説にする事が決まってね、晴れて僕も作家デビューって訳さ」
('A`)「………」
(´・ω・`)「この店のおかげで僕は夢を果たせた。ありがとう」
(´・ω・`)「全部ドクオのおかげさ、僕はこの店を生涯の忘れないよ」
少しの沈黙。
それを破ったのはドクオの少し明るい声だった。
('A`)「自称、隠れた名店なんでね…」
('∀`)「忘れられちゃ困るってもんです」
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 22:04:40.82 ID:9IRMyCdv0
- それからドクオは一冊の本をショボンから貰う。
ショボン自身の作家としてのデビュー作。
その小説の名は
──────とある店主の物語のようです──────
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 22:06:17.89 ID:9IRMyCdv0
- カランカラン。
ドアの鐘が鳴る。
薄暗い雰囲気のお店に一人の客が入る。
('A`)「いらっしゃい」
始めて見ると思われる客が来た。
物好きもいるものだと店主は思う。
店主の言う、自称、隠れた名店は、今日もお客が少ない。
メニューもさほど多くない。
それでも地味ながらも一つ一つに味があるらしい。
代表メニューはシンプルなサンドイッチとアイスコーヒーだ。
店主はいつものようにある事を想う。
('∀`)(今日も大繁盛だな)
店は今日も、大繁盛の賑わいだった──────
完
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/19(日) 22:07:31.20 ID:9IRMyCdv0
※この物語はフィクションです。
戻る