('A`)ドクオと川 ゚ -゚)雪女のようです

3 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:32:54.77 ID:kFPT3I1tP

何でこんなことになっちちまったたたんだ。

('A`)「ううう、さむさむさむさむさむさむ……」

手がめちゃくちゃ震えてる。
つーか凍傷おこしてる。
痛みなんてもう感じない。

( ^ω^)「ど、どどどどどドクオ。もっとく、くっつくお」

('A`)「あ、ああ。うー、さむさむさむ」

脂肪の塊であるブーンとくっ付くと
少しはマシになったような気がする。

山小屋で男二人で凍えてる。外は吹雪。助けは来るのかわからない。

何でこんなことになっちまったんだ……?

4 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:35:52.79 ID:kFPT3I1tP

――五時間前――

( ^ω^)「スキー場でナンパwwwww」

('A`)「男二人で意気揚々wwwww」


( ,,゚Д゚)(*゚ー゚) ワイワイキャッキャ


( ^ω^)「……」

('A`)「カップルしかいねえな」

( ^ω^)「もっとよく捜すお!
       シーズン真っ最中のスキー場には可愛い女の子グループが
       必ず一組はいるはずだお!」

('A`)「お、おう。じゃあ、もっと奥にいってみるか」

6 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:39:13.55 ID:kFPT3I1tP

――……

そうだ。
二人でナンパしようと禁止区域を越えて……。
急に吹雪いてきて、道がわからなくなってこの山小屋に避難したんだった。

('A`)「ぶぶぶブーン。け、けけけ携帯はまだ繋がらないのか?」

( ^ω^)「ででで電波がないお」

(;'A`)「ま、まままマジか……。どうする? このまま待つか? それとも」

( ^ω^)

('A`)「ぶ、ブーン?」

(;^ω^)「……はっ! い、いい一瞬、ね、寝てたお」

7 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:41:34.99 ID:kFPT3I1tP

(;'A`)「おい、寝るな! そんな、おま、死ぬぞ!」

( ^ω^)「無理だお……昨日、徹夜でエロゲやってたし……おやすみだお」

(;'A`)「ね、寝たら死ぬぞ。寝たら……」

あれ?
何だか、俺まで意識が朦朧としてきた。


いかん。
寝たら死ぬ。
雪山で寝たら死――。


11 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:46:20.83 ID:kFPT3I1tP

真っ白な世界に、俺は浮かんでいた。

('A`)「どこだ……ここ」

起き上がり、辺りを見渡す。
不気味なほどに、一面の白が広がっていた。
不気味なほど音はなく、俺の声だけが広がっては消えていく。

(;'A`)「俺……死んだのか?」

「死んではいないよ」

背後から声がした。
振り返ると、そこには白の着物に身を包んだ、白髪の女が立っていた。

(;'A`)「……死神?」

川 ゚ -゚)「死神ではない。まあ、近い存在かもしれんがな」


12 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:50:27.86 ID:kFPT3I1tP

(;'A`)「さっぱり分からん。ここは何処なんだ? お前は誰?」

川 ゚ -゚)「下らないな」

(;'A`)「え?」

女はふわさ、と髪を払い上げた。

川 ゚ -゚)「前に此処にきた人間も、君が今いったような事を問うた。
     やれやれ。こうも同じでは、面白みがないな。
     しかし、説明する事は私の務めであるのだから、仕方あるまい」

何言ってんだ……? 全然分からん。

川 ゚ -゚)「まず最初に言っておく。おまえは死んだ」

('A`)「死……?」

14 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:54:00.36 ID:kFPT3I1tP

川 ゚ -゚)「そうだ。ここは現世と常世の狭間といったところか」

(;'A`)「ちょ、待ってくれ!」

俺は勢いよく立ち上がった。
女は首をかしげ、俺を鋭い目つきで見やる。

川 ゚ -゚)「何だ?」

(;'A`)「いや、あの……そんな、死んだって言われても、
     俄かには信じられないていうか……本当に? 嘘とか、ドッキリじゃなくて?」

川 ゚ -゚)「愚問だな。自分の心臓に手を当ててみろ」

女は心底くだらなそうに言った。





17 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 20:58:02.23 ID:kFPT3I1tP

まさかな……。
俺は恐る恐る、自分の胸に手を当て――

(;'A`)「お、音がしねえ」

川 ゚ -゚)「お前の心臓は、とうのとっくに止まっている」

(;'A`)「そんな! じゃあ、俺は本当に死んだのか!?」

川 ゚ -゚)「凍死したよ」

思わず、その場にがっくりと膝をついた。

(;'A`)「マジかよ……あっけなさすぎだろ……ナンなんだよ、俺の人生は」

高校二年生の冬休みに、スキー場にナンパにいって遭難して死ぬ。
アホすぎて涙も出ねえ!
新聞にのったら後世まで恥じゃねえかよ、くそったれ。

20 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:01:18.69 ID:kFPT3I1tP

俺は地面? を握り拳で数回叩き、やがて俯いた。

川 ゚ -゚)「気は済んだか?」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「よし。では、そろそろ決めてもらおうか」

('A`)「何をだよ……」

女は俺を見下ろす。

川 ゚ -゚)「お前が選択できる道は二つ。
     このまま霊魂となって現世を去るか、
     雪男として現世に留まるか、だ」

('A`)「雪男?」

21 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:07:56.19 ID:kFPT3I1tP

川 ゚ -゚)「そうだ。今、この雪山には雪男がいない。
     お前が望むのならば、その魂を妖怪とし、雪男として
     再び現世の地に立つ事ができるだろう」

(;'A`)「な、何なんだよ、その雪男ってのは。
     俺に怪物になれっていうのか?」

川 ゚ -゚)「生憎、そこまで説明している暇はないようだな。
     そろそろ、お前がこの世に留まる事の出来る時間が限界だ」

俺はふと、自分の体が薄くなっていることに気付いた。
このままじゃ、成仏しちまうってことか?

川 ゚ -゚)「どうする? 私はどちらでも構わない」

(;'A`)「お、俺は」

雪男になって生きるか、このまま死ぬか。
なんつー選択肢だ……。

23 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:12:33.25 ID:kFPT3I1tP

どうしよう?
雪男って、やっぱ、あの毛むくじゃらの化け物だよな。
あんな身の毛もよだつ化け物に俺が? 冗談じゃない。

けど……。

今、死んだら、『あいつ』との約束が果たせなくなる。

それは、駄目だ。
あの約束は、何としてでも果たさなければならない。

川 ゚ -゚)「あと十秒だ」

('A`)「俺は……!」

覚悟を決めて、言った。

(;'A`)「雪男になる方を、選ぶ!」

25 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:17:15.35 ID:kFPT3I1tP

川 ゚ -゚)「そうか」

淡々とした答え。
そして、女は俺の額に触れた。

川 ゚ -゚)「私はクー。雪女だ。
     よろしく、雪男」


――……


目を覚ますと、俺はベッドの上に寝転んでいた。

('A`)「あれ?」

起き上がって、周囲を確認する。
焚き火がぱちぱちtはぜている。どうやら、ログハウスのようであった。

(;'A`)「ううん……?」

夢、だったのか?

26 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:20:21.74 ID:kFPT3I1tP

( ^ω^)「ドクオ! 起きたかお」

(;'A`)「うおっ!」

夢オチかと思った直後、目の前に喋る雪だるまが!

( ^ω^)「僕だお、僕! ブーンだお!」

(;'A`)「え……? ぶ、ブーン、なのか?」

( ^ω^)「そうだお〜。
       ドクオも雪男になったんだおね」

雪男。

('A`)「そうだ、俺の体っ!」

慌てて、化粧台の鏡を覗き込む。
そこには、白い毛に覆われた雪男――俺がいた。

27 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:25:02.51 ID:kFPT3I1tP

('A`)「やっぱ夢じゃなかったのか……」

ξ゚听)ξ「あら、起きたの? 二号」

――と、見知らぬ女が部屋に入ってきた。
あの雪女と同じく、白の着物に身を包んでいる。
銀に近い髪は、攻撃的なツインドリル形だ。

('A`)「誰だ?」

(;^ω^)「つ、ツン様! 機嫌うるわしゅうですお」

ξ゚听)ξ「うるさいわね……。誰が喋っていいって言ったかしら?」

(;^ω^)「ぶひぃ! さ、サーセン!」

(;'A`)「おい、ブーン。こいつは誰なんだよ? お前の知り合いか?」




31 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:31:47.92 ID:kFPT3I1tP

ξ゚听)ξ「初めまして。一号の担当をしてる、雪女のツンよ。
     よろしく、二号」

('A`)「お、おす。ドクオです、よろしく……って、二号?」

ξ゚听)ξ「そっちのピザが雪男第一号。あんたが二号よ。
     名前覚えるの面倒くさいし、それで十分でしょ?」

髪型通り、何やらトゲトゲしい奴のようだ。

川 ゚ -゚)「どうやら、無事、雪男になれたようだな。ドクオ」

(;'A`)「あ、雪女! ……やっぱ夢じゃなかったか」

ξ゚听)ξ「私も雪女よ、二号」

( ^ω^)「僕は雪男ですお、フヒヒwww」

ξ゚听)ξ「口を開いていい、なんて一度も言ってないわよ。一号」

(;^ω^)「ひ、す、すません」

(;'A`)「主従関係できんのはえーな」


32 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:38:18.22 ID:kFPT3I1tP

どこか嬉しそうなブーンはさておき、

('A`)「……で、まあ雪男になったわけだが、クーさん」

川 ゚ -゚)「呼び捨てで構わん。私もお前をドクオと呼ぶことにする」

サバサバしてるな。まあいいや。

('A`)「わかった。んで、クー。俺達は何をすればいいんだ?」

( ^ω^)「だおだお!」

ξ゚听)ξ「何? その喋り方。ふざけてるの?」

(;^ω^)「あうあう」

楽しそうだな、おまいら……。

川 ゚ -゚)「当然、雪男としての仕事をしてもらう」

('A`)「具体的な内容は?」

33 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:41:24.69 ID:kFPT3I1tP

カラーン、カラーン。

川 ゚ -゚)「現場に行けばわかるさ。
     ……っと、早速、馬鹿が現れたようだな」

外から聞こえる鐘の音に、クーが反応した。

川 ゚ -゚)「ついて来い。仕事に関しては、OJTで教えてやる」

('A`)「OJT」

クーはドアを開け、言った。

川 ゚ -゚)「オンザジョブトレーニング……やって覚えろ、だ」


35 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:44:51.84 ID:kFPT3I1tP



( ^ω^)「寒くないお!」

拠点? から走ること数分。
俺達は吹雪のど真ん中にいた。
雪山である。

( ^ω^)「寒くないお!」

ξ゚听)ξ「当たり前でしょ。雪男なのよ。いちいち驚かないで。
     気が散るわ。うざいわ。砕くわよ、一号」

( ^ω^)「させんwwwww」

まぁ、俺もブーンほどではないが、驚いていた。
毛に覆われているとはいえ……全く寒さを感じない。

('A`)「これが雪属性ってやつか」

川 ゚ -゚)「……?」

雪女には、ゲームネタは分からんらしい。

36 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:49:27.60 ID:kFPT3I1tP

――と。
そんなのん気な会話をしていると、人影が二つほどみえた。

( ><)「ぜー、はー、ぜー、はー。
      お、おかしいんです。そろそろリフトが見えるはずなのに!」

( <●><●>)「……道を見失ったのはわかってます。
       しかし認めたくはないものですね。若さゆえの過ちというものを」

(;><)「さりげなくネタ言ってる場合じゃないんです!
      このままじゃ遭難しちゃうんです!」

( <●><●>)「そうなんですか……それはマズイですね」

(;><)「余計寒くなるからやめろ!」

見るからに死亡フラグが立ちまくっている二人組だった。
まあ、この十中八九、数分後には遭難者になっているだろう。
俺とブーンがそうだったからよく分かる。

37 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:52:21.21 ID:kFPT3I1tP

( ^ω^)「リフトは逆方面だしwwwwアホスwwww」

ξ゚听)ξ「人の事言えないわよね、あんたも」

(;^ω^)「……そ、そういえば、僕らもリフト捜して彷徨ってた記憶が」

リフトを捜す、は死亡フラグなんだな、たぶん。

('A`)「どうするんだ? あの二人、このままじゃ俺らと同じ山小屋凍死コースだぜ?」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(;'A`)「いや、そうだなって……助けないのかよ?」

川 ゚ -゚)「私は助けない」

んなっ!?


38 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 21:55:29.46 ID:kFPT3I1tP

(;'A`)「なんでだよ! や、やっぱあれか?
     あいつらも俺らと同じように凍死するまで見殺しにして、仲間に……」

川 ゚ -゚)「違う。私じゃ助けられないんだ」

クーはきっぱりと言い切った。

どういうことだ?

川 ゚ -゚)「私達、雪女は触れたものすべてを凍らせてしまう。
     手を差し伸べようものなら、たちまち人型氷塊の完成だ」

('A`)「そ、そうなのか?」

川 ゚ -゚)「だからこそ、雪男が必要なのだよ」

ξ゚听)ξ「そゆこと〜」

ツンが俺の肩に手を乗せた。
すると、吹雪の寒さなんて全く感じないのに、ツンの触れた部分だけ
妙にヒンヤリとした感触を覚えた。

40 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:00:28.67 ID:kFPT3I1tP

川 ゚ -゚)「私達、雪女の役目は、雪山で死んだ人間の魂を
     常世に送り届ける事だ。生きている人間を救うのは、雪男の役目だよ」

(;'A`)「そんなルールがあるのか。
     ……あれ? じゃあ、この雪山には今まで雪男はいなかったのか?」

ξ゚听)ξ「ううん、いたよー。ギコっていう働き者の雪男がいたんだけど、
     クーに振られてショックでどっか行っちゃったの」

(;'A`)「ガラスのハートすぎだろ……雪男……」

川 ゚ -゚)「勝手に好意を寄せた挙句、職場を逃げ出すとは。
     まったくもって、くだらん」

うわ、何かめっちゃ怒ってる。
クーにとって恋愛話は地雷のようだ。
気をつけよ。

41 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:03:44.14 ID:kFPT3I1tP

(;^ω^)「あ、あのぉ」

ξ゚听)ξ「何よ一号。うじうじと、おずおずと。雪男らしくないわね」

(;^ω^)「あの二人、倒れてるんですけどお」

('A`)「え?」


( ><)「もう歩けません……ワカッテマス、ぼくもう眠くなってきたんです」
( <●><●>)「ああ、天使が見える。天使が見えるのはワカッテマス」


川 ゚ -゚)「もって五分といったところだな」

(;'A`)「わ、わー!」

雑談をしている場合じゃなかった!
俺は慌てて斜面を駆け下り、二人の下へ向かった。



42 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:06:26.12 ID:kFPT3I1tP

(;'A`)「大丈夫か!? しっかりしろ、寝るな!」

( ><)「あったかい毛布……」
( <●><●>)「マッチに想いをのせて……」

俺は二人をひょいとわきに抱える。

( ^ω^)「おお、ドクオすげー! 力持ち!」

ξ゚听)ξ「雪男なんだから、力があるのは当たり前でしょ?」

(;'A`)「とりあえず、げ、下山してあったかいところまで運ばないと!」

川 ゚ -゚)「急いだ方がいいぞ」

クーは腕を組んだまま、鼻で笑った。

川 ゚ -゚)「あと三分でそいつらは死ぬ」

45 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:11:21.16 ID:kFPT3I1tP

俺は走った。
大股で雪山を滑るようにおり、クレバスを飛び越え、ふもとのスキー場まで
転がるように走った。

(;'A`)「オラァ!」

スキー客を押しのけ、救急室に入り、二人をおろす。

/ ,' 3「え、な、何? 何ごと?」

医者と思わしきおっさんがのん気にラーメンをすすっていた。

(;'A`)「ドクター! 急患二名だこのやろー!」

/ ,' 3「ひい! ひ、ひげづら大男!」

俺はまだ17歳だ、ばっかやろー!
……って、今はあれか。雪男か。

46 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:16:23.78 ID:kFPT3I1tP

/ ,' 3「お、おおう。こいつはいかん! 飯なんか食ってる場合じゃねえ!
    てめえら、治療にかかるぞい!」

スタッフ「は、はい!」

すぐさま集まる治療スタッフ。
優秀である。

(;'A`)「はー、はー、はー。つ、疲れた」

ξ゚听)ξ「お見事。やるじゃない、二号。
     この調子でどんどん頼むわよ。
     失敗したら私達の仕事が増えちゃうから、やーなのよね」

ツンが、ぱちぱち、と拍手する。

( ^ω^)「あ、そういや僕なんもしてねえお」

ξ゚听)ξ「一号は雪だるま形だから、何もしなくて正解。
     雪女ほどじゃないけど、あんたも私達と同じような特性、
     『触れたら凍る』タイプだし」

(;^ω^)「え? じゃあ、それって役立たずなんじゃ」

ξ゚听)ξ「知らないわよ。自分をどう生かすか、ちゃんと自分の頭で考えなさい」

47 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:19:53.13 ID:kFPT3I1tP

('A`)「ま、まあ、何はともあれ、人命が助かって良かったぜ」

良い事をすると、気持ちが晴れ晴れしくなるな。
……なんて、ちょっと雪男の仕事に生きがいを感じちゃったりして。

川 ゚ -゚)「呆けている暇は無いぞ、ドクオ」

('A`)「へ?」

クーが山の方を指差す。
そちらから聞こえるのは、カーンカーンという鐘の音。

(;'A`)「あれって、まさか」

川 ゚ -゚)「絶命まで十分といったところだな。
     急がないと、私達が働くことになってしまうぞ」

(;'A`)「マジかよ、ちくしょー!」

俺は再び、地面を思い切り蹴り、雪山へと駆けていった。

49 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:24:54.65 ID:kFPT3I1tP




(;'A`)「もう、動けまセン。働けまセン」

川 ゚ -゚)「初日は三十人か。まぁまぁだな、お疲れさん」

深夜1時。
俺は拠点であるログハウスのベッドに倒れこんでいた。

(;^ω^)「僕、何も出来なかったお。くそう、ドクオの能力羨ましす」

('A`)「……出来るなら交代してほしいぜ」

あれから、俺はずっと雪山を登ってはおり、また登っては……と
トライアスロン真っ青のハードワークをこなした。

(#'A`)「それにしても、何でこう奴らは立入禁止区域にポンポコ入るんだ!
    危険の文字が見えねーのか、ったくよー」

川 ゚ -゚)「……フ。お前が言っても説得力がないな」

(;'A`)「むう。だ、だってよ。看板が雪に埋もれて見えなかったんだもの
     仕方ない、人間だもの」


50 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:28:10.19 ID:kFPT3I1tP

( ^ω^)「そういえば、この山って、看板が妙にボロいお。
       杭もちゃんと刺さってなかったし、雪で埋もれて見えないし」

ξ゚听)ξ「管理が行き届いていないのよ。人間はいい加減だから」

('A`)「実に遺憾だな。いかんよ、うん」

……。

('A`)「誰か突っ込めよ……」

( ^ω^)「そうだお!」

ξ゚听)ξ「どうしたのよ、一号」

( ^ω^)「看板が見えないからいけないんだお!
       だったら、僕が看板をなおしたり雪をはらったりすればいいんだお!」


52 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:32:05.85 ID:kFPT3I1tP

名案だ、といわんばかりにブーンは叫んだ。

川 ゚ -゚)「ほう。最もシンプルで、なおかつ手間のかかることだが
     お前に出来るのか?」

( ^ω^)「出来るお! ブーンはやるんだお!」

('A`)「でもよ、看板の杭を打ち直したりするのはともかく、
    雪なんてはらってもまた積もるだけだぞ?」

( ^ω^)「積もったらまたはらえばいいお! 見えない看板なんて
       ここは○○の村です、って言う村人並に使えないんだお!」

いやいや、あれ結構重要だぜ?

ξ゚听)ξ「へえ……。面白そうじゃない。やってごらんなさいよ、一号。
     もし成果が目に見えるようなら、少しだけ褒美をあげるわ」

( ^ω^)「なん……だと?」

ブーンの瞳に炎がやどった。
ように見えた。

53 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:36:13.57 ID:kFPT3I1tP

( ^ω^)「やるお!」

ブーンは拳を高々とあげた。

( ^ω^)「成果をあげてツン様とちゅっちゅするお! フラグ立てるお!」

川 ゚ -゚)「こいつは何を言っているんだ?」

('A`)「あ、気にしないで。こっちの世界の用語だから」

ξ゚听)ξ「楽しみにしてるわ、一号。せいぜい頑張りなさい。私の仕事を減らす為に」

( ;ω;)「ありがたいお言葉に感涙だおーん!」

やれやれ、大丈夫かねほんとに。
……あれ? ちょっと待てよ、と。

('A`)「俺らが働いてたら、雪女って仕事なくね?
    後をついてくるだけじゃね?」

川 ゚ -゚)「それは違うぞドクオ。私達には重要な仕事がある」

クーは俺を指差して言った。

川 ゚ -゚)「お前達の監視だ。立場的には雪女>雪男だからな。ふふふ」

おめでとう! ゆきおんな は しゃないニート に しんか した!

55 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:39:58.37 ID:kFPT3I1tP



今日も今日とて吹雪です。
何でこんな天候悪いんだろうね。アホかと。

そして、吹雪の中、看板の雪を必死に振り払うアホが一人。

(;^ω^)「おとしても速攻で積もって涙目www」

(;'A`)「だから、無理だって。諦めようぜ」

ここはAポイント。俺が勝手に命名した。
由来は単純。遭難者が最も入りやすいミスルートだからである。

リフトに向かうためには、ここを曲がらなければいけないのだが
どういうことか、皆そろって真っ直ぐ林の中へ行こうとするのだ。

まさに魔のゾーン。
何か不思議な力があるとしか思えん。

56 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:43:26.29 ID:kFPT3I1tP

(;^ω^)「あー、もう。ここの看板が機能しないと
       また遭難者がアホみたいに出るお」

('A`)「おまけに遭難者頻出ポイント第二位のBポイントは、
    ここから真逆だしな。ここさえ潰せれば、だいぶ楽になるんだが」

( ^ω^)「看板よ、燃えろ! 己に降りかかる雪を溶かせ!」

(;'A`)「無茶な注文つけんな。どこの魔法の看板だそら」

( ^ω^)「あーあ、何とかならないかおー。看板。かんばーん」

('A`)「もうお前が看板になれよ……」

てきとーに言ったのだが、どうしたことか、ブーンはぽんと手を打った。

( ^ω^)「それだよ、ワトソン君」

(;'A`)「はい?」



57 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:46:42.68 ID:kFPT3I1tP

ざく、ざく、ざく。

( ^Д^) 「マジ吹雪パネェwwww」

( ゚∀゚)「初心者の俺らにとっては? あはぁん?
     ちょいとベストじゃねえコンディションじゃん?」

( ^Д^)「うーさむwwwwはやくログハウス戻って飯くいましょうぜ先輩www」

( ゚∀゚)「たりめぇだろwwwwあれ? ここは真っ直ぐだっけか? あはぁん?」

( ^Д^)「やだな先輩wwwwwストレートっすよwww男はいつも真っ直ぐッスよwww」

( ゚∀゚)「そうだったなwwwwパネェわお前wwww」

ざく。

( ^ω^)「違う……」

(;゚∀゚)(;^Д^) 「え?」

( ^ω^)「曲がれお……」

59 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:49:30.12 ID:kFPT3I1tP

( ^ω^)「死にたいのかお……」

(;^Д^) 「ゆ」

(;゚∀゚)「雪だるまが」

「「喋ったぁぁぁぁぁぁ!」」

ドドドドドドド!    「お助けー……」


('A`)「こうしてオカルト話は生まれていくんだな」

( ^ω^)「大成功だお! Aポイントは僕が制したお!」

まー、何だ。ブーンは一見するとただの雪だるまだから
こういう役目はぴったりかもしれない。

なるほどね。ツンの言っていた自分を生かす方法ってのは
こういう事かい。



61 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:53:03.52 ID:kFPT3I1tP

そんな感じで、段々と要領を覚えてきた俺達は
遭難者を未然に防ぐ事に、どんどん長けていった。

ある時はちょいとばかし驚かせ

('A`)「うがぁぁぁぁぁぁ!」

(゚、゚;トソン「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ある時は優しく諭し

( ^ω^)「あんまり無茶しちゃいかんお。今日は帰れお」

川д川「ひ、ひぃぃぃぃぃ! 妖怪雪だるま!」

……ま、まあいいじゃないか。
これで遭難者が減れば万々歳だし、俺達の負担も軽くなるってもんだ。

63 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 22:56:59.34 ID:kFPT3I1tP

――そんなこんなで、一週間が過ぎようとしていた。

('A`)「だいぶ遭難者も減ってきたな」

川 ゚ -゚)「そうだな。しかし、お前達は本当に雪男の才能があるな」

(;'A`)「あんま嬉しくないぜ……つーか、クー、仕事は?」

川 ゚ -゚)「おかげ様でさっぱりない。楽で良いよ」

(;'A`)「不公平だ! 貴族と平民だ!」

川 ゚ -゚)「雪男は雪女をやしなうものだ。そのかわり、ほら。
     住む所と飯はちゃんと与えているだろう?」

ちなみに飯はカキ氷である。
そこら辺の雪にシロップかけただけの、ね。



64 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:00:37.75 ID:kFPT3I1tP

('A`)「てかさー、俺達って、ずっとここで雪男やってくのかな」

川 ゚ -゚)「そうだよ。お前が選んだことだろう?」

そう。
俺は死のかわりに、雪男になってこの世に留まる事を選んだのだ。
しかし……

('A`)「地元の町に、会いたい人がいるんだ。行っちゃだめかな?」

川 ゚ -゚)「その姿でか?」

(;'A`)「う……服を着て隠せば、毛の濃い大男として何とか……ならない?」

川 ゚ -゚)「さあな。少なくとも不審ではある」

ふと、クーは読んでいた本(氷で出来てる)を閉じた。

川 ゚ -゚)「家族か?」

('A`)「……うん。まあ、妹なんだけどね」


65 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:06:28.79 ID:kFPT3I1tP

俺は近くにあった椅子に座った。

('A`)「今、病院に入院してんだ。生まれつき、ちょっと目が悪くてさ。
    手術しねーと、失明するかもしれないんだよね」

川 ゚ -゚)「ほう」

('A`)「だけど、妹は……デレっていうんだけど、手術、怖がって受けないんだよ。
    絶対失敗するって、頑なに拒んでさ」

川 ゚ -゚)「体をいじられるのは、誰だって怖いだろう」

('A`)「ああ。けど、放っておいたら本当に目が見えなくなる。
    だから、俺、言ったんだ。手術、受けようって。
    勇気を出せって。俺みたいな彼女いない暦=年齢のへタレでも、
    ナンパして綺麗な彼女作ったんだから、勇気は必ず奇跡を起こすってさ」

川 ゚ -゚)「彼女……?」

俺は自傷気味に笑った。

('A`)「嘘を真実にしようとした矢先、遭難したってわけさ」

68 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:11:35.04 ID:kFPT3I1tP

('A`)「だから、俺は死ぬわけにはいかなかったんだよ。
    さっさと美人な彼女を見つけて、妹に紹介して……。
    手術をうけさせなきゃ、いけないんだ」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「だから、その、駄目かな?
    少しだけ、俺に時間をくれないか」

川 ゚ -゚)「どうするつもりだ?」

('A`)「こんなナリじゃ、ナンパもくそもねーと思うけど……。
    とにかく、ダンディ好きの物好きがいると信じて、ナンパして
    妹のところにいって、約束を果たす」

一気にそこまで言うと、クーは笑いはじめた。

川 ゚ -゚)「妙な約束をしたものだな。しかし、そんなにうまくいくかな?
     よりにもよって彼女か。物品ならば金で都合がつくというのに」

('A`)「うるせー。俺だって後悔してるよ。ナンパなんて難破なまね本当はしたくねーし」

川 ゚ -゚)「さむ」

('A`)「うっせ」



69 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:14:27.00 ID:kFPT3I1tP

川 ゚ -゚)「しかしまあ……」

クーはおもむろに立ち上がった。

川 ゚ -゚)「そんな美談を聞いてしまっては、手を貸さないわけにはいかないな」

('A`)「え?」

言うや否や、クーは着物をぱっぱとはらい、玄関に向かって歩き始めた。

(;'A`)「お、おい。どこいくんだよ」

川 ゚ -゚)「お前も来るんだよ、ドクオ」

('A`)「は? だ、だからどこに?」

川 ゚ -゚)「決まっているだろう?」

クーはアホかこいつ、と言わんばかりのジト目で俺を見た。

川 ゚ -゚)「お前の妹のところに、だよ」

71 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:18:13.74 ID:kFPT3I1tP




夜十一時。
妹のいるVIP総合病院は、当然のことながら静まり返っていた。

(;'A`)「何で忍び込むんだよ。ちゃんと面会時間にいけばいいだろ」

川 ゚ -゚)「アホか。お前の今の姿じゃ無理に決まっているだろう。
     それに、私だってむやみやたらに人前に姿を晒したくはない」

(;'A`)「でも、これ完全に泥棒みてーじゃねえか」

川 ゚ -゚)「気にするな」

病院の裏口から入り、そそくさと、人に会わないように病院内を進んでいく。
気分はまさにスネークである。

('A`)「ここだ。301。個室だから他に患者はいないはず」

川 ゚ -゚)「よし、入るぞ」

ガチャリ。

72 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:21:43.55 ID:kFPT3I1tP

ζ(゚ー゚*ζ「……ううん? 誰?」

('A`)「俺だよ、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃん?」

俺はデレのもとへ、慎重に、近付いていった。
かなりの近視とはいえ、あまり近付くと毛むくじゃらだということがバレてしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの? こんな時間に。
     スキー旅行行ってるんじゃなかったの?」

('A`)「ふふん。さっき、帰ってきたんだよ。約束通り、彼女を連れてな」

ζ(゚ー゚*ζ「え、ほんとう?」

俺はちらり、とクーの方を見た。
好きにしろ、といった表情。すまん、恩に着る。

('A`)「こちらが、俺の彼女のクーさんだ」

川 ゚ -゚)「こんにちは。いや、こんばんはだな。デレちゃん」


75 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:27:08.94 ID:kFPT3I1tP

ζ(゚ー゚*ζ「こんばんは。クーさん。素敵な着物を着てますね」

川 ゚ -゚)「ありがとう。見ての通り、私はいいところのお嬢様でな。
     こういった着物を普段からきているのだ。
     ちなみに、こうしてお忍びで君の元へきたのも、近衛隊をまくためで」

ζ(゚ー゚*ζ「え、すごい! お嬢様なんですね!」

川 ゚ -゚)「まあな。そして、そんな私を射止めたのだからドクオは凄い。
     ドクオは偉い。ドクオはなんて勇気があるんだ。
     いやはや、私にほれた男は幾多もいたが、皆、父の怒りをかって海に沈んでいった。
     だが、ドクオは父に向かってこう言ったのだ。
     『俺はクーを愛している。その気持ちは父君である貴方にも負けない』と」

ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃん……」

尊敬の眼差し? で俺を見つめるデレ。

('A`)「あ、あはは。いやあ、ガンアクションしたり特急電車の屋根で戦ったり
    色々大変だったぜ」

クーのやつ、言い過ぎたぜ……。
いやまあ、別にいいけどさ。

77 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:30:59.18 ID:kFPT3I1tP

川 ゚ -゚)「その時は私も死を覚悟した。だが、ドクオが勇敢にもだな」

ζ(゚ー゚*ζ「うんうん!」

かれこれ二十分は話し込んだだろうか。
クーの話すドクオ武勇伝(フィクション)は、もはや映画真っ青のシナリオになっていた。
それを、デレは楽しそうに聞く。

ひときしり話し終えた後、クーが口火を切った。

川 ゚ -゚)「そろそろ、帰らないといけない時間だ」

ζ(゚ー゚*ζ「え? もう?」

川 ゚ -゚)「ああ。私はお嬢様だからな。
     ……最後に一つ、デレちゃんに渡す物がある」

クーは一息ついてから

川 ゚ -゚)「はい、勇気」

デレの前で、手をぱぱっとひろげた。

78 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:36:08.00 ID:kFPT3I1tP

ζ(゚ー゚*ζ「……あ」

川 ゚ -゚)「約束、したんだろう?」

クーが俺の方を見る。俺は、ゆっくりと頷いた。

('A`)「デレ。勇気があれば、何でも出来る。
    ちゃんと、俺は証明したぞ。だから、手術、うけよう」

デレは少し悩んでから

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

小さく、頷いた。

80 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:38:48.36 ID:kFPT3I1tP

('A`)「……じゃ、そろそろ俺らは行かないと」

川 ゚ -゚)「そうだな」

ζ(゚ー゚*ζ「クーさん、今日はありがとうございました。
     また、遊びにきてください!」

クーはデレの言葉に、曖昧な笑いで返し、そして背を向けた。
俺とクーは、病室の外に出る。

無言のまま、ただ歩いた。

病院の外に出た。
空を見上げると、今日は満月。
月の光が、妙にまぶしかった。

81 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:42:07.19 ID:kFPT3I1tP

('A`)「ありがとな。嘘に付き合ってくれてよ」

川 ゚ -゚)「……もういいのか?」

('A`)「ああ。これで心置きなく雪男を続けられるってもんだ」

俺は背のびをしながら、人っ子一人いない道路を歩いた。

('A`)「いいんだ。俺はもう、死んだ人間なんだから」

そうだ。
本当は、こうして会いにきちゃいけなかったんだ。

俺は、あの雪山で死んだ。
今はただの雪男。かつてドクオと呼ばれていたが

('A`)「さあ、帰ろうぜ。明日も仕事だ」

川 ゚ -゚)「ああ」

今は雪山の守護神だ。

……たぶん、これからも、ずっと。

82 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:45:26.39 ID:kFPT3I1tP

(;^ω^)「ドクオ、大変だお! 長老が、なんかすごい偉い人が帰ってきたらしいお!」

('A`)「は?」

なんてノスタルジックに別れを告げてきたのに、
拠点に戻った俺達を迎えたのは謎のハイテンションなじいさんだった。

(´・ω・`)「お――――か――――え、り――!
      我が愛しの同胞たちよっ!」

('A`)「俺のシリアスな空気をかえせ。そして誰だ。お前は一体どこからわいてきた」

川;゚ -゚)「ちょ、長老!」

長老? なんぞそれ。

ξ゚听)ξ「おかえり、二号。そしておめでとう。
     あなたと一号、今日で、リストラらしいわ」

(;'A`)「は?」


84 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:51:32.01 ID:kFPT3I1tP

どういうことだ? と聞く前に、長老が大声をだした。

(´・ω・`)「すまんね君たち! ただの人間なのに臨時で雪男やってくれちゃって!
      いやあ、感謝感謝。おかげで今年も凍死者0だわあ! ふひー! めでたいのう!」

(;'A`)「は、はあ?」

(´・ω・`)「んでさ、これ。見つけてきたよー、ギコちゃん。
      まったく、まさか失恋した傷をいやすべく人間といちゃついていたとわ
      ほんま男のくずやでー! これ! 謝れこら!」

( ,,゚Д゚)「仕事ほっぽらかして、すませんでした!
     いやあ、実はクー様に振られ、飛び出したあの後、しぃっていうすげえ可愛い子がですね」

べらべらと喋りだすギコ。
見た目は完全に雪男だが、毛が薄く、毛の濃い人間に見えないこともない。

川 ゚ -゚)「最低だな」

ξ゚听)ξ「最低ね」

( ^ω^)「心変わりしすぎな雪男だお」

85 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:54:04.14 ID:kFPT3I1tP

(´・ω・`)「ま、とにかくそんなわけだから!
      君たち、悪かったね! もう家に帰っていいよ!」

(;'A`)「え? あのう、家に帰れといわれましても……」

(;^ω^)「この格好じゃあ……」

雪だるまに雪男。
どうしろと。

(´・ω・`)「ああ、平気平気。すぐに戻すよ。ほいっ!」

戻す? と思っていたらなんとまあ。
一瞬で、長老は俺達の体を元に戻して見せた。

('A`)「お、おおお! 俺の体が!」

(;^ω^)「ちょwwwww死んだはずじゃwwwww」

そうだよ。
俺達は凍死したはずじゃなかったのか?

87 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:56:32.21 ID:kFPT3I1tP

(´・ω・`)「まー、確かに死んだね。
      これで雪男になってなくて、天国地獄方面いってたら無理だったかもねー。
      だってほら、あっちは死神とか管轄がちがうし」

(;'A`)「は、はぁ」

(´・ω・`)「ここはまぁ、僕が人肌ぬいじゃおうってわけよ!
      気にするな! 書類なんてごまかせばどうとでもなる!
      だって僕は長老だから。雪山を司る守護神だからね!」

……わからん。
さっぱりわからんが、とにかく俺達は

('A`)「おおお! 家に帰れるぞ!」

( ^ω^)「勝った! 第三部完ッ!」

俺とブーンは小躍りした。


88 名前:1 投稿日:2009/10/31(土) 23:59:28.53 ID:kFPT3I1tP

(´・ω・`)「いや、ほんとにすまなかったね。
      お詫びに、これから家まで送らせてもらうよ。魔法で。
      一瞬で。ぴゅーんと!
      ――それと、労働の対価として何か与えたいところだが……
      何かほしいもんある?」

( ^ω^)「金塊!」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」

( ^ω^)「本当にすみませんでした」

コントをしている二人を他所に、俺はクーのほうへ顔を向けた

('A`)「クー」

川 ゚ -゚)「長老の意向は雪山のすべてだ。
     よかったな。おめでとう。お前もこれで自由だな」

91 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:02:26.47 ID:kFPT3I1tP

('A`)「あの……ありがとな。色々と」

俺は頬をかきながら、礼を言う。

クーは笑みを浮かべて答えた。

川 ゚ ー゚)「馬鹿者が。さっさと帰って、妹のそばにいてやれ。
      それと、言い訳を考えておくんだな」

……あー、もう。
そうじゃない。そうじゃなくてっ!

('A`)「なあ、クー。その、もし、お前がよければ――」


俺は願い事を、言った。
果たしてそれは叶ったのだろうか?

全てはエピローグで明らかになる。


93 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:05:29.65 ID:+FkZXq5ZP

 エピローグ


太陽は今日も絶好調らしいぞ。
タンポポが咲いている。
頬を撫でる風が心地よい。

春である。学生の天国、春休みである。
俺はデレと一緒に、市内の動物園にきていた。

ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃん、見て! すごい! きりんだ!」

('A`)「でかっ! ちかくで見ると怖っ!」

ζ(゚ー゚*ζ「餌あげようよー! ね、買ってきて?」

(;'A`)「しょうがねーな、もう」

こいつ、退院してから、随分元気になったもんだ。
わがままなのは、元気の証拠か? やれやれって感じである。

94 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:07:39.17 ID:+FkZXq5ZP

('A`)「餌ください」

「200円ッス」

('A`)「えーっと、あら、万札しかねーや」

俺はマジックテープの財布を閉じて、隣にいる彼女に頭を下げた。

('A`)「すまん。小銭かしてくれ」

「まったく、君は彼女に金をせがむのか。セコイな。しょぼい男だな」

彼女は、真っ白な長い髪を風に靡かせながら

川 ゚ -゚)「今回だけだぞ」

200円を、俺の手に握らせた。



95 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:10:15.60 ID:+FkZXq5ZP

ξ゚听)ξ「ブーン、見なさい。あれがサイよ。あの角にタッチしてきなさい」

(;^ω^)「ちょwwww無茶いわんでほしいおwwww」

ξ゚听)ξ「何? わたしの言う事が聞けないの? 一号」

(;^ω^)「もう僕は一号じゃねぇぇー!」

ブーンのやつも、いい感じ? だな。
意外とお似合いだったりして……。

川 ゚ -゚)「何をにやにやしてるんだ?」

('A`)「別に」

ま、俺には、クーっていう最高の彼女がいるから
幸せなんですけどね、自慢。



96 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:14:02.58 ID:+FkZXq5ZP

――あの時。
俺はクーに告白した。
本当の彼女になってほしいと、そう言ったのだ。

そして長老に、願い事を言った。
クーを、俺にくださいと。
もちろん、雪女なのだ。仕事はきちんとこなしてもらう。

けど、たまにでいいから
俺とデートする時間とか、色々くださいと頼み込んだのだ。

結果、雪女の彼女ができましたというわけだ。
ブーンとツンもしかり。
――あっちはまだ付き合ってるわけじゃないだろうけど。

川 ゚ -゚)「しかし……君も妹想いな男だ」

('A`)「うん?」

川 ゚ -゚)「妹に嘘をつかないために、私を彼女にしたのだろう?
     まあ、私も雪山の生活には飽きていたし、君と付き合うのも
     悪くないと想ったから、話にのったのだが」

98 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:16:19.19 ID:+FkZXq5ZP

('A`)「それもあるけど、一番じゃない」

川 ゚ -゚)「え?」

俺はクーの手をしっかりと握った。

('A`)「俺はクーのことが単純に好きだから。
    優しいクーにほれたから、こうして付き合ってるんだ。
    そこ、間違えるなよ」

川 ゚ -゚)「……ドクオ」

クーは、雪のように白い肌を、少し赤らめながら

川 ゚ -゚)「そんな臭い台詞いって、恥ずかしくないのか?」

('A`)「恥ずかしいわ!!」

あーあ、本当に雪のようにクールだよ、俺の彼女は。
そこがまた、いいんだけどさ……。

99 名前:1 投稿日:2009/11/01(日) 00:20:50.64 ID:+FkZXq5ZP

川 ゚ -゚)「まあ、でも」

('A`)「なんだよ」

クーは俺の手を握り返して、

川 ゚ ー゚)「そう言ってもらえると、私も嬉しいぞ」

少しだけ、暖かな笑みを浮かべた。

ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃん、クーさん、はやくー!」

('A`)「はいはい、今いきますよーっと!」

川 ゚ -゚)「ふふ、妹には頭があがらないんだな」


厳しい冬が終わり、春がきた。
暖かくて気持ちのいい季節である。

けど、俺はめちゃくちゃ寒い冬も嫌いじゃない。

何故かって? なんでだろうなー。

俺はそんな事を考えながら、デレのもとへと駆けていった。


fin


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