ξ゚听)ξ双子の魔導士のようですζ(゚ー゚*ζ

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:05:59.73 ID:SW9MAukv0




これは、まだ世界に魔法が満ち溢れていた頃の、ある少女達の物語――




ξ゚听)ξ双子の魔導士のようですζ(゚ー゚*ζ




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:07:53.71 ID:SW9MAukv0


街を行くのは二人の少女。

ξ゚听)ξ「さすが城下町なだけあるわ」

ζ(゚ー゚*ζ「だね。人通りが激しいね」

青空の下、街の入り口から城へ一直線に続く大通りには数多の露店が軒を連ねている。
どの店の主も威勢が良く、周囲は喧騒に満たされていた。

ξ゚听)ξ「デレ、杖の新調はしないの?」

二人の少女の姉の方、ツンが訊ねる。
それに妹の方のデレは答える。

ζ(゚ー゚*ζ「最近はあんまり強力な魔法も使ってないし、まだいいや」

ξ゚听)ξ「国王様のおふれは見たわよね?」

ζ(゚ー゚;ζ「……お姉ちゃんに言われたら心配になってきちゃった」

ξ゚听)ξ「それは私が預かっとくから、行ってきなさい」

デレは背負っていた杖をツンに手渡す。
樫の木で作られたシンプルなものだが、大分使い込まれているのが幾つもついた傷から分かる。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:09:35.37 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「お金はこれ。私はあそこの木の所で待ってるからね」

小走りで杖を扱う店を探しに行くデレの後ろ姿を、ツンは優しく見守る。
たった一人の妹。
彼女の元気な姿こそがツンの活力なのだ。

大通りを少し外れた大きな木の下、幹に寄り掛かるツン。
その思考はこれからのことで占められていた。

ξ゚听)ξ(もうお金もなくなってきたし、おふれは受けるしかないわよね)

ξ--)ξ(デレが帰ってきたら城へ行って……それから宿を取らないと)

ξ--)ξ(明日になったら出発ね。最近は物騒な世の中だから薬草を買いだめしておこう)

考え込むとそれに没頭してしまう。
それはツンの悪癖ともいうべきものであった。

だから彼女は、それに気付かなかったのだ。


爪'ー`)y‐「へいへーい、お嬢さん、今時間あるかい?」

ξ゚听)ξ「!?」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:11:40.99 ID:SW9MAukv0

目を開けたツン。
その視界を満たすのは。


爪'ー`)y‐ミ,,゚Д゚彡( ^Д^)


いかにも柄の悪そうな三人の男達であった。

ξ゚听)ξ「……」

ξ--)ξ「はぁ……」

思わず溜め息を吐く。
ツンの顔に、焦りや不安といったものは一切見えない。

ミ,,゚Д゚彡「俺達暇で暇で仕方ねぇんだよ。相手、してくんねぇ?」

ξ゚听)ξ「ごめんなさいね。私、急いでるから」

( ^Д^)「そうつれないこと言うなよ」

苛立った三人のチンピラのうちの一人がツンの手に触れようとする――

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:13:48.70 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「……汚らわしい」


(;^Д^)「ぐあッ!?」

が、それが叶うことはなかった。
ツンの肩に触れようとした男は、はるか後方の民家の壁に叩きつけられていた。

レンガ造りの壁だから無傷だが、もしその家が木造だったら人の形の穴が空いていたに違いない。
それ程の衝撃だったのだ。

爪;'ー`)y‐「……な、なんだ!?」

ξ゚听)ξ「なんでしょうね。
      ……せっかく城下町に来て気分良かったのに、あんたらのせいで台無しだわ」

いつの間に抜いたのか、ツンの右手には鈍く輝く黒銀の刀。
峰打ちだったため、刃に血が付いているということはない。
しかしそれでも、刀が異様な空気を放っているのは男達にも理解出来た。

ξ゚听)ξ「吹っ飛んだそいつを連れて、早く私の視界から消えなさい。次はないわ」

爪;'ー`)y‐ミ;,゚Д゚彡「……ひっ!」

蛇に睨まれた蛙のように怯えた様子の男達は、吹っ飛ばされた男を抱えて瞬く間に逃げていった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:15:25.73 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「……ふん。あんな奴ら、魔物の餌にでもなっちゃえばいいのに」

ツンは刀を腰の鞘に納める。
と同時、周囲から歓声が上がった。

ξ;゚听)ξ「え? え?」

状況を理解出来ないツン。
そんな彼女に、一人の少年が近付いてきた。

(=゚ω゚)ノ「あの人達、街に出ては皆に酷いことをして、嫌われ者だったんですょぅ」

ξ;゚听)ξ「そ、そうなの……」

(*=゚ω゚)ノ「お姉さんは僕達のヒーローですょぅ。すごく格好良かったです!」

ξ;゚听)ξ「……」

それからデレが戻るまでの数分間、ツンはその場にいた人々にちやほやされ続けるのだった。


ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、大丈夫?」

古い杖を背負い、新品の杖を大事そうに抱えたデレは笑顔で訊ねる。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:17:46.12 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「……ちょっと疲れただけよ。やっぱり人に囲まれるのは慣れないわ」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、なんだか楽しそうだったね」

ξ*゚听)ξ「そりゃ……ちやほやされたら悪い気はしないわよ。恥ずかしいから嫌なだけでね」

二人は仲良く並んで城へ向かう。
広い城下町、しかしツンの噂はすでに広まってしまったようで。

ξ*゚听)ξ「……」

ツンの姿を見ると、嬉しそうに手を振る人や囃し立てる人。
今すぐ消えたいくらい恥ずかしい、それがツンの内心だった。

( ∵)「おや、あなたが街で噂の……」

ξ;゚听)ξ「な、なんで門番まで知ってるんですか」

城門前でやる気なさげに立つ門番までツンのことを知っているとは、恐ろしい程の情報伝達速度である。

( ∵)「この街ではあることないこと、すぐに広まりますからね。
    私は先程、郵便屋から聞きましたよ」

ξ;゚听)ξ「……」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:20:07.94 ID:SW9MAukv0

ζ(゚ー゚*ζ「ところで門番さん」

黙り込んでしまったツンから注意を逸らすように、デレが言った。

ζ(゚ー゚*ζ「私達、国王様のおふれを見て城に来たんです」

( ∵)「おやまぁ……まだ若いのに……」

門番は二人の少女を眺め、そして。

( ∵)「通ってください。目立つようなことをする人なら、大丈夫でしょう」

ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、早く行こ」

ξ゚听)ξ「そ、そうね」

デレはツンを引きずって城へ入る。
門番は彼女らの姿が見えなくなるまで、その後ろ姿を見つめていた。

( ∵)「本当、若いなぁ。十五くらい……まだ成人するかしないかじゃないか?」

( ∵)「あの子達が、果たして国王様の命を達成出来るか。見物だな」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:22:28.71 ID:SW9MAukv0


城内に入ってすぐ、ツンとデレは兵士の指示に従って王の間に通されていた。
赤い絨毯が敷かれた先の玉座には、穏やかな顔付きの王が腰掛けている。

( ´∀`)「君達も、私のふれを見たモナ?」

ξ゚听)ξ「ええ。詳しい話は城で、ということでしたので、こうして参ったのです」

( ´∀`)「そうモナか。……所属はどこの協会モナ?」

ζ(゚ー゚*ζ「出身はヴィップですが協会には所属していません」

(;´∀`)「なんと! うーん……」

国王は腕を組んで、うんうんと唸ってしまう。
しかし、それも無理はない。
なんせツンとデレは、無所属の@キ人なのだから。

(;´∀`)「見たところ、魔導士モナ?」

ξ゚听)ξ「はい」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:24:24.24 ID:SW9MAukv0

世界を旅する旅人は星の数ほど存在する。
その中には人気職の戦士に魔導士、武闘家から、
果ては狩人や船乗りといった本来戦闘に向かない職業まで、
多種多様な職業を名乗る者達がいた。

通例、旅をする彼らは国と職業ごとに設けられた協会≠ノ所属している。
協会に所属する者には信用が与えられ、関所の通行証や船賃の割り引きを得られる。

しかしそれでも、協会への所属を望まない変り者というのはいるもので。
国王は今まさに目の前に現れた変り者を信用するか否か、決断を迫られていた。

(;´∀`)「……」

悩む国王。その側に、一人の側近らしき兵士が近付いた。

(´・_ゝ・`)「国王様。この者達はここへ参る前に、街のならず者達を追い出してくれたとのことです」

( ´∀`)「モナ?」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:26:25.11 ID:SW9MAukv0

(´・_ゝ・`)「先程情報が入りました。先日、城に直訴されていた件です。
        城下町で民を脅かす不届き者がいるとかいう」

( ´∀`)「ああ……」

( ´∀`)「え?」


ξ゚听)ξζ(゚ー゚*ζ

( ´∀`)

国王は二人の少女に視線を向ける。

そして言った。

(;´∀`)「申し訳ないことをしたモナ。まずお礼を……いや、その前に話を聞いてもらうモナ!」

ξ゚听)ξ「信用していただけたようで何よりです」

偶然の出来事がこうも上手く作用するとは。
当の本人もびっくりの展開であった。

それから国王は二人に街の不届き者を追い払ったことに対する報奨金と、本題である依頼を与えたのだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:28:24.89 ID:SW9MAukv0


事の概要は簡単なものだ。

誘拐された王子を助けてほしい

ただそれだけだった。


ξ゚听)ξ「……この洞窟ね」

国王との謁見の翌朝、二人は早速、王子が誘拐されたという北の洞窟にやって来ていた。
洞窟は怪物のように口を大きく開け、まさに二人の少女を飲み込まんとしている。

ζ(゚ー゚*ζ「行こ」

ξ゚听)ξ「そうね」

ξ゚听)ξ「火よ、全てを燃やせ。《ファイア》」

ツンが小声で呟くと、ぼうっと音を立てて火が彼女の手にした松明を燃やす。

ξ゚听)ξ「これでよし、と」

松明を洞窟に向ければ、その内部の石がきらきらと光るのが見える。
火に反射して赤、橙、黄。
まるで地上の星屑のようだ。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:30:31.06 ID:SW9MAukv0

小さな明かりだけを頼りに暗い小道を二人は進む。
道中に魔物の姿は全くなかった。

ξ゚听)ξ「結界でも張ってるのかしら」

ζ(゚ー゚*ζ「あまり魔力は感じないんだけど……。もし結界だったら厄介かな」

ξ゚听)ξ「結界は相当に腕の立つ魔導士しか使えないからね。……そうじゃないことを祈るとするわ」

十分程歩くと、狭かった通路が急に開けた。

青い鉱石が火に照らされる様は夜空を連想させる。
生憎、二人の少女がそれを楽しむ余裕はないのだが。

ζ(゚ー゚;ζ「うわっ……!」

ξ;゚听)ξ「デレ!」

大地が揺れた。
その振動により、デレは思わず尻餅を着いてしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「私は大丈夫。それより……」

ツンに支えられて立ち上がったデレが何か言い掛けたその時。

洞窟の奥から反響した男の声が聞こえた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:32:23.93 ID:SW9MAukv0

( ´_ゝ`)「はっはっはっ! よくぞ参った!」

(´<_` )「約束のものは持ってきただろうな?」

現れたのはよく似た顔立ちの二人の男だった。
髪型も服装も得物も、全く違う。
それでも彼らはそっくりであった。

ξ゚听)ξ「……双子?」

ツンが呟く。
それに男達の片割れが答えた。

( ´_ゝ`)「その通り! 泣く子も黙る流石兄弟たぁ俺達のことだ!
       なぁ、オトジャ」

(´<_`;)「おい、アニジャ。ここで名乗ってどうする」

( ´_ゝ`)「……」

(;´_ゝ`)「あっ!」

二人のやり取りはまさに、軽快なコントそのものであった。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:34:28.36 ID:SW9MAukv0

ところで、ツン達には目の前の不審者よりも気になっていることがあった。

ξ゚听)ξ「で、王子はどこかしら」

( ´_ゝ`)「王子なら、この奥だ」

アニジャは洞窟の奥を指差す。
ツン達のいる場所からは暗くてどうなっているのか分からないが、道が続いていることだけは薄らと分かる。

(´<_` )「ただし、王子を返してほしくば」

オトジャが言う。
彼は右手に細身の剣を携えている。

( ´_ゝ`)「混沌の魔石≠寄越すんだな」(´<_` )

ζ(゚ー゚*ζ「混沌の、魔石?」

デレが聞き返す。
流石兄弟の口振りでは、彼らは王子の解放と引き換えに何かを要求していたらしい。
しかし王からそのような話は一切なかった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:36:35.29 ID:SW9MAukv0

( ´_ゝ`)「国王に言ったはずだが」

(´<_` )「まさか、俺達とやり合うつもりか?」

( ´_ゝ`)「あー……二人とも俺の好みなのに……」

(´<_` )「また死体が増えるわけか」

ζ(゚ー゚;ζ「国王様……」

厄介なことになった。
流石兄弟はすでに何人か殺しているらしい。

ξ゚听)ξ「やられた……」

ツンとデレ、彼女らは半ば王に騙されたようなものであった。

詳細を伏せ、危険な依頼をする。
そんな人間は至る所にいる。
しかし、それを覚悟していても彼女らは溜め息を吐かないわけにはいかなかった。

何故なら今回の敵は、今まで相見えた人や魔物達とは明らかに格が違うのが、発せられる魔力から理解できるのだから。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:38:24.08 ID:SW9MAukv0

( ´_ゝ`)「出すもん出さないなら、やるしかないな」

ξ゚听)ξ「……そうね」

ツンの返事を合図とばかりに流石兄弟は一歩踏み出す。

アニジャはメイス、オトジャは剣を構えている。

( ´_ゝ`)「双子のコンビネーション、とくと見せてやろう」(´<_` )

息の合った台詞は威圧感を放っている。
しかし、ツンとデレが臆することはない。

ξ゚听)ξ「残念。そんなの私達には脅しにもならないわ」

ζ(゚ー゚*ζ「だね。だって私達も」

ξ゚听)ξ「双子だから」ζ(゚ー゚*ζ


先手を打ったのはデレだった。
右手を前に突き出し、呪文を唱える。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:40:27.24 ID:SW9MAukv0

ζ(゚ー゚*ζ「風よ、全てを切り裂け。《ウインド》」

デレの右手から発生した風の刃が兄弟に一直線に向かう。
高い魔力を持つ魔導士の放った鋭いそれは、触れれば怪我を免れない。
しかし。

(´<_` )「《ウインド》」

ζ(゚ー゚;ζ「……!」

オトジャの放った風の刃によって、いとも容易く相殺されてしまった。

ξ;゚听)ξ「短縮詠唱……これは厄介な……」

通常、魔法を使うには詠唱≠ェ必要となる。
魔法とは本来、自然の力を引き出すものであるから、その合図が必要となるのだ。

しかし中にはそれを必要としないオトジャのような魔導士もいる。
彼らは鍛練を積んだ者か、もしくは才能のある者である。

( ´_ゝ`)「どうだ、見たか、オトジャの力!」

(´<_`;)「アニジャは詠唱以外は黙っていろ。集中が途切れる」

見たところオトジャはまだ若い。
ならば彼は、才能ある魔導士なのだ。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:42:31.30 ID:SW9MAukv0

ζ(゚ー゚*ζ「低級魔法は効かないか……なら!
      お姉ちゃん、援護をお願い」

ξ゚听)ξ「分かったわ」

ツンは腰の鞘に収められた刀を目にも止まらぬ早さで抜き放った。

向かうはアニジャ。
一見隙だらけだが実は一部の隙もない、油断ならない男だ。

(;´_ゝ`)「……!」

ξ゚听)ξ「ふっ!」

全身を活用して上から切り付ける。
が、攻撃はメイスによって防がれてしまった。

ζ(゚ー゚*ζ「氷集いて氷塊となり、雨が……」

(´<_` )「《ブレイク》」

ζ(゚ー゚;ζ「……ッ」

隣のアニジャに襲い掛かったツンから素早く距離を取ったオトジャは、またも魔法を唱える。

地面から発生した尖った岩が、まるで地面から雨が降るように、デレに向かう。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:44:28.05 ID:SW9MAukv0

ζ(゚ー゚*ζ「《シールド》」

(´<_` )「チッ」

デレに向かった岩は、ことごとく魔力の壁に弾かれてしまった。
それを見たオトジャは軽く舌打ちをすると、デレに向き合う。

(´<_` )「お前も短縮詠唱を使えるのか」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

デレを守る透明な魔力の盾。
それを挟んで二人の魔導士が対峙している。


ξ゚听)ξ「……デレ」

ツンは一度刀を引き、アニジャとの距離を取る。
デレとの直線距離にはオトジャがいる。
あまり好ましい状況とはいえなかった。

ツンの役割は流石兄弟の注意を引き付けること。
しかし、これではオトジャの目がデレに向かったままだ。

ξ゚听)ξ「雷よ、全てを打ち抜け。《サンダー》」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:46:28.24 ID:SW9MAukv0

( ´_ゝ`)「無駄だ!」

アニジャが雷にメイスを向けると、ツンの放った雷は空気に溶けるように消えてしまった。

ξ゚听)ξ「面倒なもの持ってるわね。……仕方ない」

ツンは再び踏み出す。

ξ゚听)ξ「火よ、全てを燃やせ。《ファイア》」

( ´_ゝ`)「だから無駄だと……」

(;´_ゝ`)「!?」

アニジャが攻撃を防ぐべくメイスを前に出した時。
すでにツンの身体はオトジャの方を向いていた。

ξ゚听)ξ「こっちよ!」

(´<_`;)「くっ……」

オトジャは応戦するために剣を振るう。
しかし、その背後では。

ζ(゚ー゚*ζ「氷集いて氷塊となり、雨が凍りて雪となる。
      我が名において、全てを氷に閉ざせ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:48:33.78 ID:SW9MAukv0

(´<_`;)「アニジャ!」

オトジャの声が洞窟内に響く。
しかしツンがそれを遮る。

ξ゚听)ξ「させない」

(;´_ゝ`)「風よ、全てを切り……」

ζ(゚ー゚*ζ「氷雪魔法《エターナルフォースブリザード》」

デレが早口の詠唱を終える。
すると、彼女を中心に風が巻き起こった。
巻き起こった風は大量の雪と氷でできている。

自然現象にブリザードというものがある。
デレが魔力を凝縮させた杖の先端から放ったそれは、まさに全てを氷に閉ざさんとする強烈なブリザードといってよかった。

(´<_`;)「《シールド》」

素早く反応したオトジャは防御魔法を唱えるが、もう遅い。

オトジャを飲み込む鋭く激しい雪と氷の塊は、低級魔法の壁などいとも容易く壊してしまったのだ。

( ´_ゝ`)「オトジャ……」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:50:26.15 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「こっちも終わりよ」

ξ゚听)ξ「妖刀よ、我に力を。《グラム》」

(;´_ゝ`)「!」

ツンの掛け声と共に刀が妖しく輝きだす。

漆黒の刀は紅い光を帯びている。
その光はやがて、右手を伝ってツンの全身をも包み込む。

(;´_ゝ`)「まさか……」

ξ゚听)ξ「あんたの予想、たぶん当たってるわ」

(;´_ゝ`)「その刀は……等価交換武器か……?」

ξ゚听)ξ「……正解」

言うやいなや、ツンはアニジャを切り付ける。
刀の軌道は先程より鈍っている。
それは一見するとツンが疲れたからに見えるが、違う。
ツンの纏う光によって切っ先が揺らいでいるために起こる錯覚なのだ。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:52:24.51 ID:SW9MAukv0

アニジャはそれをどうにか躱しながら言う。

(;´_ゝ`)「その刀の対価は命≠ゥ?」

ξ゚听)ξ「そうよ。人を殺す度、私の寿命は縮まるわ」

(;´_ゝ`)「ッ!!」

切っ先がアニジャの右腕を掠めた。
アニジャの全身からは嫌な汗が流れ出る。

ξ゚听)ξ「……そろそろ止めといこうかしら」

ツンがそう言った時。

ζ(゚ー゚;ζ「お姉ちゃん、伏せて!!」

ξ゚听)ξ「!?」

ツンは即座にデレの声に応じて身を屈めた。

一瞬でも遅かったら、彼女は命を落としていた。
なぜなら彼女が避けた直後。

(´<_`メ)「……」

オトジャの放った上級風魔法が、ツンのいた場所を襲ったのだから。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:54:30.18 ID:SW9MAukv0

(´<_`メ)「アニジャ。遊んでいる場合じゃない」

オトジャは全身に傷を負っている。
しかし彼の話し振りから、致命傷ではないと察することが出来た。

( ´_ゝ`)「おお……無事だったのか……」

(´<_`メ)「ギリギリ上級防御魔法が間に合ったからな」

オトジャはアニジャの元へ近付く。
ツンも体制を立て直すべくデレの隣に移動する。

こうして再び、二組の双子が向き合うこととなった。

ζ(゚ー゚*ζ「せっかくチャンス作ってくれたのに……ごめんね」

ξ゚听)ξ「仕方ないわ。あいつら、私達が今まで戦った奴らの中で一番強いもの」

ツンの刀から発せられていた紅い光はいつの間にか収束している。
彼女は刀を握り直す。

デレの方も、昨日買ったばかりの魔力のこもったミスリル$サの杖を構える。
杖には持ち主の魔力を増幅する効果があるが、あまりに使い込むと形状を保っていられなくなる。
だからデレをはじめとした魔導士達には、古い杖も持ち歩く者が多い。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:56:26.27 ID:SW9MAukv0

(´<_`メ)「アニジャ、あれ≠使え」

( ´_ゝ`)「了解。援護は任せた」

流石兄弟が不穏な会話をしている。
ツンとデレはそれにいち早く気付いた。

ξ゚听)ξ「……!」


四人の行動は同時だった。

オトジャがアニジャに向かって上級防御魔法を唱える。
デレがオトジャに中級氷魔法を使う。
ツンが光を纏った妖刀をアニジャに振るう。

そしてアニジャが、ツンもデレも知らない魔法の詠唱を始めた。

ξ;゚听)ξ「今度は何よ!?」

魔法の壁に全力で振り下ろした刀を食い込ませるツンが言う。

アニジャからは黒い波動がほとばしる。
それに対抗するかのように、ツンの刀からも再び紅い光が溢れだしている。

混ざり合う黒と赤。
それはデレやオトジャの放つ魔法と違って美しいとは言い難い、おぞましいものであった。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 21:58:38.68 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「まあ、いいわ。私が叩き切ってやるから」

音はしない。
にもかかわらず軋む音がすると錯覚するくらい、オトジャの張った魔力の盾に刀が入り込んでいる。

破られるのも時間の問題のように見えた。

(´<_`メ;)「俺の魔法を破る刀とは……」

オトジャはやはりデレの魔法を軽くいなしてしまう。
そして全神経をアニジャを守る光の壁に注ぎ込む。

ζ(゚ー゚;ζ「お姉ちゃん!」

ζ(゚ー゚;ζ「氷集いて氷塊となり、雨が凍りて雪と……」

デレは焦りながら、間に合わないことを半ば覚悟しながらも、上級魔法の詠唱に入る。
少しでも姉の役に立ちたい、それが彼女の全てだった。

( ´_ゝ`)「闇に巣食うは暗き影、光を食らうは深き闇。我が名において、混沌よ全てを飲み込め」

ξ;゚听)ξ(止められない……!)

ツンの刀がアニジャを斬り捨てるか、アニジャの魔法がツンを飲み込むか。

しかし長引くと思われた時間の戦い、それは呆気ない終焉を迎えた。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:00:32.86 ID:SW9MAukv0

( ´_ゝ`)「禁呪暗黒魔法《エンシェントダークインパルス》」

黒い波動は一瞬のうちにツンの身体を飲み込む。
彼女は、声を上げることすらなかった。

ζ(゚ー゚;ζ「何……!?」

ツンを飲み込んでなお迫る闇との距離を測るデレ。
それに対し、オトジャは静かに言う。

(´<_`メ)「あまりにも強大な力を持つがゆえに封印された古代魔法、禁呪=B
       お前も魔導士なら名前くらいは知っているだろう」

オトジャの言うとおり、デレはその名を知っていた。
数年前、デレとツンに魔法の知識と技術をたたき込んだ男は禁呪の研究をしていたのだ。
あまり良い思い出ではない。
記憶を振り払うように、デレはオトジャに問う。

覚悟は出来ている、しかし確認したかった。
僅かな希望を敵である男が見せてくれることを願ったのは、果たして愚かだったろうか。

ζ(゚ー゚;ζ「お姉ちゃんは……」

しかしオトジャはデレの胸中など知る由もなく、言い放つのだ。

(´<_`メ)「禁呪をまともに食らって無事な人間など」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:02:05.91 ID:SW9MAukv0

「いるわよ」


オトジャの言葉を遮った声。
それはよく通っていて耳触りの良いものだった。

奇跡だ。その主を確信したデレは顔を輝かせる。

ξ゚听)ξ「何が双子よ。私とデレに適うはずないでしょう」

ξ゚ー゚)ξ「それにね、私にはまだ、死ねない理由があるのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」

黒い靄を払うツンの右手の刀からは鮮血が滴っている。
ぽたりぽたりと落ちるそれに、今度はオトジャの顔は青ざめる。

(´<_`メ;)「……」

そして彼は、ゆったりとした動きでツンの背後に回った。

ξ゚听)ξ「何よ」

(´<_`メ)「お前……アニジャを……!」

アニジャの姿は見えない。
彼の放った黒い波動がツンを飲み込んだ時にオトジャの視界から消えて、それきりだった。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:05:49.88 ID:SW9MAukv0

ξ゚听)ξ「……」

(´<_`メ)「いくら禁呪の効かないお前でも、
       零距離発射の上級魔法を受けて無傷でいられるわけではないだろう?」

ξ゚听)ξ「……あんた、何も分かってないわ」

ツンは背中越しにオトジャの手の感触を感じながら言う。
しかし、その表情は余裕に満ちていた。
いや、むしろ。

ξ ∀ )ξ

満面の笑顔だった。

当然オトジャにそれを窺うことは出来ないのだが、嫌な気配は感じていた。
ツンの周囲の空気は色を変えている。

そしてオトジャの後ろから、声が聞こえた。

(メ´_ゝ`)「オトジャ、一旦退くぞ」

(´<_`メ;)「アニジャ!?」

それはよく聞き慣れた、アニジャのものであった。
彼のメイスは柄が折れて見る影もない。
そしてアニジャの右腕の衣服は裂け、赤い血が姿を見せている。
腕は無事だ。しかし、早く止血するか、もしくは治癒魔法を使うかしないと危ないくらいに流血している。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:07:07.48 ID:SW9MAukv0

(メ´_ゝ`)「あの女……ただ者じゃない」

アニジャはメイスを捨て、右腕を押さえながらツンを見やる。

ξ ∀ )ξ

彼女はやはり笑顔だった。

(´<_`メ)「あのお方になんと言えば……」

(メ´_ゝ`)「仕方ない。事情が変わった」

二人は洞窟を出るべく歩きだす。
それをツンとデレが追うことはない。

(メ´_ゝ`)「おい、ツンにデレと言ったな」

ζ(゚ー゚;ζ「な、何……?」

(´<_`メ)「次はこうはいかない。それだけだ」

アニジャもオトジャも振り返らない。
しかし彼らの声ははっきりと聞こえた。

(メ´_ゝ`)「なんせ俺達は」

(メ´_ゝ`)「流石兄弟≠セからな!」(´<_`メ)

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:08:52.22 ID:SW9MAukv0


二人の去った洞窟に双子の姉妹は取り残されていた。

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、身体は大丈夫?」

ξ゚听)ξ「大丈夫……もう落ち着いたわよ」

ツンに先程までの邪気を帯びた笑顔はない。
いつもと同じ、整っているが無愛想な表情だった。

ξ゚听)ξ「こいつ≠ニの付き合いも長いからね。どうにか抑えられたわ」

ツンは妖刀を鞘に納める。

ζ(゚ー゚*ζ「よかった……」

デレは安堵の声を洩らした。

ツンの持つ妖刀グラム≠ヘ人の血を吸うことで力を増すと言われている。
ツンは高い魔力を持つが、それでも昂ぶった妖刀の意思を押さえ込むのは難しいことであった。
最初の頃は、ツンは刀を持つ度に意識を乗っ取られる程だったのだ。

ξ゚听)ξ「早く王子を見つけましょう。
      あの双子のことだから、とんでもない仕掛けがあるかもしれないわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「私が前を歩くよ。お姉ちゃんは離れないようにね」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:10:24.77 ID:SW9MAukv0

洞窟内に取り付けられていた松明を拝借したデレが奥へ進む。
自分以上に体力と魔力を消耗した姉を気遣いながらも、歩みは決して遅くない。
早く洞窟を出て新鮮な空気を吸いたかった。


歩いた時間はおよそ五分。
洞窟の最深部に、一人の少年がいた。
足を拘束されていて身動きが取れない上に、猿轡も噛まされている。
デレは手際よくそれを解いてやり、訊ねた。

ζ(゚ー゚*ζ「あなたが、アスキー国第一王子のモラル@lでしょうか?」

( ・∀・)「ふはー。久しぶりにまともに話せます。
      貴女の言う通り、僕がモラルです」

少年は立ち上がると深呼吸と盛大な伸びをする。
長時間同じ態勢を強いられていたのだろう。

ξ゚听)ξ「私達は国王様の命で貴方を救出しに参りました。さあ、帰りましょう」

( ・∀・)「……」

ツンの言葉にモラルの返事はない。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:12:28.11 ID:SW9MAukv0

ζ(゚ー゚*ζ「モラル様?」

( ・∀・)「……い」

ξ゚听)ξ「……?」

(*・∀・)「なんと美しい!」

ξ;゚听)ξ「はぁ!?」

モラルはツンの手を取ると顔を寄せる。
少年らしい無邪気な表情だが、手に込めた力は強い。

(*・∀・)「僕、一目惚れしました! 貴女のお名前は……」

(;・∀・)「!?」

がくん、洞窟内に振動が走った。
突然の事態に対応出来なかったモラルはツンの手を離してしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「音もしますね。洞窟が崩れてるのかも……」

ξ゚听)ξ「あいつら……最後にやってくれたわね」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:14:37.78 ID:SW9MAukv0

(;・∀・)「え、え?」

ただ一人、王子だけは状況を把握しきれていない。

崩れ始めた天井の石ころが落ちてくる。
洞窟全体から轟音がする。

ζ(゚ー゚*ζ「モラル様はお姉ちゃん……ツンと一緒に先に行ってください」

( ・∀・)「あ、貴女はどうするんですか?」

ξ゚听)ξ「デレなら大丈夫です。私達は先に行きましょう」

ツンはモラルの手を引いて出口へ走る。
振り返れば見えるデレの後ろ姿にモラルは一抹の不安を覚えるが、ツンに逆らうという考えは浮かばなかった。


洞窟を出て既に一時間。
日は南中している。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:16:26.90 ID:SW9MAukv0

ζ(゚ー゚*ζ「お待たせいたしました」

( ・∀・)「デレさん!」

あれから洞窟は崩れ落ちることもなく、その形を保っていた。
ツン達の元に歩み寄ったデレは説明する。

ζ(゚ー゚*ζ「洞窟内部に張られた結界が支えの役割をしていたみたいです。
      しかしモラル様を連れ去った二人の賊がいなくなったことで結界がなくなってしまい、
      このようになったようです」

ζ(゚ー゚*ζ「私が一時凌ぎ程度の簡易の結界を張りましたから、しばらくは大丈夫ですが、
      できるだけ早く結界を得意とする魔導士にちゃんとした結界を張ってもらってください」

ξ゚听)ξ「自分達に何かあった時の保険ってわけね」

( ・∀・)「このことはお二人の口からお父様に話してください。
      きっと、大事な鉱山を守ったお二人は歓迎されるはずです」

モララーの言葉に頷くデレ。
一方ツンは内心、嬉しさ半分、面倒臭さ半分といったところだった。
あの城のことだ、自分達の功績はあっという間に広まってしまうに違いない。

ξ゚听)ξ(ああ、恐ろしい)

ツンの嫌な予感は数時間後、見事に的中する。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:18:29.39 ID:SW9MAukv0


翌日早朝、城下町のすぐ外に二人の少女の姿があった。
暁の空には薄らと星が浮かんでいる。

ζ(゚ー゚*ζ「本当にいいの?」

ξ゚听)ξ「いいの。お金も貰ったし、これでしばらくは厄介事ともおさらばよ」

なぜこんな時間に、こんな所に、国の未来を救った少女達の姿があるのか。
その理由はツンがちやほやされるのが苦手だから、それだけだった。

ζ(゚ー゚*ζ「でも国王様とモラル様に挨拶くらいは……」

ξ;゚听)ξ「い、嫌よ! だってあの王子……」

「僕がどうかしました?」

ツンの言葉を遮ったのは。

(*・∀・)「ツンさんにデレさん。僕も連れてってください!」

ξ;゚听)ξ「モラル様!?」ζ(゚ー゚;ζ

モラル王子は一般的な旅人が身に付けるような軽い鎧の上に、上品なマントを羽織っていた。
どう見てもツン達の旅に同行する気満々である。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:20:27.01 ID:SW9MAukv0

( ・∀・)「お父様から三人分の関所の通行証も貰いました。
      そうそう。これから僕のことはモララー≠ニ呼んでくださいね。
      身分がばれると面倒ですから」

何が何やら、ついて行けない。
それがツンの心境だ。

あまり人に好意を向けられることに慣れないツンはモララーが苦手である。
そんな彼が旅に同行したいらしい。
そして、さらには。

ζ(゚ー゚*ζ「国王様の許可もいただいたのですか?」

( ・∀・)「はい。『一緒に旅をして誘拐なんかされないくらい強くなりなさい』と言われました」

ξ゚听)ξ「国王様……」

なんと自分勝手な王か。
さらに、何処の馬の骨とも知れぬ旅人に一人息子を預けるとは何事か。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:22:24.23 ID:SW9MAukv0

( ・∀・)「お願いします、一緒に行かせてください。……元々、世界を旅するのは僕の夢だったんです」

ξ゚听)ξ「……」

ξ--)ξ「はぁ……」

ツンは大きく溜め息を吐く。
隣に立つデレは楽しそうにツンを眺めていた。

ξ゚听)ξ「好きになさい、モララー」

(*・∀・)「は、はい!」

モララーは何度も頭を下げて感謝の意を示す。
みっともないはずの動作をそう感じさせないのは流石王子と言ったところか。

ζ(^ー^*ζ「賑やかになるね」

ξ゚听)ξ「……」

ξ*゚听)ξ「そうね」

空はそろそろ明るくなるだろう。
二人の少女と一人の少年は道を行く。

日に照らされた彼女らの顔は明るい未来を約束するような、そんな楽しげなものだった。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/09(金) 22:24:26.18 ID:SW9MAukv0




――これは、まだ世界に魔法が満ち溢れていた頃の、ある少女達の物語。


旅の先には数々の困難が待ち構えているだろう。

しかしそれでも彼女らは進むのだ。

そう、たったひとつの目的≠フために。


彼女らの旅はまだまだ終わらない。

だけど今回のお話はこれで、おしまい――





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