- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 20:44:43.65 ID:qndw9BIi0
夏休み
蝉が鳴いている朝
僕は海沿いの緩いカーブの下り坂を
自転車で重力に任せて下っていく
( ^ω^)「おっと」
ブレーキを握り
錆びた車輪は高い音で叫んで止まる
この島唯一の港の駐輪場
本土からの水上バスが見える
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 20:47:26.67 ID:qndw9BIi0
ζ(゚ー゚*ζノシ「おーい」
彼女は水上バスの中から僕を見つけて
観光客に混じって僕に手を振っている
( ^ω^)ノシ「おーいだおー」
目いっぱい伸ばして手を振る
やがて水上バスは港に止まり
白いワンピースを着た彼女は
麦わら帽子を片手で押さえながら
小走りで桟橋に降りてくる
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 20:50:27.63 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「久しぶりだお」
真っ白な肌をした彼女を見ながら
精一杯の笑顔で迎える
ζ(゚ー゚*ζ「久しぶり」
一年ぶりに会った彼女も
目一杯の笑顔で返してくれる
( ^ω^)「さ、後ろに乗るお」
来る前に自転車の荷台にくくりつけた
防災頭巾を見て彼女は少し微笑み
僕の肩につかまりながらその上に華奢な身を乗せる
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 20:53:28.80 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)♪〜
昔どこかで聞いた歌を鼻歌で歌う
ζ(゚ー゚*ζ♪〜
彼女はそれに適当な歌詞をつけて歌にする
さっき降りてきた緩い下り坂
自転車は2人の重さを乗せてゆっくり上っていく
ζ(゚ー゚*ζ「本当に久しぶり、この匂い」
海と山の混ざった匂い
彼女は僕の肩につかまりながら立って
深呼吸しているようだった
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 20:56:36.89 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「おーい、ばあちゃん。デレが来たお」
(*゚ー゚)「あら、いらっしゃい。よく来たね」
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう、おばあさん。お世話になります。」
(*゚ー゚) 「お世話になるだなんて。
こっちこそお前が来てくれてうれしいよ。」
(*゚ー゚)「昼ごはんまで友達の所をまわってきなさいな」
ばあちゃんがそう言うと
僕は彼女の手をとって「一緒に行こう」と走り出した
(*゚ー゚)「昼には帰って来るんだよー」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 20:59:50.30 ID:qndw9BIi0
蝉が鳴く
僕らはゆっくり歩いていく
さっきより少しだけ上った
太陽の白い光に照らされながら
( ^ω^)「あの場所に行くお」
ζ(゚ー゚*ζ「まだ使ってたの?あそこ」
( ^ω^)「デレが来たから行くんだお」
少しだけ山に入った海の見える高台
その中の一本の木の上に造った僕らの秘密基地
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:04:01.49 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「つかまるお」
先に少しのぼって手をさしだす
ζ(゚、゚*ζ「もう、私だって何年か前までここに上ってたんだよ」
そう言って少し口をとがらせる彼女
ζ(゚ー゚*ζ「でも…、ありがとう」
そう笑って僕の手につかまる彼女
ζ(゚ー゚*ζ「変わらないね、ここは」
( ^ω^)「それじゃ、吹くお」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、待って。私が吹く」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:09:27.27 ID:qndw9BIi0
基地の中にぶら下げてあるホイッスル
それをとると
彼女は海の方を向いて
思いっきり空気を吸って
思いっきりそれを鳴らした
水気を含んだ潮風に逆らって
夏の匂いがするこの島に甲高い音が響く
ζ(゚ー゚*ζ「聞こえたかな?」
( ^ω^)「大丈夫だお」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:12:54.10 ID:qndw9BIi0
('A`)「非常召集なんて久しぶりだな
どうしたんだ?」
そう言いながらドクオがひょっこり顔をだす
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ君久しぶり」
('A`)「うわっ、デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「うわっなんてひどいなあ」
('A`)「ごめん、ごめん。驚いただけだから」
( ^ω^)「あと…、クーはまだかお?」
川 ゚ -゚)「もういるぞ」
( ^ω^)「いつの間に来たんだお、お前は」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:17:22.63 ID:qndw9BIi0
('A`)「この4人がそろうのも久しぶりだな」
川 ゚ -゚)「この基地に来るのもな」
( ^ω^)「台風が来ても壊れなかったおね」
ζ(゚ー゚*ζ「私たちが半年かけて造った秘密基地だもんね」
このメンバーで
この基地で
昔に戻ったみたいだった
ただ1つ、足りないものがあることに気づいてはいたんだけど
ζ(゚ー゚*ζ「もうそろそろお昼かな?」
誰も時計を持っていないもんだから
太陽を見て彼女がつぶやく
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:21:58.77 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「ドクオ達もうちに来るお」
('A`)「じゃあお言葉に甘えて」
川 ゚ -゚)「ばあちゃんに言わなくてもいいのか?」
( ^ω^)「大丈夫だお。
うちのばあちゃんをなめちゃいかんお」
2人で上ってきた山道を
4人で笑いながら下っていく
木漏れ日の中を
あの頃みたいに
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:24:06.06 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「ただいまだおー」
ζ(゚ー゚*ζ川 ゚ -゚)('A`)「おじゃましまーす」
(*゚ー゚)「おかえりなさい」
( ^ω^)「ドクオ達連れてきたけどいいかお?」
(*゚ー゚)「そうなるだろうと思って昼ごはんも用意してあるよ」
( ^ω^)「流石だお」
おにぎりとたくあんと魚と野菜炒め
ζ(゚ー゚*ζ「おいしい」
本当に嬉しそうに彼女は笑っていた
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:28:29.18 ID:qndw9BIi0
(*゚ー゚)「ご飯終わったらもうお墓参りに行くのかい?」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん。命日は明日だから…」
(*゚ー゚)「そうかい。まあゆっくりしていきな」
( ^ω^)「この後、岩のところにでも行くかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいね。行きたい」
川 ゚ -゚)「網も持ってくか」
( ^ω^)「それじゃばあちゃん、夜の分の魚はとってくるお」
(*゚ー゚)「はいはい」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:32:11.57 ID:qndw9BIi0
('A`)「おーい、いるぞー」
浜辺から少し離れた場所にある大きな岩
そこに行くために造られた連絡橋を渡っていく
魚の群れを見つけたドクオが呼んでいる
ζ(゚ー゚*ζ
彼女は潮風に髪を揺らしながら
海を見ている
思い出してるのかな
あの子の事を
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:35:08.00 ID:qndw9BIi0
小さい
小さい
岩の島
変わらずにここにある僕らの遊び場
ζ(゚ー゚*ζ「懐かしいね」
( ^ω^)「そうだおね」
彼女は僕の視線に気づいて
僕の横に腰を下ろして
またゆっくりと海を見る
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:38:08.86 ID:qndw9BIi0
ζ(゚ー゚*ζ「こうしてると、今でもあの子がひょっこり出てきそうだね」
僕とデレが座っていると
ちょっと怒った顔で二人の間に座ってきた
彼女の妹
( ^ω^)「お…」
ζ(゚ー゚*ζ「さ、私たちも魚を取りにいこう」
そういって彼女は立ち上がり
クー達のところへ少し駆け足で
岩場を器用にかけていく
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:40:28.54 ID:qndw9BIi0
日はゆっくりと傾いて
魚で一杯になったバケツを持って
歩いていく
クーと別れ
ドクオと別れて
家へと向かう
ζ(゚ー゚*ζ「あー疲れた」
( ^ω^)「おー」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:42:48.53 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「ただいまだおー」
ζ(゚ー゚*ζ「おじゃましまーす」
(*゚ー゚)「おかえりなさい」
(*゚ー゚)「デレが寝るのは客間でいいかい?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。ありがとうございます」
ご飯を食べて
一緒にしゃべって
おやすみなんて言って自分たちの部屋に入っていく
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:46:29.07 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「寝れないお」
海と月の見える縁側に出て腰を下ろす
しばらくすると木造の縁側がぎしぎし言って
ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君も寝れないの?」
( ^ω^)「デレもかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん…」
もう少しだけこうしていたい
だから僕たちはそれ以上しゃべらないで
二人で月を見てた
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:48:07.12 ID:qndw9BIi0
ζ( ー *ζ「ツ…ン…」
( ^ω^)「………」
そう呟いて
しゃくりあげるように泣き出した彼女に
僕はかける言葉を知らなくて
縁側においてある彼女の手に
そっと自分の手を重ねた
ζ( ー *ζ「ツン…?」
それから彼女はゆっくりこっちを向いて
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
しわくちゃの顔のままにっこり笑った
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:51:29.47 ID:qndw9BIi0
―――
ζ( ー *ζ「ツ…ン…」
あの年の今日
もう泣かないって約束したのにな
約束した次の日に居なくなっちゃうんだもん
怒ってるかな
ねえ
怒っててもいいよ
ここに来て
あの日みたいに
私の手を握ってよ
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:54:04.41 ID:qndw9BIi0
ξ゚听)ξ 「泣いてたって何も変わらないよ。お姉ちゃん。」
ξ゚ー゚)ξ 「ブーンだって本気で言った訳じゃないよ。
だから明日、二人であやまりあいっこすればいいじゃない」
そう言って私の手をそっと握ってくれた
次の日、あなたはいなくなっちゃったけど
今でも覚えてる
あの小さくて温かい手を
ζ( ー *ζ「ツン…?」
私の手にそっと乗せられた温かい手
あの子のより硬くて
あの子のより大きい手
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:57:47.06 ID:qndw9BIi0
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
涙もそのままに
私はその手の持ち主に微笑んだ
( ^ω^)
彼もこっちを見て微笑む
あの子が最後の日望んだのは
一体なんだったんだろう
それはもう分からない
だけど
明日もう一度約束しよう
私はもう泣かないって
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 21:59:27.00 ID:qndw9BIi0
―――
蝉が鳴く
明るい太陽の下を
僕らはゆっくり歩いていく
( ^ω^)「ここだお…」
無事渡れたら、願いが叶うという
崖と崖の間にかけられた丸太
そこに買ってきた花をおいて
静かに昔を思い出す
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:02:02.86 ID:qndw9BIi0
ξ゚听)ξ 「ばかじゃないの?」
そう言ってあの子は僕に叱りつけた
あの年の今日、僕達が今ここにいる場所で
( ^ω^)「あれはデレが悪いんだお」
ξ゚听)ξ 「まだ言う気?」
ξ゚听)ξ 「じゃあ良いわよ。
もし私がここを渡り切れたら
なんでも一つ言う事を聞いてもらうからね。」
気の強いあの子はそう言って
僕も意地になって止められなくって
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:08:04.15 ID:qndw9BIi0
ζ(゚ー゚*ζ「行こう」
麦わら帽子をかぶった
優しい彼女はそう言って
僕達はまた歩いていく
あの子の眠るお墓へと
( ^ω^)「きっとドクオとクーはもう来てるお」
僕もそう返して
少し早足で歩いていく
あの日の事を謝るために
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:10:57.97 ID:qndw9BIi0
川 ゚ -゚)「ツン…」
お墓に水をかけながらクーがそう言う
('A`)
無言のままドクオが
そっと手を合わせる
その後
2人は僕達を気遣って
少し離れた場所へ行ってくれる
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:13:11.97 ID:qndw9BIi0
狭い墓地
僕達はあの子の前に座って
ゆっくり目を閉じる
あの子が最後に望んだ事
それが何かを僕は多分知っている
だからじゃないけど
僕はデレを守っていきたい
君が最後に望んだ事
きっと僕が叶えてみせる
だから
( ^ω^)「安心して眠ってくれお」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:15:54.80 ID:qndw9BIi0
「ありがとう」
どこからか聞こえた気がして
僕は後ろを振り向く
ζ(゚ー゚*ζ
空が青くて
太陽がまぶしくて
麦わら帽子を片手に持った彼女が立っていた
( ^ω^)「どういたましてだお」
ζ(゚ー゚*ζ「何が?」
不思議そうな顔をしている彼女の手をとる
( ^ω^)「何でもないお」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:18:54.85 ID:qndw9BIi0
川 ゚ -゚)「デレはいつまで島にいるんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「今日の夕方には出ないといけないんだ」
('A`)「そっか、忙しいんだな」
川 ゚ -゚)「私たちはこれから用事があるからここでお別れだな」
川 ゚ -゚)「な、ドクオ」
('A`)「え?ああそうだっけ」
ちょっと驚いてからドクオが答える
ありがとう、2人とも
ζ(゚ー゚*ζ「久しぶりに会えて嬉しかったよ」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:20:44.82 ID:qndw9BIi0
「また来年」と言いながら大きく手を振る2人の影
段々小さくなっていって
しばらくして曲がり角を曲がっていった
ζ(゚ー゚*ζ「行っちゃった」
少し寂しそう言って
少し照れくさそうにくすりと笑った
行く場所も無いまま僕らは海沿いの道路を歩いていく
4時間もあれば一周できる小さい島を
ゆっくりゆっくり
歩いてく
色んな事を思い出しながら
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:24:03.89 ID:qndw9BIi0
ζ(゚ー゚*ζ「あ…」
ヒグラシが鳴く
いつの間にか太陽の光は赤みを帯びて
別れが近いことを教えてくれる
いつも見ている夕暮れに
ゆっくり目を向ける
( ^ω^)「港まで送っていくお」
僕は急いで自分の家から自転車を持ってきて
彼女を見つけてその前に止まる
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:27:27.92 ID:qndw9BIi0
ヒグラシが鳴いている夕暮れ
僕たちは海沿いの緩いカーブの下り坂を
潮風を顔に感じながら下っていく
ζ(゚ー゚*ζ♪〜
僕の後ろにいる彼女はどこかで聞いたような歌を歌って
( ^ω^)♪〜
僕は口笛でそれに伴奏をつける
そんなやわらかい時間を
全身で感じながら
僕は昨日彼女を乗せて上った
この下り坂を下っていく
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:30:12.77 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「おっと」
ブレーキを握り
錆びた車輪は2人分の体重のために
少し前のめりになってから止まる
ζ(゚ー゚*ζ「おいしょっと」
昨日彼女を連れてきた水上バスは
まだ小さい点だから
僕らは桟橋の先っぽに並んで座って待つ
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:31:39.34 ID:qndw9BIi0
夕暮れの海に
ほほそめた彼女が
何よりも愛しく感じられる
ζ(゚ー゚*ζ「また、夏が終わっていくね」
( ^ω^)「また来年も夏は来るお」
ζ(゚ー゚*ζ「そっか…。そうだよね」
ぼんやりとしたように言う彼女は
自分の肩をゆっくりと僕の肩にもたれかける
僕もより近くに彼女を感じていたいから
お互いの肩にもたれながら
赤く染まっていく海を見る
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:33:25.57 ID:qndw9BIi0
彼女を連れてきた水上バスは
ゆっくりと近づいてきて
僕らもゆっくり立ち上がる
彼女は来る時に買った往復分の切符をポケットから出して
桟橋の横に止まった水上バスの前に立つ
ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。楽しかった」
そう笑顔で言ってくれる彼女を
抱きしめたかったけど
そんな勇気はなかったから
( ^ω^)「僕もだお」
僕らは最後に握手をする
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:34:34.50 ID:qndw9BIi0
やがて
その手は離れて
水上バスは港から出発する
彼女は水上バスの甲板から身をのりだして
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンくーん」
ζ(゚ー゚*ζ「また来年会おうねー」
( ^ω^)「絶対だおー」
ζ(゚ー゚*ζノシ
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:35:51.43 ID:qndw9BIi0
ζ(゚ー゚*ζ「…きだよー」
彼女は何か叫んだけど
その時強い風が吹いて
聞こえなかった
その代わり彼女の麦藁帽子が僕の元に飛んでくる
ζ(゚ー゚*ζ「あ!」
彼女は少し困ったような顔をしてから
ζ(゚ー゚*ζ「らいねんー、また会いにくるからー」
ζ(゚ー゚*ζ「そのときかえしてねー」
精一杯の大声で叫んだ
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:36:58.39 ID:qndw9BIi0
もう聞こえないと思ったから
( ^ω^)「大好きだおー」
そう叫んだら
もうすっかり小さくなった
甲板の上の彼女は
ζ(゚ー゚*ζノシ「」
何かを叫びながら手を振った
( ^ω^)ノシ
僕も目一杯手をのばして振っていたけれど
やがて彼女は見えなくなって
日はいつの間にか沈んでいた
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/21(月) 22:37:47.91 ID:qndw9BIi0
( ^ω^)「よいしょっと」
駐輪場にとめた自転車をだして
麦藁帽子を自転車の荷台にくくりつけて
僕は昨日彼女と上った上り坂を
ゆっくり上っていく
あの手の温もりを思い出しながら
( ^ω^)♪〜
どこかで聞いたようなメロディーを鼻歌で歌いながら
そっと想いながら
終わり
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