- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:27:57.35 ID:DNFSOIvK0
──────Side 川 ゚ -゚) ──────
暑い。
目が覚めたら、扇風機は止まっていた。
時計の針は目覚ましを設定した時間より大分前を指している。
川 ゚ -゚)「それにしても暑い・・・」
嫌になるほどの熱気が部屋にこもっている。
たまらず窓を開けた。
川 ゚ -゚)「いい風だ・・・」
風が心地よい。
これは田舎の特権だろう。
顔を洗い、買ったばかりの新しい服を着る。
膝上まですっぽりと覆った薄いマリンカラーのワンピース。
胸元と裾に質素なフリルがついている。
買ったばかりの新品。
今日という日のためのもの。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:30:15.20 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「そうだ、せっかく早く目が覚めたんだから、お弁当でも作ろう」
卵を割り、出し巻き玉子を作り
ウィンナーをタコにして焼き
おにぎりを握って詰めた
2人分のお弁当はすぐに完成した。
それを鞄に入れ、飲み物の入った水筒を準備する。
時計を見るとちょうどいいころを指していた。
川 ゚ -゚)「さて、出かけるか」
あいつとの約束の時間だ。
いつもと同じ場所で待つ。
小さな公園の、時計の下。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:32:52.37 ID:DNFSOIvK0
あいつは、少し遅れてきた。
('A`)「あの・・・その・・・ごめん」
川 ゚ -゚)「何、気にするな」
申し訳なさそうに謝ってくる。
気が弱すぎるのが欠点だけど、大切な私の彼氏だ。
('A`)「今日、どこに行く?」
川 ゚ -゚)「うん、見に行きたい映画があるんだ」
('A`)「じゃあ行こうか」
私の提案で映画館に向かう。
こんな田舎にも映画館は一館だけあった。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:36:58.92 ID:DNFSOIvK0
席数も少なく、スクリーンもたいして大きくない。
映画だって、一番新しいのを数本しか上映していない。
だけど私はそこが気に入っていた。
川 ゚ -゚)「暑いな・・・」
('A`)
川 ゚ -゚)「ドクオ?」
('A`)「あ、ごめん」
川 ゚ -゚)「着いたぞ」
汗をぬぐい、映画館の中に入る。
('A`)「大丈夫?」
心配そうに彼が見てくる。
川 ゚ー゚)「年寄りじゃないんだから」
笑って返すと、彼は顔を真っ赤に染める。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:38:32.18 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ー゚)「照れるなよ。こっちも恥ずかしいだろ」
('A`)「ごめん・・・」
川 ゚ -゚)「謝らなくてもいいのに」
チケットを2人分買って中に入る。
映画の開始時間を時計で確認する。
川 ゚ -゚)「もう少し時間があるけど・・・」
('A`)「話してたら、すぐだと思うよ」
川 ゚ -゚)「なら、何を話そうか?」
('A`)「今日のはどんな映画なの?」
川 ゚ -゚)「えっと・・・」
私はテレビで見た内容を必死で思い出す。
主演女優は今有名なツン・デレで、じゃなくて
川 ゚ -゚)「こころの中に迷子になってしまった女の人がいたんだ」
川 ゚ -゚)「その人は、心の中に意識を囚われて、眠り込んでしまった」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:41:34.81 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「男の人が、心の中に入って、女の人を助けようとする映画だった」
('A`)「それで、どうなるの?」
川 ゚ー゚)「それを今から見るんじゃないか」
('A`)「お、始まるんじゃない?」
照明が落ち、スクリーンに映像が映しだされる
他にもテレビでやっていた映画の宣伝の後に、本編が始まった。
女性を救うために男性が夢の世界に向かう。
苦難を乗り越え、ついに男性は女性を助け出した。
歌とともにエンドロールが流れ出す。
私たち以外にいた客はみんな出て行った。
('A`)「出る?」
川 ゚ -゚)「いや、待ってくれ。エンドロールまで全部見たいんだ」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:45:42.62 ID:DNFSOIvK0
なぜだろう、たまたまそんな気分になった。
彼は、わかった。と言ってエンドロールが終わるまで待ってくれた。
川 ゚ -゚)「よし、出るか」
私が声をかけると、彼は袖で涙をぬぐった。
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「泣いてたのか?」
('A`)「ち、ちがう」
川 ゚ -゚)「別に泣いてても何も言わないさ」
('A`)「・・・・・・うん」
川 ゚ -゚)「いい話だったなぁ」
('A`)「・・・・・・うん」
私たちはしばらく言葉を交わさなかった。
映画を観終わった余韻に浸りながら、映画館を後にした。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:47:38.13 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「ところで、お昼御飯はどうする?」
('A`)「どうしようか?」
彼に聞き返され、私は苦笑する。
そういうのは男の人が決めるもんだっていうと、彼は慌てだした。
そんな彼が愛おしくて、しばらく助け船を出さずに見ていた。
川 ゚ -゚)「実はな、お弁当を持ってきたんだ」
('A`)「え?」
驚く彼。そんな彼を見るのも楽しかった。
わざわざお弁当を作ってきたかいがあったな。
たまたま、朝早く目が覚めただけなんだけど。
川 ゚ -゚)「公園の日陰で食べないか?」
('A`)「あ、うん」
おしゃべりをしながら歩いて公園に向かう。
話題はもっぱらさっきの映画だった。
あそこで男性はよく決断した、とか
女性はもうちょっと強くいなきゃ、とか
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:50:11.35 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「あそこにしよう」
木陰にベンチを指さす。
私のお気に入りの場所の一つだ。
('A`)「おいしそうだね」
川*゚ -゚)「・・・ありがとう」
川 ゚ -゚)「・・・あれ? ない・・・」
('A`)「どうしたの?」
川;゚ -゚)「箸を・・・持ってくるのを忘れてしまったようだ・・・」
('A`)「ドジだなぁ」
川;゚ -゚)「どうしよう・・・」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:55:30.03 ID:DNFSOIvK0
('A`)「そうだなぁ・・・」
川;゚ -゚)「取りに帰ってくる」
どうしよう。せっかく作ってきたのに、食べれないなんて・・・。
('A`)「手で食べれば・・・」
川;゚ -゚)「だめ!」
こんな田舎で2人で歩いてるだけで目立つのに、
手でお弁当食べるなんて、それこそ笑いものだ。
川;゚ -゚)「ファーストフードの店に行こう。うんそうしよう」
('A`)「でも、せっかく作ったのに」
川;゚ -゚)「い、いいんだ。いつでも作れるしな」
食べてもらえないのは残念だったけど、
変な二人組として噂になるのもいやだったから、仕方ない。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 21:58:25.57 ID:DNFSOIvK0
('A`)「クーがいいなら・・・」
川;゚ -゚)「決まり! さっ、行こうか!」
ファーストフードの店っていうのはホントに便利なものだ。
安いし、早いし、美味しい。
私は彼に席を取りに行ってもらって、注文した。
ものの数分で頼んだもの全部が出てくる。
それをもって、彼のもとに向かった。
夏休みのお昼時でも満員にならないこの店は大丈夫なのだろうか。
そんなことを考えながら、彼の向かいに座る。
川 ゚ -゚)「午後からはどうする?」
('A`)「特に・・・ないかな」
川 ゚ー゚)「頼りないなぁ」
(;'A`)「ご、ごめん」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:01:22.54 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ー゚)「冗談だって。行きたいところがあるんだけど、いいかな?」
('A`)「うん」
彼は私の後ろを一歩遅れてついてくる。
どこに向かうか見当もついてないだろうな。
('A`)「どこに行くの?」
十分ほど歩いて、彼は聞いてきた。
川 ゚ -゚)「内緒だよ」
('A`)「そういわずに・・・」
川 ゚ -゚)「もうちょっと歩くけど、大丈夫?」
('A`)「クーが大丈夫なら」
川 ゚ -゚)「私は大丈夫だよ」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:08:17.69 ID:DNFSOIvK0
少し歩いて、山道に入る。
木々が太陽光を和らげてくれるから、歩きやすい。
川 ゚ -゚)「こっちこっち」
('A`)「あんまり、はしゃぐとこけるよ?」
川 ゚ -゚)「慣れてるから大丈夫だよ」
歩きなれた山道を駆け上がる。
彼はやっぱり男の子だった。
全然平気でついてくる。
それが悔しくて、ペースを上げた。
川 ゚ -゚)「ついた!」
目の前に広がるのはきれいな川。
下流は生活排水のせいでかなり汚れているけど、
この辺はアユも泳いでるくらい綺麗だ。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:11:49.10 ID:DNFSOIvK0
太陽の光が水面を輝かせている。
('A`)「綺麗なところだなぁ・・・」
川 ゚ -゚)「そう思うだろ?」
('A`)「うん」
川 ゚ー゚)「好きだ・・・ドクオ!」
('A`)「僕もだよ、クー」
川 ゚ー゚)「ここは夜もすごいんだ」
('A`)「日暮れまで結構あるよ?」
川 ゚ー゚)「遊んでいればすぐさ」
私は靴と靴下を脱いで、川に入った。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:15:35.36 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ー゚)「冷たくて、気持ちいい・・・」
川 ゚ー゚)「ドクオも!」
('A`)「うん」
彼も裸足になり、水の中に入ってきた。
川 ゚ー゚)「うわっ!」
流れに足を取られて、転んでしまった。
彼が心配そうに駆けよってくるが、すぐ近くまで来て、
真っ赤になって顔をそらした。
川 ゚ー゚)「?」
彼が何も言わず、私の胸元を指さしてきた。
水にぬれて、下着が透けていた・・・。
川 ゚ー゚)「あわ・・・わ・・・」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:30:12.79 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ー゚)「どうしよ・・・」
幸いあたりに人はいなかったけど、このままじゃあ山を降りられない。
('A`)「日なたにいたらすぐに乾くよ」
川 ゚ー゚)「そ、そうだな・・・」
とりあえず、手近なところに座った。
彼は私に気遣ってか、背中あわせになるように座ってくれた
川 ゚ー゚)「すまん・・・はしゃぎすぎた」
('A`)「いいよ、別に。ゆっくり話すのもいいじゃないか」
川 ゚ー゚)「私は、ドクオの話が聞きたいな」
('A`)「僕の話? つまらないよ?」
川 ゚ー゚)「ドクオのことを知りたいだけさ」
私、今きっと顔が真っ赤だな。
ゴホン、と咳ばらいが聞こえて、彼が話し始めた。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:33:49.76 ID:DNFSOIvK0
('A`)「僕の家は、いわゆる名家って奴で、かなり厳しくしつけられてきた」
('A`)「それが嫌になって、ここに逃げ出してきたんだ。ここに来た理由は特にない。
持っていたお金でできるだけ遠くに来ようと思ったから」
川 ゚ー゚)「それが・・・あのときのドクオか」
私と彼が初めて会ったのは、この町の駅。
学校帰りに彼に出会った。
疲れた顔をしていて、どこか寂しそうだった。
('A`)「あれから、畑仕事をしている年寄りの人に、お手伝いをするので、と泊めてもらえるように頼んだ」
川 ゚ー゚)「次に会ったとき、ドクオは畑仕事をしてたなぁ」
('A`)「僕がクーを見たのはその時が最初ですよ」
('A`)「・・・・・・一目惚れでしたよ?」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:38:20.10 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ー゚)「・・・ワタシモ・・・」
わざと聞こえにくいように言った。
予想通り、彼は聞き返してきた。
('A`)「え? 何?」
川 ゚ー゚)「何でもないよ」
('A`)「それで、話しかけた、ということ」
ドクオの話はそれで終わりだった。
その後はクが話をする。
お互いのエピソードを語りあっているうちに、時間は経過していく。
川 ゚ー゚)「だいぶ日が傾いてきたな・・・」
森の影がゆっくりと伸びてくる。
夕焼けもきれいだな。
明日はきっと晴れだ。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:43:06.11 ID:DNFSOIvK0
そんなことを考えていると、一瞬頭痛がした。
思わず、頭を押さえてしまう。
川 ゚ー゚)「っ!」
('A`)「どうかした?」
川 ゚ー゚)「いや、大丈夫だ」
私はめっぽう健康体だったし、彼に心配をかけたくなかった。
それからも、二人で身の上話を続けた。
時折頭痛がしたが、そのことは黙っていた。
ドクオの話は面白い。なかなか聞ける話じゃないし。
・・・・・・頭痛の感覚がだんだん短くなってくる。
痛い・・・。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:48:45.37 ID:DNFSOIvK0
意識が薄れていく。
世界が滲んでいく。
声が聞こえ・・・・・・。
「おい! どうした!」
「クー!?」
「クーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
騒ぐ・・・こと・・・な・・・
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 22:52:02.72 ID:DNFSOIvK0
目を開けると、星空だった。
空いっぱいに光る星。
川 ゚ -゚)「ドクオ・・・」
思い出した。全て。
忘れていたこと。
私は彼に手を伸ばした・・・。
しかし、その手は彼をすり抜けてしまう。
その温もりを感じることはできない。
川 ゚ -゚)「ドクオは・・・死んでしまったんだな」
('A`)「クー」
川 ゚ -゚)「あの時・・・車に轢かれて・・・ドクオは・・・」
川 ゚ -゚)「死んで・・・」
川 ; -;)「っぐす・・・ひっぐ・・・ドクオぉ・・・」
川 ; -;)「もっと話したかった! もっと遊びたかった!」
川 ; -;)「もっと・・・もっと・・・いっしょにぃ゙だがった!!!」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:00:01.41 ID:DNFSOIvK0
川 ; -;)「どうして、しんじゃったんだよぉ・・・」
('A`)「クー・・・・・・」
ドクオの掌が私の頬をなぞるように動く。
でも、私たちのぬくもりは交わらない。
川 ; -;)「幽霊でも、また会いに来てくれるよな?」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:01:49.55 ID:DNFSOIvK0
──────Side ('A`) ──────
('A`)「ここは? なんでこんなところにいるんだ?」
今までなぜ目を閉じていたのか。こんな場所で。
('A`)「・・・・・・約束が!」
思い出した。約束の場所に行かなきゃ。
向かう場所はわかってる。
('A`)「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
全力で走る。信号なんか関係ない。
彼女はそこで待っていた。
('A`)「あの・・・その・・・ごめん」
俺は謝る。
初デートの待ち合わせで遅刻するなんて・・・最低だ。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:04:41.23 ID:DNFSOIvK0
映画館に行こうと、誘われる。
前も・・・行った? いや、気のせいだろう。
これが俺にとっての初デートなのだから。
クーが2人分のチケットを買ってきた。
申し訳ない・・・。ある限りのお金でここにたどり着いたせいで、俺は文なしだった。
映画にも違和感を感じた。
見たことのあるストーリーだったから。
('A`)「出る?」
俺は映画のエンドロールは好きじゃなかった。
川 ゚ -゚)「いや、待ってくれ。エンドロールまで全部見たいんだ」
彼女がそういうのなら。
そう思いエンドロールを見てると、涙が流れてきた。
おかしいな・・・。
映画にはそんなに感動しなかったのに。
袖で拭っているのをクーに見られた・・・。
恥ずかしいな・・・。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:05:45.06 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「ところで、お昼御飯はどうする?」
クーにそう聞かれて考える。
('A`)「どうしようか?」
思ったことをそのまま口に出したら、笑われた。
こういうことは男が決めるものなんだな。
デートは初めてだったから。
クーがお弁当を持ってきているらしく、それを公園で食べよう
ということになった。
でも、そのお弁当食べられないんだろうなぁ・・・。
あれ。何でこんなこと考えたんだろう。
綺麗に並べてあるおにぎりや卵焼き。
たこの形になっているウィンナー。
クーが作ってきたという弁当はとても美味しそうであった。
川;゚ -゚)「箸を・・・持ってくるのを忘れてしまったようだ・・・」
('A`)「ドジだなぁ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:07:53.97 ID:DNFSOIvK0
川;゚ -゚)「どうしよう・・・」
焦っているクーは珍しいから、悩んでるふりをして堪能させてもらおう。
('A`)「そうだなぁ・・・」
川;゚ -゚)「取りに帰ってくる」
さすがに、家にまで取りに帰らすわけにはいかないので、
思いついたことを提案してみた。
('A`)「手で食べれば・・・」
クーにノータイムで否定された。
やっぱり、女の子は手で食べるのは嫌なのかなぁ、とか思った。
ファーストフードの店に行こうって言われたから、
そうすることにした。
席をとっておくように頼まれ、二人掛けの席に座って待つ。
クーが食事を持ってきて、対面に座った。
('A`)(・・・あれ?)
・・・おかしい?
・・・何がだ?
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:10:44.61 ID:DNFSOIvK0
おかしい筈なのに、それをそこまで不思議に思ってない自分がいた。
それが当たり前であるかのように。
川 ゚ー゚)「大丈夫?」
('A`)「あ・・・え・・・うん。ごめん、ちょっと」
クーが食べ終わると、とりあえずついてくるように、と言われた。
どこに行くのだろう・・・。
いや、知っている。きっと山間の清流が流れているところにいくはずだ。
軽快に進むクーの後についていく。
水の流れる音が聞こえてくる・・・。
目の前で森が開けた。
そこには綺麗な川が流れていた。
('A`)「綺麗なところだなぁ・・・」
クーが水の中に入ってはしゃいでいる。
そんなにはしゃいでると、こけますよ・・・。
やっぱり。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:11:54.89 ID:DNFSOIvK0
なんだろう・・・なんなんだ、このデジャヴは・・・。
クーと背中合わせで話をする。
クーが突然頭を押さえて・・・倒れた。
どうすればいい。
俺はクーに触れない。
そうだ・・・。俺はクーに触れることができない。
感じていた違和感の正体はこれか。
届かない。
俺の声は届かない。
クー。
クー。クー。クー。クー。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:16:14.25 ID:DNFSOIvK0
伸ばした手は空を切る。
クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。
クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。
クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。
クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。
クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。
クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。クー。
そばにいることしかできなかった。
名前を呼ぶことしかできなかった。
俺はもう死んだ存在なのだと。
そう、理解してしまった。
違和感の正体は、それだった。
クー以外の人間は、俺のことを見ていなかった・・・。
クーが目を覚ましたのは、すっかり夜になり、星が輝き始めたころだった。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:19:41.71 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「ドクオは・・・死んでしまったんだな」
そうか、俺はやっぱり死んでいたのか。
川 ゚ -゚)「あの時・・・車に轢かれて・・・ドクオは・・・」
川 ゚ -゚)「死んで・・・」
車・・・轢かれて・・・。
ああ、思い出した。
クーと別れてから、横断歩道を渡ろうと思って・・・。
川 ; -;)「っぐす・・・ひっぐ・・・ドクオぉ・・・」
川 ; -;)「もっと話したかった! もっと遊びたかった!」
川 ; -;)「もっと・・・もっと・・・いっしょにぃ゙だがった!!!」
川 ; -;)「どうして、しんじゃったんだよぉ・・・」
('A`)「クー・・・・・・」
俺は何も言えなかった。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:21:38.97 ID:DNFSOIvK0
────── ('A`) And 川 ゚ -゚) ──────
('A`)「クー僕は・・・」
('A`)(・・・僕は?)
川 ゚ー゚)「・・・すまなかった。泣いたりなんかして」
('A`)「僕は・・・ほんとに死んでしまったのか?」
川 ゚ -゚)「・・・・・・はは。何を言ってるんだ」
クーが手を伸ばす。
その手は、ドクオまでたどり着き・・・そしてすり抜けた。
川 ゚ -゚)「触れないじゃないか・・・」
('A`)「そう・・・か」
胸元を突き抜けた腕を見るドクオ。
('A`)(俺の・・・思い違いか・・・。死んでるから、記憶が混乱しているのかもな)
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:23:47.53 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「でも・・・こうやって、声が聞けて、姿が見えるだけで・・・十分幸せだ」
('A`)「クー・・・」
川の流れる音。
たまに魚の跳ねる音。
風が吹く音。
木々がこすれて出る音。
ここは自然の音が満ちている。
川 ゚ -゚)「このまま・・・二人で・・・」
マイ
────── ('A`) best ──────
ユア
────── 川 ゚ -゚) best ──────
('A`)(このままクーと・・・)
「・・・お・・・・い・・・・せ」
頭痛とともに、目の前をよぎっていく光景。
泣いている自分・・・。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:24:54.64 ID:DNFSOIvK0
('A`)(っつ・・・。何だ・・・なんなんだ、この光景は)
川 ゚ -゚)「ドクオ・・・?」
クーが心配してるじゃねぇか。
おい、やめろ。やめてくれ。
「お・・・い・・・・だせ」
('A`)(やめろ! 俺は幽霊でもクーと一緒に過ごすんだ!)
脳を叩くような声は止まらない。
何かを忘れているのはわかっていた。
でも、クーといれればそんなことはどうでもよかった。
「おも・・・・だ・・・せ」
頭の中の声は、俺に何を求めているんだ。
ここにはクーが俺と一緒にいる、それでいいじゃないか。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:26:16.09 ID:DNFSOIvK0
「思い出せ!」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:28:09.80 ID:DNFSOIvK0
- ('A`)「・・・・・・」
頭を中から殴られたらこんな感じなんだろうか。
一瞬で脳内に映像がフラッシュバックした。
目を覚ましたら、病院にいたこと。
親父が無理やり俺を連れ戻したこと。
しばらく監禁されていたこと。
また逃げ出して、クーのもとに向かったこと。
クーが入院していたこと。
('A`)(そうだ・・・クーを覚めない夢から助け出すために来たんだった・・・)
川 ゚ -゚)「ドクオ! どうしたんだ?」
('A`)「クー・・・ここから出よう」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:30:46.19 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ー゚)「何いってるんだ、ドクオ。死んでおかしくなったのか?」
('A`)「全部思い出したんだ。僕は死んでない。死にそうなのは、クーだ」
川 ゚ -゚)「ドクオは・・・車に轢かれて・・・血がたくさん出てて・・・」
('A`)「僕が死んだのを確認したのかい?」
川 ゚ -゚)「いや・・・ドクオの親だと思われる人から、連絡が来ただけで・・・」
('A`)「あの糞親父・・・」
川 ゚ -゚)「じゃ、じゃあ、ドクオは生きているのか?」
('A`)「ああ」
川 ゚ -゚)「それじゃあ、ここは・・・?」
('A`)「クーの夢の世界だと思う」
俺は無理やりここに入ってきたせいで、記憶の一部が欠損してたんだろう。
もしくは、この世界に適応させるため、記憶を書き換えられたか。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:32:17.00 ID:DNFSOIvK0
川 ゚ -゚)「どうやったら起きれるんだ!?」
('A`)「わからない・・・」
問題は、この世界の出口はどこにあるかわからないことだ。
川 ゚ -゚)「早く・・・生きてるドクオに会いたいッ!」
('A`)「たぶん、クーが願えば、それでいいはず」
川 ゚ -゚)「さっきから考えてるぞ?」
('A`)「・・・俺が、戻るにはこの薬を飲めばいい筈」
ポケットから取り出したのは、万が一クーの目を覚ませられなかった時、
飲めばここから脱出できるような薬。
川 ゚ -゚)「1つか・・・」
('A`)「クーには効かないんだ・・・」
川 ゚ -゚)「そうか・・・。なら、それを飲んで先に帰ってくれ。
私は必ず後で目を覚ますから」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:33:27.11 ID:DNFSOIvK0
('A`)「信じられるわけないだろ!」
川 ゚ー゚)「彼女のことが信じられないのか?」
('A`)「心配なんだよ。俺の親に易々とだまされて、それで眠ったまま起きてこないなんて・・・」
川 ゚ -゚)「むー、なら、どうすればいいんだ?」
('A`)「クーが何とかするしかないだろ? クーの夢なんだから」
川 ゚ -゚)「こんな感じか?」
目を閉じ、黙り込むクー。
世界が崩落していく。
彼女の望んだ世界は、彼女が望むことによってのみ、その存在を維持できる。
心からのクーの願い、それは・・・きっと・・・元の世界に。
真っ黒な穴が空く。
それは少しづつ、大きくなっていく。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/27(日) 23:34:29.10 ID:DNFSOIvK0
('A`)「こんなので大丈夫かよ?」
川 ゚ -゚)「大丈夫だと思うぞ。そら、飛びこもうか」
足元に亀裂が走る。
('A`) 「せーの!」
川 ゚ -゚) 「せーの!」
同時に飛び込んだ。
最後に見えたのは、真っ暗闇の世界の満天の星空だった。
- 57 名前: ◆gMIGdyOjeA 投稿日:2009/09/27(日) 23:36:34.95 ID:DNFSOIvK0
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────── ('A`) stAnd beSide 川 ゚ -゚) ──────
────── 川 ゚ -゚) stAnd beSide ('A`) ──────
病院の一室。
清潔感漂う真っ白な部屋には、二人の男女が眠っていた。
その手はお互いのぬくもりを確認するようにしっかりと繋がれていた。
end
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