- 6 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 21:49:30.04 ID:duDza4WT0
その町にドクオがやってきたのは、かれこれ十年程前のことになる。
やや首都圏から離れた閑静な町並み。
田舎にしては人が多く、都会にしては自然が多い、どこにでもあるありふれた町だった。
ただ、その町には風車があった。
その風車は町を一望できる小高い里山のてっぺんにひっそりと立っていた。
ぎい、ぎい、と老人のような軋み声を上げながらゆっくりと羽を回し続けるそれは町のシンボルだった。
ドクオは初めてその風車を見た時思った。
('A`)「なんてファンシーで素敵な町なんだろう!」
('A`)「きっとここで素晴らしい未来が俺を待っているに違いない!」
しかしそれは彼の自己暗示に過ぎなかった。
必死に自分に言い聞かせても、絶望の影はいつも彼の心の隅で根を張っていた。
新しい仕事に新しい町。希望と不安が入り混じる新生活の中にドクオは乗り込んだ。
- 8 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 21:50:36.29 ID:duDza4WT0
- ミ,,#゚Д゚彡「ゴルァ新入り!!初日から遅刻たぁいい度胸だな!!」
('A`)「え・・・朝礼は8時だった筈じゃ」
ミ,,#゚Д゚彡「それより早く来て働くんだよ!ったりめえだろこのクズが!!」
('A`)「・・・でもそんな朝から飛び込み営業って」
ミ,,#゚Д゚彡「んなもん関係あるか!!ドア開けさせて物売るだけじゃねえか!文句言う暇あんなら働けやボケ!!」
('A`)「・・・」
彼がやっとの思いで見つけた新しい職場は『真っ黒』な会社だった。
上司から発せられる罵詈が飛び交い、それを浴びる社員は皆無気力な様子でパソコンを眺めている。
まるで、精神に害を及ぼす埃のようなものがここに充満しているようだとドクオは思った。
('A`)「思った以上にきつい所だな・・・」
('A`)「だけどもう、あとが無い。俺はここで頑張っていくしかないんだ。」
人であふれるハローワークで、不採用を繰り返しようやく見つけた仕事。
学生時代に全く実感を持てなかった不景気という言葉をドクオは今その全身で感じていた。
自分が友達と遊びまわっていた時も親は、いや、親だけではなく自分を取り巻いていた全ての大人が、
この社会に横たわる顔の見えない脅威と闘っていたのだ。
ドクオは、無知で馬鹿だった自分を嘆いた。
- 11 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 21:51:47.60 ID:duDza4WT0
- 毎日ドクオは住宅地へ出かけ、営業を続けた。
('A`)「・・・ですから、この『ついてくるボタン』を押すと・・・」
('、`*川「・・・すみません。もう結構です。」
('A`)「ホラ!よってくるんですよ〜かわいいでsy」
('、`#川「結構です!いりません!」
バタン!!
('A`)「・・・」
('A`)「なかなか売れないなぁ・・・」
午後4時の憂鬱な太陽を目にし、ドアの前に一人腰を下ろしたドクオは
夕陽を背にゆっくりと回る風車の影を眺めていた。
('A`)「すみません。うまくいかなくて」
/ ,' 3「まぁ、慣れない内は失敗は仕方ないよ。経験を積んでコツを掴んでいくしかないさ」
('A`)「すいません・・・」
ドクオの班の班長はドクオが知る中で唯一まともな社員だった。
このことはドクオの大きな支えだった。
- 12 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 21:54:02.49 ID:duDza4WT0
- ミ,,#゚Д゚彡「今月の営業成績発表!!ビリは6班!!」
('A`)「(一位を発表せずにビリだけ発表するのかよ・・・)」
ミ,,#゚Д゚彡「おい荒巻!!てめぇんとこは一体全体どうなってんだ!?」
/ ,' 3「申し訳ありません・・・」
ミ,,#゚Д゚彡「謝れば成績が伸びんのか!?お前らみたいなカス班が会社の足を引っ張ってんだ!!
数値だせねぇんだったらとっとと辞めろ糞ジジイ!!邪魔なんだよ!!」
/ ,' 3「・・・・・・申し訳ありません・・・」
('A`)「・・・」
ミ,,#゚Д゚彡「てめぇらカス班は隅で朝礼やってろ!!」
上司のこのような扱いにドクオはもう慣れつつあった。
これがここの日常なのだ。社員たちはホールの隅へ移動する彼らに決して目を向けず、
ただただ虚ろな目で前方の空間を見つめているだけだった。
- 14 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 21:56:15.92 ID:duDza4WT0
- / ,' 3「すまない、みんな・・・」
('A`)「そんな!班長は悪くありません。僕が班の足を引っ張っちゃって・・・」
/ ,' 3「いいんだ、・・・・・・すまない・・・」
その班長はその後まもなく会社を辞めていった。
ストレスが原因で何か病気を患ったらしい、との噂をドクオは耳にした。
('A`)「・・・頑張らないとな」
ドクオはそれから努力し営業を続けた。
雨の日も風の日も雪の日も、ノルマの為に成績の為に、住宅地を奔走した。
上司から褒められることは絶対に無かったが、罵倒を浴びせられることは少なくなった。
しかしドクオはいくら努力し働いても、会社内の排気ガスのような空気が肺に満たされ
自分を蝕んでいる感触から逃れられなかった。そしてその感触は彼を不安にさせた。
- 15 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 21:58:49.93 ID:duDza4WT0
- 三年経ったある日のこと。
ノルマを果たし会社へ向かっていたドクオは突然眩暈に襲われ昏倒した。
ストレスによる自律神経失調症と医者に診断された。
( ∵)「もうそのような会社は辞めるべきだと思います。貴方の体がもちません」
('A`)「でも・・・仕事を辞めるなんて」
( ∵)「健康無くして仕事はできませんよ」
('A`)「・・・」
( ∵)「今は体を休めることだけを考えて下さい」
塗り潰したような灰色の空の下、ドクオは遠くで回る風車を眺めながら会社へ向かった。
ドクオは仕事を辞めた。
それから二年間ドクオはただ生きるだけの生活を送った。
貯めていた金も少しずつ減っていった。生活費を手に入れるために借金は勿論のこと、
本を売り、使わない家具を質に出した。
- 17 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:00:33.74 ID:duDza4WT0
- そしてドクオがこの町にやって来たちょうど五年目、
家賃を溜めに溜めたドクオはアパートから追い出された。
('A`)「・・・」
('A`)「これからどうしよう・・・」
ドクオは木枯らしが吹き荒れる道路に一人ぽつねんと立ち、これからのことを考えた。
彼は過去数回の自殺未遂を起こしている。
全て本人が途中でやめたか、失敗に終わったか等何らかの理由で未遂となった。
この時ドクオは自殺する気にもなれなかった。
いや、自殺する気力もなくしていたと言った方が正しい。
彼はただ茫然と、誰もいない往来に一人立ち続けた。
('A`)「・・・」
('A`)「・・・?」
どれくらい経ったかわからなくなった頃、ドクオはふと自分の視界にあの風車があることに気がついた。
('A`)「人の気も知らないで、呑気にくるくる回りやがって・・・」
- 19 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:02:50.17 ID:duDza4WT0
- 刹那、ドクオの頭に一つの考えが浮かんだ。
('A`)「・・・」
('A`)「・・・そうだ。あそこに行ってみよう」
この町に来た時から風車を間近で見てみたいという願望がドクオにはあった。
だが行く機会もなく五年も経っていたのだ。
どうせやることも無いのだから、風車を見に行こう。
今まで自分を見下ろしてきた、あの風車を。
ドクオは山へと歩き出した。
歩いていくにつれ坂道が多くなり、数年ろくに活動していなかったドクオの脚はぱんぱんになった。
やがて舗装された道路は無くなって獣道となった。
藁のような背の高い茂みが風に揺れ、ドクオの鼓膜に寂寥たる音を突き刺した。
やがてそれは目の前に現れた。
('A`)「・・・すげえ・・・」
まるで大地に根を下ろした大樹のようにその風車はそびえていた。
カラカラに枯れ果てた蔦がまとわりつく、くすんだ赤茶色の煉瓦の壁。
その壁には白っぽく変色したガラスをはめ込んだカマボコ型の窓が均一的に並んでいる。
角ばった屋根の前部についている巨大な羽は地面をかする程長く、
風を受けるための網部分は亀裂が走っていた。
- 21 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:04:16.09 ID:duDza4WT0
- ドクオは、それがぎいぎいと音を立てて回るのをしばらくの間見つめ続けていた。
('A`)「少し寒くなってきたな・・・」
辺りは既に真っ暗で、山は風の音をごうごうと響かせていた。
寒さに堪えきれなくなったドクオは風車の中で寒さをしのごうと入り口を探した。
観音開きのドアが風車の横っ腹についていた。
ドアを開けると内側に張り付いていた蜘蛛の巣と埃が舞い、風に乗った。
ドクオはポッケにあった100円ライターの灯を頼りに中を見渡した。
ドクオは目を凝らすと、白いコンクリートが柔らかな灯火で黄色に輝いているのを見た。
内部は筒のようにくり抜かれ、中央には太い柱が天と地を繋いでいる。
タイルが剥がれた床にはこぶし位の大きさの綿ぼこりと木の葉が走り、
隅っこでは脚の折れた机や椅子が無造作に転がっていた。
ドクオは壊れていない椅子を立たせて座り、曇った窓から差す月の光を浴びながら考えた。
そして決心した。
('A`)「・・・俺ここに住もう」
山の上にあるという地理的条件を除けば、この風車はドクオにとってかなり良い物件だった。
ドクオはコンビニやスーパーの余りものを主食に、空き缶や雑誌を拾い集めて現金と交換し、
生活に必要な物資をゴミ捨て場から調達する生活を始めた。
- 22 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:05:46.93 ID:duDza4WT0
- ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドクオが風車に住みついてから三年の月日が流れた。
山の上の風車に男が住みついているという噂は町中に広まっていた。
('A`)「ういーっす」
(=゚ω゚)ノ「ぃょぅ!ドクオさん。空き缶かい?」
('A`)「うい。これ今日の分。」
(=゚ω゚)ノ「いつもお疲れ様だょぅ。」
('A`)「まあ、生きてく為の日課だからな。もうそんなに苦でもないよ」
(=゚ω゚)ノ「すごいょぅ。ホームレスが板に付いてきた証拠だょぅ。」
('∀`)「褒め言葉になってねーぞそれ!」
ドクオはホームレス生活を続けていくうちに今まで無くしていた人間的な感情・思考を少しずつ取り戻していった。
皮肉な話だが、社会の歯車の一つとして動いていた時より、社会的な全てを無くした今の方が
ドクオにとって文化的であり、人間的であり、そして幸福だった。
- 24 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:07:32.55 ID:duDza4WT0
- (=゚ω゚)ノ「そうそう、ドクオさんったら最近妙に有名になってるらしいんだょぅ。」
('A`)「有名?俺が?」
(=゚ω゚)ノ「そうだぃょぅ。小学生の甥っ子から聞いたんだけど、子供の間で流行ってる都市伝説のようなものだと思うょぅ。
『山の上の風車には風車男が住んでいて、声をかけられて返事をしてしまうと風車の中に一生閉じ込められる』って言ってたぃょぅ。」
('A`;)「なんちゅう噂だ・・・人をまるで化け物のように言いやがって」
(=゚ω゚)ノ「噂はいつも誇張されて伝わるものだょぅ。」
('A`)「誇張ってレベルじゃねーぞ・・・」
都市伝説としてもホームレスとしても、有名になることはドクオにとって不安の種だった。
いつか役所の人間がやってきて追い出されるんじゃないか、
夏場カップルが肝試しに来るんじゃないか、などという心配が彼の心をよぎった。
しかしドクオの心配と裏腹に風車にやってくる客人は全く無く、いつしかその不安もドクオの心からフェードアウトしていった。
ドクオは毎日ものを集め、それを売ったり蓄えたりしながらのんびりと暮した。
- 25 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:09:29.84 ID:duDza4WT0
- そんな或る日の事。
ドクオはいつものように町の探索を終えリアカーを押しながら山の上の家へ向かっていた。
辺りには綿毛のタンポポが夕陽に照らされて揺れ、細かい羽虫が群れをなして飛びまわっている。
('A`)「やっと春が来たか・・・」
温かくて過ごしやすく、山菜、魚などの食料も手に入る春はドクオにとってありがたいものだった。
('A`)「よっこらセックス・・・今日の仕事終わり〜」
リアカーを風車の脇へ停めたドクオは風車小屋の中へ入ろうとした。
ガサッ
ドクオが扉に手をかけたその時、後ろの方で草を踏む音がした。
('A`)「・・・?」
不審に思ったドクオはゆっくりと振り返った。
- 26 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:10:59.24 ID:duDza4WT0
川 ゚ -゚)「・・・」
('A`;)「・・・(なんだこの娘・・・?)」
川 ゚ -゚)「君が風車男・・・?」
そこには制服姿の少女が立っていた。
肩まで伸びた真っすぐな黒髪と黒いセーラー服を風に揺らし、学生鞄を膝の前に両手で持っている。
スカートから伸びた白い脚に映えるような黒いハイソックスとローファー。誰がどうみても女子高生だった。
- 28 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:12:52.93 ID:duDza4WT0
- ('A`)「・・・まあ巷でそう呼ばれてるだけだけど、一応そうだよ」
川 ゚ -゚)「・・・呼ばれてるだけ?」
('A`)「そうだよ。俺はただここに住みついてるだけのホームレス。 この格好見ればわかるだろ?」
ドクオはそう言って自分の汚いウインドブレーカーを引っ張って見せつけた。
川 ゚ -゚)「そうか・・・そうだよな。普通」
少女は憂いを帯びた声でそう呟いた。
('A`)「・・・てか、君は・・・何?どうしてこんな所に?」
川 ゚ -゚)「・・・」
ドクオの問いかけに少女は答えず、ただ足元を眺めているだけだった。
('A`)「もう夕方だけど・・・家には帰んないの?」
川 ゚ -゚)「家には・・・帰りたくない・・・帰れない」
- 29 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:14:07.93 ID:duDza4WT0
- 少女は質問に度々答えなかった。
ドクオはどうやら彼女が家出をしてきたことは把握できたのだが、彼女がここに来た目的、
彼女がこんな町の辺境を訪ねてきた目的が分からなかった。
戸惑うドクオの前を彼女は根を張ったように動こうとしない。
('A`)「(一体こいつは俺に何を期待しているんだ?)」
少女のスカートが風にはためいた。
('A`;)「(・・・ゴクリ)」
陽は沈み、山の中は暗さを増していた。
二人の間を冷たい風が通り抜けた。
('A`;)「うお寒っ!寒いからとりあえず話は中でしないか?」
川 ゚ -゚)「・・・わかった」
('A`;)「(自分で言っといてなんだが・・・女の子を廃屋に連れ込もうとするホームレスって・・・犯罪臭がプンプンする図だな・・・)」
('A`;)「(・・・この娘はそういう心配はしないのか?)」
ドクオは隅で転がっていたいつもは使わない椅子を出し、彼女に差しだした。
('A`)「まあ座って。」
川 ゚ -゚)「・・・すまない」
- 31 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:15:15.11 ID:duDza4WT0
- 少女が座るとドクオは話を切り出した。
('A`)「あのさ、そろそろ答えてくれないかな?君は一体何のためにこんな場所に来たんだ?俺に何か用があるのか?」
川 ゚ -゚)「・・・・・・・・」
少女は答えない。
('A`)「何も用が無いなら早く家に帰りなさい。親が心配してるぞ」
川 ゚ -゚)「・・・家には、帰れない」
('A`)「は?」
川 ゚ -゚)「遺書を置いてきたから」
- 32 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:16:35.24 ID:duDza4WT0
- 少女はぽつりぽつりと話を始めた。
クラス中から知らんぷりされていること。一部のグループから嫌がらせをうけていること。
先生や親が相談に親身になってくれないこと。最近は学校に行かずゲームセンターや漫画喫茶で一日を潰していること。
('A`)「・・・・・」
川 ゚ -゚)「小学生の時、風車男の噂を聞いてはじめのうちはすごく怖かった。
でも大きくなるにつれてそんなのデタラメだって思う気持ちが強くなっていったんだ」
川 ゚ -゚)「電車に飛び込むのも、ビルから飛び降りるのも怖くてできない。
もし本当に風車男がいるのなら、私はそれの犠牲者になりたかった」
('A`)「・・・・・」
川 ゚ -゚)「・・・風車男が本当なら、それはそれで。本当じゃなかったなら・・・」
川 ゚ -゚)「・・・自分で死のうと思ってここに来た」
少女はそう言うと、鞄の中から縄を取り出した。
運動会の綱引きを連想させる荒縄だった。
- 34 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:19:41.99 ID:duDza4WT0
- 川 ゚ -゚)「私はもう人生に疲れたんだ」
川 ゚ -゚)「もし良かったら私の手伝いを」
(#'A`)「この馬鹿野郎が!!!」
少女の言葉を遮りドクオは叫んだ。
- 35 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:20:43.47 ID:duDza4WT0
- 川; ゚ -゚)「!!」
(#'A`)「お前な・・・少し辛い目に会ったからって逃げようとすんなよ!!」
川; ゚ -゚)「・・・・・・」
(#'A`)「お前の人生はこれからなんだよ!!いくらでも取り返しがつくんだ!!こんな薄汚れたおっさんとは違って!」
(#'A`)「16、17の子供が人生悟った気になってんじゃねえ!!!」
川 ; -;) 「・・・・・・」
(#'A`)「・・・馬鹿な考えしてんじゃねえよぉ!!!!」
ドクオの声が風車小屋のレンガ壁に響き、消えていった。
そして小屋は少女が鼻をすする音と、風車がぎいぎいと回る音のみとなった。
- 36 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:21:40.33 ID:duDza4WT0
- 川 ; -;) 「・・・・・・」
('A`)「・・・・・・その縄貸しなさい」
ドクオは少女が握っていた縄をひったくると、窓を開け外へ投げ捨てた。
('A`)「・・・子供が心配じゃない親なんていないんだぞ」
川 ; -;) 「・・・うぅ・・・・・・ぐすっ・・・」
('A`)「今ならまだ間に合うから、早く家に帰りなさい」
川 ; -;) 「ぐすっ・・・・・・はい・・・」
ドクオがそう言うと少女はゆっくりと立ちあがり、風車小屋を出て行った。
('A`)「・・・・・・」
('A`)「やれやれ・・・」
- 38 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:22:25.78 ID:duDza4WT0
それから数日後。
ドクオがいつもの日課をこなし風車へ戻った時のこと。
('A`)「ふう・・・今日の仕事終わり〜・・・」
川 ゚ -゚)「・・・」
('A`;)「うわっ!びっくりした!いたのかお前!」
川 ゚ -゚)「丁度今来た所・・・」
少女はその後の話をした。
遺書を見つけた母親が捜索願いを出したらしく、家の周りは騒然としていたそうだ。
父親や担任の先生、校長までやって来て、泣きながら怒られたり謝られたりされたらしい。
父親はゲンコツで少女を殴ったが、そのあとはずっと泣いていたそうだ。
- 39 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:24:17.29 ID:duDza4WT0
- ('A`)「そうか・・・大変だったなそりゃ」
川 ゚ -゚)「・・・親にも、貴方にも迷惑をかけてしまった」
('∀`)「反省してるならいいさ!もう二度とあんな考え起こすんじゃねえぞ?」
川 ゚ -゚)「・・・どうもありがとう」
少女はそう言うと、帰って行った。
('A`)「一件落着か・・・」
この時ドクオは、これでもう少女に会うことも無いだろうと思っていた。
しかしその予感は大いに外れることとなる。
- 41 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:25:24.25 ID:duDza4WT0
それから更に数日後。
川 ゚ -゚)「やあ」
('A`;)「また来たのか。・・・今度は何の用だ?」
川 ゚ -゚)「別に用は無い。私は帰宅部だし、友達もいないから暇つぶしにここへ来ようと思っただけだ」
('A`)「そうかい・・・」
それから少女はちょくちょく風車小屋へ遊びに来るようになった。
その日の気分で来るらしく、連日来る時もあれば、一週間以上来ない時もあった。
少女の名前はクーといった。
ドクオとクーは次第に打ち解けていった。
- 42 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:26:23.09 ID:duDza4WT0
- 川 ゚ -゚)「・・・ふう」パタンッ
川 ゚ -゚)「本も読み終わってしまったし、退屈だドクオ。」
('A`)「そんなこと言われても・・・ホームレスの家に何か面白いものがあると思うか?」
川 ゚ -゚)「確かにそうだな」
川 ゚ -゚)「・・・・・・それじゃあ、何か面白い話をしてくれ」
('A`;)「ええ!?いきなりそんな無茶な」
川 ゚ -゚)「別に何でもいい。体験談でも聞いた話でも」
('A`;)「んなこと言われたって・・・」
川 ゚ -゚)「お願いだ」
('A`)「・・・・・・しょうがねえなぁ・・・」
クーは、することが無くなると決まってドクオに何か話をせがむのだった。
ドクオの話はクーにとって日常から逸脱したような新鮮なものであり、興味深いものだった。
歴史の話、有名人の話、音楽の話、映画の話、漫画の話、小説の話、町の噂や都市伝説。
それはどこか懐かしく、カビの臭いがするようなものが多かったが、クーにとっては全く新しい刺激だった。
- 44 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:27:58.82 ID:duDza4WT0
川 ゚ -゚)「・・・それで結局その人はどうなったんだ?」
('A`)「・・・自宅で二人の若者に刺されて死んだんだ。
その二人はそいつの友人で、金のトラブルが原因だったんじゃないかって言われてる。」
川 ゚ -゚)「そうか・・・」
('A`)「皮肉な話だよな、『滅びの画家』って呼ばれてた奴がそんな最期なんて」
ピッピッ
川 ゚ -゚)「ん」
('A`)「・・・ああ、腕時計ね」
川 ゚ -゚)「もうこんな時間か」
('A`)「そうだな、今日はもう終わりだな」
川 ゚ ー゚)「ドクオの話につい夢中になってしまった」
('A`;)「・・・・・・」
- 45 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:29:09.49 ID:duDza4WT0
(=゚ω゚)ノ「ぃょぅ!ドクオさん。暑いのに精が出るねえ」
('∀`)「俺の生活の一部だからな!全然苦痛じゃねえぜ!」
(=゚ω゚)ノ「今日は大漁だょぅ!」
ガラガラガラ
(=゚ω゚)ノ「はい交換代。お疲れ様だょぅ」
('∀`)「あざーっす!」
(=゚ω゚)ノ「・・・ドクオさん、何かいいことでもあったのかょぅ?」
('∀`)「へ?なんで?」
(=゚ω゚)ノ「なんか最近のドクオさんは妙に生き生きしてるょぅに見えるんだょぅ」
('∀`)「・・・そうかなぁ?」
(=゚ω゚)ノ「元気なことはいいことだょぅ。ぃょぅも嬉しいょぅ」
- 46 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:30:16.02 ID:duDza4WT0
ドクオの町探索を妨害していた梅雨も終わり季節は初夏を迎えていた。
クーが風車小屋に顔を見せるのは、もはやドクオの日常となっていた。
川 ゚ -゚)「やあ」
('A`)「うーっす」
川 ゚ -゚)「・・・外はかなり暑いのに、この中は結構涼しいんだな」
('A`)「俺は長ーくこの中だからそのギャップが分かんねえんだけどね」
川 ゚ -゚)「少しは動けって」
白い半袖のブラウス姿のクーは黒髪を揺らしながら、隅で寝っ転がっているドクオにそう言うと
彼の傍に腰を下ろした。
- 47 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:31:25.45 ID:duDza4WT0
- 川 ゚ -゚)「今日はいいものを持って来たぞ」
('A`)「ん?・・・それは」
川 ゚ -゚)「風鈴だ。美術の時間で作ったんだが、どうもぶら下げる良い場所がなくて」
('∀`)「おお!悪いなクー。ありがとう」
川 ゚ ー゚)「ドクオ程、物を大事に使ってくれる人はいないだろうからな」
クーはたびたび、こうしたお土産を持ってくることがあった。
家にあったお菓子だったり、使わなくなった生活用品だったり、ドクオにとってとても有益なものばかりだった。
('A`)「ああそうだ。お礼といっちゃなんだが、桑の実がたくさん採れたんでふるまってあげよう」
川 ゚ ー゚)「・・・ありがとう、ドクオ」
- 49 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:33:24.53 ID:duDza4WT0
川 ゚ -゚)「・・・」ペラリ
('A`)「・・・・・・今度は何読んでんだ?」
川 ゚ -゚)「江戸川乱歩の、孤島の鬼」
('∀`)「いい趣味してんじゃん。俺も昔はまったよ」
川 ゚ -゚)「ネタバレはやめてくれ」
('A`)「へいへい」
クーは壁を背に黙々と文庫本にかじりついていた。
そのクーの隣に、開かれたままの鞄が中身をだらしなく吐き出しながら横たわっている。
教科書という物を久々に見たドクオは少し懐かしさを覚えた。
- 50 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:34:52.49 ID:duDza4WT0
('A`)「(こういうの見ると受験を思い出すな)」
('A`)「(・・・・・・そういえばこいつ読書してることはよくあるけど、勉強してる姿は俺見たことないな・・・)」
('A`)「なあ、お前って今何年生なんだ?」
川 ゚ -゚)「三年だけど、何か?」
('A`;)「ええっ!?んじゃ今年受験じゃん!」
川 ゚ -゚)「今更そんな分かり切ったことを言われても困るぞ」
('A`;)「勉強しなくて大丈夫なのか・・・?」
川 ゚ -゚)「私はここに勉強するために来ているわけじゃないから、ここでは勉強はしない。」
川 ゚ -゚)「・・・」
川 ゚ -゚)「実は、九月から予備校に通うことに決めたんだ」
- 51 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:35:52.35 ID:duDza4WT0
クーはドクオの前で勉強や受験のことをあまり話していなかったが、自分なりに進路はきちんと考えていたようだった。
行きたい志望大学が一つあるらしいのだが、今のクーのレベルからはまだまだほど遠いとドクオに洩らした。
川 ゚ -゚)「だから、予備校に通うことに決めた。絶対そこに行きたいからね」
('∀`)「偉いなぁ・・・いいね若いって・・・そこ、受かるといいな」
川 - )「・・・うん・・・・・・」
クーは遠くを見つめるように答えた。
絶え間なく響く油蝉の声に混じって風車の軋みがぎいぎいと遠くに聞こえた。
- 52 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:36:46.36 ID:duDza4WT0
蒸し返す暑さもようやく弱まりを見せ始め町に秋の気配が漂うようになった。
その日の日課を終えたドクオは机に座り、山に響くツクツクボウシの合唱と
可憐な音を奏でる風鈴の音色に耳を傾け、ぼんやりと一人耽っていた。
('A`)「・・・夏も終わりか・・・・・・」
('A`)「・・・・・・」
('A`)「・・・最近クー来ねえな・・・」
('A`)「・・・・・・」チリーン・・・チリーン・・・
('A`)「静かだな・・・」
クーが風車を訪れる回数は徐々に減っていった。
学校帰りに通う所が予備校へシフトし、空いた時間も勉強へ費やすことが多くなった。
- 54 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:38:00.86 ID:duDza4WT0
川 ゚ -゚)「やあドクオ」
('A`)「よお、久しぶりじゃねえか」
川 ゚ -゚)「すまない、模試がたくさんあったものだから。」
('A`)「大変だねぇー受験生」
川 ゚ -゚)「他人事みたいに言ってくれるなよ」
('A`)「いや実際他人事だし」
川 ゚ -゚)「はぁ疲れた。ドクオ、何か面白い話してよ」
クーは鞄をその場に投げ出し座り込むと、お決まりのようにドクオに話をせがんだ。
面倒臭そうに受け答えるドクオも内心、自分が話を語るのが、そして何よりクーが自分の話を興味深く聞いてくれるのが嬉しく、楽しかった。
('A`)「しょうがねえな・・・んーと」
川 ゚ -゚)「わくわく」
('A`)「・・・・・・俺が子供の時流行った都市伝説でな・・・『呪いの館』って呼ばれてた古い洋館が町にあって」
川 ゚ -゚)「それはもう聞いた。館に生えてるキノコが人に寄生する、とかいう話だろ?」
('A`;)「うっ・・・もう話したか・・・うっかり」
- 55 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:39:35.89 ID:duDza4WT0
クーは予備校に通いながらも、決してドクオの所へ行くことをやめたりはしなかった。
彼女は少なくとも一週間に一度風車小屋を訪ねた。
ドクオが出かけている時は風車小屋の中で一人本を読みながら彼を待った。
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
川 ゚ -゚)「・・・すれ違ったかな・・・?」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
二人は、二人が気の置けない友だと自覚し合っていた。
黙っていてもそこに居心地のいい空気が流れるような、そんな友達だった。
ただ、この頃から二人は、この日常が今後ずっと続くことなどないというわだかまりを常に心のどこかで抱え込むようになった。
- 57 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:40:57.82 ID:duDza4WT0
山の色は紅葉に染まり、やがて枯れ葉と枝の焦げ茶色に支配されていった。
寒さが厳しい日には、クーがコンビニのおでんや肉まんを差し入れに持ってきた。
季節は移っていっても二人の日常は表面上変わらなかった。
クーは実家に帰るため年末年始に風車を訪ねることはできなかった。
年が明けて初めての訪問の時、ドクオはお年玉とクリスマスプレゼントとして拾ったシルバーアクセサリーをクーにあげた。
クーは照れていたが、嬉しさを隠すことはできなかった。
- 58 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:42:07.83 ID:duDza4WT0
('A`)「お前そろそろ受験だろ?こんなとこでのんびりしてていいのか?」
川 ゚ -゚)「これでもやることはちゃんとやっているつもりだ。それに、直前にどたばた足掻いても無駄だろう?」
クーはそう言って文庫本のページをめくった。
ぺらり、と乾いた音がドクオの耳に届いた。
('A`)「そうかい。まあ心の余裕は大事だと思いますよ」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
('A`)「・・・そういえばお前大学どこ受けるんだ?ずっと聞きそびれてたけど」
川 ゚ -゚)「××大の、文学部」ペラリ
('A`)「へぇ〜・・・前クーが入りたい、って言ってたのがそこか」
川 ゚ -゚)「そう」
('A`)「文学部かぁ〜就職きついかもしれんぞ」
川 ゚ -゚)「別に、大丈夫」ペラリ
('A`)「小説家にでもなるつもりか?」
川 ゚ -゚)「・・・まだそこまでは考えてない」
('A`)「ふーん・・・」
- 59 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:43:04.78 ID:duDza4WT0
- 冬の寒さもピークを迎えた二月、いよいよクーの受験が始まった。
ドクオはクーの成績や学習などは全く知らない、もとい分からない為、ただ寒い風車の中で毛布にくるまり合格を祈るばかりだった。
('A`)「おぅう・・・ぅうぅぅ・・・寒い・・・・・」
('A`)「何もやる気が起きねえ・・・」
('A`)「・・・・・・」
('A`)「今頃試験やってんのかねえ・・・」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」カリカリ
受験期に入ってからクーの訪問はぱったりと無くなった。
元より覚悟していたドクオだったが、やはり寂しさを感じられずにはいられなかった。
- 61 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:44:31.76 ID:duDza4WT0
- 三月。
クーは約一カ月ぶりに風車小屋を訪ねた。
春の兆しが山にやってきた、静かな午後だった。
川 ゚ -゚)「・・・やあドクオ」
('A`)「・・・お?」
('∀`)「おお!クーじゃねえか!随分久しぶりだなぁ!」
川 ゚ ー゚)「うん。久しぶり」
('∀`)「全然こっちに顔見せねえで全く・・・・・・受験、どうだった?」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
('A`;)「・・・・・・だめだったのか?」
川 ゚ -゚)「いや、合格した」
('∀`;)「なぁんだよ!!もったいぶらせんなって!・・・良かったなぁ!」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
- 62 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:45:15.32 ID:duDza4WT0
('∀`;)「・・・?どうかしたのか?」
川 ゚ -゚)「今日はお別れを言いに来た」
('∀`)「・・・はい?」
川 ゚ -゚)「・・・上京しなければいけないんだ」
('∀`)
川 ゚ -゚)「お別れだ、ドクオ」
風車の音がぎい、と小屋の中に響いた。
- 64 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:46:15.39 ID:duDza4WT0
('∀`;)「・・・」
川 - )「・・・」
('∀`;)「・・・・・・良かったじゃんか!東京はいいとこだぞ!?店だって24時間空いてるし、なんでも揃ってるし・・・」
川 - )「・・・」
('∀`;)「電車もバスも整備されてるし・・・何も困らないし・・・」
川 - )「・・・」
('∀`;)「きっといい友達ができるに決まってるよ!東京なんて人がゴミのようにいるんだからな!」
川 - )「・・・」
('∀`;)
('∀`)
('A`)「・・・・・・お別れ、か・・・」
- 66 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:47:38.81 ID:duDza4WT0
川 - )「・・・」
('A`)「まあ・・・あっちでも元気にやってくれよ」
川 - )「・・・うん」
('A`)「大学はいろんな奴がいるから、友達もきっとたくさんできるさ」
川 - )「・・・うん・・・・・・」
('A`)「・・・」
川 - )「・・・」
('A`;)「(・・・なんか気のきいたセリフの一つ言えねえのか俺は・・・)」
川 ゚ -゚)「なあ、ドクオ」
('A`;)「は、はいっ!なんでしょう」
川 ゚ -゚)「最後に一つ・・・いいかな?」
('A`;)「・・・何を?」
川 ゚ -゚)「・・・ドクオの話が聞きたいんだ」
- 68 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:48:57.33 ID:duDza4WT0
('A`;)「ああ、いつものあれか・・・もう話すネタほとんど無いからなぁ」
川 ゚ -゚)「いや、そうなんだけど・・・そうじゃなくて」
('A`;)「へ?」
川 ゚ -゚)「『ドクオの話』が聞きたいんだ。ドクオが私くらいの年の時に、何を体験して、何を思って過ごしていたかを聞きたいんだ」
('A`;)「・・・」
川 ゚ -゚)「そして、なんでこんな場所に住むようになったのか・・・以前から少し気になっていたんだ」
('A`)「・・・・・・」
('A`)「・・・・・・本当に聞きたいのか?」
川 ゚ -゚)「ああ、聞きたい」
('A`)「・・・・・・つまんねえかもしれねえぞ・・・?」
川 ゚ -゚)「別にいい」
('A`)「・・・・・・」
ドクオは語り始めた。
ゆっくりと、確かめるように、言い聞かせるように。
- 70 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:50:28.51 ID:duDza4WT0
- ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
父ちゃんの顔は仏壇の写真でしか見たことがなかった。
父親がいないとこを別に変だとも特別だとも思っていなかったし、
俺の中で、家庭のイメージはいつもカーチャンと二人暮らしの光景だった。
J( 'ー`)し「今日は何時頃に帰ってくるの?」
('A`)「わかんねーよそんなの」
J( 'ー`)し「夕飯までには帰りないよ」
('A`)「うぃ」
J( 'ー`)し「ちょっと!いってきます、くらい言いなさいよ」
('A`)「・・・もうガキじゃねえんだから」
J( 'ー`)し「いってらっしゃい!」
('A`)「・・・・・・いってきます」
- 71 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:51:12.60 ID:duDza4WT0
中学生の頃の俺は荒んでいた。
荒む、と言っても少し昔の漫画やドラマの登場人物のような反抗期MAXのヤンキー気取りを演じていたわけじゃない。
むしろそれとは全く逆の存在だった。つまり、学校における社会的弱者。
友達は皆無。休み時間はもっぱら机と接吻して過ごしていた。
いじめとか不登校って言葉が流行る前の話だ。
公立中学はガラが悪いのがいて当たり前で、それに虐げられる奴がいるのも当たり前のことだった。
よほど表立った事件が起きない限り教師は動かない。まあ、教師に何も期待なんてしてなかったけどな。
( `ー´)「よおドクオ〜なんか今日は元気ねーんじゃネーノ?」
('A`)「・・・(今日もこいつらか・・・)」
<ヽ`∀´>「ちょっとウリ達と運動するニダ」
屋上のコンクリート面が、内出血で火照った頬にひんやりとした感触を与えた。
砂ぼこりの粒子が風に乗り、顔に堆積していくのを肌で感じながら、俺はただぼんやりしていた。
( `ー´)「マジしけてんな〜バイトでも始めればイインジャネーノ?」
<ヽ`∀´>「こいつを雇ってくれる所なんてないニダ!!」
アーハッハッハッハッハッハッハ・・・イーヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ・・・
- 72 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:52:40.62 ID:duDza4WT0
奴らが帰ってからも俺はそのままぼんやりし続けた。
痛みに耐え寝返りをうち、空を仰いだ。
('A`)「・・・・・・」
('A`)「・・・なんで俺ばっかりこんな目に会うんだろう」
('A`)「・・・なんでだ?」
中学校の思い出はほぼ無い。
なぜなら、時期の通り順々に経験を話したとしても、どれも似たり寄ったりな話になるからだ。
これ以上語る必要は無い。
- 73 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:54:05.49 ID:duDza4WT0
- 俺は地元の公立高校に進学した。
勿論、どこか離れた学校を受験して今までの陰惨な学校生活から完全に脱却したい、という願望はあった。
だがそれを実現できるかどうかは別の話で、俺はモチベーションもバイタリティも持ち合わせていなかった。
入学ムード漂うフレッシュな空気は俺をますます憂鬱にした。
例によって机に突っ伏し、耳に侵入するクラスの喧騒をただ聞いていた。
どうせこのまま友達もできずに孤独に生涯を終えていくんだ、と本気で思っていた。
この頃までは。
予定が空白のゴールデンウィークが過ぎた頃のことだった。
昼休み、俺はいつものように寝たふりを敢行していた。
そいつは突然俺に話しかけてきた。
- 74 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:54:46.43 ID:duDza4WT0
( ^ω^)「ねえ鬱田くん!」
Σ('A`;)「ヘェッ!?」ビクッ
('A`;)「(・・・びっくりして変な声出ちまった・・・)」
('A`;)「・・・な、なんの用ですか・・・?」
( ^ω^)「一緒にお昼ご飯食べようお!」
('A`)
σ( 'A`)俺!?
- 76 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:56:31.19 ID:duDza4WT0
驚天動地。
いや、この場合俺のみの驚愕だが、だがしかし、一カ月経ってもクラスに馴染めず
一人ぽつんと寝たふりをキメる男子生徒に向かって、さも当然のように話しかけるという行為は
世間様から見ても相当驚くべきものではないだろうか。
( ^ω^)「そうだお!君だお!」
('A`;)「え・・・?ちょ、なんで?いきなり・・・なんで俺?」
( ^ω^)「いや・・・別に深い意味はないお。ただ、お昼は大勢で食べた方が楽しいと思っただけだお!」
('A`;)「・・・」
( ^ω^)「だめかお?」
('A`;)「いや別に!駄目なんてことないけど」
( ^ω^)「んじゃ決まりだお!」
('A`;)「ええっ!?」
( ^ω^)「ついてくるお!」
- 77 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:57:19.37 ID:duDza4WT0
向かった先は旧棟の空き教室だった。
いつも使う教室とは時代が違っているような、古めかしく、どこか懐かしい雰囲気の場所だった。
( ^ω^)「ただいまお!」ガラッ
(´・ω・`)「おかえりブーン。」
ξ゚听)ξ「遅いのよあんた!もう半分食べ終わっちゃったじゃない!」
( ^ω^)「まあそう怒るなお。今日は新しく友達を連れてきたお!」
('A`;)「・・・ど、どうも」
ξ゚听)ξ「誰?あんたの同じクラス?」
( ^ω^)「そうだお。一人で退屈そうだったから、誘ったんだお」
('A`;)「・・・」
( ^ω^)「三人だけじゃ寂しいって言ってたお?」
(´・ω・`)「二人は仲いいのかい?」
( ^ω^)「今日初めて話した仲だお!」
- 78 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:58:05.57 ID:duDza4WT0
ξ゚听)ξ「面識無い人を連れてくるってあんたねぇ・・・」
(´・ω・`)「どうもはじめまして。君はなんていうの?」
('A`;)「・・・鬱田ドクオです」
( ^ω^)「下の名前はドクオっていうのかお!」
ξ゚听)ξ「ふーん、なんだか垢抜けない名前ね」
( ^ω^)「気にしないでいいお。こいつは口が悪いのが欠点なんだお」
ξ#゚听)ξ「コイツ呼ばわりしないでよ!」
('A`;)「・・・」
(´・ω・`)「あ、自己紹介が遅れてすまない。僕はC組のショボン」
ξ゚听)ξ「あたしツン。B組よ」
('A`;)「・・・よ、よろしく・・・」
( ^ω^)「そういえば僕も自己紹介がまだだったお」
( ^ω^)「僕は内籐ホライゾン。みんなからはブーンって呼ばれてるお!」
- 79 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 22:59:07.58 ID:duDza4WT0
こうして俺に友達ができた。
始めの内はうまくやっていけるかどうか不安でどうしようもなかった。
中学の3年間一人だったせいで友達との接し方を忘れてしまっていたからだ。
だけど、こいつらの空気は俺に無理をさせなかった。
俺はだんだんと自然体で話せるようになっていった。
クラス内でブーンとしゃべることも多くなり、また、ブーンの、ツンの、ショボンの友達といった感じに
次第に色々な人と接する機会が増えるようになった。
昼休みは机に突っ伏すのから、旧棟の空き教室へ行くことに変わった。
一人でいる時間は減り、ガラの悪い奴らに絡まれることもなかった。
- 80 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:00:27.70 ID:duDza4WT0
ξ゚听)ξ「あーテスト結果なんて知りたくないよー」
( ^ω^)「ツンは昔から計算が苦手だお」
(´・ω・`)「へえ、勉強できそうな感じするのに」
( ^ω^)「小学5年の時の算数のテストで・・・」
ξ*゚听)ξ「ちょっと!何言おうとしてんのよ!」
('∀`)「ははは・・・」
ξ*゚听)ξ「笑ってんじゃないわよ!あんたもそんな頭良くないでしょ!」
('A`)「俺は数学できる方だぜ」
(#)ω^)「小テストとかいつもいい点だし、ドクオは頭良いお。ツンよりかは」
ξ゚听)ξ「あんたこれ以上殴られたいの?」
ガッシ!!ボカ!!
(´・ω・`)「まーた痴話ゲンカが始まったよ」
('A`)「・・・」
- 81 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:01:41.09 ID:duDza4WT0
(#)ω(#)「あ、そうだお。テストも終わったことだし、みんなでどっか遊びに行かないかお?」
ξ゚听)ξ「いいわね!カラオケとか行かない?」
('A`;)「・・・(カラオケ・・・!噂には聞いていたが、高校生ってやっぱりカラオケ行くものなのか・・・)」
(´・ω・`)「良いねぇ、僕は賛成かな」
(#)ω(#)「ドクオも行くお?」
('A`;)「・・・カラオケはちょっと・・・」
ξ゚听)ξ「なーに言ってんの!カラオケって超楽しいわよ!?」
(´・ω・`)「何事も慣れが肝心だよ」
('A`;)「・・・」
(#)ω(#)「沈黙は肯定の意だお!」
('A`;)「えええー!?」
- 83 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:02:44.51 ID:duDza4WT0
もしかしたら、この頃が俺の人生で一番幸せだったかもしれない。
今振り返ってみてそう思う。
ブーン達と過ごすのは本当に楽しかった。
いつまでもこの時間が続けばいい、なんてことを初めて感じた。
嫌な思い出は痛々しく鮮明に刻まれるのに、
どうして楽しかった思い出はふわふわしてて曖昧で、切なくセピア色を帯びているんだろうか。
J( 'ー`)し「ドクオ、最近なにかいいことでもあったの?」
('A`)「・・・別に、なんもねーよ」
J( 'ー`)し「最近妙に生き生きしてるから」
('A`)「・・・」
- 84 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:04:07.89 ID:duDza4WT0
友達の家へ遊びに行くのは小学生以来だった。
懐かしさとかを超えて、もはや新鮮だった。
(; ^ω^)「・・・」カチャカチャカチャ
('A`;)「・・・」カチャカチャカチャ
(; ^ω^)「あ!ハンマーは卑怯だお!」
('A`)「勝負の世界は非情なものさ」
(; ^ω^)「アッー!」
('∀`)「よっしゃー」
(; ^ω^)「・・・ドクオとは大体勝率5割だお」
('A`)「白黒つかねえな・・・」
( ^ω^)「・・・」
('A`)「・・・」
( ^ω^)「なんかこればっかも飽きてきたお・・・」
('A`)「俺もちょうどそう考えてた所だ」
- 86 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:05:03.59 ID:duDza4WT0
( ^ω^)「マリカーやるお?それともスタフォ?」
('A`)「・・・なんか俺ゲーム疲れちまったわー」
( ^ω^)「そうかお。んじゃゲームはいったん休憩だお」カチッ
( ^ω^)「・・・この時間のテレビはろくなのがないお」
『人間死ぬことは決まっている。何を世の中に残したかが、大切なんだ――
主人公の死、そこから本当の物語が始まる――』
( ^ω^)「・・・お?」
('A`)「これって、スクウェィアの新作だよな?」
(*^ω^)「そうだお!これ結構楽しみなんだお!」
('A`)「・・・俺、佐賀シリーズやったことないんだよなー」
(; ^ω^)「ほんとかお!?貸してあげるからやれお!ガチで勧めるお」
('A`;)「そんなに面白いのか・・・?」
(; ^ω^)「神ゲーだお。一作目はゲームボーイなんだがお・・・」
- 88 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:06:16.16 ID:duDza4WT0
みんなと過ごした毎日は当たり前のように通り過ぎて行った。
この日常がいつか過ぎ去ってしまうものだと頭で理解できても、想像することはできなかった。
むしろ、そんな不安を心に留めておくことさえもなかった。
俺は何も考えずに、日常の中をただただ遊泳していた。
キーンコーンカーンコーン・・・
('A`)「紙がギリギリ足りてよかったぜ・・・」ゴジャー
('A`)「ふう、5限マンドクセ」
('A`;)「・・・!?」
( `ー´)「今頃ジジイ教室に来てるんじゃネーノ?」ジョロロロロ
<ヽ`∀´>「バカ、これは予鈴ニダ!」ジョロロロロ
( ・∀・)「まだこの学校のシステム理解してないのか?」ジョロロロロ
('A`;)「・・・・・・」
- 89 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:07:27.68 ID:duDza4WT0
(; `ー´)「う、耳が痛いんじゃネーノ」
( ・∀・)「ネーノは勉強できるくせにこういうとこ抜けてるよな」
<ヽ`∀´>「ウェーッハッハッハ!」
(#`ー´)「お前は笑うんじゃネーノ!」
<#`∀´>「何ニダ?その言い方」
( ・∀・)「おい、さっさと行くぞ。おごってやんねえからな」
(; `ー´)「う・・・すんません」
('A`;)「・・・・・・行ったか」
('A`;)「・・・あいつら、誰だか知らねえけど、下っ端になってるじゃねえか」
('A`;)「ざまあみろ」
- 90 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:08:42.09 ID:duDza4WT0
ξ゚听)ξ「・・・その不良がやらかしたせいで帰りのホームルーム長引いちゃってさ〜」
(´・ω・`)「そういうのは影でこそこそやればいいのにね」
('A`)「・・・」
( ^ω^)「B組のモララーって奴らのことだお?」
ξ゚听)ξ「知ってるの?」
( ^ω^)「知ってるも何も・・・ちょっとした有名人だお。かなりやばい奴だって」
('A`)「やばいって?」
(´・ω・`)「ヤクザとつるんでるってもっぱらの噂だよ」
('A`;)「mjd!?」
ξ;゚听)ξ「・・・噂って誇張されて伝わるものよ」
(´・ω・`)「いや、実際に町で目撃した人もいるらしい。彼が『そういう人たち』と一緒に歩いてるのを」
('A`;)「とんでもねー野郎だ・・・(そりゃ逆らえねえよな・・・)」
楽しい日常の中に入り込んでくる不安や焦燥は尽きなかった。
手に入れたこの幸せが壊れるようなことがあるか心配で仕様がなかった。
- 91 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:09:47.56 ID:duDza4WT0
確か二年生の春頃、ちょうど衣替えの季節のことだった。
('A`)「(・・・今日は土曜ジャンプの日か)」
('A`)「ちょっとコンビニ行ってくる」ガラッ
( ^ω^)「おいすー」
('A`)「マンキン早く読みてー」
ドンッ!
('A`)「あ、サーセン」
(#`ー´)「てめえ・・・随分と威勢よくぶつかるんじゃネーノ」
('A`;)「・・・ぁ・・・・・・」
( `ー´)「ん?」
<ヽ`∀´>「誰かと思ったらドクオニダ!久しぶりニダ!」
- 92 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/29(水) 23:10:34.54 ID:duDza4WT0
なんで?
なんでだ?
なんでこうなるんだ?
( ・∀・)「誰こいつ?」
<ヽ`∀´>「中学からの財布兼サンドバッグですニダ!」
( `ー´)「最近遊んでなくて寂しかったんじゃネーノ?」
ドムッ!
('A゚;)「ぐぼっ!」
<ヽ`∀´>「こいつも変わんねえ奴ニダ!高校に上がっても相変わらずのヘタレニダ!」
なんで?
変わった筈なのに
あいつらと出会って、俺は変わった筈だったのに
なんで今更こんな目に?
( ・∀・)「・・・」
- 104 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:01:22.29 ID:D8fyJ2h20
俺はそのまま、屋上へ続く薄汚れた階段の踊り場へ引きずられていった。
そこはガラの悪い連中の溜まり場で有名な場所だった。
痛みや血の味の、久々に味わう感覚に俺は吐き気を覚えた。
ネーヨとニダーの二人は、飽きることもないようにネチネチと打撃を続けていた。
時間の感覚なんて薄れていたが、結構長い時間やられていたと思う。
危険人物として名高いモララーとやらは、階段に腰をおろし一人傍観していた。
<ヽ`∀´>「おーっと手が滑ったニダ!」ドカッ
( A ;)「ぐっ・・・」
( `ー´)「つまんねーんじゃネーノ?黙って蹴っとけばイインジャネーノ?」ボスッ
( A ;)「ぐえっ・・・!」
( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「・・・お前ら、いい加減にしとけよ」
そいつは満身創痍の俺にもはっきり聞こえる声で言った。
- 108 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:05:28.87 ID:D8fyJ2h20
( `ー´)<ヽ`∀´>「・・・え?」
( ・∀・)「俺さ、そういうの嫌いなんだよねぇ。昭和のコテコテヤンキーみたいな感じなの」
( ・∀・)「ださいんだよ。今日日流行らないよ?そんなのは」
( ・∀・)「弱者を虐げるのはさぁ、もっとクールで、もっと流麗でないといけないんだ」
( ・∀・)「いかに相手を蹂躙し、精神を敗北させるか、そこに強者の美しさが映えるんだよ」
あっけにとられている二人を無視し、モララーは静かに俺の方へ歩いてきた。
不意にズボンのポケットから何か黒い物を取り出した。
それはナイフだった。
鞘を抜くと、鈍い銀色の光を放つ刃が圧倒的な存在感をもって俺を威嚇した。
モララーは俺の前まで来ると、ちょうど目の前にその切っ先を持ってきた。
- 112 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:08:25.23 ID:D8fyJ2h20
(゚A゚;)「・・・!!!」
( ・∀・)「怖いかい?怖いよねぇ?怖くない筈がない」
( ・∀・)「いいかい?君は負けたんだ。『君の人生』は負けたんだ。君は今後もこんな感じに一生を送って行くんだよ。
でもそれは悲しいことじゃない。君は君なりに、そのつまらない人生を全うすればいい。
他者に虐げられつつ、もがき苦しむ様を、後ろ指をさされながら生きるといい」
(゚A゚;)「・・・・・・・・・」
( ・∀・)「君は、君の人生は、敗北した」
モララーはそう言うと、もう片方の拳で思いっきり俺の顎を殴りつけた。
ナイフに夢中だった俺は、全く予期せぬ衝撃に脳内の電流がビリビリと走るのを感じたような気がした。
俺は意識を失った。
- 114 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:12:05.89 ID:D8fyJ2h20
- ・・・クオ!ドクオ!
('A`;)「・・・・・・う、・・・」
(; ^ω^)「ドクオ!気がついたかお!?」
ξ;凵G)ξ「良かった・・・本当に・・・」
(´・ω・`)「ここは保健室だよ。ドクオが帰ってこなかったから、心配して探したんだ」
('A`;)「ぅぅ・・・俺、・・・あいつら・・・・・・は?」
从'ー'从「しゃべっちゃいけません!口のあたり沢山怪我してますからね」
(´・ω・`)「・・・ガラの悪い連中に絡まれたのかい?」
('A`;)「・・・・・・」
从'ー'从「これは明らかに殴られた傷だわ。血気盛んな男の子はしょうがないわねえ」
(; ^ω^)「ドクオは喧嘩するような奴じゃないですお!ドクオは悪くないお!」
从'ー'从「そう・・・」
その時は、ただ友達の優しさが嬉しかっただけだった。
でも、このあたりから決定的に、俺の人生は下り坂へさしかかっていったんだ。
- 116 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:15:37.29 ID:D8fyJ2h20
日常は当たり前のものとして流れていく。
その大切さ、かけがえのなさに気づくのはいつも失ってからだ。
体育祭、修学旅行、文化祭・・・ありふれていて楽しげな思い出は、
茶色く変色したアルバムのように、鮮明に思い出すことができなくなってしまった。
俺がブーン達と知り合ってから随分と経ち、ちょうど受験や進路を考えざるを得なくなる頃。
('A`)「ただいまー」
('A`)「・・・」
('A`)「カーチャン?帰ったよ」
J( - )し「・・・」
('A`)「・・・カーチャン・・・?」
J( ;-;)し「ごめんね・・・ドクオ、ごめんね・・・・・・」
('A`;)「え・・・!?」
- 119 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:19:05.93 ID:D8fyJ2h20
カーチャンが詐欺にあった。
詳細は聞かなかった(と言うより、聞けなかった)が、最近ここいらで流行っている、
貧乏そうな家庭を狙った悪質な詐欺らしかった。
トーチャンの保険金の貯金がごっそり持って行かれたようだった。
このままでは大学進学さえ危うい。俺は私立から国立志望へ転向するか、高卒で働くかの葛藤に立たされた。
J( '-`)し「高卒は駄目よ。大学はちゃんと行きなさい」
('A`;)「・・・カーチャンの収入と、俺のバイトで何とかなるもんなのか・・・?」
J( '-`)し「私がなんとかするから、あんたは黙って勉強しなさい」
('A`;)「・・・・・・」
なんで?
なんでこうなるんだ?
カーチャンは身を粉にして働いた。
カーチャンの精神が擦り減っていくのを、俺は傍で見ているだけだった。
- 121 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:22:04.16 ID:D8fyJ2h20
( ^ω^)「ドクオ〜今日予備校ないし、どっか寄っていこうお」
('A`)「・・・・・・」
( ^ω^)「ドクオ!!」
Σ('A`;)「うわっ!びっくりさせんなよ」
( ^ω^)「どっか行くお!」
('A`)「・・・悪いが今日はバイトなんだ」
( ^ω^)「この時期にバイトやってるのかお?大変だお」
('A`)「大変も何も・・・頑張らないと大学行けなくなっちまうんだよ」
( ^ω^)「・・・最近のドクオは疲れ気味に見えるお。少し休んだらいいと思うお」
(#'A`)「うっせえな!!お前には関係ねえだろ!!」
(; ^ω^)「・・・・・・」
('A`;)「あ・・・」
- 123 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:25:47.43 ID:D8fyJ2h20
(; ω )「・・・そんな言い方しないでもいいお・・・」
('A`;)「ご、ごめ、ブーン」
(; ω )「・・・もういいお」
('A`;)「・・・」
なんで?
なんでこうなるんだ?
俺が何をしたって言うんだ?
カーチャンとも、ブーン達とさえも、すれ違いが多くなってきていた。
毎日の疲労とストレスは俺を圧迫し責め立てた。
- 125 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:29:53.86 ID:D8fyJ2h20
受験もいよいよ近づいてきた冬。
バイトを終えた俺は、夕方の街を横切り家路についていた。
('A`)「ふう・・・寒い寒い」
('A`)「・・・ちょっと近道しようっと」
その日俺は早く暖房のきいた家へ逃げ込みたいという一心で、慣れない路地の近道を使った。
路地は想像以上に汚く、生ゴミの臭いや壁面の落書きが目立つ所だった。
('A`;)「うげえ・・・こんなにひどいとこだったっけ?」
('A`)「・・・ん?」
俺の視界の遠く、路地の奥の方で何やら人だかりができていた。
みんな黒、または焦げ茶のスーツを着ているらしく、遠目で見るとまるで一つの黒い塊がうごめいているようだった。
下品でやかましい談笑が、ビルの壁面に反射して俺の耳に届いた。
('A`;)「・・・こいつら・・・まさか」
- 127 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:33:19.61 ID:D8fyJ2h20
俺がこの集団について考えを巡らしていたその時、突如巨大な声が路地に響いた。
(#゚Д゚)「ゴルァ!!こっちだ早くせんかいっ!!」
Σ('A`;)「(え!?何!?俺?)」ドッキーン
俺は焦った。なぜならその声の主と思しき人物は明らかに俺の方へ呼び声を投げかけたんだから。
_
(; ゚∀゚)「すんませんっ!今行きます!」
俺の後方から、先のものに負けぬでかい声が発せられた。
その瞬間、俺は自分の置かれた状況を察知してしまった。この絶望的な状況を。
俺は目の前にあった生ごみ用ゴミ箱の蓋を荒々しく開け、体を放り、蓋を閉めた。
肌にへばりつき、臭いが鼻に突き刺さる生ごみを我慢し、じっとその場を耐えた。
('A`;)「(・・・冗談じゃねえぞ)」
- 129 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:37:31.44 ID:D8fyJ2h20
(,,゚Д゚)「てめえ・・・カシラがいる時に限って」
_
(; ゚∀゚)「すんませんっ!」
( ´W`)「まあまあそう言うんじゃねえギコ。教育熱心なのはありがたいがな」
( ´W`)「それに今からそっちに行くんだ。別に呼び寄せることもねえ」
その集団は明らかにヤクザだった。
しゃべり方、話の内容、風貌からもはっきり分かった。
路地に響く会話は、ゴミ箱の中にいる俺にさえ聞こえた。
(#゚;;-゚)「××の件ですけど・・・」
(‘_L’)「ああそれなら××が××の関係で・・・」
最初に見たぱっと見に加えて、会話や足音から想像するに人数は15人から20人程度。
ヤクザ達はガヤガヤ言いながら俺の方へ段々近づいてきた。
俺はただ早く過ぎ去るのを祈るばかりだった。
( ・∀・)「××ですか?それなら順調ですよ」
('A`;)「!!・・・この声」
ヤクザの喧騒の中に聞き覚えのある声が混じっていた。
俺にとって忘れることのできない、記憶に刻まれたあの声だった。
- 131 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:40:20.93 ID:D8fyJ2h20
( ´W`)「おめえは若いのにようやるわ!」
( ・∀・)「ありがとうございます」
(‘_L’)「モララーの金の巻き上げ方は在りし日のカシラのようだと仰っておりましたよ」
( ´W`)「ケッ、人を老いぼれみたいに言いやがるなアイツは」
( ・∀・)「カシラと同列にされてしまうのは恐縮です」
( ´W`)「なんだ、嬉しくないのかモララー?」
( ・∀・)「いや、嬉しいですよカシラ。ですが僕の成績は、いわばイージーモードでの物なんですよ」
( ´W`)「は?」
( ・∀・)「この街の住人は頭が空っぽだ。皆、自分のことに精一杯で、
目の前の物事しか見えていない。 仕事に追われて這いつくばるのに必死なんです。」
( ・∀・)「そんな奴らの隙につけ込むことは本当に楽すぎて、かつてのカシラの御活躍と並ぶなんておこがましい位ですよ」
('A`)
- 132 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:44:40.94 ID:D8fyJ2h20
その時俺は、根拠も無しに、悟った。
こいつのせいなんだ。
俺がひどい目に会うのもカーチャンが泣いてるのもブーン達とすれ違うのも
全部、こいつがいるからなんだ。
こいつが、裏で手を引いているんだ。
全部、こいつのせいなんだ。
俺はモララーを殺すことに決めた。
- 134 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:47:22.91 ID:D8fyJ2h20
12月の終業式、俺はポケットにナイフを忍ばせ登校した。
朝、不良がきちんと行事に来るわけないと少し思いつつ彼の下駄箱を確認すると、上履きの代わりに黒い革靴が入っていた。
今日の終業式を除くと、モララーと学校で接するチャンスは三ヶ月後の卒業式しかない。
街で狙うのは論外だ。前のように集団でつるんでいる確立が高い。
一刻も早く諸悪の根源を、俺の不幸の種を埋め育ている男を、この世から消さなければ。
どうやら学校に来ているらしいが、終業式に出席する筈がないと俺はなぜか確信していた。
俺は体育館に行かず、トイレや空き教室、屋上などをずっと探し回っていた。
('A`)「・・・・・・見つかんねえなぁ・・・」
陽も高く上り、辺りからやかましく声が聞こえてくるような時間になっても、モララーは見つからなかった。
途方に暮れた俺は、その日で三回目の屋上へ足を向けた。
モララーが、いた。
( ・∀・)「・・・」
- 135 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 00:50:52.28 ID:D8fyJ2h20
ネーヨとニダーはいなかった。モララーは一人で空を眺めながら立っていた。
('A`)「・・・・・・・・・」
空きっぱなしの扉に感謝しつつ、俺は息をひそめて近づいた。
('A`)「・・・・・・・・・?」
近づくにつれ、俺は変な歌が聞こえるのを感じ取った。
それは、ぼそぼそと、モララーが歌っていたものだった。
( ・∀・)「・・・人と雲の行く果てはー・・・どーこーだーろーう・・・」
( ・∀・)「悩み多き者のー・・・行ーくー果ーてーはー・・・」
( ・∀・)「パノラマの島のー・・・あの上にー・・・あーるー・・・」
( ・∀・)「月の裏のクレーター・・・かもしれーないー・・・」
- 142 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:10:11.30 ID:D8fyJ2h20
('A`)「・・・・・(何歌ってんだコイツ)」
予想もしてなかったことに俺は少し戸惑ったが、
モララーがこちらに気づいていないという事実を積極的に受け止めた俺は、気分が高揚した。
静かに近づき、ポケットからナイフを取り出した。
('A`)「(一撃で、首をかっ裂く)」
('A`)「(そのまま、そのまま呑気に歌っててくれ・・・)」
( ・∀・)「確かなことはわからないけれどー・・・」
そのまま、振り向くなよ。
( ・∀・)「確かなことはわからないけれどー・・・」
背後に立った。
( ・∀・)「確かなことはわからないけれどー・・・」
よし、いける!!殺す!!!
- 146 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:15:14.18 ID:D8fyJ2h20
( ・∀・ ) グルンッ
(゚A゚;) !!??
- 149 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:19:16.46 ID:D8fyJ2h20
心臓が爆発したような痛みを伴って音を打つ。
汗はだらだらと顔を覆い、顎にしたたる。
こいつは俺に気づいていたのか!?
俺がナイフを持って近づいていたのを知ってた上であえてここまで引付けたのか!?
確かなことは・・・わからない。
振り返ったモララーはただ俺を注視していた。
俺はさながら、蛇に睨まれた蛙のように、その場に立ち尽くした。
永遠のようにに感じられた沈黙の後、モララーが不意に口を開いた。
- 151 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:24:46.68 ID:D8fyJ2h20
( ・∀・)「・・・それ、いいナイフだね」
('A`;)「・・・・・・!?」
( ・∀・)「頂戴よ」
突然、モララーが俺の手からナイフを奪った。
俺に抵抗する力は残っていなかった。
( ・∀・)「ふーん・・・」
モララーはナイフを慣れた手つきでくるくる回しながら、
茫然としている俺を残し、屋上から去って行った。
('A`;)「・・・・・・・・・」
- 153 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:28:43.26 ID:D8fyJ2h20
一人残された俺は、しばらく何も考えることができなかった。
俺は負けたんだ。
いや、試合さえ始っていなかったのかもしれない。
やがて、膝と手をつき、声も無く泣いた。
俺は、最後の最後で、あいつを殺せなかったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
- 155 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:33:41.48 ID:D8fyJ2h20
風車の音がぎいと鳴った。
夕日は真っ赤に燃え、山と風車を染め上げていた。
川; ゚ -゚)「・・・・・・」
('A`)「・・・その日から少し経ってから、俺は飛び降り自殺を図った」
川; ゚ -゚)「!!・・・」
('A`)「あいつを殺せないんだったら、死んだ方がましだって本気で思ってたんだ。その時は」
('A`)「運が良かったのか、たまたま下に生えてた木の中にダイブしてね、助かったんだ」
('A`)「病室でのカーチャンの顔は今でも忘れられない。今や俺の数多くのトラウマの一つだ」
川; ゚ -゚)「・・・・・・」
('A`)「受験期にそんな馬鹿やっちまったせいで、俺は無条件で浪人することになった」
('A`)「カーチャンにこれ以上苦労させられないから、次の年に受かった都内の三流私大に行くことになった」
('A`)「・・・でも、中退。気付いたらカーチャンは精神衰弱して入院してた」
川; ゚ -゚)「・・・・・・」
- 157 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:37:22.52 ID:D8fyJ2h20
('A`)「・・・カーチャンが死んで、働かざるを得なくなった俺はハローワークで手に職つけたよ」
('A`)「でもその仕事も辞めて・・・今に至る」
川; ゚ -゚)「・・・」
('A`)「つまんねーだろ?」
川 ゚ -゚)「いや、そんなこと」
('A`)「そうじゃなくて、つまんねー人生だろ?」
川 ゚ -゚)「・・・・・・」
('A`)「ガキの頃の、思い込みにも似たノイローゼで、俺は人生投げちまったのさ」
('A`)「・・・いや、何か他の道もあったのかもしれないな。でも今更遅いことだし」
('A`)「あの頃の俺は・・・本気で、俺の周りの不幸は全部あいつのせいだって思ってたんだ」
川 ゚ -゚)「・・・」
('A`)「昔の俺が異常で今が正常なのか・・・今が異常で昔が正常なのかはわからないけど」
('A`)「ただ言えるのは・・・今の俺は、そういう妄想に憑かれる元気も、若さも、何にも無くしちまった」
- 159 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:42:24.00 ID:D8fyJ2h20
川 ゚ -゚)「・・・」
('A`)「・・・」
('A`)「・・・最後なのにこんなんでごめんな」
川 ゚ -゚)「ドクオは謝る必要はない。私が頼んだことだ」
('A`)「・・・そうか」
川 ゚ -゚)「・・・」
('A`)「・・・」
('A`)「・・・俺みたいにはなるなよ?」
川 ゚ -゚)「・・・」
('A`)「俺みたいな、無駄な人生を送るんじゃないぞ・・・?」
川 ゚ -゚)「・・・」
- 162 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:47:49.86 ID:D8fyJ2h20
川 ゚ -゚)「・・・ドクオの人生は無駄じゃないよ」
('A`)「・・・へ?」
川 ゚ -゚)「・・・私が、させないから」
- 166 名前: ◆vr/kcTmqG2 投稿日:2009/04/30(木) 01:53:19.90 ID:D8fyJ2h20
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
クーはそれから数年後、小説家になった。
風車に住まう男が主人公のデビュー作は某誌新人賞を受賞し、日本に留まらず世界中で愛読された。
その男の生き様が、世界中の人々に涙と感動を与えた。
ドクオのその後は、誰も知らない。
どこかの役人に追い出されてしまったかもしれないし、どこかで野垂れ死んでしまったかもしれない。
確かなことはわからない。確かなことはわからない・・・けど、
一つはっきり言えることは、その町にはまだあの風車があるということだけだ。
日常を這いずり回る人々を、素知らぬ顔して見下ろしながら。
風車男ドクヲ('A`)のようです <完>
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