- 2 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 12:47:32.03 ID:CwALOlkR0
- 選手名鑑風人物紹介
('A`) 毒田剛 26歳 8年目 二塁手
前年成績 率.316 本4 打点41
年棒 6000万
講評
トレード1年目の昨年は3割越えとチームの中心人物に成長。
課題である守備走塁を鍛え、さらに高みへ行けるか。
- 3 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 12:50:18.43 ID:CwALOlkR0
- (K‘ー`) 川島慶三 23歳 5年目 外野手
前年成績 率.279 本9 打点54
年棒 3700万
講評
シュアな打撃と堅実な守備でレギュラーを確保。
9本塁打を放ったパンチ力を伸ばすことができるか。
- 6 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 12:55:12.08 ID:CwALOlkR0
( ^Д^) 宝笑児 28歳 一塁手
前年成績 率.308 本32 点109
前年は全試合4番に座った和製大砲。
後輩たちの面倒見もよく、名実ともにヴィッパーズのリーダーへ。
J( ゚_ゝ゚)し アーロン・ガイエル 38歳 外野手
前年成績 率.245 本38 点93
通称『魔将』。魔空間とか時空間とか空間の名がつくものはとにかく彼の支配内。
- 7 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 12:59:46.21 ID:CwALOlkR0
【あらすじ】
主人公こと毒田剛は不人気球団アクアリウムフィッシャーズのプロ野球選手。
……だったが、トレードで人気球団ニュー速ヴィッパーズに移籍。
そこでなんだかんだで活躍。優勝のサヨナラヒットを打ってしまう。
↑前作ここまで
日本シリーズは結構あっさり負けたヴィッパーズ。
4試合ノーヒットに抑えられた毒田は2009年のストーブリーグに突入していく……
※ストーブリーグ…選手たちが年棒交渉したりトレードされたり移籍したりするとき。
いわゆるオフシーズン。
では本遍はじめるよー
- 9 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:02:53.98 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「……」
秋風吹きすさぶ12月初旬。
俺は、ニュー速ヴィッパーズ球団事務所前にやってきていた。
('A`) 「……お金はどれだけもらえるんだろうなあ」
日本シリーズでは北海スノーフォックスの投手陣の前にお手上げだった。
レギュラーシーズンではそこそこの成績を残した俺だが、さて、どうだろうか。
そんなことを考えながら事務所に入る。
- 12 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:06:13.36 ID:CwALOlkR0
- (K‘ー`) 「あっ、毒田さん。どうも」
ソファに座っていた男が俺にあいさつを交わしてくる。
この男は川島慶三。こいつもプロ野球選手でヴィッパーズのこれからを担う若手選手だ。
……まあ俺も老け顔なだけで若手なんだけどな。一応。
('A`) 「どしたい。生意気日本代表の川島くんが挨拶なんて。脳味噌でも凍ったか?」
(K‘ー`) 「いやあ、こんなんでも一応先輩ですから。一応」
にやにやと笑いながら冗談を飛ばす川島。……冗談だよな?
- 13 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:11:17.64 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「終わったか?」
ソファに座りながら川島に問いかける。
金にはあまり興味のない俺ではあるが、やはり後輩がどれだけ金を貰ってるかは気になるところだ。
(K‘ー`) 「いや、まだです。今は内藤さんが交渉してるんじゃないですかね」
('A`) 「内藤か……」
内藤は俺と同い年のピッチャーだ。将来のエースとしてドラフト指名されたが、すぐには結果はついてこなかった。
土俵際に立たされ背水の陣を敷いたこの年、先発ローテーションを守り切り、9勝を挙げた。
恐らく、年棒アップは確実だろう。
(K‘ー`) 「……もし、もし内藤さんが今年も結果を出せなかったら、どうなってたんでしょう」
('A`) 「……0円提示だろうな」
- 14 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:15:42.20 ID:CwALOlkR0
- 0円提示。早い話がクビだ。
俺も内藤も今年で8年目。使えない選手を高額な年棒で何年も雇えるほど、ニュー速は我慢強くはないだろう。
そんな俺の言葉に川島はため息交じりの笑いを起こす。
(K‘ー`) 「よかったです。内藤さんほどいい人がクビにならなくて」
('A`) 「……そうだな」
しかし安心してはいられない。俺たちプロは常にケガの恐怖にさらされている。
動けない選手、すなわち使えない選手。
有り余る才能をもってしかし、ケガで沈んでいった選手を数多く見てきた。
('A`) 「ここにいられるのは幸運かもな。俺も慶三も、内藤も」
(K‘ー`) 「……そうですね」
- 17 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:22:43.14 ID:CwALOlkR0
- そんな会話をしているうちに内藤が出てきた。
いかにも緊張の糸が切れた、という感じだ。KOされた時のような顔。
( ^ω^) 「ありがとうございました……お」
内藤が俺たちに気づく。
これまたいかにもなスマイルを浮かべながら近づいてきた。
( ^ω^) 「首の皮一枚、だお」
(K‘ー`) 「おめでとうございます。内藤さん」
('A`) 「いくらだ?」
( ^ω^) 「……」
(K‘ー`) 「……」
('A`) 「?」
( ^ω^) 「やっぱり金しか興味ないんだお」ヒソヒソ
(K‘ー`) 「そうですよ。仮にも4200万貰ってるのにあの服ですもん」ヒソヒソ
('A`) 「聞こえてるぞお前ら。あと、この服俺の一張羅だから。バカにすんのやめろ」
- 19 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:28:21.20 ID:CwALOlkR0
- そんなこんなで俺たち仲良し3人組(慶三:違いますよ 内藤:違うお)の契約更改は何の問題もなく終了した。
各人がちょっとづつ年棒アップし、球団幹部の方々から『来年もこの調子でやってくれ』
との言葉も頂いた。
誰がどう見ても、つつがない契約であったことは間違いないだろう。
俺は、思っていた。この球団で、今年のチームで、来年も優勝できるのだろうと。
俺たちが、ヴィッパーズの黄金時代を作るのだろうと。
- 20 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:31:33.57 ID:CwALOlkR0
- 俺は、勘違いしていたんだ。
これは決して、アマチュアの野球ではない。
俺たちはプロフェッショナルなのだ、ということを。
仲がいいのはいい。だが、仲良しこよしではだめなのだ。
プロの自覚。俺はそれを忘れていたんだ。
オフシーズン、ヴィッパーズに吹き荒れる嵐。
この時の俺の浮かれは、嵐の前の静けさに過ぎなかったんだ。
- 22 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:33:28.29 ID:CwALOlkR0
('A`)は野球選手のようです
- 23 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:39:34.44 ID:CwALOlkR0
- 契約更改も終わり、あとはベテラン選手の更改を残すのみとなった12月下旬。
世間では早くもクリスマスの足音が聞こえてくる。
やめてくれ。俺はまだ魔法使いでいたいのだ。クリスマスの一週間も前から俺のHPを奪おうたってそうは……
('A`) 「はぁんっっ!!」
そんな俺の現実逃避はポッケに入りっぱなしだった携帯の音でかき消された。
着信の名前を見る。内藤。……なんだろうか。
('A`) 「はい、もしも(;^ω^) 『ドクオ! いまどこだお!?』
耳がキーンとした。あのデブ、声が大きいんだよ。
(;'A`) 「なんだよ、大声出すな」
(#^ω^) 『いいから! いま、どこにいるんだお!?』
- 24 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:43:32.45 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「……家だよ、悪いか」
どうせ彼女持ちのこいつのことだ。クリスマス前に彼女もいない俺に嫌みのひとつでも言うつもりなのだろうか。
(;^ω^) 『なら、テレビをつけろ! 今、すぐに!!』
('A`) 「……」
なんだろうか、クリスマス特集でもやっているのだろうか……
と、考えるほど俺は鈍感ではないつもりだ。
こんな時期に息も絶え絶えにテレビをつけろと言ってくる同僚。
これで本当にクリスマス特集だったら、ぶん殴ってやろう。
いやな予感を抑えつつ、テレビをつける。
- 25 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:49:17.49 ID:CwALOlkR0
- 結論から言うと、嫌な予感は当たった。いや、当たりすぎた、というべきか。
こういうときの俺の予感は嫌というほど当たるのだ。
内藤をぶん殴れるのなら、どれだけ好かったろう。
受信を開始したテレビが映し出したのは芸能ニュース。
そこには。
( ><)『これは……球界に激震が走るでしょうね』
( ゚∋゚)『走っている、というほうが適切でしょうね』
('A`) 「……」
( ><)『ニュー速ヴィッパーズ・喪名監督が緊急入院しました。病名等は不明です。追ってお知らせします』
我らが将が、病に臥せった知らせだった。
- 28 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 13:56:57.67 ID:CwALOlkR0
- ( ^ω^) 『見たかお?』
('A`) 「……ああ」
( ^ω^) 『監督……どうなるのかお』
('A`) 「……」
喪名監督とは、去年1年しか志をともにしていない。
しかし、その1年だけでも監督がいい人であることはわかったし、不調の時には声を何回もかけてもらった。
内藤は喪名監督がコーチの時からの付き合いだ。
監督に対する思い入れも俺よりはるかにあるはずだ。
('A`) 「……なにかしら、球団からあるはずだ。それまで、待とう」
( ^ω^) 『……』
それだけ言うのが、精一杯だった。
- 33 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:08:16.97 ID:CwALOlkR0
- 結局、球団から呼び出しがあったのはそれから2日後だった。
その間、芸能ニュースは次期監督の話題などあることないことが囁かれていた。
('A`) 「……」
球団事務所の大会議室を見渡す。
コーチ、選手が勢ぞろいしている。
見れば、母国に帰っているはずのアーロンや、朴さんの姿も見えた。
J( ゚_ゝ゚)し 「ドクオ! 久々やな」
('A`) 「アーロン……カナダに帰ってたんじゃ」
J( ゚_ゝ゚)し 「ボスの一大事に黙ってられるか? 家族もいい日本観光の口実って言ってついてきてくれたわ」
この気さくな関西弁の外人はガイエル。
昨年は38本のホームランを放ち、中心選手として活躍した。
- 34 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:13:02.78 ID:CwALOlkR0
- J( ゚_ゝ゚)し 「どうなんやボスの容態は」
('A`) 「さあ……ニュースは逃さず見てたんだけど」
<ヽ`∀´> 「容態の情報は、ないか」
('A`) 「朴さん……」
続けて話しかけてきたのは韓国の大打者、朴さん。
インターネット上では韓国人というだけでひどいことが書かれているが、実際は気さくでいい人だ。
J( ゚_ゝ゚)し 「よおニダ。お前も帰ってきたんか」
<ヽ`∀´> 「ええ。韓国なら日本に近いですから」
- 36 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:19:17.01 ID:CwALOlkR0
- そんなこんなで話しているうちに喪名監督の親友であり、側近とされる荒巻守備走塁コーチが会議室の壇上に立った。
ざわざわと騒がしかった部屋が、しんと静まる。
/ ,' 3 「あ、あー。諸君。オフシーズンに呼び出してしまってすまない」
J( ゚_ゝ゚)し 「……」
/ ,' 3 「今日呼び出した理由は……わかっているな。喪名監督が倒れた」
<ヽ`∀´> 「……」
/ ,' 3 「君らも曖昧模糊とした情報では、来年度最高のパフォーマンスができないだろう。だからはっきり言おう」
('A`) 「……」
/ ,' 3 「予断を許さない状況だ。回復しても、心労が溜まる監督業は恐らく不可能だ」
- 37 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:24:42.03 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「……」
わかっていた。喪名監督は、高齢だ。
たとえ回復しても、すぐに現場復帰できるほどプロの監督業は甘くない。
わかっていても、実際に口に出して言われると、なかなか来るものがある。
/ ,' 3 「しばらくは……監督代理として、わしが入る。空いた守備走塁コーチには2軍の未奈を入れる」
(-_-) 「……監督の病名を教えてくださいますか」
荒巻……監督代理の言葉に、ヴィッパーズの正捕手である比木さんが口を挟む。
向こうもそんな質問が来るのはわかってたんだろう。
医者が出てきて喪名監督の病状を説明する。
しかし俺はその説明を聞く気にはなれなかったし、多分真剣に聞いても理解できなかったと思う。
気づけば、解散の号令がかかっていた。
- 39 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:28:56.49 ID:CwALOlkR0
- <ヽ`∀´> 「立てるか?」
椅子に座ったままの朴さんが俺に声をかけてくれる。
手を差し伸べてくれる。俺は少し迷った後、朴さんの手を借りた。
手を借りずに、立てる自信がなかったからだ。
('A`) 「俺らは……どうすればいいんでしょう」
<ヽ`∀´> 「……さあな。俺らができることは、野球ぐらいのもんだからな」
('A`) 「……優勝が、喪名監督への薬なんでしょうか」
<ヽ`∀´> 「……」
('A`) 「優勝、しましょうね。喪名監督のために」
そう言って再び朴さんに握手を促す。
朴さんは握り返してくれる、そう思っていた。
- 40 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:31:55.94 ID:CwALOlkR0
- <ヽ`∀´> 「……そのことなんだがな」
朴さんは、俺の差し出した右手を悲痛な面持ちで見つめる。
そして、ポツリと話しだした。
<ヽ`∀´> 「俺は多分、来年ヴィッパーズにはいない」
一瞬何を言っているのかわからなかった。
俺は思わず、朴さんの顔をバッと見上げた。
- 43 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:38:08.28 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「契約が、難航している……?」
<ヽ`∀´> 「ああ、俺の代理人によるとそうらしいな」
朴さんは、韓国から鳴り物入りでやってきた選手だ。
もちろん、年棒もそれなりに高い。元三冠王である諸本さんが引退した今、チームで一番年棒を貰っているのは朴さんだ。
<ヽ`∀´> 「今年はやや復調したとはいえ、まだまだふがいない成績だからな」
('A`) 「……」
<ヽ`∀´> 「代理人は年棒ダウンを受け入れていない。代理人も仕事だからな」
('A`) 「……朴さんは」
<ヽ`∀´> 「……」
('A`) 「……それでいいんですか」
<ヽ`∀´> 「……」
朴さんは、結局答えてくれなかった。
ニュースで朴さんの自由契約が報じられ、そして朴さんの東京ビックバンズ入団が報じられたのは、そのすぐ後だった。
※自由契約…いわゆる解雇。これを受けた選手は他球団からのオファーを待つ。
- 45 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:43:57.06 ID:CwALOlkR0
- さらに、ストーブリーグでは大きな動きがあった。
ヴィッパーズの生え抜き選手であり、チームの精神的柱となっている茂等さん。
茂等さんとは仲良くさせてもらってるし、俺の苦手な守備練習に付き合ってくれている。
( ・∀・) 「……75%ダウンの、3200万でサインしました」
その茂等さんが、大幅な年棒ダウンを受けた。
そして、もうひとつ。
(K‘ー`) 「毒田さん……僕、ショートにコンバートするんです」
- 47 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:48:04.96 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「は?」
素っ頓狂な声をあげてしまう。
その言葉を聞いたのは川島と年明けの自主トレのときだ。
(K‘ー`) 「荒巻コー……監督代理に言われました。お前はショートのほうが合ってる、と」
('A`) 「……いやいやいや。ショートは茂等さんのポジションだろう」
(K‘ー`) 「……若手起用する、と」
('A`) 「!」
茂等さんは今年で37歳になる。そろそろ引退の文字がちらつく年齢だ。
本人も実際、そんなことを口にした時があった。
(K‘ー`) 「若手起用ってことはつまり……」
そう。ベテランでのびしろが望めない茂等さんに代わって、23歳と若い川島を起用する。
それは、なんの矛盾もないように見える。
- 48 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:51:10.83 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「……」
慶三がショートに入る、ということは、セカンドである俺とコンビを組むということだ。
今までは茂等さんと二遊間を組むことが多かった。守備の鉄人である、茂等さんと。
それが、急に慶三。慶三は外野守備はうまいが、ショートの実力は未知数だ。
('A`) 「慶三、ショートしたことあるのか?」
(K‘ー`) 「いえ……遊び程度でしか」
('A`) 「遊撃手だけに、ってか」
(K‘ー`) 「……」
('A`) 「すまん」
- 49 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 14:55:23.11 ID:CwALOlkR0
- 今思えば、俺はこの時とんでもない勘違いをしてたんだと思う。
茂等さんが、そう簡単にレギュラーを諦めるはずがない。
かといって、若手起用なら少々慶三がミスしたところでベテランの茂等さんが割って入れる保証はない。
なら、茂等さんがどこの椅子を狙ってくるか。
そんなことは少し考えればわかるはずなのに。
俺は何の根拠もなく茂等さんを信じていたのだ。
『茂等さんは俺の椅子をとらない』と。そんなことを思っているのはプロ失格だというのに。
慶三からのコンバートの知らせを受けた数日後。
スポーツ新聞にこんな記事が出た。
『川島ショートに、茂等セカンドにコンバート!!』
※コンバート…メインの守備位置を変更すること
- 52 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:07:44.74 ID:CwALOlkR0
- その他にも新外国人のマリントンの入団が報じられ、いろいろなものを飲み込んでキャンプが始まった。
集合場所には空港行きのバスが数台用意されている。
この時が、ああ俺もまたひとつ年をとったんだな、と感じる時期だ。
( ^ω^) 「今年は去年ほど緊張してないお」
('A`) 「俺がか? トレード初年度ほど緊張してたらおかしいだろ」
( ^ω^) 「それにしても去年のドクオの緊張のし方は傑作だったお」
('A`) 「ふん、やっぱり陰で笑ってやがったんだな」
( ^ω^) 「陰じゃないお。ちゃんと目の前で笑ってやってるお」
('A`) 「余計悪いわ。……お、あれは、アーロンか?」
はるか向こうから、大柄な体が2つのしのしと歩いてくる。
……片方はガイエルで間違いなそうだが……
('A`) 「もう片方、誰だ?」
( ^ω^) 「……あ、あれだお。新外国人の」
('A`) 「……ああ」
- 54 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:12:37.81 ID:CwALOlkR0
- 新外国人の、キバラ・マリントン。
朴さんが守っていたサードを新たに守ることになるであろう存在だ。
今までアーロン、朴さんと外国人とは仲良くしてきたからマリントンとも仲良くしたいものである。
('A`) 「……?」
( ^ω^) 「……なんか、変?」
アーロンは気さくな人間である。
誰であろうが全力で話しかけるし明るいキャラは俺たちだけでなくファンからも親しまれている。
そんなアーロンなのだが……同じカナダ出身であるマリントンと、一言も会話を交わしていない。
よく見ると、板ばさみになっている通訳さんが気まずそうな顔をしている。
('A`) 「……なんで、会話もなにもしてないんだ?」
- 55 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:18:49.06 ID:CwALOlkR0
- そんなことを考えていると、2人はこちらに近づいてきている。
とりあえず、初対面の人間には挨拶が重要だ!
ここで俺のマリントン内の評価が決まるんだ!
笑え、俺! 全力プレーだ!
('∀`) 「はろー、キバラ、アーロン!」
決まった。さりげなくファーストネーム!
これで新外国人の評価もバッチリゲットや!
J( ゚_ゝ゚)し 「……よう、ドクオ」
アーロンは若干引きながらも返事を返してくれた。
さあ、マリントンは!
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「Is luggage good here?」
通訳「yes.」
(;'A`) (無視して荷物バスに入れてる――!!)
- 58 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:24:27.76 ID:CwALOlkR0
- いや待て、ひょっとしたら聞こえなかっただけじゃないのか?
それなら無視して荷物の処理をしてるのにも納得がいく。
ええい、もう一度だ!
('∀`) 「ないすとぅみーとぅ、キバラ!」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
('∀`) 「……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
('A`) 「……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
('A`) (死にたい)
うっわー、なんだこの空気。誰だよ聞こえなかっただけとかいった奴。
完全シカトモードじゃん。心が痛いわ。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「I only came here to play baseball. 」
('A`) 「……?」
マリントンはそれきり、イヤホンを耳にはめてバスに乗り込んでしまった。
- 60 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:29:38.47 ID:CwALOlkR0
- J( ゚_ゝ゚)し 「……あんまりあいつにかかわらんほうがええよ」
('A`) 「アーロン?」
少しびっくりした。
アーロンが人のことを悪く言うのを聞いたのは(冗談を除いて)初めてだったからだ。
( ^ω^) 「マリントンさんと知り合いなのかお?」
J( ゚_ゝ゚)し 「……ああ」
アーロンはたったそれだけ簡潔に答えると、マリントンが乗り込んだバスと違うバスに乗ってしまった。
後には俺たち2人だけが残される。
('A`) 「……マリントン、最後俺になんて言ってたんだ?」
( ^ω^) 「……中学校レベルだお」
('A`) 「うるさいよ」
高卒なんだから仕方がない!
その高卒資格だって単位がちょっと足りなかったけど無理やり……内緒だぜ?
( ^ω^) 「『俺はここに野球だけをしに来た』だお」
('A`) 「……」
- 62 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:36:18.40 ID:CwALOlkR0
- 沖縄の空港に着く。
やはり沖縄は本州に比べて暖かい。
空港の歓迎セレモニーで俺だけあの首にかけてもらう花をくれなかったりしたけど、私は元気です。
('A`) 「……」
(K‘ー`) 「うわーwwwwwwwこの花いい匂いですねwwwwwwwwwww」
( ^ω^) 「ハイビスカス?ハイビスカス?wwwwwwwwwww」
(K‘ー`) 「本当に綺麗な花だwwwwwww押し花にしようかwwwwwww家にwww飾ろうかwwwwww」
( ^ω^) 「っひょーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
空港から宿舎に向かうバスの中でも、俺は元気です。
- 63 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:43:08.55 ID:CwALOlkR0
- (K‘ー`) 「ああwwwwwww花粉が首にwwwwwwwまいっちんぐwwwwwwwwwww」
( ^ω^) 「受粉wwwww受粉wwwwwwwおしべとめしべwwwwwwwwwwwwwww」
('A`) 「ちょっと散歩に行ってくるわ」
宿舎についた当日はオフだ。
本格的にキャンプインするのは明日から。
明日からは地獄の猛練習が始まるのだ。今日ぐらい散歩しても罰はあたらんだろう。
……花をしこたま摘んでやろうとは思ってない。決してない。
('A`) 「……」
やはり、沖縄は暖かい。
俺の心はちっとも暖かくない、というか現在進行形でブリザード吹いてるけど。
「おーい」
あ、だめだ。あいつら殺したい。木製じゃなくて金属バットなら確実に殺せるのに。
「おーいってば」
よし、殺そう。花の恨みも実は怖いってことを思い知らせてやる。
(´;ω;`) 「無視すんじゃねえよバカ野郎!」」
- 64 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:47:16.82 ID:CwALOlkR0
- 俺の前に立ちはだかったのは元ヴィッパーズの三冠王、諸本信彦さんだった。
去年、スランプに陥り、引退を決めた大先輩だ。
('A`) 「どうしたんですか? もう諸本さんは野球選手じゃないでしょ?
それならキャンプしなくたって平気ですよ。それとも引退したこと忘れました? ボケですか?」
(´;ω;`) 「失礼なこと言うな! 誰がボケ老人だ! 解説者だよ解説者!!
解説者としてキャンプレポートしに来たんだよ!!」
俺の目の前で泣きじゃくる37歳児。
……とてもじゃないがあの強かな茂等さんと同級生には見えん。
- 65 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 15:52:20.47 ID:CwALOlkR0
- (´・ω・`) 「大変だったな……監督」
('A`) 「そうですね」
(´・ω・`) 「どうなってる?」
('A`) 「俺に報道機関以上の情報はありませんよ」
あの後、監督は手術を受け、術後は良好らしい。
親類以外面会謝絶の状態なので、まだ監督とは話ができていない。
でも、もうすぐ話をするぐらいならできるようになるそうだ。
(´・ω・`) 「俺も喪名監督にはお世話になったからな。新情報があればリークしてもらおうと思ったんだが」
('A`) 「俺がそういうのに疎いのは知ってるでしょー」
諸本さんのおごりの喫茶店のアイスコーヒーをチュゴゴ、とすすりながら返答する。
少し肌寒い。ホットにしとけばよかったか。
(´・ω・`) 「茂等はどうだ?」
その言葉に、思わずコーヒーをすする口を止めてしまった。
- 69 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:05:13.45 ID:CwALOlkR0
- 茂等さんのセカンドコンバート。
守備走塁が苦手な俺にとっては難敵だ。
セカンドは守備機会が多いポジション。
やはり守備に難のある選手より鉄壁の茂等さんが入るほうがいいに決まってる。
……しかし。
('A`) 「……俺も、先輩に気遣うつもりなんて全然ありませんから」
そういうと、諸本さんは目を丸くして。
(´・ω・`) 「ふ……ふふふ。そうか、そうだよな! うん、年寄りに負けんなよ!」
('A`) 「ちょ、痛いです痛い」
背中をばしばし叩いてきた。引退したとはいえシーズン40本を打ったこともある怪腕だ。
俺の背中にはくっきりと紅葉がついた。
その紅葉が『レイをねだった時にキャンペーンガールにつけられた紅葉』ということになるまでにそんなに時間はかからなかった。
やっぱ死にたい。
※レイ…首にかけてもらえる花のアレ。
- 70 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:15:15.83 ID:CwALOlkR0
- さて、キャンプなのだが、特に何もなく進んでいった。
肩の手術をした高岡さんが奇跡的(本当に奇跡と呼べる確立らしい)な回復を見せ、
内藤はバッチリの仕上がりを見せた。
俺も茂等さんという競争相手ができた影響か、いつものキャンプよりも締まった練習ができたように思う。
そして、キャンプもいよいよ最終クールを迎えた。
N| "゚'` {"゚`lリ 「集合」
打撃担当である阿部コーチの声で1軍キャンプ帯同の40人が集まる。
いよいよ紅白戦が始まるとあって、みんな緊張の面持ちだ。
当然である。ここでの結果次第で開幕1軍か2軍かが決まるのだから。
N| "゚'` {"゚`lリ 「みんなお疲れ様。いよいよ明日は紅白戦だな
今年はオフシーズンからゴタゴタして大変だったろうが、よくここまで俺のれんs……調教に耐えてきた」
( ゚д゚ ) 「阿部、逆だ逆」
新たに守備走塁コーチとなった未奈コーチが口を挟む。
- 73 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:21:44.80 ID:CwALOlkR0
- N| "゚'` {"゚`lリ 「まあとにかく。紅白戦で今までの1カ月積み重ねた物を見せてくれ」
( ゚д゚ ) 「40人から開幕ロースターに残れるのは28人。後の12人は残念だが2軍スタートしてもらう」
N| "゚'` {"゚`lリ 「うむ。今日はよく眠ることだな。では、解散」
その言葉で三々五々、チームメイトが散っていく。
マッサージを受けにいくもの、さらに居残り練習の用意をするもの、一刻も早く宿舎に帰ろうとするもの。
俺はそのどれでもなかった。会話したい相手がいたから。
('A`) 「……茂等さん」
( ・∀・) 「……」
思えば、去年のキャンプはひたすら茂等さんと一緒にいた。
しかし今年は違う。今年は茂等さんなしで、自分の弱点と向き合った。
スタメン争いに負ける気は、しない。
- 74 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:26:32.77 ID:CwALOlkR0
- ('A`) 「負けませんから」
( ・∀・) 「……俺だって、だ。お前のことは人間的に好きだがな」
俺は、左手を茂等さんに差し出す。
茂等さんは少しだけ、戸惑った表情を浮かべる。
( ・∀・) 「左手の握手か。……意味わかってんだろうな?」
('A`) 「もちろん。……宣戦布告、です」
( ・∀・) 「……」
茂等さんの端正な顔立ちがニヤリ、と笑う。
そして、あらんかぎりの力で握ってきた。俺も負けじと握り返す。
(#・∀・) 「……」
(#'A`) 「……」
( ・∀・) 「……ふっ」
('A`) 「……ふふっ」
- 75 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:30:05.08 ID:CwALOlkR0
- (*・∀・) 「ははははははは!! いい年こいて何やってんだ俺ら!!」
(*'A`) 「ははは!! 何って、宣戦布告です!!」
(*・∀・) 「そうか!! あはははは!!」
俺たちはあまりの自分たちの子供らしさに、笑い転げていた。
それを、見る影が2つ。
N| "゚'` {"゚`lリ 「あの2人、ゲイなのかな?」
( ゚д゚ ) 「違うと思う」
N| "゚'` {"゚`lリ 「いや、もしかしたら……」
( ゚д゚ ) 「手ぇ出したらクビだぞ」
N| "゚'` {"゚`lリ 「……やめとく」
- 77 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:35:13.70 ID:CwALOlkR0
- 紅白戦前日 宿舎・毒田の部屋
午後23:23
('A`) 「……ふあぁ」
そろそろ眠くなってきた。
阿部コーチの進言もあったし、そろそろ眠るべきか。
明日の用意を確認して、ベッドに入る。
('A`) 「……」
ああ、いい感じの眠気だ……
羊が一匹……二匹……zzz……
(;'A`) 「るろぉん!!」
そんなまどろみから引き戻されたのは電話の着信音だった。
せっかく眠りかけてたのに!! 誰だ俺の安眠を邪魔する奴は!! ぶっ殺すぞ!!
- 78 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:37:19.67 ID:CwALOlkR0
- 着信:伊藤紅
(゚A゚) 「前言撤回ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっぃ!!!!!!」
音の速さで通話ボタンを押す。
はい深呼吸ー、ひっひっふー、ひっひっふー。
(゚A゚) 「もしもし!!!!!!!!!!!」
※伊藤紅さん…毒田が好きで狙ってる女性。顔はこんなん→('、`*川
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 16:44:41.73 ID:CwALOlkR0
- ここでみんなに説明しておこう。
って、みんなって誰だろうね。まあいいか。
ttp://hoku6363.fool.jp/yakilyu-doku/yakilyu-doku06/itou-penisu-02.html
↑これを読んでいただければわかるのだが、俺はあの日、告白する気で伊藤さんを家に招待した。
その時の様子をダイジェストでお送りしよう。
(;'A`) 「あ、あの……俺、伊藤さんのことが……」
('、`*川 「えっ……」
('A`) 「す、す……」
('、`*川 「……がんばってください」
('A`) 「す……J( ゚_ゝ゚)し 「はっぴぃぃぃぃぃぃぃぃっぃぃぃぃぃぃxにゅういやああああああああああああ!!!!!!!!!」
(゚A゚) 「!?」
(K‘ー`) 「あけましておめでとうございまああああああああああああああああああああああああすwwwwwwwwwwwwww」
( ^ω^) 「駆けつけ一杯!! 駆けつけ一杯!!」
('、`*川 「……」
新年祝いで浮かれたバカ3人どもが俺のマンションに突撃してきたのだ。
お前らドアのカギは開けっ放しだったからしょうがないとしてオートロックはどうした。
- 82 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:49:19.17 ID:CwALOlkR0
- ……まあ、そのあとは伊藤さんも一緒になって騒いで楽しかったんだけど。
それから何となく伊藤さんを誘いづらくなってあまりメールや電話も交わしてなかったのだ。
以上、説明終わり!
(゚A゚) 「どうしたんですか!?」
『いえ……最近電話してなかったので……迷惑でしたか?』
正直寝てるとこでした! とかいうような俺ではない。俺ではないぞ。
俺はここでエラーするわけにはいかんのだ。
(゚A゚) 「とんでもない! 伊藤さんの電話なら丑三つ時だろうがワンコール以内で出ます!」
- 83 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:52:31.08 ID:CwALOlkR0
- それから、俺たちは夜の2時ぐらいまで電話しあった。
……慶三あたりが聞いたらどんな中学生だとバカにするんだろうな。
そして、電話がひと段落し……
('A`) 「寝れん」
すっかり目が冴えてしまった。
これで開幕2軍スタートになってしまったらどうしよう。
……どうしよう。マジで。
('A`) 「羊が3719匹……羊が3720匹……比木が3721匹……zzz……」
結局俺が寝れたのは少し空が白んできた時だった。
……これじゃ睡眠というより仮眠だな。
- 85 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 16:59:24.28 ID:CwALOlkR0
- 紅軍 (成績は去年のもの)
1 二 毒田 ('A`)
.316 4 41
2 遊 浜田
.273 0 4
3 三 マリントン |;;;;| ,'っノVi ,ココつ
.213 8 31 (MLB)
4 左 伊陽 (=゚ω゚)
.287 27 86 (2軍)
5 一 岡本
.500 0 0
6 中 擬古 (,,゚Д゚)
.246 0 27
7 捕 比木 (-_-)
.263 7 32
8 右 鈴木
.278 9 65 (2軍)
9 投 内藤 ( ^ω^)
9勝 9敗 防3.67
- 86 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 17:05:26.46 ID:CwALOlkR0
- 白軍 (成績は去年のもの)
1 二 茂等 ( ・∀・)
.218 2 19
2 遊 川島慶 (K‘ー`)
.279 9 59
3 右 ガイエル J( ゚_ゝ゚)し
.245 38 93
4 一 宝 ( ^Д^)
.308 32 109
5 左 浜中
.278 14 65 (2軍)
6 三 志摩
.268 4 39 (2軍)
7 捕 和手枡 ( <●><●>)
.213 2 17
8 中 松山
.257 7 24 (2軍)
9 投 高岡 从 ゚∀从
4勝 6敗 防4.18
- 87 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 17:10:45.39 ID:CwALOlkR0
- 荒巻監督代理の言葉も終わり、白の選手が守備につく。
俺は紅軍の1番。白軍の1番は茂等さんだ。
これ以上わかりやすいものはないぐらいの対比。あからさまに比べられている。
('A`) 「……上等」
バッターボックスに立ち、マウンドの一昨年の20勝投手高岡を見つめる。
去年はケガで不本意な結果に終わってはいるが、まさか実力がたったシーズン4勝ではないだろう。
肩もオーバーホールして絶好調らしい。これ以上ないアピール相手だろう。
从 ゚∀从 「……」
ロージンをぽんぽんとつけ、俺を見る高岡さん。
その目は真剣勝負のそれだ。
『プレイボール!!』
審判の高らかな声が、響き渡った。
- 92 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/12(土) 17:31:17.31 ID:n+P+drXQO
- ('A`)「……」
初球は見逃す。
いくら紅白戦とはいえ、今年の実戦初打席だ。
まだまだ目が追いついてない部分がある。
ストレートだが、140キロは出ているだろうか。
高岡さんの本来の投球に近いかもしれない。
从 ゚∀从(よしよし、今年はいけそうだな)
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 17:34:12.67 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从「こいつはどうだっ」
('A`)「!」
鋭く、大きく曲がるスライダー。
ボールゾーンに落ちていくボールだが、思わず手がでる。
空振り。早くもツーストライク。
('A`)(追い込まれた……)
高岡さんには伝家の宝刀のフォークがある。
あれは一打席でどうにかできるものではない。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 17:37:57.76 ID:n+P+drXQO
- 3球目は外れてボール。
カウントが整っての4球目。
从;゚∀从「!」
('A`)「!」
球の縫い目が見えた。
フォークのすっぽ抜け。
失投だ。
从;゚∀从(やべえっ!)
('A`)「もらった!」
いくら目が慣れてないとはいえ、3割打者である。
真ん中周辺の失投は、見逃さない。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 17:43:38.32 ID:n+P+drXQO
- 俺はレフト前ヒットでノーアウトランナー一塁。
2番の浜田がきっちりバントを決め、俺は2塁へ。
そして右打席に立つのは――
J( ゚_ゝ゚)し『あいつには関わらん方がええで』
アーロンに言われずとも、あちらからも関わろうとはしてこなかった。
打撃投手とすらあまり話さず、マシン相手に黙々と練習していた元メジャーリーガー。
『3番サード、マリントン』
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 17:48:40.69 ID:n+P+drXQO
- |;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……」
ゆらゆらとバットを構え高岡さんを見る。
かつてはメジャーでシーズン20本のホームランを打ったこともあるらしい。
しかし最近は不振で解雇、ヴィッパーズと契約した。
性格はアーロン曰く、プライドが高い完璧主義者らしい。
从 ゚∀从(一応メジャーリーガーだからな。慎重に行こう)
( <●><●>)(わかりました)
高岡の提案に和手枡も頷く。
1球目、大きく曲がるスライダー。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 17:53:52.91 ID:n+P+drXQO
- しかし空振り。
マリントンのバットはボールの遥か上を振り抜いた。
从 ゚∀从「……」
( <●><●>)(まったく見えてませんね……)
从 ゚∀从「……」
もう一度同じ球。
あっけなく空振り。
('A`)「……ありゃだめだな」
完全に高岡のスライダーに泳がされている。
まったく球筋が見えていない。
あれではヒットどころか前に飛ばすことすら厳しい。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 17:58:55.81 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从(見せ球もいらねえな)
( <●><●>)(3球で決めましょう)
捕手である和手枡が選択したのはフォーク。
高岡の得意球だ。ストライクからボールになるコースにミットを構える。
从 ゚∀从「おらっ!」
( <●><●>)(よしっ!)
完璧な球。
自分が構えた所に確実に近づいてくる。
マリントンのバットが動く。
しかし、これはボールになる球――
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ぬぅん!!」
マリントンの黒いバットは、そのボールになる球を捉えた。
高々とレフトに上がっていく。
从;゚∀从「うぇっ!?」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:02:29.52 ID:n+P+drXQO
- 『ファール!!』
――そのボールは、レフトポールの僅か左を通過した。
飛距離は十分。僅かな差だった。
从 ゚∀从(毒田に投げたような失投じゃない、完璧なフォーク)
( <●><●>)(それをあそこまで……)
('A`)(さすがメジャー、か?)
そう毒田が感心した次の瞬間。
マリントンはアウトローいっぱいを見逃し、三振に倒れた。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:09:49.85 ID:n+P+drXQO
- (;=゚ω゚)「ま、回って来ちゃったよぅ……」
彼の名は伊陽。プロ3年目の25歳だ。
大学リーグ本塁打王の打棒を買われてプロ入り。
そこから彼の挑戦が始まった。
大学の投手とは比べモノにならないプロの変化球。
まずはそれに慣れるのが第一だった。
(;=゚ω゚)「お、おちつくよぅ、深呼吸だよぅ、ひっひっふー、ひっひっふー」
そしてプロ2年目の昨年、イースタンリーグで本塁打王に輝いた。
その実績が認められて今年初の一軍キャンプに参加した。
(;=゚ω゚)「そこまではいいよぅ……」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:16:08.57 ID:n+P+drXQO
- そして、紅白戦。
若手起用でスタメンに入ることは約束されていた。
しかし。
N| "゚'` {"゚`lリ「ショタっ子かわいいよショタ……おほん、4番伊陽」
(;=゚ω゚)「うぇっ!?」
スタメン発表の時にしこたま驚いた。
先輩達を差し置いて、4番。
特にメジャーリーガーのマリントンを差し置いて。
N| "゚'` {"゚`lリ「お前はちゃんと育てたいから……ああ……驚いた顔も……ウッ」
(;=゚ω゚)「ええー……」
そんな感じで紅白戦ながら4番に据えられてしまったのだ。
そういえばあのあと阿部コーチはなんだか真剣な表情を崩さなかったな。
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:21:26.92 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从(さて、若い芽は潰すか)
( <●><●>)(高岡さん……)
从 ゚∀从(ここで潰されて這い上がってこなけりゃそれまでさ)
( <●><●>)「……」
(=゚ω゚)「うぅ……」
素振りをする伊陽。
その素振りは素人が見てもプロのそれには見えない。
('A`)(緊張してるな……)
バラバラのフォーム。
あれでは高岡は打てない。
そこから何を学ぶか。これは実戦形式ではあるが実戦ではない。
胸を借りて開き直ればいいのだ。
('A`)(ま、それにいつ気づくかだな)
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:24:50.74 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从「……」
右腕をしならせた渾身のストレート。
それは左打席に立つ伊陽のインハイに決まる。
(;=゚ω゚)(はえぇwパネェw)
スピードガンは143キロ。
しかし伊陽の目には150キロを越えているように見えた。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:31:40.96 ID:n+P+drXQO
- (;=゚ω゚)「……」
2球目もストレート。
バットを出すどころか、球すら見えない。
从 ゚∀从「おらっ!」
(=゚ω゚)(! 遅い!)
バットを出す。
しかしそのバットは呆気なく空を切った。
(;=゚ω゚)「フォーク……」
20勝投手高岡の必殺技。
それを自分が……打てるわけが……
('A`)「気にすんな」
(=゚ω゚)「へ?」
('A`)「一打席三振しただけでヘコむな。そんなんでヘコんでたら俺なんて何回ヘコめばいい」
(=゚ω゚)「……」
('A`)「三振したなら反省しろ。んで、何かを掴め」
(=゚ω゚)「……わかりました」
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:40:13.81 ID:n+P+drXQO
- 回は変わって白軍の攻撃。
我らが紅軍の先発はチキンハート日本代表の内藤だ。
( ^ω^)「それは卒業したつもりだお」
('A`)「どうだか」
口ではこう言うが、俺は内藤はチキンハートを卒業したと思っている。
昨年終盤の内藤は見ていて安心感があった。
今年がどうなるかで内藤の野球人生が決まるだろう。
('A`)「ま、上位打線はレギュラークラスだからな。締まっていけよ」
( ^ω^)「言われなくても」
その言葉を聞いて、守備につく。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:43:35.37 ID:n+P+drXQO
- ( ・∀・)「……」
1番は茂等さん。
さっき俺はヒットを打った。
間違いなく燃えていることだろう。
( ^ω^)「……」
1球目。
内藤自慢のストレート。
この時期から140キロ後半の球。
コントロールも申し分なさそうだ。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:49:10.26 ID:n+P+drXQO
- ( ^ω^)「……」
2球目。
縦に大きいカーブ。
カウントを稼ぐのに最適の球だ。
しかし。
( ・∀・)「ほっ」
まったく引っ張らず、流れに任せた右打ち。
一二塁間を転々と転がるが、一塁手の範囲ではない。
(;'A`)「ぐっ……」
しかし、肝心の俺は初動が遅れた。
深いところで捕球する。しかし取った時には既に茂等さんは一塁を駆け抜けていた。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 18:56:58.76 ID:n+P+drXQO
- (;^ω^)「……」
盗塁王にも輝いた経験がある茂等。
加齢により衰えたとはいえ、クイックが不得手な自分から盗塁するのは簡単だろう。
何回か牽制を入れる。
(K‘ー`)「……」
右打席には慶三。
シュアなバッティングが持ち味だ。
そして第一球――
('A`)(!)
(;^ω^)「!」
茂等の初球スチール。
そして――
(K‘ー`)「もらいます!」
慶三も、バットを振り抜いた。
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 19:01:02.29 ID:n+P+drXQO
- |;;;;| ,'っノVi ,ココつ「っ!」
しかし、ライナーの打球はサードマリントンのグラブへ。
もちろんスタートを切って飛び出していた茂等も戻りきれずアウト。
(;^ω^)「助かった……」
思わずポツリと、本音がこぼれた。
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 19:06:54.56 ID:n+P+drXQO
- そして続くガイエルは三振。
内藤の2010年初実戦での初回。わずか7球で終わった。
123 456 789 R
紅 000 025 000 7
白 000 120 100 4
そして9回を終えて勝ったのは我が軍。
俺のスリーラン、マリントンのツーランも飛び出した。
対する茂等さんはヒットは初回の一つだけ。
とりあえずの勝負は俺に軍配が挙がったと言っても過言ではない。
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 19:10:20.22 ID:n+P+drXQO
- ( ^Д^) 「あー、皆さんお疲れ様でした。この調子のままオープン戦、シーズンと行きましょう」
春期キャンプ最終日。
選手会長である宝さんを中心に輪になる。
( ^Д^) 「んだらば一本締めで。……いょーぅ」
(=゚ω゚)「?」
パンッ、という乾いた音が鳴り響く。
俺は、あの地獄のノックから解放されたことで頭がいっぱいだった。
- 156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:12:02.00 ID:n+P+drXQO
- ('A`)「すー、はー」
チャリで球場に向かう道中、信号に引っかかった。
いっそ信号無視してやろうかと思うがなんとか思いとどまる。
こんなんでケガなんて話にならない。
代わりに一つ深呼吸をする。
('A`)「……うし」
信号が青になったのを見計らってポルシェのペダルを踏み込む。
今日は開幕戦。ニュー速スタジアムは開門前にも関わらずファンが詰めかけている。
しかし俺には気づいてくれない。というかチャリに乗ったおっさんなど見てもくれない。
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:15:26.70 ID:n+P+drXQO
- ('A`)「うぃっす」
ロッカールームに入り、後輩達に挨拶をする。
俺の入りは早いほうなので、まだロッカールームにいるのは若手の選手のみだ。
(K‘ー`)「おはようございます」
(=゚ω゚)「おっ、おはあふおはようございます」
('A`)(伊陽の奴緊張してるなー)
明らかに伊陽は緊張している。
それもそうか。一軍初めてだもんな。
俺だって初打席は……あんまり緊張しなかったな。客いなかったし。
- 159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:21:46.31 ID:n+P+drXQO
- (K‘ー`)「見ててくださいよ毒田さん。伊陽さん、歩いてください」
('A`)「?」
ぴょこんと立つ伊陽。
川島の言うとおりロッカールームを一周し始めた。
しかし。
('A`)(こいつ……手と足が一緒にでてやがる……)
(K‘ー`)「www」
(=゚ω゚)「いち、に、いち、に」
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:26:47.78 ID:n+P+drXQO
- ('A`)「しかし、お前の方が年下なのにな」
(K‘ー`)「まあ、僕は心臓強い方ですから」
('A`)「だろうな」
確かに俺は慶三の緊張している所を見たことがない。
いや、緊張はさすがにしているだろうがそれが顔に出ていない。
(=゚ω゚)「うらやましいよぅ」
(K‘ー`)「いやいや、僕も緊張してますよ。ははは」
('A`)(前言撤回。こいつ絶対緊張してねえ。心をどこかに置き忘れたんだ)
(=゚ω゚)(絶対嘘だよぅ)
(K‘ー`)「毒田さん失礼なこと考えてません?」
('A`)「いや?」
- 164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:30:47.58 ID:n+P+drXQO
- ( ^ω^)「おはーだおー」
(K‘ー`)「おはようございます」
('A`)「うす」
(=゚ω゚)「お、おはーだおー」
( ^ω^)「ははは、緊張してるお」
そんなロッカールームにへちゃむくれがやってきた。
しかし今日こいつは先発しないしベンチにも入らないはずなのだが。
( ^ω^)「せっかくの開幕戦だお。特等席で応援してるお」
('A`)「そうかい」
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:36:10.55 ID:n+P+drXQO
- 時間が経つとそれだけロッカールームも混んでくる。
せっかく早く来ているので早めに着替えるに越したことはないだろう。
バッグから青を基調にしたホーム用のユニフォームを取り出す。
背中に入った『DOKUTA』と『37』。
2つとも、大事な大事な俺の誇りだ。
(K‘ー`)「……」
('A`)「なんだ?」
(K‘ー`)「いや……僕でも『00』っていう背番号なのに、毒田さんのは重いなあって」
('A`)「ああ……背番号な。打診は受けたよ。『7』にしないか、って」
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:42:06.78 ID:n+P+drXQO
- ('A`)「別に『7』でも良かったんだけどな。なんつーか、縁起? 担いでんだよ」
(K‘ー`)「……」
('A`)「あの優勝決定のサヨナラは自分でもしびれたからなあ」
(=゚ω゚)「あ、それみましたよぅ!」
('A`)「ま、そんときの背番号だからな。変えたくないと思っただけだよ」
(K‘ー`)「……」
('A`)「どした? 感動したか?」
(K‘ー`)「いや、意外とちゃんとした理由だなあって」
('A`)「うるせえや」
笑いながら、ユニフォームに袖を通した。
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 21:52:29.95 ID:n+P+drXQO
- / ,' 3「全員集まっとるかのう」
( ^Д^) 「集まってます」
荒巻監督代理と宝さんが会話を交わす。
伊陽が歩き回れるほど余裕があったロッカールームはさすがに30人ほど入ると狭くなった。
/ ,' 3「さて、諸君」
咳払いを一つして、荒巻監督代理が話し出す。
/ ,' 3「いよいよ開幕戦じゃ。ここにおる28人なら必ず優勝できると信じておる」
/ ,' 3「わしは監督代理。監督が戻ってくるまでが仕事じゃ」
从 ゚∀从「……」
/ ,' 3「喪名が帰ってきた時に恥ずかしくないよう、がんばろう」
「「「おおっ!!」」」
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:01:01.37 ID:n+P+drXQO
- 今日の相手は大阪ジャガース。
大阪に本拠地を置く伝統あるチームだ。
前年度は4位。投手陣に終盤疲れがでて、東京ビックバンズとのAクラス争いに敗れた。
とはいえ、力のあるチームである。
/ ゚、。 /
メジャーで三割経験の実績があるダイオードを獲得。
( メンチ)
さらにメジャー通算89本塁打のメンチも獲得。
ミ,,゚Д゚彡
さらにさらに社会人ドラフトで7球団指名を受けた怪腕投手布佐を獲得した。
これらを相手にしなければならない。
相手にとって不足なし。
優勝を目指すならこれぐらいの壁は乗り越えなくてはならない。
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:06:41.14 ID:n+P+drXQO
- そしてジャガースのもう一つの敵。
観衆だ。
('A`)「どれぐらい入ってる?」
ベンチの奥から観客席を望む。
まあ結果は聞かなくても分かるが。
(K‘ー`)「満員です」
(=゚ω゚)「あばばば」
('A`)「比率は?」
(K‘ー`)「今日はマシですね。4:6ぐらいかな」
('A`)「そっか。2:8ぐらいのときあったよなあ」
(K‘ー`)「どっちがホームかわかんなかったですからねえ」
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:10:54.16 ID:n+P+drXQO
- そう。ジャガースは4位のクセして多くのファンを抱えているのだ。
それこそ相手のスタジアムを埋め尽くすほどに。
('A`)「おーおーライトスタンドもジャガースイエローがちらほら」
(K‘ー`)「がんばれーヴィッパーズブルー超がんばれー」
(=゚ω゚)「あばばば」
……ま、これぐらいならまだまだヴィッパーズの人気も捨てたもんじゃないね。
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:16:31.81 ID:n+P+drXQO
- ヴィッパーズ スターティングメンバー
打順 守備位置 名前 AA 年齢
打率 本塁打 打点
1 2B 毒田 ('A`) 26
.316 4 41
2 SS 川島慶 (K‘ー`) 23
.279 9 59
3 3B マリントン |;;;;| ,'っノVi ,ココつ 31
- - -
4 1B 宝 ( ^Д^) 28
.308 32 109
5 RF ガイエル J( ゚_ゝ゚)し 38
.245 38 93
6 CF 擬古 (,,゚Д゚) 32
.246 1 27
7 LF 伊陽 (=゚ω゚) 25
- - -
8 C 比木 (-_-) 32
.263 7 32
9 P 高岡 从 ゚∀从 30
4勝6敗 防4.17
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:18:15.11 ID:n+P+drXQO
- 大阪ジャガース スターティングメンバー
打順 守備位置 名前 AA 年齢
打率 本塁打 打点
1 CF 青星 (★_★) 32
.262 0 14
2 2B 山野 ヽVLVノ 31
.293 0 34
3 1B ダイオード / ゚、。 / 33
- - -
4 LF 鉢 (丶`_ゝ´) 41
.273 21 87
5 3B 荒井 ( ̄粗 ̄) 31
.251 17 74
6 SS 関本 (・ e ・) 27
.289 12 81
7 RF メンチ ( メンチ) 32
- - -
8 C 矢野 ( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 ) 28
.287 11 56
9 P 布佐 ミ,,゚Д゚彡 26
-勝-敗 防-.--
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:25:22.86 ID:n+P+drXQO
- ( ^Д^) 「うっしゃ、てめえら集まれー」
宝さんの言葉にベンチに入っていた全員が集まる。
円陣を組む。
( ^Д^) 「俺たちはプロだからよ。勝つしかねえんだよなあ」
(=゚ω゚)「ーーあばばば」
( ^Д^) 「勝たないと来てくれたファンに怒られちゃうわけ」
从 ゚∀从「……」
( ^Д^) 「監督とか、監督代理のメンツとか、関係ない」
('A`)「……」
( ^Д^) 「そんなの関係無く、俺たちは勝つんだ! いいな!!」
「「「おおっ!!!」」」
声を出して守備位置に走ってつく。
2010年のシーズンが、今始まった。
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:32:40.85 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从「さてさて、始まっちゃったなあ」
(-_-)「そりゃそうだ」
マウンド上で会話を交わす。
俺と高岡さんと比木さんが会話を交わす。
('A`)「高岡さん、肩大丈夫なんですか」
从 ゚∀从「ったりめえだろうが、しばくぞ」
(-_-)「お前には前科があるからな」
从;゚∀从「も、もうケガを隠して登板したりしないよ!」
(-_-)「ま、がんばれ」
('A`)「頑張ってください」
从 ゚∀从「あー、なんで茂等さんじゃねえんだよ。セカンドに打たせられねえよ」
('A`)「リアルに傷つくんで辞めてください」
- 191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:35:25.80 ID:n+P+drXQO
- 試合経過
123 456 789 RH
大阪
ニュー速
大阪 布佐‐矢野
ニュー速 高岡‐比木
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:39:06.19 ID:n+P+drXQO
- 『プレイボール!!』
球審のコールにわあっと球場が湧く。
そしてすぐに応援歌の演奏が始まる。
『あおほし!! あおほし!!』
从 ゚∀从「ああー、うるせー、ここホームだよなー」
(-_-)(しょうがないさ。黙らせればいい)
从 ゚∀从「おっけーい」
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:45:08.17 ID:n+P+drXQO
- (★_★)「……」
打席には青星。
昨年35盗塁を挙げたスピードスターだ。
ノーアウトのランナーにはしたくない。
从 ゚∀从(んじゃ、いきましょう)
2010年初の投球。
この初球だけは、後先考えない。
渾身のストレート。
(★_★)「!」
(-_-)(……ナイスボール)
アウトロー146キロ。
まごうことなきナイスボールだ。
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:51:07.41 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从(ふむ。全力で146か。やっぱり球速は落ちたな)
手術前は全力で投げれば150キロを越えていた。
やはり肩の手術の影響はある。
从 ゚∀从(ま、球速だけがピッチングじゃねえ)
そこまで考えて憎きレールウェイズのエースの顔を思い出す。
軟投派の渡辺。
从 ゚∀从(軟投派にはならないでおこう)
- 202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 22:56:14.95 ID:n+P+drXQO
- (-_-)(早く投げろ。15秒ルールにかかるぞ)
从 ゚∀从(あったねそんなの。引っかかる奴いんの?)
(-_-)(さあ)
第2球。
高岡得意のスライダー。
左打者の膝元に落ちていくボール。
それに対応できず空振り。
从 ゚∀从(よし、追い込んだ)
3球目はストレートを高めに外す。
球速は141キロ。
从 ゚∀从(……速球派は卒業だな)
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:00:35.51 ID:n+P+drXQO
- 从 ゚∀从(これで……)
(-_-)(来い!)
从 ゚∀从(レフトスタンドのうるせー奴らも黙れよ!)
(★_★)(! 遅い……)
完全にフォークと読んでいた青星。
しかし来たのは思い切り腕を振り切ったチェンジアップ。
(;★_★)「ぐっ……」
バットは届かない。
高岡の2010年のスタートは空振り三振で幕を開けた。
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:04:13.77 ID:n+P+drXQO
- 高岡は続く山野をセカンドゴロに打ち取る。
从 ゚∀从(よくやった)
(-_-)(よくやった)
( ^Д^) (よくやった)
('A`)「……」
('A`)「普通のセカンドゴロ処理しただけで温かい目をするのはやめてくれ」
- 207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:08:15.35 ID:n+P+drXQO
- そして続くバッターはメジャー経験豊富なダイオード。
/ ゚、。 /「……」
右打席に入り土をならす。
比木はその様子をキャッチャーボックスから見る。
(-_-)(……ビデオを見たが、弱点がわからん)
ビデオを見た感想はそれだった。
全てのコースを打ち返し、全てのコースを凡打する。
特定の得意なコースや苦手なコースを持っていない。
それがダイオードというバッターだった。
- 208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:13:03.68 ID:n+P+drXQO
- (-_-)(とりあえず低めだ。低めに集めれば長打は無い)
从 ゚∀从(おっけーい)
高岡は比木を信じてスライダーを投じる。
しかし、ダイオードの目は確実にスライダーの軌道を捉えていた。
/ ゚、。 /「……フェンスオーバー……いける」
オープンスタンスから、メジャーでも屈指のスイングスピードを見せる。
高岡は、風圧がマウンドまで来た気がした。
(;-_-)(!)
バットに捉えられたボールは、レフトスタンドに向かって飛んでいく。
- 209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:17:09.66 ID:n+P+drXQO
- / ゚、。 /「……少し、ボールの下を叩いた。……フェンスは超えない」
( ^Д^) 「……」(ダイオード……要注意だな)
(=゚ω゚)「あわわ、こっちに来た」
レフトスタンドからは落とせだのこけろだのと聞こえる。
ヤジというやつも伊陽にとっては初経験だった。
(=゚ω゚)「ま、ただのフライだし落とさないけどよぅ」
いくら緊張していてもプロである。
簡単に捕球し、スリーアウト。
- 211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:19:01.16 ID:n+P+drXQO
- 試合経過
123 456 789 RH
大阪 0 00
ニュー速
大阪 布佐‐矢野
ニュー速 高岡‐比木
- 212 名前:訂正 投稿日:2009/09/12(土) 23:20:31.84 ID:n+P+drXQO
- 試合経過
123 456 789 RH
大阪 0 00
ニュー速
大阪 布佐‐矢野
ニュー速 高岡‐比木
- 214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:25:41.64 ID:n+P+drXQO
- ('A`)「よし、初打席だ」
从 ゚∀从「お前バットでしか貢献できないんだからがんばれー」
J( ゚_ゝ゚)し「守備はザルというよりワクやからのう」
('A`)「高岡さん声援に一言多いでーす」
ネクストサークルに入り、マウンドの布佐を見る。
いきなりの開幕投手だが、伊陽と違って緊張しているようには見えない。
- 217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:31:54.98 ID:n+P+drXQO
- ミ,,゚Д゚彡
('A`)(あらまあ毛フサフサ生やしちゃって)
ミ,,゚Д゚彡
('A`)(二軍の試合は暑いからな。すぐ切りたくなるぜ)
右打席に入って、バットで布佐を指す。
そして構える。
('A`)「俺のバットで、二軍に送ってやるよ」
『プレイ!』
- 218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/12(土) 23:35:59.83 ID:n+P+drXQO
- ミ,,゚Д゚彡
布佐のプロ第1球。
下半身を最大限使ってタメを作り、その力を以て球を投げ込んでくる。
右腕から投げられた球はかなりのノビでインコースに決まった。
('A`)「……いい球じゃん」
球がなかなか落ちてこない。
いわゆる球持ちがいい、という奴だ。
なかなか打ちにくい球質。都市対抗全完封は伊達ではないらしい。
- 224 名前:さるった 投稿日:2009/09/13(日) 00:03:14.87 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「確かに打ちにくい球だな」
ミ,,゚Д゚彡(……)
('A`)「でも」
('A`)(ヒットを打つだけが、塁に出る手段じゃないのよね)
それから布佐は8球を毒田に投じる。
最初ツーゼロと完全布佐有利だったのだが、度重なる毒田のカットにより、フルカウントになっていた。
ミ,,;゚Д゚彡(……)
('A`)(おお、汗かいてるかいてる。プロはうざいだろ?その中でも俺は特にうざいんだ)
- 226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:07:26.70 ID:8tNaW6aCO
- 布佐は多数の変化球を持っている。
しかし、自信をもっている球種はわずかだろう。
すなわち、ストレート・カーブ・スライダー・カットボール。
('A`)(全部同じ方向だ。カットするだけなら簡単だぜ)
ミ,,;゚Д゚彡(……)
そして9球目。
('A`)「おっ」
ミ,,;゚Д゚彡(くっ……)
カーブが抜けてボール。
毒田の粘り勝ちだ。
('A`)「ごちそーさまー」
- 228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:10:22.39 ID:8tNaW6aCO
- 『2番ショート、川島慶』
(K‘ー`)「バント……」
喪名監督ならヒッティングを選択するだろう。
しかし荒巻代行から送られたサインはバント。
(K‘ー`)「ま、罰金はイヤだしね」
バントの構えを取る。
一番いいのは一発で三塁線に転がすことだ。
- 230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:13:32.03 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,゚Д゚彡(……)
ふ、と一息ついてストレートを投じる。
クイックでも変わらない球質。
それが川島に迫る。
(;K‘ー`)「やべっ」
バットには当たった。
しかし三塁線には転がらない。
素直すぎる打球は投手の真ん前に。
一塁ランナーの毒田は鈍足だ。
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )「セカン!!」
キャッチャーの矢野も布佐にセカンドを指示する。
- 233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:18:11.11 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,;゚Д゚彡(!)
打球を取ってすぐさま二塁に投げる。
しかし、布佐の手からボールが離れない。
(;・ e ・)「あっ!」
セカンドに入っていた関本がボールを後ろに逸らす。
ピッチャーの悪送球だ。
('A`)「……スライディングしなきゃよかったぜ」
毒田はスライディングしたため二塁ストップ。
記録は布佐のエラーだ。
('A`)(おお、俺より守備率が低い奴が現れた……)
- 234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:23:07.69 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「……さて」
ノーアウトランナー一塁二塁。
絶好の先制チャンス。
『3番サード、マリントン』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……」
('A`)「……」
マリントンは紅白戦こそよかったが、オープン戦に入るとサッパリ。
他球団の投手の変化球にまったく対応できていなかった。
それでも荒巻代行はマリントンを3番サードに据えた。
それはすなわち、期待の表れ。
('A`)(馴れ合い嫌いなら……結果出すしかないんだぜ)
- 236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:26:37.74 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,;゚Д゚彡(……)
もう息も絶え絶えといった感じの布佐。
そして投じた第1球。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「くっ……」
(;K‘ー`)「!」
(;'A`)「っ……いったそばから!!」
カットボールを完全に引っ掛けた。
ボールは転々とショートへ。
ショートからセカンド、そしてファーストへとボールが渡る。
ショートダブルプレー。
毒田は三塁に到達したが……
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……」
('A`)(悔しがる素振りぐらい見せろよ……)
- 237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:32:36.34 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「しかし……」
三塁ベースから布佐をみる。
心なしか浮ついた雰囲気がなくなり、汗も引いている気がする。
('A`)(調子付かせたんじゃないだろうなあ……)
結論から言うと、その通りだった。
ツーアウトながら三塁と依然先制チャンスだったが、4番宝が147キロの速球で詰まらされる。
打球はライトのメンチのグラブに収まった。
スリーアウトチェンジ。
('A`)(宝さんが詰まる速球……勘弁してくれ)
- 238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:34:12.45 ID:8tNaW6aCO
- 試合経過
123 456 789 RH
大阪 0 00
ニュー速 0 00
大阪 布佐‐矢野
ニュー速 高岡‐比木
- 250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:51:22.62 ID:8tNaW6aCO
- (丶`_ゝ´)「鉢ヤニキの力やで!!」
从;゚∀从「ずあっ!!」
2回表、先頭の鉢にレフト前ヒットを許す。
(-_-)(追い込んだ後のフォークを持って行かれた……)
从 ゚∀从(少し甘く入っただけなのにな……やっぱ甘くねえな)
『5番サード、荒井』
( ̄粗 ̄)「兄貴に続きますよ!」
(-_-)(……荒井は一打席目に打たせるとその日手がつけられなくなる)
从 ゚∀从(こいつは確実に抑えねえとな……)
- 254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 00:56:47.79 ID:8tNaW6aCO
- 从 ゚∀从(今日はまだ使ってない球を使うか……)
(-_-)(……)
カウントツーツーで迎えた6球目。
比木はツーシームのサインを出した。
从 ゚∀从(ふー)
クイックで投げ込む。
インコースに食い込むツーシーム。
荒井は三塁方向に高いバウンドの球を引っ掛けた。
从 ゚∀从(よし!)
(-_-)(いや、ダメだ!)
引っかけてはいるが、バウンドが高い。
このままでは内野安打になる。
しかし自分の範囲ではないし、高岡の体は一塁側に流れてしまっている。
――内野安打か。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「おおっ!!」
そう思った瞬間、サードから巨体が突っ込んできた。
- 256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:00:37.65 ID:8tNaW6aCO
- 从 ゚∀从(反応はええ!)
(-_-)(セカンドは……無理か)
(-_-)「ファースト!!」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……おらっ!!」
マリントンの強肩から投じられた球はものすごいスピードでファーストへと向かう。
バシン、と小気味いい音と共にボールが宝のミットに収まったとき、荒井はまだベースの2mほど前にいた。
从 ゚∀从「サンキュー、マリントン」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……ふん」
从 ゚∀从「あらら」
- 260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:04:17.92 ID:8tNaW6aCO
- マリントンの好プレーアウトを稼いだとはいえ、ワンアウト二塁。
ここでバッテリーは試合巧者の関本を迎える。
(・ e ・)
ぬぼーっとした顔をしているが、勝負強さは折り紙付きだ。
高岡も負けにつながる一打を何回も打たれたことがある。
(-_-)(でも、抑えるぞ)
从 ゚∀从(モチ)
- 262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:07:53.25 ID:8tNaW6aCO
- 从 ゚∀从(甘い球は厳禁、と)
低めに球を集め、カウントツーツー。
関本はまだ一回もバットを振っていない。
从 ゚∀从(やらしい野郎だ……毒田にスタイルが似てるな)
(・ e ・)
从 ゚∀从(何考えてるかわかんねえツラしてるし)
(-_-)(でも関本の方が見れる顔だな)
从 ゚∀从(うん)
セカンドベース上
('A`)「ひたすら失礼な会話が行われてる気がする」
(;丶`_ゝ´)「?」
- 263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:13:10.87 ID:8tNaW6aCO
- 从 ゚∀从(ま、スライダーで決まりだ)
(-_-)(浮くのは厳禁だぞ)
从 ゚∀从(わーてるって)
5球目。
右打席の関本から見ると、外側に逃げていくスライダー。
(・ e ・)「ほっ」
从 ゚∀从(!)
しかし、当ててくる。
ボールは転々と宝の前に。
宝が捕球し、ベースを踏んでツーアウト。
从 ゚∀从(あぶねー、当てられたよ)
(-_-)(あの打ち方……最初から右打ちしかねらってなかったな)
从 ゚∀从(いいよ。ツーアウトだ)
- 267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:21:14.23 ID:8tNaW6aCO
- 『7番ライト、メンチ』
( メンチ)「がんばりまーす」
从 ゚∀从(どう見ても打たれる気がしねえ)
(-_-)(俺もだが言ったら負けだ)
高岡は油断せず低めを攻めていく。
4球目、カウントワンツーの時にそれは起こった。
从 ゚∀从(スライダー!)
( メンチ)「ふぉう!」
(-_-)(……?)
高岡の内角のスライダーに身をよじらせた。
ストライクに入るスライダーにも関わらず、だ。
从 ゚∀从(……なるほど、内角の変化球が苦手か)
(-_-)(恐らくな。まったく見えていない)
从 ゚∀从(じゃあもう1球スライダーで終わり?)
- 269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:25:02.62 ID:8tNaW6aCO
- (-_-)(ああ。……来い)
从 ゚∀从(おしまいでーっす!)
( メンチ)「ああん」
結局メンチは三振。
一回裏のヴィッパーズと同じく、チャンスを逃した。
試合経過
123 456 789 RH
大阪 00 01
ニュー速 0 00
大阪 布佐‐矢野
ニュー速 高岡‐比木
- 271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:29:17.28 ID:8tNaW6aCO
- 二回裏。
ワンアウトでバッターは6番擬古。
昨年は首痛でスタメン落ちが多かったが、今年は開幕スタメンを勝ち取った。
(,,;゚Д゚)「くっ……」
ミ,,゚Д゚彡(……よし)
しかし、宝と同じく速球をこすりあげてしまう。
平凡なライトフライ。
これでツーアウト。
- 272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:34:23.81 ID:8tNaW6aCO
- 『7番レフト、伊陽』
(=゚ω゚)「あばあば」
名前がコールされ、更にあがる伊陽。
素振りはひどいものだ。上半身と下半身の動きが一致していない。
('A`)「うーん……」
( ^Д^) 「ありゃ厳しいな……」
('A`)「なんとか早く慣れてもらうしか……」
( ^Д^) 「イースタン本塁打王なんだから堂々としてたらいいのに」
('A`)「まったくです」
- 274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 01:39:05.03 ID:8tNaW6aCO
- 結局伊陽は変化球で追い込まれたあと高めのクソ球で三振。
スリーアウトチェンジだ。
('A`)「……」
(;=゚ω゚)「……」
しょんぼり、という擬音を撒き散らしながらレフトへと走る伊陽。
その背中にぼそりと呟く。
('A`)「紅白戦の反省、できてないじゃん……」
その声が彼に届く日は、何時の日か。
試合経過
123 456 789 RH
大阪 00 01
ニュー速 00 00
大阪 布佐‐矢野
ニュー速 高岡‐比木
- 296 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:25:35.24 ID:hmvE4J2D0
- 3回の表。
バッターは八番の矢野からだ。
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「がんばるでー」
捕手ながら高いバッティング技術を併せ持つ。
ヴィッパーズの比木が打撃不調の現在、恐らくリーグ一怖い捕手であろう。
(-_-) (しかし低めに抑えれば大丈夫だ)
从 ゚∀从 (肩にメス入れてから変化球がいいからな。打たれる気、しねえぜ)
そう思い、ボールを投げ込んでいく。
- 297 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:31:04.36 ID:hmvE4J2D0
- ( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ (高岡はさらに打ちにくくなったな……強敵だ)
先ほどから矢野に投じた5球、いや、この試合通して見ても高岡には失投らしい失投は見当たらない。
すべてが低め低めへの丁寧なコントロール。そしてキレのある直球と大きい曲りの変化球。
肩の手術を受けたと聞いて高岡の調子をうかがっていたのだが、完全復活、いや、進化していた。
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「やれやれ」
今年も高岡には苦しめられることになりそうだ。
从 ゚∀从 「くらえっ!」
(;;;〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「うっ……」
スライダーをひっかける。
守備が不得手な毒田のもとにいくが、難なく処理してワンアウト。
- 298 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:35:22.68 ID:hmvE4J2D0
- 続くピッチャーの布佐を難なく三振に取る。
そして打順は一巡し、一番センター青星。
(★_★) 「さっきはころりとやられたからな……」
从 ゚∀从 「……」
(★_★) 「リベンジだ」
自分の魅力は粘って粘って――ちょうど先ほどの毒田のような――とにかく出塁することだ。
それが先ほどの打席はあっけなく4球で三振。
青星らしからぬバッティングだった。
(-_-) (2打席目だ。青星ぐらいのバッターだとアジャストしてくるぞ)
从 ゚∀从 (今まで通り丁寧に、だろ。わかってるって)
- 301 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:39:05.49 ID:hmvE4J2D0
- カーブやストレートでカウントを稼ぎ、見せ球を1球使ってカウントツーワン。
先ほどの打席のリプレイを見るような投球だ。
(★_★) (やはり、失投は出てこない……)
从 ゚∀从 (いい感じだ)
(★_★) 「ならば、失投を待つとしようか」
(-_-) (カウントに余裕がある。フォークで決めよう)
从 ゚∀从 (うっす)
サインを交換して、頷く。
そして、力いっぱい投げ込んだ。
- 303 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:42:34.56 ID:hmvE4J2D0
- (;★_★) 「……っ!」
バットが出かかる。
しかし、自分のすべての力を持ってバットのスイングを食い止める。
(;★_★) 「どうだ……?」
フォークはストライクからボールゾーンへ。
もし自分がバットを振っていないと判断されればボールだ。
(-_-) 「……」
比木は三塁塁審にスイングの確認をする。
少し迷った後、手を横に広げる。
ノースイング。レフトスタンドから割れんばかりの歓声が上がる。
これでカウントツーツー。
从 ゚∀从 「……チッ、歓声うるせえよ」
- 304 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:45:29.27 ID:hmvE4J2D0
- 少しイライラしながら投げた第4球。
(;-_-) 「!」
少し、スライダーが浮いた。
今日初めての失投。
そしてその失投を逃す青星ではなかった。
(★_★) 「もらった!」
素直にボールを打ち返す。
ボールは高岡の足元を抜け、さらに毒田と川島の間をも抜けた。
センター前へのクリーンヒット。
从 ゚∀从 「……ちぇっ」
(-_-) (頭冷やせよ)
从 ゚∀从 「わりい」
- 306 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:52:13.60 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) (それにしても……厄介な奴を出してしまった)
从 ゚∀从 (ツーアウトなのが救い、ってとこか)
ランナーの青星。
前年度はケガの影響で打撃不振・出場機会減少にも関わらずリーグ3位の35盗塁をあげた。
今年はケガも回復している。この状況、恐らく盗塁を狙ってくる。
从 ゚∀从 (比木さん、任せましたよん)
(-_-) (……正直、荷が重いな)
比木の盗塁阻止率は実はそれほど高くない。
リード等は評価されているものの、比木のウィークポイントは肩の強さなのだ。
- 307 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:55:52.15 ID:hmvE4J2D0
- 2番山野へのカウントワンツーからの4球目。
レフトスタンドが、沸いた。
从 ゚∀从 (きやがった!!)
(;-_-) (く、ナイススタートしやがって)
青星が、盗塁を敢行。
『彗星』と称されるその脚は、猛然と二塁へ駆けていく。
(#-_-) 「おおっ!!」
高岡の球を捕球し、すぐ二塁へ送球する。
しかし、彗星を止めることは叶わない。
『セーフ!』
(*★_★) 「よしっ!」
青星がセカンドベース上で小さくガッツポーズをする。
比木はそれを苦々しげに見つめていた。
- 309 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 09:59:33.69 ID:hmvE4J2D0
- (;-_-) (すまん)
从 ゚∀从 (相変わらずっすねー。和手枡に抜かれちゃいますよ?)
(-_-) (まだまだここを明け渡す気はないさ)
从 ゚∀从 (あれま)
カウントワンスリーでバッターは山野。
ガッツあふれるプレーと鋭い顎で人気の選手だ。
前年度は貴重な場面でのタイムリーが光った。
从 ゚∀从 「開幕戦で先制されるわけにはいかんからな」
二塁には俊足の青星。
シングルヒットで、恐らくホームまで帰ってくる。
- 310 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:03:07.44 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) 「一塁は空いているが……」
从 ゚∀从 「序盤だぜ? ランナーわざわざ貯める必要ねえよ。……それに」
(-_-) 「……ああ」
マウンド上からネクストサークルを見る。
そこでは、ダイオードが素振りをしている。
ピッチャーからすれば思わず目を背けたくなる鋭いスイング。
素振りの音が聞こえてくる気がする。
从 ゚∀从 「さっきは失投でもないスライダーを結構持って行かれたからな」
(-_-) 「ああ、山野で切ろう。この流れを」
- 312 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:05:48.61 ID:hmvE4J2D0
- 从#゚∀从 「おらっ!!」
渾身のストレート。
球速はなくとも、キレは健在だ。
ヽ;VLVノ 「くっ!」
思わず出したバットに当たったボールはふらふらと上がり――
(,,゚Д゚) 「よっ」
センター擬古のグラブに収まった。
平凡なセンターフライ。スリーアウトチェンジ。
- 313 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:08:00.79 ID:hmvE4J2D0
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 02
V 00 00
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 315 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:22:29.05 ID:hmvE4J2D0
- 3回ウラ。
打順は八番の比木から。
(-_-) 「さっきは高岡に余計な負担をかけたからな……」
素振りを数回して右打席に入る。
過去とはいえ、20本塁打を放ったこともある。
一昨年までは5番を任されていた。
(-_-) 「打ってあいつを楽にしてやろう」
ボックスに立って、布佐をにらみつける。
- 317 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:25:48.39 ID:hmvE4J2D0
- ミ,,;゚Д゚彡 「……」
比木に対しての5球目。
今までの4球は我ながら絶賛できるものだった。
すべてが低めに集まっていた。
しかし、この5球目。
(;;〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「あっ!」
思わず矢野が声を上げるほどの失投。
ストレートがぶれ、真中に入ってきてしまう。
(-_-) 「貰った!!」
バットを思い切り、ボールに叩きつける。
打球はライナーでレフトの前へ。
強烈なレフト前ヒットだ。
- 318 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:30:00.61 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) 「……」
一塁ベース上で思案する。
さっきのボール、あの甘い球、宝やガイエルなら間違いなくスタンドに入れていただろう。
毒田や、慶三だってスタンドインできるほどの甘い球だった。
それが、自分はレフト前。
(-_-) 「……ふん」
和手枡ならどうだろう。
監督が、自分の後継者にと育てている和手枡。
和手枡なら、あのボールをスタンドインできただろうか。
先制点をプレゼントし、高岡を楽にすることができただろうか。
(-_-) 「……俺らしくないな」
ため息をひとつつく。
意味のない対比だ。自分らしくもない。
自分はキャッチャーだ。ならばキャッチャーとしての能力で勝負すべきだ。
キャッチャーとしての打力は、付随品、おまけに過ぎない。
- 319 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:32:06.05 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) 「それに……」
ベンチから出ているサインはバント。
打者はピッチャーの高岡だから、当然の選択。
从 ゚∀从 「よっと」
布佐の球を一塁線に。
難なく比木は二塁に到達した。
これでワンアウトランナー二塁。
(-_-) 「俺が返せなくても、あいつらが返してくれるさ」
『一番セカンド、毒田』
- 322 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:41:04.89 ID:hmvE4J2D0
- ('A`) 「さてさて、回ってきちゃったなあ」
一番の毒田。
一般的にチャンスに強いバッターとされている。
この前プレイしたパワプロではチャンス4とサヨナラ男が付いていた。
絶対あの試合の影響だ。だいたいパワプロは査定がてきt
(K‘ー`) 「毒田さん、コールされてますよ」
(;'A`) 「え? ああ、わかってるよ」
(K‘ー`) 「……緊張してます?」
(;'A`) 「はあ? ばっかじゃねえの? あり得ないし緊張とかマジでパネエし」
嘘だ。実は俺、めっちゃ緊張してる。
俺はチャンスになるとあがるのだ。
それでも結果が出るのは見てくれる人がいるおかげ……まあ伊藤さんなんだが。
- 323 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:43:35.03 ID:hmvE4J2D0
- ('A`) 「今日は来てないんだよなあ……」
(K‘ー`) 「あらま、伊藤さん来てないんですか」
(;'A`) 「ばっ、なんで伊藤さんの名前が出てくんだよ!」
(K‘ー`) 「だって毒田さんを見に来る人なんて伊藤さんぐらいしかいないでしょ」
(;'A`) 「おまっ、殺すz」
(K‘ー`) 「ほらほら、球審さんがジト目で見てますよ。早く行ってください」
慶三に押し出され、右打席に向かう。
審判に一礼してから、布佐を見つめる。
- 325 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 10:48:41.46 ID:hmvE4J2D0
- そう。伊藤さんはこの開幕戦を観戦していない。
まあ別に(今のところ。強調だぞ。今のところ)彼氏彼女の関係ではないので普通なのだが。
というかお互いいい大人なので毎回観戦とはいかない。
そう思わないと心が持たない。
('A`) 「ま……スポーツニュースで伊藤さんの目に触れるぐらいはがんばりますか」
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ (動機が不純すぎるだろ……)
- 328 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:01:04.01 ID:hmvE4J2D0
- ミ,,゚Д゚彡 「……」
初球は大きなカーブ。
アウトローに決まってワンストライク。
('A`) (……どうも、マリントンのゲッツーから立ち直ったくさいな)
初回の布佐よりも今の布佐のほうが球のキレが良くなっているように見える。
むしろ、これが布佐本来の投球なのかもしれない。
- 330 名前:さる ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:06:49.16 ID:hmvE4J2D0
- だが、大丈夫だ。
俺は、あのナックルを打ち返したじゃないか。
あの後、バルケンはメジャーのオファーを受けレールウェイズを退団した。
('A`) (あいつは今やメジャーリーガーだ。そいつの球を打ったんだぜ? 俺は)
ミ,,゚Д゚彡 「……」
布佐の7球目。
スライダー。悪い球ではない。
むしろ低めに決まろうとしている分、いい球といえる。
しかし。
('A`) (悪いな……)
(#'A`) 「俺の得意コースだ!!」
バットにボールを乗せる。
振り切らずに、力を右腕に乗せる。
おっつけた打球は、右中間へ。
ミ,,;゚Д゚彡 「!」
('A`) 「よしっ!!」
- 332 名前:さる ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:10:40.08 ID:hmvE4J2D0
- (;★_★) 「くっ……」
俊足の青星。
その脚は守備にも生かされている。
('A`) 「それを承知で……右中間を狙ったんだよ!」
(#★_★) 「おおっ!!」
青星の決死のダイビング。
しかしボールは――青星のグラブをかすめて抜けて行った。
(-_-) 「まったく……さすがだよ」
二塁ランナーの比木は楽々ホームイン。
毒田は三塁も考えたが、メンチのカバーが予想以上に早く、二塁止まりだ。
('A`) 「おお、初打点」
J 0−1 V
- 336 名前:さる ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:17:41.99 ID:hmvE4J2D0
- 『二番ショート、川島慶』
(K‘ー`) 「さて……」
ミ,,;゚Д゚彡 「……」
(K‘ー`) (プロ初失点。がっくり来てんじゃないですか?)
布佐は息を整えようと深呼吸をする。
その顔は、決してかんばしいものではない。
(K‘ー`) (僕は布佐さんより3つも年下ですけどね)
今年、バット職人に無理を言って新たに調整してもらった黄色のバット。
自分の手に馴染んでいるバットだ。
それをゆらりと構える。
(K‘ー`) (なんとプロでは5年も先輩なんですよねえ)
毒田が打ったなら自分も黙っていられない。
(K‘ー`) (プロってもん、教えてあげますよ、後輩)
- 337 名前:さる ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:20:45.09 ID:hmvE4J2D0
- (K‘ー`) (がっくり来てる時はファーストストライクがセオリーだよねえ)
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「……」
(K‘ー`) (まあ矢野さんはそんな考えお見通しでしょうけど……)
ミ,,;;゚Д゚彡 「……」
(K‘ー`) (いくらリードしてもピッチャーが構えたとこに投げてくれなきゃねえ)
布佐の第一球。
カーブが曲がりすぎてボール。
続く2球目もストレートが外れてカウントノーツー。
- 339 名前:さる ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:24:31.47 ID:hmvE4J2D0
- (K‘ー`) (ほらほらストライク投げないと。別にフォアボールでもいいけどね)
ミ,,;゚Д゚彡 「……」
布佐の三球目。
ストレート。しかしコースが甘い。
(K#‘ー`) 「おらっ!!」
ミ,,;゚Д゚彡 「!」
一二塁間を鋭く抜けるライト前ヒット。
毒田は三塁コーチャーの阿部を見る。
N| "゚'` {"゚`lリ 「毒田――!!」
阿部の腕は、ぐるぐる回されている。
ゴーのサインだ。
N|#"゚'` {"゚`lリ 「ぶっちぎってやれ!!」
(#'A`) 「了解しました――!!」
- 340 名前:さる ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:27:23.55 ID:hmvE4J2D0
- ( メンチ) 「わしはメジャーリーガーなんやで――!!」
メンチが捕球する。
そして、あらん限りの力でホームベースの矢野に向かって返球する。
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「来い、メンチ!!」
腰を落として、ミットを構える。
メンチの肩は一級品だ。デイリースポーツにも書かれていた。
( メント) 「おらああ!!!」
その評判に違わないボールが、返ってくる。
その返球に毒田は少々焦っていた。
- 343 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:30:58.44 ID:hmvE4J2D0
- (;'A`) 「おいおい、デイリーに書かれてたことと違うじゃねえか!」
微妙なタイミング。
楽々ホームインできると考えていたが、考えが甘かったようだ。
(#'A`) 「おおお!! 動け俺の脚――!!」
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ (毒田の脚は速くない! 十分アウトにできる!)
毒田がスライディングする。
矢野が捕球しタッチする。
2つの思いが、交錯する。
('A`) (セーフだ!)
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ (アウト!)
選手以下観衆らの目が球審に注がれる。
- 345 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:36:14.57 ID:hmvE4J2D0
- 『セ――フ!!』
(#〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ (このっ……クソ審判が!!)
(*'A`) 「よっしゃあ!!」
これで2点。さらにランナーを置いてクリーンナップだ。
ここで大量得点が生まれれば、勝ちにグッと近づく。
('A`) 「よし! ……マリントン」
打席に入ろうとしていたマリントンにハイタッチをしようとする。
しかし。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
マリントンはこちらを一瞥しただけだった。
('A`) 「……」
J 0−2 V
- 346 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:38:57.12 ID:hmvE4J2D0
- そしてマリントンの打席。
('A`) 「あっ!」
(=゚ω゚) 「……よぅ」
J( ゚_ゝ゚)し 「……」
思わずベンチで声を出してしまう。
初球をひっかけ、セカンドへ。山野から関本、ダイオードに渡ってゲッツー。
二打席連続の併殺。スリーアウトチェンジだ。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
バットをしまってグラブを取り出す。
その顔からは、悔しさは依然見られない。
('A`) 「……」
- 350 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:47:06.35 ID:hmvE4J2D0
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 02
V 002 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 351 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 11:48:50.86 ID:hmvE4J2D0
- ※デイリー? メンチ? わけわかんないという人へ
大阪ジャガースのモデルとなっている阪神タイガースには今年ケビン・メンチ選手が入団しました。
このメンチ選手、前評判が非常に低く、ファンの間でもその実力に疑問符をつける人が多かったのです。
そんな中、阪神の大本営発表と言われるデイリースポーツだけはメンチに高評価を付け続けたのです。
以下は阪神キャンプ中のデイリーの見出しです。
●メンチ速い!殺人バファロー走法に虎将仰天
●虎メンチ豪弾15発!真弓監督ダル撃ち指令
●ド迫力の虎新助っ人メンチ、併殺崩し任せろ
●乱闘任せろ!メンチ、虎の魔よけや!!
●虎将も合格点!メンチ、変化球イケるやん
●虎将安心「6番・右翼」メンチ“一発合格"
●死角なし!阪神・メンチ、安芸でも25発
●絶好調!阪神・メンチが余裕14発!
●巨体メンチが激走!ド迫力ランで一気生還
●阪神・ジェフ、メンチの活躍に太鼓判!
●ドドドドドッ虎・メンチ、走る凶器や
●虎将唸った!“猛肩"メンチが赤星殺した
●虎将不敵!007歓迎、メンチの弱点探して
●阪神・メンチ目覚めた!?2軍戦で4打数4安打1発6打点
現在、メンチ選手は打率.148、本塁打0、打点2のハイパー低空飛行で今年度限りの解雇が決定しています。
さらに知りたい方は→ttp://www31.atwiki.jp/tigers_torasen/pages/140.html
- 362 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 12:44:00.29 ID:hmvE4J2D0
- 4回表。
/ ゚、。 / 「フォーク……打ち頃」
从;゚∀从 「はあ!?」
(;-_-) (ストライクからボールになる完璧なフォークだぞ……?)
从;゚∀从 「あれをひっぱって左中間とか……鬼か」
先頭打者のダイオードが長打で出塁。
ノーアウトランナー2塁のピンチを迎える。
从 ゚∀从 (せっかく援護してもらったんだからな……点はやれねえ)
『4番レフト、鉢』
- 365 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 12:50:30.27 ID:hmvE4J2D0
- (丶`_ゝ´) 「……」
从 ゚∀从 (もう40なのに怖いもんなあ。速く引退してくれないかなあ)
(-_-) (恐れるな。自信を持て)
从 ゚∀从 (わかってるよ)
5球を投げ、フルカウント。
ボール球には手を出してこない鉢。
从;゚∀从 「……」
(-_-) (ストレートだ)
从;゚∀从 「! ……」
そのサインに首を振る高岡。
- 366 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 12:53:48.40 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) (恐れるなと言っただろう)
从;゚∀从 「……」
恐れはない。だが、不安はあった。
いくらキレはあるといっても140キロそこそこの直球でこの男を打ちとれるのか。
从;゚∀从 「……」
(-_-) 「……タイム」
球審に断ってゲームを止める。
小走りでマウンドに向かう。毒田も小走りで駆けてきた。
从;゚∀从 「……スライダーか、フォークでいいだろ」
('A`) 「高岡さん……」
(-_-) 「高岡……何を怖がってるんだ」
('A`) 「そうですよ」
从 ゚∀从 「……」
- 367 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 12:57:52.29 ID:hmvE4J2D0
- ('A`) 「俺の守備……頼りにならないかもしれないけど。絶対、止めて見せます」
(-_-) 「その通りだ。フェンスさえ越えなきゃ守備が何とかしてくれるさ」
从;゚∀从 「……わかったよ」
一応、納得したようだ。
毒田と比木は顔を見合って頷いた。
それぞれがそれぞれの守備位置に帰っていく。
从 ゚∀从 (……後悔しても、知らねえぞ)
(-_-) 「……来い」
比木が構えたのはインハイのストレート。
高岡は手の汗を拭う。そして、一息ついた後、腕を力いっぱい振りぬいた。
- 369 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:00:54.30 ID:hmvE4J2D0
- (;丶`_ゝ´) 「おおっ!!」
対する鉢も、力いっぱいバットを振りぬく。
しかし勝ったのは高岡の球威だった。
バットの根元に当たった打球は力なくセカンドの毒田のもとに。
(;丶`_ゝ´) 「くっ……」
二塁のダイオードは動けず。
進塁打にすらならないセカンドゴロ。
('A`) (あんなこと言った後にミスしたらしゃれなんないな)
確実に捕球し、確実に送球する。
なんとか宝につなぎ、アウトが成立した。
- 371 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:06:26.52 ID:hmvE4J2D0
- 続く荒井。
( ̄粗 ̄) 「一打席め打てなかったし、兄貴も塁にいないし……」
少し深めのライトフライに倒れる。
ガイエルが捕球する。
その瞬間。
/ ゚、。 / 「いける」
ダイオードが、タッチアップを敢行。
三塁に向かって、疾走する。
- 373 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:10:18.20 ID:hmvE4J2D0
- J(#゚_ゝ゚)し 「ええ度胸やないか!!」
それをみてすぐさまガイエルが送球する。
糸を引くような送球は、寸分の狂いなくマリントンのグラブへ。
J(#゚_ゝ゚)し 「マクウカニストの底力見せたるで!!」
/;゚、。 / 「!?」
ダイオードは違和感を感じた。
何か、自分の足が遅くなったような……そんな妙な感触。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
マリントンのグラブにボールが入る。
ダイオードは、まだスライディングすらしていない。
当然タッチアウト。ダイオードのタッチアップは失敗に終わった。
- 375 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:12:49.72 ID:hmvE4J2D0
- ('A`) 「アーロン……なにしたんだ?」
攻守交替でベンチに帰るときにガイエルに質問する。
ガイエルは人差し指を口にあててこう言った。
J( ゚_ゝ゚)し 「禁則事項です☆」
('A`) 「……」
誰だよ、アーロンにハルヒを見せた奴は。
- 376 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:14:09.64 ID:hmvE4J2D0
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 0 03
V 002 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
>>374
一瞬ビビったけど、あってるよー
- 379 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:20:27.16 ID:hmvE4J2D0
- 4回裏。
ミ,,゚Д゚彡 「おらっ!」
(;^Д^) 「……」
宝さんが三振。
ミ,,゚Д゚彡 「エンドレス!」
J( ゚_ゝ゚)し 「エイト!」
ガイエルが三振。
(,,;゚Д゚) 「ぐおっ!」
擬古さんがファーストゴロに倒れた。
初めての三者凡退だ。
- 381 名前:◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:24:37.41 ID:hmvE4J2D0
- ('A`) 「おいおい……布佐が調子に乗ってんじゃねえか」
ちらりと横目でその原因であろうマリントンを見る。
本人は飄々とグラブを手にはめている。
('A`) 「逆転されたらA級戦犯だぞお前……」
試合経過
123 456 789 RH
J 000 0 03
V 002 0 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 385 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:45:28.30 ID:hmvE4J2D0
- 5回表。
(・ e ・) 「ほっ」
先頭打者の関本。
ショートへと転がっていくが、深い。
('A`) 「慶三!」
(K;‘ー`) 「くっ……」
川島にとっての初めての守備機会。
何とか逆シングルでボールを捕球する。
(;^Д^) 「……駄目だな」
宝はベースから離れ、腕でバツを作る。
まだまだ不得手なショートで悪送球をしないとも限らない。
4回に引き続き、内野安打で先頭打者が出塁した。
- 387 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:47:37.24 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) 「……」
从 ゚∀从 (わりいって。そんな顔でにらむな)
(-_-) 「……まあ、いいか」
次の打者は、安パイなのだから。
( メントス) 「わしを安パイ扱いするとはなにごとや!」
(-_-) 「……」
从 ゚∀从 (そりゃスライダーにのけぞるんだもん。草野球かよ)
- 390 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:56:11.22 ID:hmvE4J2D0
- ポンポンと2ストライク。
見せ球も必要ないと判断したバッテリーは、インハイストレートを選択した。
从 ゚∀从 (鉢さんを抑えられたんだから……)
(-_-) (来い!)
从 ゚∀从 (メンチも抑えられるだろ!)
( メンチ) 「あわわ」
わけもわからずバットを出すメンチ。
何とかバットには当たるが平凡なセカンドゴロ。
- 391 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 13:59:03.07 ID:hmvE4J2D0
- ('A`) 「よし」
確実に捕球して。
(K‘ー`) 「はい、こっち!」
確実に送球しt
('A`) 「あ」
(K‘ー`) 「あ」
(-_-) 「」
从 ^∀从 「」
俺の送球は慶三の遥か頭を越える悪送球。
レフトの伊陽が素早くカバーに入ってくれたため、一、二塁の傷で済んだ。
- 394 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:01:40.01 ID:hmvE4J2D0
- (#メA`) 「よーし、しまってこー」
(K‘ー`) (カメラに気づかれずレバーブローを入れる高岡さんの技術……見習わないと)
『8番キャッチャー、矢野』
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「ラッキー、ラッキー。チャンスだね」
从 ゚∀从 「……ふう」
少し気分が浮ついている。
修正しなければ。修正。
そう思いつつ第一球を投じる。
- 396 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:04:58.66 ID:hmvE4J2D0
- ( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ (がっくり来てるよね。布佐に同じことされたからね……)
高岡のファーストストライク。
いまひとつ球威の乗っていないストレート。
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )/ 「お返しだよ!」
それを、叩く。
おっつけた打球はファーストの頭を越え、ライト線へ。
从;゚∀从 「ぐ……」
- 398 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:11:29.17 ID:hmvE4J2D0
- J( ゚_ゝ゚)し 「安心せえ、理緋!」
すでに三塁を回っている関本を食い止めるのは無理だ。
しかし、今二塁を回ったところのメンチを止めることならできる。
J( ゚_ゝ゚)し 「炸裂せえ、魔空間!!」
( メンチ) 「ふ……俺に魔空間が通用するとでも?」
J( ゚_ゝ゚)し 「な、まさか……お前は伝説の魔空間殺しの末裔!?」
( トモダチ) 「そうだ、私がともだちだ」
J( ゚_ゝ゚)し 「畜生……こんな奴が日本に……さすがデイリーの情報は正しいで」
( メンチ) 「お前の魔空間が劣っているわけでは(以下濃厚な心理戦がメンチとガイエルの間で500行繰り広げられるが割愛)
結局メンチはセーフでノーアウトランナー一塁三塁。
逆転のピンチだ。
- 399 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:13:33.40 ID:hmvE4J2D0
- J 1−2 V
从 ゚∀从 「……」
バッターボックスには布佐。
バントの構えをすでに見せている。
从 ゚∀从 「ゲッツーを殺してくるか……」
結局初球のカーブをバントし、ワンアウトランナー二塁三塁。
左打席には先ほどヒットの青星を迎える。
- 402 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:21:05.66 ID:hmvE4J2D0
- (★_★) 「……」
从 ‐∀从 「ふぅ……」
('A`) (高岡さん、すいません……)
从 ゚∀从 「ボケの尻拭いぐらい、ちゃんとしないとな」
ボールを握り返す。
矢野へのボールは失投だ。
誰かのせいではない。気持ちを切らせた自分の責任だ。
(★_★) 「……」
从 ゚∀从 「行くぜ」
- 403 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:24:06.43 ID:hmvE4J2D0
- しかし毒田と同じくいやらしいタイプのバッターである。
高岡がこの打席青星に投じた球は先ほどのスライダーで7球目。
从 ゚∀从 (さすが、青星君、ってとこかな?)
しかしカウントはツーワン。
高岡は7球中6球ストライクを投げたことになる。
从 ゚∀从 (粘られるのはつらいが……)
(;★_★) 「……」
从 ゚∀从 (ひたすら粘るのもつらいだろ? カウントには余裕がある。厳しいとこ行くぜ)
- 404 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:31:28.75 ID:hmvE4J2D0
- (-_-) (フォークだ)
从 ゚∀从 (おっけえ!!)
高岡らしい洗練されたフォームから、投じられるボール。
それは、完璧なコントロールによって、低めへ。
(;★_★) 「っ!」
フォークボール。
その落差に驚きながらも、何とかカットしようとする。
しかし、その弱いバットでは、高岡のフォークをとらえることはできなかった。
从 ゚∀从 「へっ」
(;★_★) 「……」
8球粘るものの、三振。ツーアウトに。
- 406 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:36:04.15 ID:hmvE4J2D0
- ヽ;VLVノ 「……」
山野はいいようのない威圧感を感じていた。
マウンド上の高岡から。
見れば、高岡は鬼神のような顔をし、なにかオーラなものも出てるような気がする。
ヽ;VLVノ (打てる気がしない……)
一瞬だけ、そんな考えが頭をよぎる。
しかし、次の瞬間それを否定する。
ヽVLVノ (勝負する前から、負けてどうする……!)
- 407 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:38:54.76 ID:hmvE4J2D0
- しかし、山野の予想通り打てるような甘い球は1つも来ない。
そしてカウントツーツーからの第6球目。
ヽ;VLVノ 「ぐ……!」
スライダーをひっかける。
しかし飛んでいく方向はセカンド。
普通なら平凡なゴロだが、毒田ならやらかしもある。
(;'A`) 「……」
捕球する。
そして。
(;'A`) (ええい、手汗静まれ……)
ファーストに送球する。
今度は問題ない。スリーアウトチェンジ。
- 408 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 14:41:58.84 ID:hmvE4J2D0
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 01 15
V 002 0 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 425 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/09/13(日) 16:49:42.19 ID:8tNaW6aCO
- 五回のウラ。
ミ,,゚Д゚彡(行きます!)
(=゚ω゚)「よぅ……」
7番伊陽はセカンドゴロ。
(;-_-)「うっ……」
从 ゚∀从「ピッチャーに打撃求めちゃダメだよね」
8番比木、9番高岡は三振。
ミ,,#゚Д゚彡「よっしゃあ!!」
マウンド上で雄叫びを上げる布佐。
その球威は、素人目にも上がっていることがわかる。
- 427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 16:53:09.83 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「あーあーあー………」
情報はあった。
布佐は尻上がりに調子を整えるピッチャーだと。
五回を投げ、布佐の球数は70を越えた。
そろそろ布佐にとっては肩が温まる頃なのだろう。
('A`)「厄介だぞー」
次の6回は、自分からだ。
試合経過
123 456 789 RH
J 000 01 15
V 002 00 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 16:56:46.87 ID:8tNaW6aCO
- 6回表は3番のダイオードから。
/ ゚、。 /「打ち頃」
高岡のチェンジアップを簡単にライト前へ。
ダイオードは悠々と一塁ベースに到達した。
从#゚∀从(だから何であんないい球をヒットゾーンに飛ばせんだよ……!)
(-_-)(イライラするな。さっきの二の舞だぞ)
从 ゚∀从(……分かってるよ)
- 431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:01:59.02 ID:8tNaW6aCO
- (丶`_ゝ´)「さっきはチャンスに凡退したからな……」
素振りを数回行い、左打席に入る。
今年で不惑の40歳を迎えた鉢。
未だに4番に座るのは、名前ではなく実力のおかげだ。
(丶`_ゝ´)「きやがれ、若僧」
从 ゚∀从(一応三十路なんですけどね……)
- 433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:05:14.24 ID:8tNaW6aCO
- 从 ゚∀从(丁寧に丁寧に、と)
ストレートを低めに抑えワンストライク。
未だ高岡は失投らしい失投をしていない。
(丶`_ゝ´)(……それは、つまりこれからする可能性が高いということだ)
失投をしないなど、ほとんどない。
だから、数少ないであろう失投は逃さない。
それが、鉢のポリシーだ。
- 435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:09:52.60 ID:8tNaW6aCO
- 失投を待ちながら迎えた第五球目。
待ちに待った失投がやってきた。
从;゚∀从(!)
(;-_-)(!)
回は6回、球数は80程度。
フォークが、抜けた。落ちない半速球。
これ以上ない打ち頃。
(#丶`_ゝ´)「貰った!」
40にして見事に鍛えられた肉体。
その力をフルに使ってバットを振る。
- 438 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:14:32.83 ID:8tNaW6aCO
- ボールは高々ライトに舞い上がる。
完璧な感触。通算250本の本塁打を打った鉢は確信した。
あのボールは、スタンドインする。
(丶`_ゝ´)「よし……ん」
見ると、一塁ランナーのダイオードが動いていない。
早く行ってくれないと動けないのだが。
/ ゚、。 /「とてもすごい打球。間違いなくホームラン」
(丶`_ゝ´)「うむ、だから早く行ってくれないか」
/ ゚、。 /「……ライト以外なら」
(;丶`_ゝ´)「!」
- 442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:21:03.40 ID:8tNaW6aCO
- J( ゚_ゝ゚)し「力を貯めておったんや……」
ライトの守備位置で佇む男。
マクウカニスト・ガイエル。
( セツメイ)「なっ! あれは!」
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )「なに!? 知っているのかメンチ!!」
( セツメイ)「ああ、あれはマクウカニストの中で禁術とされていr」
(以下800行にわたりメンチが説明をするが割愛)
スタンドイン確実のボールはめちゃくちゃ失速しガイエルのグラブへ。
すごすごとベンチに帰る鉢。
これでワンアウト。
- 446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:25:50.12 ID:8tNaW6aCO
- 从 ゚∀从(……まあ、助かったのかな)
ガイエルの体から赤い龍が飛び出てボールに噛みついたのは見なかったことにしよう。
うん。
立ち直った高岡は続く荒井・関本を打ち取る。
これでスリーアウト。
从 ゚∀从「サンキューガイエ……ル?」
(ヽ゚_ゝ゚)「ハイ?」
从;゚∀从「えーと……髪抜けてるしやつれてるし……大丈夫?」
(ヽ゚_ゝ゚)「代償ですわ……平気です」
从;゚∀从「そ、そう」
- 448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:27:35.93 ID:8tNaW6aCO
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 010 16
V 002 00 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:33:05.12 ID:8tNaW6aCO
- ※ガイエルなんなの? って人へ
ガイエルは実際に東京ヤクルトスワローズに在籍する選手です。
数多くの伝説(ネタ)を持っている選手で、この話の中ではそのネタをデフォルメしています。
ガイエルの詳しい記事はこちら→http://blog.m.livedoor.jp/hae10230/c.cgi?id=51324314
- 452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:39:22.51 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「さ、6回裏だ」
素振りをして右打席に入る。
この試合3打席目。今のところ打率10割だ。
('A`)(10割バッター……パネェ)
そんなことを考えていると、布佐が投球動作に入っていた。
慌てて集中する。
- 454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:42:33.71 ID:8tNaW6aCO
- ズドン。
そんな音が球場に響いた。
('A`)「……は?」
今のはなんだ。直球か。
見えなかったぞ。
慌ててスピードガンを確認する。
154km/h
('A`)
('A`)
('A`)(いやいやいやいやいや)
なんだいきなり154って。
今まで145そこそこだったじゃねえか。
あれか。覚醒か。登板中に覚醒ミッション成功したか。
- 456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:45:33.15 ID:8tNaW6aCO
- なんか急に覚醒した布佐。
150キロの直球とカットボールに苦しめられ、あえなく三振に倒れてしまった。
('A`)「尻上がりすぎだろ……」
ミ,,゚Д゚彡(……調子出てきた)
- 457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:48:38.27 ID:8tNaW6aCO
- 覚醒した布佐は続く川島・マリントンも三振。
強烈な球威の前にお手上げするしかなかった。
(K;‘ー`)「速すぎだろう」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……」
ミ,,゚Д゚彡(……調子出てきた出てきた)
試合経過
123 456 789 RH
J 000 010 16
V 002 000 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 17:58:47.56 ID:8tNaW6aCO
- 対する高岡さんも負けてはいない。
( フライ)「ああん」
メンチをショートフライに。
(;;〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )「くっ……」
矢野を三振。
そして――
('A`)「……まだ続投すんのか」
ミ,,゚Д゚彡(緊張しなくなってきたー)
ピッチャーの布佐を打ち取った。
7回表、三者凡退で乗り切った。
- 462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:00:18.56 ID:8tNaW6aCO
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 010 0 16
V 002 000 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:08:35.69 ID:8tNaW6aCO
- 7回裏も布佐の確変は続いていた。
ミ,,゚Д゚彡「おらっ!」
( ^Д^) 「……くそっ」
4番宝さんが三振。
ミ,,#゚Д゚彡「これで終わりだ!」
(,,゚Д゚)「はにゃーん」
6番擬古も三振に倒れチェンジ。
追加点が欲しいが、重たいゲーム展開になってきた。
- 467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:09:23.01 ID:8tNaW6aCO
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 010 0 16
V 002 000 0 23
J 布佐−矢野
V 高岡−比木
- 472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:28:11.88 ID:8tNaW6aCO
- 一点差を逃げる展開。
いかにも辛いが、ここをしのいで勝利を掴まなければならない。
そのための人材――中継ぎ陣がヴィッパーズには豊富にいる。
『選手の交代をお知らせします。ピッチャー高岡に代わりまして、杉浦。背番号54』
( ФωФ)「ふむ、久々のマウンドがこんな場面か。高岡め」
- 476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:33:42.23 ID:8tNaW6aCO
- 杉浦さんは左のサイドから150キロ近い速球と鋭く大きく曲がるスライダーを投げる。
ヴィッパーズ不動のセットアッパーとして君臨している。
『1番センター、青星』
(★_★)「杉浦さんか……」
左バッターにとって杉浦のスライダーは脅威だ。
大きく曲がるそれは左打者にまるで背中からくるような錯覚を起こさせる。
- 478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:39:06.96 ID:8tNaW6aCO
- (-_-)「なかなかの調整だな」
同級生の比木がマウンドに駆け寄る。
公私ともに仲がよい2人である。
信頼はお互いに置いていた。
( ФωФ)「ああ。今年は調整が遅れてどうなるかと思ったが」
(-_-)「弟者がケガで出遅れてるからな。お前と斉藤でなんとかせにゃ」
( ФωФ)「ああ。持てる力すべて使おう」
- 479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:42:35.90 ID:8tNaW6aCO
- ( ФωФ)「……」
ザッと足元の土をならす。
そしてタメを作ったあと、一気にサイドから投げ込む。
(★_★)「!」
甘ければ積極的に行こうとしていた青星だが、このアウトローには手がでない。
杉浦得意のクロスファイア。一朝一夕に打てる球ではない。
- 481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:48:45.16 ID:8tNaW6aCO
- ( ФωФ)「……」
それから杉浦はテンポよく投げ込む。
カウントツーワン。追い込まれてからの投球。
(;★_★)(スライダー……!)
今まで杉浦はスライダーを投げていない。
必ず、ここでスライダーが来る。
左打者にとっての魔球、スライダーが。
- 483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 18:54:40.81 ID:8tNaW6aCO
- (#ФωФ)「むんっ!!」
力を込めたスライダー。
自分はこの球を打ったことがない。
しかし。
(★_★)(打たなきゃ、当たんねえだろ!)
バットを出す。
なんとか、バットに当たる。
ボテボテのショートゴロ。
しかし自分には武器がある。“彗星”の脚。
(#★_★)「おおっ!」
猛然と、一塁を目指す。
- 484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 19:00:02.65 ID:8tNaW6aCO
- (K‘ー`)「く……」
ダッシュで前に出て、補給する。
後は投げるだけだ。外野手仕込みの、強肩で。
(K#‘ー`)「なめんな!!」
レーザーのような送球を見せる。
“彗星”と“レーザー”。勝ったのは――
『セーフ!』
“彗星”であった。
- 487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 19:09:11.55 ID:8tNaW6aCO
- 今日盗塁を決めている青星がいるが、山野はバントの構え。
確実に同点にしようという作戦。
ヽVLVノ(……俺の仕事は、これだ)
確実にピッチャーに捕らせる。
難なく犠牲バントを成功させる。
これでランナー二塁。
( ФωФ)「……」
(-_-)(ここで、こいつか……)
/ ゚、。 /「決める」
『3番ファースト、ダイオード』
- 521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:24:23.65 ID:8tNaW6aCO
- (;ФωФ)「……」
じとり、と嫌な汗が頬を伝う。
エースである高岡から3打数2安打。
しかも凡退の当たりもヒット性のもの。
/ ゚、。 /「……」
無機質な目で自分を見つめるダイオード。
杉浦は、あることをこの打席に感じていた。
( ФωФ)(……この打席が、今年のヴィッパーズを行く末を左右するな)
- 523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:27:07.67 ID:8tNaW6aCO
- ( ФωФ)「……むんっ!」
左腕をしならせ、ストレートを投げ込む。
自分は先発ではない。ただ3つのアウトを取ることだけに集中すればよい。
後先など、考えない。
/ ゚、。 /「……!」
右打者のダイオードの膝に決まるインローストレート。
さすがにこれには手がでない。
( ФωФ)「……」
/ ゚、。 /(……いい球)
- 525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:31:05.37 ID:8tNaW6aCO
- / ゚、。 /(……狙うは、スライダー)
ダイオードは過去の杉浦のVTRを見ていた。
その時に杉浦のスライダーも見た。正直、気圧された。
こんな小さな島国にこんなボールを操る人間がいるのかと。
/ ゚、。 /(……確かに素晴らしい球。でも、打てない球じゃない)
同時にそう感じてもいた。
確かに杉浦のスライダーは凄まじい。
だが、自分の方が凄まじい。
ダイオードには、その自信があった。
- 526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:36:37.63 ID:8tNaW6aCO
- メジャー時代から練習の虫として有名だった。
このキャンプでも、日本に対応するためにひたすらバットを振ってきた。
変化球に対応するためにジャガースのエース格の藪の投球の時打席に立たせてもらった。
練習に裏打ちされた自信。それは、揺るがない。
/ ゚、。 /(私以上に練習してる者はいない。だから私が、一番になる)
カウントが進みツーツー。
杉浦がサインに首を振る。
/ ゚、。 /「!」
スライダーが来る。
ダイオードは、ほとんどシックスセンスと言える感覚で、それを感じ取った。
- 529 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:41:53.40 ID:8tNaW6aCO
- ( ФωФ)「……」
比木のチェンジアップのサインに首を振る。
打席に立つこの男は、それで抑えられるような人間ではない。
自らが一番得意とする球で挑まなければ、負ける。
( ФωФ)「……」
思えば、プロに入ってからひたすらスライダーを磨いてきた。
コーチの進言も聞かず、ただただストレートとスライダーだけを。
30も半ばになったいまでも、自信が持てる球はその2つだけだ。
その2つだけで、あらゆる強打者をねじ伏せてきた。
( ФωФ)「だから、貴様にも負けん」
ダイオードがスライダーを狙っているのはわかっている。
それでもなお、自分はスライダーを投げる。
そして、ねじ伏せて見せる。
- 533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:46:06.14 ID:8tNaW6aCO
- (#ФωФ)「おおおっ!!」
自らの、プライドを、魂を、僅か数十グラムの球体に込める。
/#゚、。 /「あああっ!!」
己の闘志を、誇りを僅か1000グラムに満たない棒に込める。
お互いの想いが、激突する。
そしてボールは、高く舞い上がった。
- 537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:52:37.00 ID:8tNaW6aCO
- (;ФωФ)「……」
/;゚、。 /「……」
ボールは、セカンドとライトの間にポトリと落ちた。
毒田の責任でも、ガイエルの責任でもない。
ふらふらと、しかしヒットゾーンに落ちるポテンヒット。
( ФωФ)「……負けだ」
/ ゚、。 /「……負けた」
ヒットを打ったダイオードも、顔は晴れない。
猛打賞を記録したにも関わらず。
その目はただ杉浦だけを捉えている。
/ ゚、。 /「次は、完璧に叩きのめす」
ヒットを打たれた。
ジャストミートであろうが、ポテンヒットだろうが関係ない。
実際に青星は三塁に行った。セットアッパー失格だ。
( ФωФ)「次は、ねじ伏せる」
- 539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:54:46.90 ID:8tNaW6aCO
- 『4番、レフト鉢』
(丶`_ゝ´)(がっくり来てる時はファーストストライク……)
( ФωФ)「むん!」
147キロのアウトローいっぱいのストレート。
先ほどのヒットの影響を微塵も感じさせない。
(;丶`_ゝ´)「……は、甘い考えだな。うん」
- 542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 21:59:54.88 ID:8tNaW6aCO
- カウントが整ってツーワン。
杉浦はいつものフォームで力いっぱい投げようとする。
(丶`_ゝ´)(ストレート!)
あの腕の振り。力いっぱいのストレート。
狙い撃ちできる球だ。
( ФωФ)(甘いですね。鉢さん)
しかし、投じられた球はタイミングを外す遅い球。
先ほど、ダイオードに対して首を振ったチェンジアップ。
(;丶`_ゝ´)(なに!?)
完全にスイングを乱された。
力なく上がったボールは難なくショート川島のグラブへ。
これでツーアウトだ。
(丶`_ゝ´)「くっ……」
- 543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:04:06.60 ID:8tNaW6aCO
- ( ФωФ)「確かに俺の持っている槍は二本だが……」
帽子を一旦取り、汗を拭って被り直す。
そして、不適な笑みを浮かべた。
( ФωФ)「たまには、矢も射ないとな」
さて、鉢を乗り切れば昨年11打数ノーヒットに抑えた荒井だ。
油断はしないが、安心はする。
(; ̄粗 ̄)「うう……兄貴……」
- 547 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:07:31.94 ID:8tNaW6aCO
- 荒井に対する打席。
カウントツーツー。
( ФωФ)「俺の、鍛え上げた槍だ」
(;; ̄粗 ̄)「うううっ!!」
荒井をスライダーで三振。
ライトスタンドから歓喜の声が聞こえる。
逆にレフトスタンドからは失望の溜め息が漏れていた。
- 548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:08:42.64 ID:8tNaW6aCO
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 010 00 18
V 002 000 0 23
J 布佐−矢野
V 高岡・杉浦−比木
- 554 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:16:54.73 ID:8tNaW6aCO
- 8回の裏。
マウンドにはまだ布佐があがる。
球数はそろそろ100球だが、疲れは未だ見えない。
バッターはまだノーヒットの伊陽だ。
(=゚ω゚)「……」
打席に入り、足場を整える。
これまでの打席はふがいないものだった。
こんなことをしていては、チャンスが掌からすり抜けていってしまう。
- 559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:22:33.42 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,゚Д゚彡(調子上がってきた)
布佐が投じた第1球。
真ん中高めの速球。
(=゚ω゚)「! 打てるよう!」
伊陽はバットを出す。
しかしバットがボールを捉える瞬間――ボールが動いた。
(=゚ω゚)「!?」
伊陽はそれに対応できない。
芯を外された打球は力なくセカンドへ。
あっさりとアウト。
プロ初ヒットは、まだ遠い。
- 566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:30:16.30 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,゚Д゚彡(調子上がってきた)
打席には8番比木。
今日はヒット一本を放っている。
(-_-)(あと一点……どうしても欲しい)
そのために自分ができることはなんだ。
一つしかない。とにかく、塁に出る。それだけだ。
ミ,,゚Д゚彡(調子上がってきた)
布佐の腕から快速球が投じられる。
先ほど150キロオーバーを連発。
本当に調子が上がっているのだろう。
- 576 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:35:20.95 ID:8tNaW6aCO
- しかし、いくら尻上がりといえども限界はある。
100球を超えた球数。疲れは必ず出てくる。
カウントツーツーからの6投目。
比木が予測した疲れは思ったより早く現れた。
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )(甘い……!)
ミ,,゚Д゚彡(ありゃ)
カープが浮き、甘くはいる。
クリーンアップを経験したこともあるバッターである。
甘い球は、見逃さない。
(-_-)(甘い!)
打球は二遊間を破るセンター前ヒット。
比木はマルチヒットを記録した。
- 579 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:39:34.55 ID:8tNaW6aCO
- そしてバッター杉浦の打順。
荒巻代行が選手の交代を伝える。
『選手の交代をお知らせします。バッター杉浦に代わりまして、
茂等。背番号6』
生え抜きの日本人野手最年長である茂等。
声援を背に受け、初打席へ向かう。
( ・∀・)「比木め、いい場面作ってくれるじゃん」
- 584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:44:10.38 ID:8tNaW6aCO
- ( ・∀・)「さて……」
ベンチのサインを確認する。
ここは何が何でも一点を取りたい場面。
セオリーなら、バントでランナーを得点圏に進め、毒田に回すだろう。
( ・∀・)「!」
しかし、荒巻代行はサインを出さない。
すなわち、『好きに打ってよし』ということ。
( ・∀・)(荒巻代行……以外にギャンブラーですね)
- 588 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:48:07.09 ID:8tNaW6aCO
- ( ・∀・)「上等」
昨年は打率.212で終わった。
下位打線とはいえ、低すぎる打率。
自動アウトと言われても、反論出来なかった。
体の衰えは……大きくは感じていない。
( -∀-)「……」
衰えを感じたのは、目。
だから、目に手術を施した。
視力向上の手術。それは予想以上に茂等の視界を広げた。
- 592 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:53:48.84 ID:8tNaW6aCO
- 今なら全盛期、いやそれ以上の活躍が出来そうな気がする。
それほど今の茂等の視界はクリアだった。
( ・∀・)(俺もなんだかんだでプロ生活15周年だ)
右打席に入りバットを構える。
( ・∀・)(ルーキーには、負けねえ)
- 593 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:56:28.40 ID:8tNaW6aCO
- 自分には力は無い。
しかし、自分には老獪な技術がある。
( ・∀・)(荒ぶるプロの世界に身を置くとどうしてもこうなるのよね)
ミ,,゚Д゚彡(調子は依然上がってるし)
布佐が第1球を投げる。
インコースに決まるストレート。
しかし茂等は動じない。
- 595 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 22:59:04.18 ID:8tNaW6aCO
- ( ・∀・)(……148キロ。さっきは150オーバー連発だったのに)
布佐の腕が疲れによって下がってきているのも、わかっていた。
布佐を攻め立てるなら、今だ。
ミ,,゚Д゚彡(調子はいいし!)
ストレートを中心に組み立てる配球。
カウントがツーツーになっての第5球。
- 598 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:01:45.88 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,゚Д゚彡(これで……)
スライダーの握りを確かめる。
茂等に向かって、投げ込む。
ミ,,゚Д゚彡(終わりだし!)
( ・∀・)(いい球! ……だが)
茂等はバットを出す。
ボールが高々と上がり――内野スタンドに飛びこんだ。
( ・∀・)(ふふふ、疲れろ疲れろ)
ミ,,;゚Д゚彡(うざいし……)
- 603 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:07:28.97 ID:8tNaW6aCO
- 茂等は続くストレート、カーブ、ストレートもカットする。
そのスタイルはまさに毒田のそれだ。
( ・∀・)(悪いな毒田。俺は敵の塩も上質なら盗むんだ)
('A`)「……」
ミ,,;゚Д゚彡(いい加減うざいし……)
茂等は一旦ボックスを外し、ヘルメットを取ってまた被り直す。
仕切り直しの9球目。
ミ,,゚Д゚彡(いい加減終われ!)
( ・∀・)(終わらせてやるよ)
低めに決まるカーブ。
しかしそれを茂等は拾い上げ、ライトへ。
弱い打球ではあるが、確実にライト前に落とす。
ミ,,゚Д゚彡(ノーパワー打法だし)
- 605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:10:42.82 ID:8tNaW6aCO
- (-_-)(行ける!)
ライト前に落ちる打球。しかしライトのメンチは守備が不得手だ。
なら、三塁を狙える。比木は猛然と二塁を蹴り、三塁を目指す。
( フォード)「比木さん、それはないでっせ!」
メンチはボールを拾い上げ、赤星を刺した強肩(ソースはデイリー)を見せる。
送球は、糸を引くように三塁へ。
- 617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:20:41.69 ID:8tNaW6aCO
- そう、メンチは確かに強肩だ。
ただし。
(; ̄粗 ̄)「これを取ってタッチするのは辛いです!」
コントロールを度外視すれば。
メンチの送球は大きく逸れ、荒井がジャンプして取るのがやっとであった。
(-_-)(よし)
比木は悠々と三塁へ到達。
ワンアウトランナー一三塁。
- 621 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:24:23.27 ID:8tNaW6aCO
- 『1番セカンド、毒田』
('A`)「ああっー!! 回って来ちゃったなぁ――!」
どう見てもチャンス。
どう見ても勝敗を分けるターニングポイント。
なんだこれは。なんだこれは。
おい慶三、お前俺のフリしろ。お前緊張しないだろ。
- 648 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:48:30.26 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「……」
右打席に入る。
マウンドにはまだ布佐。
疲れが見えているが、まだ代える気はないらしい。
ミ,,゚Д゚彡(抑えてみせるし)
('A`)(うだうだ言っててもしょうがねえ。やるしかないだろ)
さっきは鋭い打球を放ったじゃないか。
緊張する場面なんてどこにもない。
外野フライでも十分なのだ。
- 652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:51:18.19 ID:8tNaW6aCO
- ('A`)「……」
1球目はストレートから。
球速は147キロ。
なるほど、さっき三振したときより球速もキレも落ちている。
('A`)(……打てるな)
ミ,,゚Д゚彡(打たせないし)
疲れは布佐にもわかってるんだろう。
とにかく狙い目を絞らせないようあらゆる球種を投げてくる。
- 655 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:54:35.48 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,;゚Д゚彡(………)
布佐の額に汗が浮かんでいる。
代えてやればいいと思うのだが。
どうやらジャガースベンチはこの回までは布佐に任せたようだ。
('A`)「好都合だ」
布佐の投球はボール先行でワンスリー。
次に甘い球が来れば迷いなく振り切れる。
- 658 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/13(日) 23:57:07.24 ID:8tNaW6aCO
- ミ,,;゚Д゚彡(……)
布佐が投げた第5球目。
真ん中近くのストレート。
('A`)「もらった!!」
恐らく球速も140そこそこ。
打てない要素が見当たらない。
思い切り、バットを振り抜いた。
ミ,,;゚Д゚彡(!)
- 667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:04:04.03 ID:H+MqMNR9O
- (;'A`)「……」
夢だろ?
だって真ん中だぜ?
宝さんやアーロンなら130mはぶっ飛ばす球だぜ?
(;'A`)「……」
……なんで、ボールがショートのグラブに入ってるんだ?
A.打ち損じてポップフライを上げたからです。
言いようのない虚しさが胸を包んだ。
情けないやらなんやらで、俯いてベンチに帰る。
これじゃ伊陽のこと言えないじゃないか。クソ。
( ・∀・)「……」
('A`)「……」
こちらを見る茂等さんの視線を、俺は合わせることが出来なかった。
- 669 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:08:13.43 ID:H+MqMNR9O
- (K‘ー`)「ファーストストライク!!」
ミ,,;゚Д゚彡(まずいし!)
続く川島の打席。
初球をおっつけた球は右中間へ。
(K‘ー`)(抜けた!)
そう思った瞬間。
( メンチカツ)「ソースはデイリー――!!」
メンチがダイビングキャッチ。
まさかのメンチのファインプレーでチェンジ。
(K;‘ー`)「……」
流れが、ジャガースに傾きつつあった。
- 674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:10:07.23 ID:H+MqMNR9O
- 試合経過
123 456 789 RH
J 000 010 00 18
V 002 000 00 25
J 布佐−矢野
V 高岡・杉浦−比木
- 677 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:13:49.32 ID:H+MqMNR9O
- 『震えるつま先 高鳴る鼓動』
女性ボーカルの歌が球場に響き渡る。
ライトスタンドの客がメガホンを振ってリズムを取る。
『スタジアムに 響き渡る歓声を 吸いこんであなたはゆっくり立ち上がる』
(JASRAC申請中)
その歌詞に合わせて、リリーフカーがグラウンドに現れた。
背番号66、守護神斉藤の初登板だ。
(・∀ ・)「ぶりんぶりんいっくぞー」
- 682 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:16:37.93 ID:H+MqMNR9O
- 斉藤さんは投球練習をしている。
さて、この物語の主人公である俺がどこにいるかというと、ベンチである。
('A`)「……」
代打した茂等さんがそのままセカンドへ。
1番に斉藤さんが入ってピッチャー。
つまり、今日の俺の仕事は終わりだ。
从 ゚∀从「はっはっはっ。エラーするからだぜ?」
('A`)「……」
俺、主人公だよな?
- 688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:19:57.39 ID:H+MqMNR9O
- 9回の表。
マウンドには守護神斉藤。
比木が斉藤のもとに駆け寄る。
(-_-)「調子はどうだ?」
(・∀ ・)「全開のぶりんばりんっすー」
(-_-)「……まあいい。さっさと締めて初勝利といこう」
(・∀ ・)「うぃっすー」
- 690 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:22:31.16 ID:H+MqMNR9O
- バッターは曲者の6番関本。
今日もヒット一本を放っている。
(・∀ ・)「火の玉ストレート!」
(・ e ・)「……」
斉藤の第一球。
場内がざわつく。
(-_-)(……)
(・∀ ・)「いきなり153かー。結構出たなー」
(-_-)(……)
- 695 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:27:16.81 ID:H+MqMNR9O
- (-_-)(……)
この1球で比木は確信した。
(-_-)(斉藤、調子悪いな。……いや、調整不足と言うべきか)
斉藤の武器であるストレート。
150キロを越えているときはあまり調子がよくないときだ。
斉藤本来のストレートは初速と終速の差が少ない。
だからこそノビのある直球に見えるのだ。
(・∀ ・)「比木さん早くボール返してー」
(-_-)(……)
しかし今の球。
初速だけが速いだけの平凡なストレート。
まったくノビが見られない。
比木は言いようのない不安に襲われた。
(-_-)(逃げ切れるのか……?)
- 699 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:31:52.88 ID:H+MqMNR9O
- (・∀ ・)「三振取っちゃうよー」
カウントは進んでツーツー。
追い込んでいるように見える。
しかし関本はこの打席一度もバットを振っていない。
(・ e ・)「……」
(-_-)(ストレート狙い撃ちか?)
それなら困ったものだ。
斉藤の変化球はいいとは言えない。
コントロールも悪く無闇にカウントを悪くする可能性もある。
- 701 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:34:16.20 ID:H+MqMNR9O
- 好調の斉藤ならストレートで三振が取れるのだが……
かと言って変化球も賭だ。
(・ e ・)「……」
(-_-)(くそ、表情が読めん)
仕方なく、高めのストレートを要求する。
斉藤の球威に賭けるしかない。
- 702 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:37:15.21 ID:H+MqMNR9O
- (・∀ ・)「終わりっ!」
斉藤のストレート。
それは、投手と打者の18.44mを瞬時に埋める。
関本はその球を――
(・ e ・)「シッ!!」
捉えた。
コンパクトなスイングで振り切る。
打球は左中間を破る。悠々ツーベースだ。
(;-_-)(……)
- 706 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:41:10.71 ID:H+MqMNR9O
- (・∀ ・)「ごめんなさーい」
(-_-)(……)
流石がケガで開幕に出遅れている現在、計算できる中継ぎは限られている。
できれば、斉藤で締めて欲しいのだが。
(-_-)(まあ……次は安パイだしな)
( 誰が安パイやねん!) 「メンチ」
- 711 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:44:40.75 ID:H+MqMNR9O
- (-_-)(頼む! まずはこいつを抑えてくれ!)
( メンチ)「スタンドまで飛ばしたるわ!」
(・∀ ・)「よゆーよゆー」
斉藤はセットポジションから、ストレートを投げる。
相変わらず斉藤本来のものではない直球。
しかしメンチは見逃しストライク。
( メンチ)「うわー、ものごっつ速いわ」
- 712 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:47:14.37 ID:H+MqMNR9O
- (-_-)(……)
続けて要求したのはカーブ。
斉藤のカーブでカウントを稼げるかは怪しいが。
(・∀ ・)「ほっ!」
( 神ンチ)「あ、これなら打てそう」
メンチの漆黒のバットが、斉藤のカーブを捉えた。
(;-_-)(なにぃ!?)
- 716 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:52:46.52 ID:H+MqMNR9O
- 打球は一二塁間へ。
( ヨロコビ)「やった! 打った! 来日初ヒット!」
(#・∀・)「おおおっ!!」
しかし、その球に追いついた人物がいた。
毒田に代わりセカンドに入った茂等である。
(#・∀・)「届けえっ!」
必死に左手を伸ばす。
そしてボールが、茂等のグラブにかかった。
( コンワク)「えっ」
(#・∀・)「おらっ!」
捕球からの送球も早い。
ヒット性の当たりを掴んでファーストへ。
- 719 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:55:01.33 ID:H+MqMNR9O
- (;-_-)(おいおい……メンチにも打たれかけるとは何事だ)
(・∀ ・)「……」
『8番キャッチャー矢野』
ランナーは進んで三塁に。
同点のランナーが三塁に。
(-_-)(勘弁してくれ……)
- 722 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 00:58:38.12 ID:H+MqMNR9O
- ( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )(斉藤は調子悪いみたいだね。甘かったら初球でも行くよ)
(-_-)(……)
歩かせるのも考えた。
しかし、次の布佐の所には代打が出てくるだろう。
それを考えるとあまり意味はないように思える。
(-_-)(……)
結局比木は座る。
選択したのは、勝負だ。
- 724 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:01:05.88 ID:H+MqMNR9O
- (・∀ ・)「おおっ!」
斉藤の第1球。
ストレート。しかし。
(;-_-)(甘い!)
( 〇 ⌒ ▽ ⌒ 〇 )(これだ!)
矢野のバットが斉藤のボールと衝突する。
ボールはホームベース前で高いバウンドとなる。
- 727 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:04:03.71 ID:H+MqMNR9O
- (;-_-)(ぁぁぁぁぁぁ)
高いバウンド。
三塁ランナーの関本はゴロゴーで突っ込んでくる。
高いバウンドはピッチャーの斉藤の頭上へ。
(;・∀ ・)「届け!」
必死になって、ボールに向かってグラブを伸ばす。
――しかし、届かない。
- 728 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:08:05.54 ID:H+MqMNR9O
- (;・∀ ・)(くっそ、だせえ、リリーフ失敗かよ)
その時だった。
ベテランの声が聞こえてきたのは。
(#・∀・)「斉藤、しゃがめ!」
条件反射的にしゃがむ。
茂等は前進守備から矢野がゴロを打った瞬間スタートを切り、バウンドの落下地点に入った。
ボールを素手で取り、迷わず本塁へ。
- 732 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:10:57.16 ID:H+MqMNR9O
- (;・ e ・)「!」
関本の顔が歪む。
関本は足の速い選手ではない。
その関本が茂等のような完璧な守備をされたら――
(-_-)(送球もさすがです!)
タッチされ――
『アウト!』
アウトをコールされるだけだった。
(;・ e ・)「……」
- 738 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:15:30.92 ID:H+MqMNR9O
- (・∀ ・)「あ……茂等さん」
( ・∀・)「ほら、ツーアウトだ」
そう言って斉藤の手を取り起こす。
背中を軽く叩いて斉藤に活を入れる。
( ・∀・)「しっかり抑えてくれよ」
そう言って手をひらひらさせながら守備につく。
その背番号6が、今更ながら頼もしく大きなものに見えた。
('A`)「……」
从 ゚∀从「どうした? 生気が抜けた顔してるぞ」
('A`)「ナンデモナイデス」
- 742 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:18:14.99 ID:H+MqMNR9O
- 『バッター布佐に代わりまして、桧山。背番号24』
(・`_´・)「……」
(-_-)(……)
ジャガース代打の切り札桧山。
ここで最後のカードを切ってきた。
何回か素振りをして左打席に入る。
(・∀ ・)「……」
- 748 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:23:19.69 ID:H+MqMNR9O
- (・∀ ・)(肩が軽くなった気がするわ)
――確かに今日自分は調子が悪い。
今日の球威では三振は取れない。
でも、打たせりゃ大丈夫だ。
ストレートを投げ込む。
(#・`_´・)「連絡っ!」
桧山の打球は芸術的なセカンドゴロ。
もちろん茂等が処理する。
これでスリーアウト。
(・´_`・)
ニュー速ヴィッパーズの2010年は、勝利で幕を開けた。
- 750 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:26:30.72 ID:H+MqMNR9O
- 試合結果
123 456 789 RH
J 000 010 000 19
V 002 000 00× 25
J 布佐−矢野
V 高岡・杉浦・斉藤−比木
勝 高岡 1勝
S 斉藤 1S
負 布佐 1敗
- 754 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/14(月) 01:33:03.64 ID:H+MqMNR9O
- 試合後のハイタッチが始まる。
チームメイトが笑顔でタッチを求めてくる。
('A`)
俺は、笑えているだろうか。
俺の胸には、なにかモヤモヤが蔓延していた。
思えばアクアリウムではポジションの競争などなかった。
それどころか高校や中学まで遡っても、スタメンを誰かと競ったことなんてない。
( ・∀・)
('A`)
俺は、この人に、勝てるのだろうか。
このモヤモヤは、晴れるのだろうか。
結論から言うと、晴れなかった。
2010年シーズン。俺の野球人生において重大なターニングポイントとなった。
嵐の一年は、歓喜の渦の中、静かに幕を開けたんだ。
〜続く?〜
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