- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:27:37.13 ID:DK1S5OQUO
- (´<_` )「早くしろ兄者。このペースだと夜が明けてしまう」
(; ´_ゝ`)「早くしろったってあんた……。コイツがどんだけ重いか解ってんだろ? ちょっとは俺を労りなさいよ」
(´<_` )「知るか。ジャンケンで負ける方が悪い」
何処かで少女が犯されながら死んで、何処かで三人の戦士が集った日の翌日。
流石兄弟は秘密裏に行動していた。
月明りが二人を照らす。二人共背が高く、細身の体系で、二人共に同じ顔をしている。
(; ´_ゝ`)「ひぃ、ひぃ……。冷たいペプシが飲みたいな」
兄者と呼ばれている男は身の丈ほど長く、分厚い板状のものを引き摺っていた。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:29:38.56 ID:DK1S5OQUO
- (; ´_ゝ`)「しかしセントジョーンズの野郎もこの辺に住めば良いのにな。六駅も離れたとこからこんな馬鹿デカいもん担ぐ身にもなれっての……」
(´<_` )「仕方ないだろう。セントジョーンズはあくまで中立。VIP町に住むような事があればニュー速町の奴等が黙ってないさ」
( ´_ゝ`)「んなもん俺らが蹴散らしちまえばよくね? これみたいな武具をバンバン造ってさ。弟者もそう思うだろ?」
兄者が布に巻かれたものを掲げた。
その全貌は定かではないが、それでもひしひしと伝わってくる重厚感は人々を威圧する。
(´<_` )「……それが出来るなら最良だ。だがセントジョーンズの性格上それは叶わぬ夢だよ」
( ´_ゝ`)「ムカつくよなぁ、俺達と同じ五年生のくせに偏屈過ぎんだよ」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:32:09.71 ID:DK1S5OQUO
- かつん、ずず──。
かつん、ずず──。
かつん、ずず──。
かつん、ずず──。
( ´_ゝ`)「…………」
(´<_` )「…………」
二人はそれきり閉口し、表情を固く張り付けた。
兄者が『魔剣』を引き摺る音、そして弟者が腰の左右に差した二本の刀が揺れる音。
その二つが空間を支配している。
闇夜に覆われた一本道をひたすら歩く。
流石兄弟は気付いていたのだ。この闇夜の中に、何かが紛れていると。
( ´_ゝ`)「……一人で俺達を尾行するたぁ随分肝の据わった野郎だな」
(´<_` )「二人だ。一人は殺気を殺し切れてないがもう一人はそれに乗じて上手く気配を殺している。かなりの手練だな」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:34:16.19 ID:DK1S5OQUO
- ( ´ー`)
(*゚ー゚)
闇夜の中から流石兄弟を望む二つの影。
一人は大柄な坊主頭の男。表情はかなりふてぶてしく、どっしりと構えている。
もう一人は小柄な少女。肩にかかる程度の栗色の髪を揺らし、その体躯には似合わない妖艶な笑みを浮かべている。
(*゚ー゚)「どう責任取ってくれるのかな〜シラネーヨくん。君が下手こいちゃったせいできっかしずっぱしバレちゃってるじゃん」
( ´ー`)「……んなの知らねーヨ。大体結局奇襲するってのにこんなコソコソした真似したって意味ねーヨ」
(*゚ー゚)「誰に口きいてるのかな? 身の程を弁えない人ほど先に死んでいくんだよ?」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:36:31.76 ID:DK1S5OQUO
- ぞわりとシラネーヨの首筋を何かが這った。
(; ´ー`)「ちっ、フォックスさんのお気に入りが……。お前より強い奴はいくらでもいる。お前の今の地位は自分で掴んだもんじゃねーんだよ」
(*゚ー゚)「面白い事言ってくれるね。けど私はわりと優しい子だからいっこだけお願い聞いてくれたら許したげるよ」
( ´ー`)「……何だ?」
(*゚ー゚)「ペプシ買ってきて、キンキンに冷えたやつ」
シラネーヨの拳が震える。
ふてぶてしい仏頂面を浮かべていた彼だが、みるみるうちに顔が赤くなってゆく。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:39:17.54 ID:DK1S5OQUO
- (# ´ー`)「小娘如きが俺を──」
シラネーヨが叫びかけたその時、彼の口が小さな手によって塞がれる。
(*゚ー゚)「君が今どういう状況に居るかまだ解らないの? なんならこのまま君の顎を粉々にしてあげても良いんだけどなぁ」
みしみしと音を立てて軋むシラネーヨの顎。
暫くはきつく睨み返していた彼だが、やがて観念したようで両手を上げた。
(*゚ー゚)「うん、お利口さんだね。流石兄弟がこの先の公園にさしかかるまでに買ってきてよ、じゃあよーいドンッ!」
( ´ー`)「ちっ……」
肩に触れる少女の手を払いのけ、シラネーヨはその身を消した。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:41:43.94 ID:DK1S5OQUO
- (´<_` )「散ったな」
( ´_ゝ`)「ちっ、鬱陶しい奴等だな。なんなら俺らが直接出向いてやろうか」
兄者は舌打ちをして『魔剣』を包む布に手をかけた。
(´<_` )「やめろ兄者。『所有者』も決めてない今『魔剣』を抜くのはあまりにも早計過ぎる」
(# ´_ゝ`)「けどよ……。このまま尾行されてたんじゃ精神衛生上よろしくないんじゃない?」
兄者はかなり苛立っているようで、 『魔剣』をかつかつと地面にぶつけて打ち鳴らしている。
それを見て弟者は嘆息し、一本道の先を指差した。
(´<_` )「追跡者を排除したいのは俺とて同じさ。しかし相手の出方、能力が解らない以上見通しの悪い此所でやり合うのは危険だ」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:43:44.06 ID:DK1S5OQUO
- ( ´_ゝ`)「なら……」
兄者が何か言いかけたところで、弟者は指差している方に視線を向けた。
(´<_` )「向こうに公園がある。有利な環境とは言い難いがそれでも此所よりはマシさ」
( ´_ゝ`)「……やけに慎重なんだな」
兄者が言ったが弟者は何も返事はせず、一定の速度で歩を進める。
弟者の用心深さが兄者には臆病にしか見えなかった。
( ´_ゝ`)「ま、難しい事はお前に任せるのが一番なんだろうけどな」
それでも手放しに信頼出来るのは、やはり二人が血を分けた兄弟だからなのだろう。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:45:46.01 ID:DK1S5OQUO
- 百メートル程歩くと広い公園に差し掛かった。
その公園は整備も行き届いているようで、ゴミ一つ落ちていない。遊具も豊富で、本来ならば多くの子供達の遊び場となっている筈だろう。だが今は違った。
(´<_` )「兄者は手を出すなよ。『魔剣』に血を注がれたらアウトだ。そいつは最初に吸った血の宿主を『所有者』とするからな」
弟者は公園の敷地を一歩跨ぐ。
( ´_ゝ`)「わーってるよ、けどさ弟者」
次いで兄者も敷地を跨いだが、彼はそこで立ち止まった。
(´<_` )「どうした?」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:50:30.06 ID:DK1S5OQUO
- 弟者は振り向いた先に居た兄者が柄にもなく神妙な目付きになっている事に気付き、腕を組んで訝る。
そして暫く見つめあった状態が続いた。
( ´_ゝ`)「お前がピンチになったら俺は躊躇わずにコイツを抜くからな」
重々しく呟いて、兄者は表情を崩した。
それを見て弟者も僅かに口角を上げる。
(´<_` )「そうならないようにするのが俺の仕事だ」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:53:24.17 ID:DK1S5OQUO
- 言って弟者が腕を交差し、二本の刀の柄に手をかける。
( ´_ゝ`)「──っ!」
その瞬間、爆風のように広がる肌を刺すような衝動。兄者は思わず目を伏せた。
(´<_` )「出て来い、小悪党」
長年の経験、鍛練によって培った柔の闘気。
迸る闘気が覆う空間内は言わば弟者の領域だ。
たとえ姿をくらまそうが その動きは手に取るように分かる。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:55:39.68 ID:DK1S5OQUO
- 時計の針が五分ほど進んだ。
だがその五分が二人には一時間にも感じられた。
じりじりと首筋を這う威圧感。選択を間違えれば心臓を握りつぶされる、そんな錯覚が襲い来る。
(´<_` )(望むところさ……)
弟者が内心ほくそ笑んでいたその時、異変は起きた。
(; ´_ゝ`)「うわっ!?」
兄者の顔面目掛けて小さな影が直進する。寸前でその物体を掴んだ兄者。だが弟者は兄者よりもその事に対して驚いていた。
( ´_ゝ`)「ん、なんだこりゃ? ペプシ?」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:57:45.31 ID:DK1S5OQUO
- (´<_` ;)「ちっ……」
僅かに意識が緩んだところを針の穴を通すように狙ってきた。
決して多くはない、されどあまりにも致命的な隙に敵が投げ入れたのはジュースの缶。
つまりそれはその気になればいつでも攻め入る事が出来る。自分達は常に優位に立っている。
そんな感情の現れなのだろう。
(´<_` ;)(……落ち着け、苛立つな、慢心するな、恐怖するな。敵の術中にわざわざ嵌まってやる必要は無い)
自分に言い聞かせながらも刀の柄を握る手は次第に汗ばんでゆく。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 12:59:54.64 ID:DK1S5OQUO
- (*゚ー゚)「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうかぁ」
(´<_` ;)「──っ!」
甘ったるい声が響くと同時に弟者の眼前に小柄な少女が躍り出た。
左手には逆手で握ったナイフ。右手には順手で握ったナイフ。
鈍色に輝く二本の刃が弟者の首筋を狙う。
(´<_` ;)「ソードマスター『崇高なる意志は刃と共に』!!」
抜刀と共に露になる二本の刀身。放たれるは洗練された斬撃。
(*゚ー゚)「ヘカトンケイルの行進『愚鈍なる者に戦火は襲う』!」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:02:36.23 ID:DK1S5OQUO
- 四つの刃が鍔競り合い、火花を散らす。
(*゚ー゚)「あはっ、そんな速さで耐えきれるかな?」
少女はナイフを刀身に滑らせ、流れるような動作で弟者の背後へと回り込んだ。
銃。刀。槍。鎌。弓。鞭。
どんな武器を使おうと背後という死角だけは埋めようが無い。
最速の一振りが弟者の背中目掛けて駆る。
討った──。
少女は確信した。
(´<_` )「ぬんっ──!!」
だが死角からの一撃は難無く受け止められた。
弟者は振り向きもせず、最初からナイフが来る場所が解っていたかのように的確に、刀を当てにきたのだ。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:05:06.72 ID:DK1S5OQUO
- (*゚ー゚)「ちっ……!」
驚くよりも先に彼女は二本のナイフを巧みに操り、弟者に追撃を放った。
だが頭から足首に至るまで、一秒間に放たれる百の斬撃を弟者はそのままの姿勢で軽く捌ききる。
(´<_` )「ハッ──!!」
そして振り向きざまに真一文字に刀を薙ぐ。
(;゚ー゚)「やばっ──!?」
甲高い金属音が鳴り響いた。
少女の頬すれすれで二本のナイフと一本の刀がぶつかり合い、かたかたと震える。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:07:59.58 ID:DK1S5OQUO
- (´<_` )「良い動きだ。敵の技を見切り、最良の動きが出来る判断力と身のこなし」
(´<_` )「そして『身体強化系』の能力によって初めて実現可能な恐ろしいまでの手数の多さ」
(;゚ー゚)「……っ」
(´<_` )「その一振り一振りが最速、恐らく身体をどう扱えばナイフが速く動くかが身体に刷り込まれているのだろう。だがそれでも……」
空いた右手の刀でがら空きの少女の喉元に突きを放つ。
少女は寸前で屈み込み、それを躱した。
(´<_` )「俺の領域に踏み込むには後一歩足りない」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:10:43.05 ID:DK1S5OQUO
- 少女の視界が真っ暗になる。
鼻先を打つ鈍い痛み。浮遊する身体。
自身が蹴り飛ばされた事に気付くのに、少女は数秒を要した。
(; ー )「シラネーヨくん!」
後方に吹っ飛びながらも二本のナイフを立て続けに投擲し、弟者を牽制する。
( ´_ゝ`)「後ろだ弟者!!」
(´<_` )「──っ!」
兄の声に反応して咄嗟に振り返る。
そこにいたのは大柄で厳つい男だった。
( ´ー`)「アシッドレイン『硫酸どろどろなんでも溶かす』」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:12:51.09 ID:DK1S5OQUO
- シラネーヨが両手を翳すとその先に人の頭ほどの大きさの水泡が現れた。
(# ´ー`)「下手な演出の為にパシられて、こっちは機嫌が悪いんだよ」
水泡に拳を打ち付けた。
舞い散る水飛沫が無数の弾丸となって弟者に襲いかかる。
(´<_` ;)「小賢しいっ!」
弟者は襲いかかる酸の雨から逃げるでもなく、それどころか深く腰を落として構えた。
そして左脚を軸にし、刀を握る両手を広げた状態で駒のように回転する。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:15:04.83 ID:DK1S5OQUO
- 弟者を中心に突風が舞い上がり、襲い来る酸の弾丸が飛散し、周囲に逸れた。
(; ´ー`)「何発でもぶち込んでやるよ!」
(´<_` )「遅い」
シラネーヨが再び拳を振り翳したその時、一陣の風が靡くとともに彼の懐に弟者が潜り込む。
気付いた時には遅かった。
シラネーヨは刀の切っ先が肩に触れると同時に大きく身を捩ったが、刃は深々と肉に食い込み、ぶちぶちと切り裂いてゆく。
(; ー )「ぐっ! ああああああっ!!」
肩口から腰にかけて、痛みと熱が籠り、血が吹き出た。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:17:42.22 ID:DK1S5OQUO
- 咄嗟に身体を捩った為致命傷は免れたものの、あのまま棒立ちでいたならば間違いなくシラネーヨの命は刈り取られていただろう。
今負った傷もかなり深く、即死とまではいかないものの、このまま放っておけば失血死という結末は目に見えている。
(*゚ー゚)「余所見してると死んじゃうよ!」
少女が弟者の背中目掛けて服の袖から取り出した十本のナイフを投擲する。
その全てを打ち落とし、素早く少女を迎え撃たんと構え直す弟者。
彼の一つ一つの身のこなしは常に最良を行き、能力を発動させてからは隙らしい隙は一切見せていない。
(´<_` )「もう良い」
弟者は静かに呟いた。
両手に握る刀の切っ先をそれぞれシラネーヨと少女に向け、達観したような顔つきで空を仰ぐ。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:19:56.81 ID:DK1S5OQUO
- (*゚ー゚)「……何がもう良いの? 大人しく『魔剣』を引き渡してくれる気になった?」
(´<_` )「そうか、そう言えばお前達の奇襲の目的を聞いてなかったな、やっぱりそれか。残念だがこいつは『大戦』で俺達を勝利に導く鍵だ、絶対に譲るわけにはいかない」
(; ´ー`)「…………」
(*゚ー゚)「…………」
二人同時に牽制しながらも弟者は未だ隙を見せない。
それどころか徐々に強くなってゆく弟者の闘気に、二人は気圧されつつあった。
(´<_` )「さてと、ここで少しどうでも良い話をしようか」
弟者はじわりと兄者の方に目をやった。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:22:08.17 ID:DK1S5OQUO
- (´<_` )「うちの兄者は自慢じゃないがかなりそそっかしい。それに思った事も直ぐ口にするしポーカーフェイスなんて無縁な男だ」
( ´_ゝ`)「おい」
(´<_` )「おまけに馬鹿で物覚えも悪い。お陰で何度敵を欺こうとしてぶち壊しにされた事か。そうだ、この際だから言っておく。次同じような事したら絶縁するからな」
( ´_ゝ`)「おい」
(´<_` )「と、まぁこんな具合に自分が貶められてる事にすら気付かないうちのアホ兄者なんだが……」
( ´_ゝ`)「いや解ってるよ。お前今俺の事すげーボロクソ言ってるだろ」
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[さるってた] 投稿日:2011/08/17(水) 13:32:54.89 ID:DK1S5OQUO
- (´<_` )「そんな兄者がお前達が姿を見せて言葉を発したのはそこのデカブツがシャボン玉遊びをしようとしてた時だけだ」
( ´_ゝ`)「おい聞けよ」
(# ´ー`)「……っ!」
自分の技をシャボン玉遊びと揶揄されてシラネーヨの表情が怒りに歪む。
だが彼を蝕む傷は怒りの感情とは裏腹に彼の膝を折らせた。
(´<_` )「何故か? 何なら直接聞いてみるのが早いだろう。何故だ兄者、実の弟が二対一の苦戦を強いられているのに対して動揺もせず、ただ指を咥えて見てるのは」
冷静沈着な印象を与える彼の表情が、今初めて下卑た冷笑に変わった。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:35:11.13 ID:DK1S5OQUO
- ( ´_ゝ`)「何故ってそりゃ……」
兄者は頬を掻きながら少女、シラネーヨ、弟者の順に視線を移してゆき、呟いた。
( ´_ゝ`)「こんだけ引っ張ってお前が負けるこたねーだろ。ソードマスター『崇高なる意志は刃と共に』は引っ張れば引っ張る程強くなる能力なんだから」
言い終える直前で少女が動いた。
動揺、焦りを隠そうともせずがむしゃらに弟者に突っ込む。
まるで手品のようにどこからともなくナイフを取り出し、切りかかった。
(;゚ー゚)「──っ!」
(´<_` )「気付いたみたいだな」
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:37:24.48 ID:DK1S5OQUO
- ぶつかった二本の刃が鍔競り合う事は無かった。
少女の能力、ヘカトンケイルの行進『愚鈍なる者に戦火は襲う』は単純な身体強化。
だがそれゆえにこの能力を突き詰めた彼女は強い。
手数、スピードに重きを置いた身体強化が織り成す技は一秒間に百の刃を刻み、残像すら残さぬ速さを誇る。
それでも彼女の百の刃が全て受け流され、押し切られたのは弟者の身体強化スキルがそれを上回ったからなのだろう。
(´<_` )「俺の能力は汎用性はあるものの、スロースターターというデメリットがある。発動から暫くは本来の力の十分の一も発揮出来ないんだ」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:39:32.02 ID:DK1S5OQUO
- (;゚ー゚)「やけに饒舌じゃない。敵にそんな大事な情報を与えていいの?」
(´<_` )「問題無い。さっきの悠長な会話の最中にトップギアに入ったところさ」
弟者の姿が消えた。
そして次に彼が現れたのは少女の背後だった。
(*゚ー゚)「──っ」
頭では解っているのに身体が動かない。そんな表現がある。
だがこの時少女は何も感じなかった。
自分の眼前から弟者が姿を消した。その事象を頭が整理し始めるよりも速く、弟者は背後に回り込んでいたのだ。
(´<_` )「先ずはその足を貰う」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:41:57.50 ID:DK1S5OQUO
- 弟者が腕をしならせ、少女の太股目掛けて刃を振り降ろした。その時だった。
从 ∀从「その腕を貰う」
頭上から飛び下りてきた一つの影。
それは的確に弟者の腕を狙って爪先を捩じ込んだ。
(´<_` ;)「つっ……!」
腕に走った衝撃に弟者は思わず刀を握る手を開いた。
鋼鉄が地面に触れる甲高い音が虚しく響く。
从 ゚∀从「ありゃ? もしかしておにーさん身体強化持ち? だったらちょっぴり強めに蹴飛ばしても……」
問題ねーよな。言い終えると同時に弟者は理不尽な衝撃に吹き飛ばされた。
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:44:44.18 ID:DK1S5OQUO
- 从*゚∀从「いぇい!」
弟者とぶつかったブロック塀が粉々に砕け散ると、突如現れた少女は無邪気に腕を掲げた。
目が痛くなるような跳ね気味の金髪は片目を覆っているものの、露になっている半分の顔はころころとよく動く。
从 ゚∀从「えらい時間かかってんじゃねーか、しぃちゃん。こんなのぱぱっと終わらせちまえよ」
(;゚ー゚)「……何で貴女が此所に居るのよハインリッヒ」
从 ゚∀从「お前ら弱過ぎっから心配して来てあげたんだよん」
からからと笑って、ハインリッヒは纏った着流しの袂を広げて回った。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:46:59.86 ID:DK1S5OQUO
- ( ´_ゝ`)「おい弟者。くたばってるとこ悪いけどちょっと聞いてくれ」
兄者が崩れたブロック塀に向かって声をかけると、瓦礫は粉微塵となって吹き飛んだ。
(´<_`メ)「嫌と言っても言うんだろう。なんだ?」
(* ´_ゝ`)「あの子すっげー可愛い」
(´<_`メ)「死ね」
淡いピンク色の着流しの裾は何故かずたずたに引き裂かれており、白い太股が露になっている。
兄者は先程からそればかりを凝視していた。
从 ゚∀从「?」
(* ´_ゝ`)「おぅふ、辛抱たまらんですたい。あの足に三角締めされてテクノブレイクしたいっちゃけど」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 13:56:10.31 ID:DK1S5OQUO
- 从 ゚∀从「ソイツがセントジョーンズの『魔剣』か。随分ごっついんだな」
ハインリッヒは悠然と兄者に歩み寄ってゆく。
からんころん、と雪駄が土を蹴る小気味の良い音が響く。
(* ´_ゝ`)「俺のアレはもっとごっついぜ? なんなら握らせてやっても良いけど」
从 ゚∀从「あー、そりゃいいよ、また今度ね。んな事より抜いてみてよ、その『魔剣』」
(* ´_ゝ`)「え? 抜いちゃうよ? 濃いーの抜いちゃうよ?」
从#゚∀从イラッ
(´<_` )「やめろ兄者。迂闊に挑発して良いレベルの人間じゃないぞあいつは」
( ´_ゝ`)「真面目に言ってんだよ弟者は黙ってろよ」
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 14:02:06.95 ID:DK1S5OQUO
- 从 ゚∀从「ハインちゃんかーなーり怒っちゃったよ。なんならそのイカ臭いドリチン引き千切ってあげようか?」
からん、と雪駄の音が大きく響いた。
(; ´_ゝ`)「──っ!?」
何かが来る。
本能的にそれを感じて兄者は咄嗟に身構えたが、この場の誰よりも速く動いていたのは弟者だった。
(´<_` )「兄者に動かれるとろくな事が無いんでね」
一瞬でハインリッヒの懐に潜り込み、手放さなかった一振りの刀を彼女の喉元に突き上げる。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 14:09:08.53 ID:DK1S5OQUO
- 从 ゚∀从「邪魔」
ぱちん、と間抜けな音がした。
傍から見れば小娘の力無い平手打ち。その脆弱な一撃は弟者の頬を打ち……。
(´<_` ;)「え──?」
ぐにゃり、ぐにゃり。
ぐにゃり──。
ぐにゃ──。
視界が歪み、三半規管が暴れ狂っているようだった。
強烈な吐き気が平衡感覚を奪い、弟者は地に膝をついた。
从 ゚∀从「まぁなんだ。様式も糞も無い勝負ってのは好きじゃないんだ私は」
だから──。
そう続けてハインリッヒは一呼吸置き、高らかと言い放った。
从 ゚∀从「缶けりやろーぜ」
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/17(水) 14:11:29.24 ID:DK1S5OQUO
- 第五話「こんやはなかすでよかろうもん」
お し り
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