- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:27:55.89 ID:RsChKDoq0
I
紙切れに等しい世界で
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:31:00.86 ID:RsChKDoq0
- 从 ゚∀从の場合
ハインリッヒ 高岡は読みかけの週刊誌を投げ捨て、おもむろに立ち上がった
今の今まで尻に敷かれていた弟が、ようやく解放されたと言わんばかりに深呼吸をする
从 ゚∀从「尻に敷きたい」
_
( ;゚∀゚)「なんだよ姉ちゃん、未来の夫の事か? 姉ちゃんなら意識しなくてもそうなると思うぜ」
从 ゚∀从「踏み潰すぞ」
_
( ;゚∀゚)「もし俺の事だって言うんなら勘弁してくれ、マジで、頼む、この通りだ、見てくれ」
ハインリッヒの弟は、両の手を握り締めると、それを地につけた
そしてそのまま体を折り曲げ、頭も地につける
残念な事に、そのまま三点頭立には移行しなかった、
从 ゚∀从「足の裏に敷くぞ愚弟が」
_
( ;゚∀゚)「もうやめて下さい」
言葉と共に飛んで来た蹴りを、頭を上げて避ける
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:34:44.96 ID:RsChKDoq0
从 ゚∀从「さて、そろそろ冗談は置いてだ」
_
( ゚∀゚)「え、何が冗談なの? 日本語間違ってない?」
ずりずりと後退していく弟に目もくれず、ハインリッヒはドアを開ける
_
( ゚∀゚)「どっか行くのか?」
从 ゚∀从「家具屋に行く」
_
( ゚∀゚)「家具って…何買うんだよ」
基本的な日常生活を送るにあたって、不自由しない程度の家具は全て家にある
勿論、電化製品である冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、蛍光灯、掃除機やテレビもきちんとある
これ以上、一体何が足りないと言うのか、ハインリッヒの弟には理解できなかった
从 ゚∀从「椅子だ、椅子が欲しい」
_
( ゚∀゚)「はあ?」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:38:01.03 ID:RsChKDoq0
そんな妄言を吐いた奴の目の前には、御立派な肘掛椅子がある
学校勤めの父親が、処分するには惜しいと譲り受けてきたものだ
お陰で、家には机や椅子が腐るのではないかというくらい散乱している
_
( ゚∀゚)「これだけあるってのに、まだ欲しいのかよ?」
願わくば、父親のような収集癖が発現していない事を祈る
男一人でこの有り様なのに、ここで男勝りなこの女が入ったらどうなってしまうのか
木製と鉄製の机と椅子で天井近くまで埋め尽くされた、家具ジャングルになるかもしれない
そんな弟の心配を余所(よそ)に、ハインリッヒは違う答えを出した
从 ゚∀从「違う、俺が欲しいのはこんな椅子じゃない」
_
( ゚∀゚)「…じゃあどんな椅子だよ」
結局、増える家具を止められない事に絶望する
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:43:11.72 ID:RsChKDoq0
从 ゚∀从「どんな、椅子って」
ハインリッヒは両腕を組んで、しばし逡巡(しゅんじゅん)する
その目は、ここではないどこか遠くを見ていた
从 ゚∀从「生身だ、生身の椅子が欲しい」
_
( ゚∀゚)「生身ィ?」
ハインリッヒの弟は、姉の言葉の意味がわからない
生身とは、つまりは加工前の木材という事であろうか
_
( ゚∀゚)「姉ちゃんは、自分で椅子を作りたいのか?」
从 ゚∀从「いや、作るのは面倒だから、俺は人の椅子が欲しい」
_
( ゚∀゚)「窃盗かよ」
从 ゚∀从「窃盗? いやいや、どうせなら同意の上で事を運びたいさ」
微妙な差異(さい)のお陰で、噛み合わない会話
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:46:07.05 ID:RsChKDoq0
血を分けた姉弟だと言うのに、ハインリッヒとその弟は、産まれた時からこうだった
从 ゚∀从「一から作るんであれば、相手を探してヤッて赤ちゃんを産まないといけないしな」
_
( ;゚∀゚)「は、はあ?」
微妙どころではないくらいに、色々とズレてきている
从 ゚∀从「だから俺は、人の椅子が欲しい」
否、ズレていると感じているのは、弟のほうだけであった
_
( ゚∀゚)「…なあ、姉ちゃんってさ、『何』に座りたいの?」
会話の齟齬(そご)が来るところまで来てしまった時に、よく使う手段がこれであった
ハインリッヒの放つ主語をわざと『何』に変換し、逆に相手に問うのだ
これは幼少時の自分が、自らの姉と自己の会話を繋ぐツールとして作ったものである
説明は不要かと思われるが、この場合は『椅子』を『何』に変換している
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:49:35.53 ID:RsChKDoq0
从 ゚∀从「俺は『人』に座りたい」
_
( ゚∀゚)「…そうか」
ものみなすべては、とてもとても簡単な事だったのだ
_
( ゚∀゚)「姉ちゃん、人は家具店には売ってないぜ」
从 ゚∀从「マジで? 携帯で調べたら人間椅子って出てきたぞ」
_
( ゚∀゚)「それ、小説とかバンドじゃん」
从 ゚∀从「あ、ホントだ」
_
( ;゚∀゚)「ちゃんと見ろよ…」
疲れと呆れからきた溜息を吐いて、言葉を続ける
_
( ゚∀゚)「少なくとも、VIPの家具店では人の椅子なんて売ってないぞ」
从 ゚∀从「じゃあ、どこにならある?」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:53:08.21 ID:RsChKDoq0
- _
( ゚∀゚)「どこって…」
こんなイカれた話を、いつもの笑顔で話す姉の事だ
下手したら、明日の地方新聞紙の三面記事を飾ってしまうかもしれない
迂闊に答えたら、犠牲者が出る事は必至だ
_
( ゚∀゚)「やっぱり、そういう店に行くとか…」
脳裏に思い付いたのは、街で見かけたSMバーである
しかし、SMバーとは主に、女王様に叩かれたり踏まれたりしたいマゾが行くところだ
踏ませてくれるマゾ男が勤めているとは思えない
从 ゚∀从「店?」
_
( ;゚∀゚)「いや、今のナシで、ナシ」
もう一度頭を捻って考えたものは、犠牲者は出るが、最小限に留まるであろう言葉だった
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:56:11.23 ID:RsChKDoq0
- _
( ゚∀゚)「や、やっぱり、知り合いに頼むとかさ?」
从 ゚∀从「知り合い?」
答えたはいいものの、踏まれてくれるような男子生徒の知り合いが姉にいるのだろうか
訂正、踏まれるのではなく、尻に敷く、であった
_
( ;゚∀゚)「あ、えーと、えーと、ぬあ、ほら」
回転の遅い頭を、無理矢理回しに回して、出てきたのはあの糸目の双子であった
自分にはあの兄と弟の区別はつかないが、ハインリッヒはつくらしい
流石の片方と、少なくとも自分から見て仲良くしているところを見た事がある
_
( ゚∀゚)「ほ、ほら、流石の、とかさ」
从*゚∀从「ああ、流石」
その名前を出すと、姉は少し納得したらしい
携帯電話と自分の財布を持って、駆け足で外に出て行った
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 21:59:48.73 ID:RsChKDoq0
- _
( ゚∀゚)「俺、取り返しのつかない事でもしちゃったのかな」
自室の窓から、立ち乗りで自転車をこぐハインリッヒを見る
あんなにも生気に満ち溢れた姉は久々に見た
尻に敷くだけに留まらず、きっと踏まれたり蹴られたりする事だろう
_
( ;∀;)「うう…すまん、お前らには明日の昼食奢ってやるからな…」
不幸になるのは兄か弟か、もしくは両方か
ハインリッヒの弟は、今から豪雨が降る事を切に願った
出来れば、姉以外の全員が不幸を被る事のありませんように
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:03:59.81 ID:RsChKDoq0
- ( ´_ゝ`)の場合
流石 兄者はディスプレイから目を離すと、両腕を上に背伸びをした
今の今まで一緒に画面を見ていた弟が、隙ありと言わんばかりにマウスに手を伸ばす
(´<_` )「兄者が使わないんなら、俺が使わせてもらうぞ」
( ´_ゝ`)「ああ、もう今日は使わん」
(´<_` )「よーし久々のエロサイト巡りだぜ」
( ´_ゝ`)「ウイルスだけは入れてくれるなよ」
椅子を引き、立ち上がった兄者に代わって、兄者の弟が座った
そしてそのままキーボードに手を伸ばし、アドレスを打ち込んだ
エロフラに無断で直リンをしている、無料エロフラサイトが現れる
( ´_ゝ`)「またそのサイトか、よく飽きないな」
(´<_` )「趣味が合う奴が多いんだよ」
ピンク広告の多いページは、読み込みに時間がかかる
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:07:17.17 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「なんかいい椅子ないかなあ」
(´<_` )「いきなり何言ってんだ」
がりがりと不穏な音を立てるパソコンを心配もせず、兄者は虚空を見上げ呟いた
( ´_ゝ`)「椅子だ、椅子が欲しい」
(´<_` )「椅子ぅ?」
( ´_ゝ`)「そう、椅子だ」
今自分が座っている椅子に座りたいのかと思ったが、そうでもないらしい
一体いつ購入したのか、通信販売の家具カタログを開いている兄者がいた
紙は薄いが、ページ数が焼きたくなるほど多い、広辞苑といい勝負だ
(´<_` )「椅子ならもうあるじゃないか、これ」
( ´_ゝ`)「違う、それではなく人間の椅子だ」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:10:34.75 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「なんかいい椅子ないかなあ」
(´<_` )「いきなり何言ってんだ」
がりがりと不穏な音を立てるパソコンを心配もせず、兄者は虚空を見上げ呟いた
( ´_ゝ`)「椅子だ、椅子が欲しい」
(´<_` )「椅子ぅ?」
( ´_ゝ`)「そう、椅子だ」
今自分が座っている椅子に座りたいのかと思ったが、そうでもないらしい
一体いつ購入したのか、通信販売の家具カタログを開いている兄者がいた
紙は薄いが、ページ数が焼きたくなるほど多い、広辞苑といい勝負だ
(´<_` )「椅子ならもうあるじゃないか、これ」
( ´_ゝ`)「違う、それではなく人間の椅子だ」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:13:41.24 ID:RsChKDoq0
一瞬、脳の理解が追い付かなかった
人間のってのは、この場合は『他人の』と言う意味ではないだろう
『他人の』の場合なら、きっと兄は『人の』と言う筈だ、多分
(´<_`; )「S女がM男に座るやつはよく見るが、その逆は見ないなあ」
( ´_ゝ`)「俺もだ、さっき探していたんだが、全くなかったな」
(´<_` )「今日のオナネタとか探してたんじゃなかったのか」
何がどうなって、何をどうして、この兄は人間椅子に興味を持ったのか
その過程が気になった兄者の弟は、その兄者に問いかけてみた
(´<_` )「しっかし人間椅子って、どっかのSMプレイ集でも見たのか?」
( ´_ゝ`)「ゲーム」
兄者は、持っていたカタログをぱたんと閉じる
( ´_ゝ`)「ゲームだ、王様ゲーム」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:16:46.38 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「俺と、内藤と、鬱田と、高岡と」
(´<_` )「OK.いつものメンバーな」
止めなければ、その王様ゲームに参加した奴の名字を全部言いそうだ
兄の交友関係を大体把握している弟は、無駄な時間を食うまいと立ち切った
(´<_` )「で、そのゲームで何があったんだ?」
( ´_ゝ`)「王を引いた奴が、4番が1番に座れと命令してきてな」
(´<_` )「…それで?」
( ´_ゝ`)「どうもあの、人の背中に座った時の感触が忘れられなくてな」
そう言って、兄者は細い目をますます細めて両の掌を見た
何をしたんだろうか、ナニかしたんだろうか
(´<_` )「え、それじゃ何? もっかい人に座りたいから人間椅子買うとかそんなん?」
( ´_ゝ`)「うむ」
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:20:04.51 ID:RsChKDoq0
破天荒と言うよりも、悪天候と言ったほうが正しい
己の兄は、成績がいいにも関わらず、世間の一般常識やら何やらに疎い
テストの点と頭の良さは別物だとは、よく言ったものだ
(´<_`; )「人間が通信販売で手に入るわけないだろ…」
( ´_ゝ`)「む? そうなのか」
(´<_` )「隣の犯罪大国じゃあるまいし」
( ´_ゝ`)「出来れば同年代くらいの女がいいな」
多分、無理して高齢出産をした母親の胎内に置き去りにしてきてしまったのだ
常識とか、道徳とか、共感能力とか、そういった類(たぐい)のものを
(´<_` )「今ちょっと気になったんだが、ゲームで誰に座ったんだ?」
( ´_ゝ`)「名前は知らんが、ドクオの姉だと言っていたな」
兄者の弟は椅子から立ち上がり、凄まじい形相で兄者に歩み寄った
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:22:41.17 ID:RsChKDoq0
(゚<_゚; )「そ、それってマジか! 本当の事なのか!?」
( ;´_ゝ`)「嘘言ってどうするんだ、つか苦しい」
ベッドに腰掛ける兄者の襟首を掴み、同じ目線まで持ち上げたいところだったが
超人的な腕力も握力も持たない弟には、服に皺を寄せ、首を絞めるくらいしかできなかった
(゚<_゚# )「あの有名な『マドンナ』の背に座ったって言うのかよ! 信じらんねぇ羨ましい!」
( ´_ゝ`)「マドンナとか、たった今知ったよ…」
自分だけ襟首を掴まれるのは不当だと思ったのか、兄者は立ち上がって弟の襟首を掴んだ
そのままドクオの姉とやらに対するそれぞれの見識や総評、学校での人気の度合いを述べる
片方は冷えたまま、片方は熱く唾(つば)を飛ばしながら述べていると、玄関のドアが開く音がした
(´<_` )「あ?」
( ´_ゝ`)「誰だ」
(´<_` )「さあ…」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:26:59.44 ID:RsChKDoq0
両親は共働きで、土曜も忙しく働き、日が暮れるまでは帰って来ない
姉もつい先日に嫁に行ったばっかりだ、帰って来るには早過ぎる
(´<_` )「兎にも角にも羨ましい、俺もその王様ゲーム出ればよかった」
( ´_ゝ`)「4番になれるとは限らんし、王が座れと命令せんかもしれんぞ」
(;<_; )「俺がそのゲームに、兄者の代わりに出ればよかったんだ…」
( ´_ゝ`)「……」
ほろりと両目から涙を流す弟を見て、兄者は考える
弟は、そんなにドクオの姉の背中に座りたかったのかと
確かに、あれはとてもよい座り心地ではあった
緩く曲線を描いた背が、見事に自分の尻の形にフィットしたのだ
まさに、自分の椅子となるべく出来上がった造形、生まれた人間と言える
( ´_ゝ`)「…うーん」
弟に渡すのは、些(いささ)か惜しい気がした
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:30:08.38 ID:RsChKDoq0
- ─────
从 ゚∀从「なんだこれは、どういう状況だ」
ハインリッヒがドアを開けると、そこには互いの襟首を掴んで絞め合っている双子がいた
この場合、自分はどちらに味方をすべきか、右のほうか、左かのほうか
( ´_ゝ`)「「おお、ハインリッヒ」」(´<_` )
从 ゚∀从「…よう」
よく話すのは兄のほうだから、出来れば兄のほうに味方をしたい
見分けるのが無理だったので、声で聞き分けれるかと思ったが、ハモられては不可能に近い
仕方がないので、どちらがどちらか聞く事にする
从 ゚∀从「どっちが兄者だ」
( ´_ゝ`)「俺だ」
从 ゚∀从「お前か」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:33:26.95 ID:RsChKDoq0
(´<_` )「何、今のコント」
( ´_ゝ`)「今のをコントと言うお前の沸点は、中々の底辺だな」
両方とも互いを罵りながら、ほぼ同じタイミングで襟から手を離した
それを見届けたハインリッヒは、自分のしたい事を率直に述べる
从 ゚∀从「兄者、座らせろ」
( ´_ゝ`)「何に? またはどこに?」
ハインリッヒは、兄者をベッドに蹴り倒した
从 ゚∀从「お前の、背中に」
( ´_ゝ`)「だが断る」
(´<_`; )「おいおいおいちょっと待て!」
そのまま兄者の上に乗ろうとするハインリッヒを、兄者の弟が羽交い絞めにする
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:37:13.24 ID:RsChKDoq0
その隙に兄者は飛び起き、ハインリッヒの襟元を掴むとベッドに容赦なく叩きつけた
勿論、背後からハインリッヒを拘束していた者ごとである
お陰で兄者の弟は、ハインリッヒの後頭部に激しいキスをする事になった
もしこのベッドのスプリングがそれなりに強かったら、キスは1回では済まなかった
(´<_`# )「あ゙、兄者ァ…ッ!」
( ´_ゝ`)「ハインリッヒに言え」
从 ゚∀从「座らせてくれない兄者に言え」
切れた唇を抑えながら兄者に詰め寄るが、この場合は全員が全員悪いと言えるのだ
蹴り倒したハインリッヒ、ベッドに叩きつけた兄者、羽交い絞めをやめなかった兄者の弟
( ´_ゝ`)「俺は椅子になんぞなりたくないわ、弟に聞いてみろ」
从 ゚∀从「よし、弟よ座らせてくれ」
(´<_` )「何がよしなんすか、それと俺はハインさんの弟じゃないっす」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:41:23.88 ID:RsChKDoq0
女の尻を背中で感じたい男や、女の体重に押し潰されたい男はいるだろう
だが、兄者の弟はそういった精神的、肉体的屈辱を快感とする類の男ではなかった
(´<_` )「兄者に座りに来たんじゃなかったんですか?」
从 ゚∀从「却下された、本人が座らせてくれそうにない」
(´<_` )「だからって俺っすか」
从 ゚∀从「もう座らせてくれるなら誰でもいい」
まるでそこらのビッチのような発言に、兄者は顔を顰(しか)めた
その弟も弟で、ハインリッヒの言葉を性的な意味で受け取ったのか顔を綻(ほころ)ばせている
( ´_ゝ`)「この尻軽女め」
(´<_` )「誰がうまい事言えと」
兄者の物言いに、弟が素早く突っ込んだ
息はそれなりに取れている
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:45:05.57 ID:RsChKDoq0
だが、そんな双子の片方が片方に足払いを仕掛けた
片方は突然の事に対応出来ず、床にごんと頭を打ち付ける
(゚<_゚; )「あっだばあああああああああああああああああ!!」
後頭部を両手で抱えてのた打ち回る兄者の弟
一般以下の共感能力を持つ、もしくは共感能力を持たないハインリッヒにとって
兄者の行動は意図が読めず、不可解なだけである
( ´_ゝ`)「ほれ、今のうちに座れ」
从 ゚∀从「おお」
理解してからの行動は早かった
ごろごろ転がる兄者の弟を踏んで止め、部屋の隅に追いやる
そして転がりにくいようにしてからうつ伏せにし、遠慮なく背中に尻を落とした
(゚<_゚; )「ぐぇっ」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:49:40.47 ID:RsChKDoq0
蛙が潰されたような声が弟から出た事に、兄者は少しだけ笑う
椅子の形はしてないが、人間に座るという願いが叶ったハインリッヒも嬉しそうだ
从*゚∀从「いやあ、結構いいモンだな」
( ´_ゝ`)「そんなに?」
从 ゚∀从「人肌の生暖かさと、なんて言うか、征服感? 支配感?」
( ´_ゝ`)「ふむふむ」
ハインリッヒが重力加速度と己の体重に物を言わせて降って来た時は死ぬかと思った
実際、息が止まったが、一度乗ってしまえば体重以上の重圧はかからない
(´<_` )「なんか、こういうのもいいかも…?」
目覚めてはいけないマゾヒスティックな自分が目覚めそうだ
そう言えば、さっきは自分の兄も人間椅子に座りたいとほざいてなかったか
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:53:50.87 ID:RsChKDoq0
嫌な予感が背筋を駆け抜ける、女の尻を乗せた背筋を
兄者の弟は、悪夢を実現させない為にそれを言葉にする
(´<_` )「兄者なんか死んでも座らせてやらんぞ」
( ´_ゝ`)「男の背になんぞ、頼まれたって座りたくない」
どうやらそっちの趣味はないらしい兄にほっとする
兄者は少し黙ってから、思いついたように両手を打ち合わせた
( ´_ゝ`)「なあハインリッヒ、座らせてくれないか?」
从 ゚∀从「嫌だ」
( ´_ゝ`)「それは残念」
当たり前だろうと思う
しかし思い直してもしやと思い、自分もハインリッヒに声をかける
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 22:58:54.92 ID:RsChKDoq0
(´<_` )「ハインさん、座らせてあげたんだから、俺がハインさんに座ってもいいですよね?」
从 ゚∀从「それは嫌だ」
言葉と共に、胴体への重圧がすっと消えた
ハインリッヒは謝罪も賠償もしないらしい
隣の国でニダニダ騒ぐ奴の気持ちが少し理解できた
从 ゚∀从「物静かな椅子はねーかなあ」
( ´_ゝ`)「ここに」
从 ゚∀从「それただのパイプ椅子じゃん、人のだよ」
勘違いばかりをさせるような会話の末に、どうやら外へ出る事に決まったらしい
兄者は財布とティッシュとハンカチ(いつ洗ったのか定かではない)を入れたバッグと
携帯電話と通信販売のカタログを持ち、折り畳み傘をハインリッヒに渡し外出の準備をした
(´<_` )「雨降るっけ?」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:03:13.55 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「降水確率40%なら、持ったほうがいいんじゃないのか?」
(´<_` )「降らない確立のが高いのに…遠出すんの?」
兄者の弟の言葉には、ハインリッヒが首を横に振る事で答えた
そのまま二人は行ってきますの挨拶もせずに、玄関の戸を開けっ放しのまま出て行く
(´<_`; )「せめて閉めてけよ…」
たった数分のやり取りで、起き上がる気力もない
精神的に疲れ切った彼は、そのまま床で寝息を立て始めた
昼食前の、真昼間(まっぴるま)の事である
(-<_- )「ぐごー…ぐごー…」
(-<_-* )「ふひひ…ハイン様……」
ハインリッヒの弟の祈りは、ある意味届いた
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:08:22.92 ID:RsChKDoq0
- ─────
外に出た二人は、まず図書館に寄る事にした
静かだし、何より資料もあるし、ビデオスペースなら邪魔も入らない
从 ゚∀从「自転車は?」
( ´_ゝ`)「弟のを使おう」
借りよう、ではないのだ
兄者は弟の自転車を小屋から出すと、無断で跨(またが)った
ハインリッヒは何も言わず、それを見届ける
从 ゚∀从「…」
この兄弟間ではこれが普通なのか、とは考えない
物を借りるのに相手の許諾を得なくていいのか、とは思わない
そういった思考回路は持たないし、理解もないのである
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:11:53.92 ID:RsChKDoq0
並走するにも関わらず、無言でペダルをこぐ二人の男女は異様だろう
傍(はた)から見れば、きっと浮気が発覚したか、倦怠期のカップルにでも見えたかもしれない
从 ゚∀从「着ーいた」
ききっと前ブレーキをかけて、つんのめりながらもハインリッヒは言った
兄者は後ブレーキで止まったのでつんのめらない
それなりのスピードが出ている時に前ブレーキをかける危険性を、兄者は指摘しない
( ´_ゝ`)「人がいたらどうする?」
ビデオスペースに、の主語が抜けていたが、ハインリッヒはちゃんと受け取った
从 ゚∀从「どかせばいいだろ、そんなの」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:15:01.50 ID:RsChKDoq0
休日だから混んでいるかもしれない、と言う予想は外れた
そのスペースには一人の男の先客しかいなく、他の席はがらがらだ
きっと、最近の連続殺人通り魔事件に怯えて外出する人が少ないんだろう
護身用に拳銃やナイフを持とうにも、この国では銃刀法がある
( ´_ゝ`)「じゃあ俺なんか探してくるわ」
从 ゚∀从「じゃあ俺は席取ってるわ」
素面で会話する二人のうわ若き男子学生と女子学生に、恨めしい視線が来る
発信源は、斜め後ろの席に座る男からだ
その眼力は、プライベードを侵害されないよう作られた壁を易々と乗り越える
喪男の妄執とも言えるその矢は、残念ながらハインリッヒには届かなかった
普通に気付かなかったのである、鈍感だったのだ
从 ゚∀从「やべーする事ねー」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:21:41.01 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「うん…?」
適当に、生命科学の棚付近をぶらぶらしていたら、一人の女子学生を見つけた
陽光の当たる個人用の区切られた読書スペースで、今はブラインドが上げられている
その女子学生がストライクゾーンだったとかではなく、ただ単純に
後ろに椅子があるのに、何故座らず読書しているかと言う点に違和感を感じた
ζ(- -*ζ
本棚の陰に隠れながら様子を見ていると、どうも机の角に股間を押し当てているようだ
本のページを捲(まく)る手も止まっており、読書している様子は見受けられない
( ´_ゝ`)「あー…」
その人物と行為に思い当たる節があった兄者は、ハインリッヒの元へ引き返した
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:23:57.29 ID:RsChKDoq0
ビデオスペースのハインリッヒは、入ったままだったビデオを観賞していた
交通安全と、麻薬ダメゼッタイ、地球温暖化だから節約しようの子供向けアニメ
一つが終わってから次のテーマに移ればいいものを、全てが同時進行だ
その所為で、色々と混沌とした大人向けアニメになっている
从 ゚∀从「面白くなーい」
率直な感想を述べ、ハインリッヒは背もたれに体重をかけた
こういったスペースは、静かさを保つ為に音がヘッドホンにだけ流れるようになっている
そのヘッドホンをやらずに無音のアニメを見ているだけでは、確かに面白くはない
( ´_ゝ`)「何を見ているんだ、何を」
从 ゚∀从「クレイアニメ」
( ´_ゝ`)「それは見りゃわかる、とにかく来い」
ハインリッヒの手を掴んで立たせ、ビデオスペースから出て行く二人
その後ろ姿を、物凄い形相で睨み付ける一人の喪男がいたが気にはしない
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:27:21.86 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「ほら、あれ」
从 ゚∀从「どれどれ…」
本棚の陰からでは気付かれるかもしれないので、両側の本を抜き取り、向こうが見えるようにした
本と本の隙間からは、図書館で自慰行為に耽(ふけ)る女子学生の姿が見える
从 ゚∀从「わーお、ダイターン」
( ´_ゝ`)「羞恥プレイってやつかね?」
从 ゚∀从「知らん、けどチャンスだろ」
ハインリッヒは尻ポケットから携帯電話を取り出し、撮影モードにする
( ´_ゝ`)「それじゃ気付かれないか?」
从 ゚∀从「いーんだよ、最終的に気付かせりゃ」
最近の携帯電話には、盗撮防止のために音が出るようになっている
無論、ハインリッヒのこの携帯もだ
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:32:14.60 ID:RsChKDoq0
从 ゚∀从「兄者、このバッグ借りるぞ」
( ´_ゝ`)「おう」
ビデオ撮影に切り替えた携帯を兄者のバッグの中に入れ、音が出る場所を掌で抑える
クエスチョンマークを浮かべる兄者に、ハインリッヒは自分の策を耳打ちする
( ´_ゝ`)「いいなそれ、後で俺の携帯にも送ってくれよ」
从 ゚∀从「もっちろんさ、まずは…」
兄者のバッグの中で、撮影開始のボタンを押す
ぴろりろりんと音がしたが、バッグの中で手で抑えていたからか、大きな音ではなかった
向こうは距離があるからか、この小さな音には気付いていないようだ
从 ゚∀从「よっしゃ」
[ ζ(- -*ζ ]
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:36:24.83 ID:RsChKDoq0
[ ζ(- -*ζ ]
ターゲットを携帯の狭い画面に捉える
時折、本から顔をあげて周囲を見渡すが、こちらにはまだ気付いていない
緩く緩く、注視しなければ動いているのがわからない程度に腰を動かす
メールで送れるように、20秒の低画質でそれを取る
从*゚∀从「ひひっ」
残り半分である10秒を切ったところで、腰の動きが少しだけ変化した
さっきの遅さとは段違いのスピードで、深く深く、机の角に押し付けるように
ζ(゙ー゙*ζ「…っふぅ」
背筋がぴんと張る
声が、こちらまで届いた
携帯は、この小さな声を拾えただろうか
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:41:08.31 ID:RsChKDoq0
ぴろりろりん、と撮影終了の音が鳴る
盗撮相手に気付かせる為に、今度は音を隠していない
ζ(゚、゚;ζ「ふぇっ?!」
驚いて、顔をあげた雌豚とハインリッヒの視線が合う
それ機に、ハインリッヒは本棚の陰を飛び出した
从 ゚∀从「やーや、どーも、いいモン見れちゃいましたー」
ζ(゚ー゚;ζ「わわっ」
( ´_ゝ`)「ましたー」
ζ(゚ー゚;ζ「ひえ」
少し遅れて、兄者も本棚の陰から飛び出す
遅れた理由は、取り出した本を元の場所に戻していたからだ
並びがどうとかは気にしない
後で司書が苛立ちながら頑張ればいいのだ
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:49:01.08 ID:RsChKDoq0
从*゚∀从「いいモン取れちゃいました、これ、ね、ね?」
保存を押してからデータフォルダを開き、先程の動画を再生する
そこには、陽光の中で本を読むフリをしながら、机の角を相手に腰を振るデレが
ζ(;ー;*ζ「は、はうぅー…」
紺野 デレの頭部はしっかりと抑えられており、首を動かす事ができない
ならば目を閉じたり、逸らしたりすればいいだけの話なのだが、デレはそれをしない
根元からのマドヒストなのだろうか、二人にとってはいい獲物だった
( ´_ゝ`)「俺らの言いたい事わかる?」
从*゚∀从「多分、常套文句だと思うんだけどなー」
ζ(゚ー゚;ζ「な、何する気なんですかあ」
少しだけ後ずさって、距離をあける
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:52:29.37 ID:RsChKDoq0
ζ(゚ー゚;ζ「わ、私、図書館に来るだけだったから、お金とかなくて」
从 ゚∀从「あーお金には興味ないよ」
その言葉に、デレは性的な意味での少しの期待を抱いた
ついさっき図書館で絶頂に達した女である、頭が下のほうに向くのも当然だろう
今ここに性欲に支配された豚が居れば、望んで受け入れてしまうような女だ
そのちょっとの期待を、ハインリッヒは打ち砕いた
从 ゚∀从「その代わり、座らせてくんない?」
ζ(゚ー゚;ζ「はぃい?」
理解が追い付かない
がっかりするよりも、わけのわからなさで満たされた
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/01(火) 23:56:59.71 ID:RsChKDoq0
( ´_ゝ`)「ちょっとそこで四つん這いになって」
願ってもいない殿方からの指示に、デレは椅子をどかして四つん這いになった
二人以外には見られないよう、机の下に隠れて
ζ( ヮ *ζ「な、なりましたあ!」
从 ゚∀从「おお素直、そんなに見られたくないのかこれ」
ζ( ー *ζ「ふぁ、はーい…」
別に、二人にならもうどんな醜態を晒してもいいのだが
それ以上の人の目にふれると、自分の日常生活に支障をきたす
日常生活だけではなく、自分の将来や家族にも
それだけは避けたかった
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 00:06:36.23 ID:LPF7HGxz0
( ´_ゝ`)「それじゃあ、レディーファースト」
从 ゚∀从「ムッシュ、ありがとう」
紳士と淑女のやり取りの後、背中に重圧がかかった
自分の腋の下からスニーカーが見え、座られたんだと理解する
彼女の言った言葉の意味は、そのままの意味だったのだ
( ´_ゝ`)「どう?」
从*-∀从「んー…いいな」
そう言ったハインリッヒは、デレの頭を撫でた
整えたツインテールがぐちゃぐちゃになったが、椅子にはどうでもいい事だった
从*゚∀从「男と違って柔らかい、不安定さが、逆にイイ」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 00:31:44.40 ID:LPF7HGxz0
元から癖のある、ふわふわとした髪をしているデレ
少し乱されたところでは、風で乱れたとしか取られない
ζ( ヮ *ζ「うひゃあ」
その頭を撫でる手が、増えた
ハインリッヒが両手を置いたわけではない、兄者も参加しただけである
( ´_ゝ`)「柔らかいんか…いいなー、俺も座る」
从 ゚∀从「おう、なあお前、もっと乗せれるか?」
四つん這いで体重が4つに分散されてるとは言え、これから男子も加わる
碌に運動もしていないデレの細腕は頼りなかったが、本人は了承した
ζ( ヮ *ζ「ぜ、是非ぃ!」
从 ゚∀从「だそうだ」
( *´_ゝ`)「わーい」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 00:39:14.23 ID:LPF7HGxz0
兄者が座る空間を確保する為、ハインリッヒが頭のほうに移動した
股の間が自分の首筋に当てられ、ジーパンで顔を挟まれた
仄(ほの)かなアンモニア臭が、鼻先をくすぐる
ζ( ヮ *ζ「ぅへ、ふへへへへぇ」
もう手淫も糞も関係なく、これだけで絶頂に導かれそうだ
デレのショーツは、先程の自慰も相俟ってぐっしょりと濡れている
从;゚∀从「なんか震えてっけど、大丈夫か?」
ζ( ヮ *ζ「たひ、大丈夫ですぅ」
震えているのは、体重が支え切れないからじゃない
嬉しくて、屈辱的で、悔しくて、楽しくて、気持ちよくて
それに抗えない自分の貧弱な理性を踏み躙りたいからだ
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 00:43:09.88 ID:LPF7HGxz0
( ;´_ゝ`)「座る前からこんなんで大丈夫か?」
从 ゚∀从「やっぱ俺どくわ」
ζ(゚ヮ゚;ζ「どかないで下さいぃいい!!」
図書館と言う場所にも関わらず、恥も捨てて声をあげるデレ
いや、隠れてとはいえ、図書館で角オナをしていたのだから恥も糞もない
兄者がばっとカウンターを見たが、司書が気まずそうに視線を逸らしただけだった
( ´_ゝ`)「なんかよくわからんけど、セーフ」
从 ゚∀从「早めに終わらせようぜ、もう」
ζ(゚、゚*ζ「もっと乗っていて下さいよぅ…」
从 ゚∀从「だぁーめ」
もしかしたら、この二人は自分の欲望を叶える為に来た天使なのではないかと考える
休日の昼下がり、図書館で四つん這いになって、椅子の代わりにさせられるなんて
淫乱な女神様が叶えてくれた、ささやかな奇跡としか考えられない
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 00:49:13.10 ID:LPF7HGxz0
( ´_ゝ`)「座りますよー」
ζ(゚ヮ゚*ζ「どうぞー」
わくわくしながら答えて、体重に備える為に身構える
下半身のほうに、そっと体重がかけられた
彼女のように、全体重をかけてはくれない
ζ(゚、゚*ζ「むぅ」
きっと、自分が崩れてしまわないか心配しているんだろう
ちょっとずつ、ちょっとずつ、もどかしいくらいに少しずつ
ボロい段ボール箱に座るような座り方だ
ζ(゚ー゚*ζ「私まだ行けますよー」
( ´_ゝ`)「あー…そう? 倒れそうになったら言ってね」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 00:56:53.12 ID:LPF7HGxz0
心配するような言い方をして、ずしっと体重を預けてくる
ζ( ヮ *ζ「うへぇあぇ」
太ってはいない、健康的な男子の標準体重だが、女性にはきつい
床に敷いてあるカーペットで膝が滑り、がくりと腰が落ちそうになる
座っている人を落としそうになるとは、なんて不良品だろうか
从;゚∀从「あっぶね」
( ´_ゝ`)「言ったからにはしっかりしてくれよー」
自分の足でデレの両脚を閉めた後、ぱしんと軽く尻をはたいた
ζ( ヮ *ζ「は、はひぃ!」
はたいた瞬間、椅子の全身がぶるっと痙攣する
ハインリッヒは椅子が倒れるのかと思って腰を浮かしたが、そんな事はなかった
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 01:02:22.69 ID:LPF7HGxz0
( ;´_ゝ`)「危うくずり落ちるとこだったぜ」
从 ゚∀从「ずり落ちたらコイツのスカートも一緒に落ちるな」
ζ( ヮ *ζ「し、下着が見えてしまいますぅ…」
スカートを押さえようとするも、ティーンエイジャーの男女二人分の体重を支えている
少しずつ下がるスカートは、兄者が腰のほうに移動した事で防がれた
从;゚∀从「ちょ、せまっ」
( ;´_ゝ`)「だって落ちる」
从;゚∀从「俺も落ちる、コイツが頭を下げたら落ちる」
( ´_ゝ`)「じゃーもー二人して背中に座ろうぜ」
从 ゚∀从「それもそうだな」
上の様子は詳しくはわからないが、床に映る影で大体わかる
髪の長い女の影が男の影に近寄り、男の影が女の影の腰に手をまわした
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 01:06:50.62 ID:LPF7HGxz0
ζ( ヮ *ζ「うはふあうぅー…」
自分の背中の上でラブコメをされても、さほど悔しくはなかった
嫉妬の念は、雀の涙ほども存在しない
ただ、その代わり
ζ( ヮ *ζ「ま、またぁ、私を、椅子にぃ、してくれましゅかあ?」
最後のほうで噛んでしまったが、二人はそれを笑わなかった
从 ゚∀从「え、ああ、いいの? マジで?」
ζ( ヮ *ζ「むむむしろお願いしますぅ!」
二人からしてみれば、思ってもいない申し出だ
今日で使い捨てる気だった椅子が、まさか二度目を所望するとは
从*゚∀从「なあなあ、明日も、この図書館来るか?」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 01:13:35.84 ID:LPF7HGxz0
ζ(゚ヮ゚*ζ「来ます! 来ますっ!」
一も二もなく、デレはぶんと首を縦に振った
もし背中に移動してなかったら、ハインリッヒは顔から床に落ちただろう
( ´_ゝ`)「あ、じゃあ一応メルアド交換しとく?」
ζ( ヮ *ζ「しますしますっ! 電話番号もぉ!」
赤外線送信の、ちょっとしたタイムラグすら遅く感じるほどだった
二人はその勢いに、ちょっとだけ気圧されていた
从;゚∀从「いやー生きがいいな」
( ´_ゝ`)「生きがなかったらつまらんだろ、これでいいんじゃね」
なんだかんだで、もうそろそろ閉館の時間だ
暗くなったら通り魔に出くわしてしまうかもしれない
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 01:15:28.70 ID:LPF7HGxz0
从 ゚∀从「じゃ、俺らそろそろ帰るから」
ζ(゚ー゚*ζ「はいっ! 明日もよろしくお願いします!」
たたっと駆けてくデレに、兄者が声をかける
( ´_ゝ`)「暗くなりそうだし、家の近くまで送るよ」
家に強盗が入っていたら、意味はないのだが
ζ( ヮ *ζ「家付近と言わず、私の部屋までお願いしますぅ!」
( ;´_ゝ`)「え、いやそりゃちょっと」
ζ( ヮ *ζ「今日は私の家には犬しか居ません!」
从 ゚∀从「…俺もついてくわ」
結局、兄者が両手に花の状態で図書館を見た
ビデオスペースから射殺すような視線が飛んで来たが、錯覚だろう
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 01:18:02.47 ID:LPF7HGxz0
( ´_ゝ`)「そうだ、ハインよ」
从 ゚∀从「んだ?」
( ´_ゝ`)「俺らは恋人や愛人にはなれないし、ましてや依存し合う関係なぞにはなれないと思う」
兄者は一呼吸置いて、ハインリッヒの目を真っ直ぐに覗き込んだ
( ´_ゝ`)「だが、同じ志を持った、良き友人にはなれそうだ」
从 ゚∀从「よくも侮辱と光栄を一纏めにしてくれやがったな」
ハインリッヒは兄者から視線を逸らすと、吐き捨てるように言った
それから外したゆっくりと視線を合わせると、また吐き捨てるように言う
从 ゚∀从「…けどまあ同意だ、流石 兄者」
( ´_ゝ`)「だろう、ハインリッヒ 高岡」
そうして微笑みあった二人は、どちらからともなく握手を交わした
椅子はそれを、携帯でバイブオナニーしながら見ていた
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/09/02(水) 01:19:22.36 ID:LPF7HGxz0
I〔アイ、イ、ジブン〕
おしまい
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