- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 08:58:01.38 ID:vaw/5VFXO
- クスリを打たれ、拉致られた。
拉致られた先は、ヤクザの本拠地。
そこには、ペニサスさんという綺麗な女性
そして組長として現れた、若い男。
いったい、これからどうなっていくのだろう。
今はまだ、何もわからない……。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:00:21.34 ID:vaw/5VFXO
〜('A`)は拾い子のようです〜
第二話『決意』
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:10:47.75 ID:vaw/5VFXO
- さっきペニサスさんは『モララー組長を呼んでくる』と言っていた
つまりこの男がそうなのだろう。
( ・∀・)「おい、口もきけねーのか?」
('A`;)「う、いや、大丈夫です……」
( ・∀・)「なんだ、だいぶ回復したみてーだな」
その若い男は俺の横に来ると、胡座わかいて座った。
( ・∀・)「ったく……、家の若ぇのが迷惑かけたな」
アンタも十分若いだろ、という言葉は飲み込んで、
('A`)「はぁ……」
ただそれだけを返した。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:19:11.82 ID:vaw/5VFXO
- だが、疑念を抱かずにはいられない。
これが組長?
俺はそんなに目が利いているわけじゃないが、30くらい、下手したら20代にも見える若さだ。
昨日俺にクスリを打ったやつと同じくらい、それ以下に見られてもおかしくない。
たしかにそれっぽいスーツを着ている。
髪もオレンジのような色だ。
だが、それを差し引いてもそこら辺にいる兄ちゃんとかわらないような雰囲気である。
しかも同性のガキの俺から見てもカッコイイと思うような容姿。
これが組長?
これがヤクザのリーダー?
にわかには信じ難いことだった。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:24:54.47 ID:vaw/5VFXO
- そんなことを考えていると、その男は俺に話しかけてきた。
( ・∀・)「お前、ドクオっていうんだな。」
('A`)「はい、そうですが……」
( ・∀・)「俺はモララー。ここの組を仕切ってる……、簡単に言えばこのあたりのリーダーみたいなもんだ。よろしくな」
まず、簡単な自己紹介をしてきた。
( ・∀・)「で、だ。昨日はなんで酒場にいたんだ? あそこはお前みたいなガキが行くとこじゃない。親に教わらなかったか?」
('A`)「家出をしてて、フラフラ歩いていたら自然とそっちのほうに……」
これは、すべて事実である。
昨日家出をしてきたのだ。
まさかこんなことになるとは予想だにしなかったが……。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:28:38.33 ID:vaw/5VFXO
- ( ・∀・)「なるほど、家出か……」
男は、少し考える仕草をすると、
( ・∀・)「お前、家に帰りたいか?」
そう聞いてきた。
答えはもちろんノーである。
('A`)「嫌です。あそこには、二度と帰りません」
(;・∀・)「そうか、ガキのくせに肝が座ってんな……」
男はそう言って、また考える仕草をすると、
( ・∀・)「じゃあ、ここに住むか?」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:32:54.78 ID:vaw/5VFXO
- え?
いいのか?
俺みたいなガキをこんなところに置いて?
男はどんどん話しを進める。
( ・∀・)「昨日の奴らなら心配すんな。ちょっと気合い入れてやった」
一瞬背筋がゾクッとする。
なにをやったかはわからないが、間違いなく穏やかなことではないだろう。
俺は幼いながらもそれを理解した。
……やはりこの男、普通ではない。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:36:06.22 ID:vaw/5VFXO
- しかし俺はそんなことよりも、
('A`)「いていいんですか?」
こっちのほうに興味があった。
( ・∀・)「あぁ構わない」
だが、と男は少し間を空けると、
( ・∀・)「その変わりうちの組に入れ」
とんでもないことを言ってきた。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:42:09.69 ID:vaw/5VFXO
- 組に入る、つまりそれはヤクザになることを意味する。
つまり、昨日路地裏でされたようなことをする集団の仲間入りというわけだ。
危ないクスリの取引なども行うのだろう。
男は、俺が悩んでいるのを見ると、
( ・∀・)「まぁゆっくり考えるといい。帰りたいなら帰ってもいいさ」
これは優しく語りかけるように。
( ・∀・)「ただし、警察にだけは行くな」
これは冷たく脅すように。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:43:54.81 ID:vaw/5VFXO
- それを言うと、男は部屋から出ていった。
それからの二日間、ペニサスさんに言われた通り、それはまさに地獄であった。
急に苦しくなるかと思えば、急に楽になる。それを繰り返し。
急に腹が減って、飯を食べればすぐに戻す。それを繰り返し。
クスリは人間を殺すというが、まさにそうだ。
クスリを好んで使う奴の神経を疑う。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:48:07.48 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「だいぶ元気になってきたわね」
('A`)「あぁ、ペニサスさん……」
('、`*川「お昼ご飯を持ってきたわ。さ、食べて」
そう言って持ってきたのは、可愛らしいサンドイッチに、手作りのらしきプリン。
その味は、お店のソレに劣らない程美味であり、
('、`*川「どう? 最近調子いいみたいだから、こんなのも、ね?」
さらにとてつもない美人ときた。
ホント、なんでこんなところの使用人なんかをやっているのだろう。
心底疑問である。もったいない。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 09:54:25.51 ID:vaw/5VFXO
- (*'A`)「ホント美味しいっす。ありがとうございます」
('、`*川「そう? お口にあってよかったわ」
そう言って、ペニサスさんも、サンドイッチを一つ手に取り、口にする。
ペニサスさんは毎回俺の食事を作ってくれるし、話し相手にもなってくれる。
俺も将来はこんなお嫁さんが欲しいなぁ。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:00:05.86 ID:vaw/5VFXO
- ペニサスさんは、顔に少しばかり影を落とすと、真剣な顔でおれに尋ねてきた。
('、`*川「ドクオ君……、これからどうするの?」
ペニサスさんからの質問。
それは俺もこの二日間、ずっと考えてきたことだった。
('A`)「そうっすね……」
('、`*川「お家の人、心配してらっしゃるでしょう? 帰らないにしろ、電話の一本くらいは……」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:02:30.49 ID:vaw/5VFXO
- ('A`)「…………」
心配?
あいつらが俺がいなくなって心配する?
むしろせいせいしてるだろう。
あいつらは、クソッ!
('、`*川「ドクオ君……?」
('A`)「……俺、親なんかいないんです。それでずっと施設にいて……」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:08:13.05 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「そっかぁ、なるほどね……」
ペニサスさんの反応は淡々としていた。
まぁ予想はしていたが。
なんせ俺がクスリでヤバかったときも冷静に対応してくれてたし……。
やはりヤクザと近しい人間なんだと俺は思った。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:15:10.82 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「じゃあその施設に連絡入れる?」
ペニサスさんは話しを続けた。
('A`)「いえ、大丈夫っす。施設の人間は子供がいないほうが喜ぶでしょうし」
実際、俺みたいに施設を飛び出す奴は少なくない。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:21:41.22 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「ふーん、その施設、楽しくなかったの?」
('A`)「全然っす。飯とかおやつとか全部取り合いで……、力の強い奴が独り占めしてましたし」
ホント、嫌な思い出だ。
('、`*川「テレビで見る施設って、優しくて温かいところって感じなんだけどねぇ……」
('A`)「普通はそうなんだと思います。優しい職員がいて、みんなで遊んで……。ただ、俺みたいなところも少なくないでしょうね」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:26:52.46 ID:vaw/5VFXO
- そう。
普通そういう施設の子供達は、親がいない寂しさから、職員を親のように慕い、施設の友達とは強い信頼関係で結ばれる。
あくまで、"普通"は。
('、`*川「随分達観してるわねぇ……」
('A`)「いえ、ただ捻くれてるだけっすよ。施設の職員達にも嫌われてましたし」
そう言って、微苦笑する。
俺の心は長い間施設にいることで、随分と荒んでしまったようだ。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:32:48.35 ID:vaw/5VFXO
- そんな風に自虐してる俺を、ペニサスさんは、
('、`*川「それだったら、ここにいればいいじゃない」
当たり前のように言った。
('、`*川「そりゃあここはヤクザの本拠地だし、真っ当な人間はほとんどいないわ。オイタしちゃう子もたまにはいるけど」
この間の連中のことだろうか。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:38:38.68 ID:vaw/5VFXO
- お茶目な女の子みたいな表情で、ペニサスさんは俺の耳元で囁いた。
('、`*川「……実を言うとね、モララーさんって孤児を拾うのが趣味なの」
('A`)「かわった趣味っすね。理解できそうにないっす」
('、`*川「もう、またそんなこと言う……。子供なんだからもうちょっと素直にならないと、ね?」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:43:51.32 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「それにね、ここに拾われた子って、自分達から組員になろうとするのよ? 『モララーさんを守るのだー』って」
ペニサスさんの一言一言には、本当の真心がこめられている。
真剣に相手のことを思いやって。
('、`*川「あぁ見えてモララーさんって、優しいのよ? 本人は否定してるんだけどね」
ペニサスさんはクスッと笑った。
ここにきて初めて見る笑み。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:47:00.05 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「モララーさん、最初『ここにいていい』って言ってたでしょ? それはきっと、ドクオ君のことを想ってだと思うの」
俺はただ、ペニサスさんの話しをしっかり聞く。
('、`*川「強要はしないわ。けど、私としてはドクオ君にはいて欲しい。モララーさんもそう思ってるはずよ」
俺はじっと考える。
なぜならこれは俺の人生を大きく左右する選択肢だから。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:51:02.99 ID:vaw/5VFXO
- しばらく考えた末、一つ聞いてみる。
('A`)「しばらくいてみる、ってのはアリですか……?」
('、`*川「えぇ、構わないわよ。辞めるときだって、小指詰めたりする必要はないわ」
さらっと恐ろしいこと言いますねペニサスさん。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 10:57:42.89 ID:vaw/5VFXO
- そうだ、と手の平を叩くペニサスさん。
いったいどうしたのだろう。
('、`*川「ちょっとついて来て」
無理矢理俺を引っ張っていくペニサスさん。
いったいこの細腕にはどんな力が宿っているのだろう。
飛ぶように引きずられていった。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 11:02:45.02 ID:vaw/5VFXO
- 部屋を出た俺は驚愕した。
この世に生まれてTOP3の驚愕レベルだ。
もともとデカイ家なのだろうとは予想していた。
が、その予想を大きく上回る光景が、そこにはあった。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 11:08:36.22 ID:vaw/5VFXO
- 先が見えないくらいの土の堀が家の周りに巡らされ。
中央にはどこの城だよ、と思わせるような黒塗りの馬鹿デカイ門が佇んでいた。
堀の内側には立派な日本庭園があり池には鯉が泳いでいる。
そして家は、…………デカイ。
これ以外の表現のしようがない。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 11:13:06.99 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「驚いた?」
ペニサスさんが、ポカンとしていた俺に話しかけてきた。
(;'A`)「え、えぇ……。ちょっとこれは……」
('、`*川「でしょでしょ? ここはね、モララーさんのお家でもあり組の本拠地でもあるの。一階には大広間と食堂があって、二階にはモララーさんとその幹部の人達の客間、そして三階には若い組員達が住んでるの。」
(;'A`)「なんかもう、信じられないっすね……」
('、`*川「三階には30人程度、ドクオ君も住むなら三階ね。さっき寝てたのが二階の客間よ」
俺はこの広い敷地をぐるりと見渡した。
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/22(火) 11:17:48.09 ID:vaw/5VFXO
- ('、`*川「でも、必ずここに住まなきゃならない、ってわけじゃないからね。実際ここに住んでるのは家のない組員や、モララーの側近の一部しかいないから」
('A`)「…………」
('、`*川「だから、ドクオ君がここの組員になるなら、大人になるまでおとなしく住んで、それから外で暮らしたいなら組を抜けてもいい。もちろんずっとここにいてもいいわよ?」
ペニサスさんの話しを聞いてるうちに、俺の心は決まっていた。
俺、ここで暮らしたい、と。
第二話『決意』終
戻る 次へ