( ^ω^)は選ばれたようです

3 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:03:33.70 ID:PQRUUQYfO
僕の毎日は、いつも通りの時間に起きることから始まる。
着替えて荷物をまとめ、朝食のパンを咥えて家を出る。
通り道の途中で僕を待つ友人達と挨拶を交わし、昨日のテレビや雑誌の話題に興じる。
そして学校に着けば分からない問題に頭を抱え、定期テストの存在に悩む。

放課後はまた友人とだべりながら帰路につき、テレビを見、夕飯と風呂を手早く済ませ適当に机に向かった後に寝る。

平穏な日々。
それが自分の生活だった。

ζ(゚ー゚*ζ「あれ? どうしました?」

しかし、そんな平穏など簡単に崩れるんだな。
と、僕はこの広大な草原を眺めながら、その思いをかみ締めていた。



( ^ω^)は選ばれたようです

4 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:06:31.58 ID:PQRUUQYfO
事の発端は二日前に溯る。
学校の帰りに、ゲームショップの所謂ワゴンに入る様な安物から、奇抜なパッケージのゲームを買ってからだ。
それには説明書の類は無く、起動させてもバグか故障か、ピカソ顔負けの映像が流れるだけ。
一応音も流れてはいたが、それはスピーカーから狂った様に不協和音を奏でるだけ。
一分を過ぎた頃だろうか、画面は突如ブラックアウトし、幾度の再起動にも応じなかった。
やがて諦めた僕は仕方無しに電源を落とし、
『失敗だった。明日返品に行こう』
そうぼやきつつ、布団に潜り込んだ。

5 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:07:39.60 ID:PQRUUQYfO
その日、夢を見た。
今でも覚えている。
白い小さな部屋に、僕と、無音の砂嵐を映すテレビと、あのゲームの入ったゲーム機のみがある空間。

僕がそれらを起動すると、しっかりとした画面にこう書かれていた。


『 あなたの名前を入力して下さい 』

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/05(日) 21:10:07.52 ID:PQRUUQYfO
僕は迷わず『ブーン』と入力した。
下らないだろうが、例えデフォ名があろうと、主人公の名前を例外なくそうするのが自分のルール。異論は認めるけどね。
そのまま決定ボタンを押すと、続いて出た画面にはいくつかの選択肢と共にこう書かれていた。

『あなたのパートナータイプを選んで下さい』

9 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:12:00.61 ID:PQRUUQYfO
  _,
( ^ω^)「……」

これはさすがに迷った。
おかしいだろう? だって何の説明もなく選択しろというのだから。

けどこの時に僕はこれが夢だと気付いた。
まぁ、そもそもゲームだし、現実でもそんなに悩むほどの事ではない。
少し考えた後、僕が選んだのはフェアリーだった。
というか夢の中とはいえ、ユニコーンなんぞを選ぶ気には到底なれなかった。
せめてペガサスなら……いや、ないな。

12 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:14:16.53 ID:PQRUUQYfO
そして、名前とパートナーの確認画面が入り、飛ばすと画面はまた変わった。

『 以上でゲームの設定を終了します
  登録は六時間後に終了します
  そのまま電源を切って下さい   』

( ^ω^)「おー……。今は無理なのかお」

僕はすぐにはできない事に少し閉口しながらも電源を切った。
それと同時に視界が暗転した。
普通に見ればただのおかしな夢。
しかし今なら分かる。
これが全ての始まりだったのだと。

13 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:16:22.33 ID:PQRUUQYfO
( ^ω-)「お?」

目を覚ませば見慣れた僕の部屋。
けどいつも覚醒一番聞こえる、八時のアラーム音がしない。
手探りで探して確認すれば、朝の六時を過ぎたばかりだった。

( ^ω^)

(^ω^ )

( ^ω^ )「……六時?」

どう考えても鳴らないです。本当に(ry
二度寝しようにも既に目は冴えきっていて、到底寝付けそうにもない。
仕方ないのでテレビを見ながら朝食を適当に摂ることにした。
ちなみに、いつもは結構ギリギリまで寝ているので、後から起きてきた両親にひどく驚かれた。

14 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:18:11.60 ID:PQRUUQYfO
その後、余裕を持って登校した僕に驚いた友人達に昨日の事を冗談混じりに話したが

「お前大丈夫か? まだ寝てるんじゃないか?」

そう一笑された。
その場は適当にふざけあって終わったが、その時からだろうか、僕は奇妙な感覚を覚え始めた。

16 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:20:28.38 ID:PQRUUQYfO
それは妙な頭痛から始まった。
頭痛と言っても痛みはそれほどない。
ただ頭蓋の中を何かが蠢く感覚が主だったものだ。
この時の僕はまだ、不快感を感じる程度だった。
やがてノイズみたいな空耳が聞こえてきた。
テレビの砂嵐の音のような、通信状態の悪い無線のような、そんな音。
それもまだ無視出来た。
しかし目隠しをするように、視界が突如として暗転した事には流石に困り果てた。

17 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:22:02.48 ID:PQRUUQYfO
失神とはまた違ったそれは、当初瞬きと同じくらい短いものだったが、時間を経つごとに頻度は増し、結局は四時限目で僕は保健室へリタイアすることとなった。
席で週刊誌を読む保険医に、事情を話して横になると、いつの間にやら例の部屋に僕はいた。

室内は前とほとんど変わっていなかった。
ただ一つ、テレビの砂嵐だけは響いていたが。

18 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:22:59.87 ID:PQRUUQYfO
前と同じように、画面はそのままにゲームを起動する。
すると画面は黒のみを映し、一拍してから次の文が表示された。

『 あなたの登録が完了しました
  本日十七時四十三分より、転送を開始します
  なお、私物の持ち込みに関してはこちらの判断に従ってもらう形となっておりますので、ご理解の方をお願いします 』

( ^ω^)「?」

19 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:23:53.72 ID:PQRUUQYfO
転送? 私物の持ち込み? どういう事だ?
頭の上に幾つもの『?』が浮かんでは消えてゆく。
やがて視界もぼやけ、暗くなってゆく。
そして、僕がその文を理解するのはまたしばらくしてからだった。

「起きなさい!」

( ^ω^)「お?」

「お? じゃないわよ全く……」

ξ゚听)ξ「もう放課後よ? あんたいつまで寝るつもりよ」

21 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:27:24.50 ID:PQRUUQYfO
( ^ω^)「え? もうかお?」

保健室の窓を見れば、確かに空は丁度橙から藍に変わるところだった。
壁の時計はもうすぐ五時半を迎えるところだ。
どうやら昼食は食べ損ねたらしい。

ξ゚听)ξ「全く……朝の冗談といい、いつまで寝ぼけてるつもり?」

( ^ω^)「あー、すまんk」

拳骨が脳天に直撃した。
このボクサー顔負けの威力、相変わらずである。
流石空手初段、今一瞬彼女の背中に天の字が見えたのも気のせいではないであろう。

22 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:28:30.23 ID:PQRUUQYfO
ξ゚听)ξ「さ、早く帰るわよ」
  Ω
( ^ω;)「……把握」

しかしさっきの夢は何だったのだろう?
よくよく考えて見れば今朝のあの夢も、まだ鮮明に覚えている。
それに今日ずっと感じたあれらは、何か病気の症状なのだろうか?

「……う」

いや、あの感覚は急にきた。
あれだけひどいのが何の前触れもなく訪れるだろうか?

「な……う」

やはり原因はあのCD-ROMか?
いや、漫画じゃあるまいし、そんな絵空事まずありえない。
けど……

ξ;゚听)ξ「内藤? ちょっと大丈夫!?」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/05(日) 21:29:42.30 ID:PQRUUQYfO
( ^ω^)「お? あー、ちょっと考え事してただけだお」

ξ゚听)ξ「ならいいけど……。
      なんか今日の内藤変よ?
      悩みがあるなら遠慮なく言ってね」

( ^ω^)「……いやー、悩みというかですね、ツンさんのまな板を人並みに大きくするにはどうすればいいかなー、なんてwww
      でも僕の頭じゃどう考えても無理でしたおwwwwサーセンwwww」

ξ゚听)ξ「……」

ξ#゚听)ξ「死ね!!」

彼女は一瞬ポカンとしたが、すぐに怒りに身を任せ、回し蹴りを繰り出してきた。
あ、今日は水玉だ。

24 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:30:22.01 ID:PQRUUQYfO






    『転送開始』






25 名前: ◆F3K21PdX56 投稿日:2009/04/05(日) 21:32:50.33 ID:PQRUUQYfO
しかし彼女のそれは僕に当たることはなかった。
僕が避けたのではないし、彼女が外したのでもない。
単に脇腹に入るはずの脚が、僕の体をすり抜けていったのだ。

(;゚ω゚)「なっ!」
ξ;゚听)ξ「えっ!?」

この時、僕の頭は完全に混乱していた。

(;゚ω゚)「え? うそ、いや……」

当然だろう?
だっていきなり幽霊みたいに自分の体をすり抜けていったのだから。
僕は今起こった事に目を疑い、彼女は彼女で勢いを止められず大きくバランスを崩した。
僕は反射的に手を取ろうとしたが、それさえも出来なかった。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/05(日) 21:38:00.23 ID:PQRUUQYfO
ξ; )ξ「な……内藤?」

尻餅をついたまま僕に向ける視線は、
その恐怖を帯びた瞳は、
そのお化けを見たような顔は、
僕を、『内藤ホライゾン』という存在を完全に否定していた。
そう、今迄僕に向けていたあの厳しいながらも優しさに満ちていた彼女が、僕に見せた最初の拒絶だった。

そして、それが僕がこっちで見た、最後の景色だった。

第一話――非凡の日――


第二話へ続く→


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