ξ゚听)ξ殺人鬼は微笑むようです

2 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/18(木) 23:50:37.59 ID:oJ/WEbIo0
 
私は強くなれたのだろうか。
 
何時かの誓いを果たせたのだろうか。
 
守るべき物の為に。
 
私は強くなれたのか?

3 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/18(木) 23:52:21.71 ID:oJ/WEbIo0
 
 
十二 其の一
 
 
5 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/18(木) 23:54:56.86 ID:oJ/WEbIo0
駆け抜けていくのは果たして僕か。
それとも無情にも狩られ行く命達か。

(#^ω^)「ぉおおおお!!」

背に背負う長さ百五十センチメートルの鰹包丁の柄を握ると、
目の前に群がる鬼違い共に目掛けて引き抜き、薙ぎ払う。

途轍もない怪力で振るわれ、しかし特有の撓りを見せる鰹包丁は、
奴等の胴体を真っ二つに引き裂いていく。

次いで腰に差す鯨包丁を引き抜く。
後方に迫りくる銃撃を避けながら、跳躍。

物陰に隠れていた鬼違いの集団に突っ込むと、その重圧な刀身で圧倒的な破壊の限りを尽くした。

(;^ω^)「ぜはっ……糞っ……」

多い、多すぎる。
この数は……普通じゃない。

凡そ敵の数は二百。
更には入り組み、複雑化した市街地が戦場だ。
その上一般人が巻き込まれていると言う最悪なケース。

道ながら、既に数え切れぬ死体を目の当たりにしてきた。
努めて冷静に事にあたりたかったが、最早我慢のしようも無く。

6 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/18(木) 23:56:34.13 ID:oJ/WEbIo0
(;^ω^)「……っ」

懐から注射器を取り出し、腕に打ち込む。
次いで錠剤を取り出すと、掴めるだけ掴んでばりぼりと噛み砕いた。

(;^ω^)(なんて使い勝手の悪い体なんだお)

ほんの暫くすると、先までの疲労が嘘のように消えていった。
身体も何処か軽くなり、痛みも無くなっていく。

( ^ω^)「……よし」

物陰から出る。

今、僕は美歩町の有楽街に来ていた。
この片田舎で最も賑わう場所だ。

今日は金曜日だった。
昔から華金、と呼ばれるように、本日もそれに漏れなかったようで。

「たす……けて……」

きっと、皆明日、休日なのをいい事に遊び呆けていたのだろう。
誰もが皆、その平和で当たり前な日常を疑うことすらせず。

そりゃそうだ。
だってそれが彼らの過ごしてきた世界なのだから。
一体、誰が非難できよう。

8 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/18(木) 23:59:17.92 ID:oJ/WEbIo0
僕の足元で血の泡を吐きながら、救いを求めている。
ああ、すまない。きっとあなたは助かることはない。

(  ω )「……すまんお」

下半身の無くなった彼は、後数分と持たないだろう。
だが別段彼一人が珍しいわけなんかじゃない。

今だって至る所で悲鳴が、銃声が、雄叫びが、響いている。
そう。僕の目の前でだって。

(  ω )「何処に在る」

何処に、彼らの救いはある。

(  ω )「何処に居る」

貴様等の居場所はこんなところじゃないだろう。
お前達は、お前達は――

( #゚ω゚)「――この糞鬼違い共がああああああ!!」

駆け抜けていく。
宛ら僕は一つの弾丸。魔弾。
定めた敵に向け、ただ真っ直ぐに撃ち放たれる。

10 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:01:21.46 ID:9LpvaErC0
( #゚ω゚)「死ね!!」

人を食べている鬼違いの頭を刎ねる。

( #゚ω゚)「死ね!!」

皮膚を剥いでいる鬼違いの四肢を切断する。

( #゚ω゚)「死んでしまえええええええ!!」

まるで地獄の釜をひっくり返したようだった。

世界は鉄火に溢れ、血に塗れ。
そうして亡者が闊歩し、生者はその供物として捧げられているのだ。

一体全体、何がどうなった。
誰が望んだと言うんだ。
こんな馬鹿で、まるで夢のような、下らない事を。

( #゚ω゚)「……『ν』」

鬼違いに囲まれながらも、僕はその名を口に出す。

怒りだ。これは。
純粋なる殺人衝動だ。

( #゚ω゚)「……『退け』とは言わんお。貴様等全てを含めて。全部殺しつくしてやるお」

11 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:03:24.84 ID:9LpvaErC0
言ったな、鬼違い。
お前は殺すんだよと。いっぱい、沢山、限りなく、殺すんだよと。
間違いなく言ったな。

地上に死の楽園を築き、世界を殺戮のパレードに染め上げると。
なんとも糞だ。下衆だ。ゴミだ。
笑えもしない。

( #゚ω゚)「おお」

来てやったぞ。僕は。

( #゚ω゚)「おおっ」

ぐずぐずしていたら席が無くなるのだろう?

( #゚ω゚)「おおおおおお!!」

なら全て破壊するまでだ。
誰が始めさせるものかよ。そんな下らないゲームを。

お前は。お前達は。
きっとそうだ。そうに違いない。
際限なくそうすると言うのは、つまりはそう言う事だ。

ならば今ここで確実に終わらせねばならない。
例え被害があろうとも此処で完全に沈黙させねばらならない。

さもなくばこの国は死で溢れかえってしまうだろう。

12 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:05:40.07 ID:9LpvaErC0
ミ;゚Д゚彡「こっちへ!こっちへ来て下さい!」

町の中心で暴れ狂う内藤とは逆に、俺は外堀から攻めていく。
兎に角まずは生存者の保護を優先しなければならない。

できるならばすぐさま内藤と共に戦いに身を投じたいが、
そうすればきっと助かったはずの命も消えて無くなってしまうだろう。

傷だらけの少年や少女、昏倒しているおっさん、気が狂いそうになっているお姉さん。
色々な人々が今、この地獄を体験している。

ミ;゚Д゚彡「!」

少し遠くの通りで、叫び声が聞こえる。
身近に集まっている人達にここで待つように言うと、俺はすぐさま駆けだした。

ミ#゚Д゚彡「この、ゴミ虫が!!」

壊れかけの電灯がばちばちと音を立てる下で、今にもそのナイフで一般人を殺そうとしている鬼違い。
躊躇わずに俺はそいつの頭に目掛けて引き金を絞る。
五点七ミリメートルの弾はその鋭い勢いで、奴の頭蓋を叩き割り、脳を通過し、向かいの米神を突き抜けていった。

ミ;゚Д゚彡「大丈夫ですか!!」

血を噴き上げる鬼違いを蹴り飛ばし、地にへたり込んでいる若い女性の肩を掴む。

「これ、これ、夢?ねえ、撮影か何かなんでしょ?ねえ、ね、え……」

13 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:07:21.95 ID:9LpvaErC0
涙を流しながら虚ろにそう呟く。

ミ;-Д-彡(畜生っ!)

まるで糞垂れだ。
一体彼女が、ここにいる全ての一般人が何をしたと言うのか。

誰もが皆罪を犯してこなかったわけではないだろう。
だが無慈悲に無計画に、ただただ乱雑に暴虐に殺していく様は何だ。

まるで死の群れ。まるで地獄。
世界は混沌に飲まれでもしたのか。

ミ;゚Д゚彡「……とりあえず、一緒に来て下さい。非難を」

何処に安全な場所がある。
今、この片田舎で。

警察庁は半壊。警察等の自治体団体も既に機能せず。
外界との経路すらも破壊されている。

逃げ場はない。既にこの街一体が奴等の狩り場なのだ。

ミ;゚Д゚彡「…………」

銃を見つめる。

またか。また俺は、忘れているのか。
自分の意味を。俺達と言う存在の意義を。

14 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:10:00.55 ID:9LpvaErC0
ミ;゚Д゚彡「だが……」

決めかねている。それでいいのかと。
きっと俺が居なくなればそれまでだ。

奴等に対抗し得る手段を、民間人の彼らが持つわけがない。
鬼違いとて人だ。だが人を殺すことを躊躇わない奴らとの戦闘は、別物だ。

ミ;゚Д゚彡(俺は)

俺は殺人鬼(スプラッター)、俺は、俺達は虐殺者(マサークラー)。
早期解決するのなら、敵の殲滅以外に何がある。

ミ;゚Д゚彡(幸いにも、他のメンツの到着は後僅か)

外界への救助も求めてはいるが、どうせしばらく時間がかかるに決まっている。
上が何かに理由をつけて警察機関を困らせている所だろう。

それに救助に来られるとなるとこれはまた面倒になる。
戦闘に参加することはないだろうが、その分、奴等鬼違いにとっては獲物の補充がされたと同義だ。

ミ;゚Д゚彡「どうする……!」

集めた民間人の群れを見てどうするか悩む。

安全な場所に彼らを……駄目だ。そもそもそんな保障のあるような場所が何処に……。

17 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:12:20.78 ID:9LpvaErC0
そんな、決めかねている時だった。
何か、遠くから爆音が響いてくる。

これは単車の……バイクの音だ。
恐らくショート管に換装……いやいや。
どうにもこちらに近づいてきている様子だった。

ミ;゚Д゚彡「! そうか!」

先の連絡で直ぐにこちらに向かうと言っていた。
彼女が、来るのだ。彼女達が。

鬼違いと言う身でありながら『国解機関』に所属する彼女達が。
あの最強と謳われる我が弟――ブーン――の下で戦っている彼女達が。

少しして彼女達は俺の前に現れた。

凡そ女性に似つかわしくない古めかしいバイクに乗って。
さながら真っ黒なそのKATANAは、俺達のようで。
死神にでも乗ってきたようだと、そんな錯覚を俺は感じた。

18 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:14:52.13 ID:9LpvaErC0
ξ;゚听)ξ「布佐さん!!」

空が先に単車から降りると、私も直ぐに単車から降りる。
走り寄ってきた布佐さんを見ると少しだけ安堵した。

何故なら彼の後ろには多くの人々がいたからだ。

ミ;゚Д゚彡「無事か、二人とも」

ξ;゚听)ξ「何とか!」

川;゚ -゚)「ああ、健在だ」

私は市街を見渡した。

今居る場所は、街の中心から少し離れたモール街だ。
数多くの色々な店が並び、この通りをもう少し行けば飲み屋の立ち並ぶ通りに出る。

至る所にそれらは有った。例えば血糊、例えば死体。例えば……。
それらはあり得ちゃいけない光景だった。宛ら、まるで戦場のようで。

いや、それに間違いはないのだ。
これは、今この場は、戦場と化している。

ξ;゚听)ξ(……何が戦場よ)

……嘘だ。これは戦闘にすらなっていない。
ここは今や、虐殺場なのだ。

19 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:16:22.05 ID:9LpvaErC0
奴等二百のカンプグルッペに対し、対抗し得る戦力は私達も含め凡そ四名。
あまりにも均衡がとれていない。
まるで無謀な戦争だ。

ξ;゚听)ξ「……布佐さん」

聞くにも及ばないだろう。
今、内藤は何処に居るのか、と。
私はそう、問おうとした。

ミ;゚Д゚彡「……有楽街だそうだ」

分かるとも。
先から、街の中心である有楽街からは、断末魔やら、銃声やら、訳の分からない音が渦巻いているのだから。

きっとあそこで、あいつは狂っているに違いない。
あってはならない光景を見て怒りに任せて刃を振るっているに違いない。

川;゚ -゚)「おい!!ツン!!」

だから私は、単車に乗るのだ。
クラッチに指を伸ばし、アクセルを開くのだ。

ミ;゚Д゚彡「……すまない」

分かっている。戦力を分断するのならこれが一番だ。
内藤の下へ私が。そして一般人の救護には手誰が必要なのだ。
ならば布佐さんはここから離れられるわけがない。

20 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:18:21.45 ID:9LpvaErC0
川;゚ -゚)「無茶だ!!お前に何が出来る!!」

空は私を留めようと必死で食い下がった。
そうだろうとも。凡そ実戦で、私は今まで何の役にも立ってきやしなかったのだ。

けれども、空。
私はこの約二カ月に渡る訓練で、きっと普通の鬼違い相手なら渡り合えるくらいにまでなっているんだよ。

ξ゚听)ξ「あいつは、きっと泣いているのよ」

誰よりも優しくて、残虐で、非道になり切れない殺人鬼の顔を思い出す。
あの吸血兄弟の時だって、布佐さんに掴みかかったときだって。
そして『屍』との時だって。

私は見てきた。あいつという人間を。殺人鬼ではない、内藤と言う人間を。

きっと張り裂けそうになっているんだ。
この地獄の中、泣き喚いて刃を振るうあいつは、きっと誰よりも孤独で傷ついているはずだ。

ξ゚听)ξ「それに、忘れたの?空」

制止を振りほどいて、私はアクセルを思い切り開き、走り出した。

ξ゚听)ξ「弟子が師匠の下に行くのは、当たり前でしょうが!!」

ならば私はその隣に立つ。
内藤、あんたの隣でその痛みを分かち合いたい。

21 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:20:22.00 ID:9LpvaErC0
 
 
そうさ。
 
 
お前だって空と一緒だ。
 
 
特別なんだ。
 
 
22 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:22:21.49 ID:9LpvaErC0
 
 
 
ξ#゚听)ξ「待ってろよダチ公!!」
 
 
 
23 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:25:33.92 ID:9LpvaErC0
流れる景色の中、幾人かの鬼違いを前輪で吹き飛ばす。
きっと、私は今、殺している。

嘗て内藤に、空に、布佐さんに殺す事をするなと止められた。
だが、構っていられない。

何が大事なのか。
己の変化を恐れてどうなる。

私は人間だ。己の目的の為だけに人を殺しなどするものか。
待っていろ内藤。待っていてくれ助けを求める人々。

ξ;゚听)ξ「ぅわっ!?」

積み重なる死体の山を走行中、車体がぐらついた。
そりゃそうだ。こんな柔らかい上を丁寧に走れなどするか。

ξ;゚听)ξ「ちいいっ!!」

倒れる寸前、単車から飛び降りる。
鋭い音を上げながら、何人かの鬼違いを巻き込みながら単車は滑って行った。

ξ;゚听)ξ「……っ」

現在、場所は有楽街に差し掛かる手前のゲームセンター街。
辺りには、数多くの鬼違いや、死体で溢れていた。

ξ;゚听)ξ(……軍隊、ね)

25 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:29:11.58 ID:9LpvaErC0
走行中、銃撃を受けきた。やはり中には銃を持っている鬼違いもいるらしい。
大概は刃物が多いようだが……。

ξ;゚听)ξ「……厄介にも程があるわよ」

内藤、お前はこんな状況でも、戦い続けていると言うのか。
私は心の中の奴に問いかける。

きっとあいつは笑って言うだろう。
「当たり前だ」と。

そして私に言うだろう。
「何をビビっているんだ」と。

ξ;--)ξ「……今にして思えば感謝するわ」

私はダーツをベルトから引き抜き、全ての指の間に挟む。

ξ;゚听)ξ「――鍛えてくれて、ありがとさん!!」

私は、銃を持っている鬼違いに向けて、ダーツを射出する。
時速にして二百七十キロメートルの速度をはじきだすその一本一本の投げ矢は、
奴等の心臓目掛けて見事全弾命中した。

ξ;゚听)ξ「そこっ!!」

頭上に聳える建物の窓辺から狙撃をしようとしている鬼違いの片目をダーツで潰す。
仰け反ったところで心臓にまた投げつけた。

28 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:32:41.33 ID:9LpvaErC0
先の鬼違いで、銃持ちは取りあえず全て撃破。
匕首に持ちかえると、後方に迫りくる鬼違いの群れに駆けだす。

ξ;゚听)ξ「おおおっ――」

先頭の奴の腹に前蹴りを。
怯んだ隙に奴の頭を踏み台にし、群れの中心まで飛ぶ。

ξ;゚听)ξ「――らあああああああああ!!」

目茶苦茶に、その匕首を振りまわした。
その刃先は奴等の顔や、首を切り裂いていく。

ξ;゚听)ξ「っおらっ!!」

一人の頭を到着台替わりにし、飛躍の勢いをもったまま首をへし折る。
そして地に立つと、先のへし折った首の鬼違いをハンマー投げの要領で振りまわした。

ξ;゚听)ξおおおおおらああああああああ!!」

伊達に鍛えていたわけではない。
腕力にはそこまで自信は無いが、見事に群れを吹き飛ばす。

ξ;゚听)ξ「――糞っ」

だが。
多いのだ。敵は。

気絶させたり、殺したりしても、敵はわんさかと湧いてくるのだ。

30 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:34:50.22 ID:9LpvaErC0
ξ;゚听)ξ(ダーツの数は限られている――)

できるだけ回収はしているが、それでも残りは五十本と少ない。
手に持つ匕首も、血脂でべっとりだ。

ξ;゚听)ξ「っ!!」

視界の端で転がっている我がバイク。
何、少しの事じゃ壊れまい。

ξ;゚听)ξ「ふんっ!!」

腹筋に力を込めて、横転しているバイクを起こした。
急いでセルスイッチを押す。

ξ;゚听)ξ「……KATANA」

こいつとは結構長い付き合いだった。
まだ不良をしていた時に、先輩の女性から譲っていただいたものだった。

ξ;゚听)ξ「華々しく、散れよっ!!」

迫りくる鬼違いの群れに、私は単車ごと突っ込んでいく。
十分な加速がついたところで、私は飛び降りた。

数人の鬼違いを巻き込み、単車はまたも滑っていく。

ξ;゚听)ξ「――くたばんな」

31 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:36:25.33 ID:9LpvaErC0
そして、私の手には先ほど回収しておいた拳銃が。
単車のタンクに向けて、私は五回、引き金を引く。

次の瞬間。

ξ;゚听)ξ「うおおぁっ!?」

凄まじい音を立ててバイクが爆発した。

ξ;-听)ξ(ってて……ま、さか、こんなに凄まじいとは)

もう少し小規模になると予想していたのだが……。
飛び降りた際の痛みと、爆破の余波に巻き込まれた痛みを引きずりながらも立ち上がる。

辺りは、オイルやら焼けついた臭いで充満していた。
成程、これは中々に凄まじい光景だ。
まだ少なからず鬼違いは残ってはいるものの、大半は殲滅できたようだ。

ξ;゚听)ξ「やればできるじゃん、私」

咄嗟の判断に任せて正解だったようだ。

ξ;゚听)ξ「とりあえず、貰っていくわよ」

死んだ鬼違いから銃と弾丸の入ったクリップを奪っていく。
何も無いよりはマシだ。扱いに慣れてはいないが……。

ξ;゚听)ξ「……よし」

32 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:38:45.47 ID:9LpvaErC0
見据える先。
そこは目標地点。

ξ;゚听)ξ「……近いわね」

そこは有楽街。
今、きっと一番荒れ狂う場所だ。
そこに内藤は、我が師は、我が友は居る。

ξ;゚听)ξ(……単車、壊さなかった方が良かったかも……)

なんて、私は駆けだしてすぐに思った。
だけれども、血や死体で埋まっている路面を走るのは、やはり危険か。

時々滑りそうになりながらも私は駆ける。

ξ;゚听)ξ「内藤おおおおおおおおおおおお!!」

奴の名前を叫びながら。

お前は今何処だ。
何処で破壊の限りを?

ξ;゚听)ξ「今行くからねえええええええええ!!」

眼前に聳える血に塗れた有楽街の看板。
さながら魔都へ赴く気分だった。

33 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:40:47.86 ID:9LpvaErC0
 
 
十二 其の二
 
 
34 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:43:23.78 ID:9LpvaErC0
ミ;゚Д゚彡「――そうか、了解した」

手元にある通信機を切る。

川;゚ -゚)「おっさん」

空が慌てた様子で俺を呼んだ。
この際、おっさんという呼び方は無視する。

ミ;゚Д゚彡「恐らく、後二十分程で到着するそうだ」

川;゚ -゚)「……そう、か」

今しがた連絡を入れてきたのは、各『国解機関』員のそれぞれの進行状況だった。
違いは有れど、恐らく全員が同じくらいにこの戦場に到着するであろうと。

現在、俺達は生き残った人々を連れて何処とも知れぬ居酒屋へと避難していた。
ここも他に漏れず、散々な事をされたのだろう。
中は目茶苦茶に荒らされ、死体なんかが放置されていた。

流石は鬼違いと言ったところだろうか。
マシな死体は一体も無く、一般人の多くは中の惨劇を見て吐くか、意識を手放した。

「……どうなるの、私達」

36 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:46:59.78 ID:9LpvaErC0
部屋の隅で蹲っている、OL風の女性が呟いた。

「何で警察は何もしないの?一体何が起こっているの?」

眼を血走らせてそう言う。
語気も段々と荒くなってくる。

「あんた達は何なのよ!!私達をどうするつもりなのよ!!」

ミ;゚Д゚彡「……落ち着いてください」

川;゚ -゚)「…………」

皆、限界なんだ。この長く続く緊張に。
何時死ぬとも分からない。中には殺されそうになった人だっているに違いない。
腹を切り裂かれたと思わしき人の手当てをする空と、目を交わす。

ミ;゚Д゚彡「……兎に角、ここなら大丈夫です」

何を根拠に、と叫ぶ女性を頭に包帯を巻いた男性がたしなめた。

「……あなた方は、一体?」

今度は高校に通っていると思われる制服姿の男子生徒に問われる。

ミ;゚Д゚彡「……皆さんと変わりありません。現状に巻き込まれた、とだけ」

37 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:49:48.04 ID:9LpvaErC0
『国解機関』は極秘密に組織されている機関だ。その名を口に出すわけにもいかない。

「しかし、見事な指示の数々。護身術的なことも心得ているので?」

先の、頭に包帯を巻いた男性がこの状況に似つかわしくない笑顔でそう問いかけた。

ミ;゚Д゚彡「いえ、特には……」

……思ったよりも。
人間と言う種は、強いのかもしれない。

皆、こんな地獄に居ても、生きる意志がある。
生きようと言う強い心が。

そりゃ仲には先のOL風の女性のように、混乱に陥る人もいるだろう。
だが、希望を捨てず、笑顔を見せられるような人もいるらしい。

ミ,,゚Д゚彡(……凄いな)

俺達のような、暗部で活動している人間なら、慣れているから仕方が無い。
だが、一般人でも、強い人はいるのだ。

懐から、ゴールデンバットを引き抜き、ライターで火を点ける。
すると、空が鋭い眼で俺を見つめた。
  _,
川 ゚ -゚)「おいこら布佐のおっさん、マナーって奴をだな」

ミ;-Д゚彡「あーへいへい。ったく、口五月蠅い奴だ……」

38 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:52:36.96 ID:9LpvaErC0
一口だけ吸うと、床に落ちている砕けたコップの破片に火種を押しつける。

「あ……煙草」

「私も、吸おう、かしら……」

「あー、自分も」

すると、思いのほか喫煙者は多かったようで、こぞって懐を漁りだした。

ミ,,゚Д゚彡「…………」

その光景を見て、俺は不覚にも笑ってしまった。

川;゚ -゚)「……おっさん?」

ミ,,-Д-彡「いや……何でも無いよ」

皆、緊張の糸が、ようやく切れたんだ。
まるで思い出したかのように、煙草に火を点ける様が面白くて、おかしくて。

きっと生きていることすら、忘れていたようで。
だが安心してくれ。あんたらは今、確かにそこにいて、生きているんだ。

最も、皆、まだ緊張の抜けない顔で煙を燻らせる様は、不安の表れなのだろうが。

40 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:54:45.60 ID:9LpvaErC0
川 ゚ -゚)「さて」

と、言って空はライフルを担ぎ立ち上がった。

川 ゚ -゚)「おっさん。少し外の様子を見てくるよ」

ミ,,゚Д゚彡「分かった。気をつけろよ」

……しかし、銃を所持していて、一般人のふりを装うのには無理があっただろうか。
けれど誰も深く聞いてこなかった訳だし、まあ、よしとするか。

一応、ここにたどり着くまでに、辺りの鬼違いは殲滅しておいたはずだ。

……凡そ二百、か。

ミ,,゚Д゚彡(……増えただろうな)

忘れちゃいけない。
鬼違いが元は人間だということを。

鬼違いの本質。
それは抑制すべき己が本能、己が欲。
その多くが人の死をきっかけに手に入れられるものが多い。

現代、急激に増えつつある鬼違いのその数。
今やこの地獄と化した場で、果たして感化されない者がいるだろうか?

41 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:57:57.48 ID:9LpvaErC0
否だ。

ミ,,゚Д゚彡(どれほど増えたかは分からんが、やはり、難しいだろうな)

俺と空で合わせて十五体程を殺してきた。
内藤は三十は殺しているだろうが、奴の体質上、いつまで戦えるかは不明だ。

津出さん……。

ミ,,゚Д゚彡(殺して、しまっているだろうな)

仕方が無いと言えば仕方が無い。
だが、できるのならば、彼女に殺させたくなど無かった。

ミ,,゚Д゚彡(彼女は気付いているのだろうか)

今、この地は彼女が最も求めていた場所だと言う事に。

ミ,,゚Д゚彡(緊張は、果てしなく続いているだろう)

殺し合いに身を投じた彼女に、もう、道は残っているのだろうか。

ミ,,-Д-彡「……大丈夫さ」

信じるほかない。彼女自身を。
そして彼女の師である内藤と、友達である空を。

42 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 00:59:46.22 ID:9LpvaErC0
 
今、僕は何処に居るのだろう。
 
血に塗れて、限りなく殺し続けて。
 
今、僕は何を求めるのだろう。
 
救われなかった屍の山を踏みつけて。
 
深く、深く。
 
まるで沈み込んでいくようだった。
 
立ちはだかる奴等を斬って、斬って、斬って。
 
僕はこのまどろみに、血の海に溶け込んでいく気分だった。
 
痛みを引き摺り、流れる涙に気づかないままに。
 
そして胸に溢れかえるのは憎悪と殺意。
 
ふと彼女を思い出した。復讐に生きる包帯女。
 
きっと今、僕も彼女も変わりはしない。

43 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:03:19.18 ID:9LpvaErC0
(  ω )「がはぁっ……はあぁっ……」

三十体目の鬼違いの腹に突き刺した鯨包丁を引き抜く。
ずるりと、僕の体に密着していた奴の体は滑り落ちていった。

(  ω )「ぐっ……」

身体の震えが先から止まらない。
握る包丁の柄が血脂に塗れていて、滑り落ちそうになった。

(  ω )「あと……あとどれくらいだお」

突然、右肩に激痛が走る。
恐らく、撃たれた。

間髪いれずに自分の真横にある横道に佇む鬼違いに、鯨包丁を投げつけた。
頭蓋にめり込み、脳味噌を撒き散らして死んでいく。

震える足でそいつの下まで行き、包丁を引き抜く。

身体は、傷だらけだった。
満身創痍で、ふらふらだった。

(  ω )(すげーお……姉さん)

あんた、やっぱ化け物だったんだな。
この比じゃない数と、殺し合っただなんて。

46 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:06:46.17 ID:9LpvaErC0
ああ、考えたくもない。
もしかしたらって。

(  ω )(僕)

死ぬかもな、なんて。

そりゃ、強いさ。僕は。
だけれども、この途方もなく続く地獄を渡り歩ける程、僕には持久力という奴が無い。

(  ω )(足が、重い)

死体の山を歩く。

(  ω )(腕が、重い)

身体に血を纏う。

(  ω )「やっべー……」

僕。
今、ピンチなんじゃ?

48 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:09:14.02 ID:9LpvaErC0
 
 
「―――ぉ―――」
 
 
50 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:11:33.05 ID:9LpvaErC0
 
 
 
(  ω )「……?」
 
 
 
51 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:14:28.05 ID:9LpvaErC0
 
 
 
「―――――おぉ――」
 
 
 
53 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:16:29.37 ID:9LpvaErC0
 
微かに耳に届く。
誰かの声。

僕はそれをよく知っている気がした。

彼女は、確か。
僕の愛する人と同じ名前の持ち主で。
 
54 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:19:13.78 ID:9LpvaErC0
 
 
「―――とおおぉぉ――」
 
 
56 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:21:22.89 ID:9LpvaErC0
 
弱くて、泣き虫で。
何も出来なくて、根性もなくて。

今時珍しいヤンキー気取りで。
でも、本当は、それが似合ってなんかいなくて。
 
58 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:23:22.71 ID:9LpvaErC0
 
 
「――ないとおぉぉ――」
 
 
60 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:25:21.39 ID:9LpvaErC0
 
 
(  ω )「――ああ」
 
 
61 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:27:22.13 ID:9LpvaErC0
 
 
 
ξ; )ξ「内藤おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
 
 
 
62 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:29:21.32 ID:9LpvaErC0
 
 
そこに居るのか。
 
まったくもって、馬鹿な奴。
 
全身、傷だらけで、顔まで汚れちゃって。
 
君、女だろう。はしたないじゃないか。
 
本当、何時も何時も。
 
君は、世話の焼ける奴。
 
馬鹿で、どうしようもなくて。
 
泣き虫で、弱くて。
 
 
65 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:31:20.42 ID:9LpvaErC0
 
 
 
( ゚ω゚)「――ぉぉおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおお!!!!」
 
 
 
67 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:33:24.16 ID:9LpvaErC0
立ちつくす僕を囲む糞共を、鰹包丁で薙ぎ払う。
数にして凡そ七人の鬼違い。
それを造作も無く、躊躇も情けも無く僕は惨殺する。

( ゚ω゚)「おおおおおおお!!」

そこに居るのだな。
僕の友達は。
どうしようもない、馬鹿な奴は。

( ゚ω゚)「おおおおおおお!!」

駆け抜けろ、僕。
駆け抜けろ、魂。

さながら僕は銃弾。魔弾。
定めた者の処へ、一直線へ。

68 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:35:20.71 ID:9LpvaErC0
ξ; )ξ「内藤おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

内藤は居た。全身を傷だらけにし、血に塗れて。
鬼違いに囲まれて。

きっと、あいつには今、何かしらが起きている。
以前、『屍』と交戦していた時にも見受けた。

恐らくあいつは、長く戦闘が出来ない身体なのだろう。
そうだろうとも。あの馬鹿げた力を出すのに、身体が持つわけがない。

ξ; )ξ「!?」

私を取り囲む鬼違いの群れ。
数は凡そ十。

糞、油断を――

ξ; )ξ「ぐうっ!!」

襲い掛かってきた刃を、匕首で受け、そいつを蹴り飛ばす。
背に迫る鈍器を避け、そいつも殴り倒す。

ξ; )ξ「!?」

そして目の前には――

ξ; )ξ(銃――)

69 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:37:24.48 ID:9LpvaErC0
 
 
 
「まだまだだおね、津出さん」
 
 
 
71 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:39:21.39 ID:9LpvaErC0
弾は発射などされない。
銃を構えていた鬼違いの首は刎ねられたのだ。

ξ; )ξ「……ばーか」

お前は本当、いつも美味しい所でやりやがる。
あの時だってそうだった。
眼球事件の時だって。

お前は助けてくれたな、私を。
その余りある破壊力を以ってして。

ξ;。 )ξ「遅いのよ、いつもいつも」

流れ落ちる涙など気にせず、私はそいつの顔を見た。

優しい笑みを湛えている。
深く、深く、全てを包み込むような深い眼差し。

そうだ。何時だってそうだった。

72 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:41:56.53 ID:9LpvaErC0
 
 
 
( ^ω^)「お待たせさん、だお」
 
 
 
ξ゚ー゚)ξ「……はいはい」
 
 
 
75 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:43:31.28 ID:9LpvaErC0
 
 
 
 
 
殺人鬼は微笑むのだ。
 
 
 
 
 
77 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:45:25.22 ID:9LpvaErC0
 
 
十二 其の三
 
 
79 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:47:20.89 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「しっかし、まあ」

ξ;゚听)ξ「……ええ」

結局、私達はあっさりと取り囲まれてしまっていた。

( ^ω^)「君、本当、何時も足手まといだおね」

Σξ#;皿;)ξ「さらっとなんつーこと言いやがる!!殺すぞ!!」

こんな状況でも、私達は何時も通りだった。
何故だろう。
こいつといると、どんな局面でも、立ち向えてしまう気になれるのは。
負ける気がしなくなるのは。

( ^ω^)「……君、結構限界きてるんじゃないかお」

言われて、私は身体が震えていることに気づく。
ここまでたどり着くのに、それなりに戦い続けてきたからだろうか。
或いは緊張感に身体が上手く言う事をきいてくれないからだろうか。

ξ;゚ー゚)ξ「……あんたが言えた義理なわけ?」

そう言う内藤だって、手先が震えている。
痙攣に近い。
それほどまでに力を酷使してきたのだろう。

80 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:49:23.39 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「馬鹿言っちゃいけないお。僕はまだまだ元気ハツラツっておー」

強がってはいるが、誤魔化せやしないと言うのに。
これじゃ、私も弱音を吐けやしないじゃないか。

ξ;゚ー゚)ξ「じゃあ、勝負でもする?」

( ^ω^)「勝負?」

私達を取り囲む鬼違い達。
どう出るか、迷っているのだろう。
恐らく私達か、奴等の誰かが動いた瞬間。
殺し合いは始まる。

ξ;゚ー゚)ξ「どっちが多く敵を殺せるか、ってさ」

( ^ω^)「……ほおぉ」

あ、しまった、と思ったがもう遅い。

( ^ω^)「そうかおそうかお。君、殺してきたわけかお。いやまあ納得。
      さもなきゃこんな所まで来れやしないわけだしお?」

ξ;゚听)ξ「いやいや、あれだぞ内藤!正当防衛って奴だから!」

(;^ω^)「殺しちまったら過剰防衛所の騒ぎじゃねーお、馬鹿」

81 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:52:58.47 ID:9LpvaErC0
まあ、仕方が無いか、と内藤はため息をつく。

( ^ω^)「で、どうだお、感想は」

ξ;゚听)ξ「え?」

人を殺した感想は。
そう、内藤は私に問う。

ξ;゚听)ξ「…………」

正直。
何とも無い。

(;^ω^)「あー……まあ、望んで殺しにかかってるわけじゃないしお」

ξ;゚听)ξ「つーか、根本的にこれは戦争に近いから、ねえ?」

こんなキリングフィールドで、そんな事、気にしている暇もなかったのだから。
常にお前の下へ辿りつく為に無我夢中だったのだから。

( ^ω^)「ふん。じゃあまあいいかお」

さて、と内藤は包丁を震える手で構えた。

( ^ω^)「弟子の実力がどんなもんか、見せてもらおうじゃないかお」

82 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:54:57.18 ID:9LpvaErC0
得意げな顔で、よくもまあ、言いやがる。

ξ;゚ー゚)ξ「……はっ。上等よ」

私も、その右手にダーツを。
左手に匕首を構える。
銃はここに来るまでに使い果たしてしまっていた。

敵もこちらの殺意に気づいて、武器を構え直した。
一触即発。どちらかが動けば、殺戮が始まる。

喉と額に汗が伝う。緊張感が増していく。

( ^ω^)「――行くお!!」

ξ;゚听)ξ「――っらああああ!!」

ざっ、と私と内藤は駆けだした。
その手に凶器を持ち。

敵も駆けだす。私達へと。

さあ、身体よ、もってくれよ。
せめてこの瞬間は、生きていてくれ。

83 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:57:18.71 ID:9LpvaErC0
 
 
「っしゃこらああああああああああああああ!!」
 
 
86 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 01:59:21.10 ID:9LpvaErC0
その瞬間だ。
頭上で爆音が響きだした。
いや、正確には爆音が近付いて、私達の上を通過したのだ。
あれは……飛行機か?戦闘機か?

それと同時に何者かの雄たけびが、頭上から響く。

ξ;゚听)ξ「!?」

夜空に、真っ白の花が……パラシュートが浮かんでいた。

( ^ω^)「まさか――」

全員、その場に居る者は頭上を見上げていた。
私達も、鬼違い達も、全て。

「いっただきいいいいいいいいいいいいいい!!」

真っ白な髪を振りみだして。
闇夜に輝く幾多ものピアスを耳につけて。
そして漆黒に溶け込む真っ黒なスーツを身に纏い。

(・∀ ・)「俺!!登場おおおおおおおおおおおおお!!」

奴が――斎藤又座が表れたのだ。

88 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:02:13.21 ID:9LpvaErC0
「だけじゃーないぜえええええええええええ!!」

今度は鬼違いの群れの向こう側から、甲高い女性の声が響く。
瞬間、世界に赤の海が表れた。

それは炎だった。
それらが私達を取り囲んでいた鬼違い達を燃やしつくしていく。

ノパ听)「おおおおおおおっすううう!!お前ら元気してたかああああああああ!!」

ξ;゚听)ξ「火糸!!」

背中に妙なタンクのような物と、手にホースみたいな物を持って現れたのは常にハイテンションの火糸だった。

ノハ*゚听)ノシ「おおおお!!鶴子ちゃああああんん!!会いたかったぜえええええええ!!」

ξ;゚听)ξ「!? 火糸、後ろ!!」

ノパ听)「ああ?」

彼女の後方から迫り寄っている鬼違いを私は確認する。
慌てて彼女にそう伝えるが、敵は剣のような物を振りかぶっていたところだった。

「――まったくもって、お前は馬鹿だ」

の、だが。
またたく間にその鬼違いは細切れにされてしまった。

91 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:04:40.21 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「クックルかお!!」

( ゚∋゚)「遅れたな、内藤、津出さん」

ノハ*゚听)ノシ「おおおおお!!内藤もいたのかああああ!!元気かああああああ!!」

(;^ω^)「(うっせええええええ)いや、気付けお……」

そんなやり取りをしていると、遅れて斎藤が静かに地面に着地した。

(;・∀ ・)「ってうおおおおおいい!!俺の獲物は!?あれ!?何故にWhy!?」

ξ;゚听)ξ「火糸とクックルさんがやっちゃったわよ」

(#・∀ ・)「何だとー!!おいお前らなー!!」

「ったく、こいつらは何時も喧しい。ねえ、兄さん?」

「まったくだ。もっと落ち着きと言う物が欲しいね」

すると、通りの向こうから足音を響かせてこちらに向かってくる影が二つ。

(´・ω・`)「皆、早かったね」

(`・ω・´)「おや、内藤、もうボロボロなのかい?」

ξ;゚听)ξ「曙歩さんに、樹さんも!!」

92 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:06:36.97 ID:9LpvaErC0
これは、よもや――

『ザッ……おい、内藤、津出さん、聞こえてるか!?』

突然、私達の無線に、布佐さんの声が響いた。

( ^ω^)「おっ。聞こえてるお」

ξ;゚听)ξ「こちらも!」

『今、全機関員が到着した所だ!もう少しの辛抱――』

( ^ω^)「ああ、もう全員集結したお」

『だ……って、あれ?え?もう?早くない?』

ノパ听)「こっちの方、五月蠅かったから誰かに会えると思って来た!!」

( ゚∋゚)「右に同じく」

(・∀ ・)「何か適当に落ちたら居た!」

(´・ω・`)「馬鹿達の騒ぎ声が聞こえたので」

(`・ω・´)「血のニオイに惹かれて」

『うっそだあ……えー……お前ら……えー……』

94 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:09:44.62 ID:9LpvaErC0
いや、流石に私もびっくりだ。
なんてったって、一同が一斉に揃ったのだから。

ξ;゚听)ξ「あれ?そう言えば、優ちゃんは?」

ノパ听)「いやあああ、流石に子供にはちっとなああ?」

まあ、確かにそうか。
あの子はまだ小学生だったものな。
流石に戦場はまだ早すぎると言うものだろう。

『……まあ、兎も角だ。これで全員集結したわけだ』

ぴりり、と、迫力の増した声色で、布佐さんがそう言った。

『もう手を抜く必要もない。そう言う意味だ。お前ら、分かるな?』

その途端、その場に居た者は皆、笑みを浮かべた。
内藤と同等の、あの、笑みを。

ξ;゚听)ξ(――そうだった)

私は忘れていたんじゃないだろうか?
この人達の本質を。この人達の意義という奴を。

96 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:11:46.01 ID:9LpvaErC0
 
(・∀ ・)「よっしゃ!!殺せる!!いっぱい!!」
 
ノハ*゚听)「うっひょおおおおおお!!血沸き肉躍るぜえええええ!!」
 
( ゚∋゚)「おい糞眉毛。どっちが多く殺せるか勝負でもするか?」
 
(´・ω・`)「は?上等だよ。巻き込まれて死ぬなんてダサい真似はしないでよね」
 
(`・ω・´)「しっかし、血の香り凄まじいな。チンコ勃ってきた」
 
(;^ω^)「お前どうしようも無さすぎるだろうお」
 
99 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:15:20.57 ID:9LpvaErC0
そうだ。こいつらは殺人鬼だ。
殺す事を――鬼違いを狩る事を至上としている化け物たちだ。
その上全員が超感覚の持ち主。戦う事に生き甲斐を感じているくらいの狂人達。
樹さんは変態のようだが。

ξ;゚听)ξ「――ははっ」

途轍もなく、力強い存在だ。
何故だか負ける気がしなかった。
たった援軍が五人にも関わらず、それは万にも勝る兵力だと感じた。

『目標、前方。見敵必殺。全てを限りなく殺し尽くしてやれ!!」

( ^ω^)( ゚∋゚)ノパ听)「了解!!」(・∀ ・)(´・ω・`)(`・ω・´)

誰もがその手に武器を。
誰もがその心に殺意を。

きっと誰もが皆、嬉々として殺していくに違いない。
この殺戮の場と化した場所で。

そうか。
そうなのだな。

ここは、虐殺場なのだから。
ならば間違ってなどいないんだ。

101 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:18:50.59 ID:9LpvaErC0
ぞろぞろと、敵は湧いて出てくる。
そんな事をしている間も、奴等は、鬼違い共は現れる。

(・∀ ・)「取りあえず分断しようぜー。俺北!!」

(´・ω・`)「じゃあ僕と兄さんは東かな」

(`・ω・´)「うむ」

( ゚∋゚)「俺は布佐さんの所へ行ってくる」

ノパ听)「じゃあ私は適当に殺して回るううううう!!」

内藤は?と皆が内藤に訊ねた。

( ^ω^)「……ちょっと、調べて見たい場所があるんだお」

ξ;゚听)ξ「え?」

唐突に、趣旨の違う話を始めた。
一体全体、何がどういう事だ?

(・∀ ・)「おっしゃああああ!!獲物が増えたあああああ!!」

( ゚∋゚)「了解した。気をつけろよ?」

それだけで、皆は散会する。
元気いっぱいに、目前に立ちはだかる奴等を殺していく。

102 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:22:12.93 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「……さて」

と、内藤は頭上を見上げた。

( ^ω^)「津出さん」

ξ;゚听)ξ「何よ」

あれ、と内藤は指差した。
それはこの片田舎のシンボルのような建物。
『美歩タワー』を指さしていた。

( ^ω^)「あそこなら、きっとこの街の全体を見渡せるとは思わないかお?」

ξ;゚听)ξ「……それがどうしたのよ」

まったくこれだから馬鹿は、と内藤は肩を落として愚痴る。
な、誰が馬鹿か!!

( ^ω^)「取りあえず走りながら話そうかお」

『美歩タワー』。それはこの片田舎では少し目立つ建物だ。
高さはそこまでは無い。場所は有楽街を抜け、少し先にある駅をさらに越した所にある。

( ^ω^)「効率よく殺していくなら何処が手薄で何処に人がいるかを把握しなきゃいかんお」

ξ;゚听)ξ「……それで、あそこなら全体が見渡せる、と」

103 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:25:24.44 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「だおだお。つまり、もしかしたらあそこに首領がいるやもしれん」

少し短角的すぎるとも思うが、しかし行って損はない。
何せ生存者がいる可能性もある。
敵の殲滅も任務の一つだが、根底にあるのは生存者の保護だ。

広いとは言えない街だが、やはり至る所は見ておきたい。

( ^ω^)「あ、そうだ」

と、内藤が目前に立ちはだかった屍を蹴り飛ばし、頭蓋を踏みつぶしながらぽんと手を叩いた。

( ^ω^)「ちょっとこっちへ」

そう言って内藤は適当な店の中へと侵入し、私の手を引いていく。
一体、何を?

Σξ;゚听)ξ「はっ!!ま、まさか、あんた私をレイ、レイp」

(;^ω^)「……もう突っ込まんお」

ぐ、ぐぬ、こいつめ……。
まあ、ふざけていては時間の無駄だしな。

( ^ω^)「ちょっと腕を出してくれお。後、目を瞑って」

105 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:28:13.45 ID:9LpvaErC0
ξ;--)ξ「? あんた何を――」

言いかけた所で、腕に少し痛みが走る。

ξ;゚听)ξ「っ!?」

見開いた眼には、私の手に注射針が――

ξ;゚听)ξ「っておいいいい!!何しちゃってんのおおおお!?」

ずっ、と内容物が空になった注射を引き抜かれて、そう叫ぶ。
おま、まさか今のって!

ξ;゚听)ξ「――!」

すると、少しずつ、体が軽くなっていく気がした。
身体の痛みも、和らいでいく。
どこか集中力も増した気がした。

( ^ω^)「後こいつも飲んでおけお」

渡されたのは少し大きめの錠剤が三つ程。
渋々とだが、私はそれを呑みこんだ。

ξ;゚听)ξ「……ねえ、今のって」

私と同様、自分の腕に注射をする内藤を見ながら言おうとする。

106 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:30:46.96 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「……言うなお」
  _,
ξ;゚〜゚)ξ「――……」

まあ……仕方が無い、のだろう。
そんなものに手を出したくはなかったが、しかし、効力はこれほどまでにある。

私とは比にならない量の錠剤を内藤は手に取ると、噛み砕きながら飲み込んでいく。

( ^ω^)「……よし」

ぶん、と内藤は重圧な包丁、鯨包丁を振るう。

( ^ω^)「さあ、行くお」

ξ;゚听)ξ「……うん」

目指すは『美歩タワー』。
足取りは、先より何倍も軽くなっていた。

110 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:32:49.06 ID:9LpvaErC0
 
 
十二 其の四
 
 
111 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:35:00.48 ID:9LpvaErC0
「……何処へ?」

かつり、と私は足を踏み出した。

「駅まで行くの。多分、来るから」

「そうか。来るのか」

「あの人も、きっと来るわよ?」

「……へえ」

その言葉にその男は微笑んだ。

「……強くなってるかな?」

その腰に一振りの日本刀を差して男は私の隣に立つ。

「知らない。興味無いもの」

「ありゃりゃ」

そう言えば、彼女は何処へ行ったのだろう?
今頃は、私の目論み通りに動いてくれているのだろうか?

「二人とも、頑張ってくれるといいけど」

「……相変わらず、いい顔で笑いやがる」

112 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:37:37.82 ID:9LpvaErC0
ミ,,゚Д゚彡-~「…………」

そいつは現れた。
この闇夜の中、ギラついた瞳を持ってして。
その手に脇差を持って。

ミ,,゚Д゚彡-~「……成程。お前が噂の『屍』か」

店の前で座って、煙草を吸っていた時だ。
殺意が歩いてきたのだ。
それは着実に街の中心へと向かって、俺の前を横切ろうとしていた。

(//‰ ゚)「……あんた、代表か、『国解機関』の」

特に気にするでもなく、そう言って奴は立ち止まる。

ミ,,゚Д゚彡-~「……何処へ?」

俺は拳銃を取り出す。
もしもこいつが噂通りの奴だと言うのなら、そうなるだろう。
こいつは俺に襲い掛かり、中に居る生存者を片っ端から殺していくだろう。

(//‰ ゚)「…………」

だが奴は、俺には目もくれなかった。
ただ静かに、前を、街を、見つめる。

(//‰ ゚)「死が起きている。あそこでは」

120 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:54:35.09 ID:9LpvaErC0
静かに奴は口を開いた。

(//‰ ゚)「ふざけた話だ。あんたら『国解機関』も、『ν』も」

本当、笑えもしない。
そう言って奴は、笑う。

(//‰ ゚)「何時までもお前たちは勘違いをしたままだ。全てだと言っただろう。僕の獲物は。
      殺すんだよ。限りなく。あんたらだって、『ν』だって」

あそこで暴れ尽くしている鬼違いだって。
そう、言った。

(//‰ ゚)「許しがたいね。ボクの獲物を奴等は大量に殺したのだろう?ならば報復だ。それなりの罰を与えてやる」

まるで本当に、屍だと思ってしまった。
その名に恥じぬ、死体だと。
奴は、『屍』は築き上げるつもりなんだ。
屍を積み上げ、そしてその頂点で笑いたいのだ。

(//‰ ゚)「あの阿婆擦れも、殺してやる」

ミ,,゚Д゚彡-~「待てよ」

俺を無視して、歩きだした瞬間。
俺は引き留めた。

123 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 02:57:25.55 ID:9LpvaErC0
ミ,,゚Д゚彡-~「『屍』よ。お前、どうしてそうも狂うんだ」

(//‰ ゚)「知っているだろう。ならば語る必要もない」

ミ,,-Д-彡-~「……駄目だな。お前の生い立ちは、つまらなすぎる」

(//‰ ゚)「…………」

奴は振り向いて、俺を睨みつけた。

ミ,,゚Д゚彡-~「はっきり言えば。お前のような人間を俺は誰よりも知ってる。お前より悲惨な奴だって見てきた」

(//‰ ゚)「それで?」

ミ,,゚Д゚彡-~「別に?ただ、な」

ふぅ、と俺は煙を吐いた。

ミ,,゚Д゚彡-~「お前を笑わせてやりたい。ただ、そう思った」

(//‰ ゚)「……何だ、それは」

ミ,,゚Д゚彡-~「……さあな。似てるからな、お前は」

あいつの顔を思い浮かべる。
ああ、そうだな。そっくりだ。

125 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:01:00.66 ID:9LpvaErC0
ミ,,゚Д゚彡-~「お前、本当、そっくりだよ」

まるで生まれ変わりのようじゃないか。
その身に宿らす能力だって、あいつにそっくりじゃないか。

(//‰ ゚)「……下らない」

それだけで終わりだと、奴は歩きだす。
目前に広がる地獄へと向かって。

ミ,,゚Д゚彡-~「なあ。これが終わったら、お前、うちに入れよ」

(//‰ ゚)「…………」

奴は何も答えずに、去っていった。
何ともまあ、難しい奴だ事。
俺は呆れて、煙を吐き出す。

(;゚∋゚)「布佐さん!」

と、そんな風にしていたら、クックルが走って近寄ってきた。

(;゚∋゚)「今、こっちから『屍』が来たが……大丈夫だったか?」

ミ,,゚Д゚彡-~「心配ねーよ。何、こっぴどく振られちまっただけだから」

何だよそりゃ、とクックルは呆れている。

126 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:04:23.75 ID:9LpvaErC0
 
ミ,,゚Д゚彡-~(……しかし)
 
帰りが遅い。
少し見てくる、と言った割にもう三十分は経過している。
 
空は一体、何処へ……。
 
128 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:06:59.49 ID:9LpvaErC0
ξ;゚听)ξ「ふぅ……」

現在、美歩駅前。
道すがら数十人の鬼違いを相手にここまできたが、まだまだ数は残っていそうな雰囲気だった。
今も街中では銃声やら雄叫びやら悲鳴やらが響いている。

ξ;゚听)ξ「……しかし」

その道中、生存者の発見は……できなかった。
既にこの地獄が始まってから三時間ほどだろうか。
時刻は日付の変更に近づいている。

( ^ω^)「……まあ、仕方のない話、だおね」

仕方が無い。それだけで済ませていい話なのだろうか。
きっと、他にもやり方は有ったはずだ。
いやしかし、それはまた難しいのやもしれない……。

( ^ω^)「外界からの救助も未だ無し。相当上がごねてるみたいだおね」

ξ#゚听)ξ「……後で痛い目見せてやる。絶対に」

もう我慢の限界だ。
この件が終わったら単身でも出向いてやる。
そして一人ずつ顔面を思い切りぶん殴ってやる。

130 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:10:32.61 ID:9LpvaErC0
しかし、先からこの付近はまったく鬼違いがいない。
思いのほか他よりも地面が汚れていない。
まあ、少なからず死体や血痕はあるが……。

( ^ω^)「……どんぴしゃり、かお?」

ξ゚听)ξ「……かも、ね」

見上げる先には摩天楼、『美歩タワー』が。
今日は清々しく夜空は晴れ上がっていた。
月が綺麗に輝く。

ξ゚听)ξ「……?」

駅の屋根の上に、それは小さくあった。
何か、小さな丸い反射光。

ξ゚听)ξ「――――」

何故だかとてつもなく嫌な予感がして。
気がついたら私は内藤を押し倒していた。

131 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:12:50.70 ID:9LpvaErC0
 
 
(;^ω^)「――津出さん!?」
 
ξ;゚听)ξ「伏せて!!」
 
 
133 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:14:21.96 ID:9LpvaErC0
 
 
 
――ドン!!――
 
 
 
134 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:16:21.10 ID:9LpvaErC0
内藤の居た場所を、弾丸が通過し、アスファルトにめり込んだ。

(;^ω^)「――――」

ξ;゚听)ξ「――――」

即座に立ちあがり、体勢を立て直す私と内藤。
敵は、駅の屋根の上。
恐らくはライフルを所持している。

腕は、先のを見るに非常にたつようだ。
何せ内藤ですら気付かないほど殺意の無い弾丸を飛ばしてきたのだから。
こればかりは私の体質に感謝する。

136 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:18:20.77 ID:9LpvaErC0
 
 
 
「あー!!おしいおしい!」
 
 
 
137 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:20:21.34 ID:9LpvaErC0
唐突に、そんな声が響いて、足音が私達に近づいてくる。
二つの足音だ。
 
「あ、今撃っちゃダメよ?」
 
声。
 
よく聞こえる。
 
ξ゚听)ξ
 
いや、まさかな。
 
ありえるわけもない。
 
( ^ω^)「――誰だお、お前」

内藤が、迫りくる影を睨みつけて、問う。
私は、何故か視線を落したままでいた。

138 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:22:23.69 ID:9LpvaErC0
「誰って――」

今日は夜空が晴れ上がっていて、月が綺麗な物だから、よく見えるだろう。

(;^ω^)「――!?」

内藤が、驚愕にたじろぐ。

「私の事、そう言えば、よく見た事が無かったかな?」

(;^ω^)「……そう、かお。こりゃ、いや、しかし――」

内藤が私を見る。

やめろ。私を見るな。
何故私に確認をとるような眼で見る。

知っている、とでも言ってほしいのか。
その声の持ち主を。

ξ゚听)ξ「……いやいや」

でも、ほら、別に、ただそこにいるだけ、ってさ。
可能性も、捨てきれないわけで。

この異常に満ちた空間で、何故平気なの、って。
問えるわけもなくて。

147 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:38:39.38 ID:9LpvaErC0
 
 
「今晩は、『国解機関』の序列一位の内藤平助さん?そして――」
 
 
149 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:41:22.28 ID:9LpvaErC0
 
 
 
ζ(^ー^*ζ「お姉ちゃん!」
 
 
 
ξ゚听)ξ
 
 
 
150 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:44:25.12 ID:9LpvaErC0
ちょ、っと、待っては、くれ、ないか。

ξ゚听)ξ「……いやいや。いやいやいやいや、おかしいでしょ」

何してんだよ、あんた。

ζ(゚ー゚*ζ「あれ?驚いてる?やっぱり?」

いやー、それが狙いだったんだよー。
なんて、可愛らしい声で言う。

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、もっと驚いてもらおうかな!」

かもーん、って、彼女は、零は、駅の屋根に向かって声を上げた。

ああ、よく見える。見えるよ。
その姿、間違えるわけがあるかよ。
だって――

153 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:47:24.02 ID:9LpvaErC0
 
 
 
川 ゚ -゚)
 
 
私の、親友だもの。
 
157 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:50:22.10 ID:9LpvaErC0
( ^ω^)「……あ?」

内藤が、訳が分からない、といった表情で空を見上げる。
私は、最早理解できず、ただ立ちつくす。

( ^ω^)「おま、何してんだお、そんなとこで」

内藤がそう言う。

川 ゚ -゚)「…………」

空は無言を貫く。

( ^ω^)「……いや、お前、あの……」

……まじかよ。
そんな言葉が、内藤の口から出た。

ζ(゚ー゚*ζ「いやあ、感動の御対面だねー、内藤さん!」

でも、もっと君には会ってもらいたい人がいるのよ!
って。

私の、妹、が。

160 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:53:22.27 ID:9LpvaErC0
ξ#゚听)ξ「――ぉおおおおおお!!」

訳も分からず、私は、零に駆けだした。

訊きたい事は山ほどあった。
だけど何から訊けばいいのか分からなくて。

だからもう、考える事すら億劫になって。
私は駆けだす。

嘘だ。
嘘だ嘘だ。

何だよこれ。
何なんだよ。

ξ#;听)ξ「――何が何なんだよ!!」

拳が、振るわれる。
だがそれを塞いだのは冷たい感触。

それは日本刀の鎬だった。
私の拳は鎬によって防がれていたのだ。

( ^ω^)「――――」

私は見上げた。そいつの顔を。
何とも穏やかそうな男だった。

161 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:56:04.00 ID:9LpvaErC0
 
 
 
( ´∀`)
 
 
 
162 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 03:58:23.46 ID:9LpvaErC0
分かったのだ。一瞬で。
こいつだ。こいつが内藤の、倒すべき敵なのだと。

( ゚ω^)「――おい」

内藤が踏み出す。
その足元に、空が弾丸を撃ち込む。

( #゚ω゚)「 お い ! ! 」

ξ;凵G)ξ「ねえ……嘘でしょ……何が……どうなって……」

理解出来ていたさ。
したくもなかったさ。

そうなんだろう。

ここは地獄で、死と苦しみに溢れていて。
そしてその敵が。

愛しき妹と、親友と、最悪の象徴だったのだろう。

ζ(^ー^*ζ「……今晩は、『国解機関』のお二方」

まるでお嬢様のように、ドレスの裾を持ち上げて挨拶をする。

ζ(゚ー゚*ζ「『ν』の長をやっております。津出 零でございます」

164 名前: ◆hrDcI3XtP. 投稿日:2011/08/19(金) 04:00:27.10 ID:9LpvaErC0
 
 
 
さあ、始まったぞ。
 
地獄が。
 
 



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