- 1 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:05:37.44 ID:izrXzXjq0
- 奴は言った。
「そっくりなんだ」
私は未だその言葉の意味を知らない。
なあ、何時かちゃんとその意味を教えてくれるよな?
- 3 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:07:45.96 ID:izrXzXjq0
-
五 其の一
- 5 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:09:54.45 ID:izrXzXjq0
- 生まれながらに僕は殺人鬼だった。
手に持つものはすべて凶器になった。
どう動けばいいのかも、どう攻撃すればいいのかも、全部理解できていた。
僕にとっての殺人とは単なる呼吸に過ぎない。
( ω )「…………」
現代日本で、僕が過ごしてきた環境は普通じゃなかっただろう。
僕は生まれながらに殺人鬼だと自覚していた。
両親は居なかった。物心がついた頃には、とある場所で生活していた。
そこで行ってきたことを簡単に言うならば、世界で最も醜い事だった。
僕が初めて人を殺したのは凡そ五歳の時だった。
よく覚えている。
スナッフビデオというものがある。
娯楽用途に流通させる目的で行われた実際の殺人の様子を撮影した映像作品を指すものだ。
僕は、飼われていたんだ。とある大富豪の豚野郎に。
その豚野郎は僕をゲージへ閉じ込め、体中を鎖で雁字搦めにして僕を飼っていた。
- 6 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:12:03.48 ID:izrXzXjq0
- 豚野郎はどこまでいっても豚野郎だった。
「お前は犬だ。いやそれ以下だ」
毎度僕は奴のイかれた口臭を浴びせられそう囁かれた。
豚野郎は僕を道具以下の存在として扱う。
初めて殺した相手は、その時の僕より少しばかり年上の女の子だった。
着る物は無く、体中が痣だらけで、泣いていた。
豚野郎は僕にバットを、同じく少女にも持たせた。
周りには豚野郎とカメラを持った同じく豚野郎。
その他にも畜生以下のゴミクズが沢山居た。
下された命は目の前に居る少女を殺すこと。
少女も僕を殺すように言われた。
豚野郎は殺し合いを撮りたかったんだ。
周りのゴミクズ達が気持ちの悪い笑みを浮かべて僕と少女を急かす。
今思えば、僕が殺人鬼だと気付いたのはこの時だ。
少女はバットを振り上げた。
その瞬間に理解した。
隙が、体制が、筋力が、体力が、全部見て取れた。
- 7 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:14:12.87 ID:izrXzXjq0
- ただ僕は、無意識的に少女をバットでミンチにした。
ゴミ達は失笑している。
そりゃそうだろう。たかだか五歳のガキが、こんな芸当できるわけがないのに。
大方合い打ちでも狙ってたのか、はたまた僕を殺すつもりだったのか。
それは今となっても分からない。
僕は肉の塊を見下ろす。
肉汁の中に白濁したものが混じっていて、僕は同情した。
殺してしまった事にじゃない。
こんな年端もいかない少女が、こんなにも辛い思いをして死んでいったことに対して僕は同情したのだ。
其の日から、僕は豚野郎の専属殺人鬼になった。
いや?言い方を変えよう。
僕は男優になったんだ。スナッフビデオの。
或る時は赤ん坊も殺した。
男の子も殺した。
目の見えない障害児も殺した。
奇形や、ダルマも殺した。
目の前に出されたモノは全てミンチにした。
そしてそれが僕のご飯になった。
比喩じゃない。その肉は全部僕が処理してきた。
- 8 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:16:21.32 ID:izrXzXjq0
- 別に、殺そうと思えば豚野郎は何時でも殺せた。
だが僕はそうしなかった。
何故かって?
認めたくはないが、僕はこの豚野郎が居なければ生きていけなかったんだ。
豚野郎の言いなりになっていれば、少なくとも住居と飯にはありつけた。
日々の暴力や、性的な事は我慢した。
生きていくにはそう言う事に慣れなきゃいけないと思ったんだ。
次第に、僕は全部を受け入れ始めた。
その内殺し屋の真似事も始めた。
あの時は……まだ七歳くらいだった気がする。
普通の子供なら考えられないだろう?だが僕にはそれが出来た。
僕に必要なのは、物。
武器という部類でなくてもいい。消しゴムでも十分僕には凶器になる。
爪一枚で僕は首を掻っ切る事が出来た。
そう。
僕は、異常だった。
生まれながらに殺人鬼。
僕はよく思ったものだ。
今ある環境は、その実、自分にとても相応の場所だったんだ。
- 10 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:18:30.98 ID:izrXzXjq0
- だけども、全ては唐突に終わりを迎えたんだ。
(*゚∀゚)
ミ,,゚Д゚彡
二人組の男と女が、全てを殺し尽くした。
豚野郎も、他のゴミクズ共も、全て。
(*゚∀゚)「いい仕事だぜ、布佐。この糞鬼違い共、一斉に掃除できたんだ」
ミ#゚Д゚彡「反吐すらでやしないさ、こんな糞っ垂れたところ」
血塗れになったその二人は、僕へと歩みよる。
女は僕を抱きしめようとした。
僕はその時、殺人鬼だった。
何よりも、誰よりも、冷徹にして非常。
情けも容赦もなく、豚野郎たち以外は全てを敵とみなしていた。
だから僕はその拳と足で、女と闘った。
(*゚∀゚)「おっ、おっ?」
( ω )「っ、っ!」
女は強かった。今まで対峙したどんな奴らよりも。
全てが違った。
- 11 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:20:40.77 ID:izrXzXjq0
- 僕は遊ばれていたようなもんだった。
後から聞いたら、彼女は僕を殺そうか迷っていたらしい。
あの時、僕が、あんな行動をしなかったら、と。
(*゚∀゚)「――お前」
女と何度目かの激突。
僕は右拳を女へとぶつける。
が、それは彼女の左手に阻止された。
ぐっと力を込める。だがどれだけ頑張ってもびくとも動かない。
(*゚∀゚)「泣いてるのか?」
( ;ω;)「――え?」
人生で――物心がついて――初めて泣いた瞬間だった。
どれだけ殴られても、どれだけ殺しても、どれだけ犯されても泣いたことは無かったのに。
全てが解放された。もう、僕は自由になった。それがとてつもなく嬉しくて……僕は泣いた。
その時僕は大声を上げて泣いたんだ。
そして、その瞬間に、僕は生まれたんだ。
ようやくこの世界に意味のある生を授かったんだ。
僕の愛する姉さんの手によって。
- 12 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:22:49.23 ID:izrXzXjq0
- 新しい環境は、僕には馴染みの無いものばかりだった。
学校へ行かされた。友達が出来た。
勉強なんてした事がなかったから、僕は何時もテストでは一桁ばかりを取っていた。
その度に、僕は彼女に――姉さんに叱られたものだ。
でも、僕は運動だけは出来た。それはよく褒めてもらった。
給食も残さず全部食べた。どれも美味しくて、初めてで、感動した。
僕の中の普通が普通ではなかったんだと改めて思い知らされる。
ここには誰も僕を傷つける奴が居ない。ここには僕の飯になる奴もいない。
危険な奴も、嫌いな奴も、臭い奴も、居なかった。
(*゚∀゚)「ブーン、楽しいか?」
姉さんはよく、唐突にそんなことを僕に訊いた。
果たして何を指して訊ねているのかは知らない。
だが答えはいつも決まっていた。
(*^ω^)「楽しいお!!」
僕は姉さんに引き取られた。
彼女の家は広く、何でもあった。
テレビだとか、冷蔵庫だとか、他にも僕が目にした事の無い物が沢山あった。
友達が話題に出しているゲームを買ってもらったこともある。
僕はその日一日中、姉さんと楽しくゲームをやったものだ。
- 13 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:24:57.45 ID:izrXzXjq0
- 全てを取り巻く環境は最高だった。
もう僕は違う僕だった。
何時の日か、過去、僕が殺人鬼だったことなんて、まるで嘘だったかのように。
僕は普通の子供になった。
遊んで、勉強して、姉さんに甘えた。
けれど時折不安にもなった。
これは夢なんじゃないのかと。
次に目覚め時、僕はあの鉄臭い部屋の中で、また誰かを殺す日々に戻るんじゃないのかと。
よくそんなことで魘された。
酷い夜は泣き叫んで起きた事もある。
(*-∀-)「大丈夫だ、ブーン。お前はもう、大丈夫なんだよ」
( ;ω;)「姉さん……」
その度に、姉さんは僕を優しく抱きしめてくれた。
いつぞやの豚野郎たちのような、荒々しく、痛みを伴うような抱擁なんかじゃない。
温かくて、ふわふわしていて、とても気持ちがよかった。
姉さんは僕をブーンと呼ぶ。
渾名だそうだ。
何故そういう名で呼ばれるようになったのかと言えば、ある日姉さんと二人でピクニックに行った日の事。
- 14 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:27:06.80 ID:izrXzXjq0
- 広い空の下、雄大な草原の上に立つ。
こんなにも青々とした空は初めて見た。
空は四角い物で、黒一色だと思っていた僕には、新鮮で、あまりにも綺麗に見えた。
と(*^ω^)つ「ブーン!!」
両手を広げて走り出す。
どこまでも自由に、どこまでも気ままに。
僕は草原の上を走る。
(*゚∀゚)「そうだそうだ!子供はそうあるべきだぜ、ブーン!」
と、姉さんはそう呼ぶ。
今、何て呼んだんだ?
(*゚∀゚)「お前があまりにも嬉しそうにそう叫んで走り回るからさ、そう呼ぶことに決めたよ」
姉さんが僕に名前をくれた。。
内藤平助。それが僕の名前だそうだ。
内藤とは姉さんの名字だ。僕には戸籍は無い。
勿論名前をもらったのは凄く嬉しかった。だが僕には姉さんがつけてくれた渾名の方が特別に思えた。
ブーン。僕の渾名。
初めて、僕を呼んでくれた名前。
- 15 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:29:15.53 ID:izrXzXjq0
- ずっと、そんな毎日が続くものだと思っていた。
普通に学校に通って、普通に友達と遊んで。
普通に給食を食べて、普通に勉強して。
普通に姉さんに甘えて、普通にお風呂に入って。
どこまでも普通な生活が、永遠に続くと思っていたんだ。
(*゚∀゚)「ブーン。少し遠くへ出かけよう」
姉さんは真っ黒なスーツを着て、険しい表情でそう言った。
僕も似たような格好をさせられた。
生まれて初めて新幹線に乗る。
これもまた子供らしい反応を僕は見せた。
兎に角速くて、はしゃいだ。
だが姉さんは、ずっと険しい表情だった。
着いた先は、以前テレビで見たことのある建物だった。
「こっかい」とか言う所で、偉い人が話し合う場所。
そこに僕たちは乗り込む。
エレベーターを下り、地下へ。
幼いながらに、僕は以前のような感覚を思い出していた。
この緊張感、そして緊迫感。
……何だ?
- 17 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:31:24.07 ID:izrXzXjq0
- 姉さんが扉を開け放ち、そこに入る。
その瞬間に、姉さんが吹き飛ばされた。
( ^ω^)「え?」
姉さんが受け身を取って倒れる。
僕は、目の前に立つ謎の男と向き合った。
ああ。
敵か。
一瞬で相手の頭まで跳躍して、頭に蹴りを放つ。
男は真横に吹き飛ぶ。僕はそれを信じられない速度で追う。
懐に潜り込んで脇腹をへし折る。
男が呻き声を上げた。
(*゚∀゚)「よせ、ブーン。十分だ」
男が横たわり、僕がそいつの頭を壁に打ち付けていると、姉さんはそう言って僕を止めた。
久しぶりに動いてみたけれども、まだまだ僕も現役のようだった。
この時、まだ僕は九歳。
ミ;゚Д゚彡「なんて強さだ、あり得ん」
部屋に、何人かの人間を連れて布佐の兄さんが入ってくる。
僕は彼をよく知っていた。姉さんと恋仲にある人だ。
彼は僕を助けてくれたし、よく用事か何かで姉さんの所に来ると、決まって僕を構ってくれた。
だから僕は彼が好きだった。姉さんが布佐の兄さんを好きなように、僕も好きだった。
- 20 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:33:32.63 ID:izrXzXjq0
- (*゚∀゚)「オレは反対だ。こんなテストやらされても、どれだけこいつが力を持ってようが、絶対に反対だ」
だのに、その日の姉さんと布佐の兄さんは険悪な感じだった。
ミ,,゚Д゚彡「俺だって反対だよ。けど、これも上からの命令なんだ」
(#゚∀゚)「まだ九歳だぞ!?」
姉さんが叫ぶ。
布佐の兄さんが顔を伏せた。後ろの人たちも悲しそうな顔をしている。
ミ,,゚Д゚彡「だが、その子は間違いなく超感覚者だ!その子は、生まれながらに殺人鬼なんだよ!」
生まれながらに殺人鬼。
そうか。そうだった。
僕は今もまだ尚、殺人鬼だったのか。
そうかもな。さっきも、あそこで寝ている男を殺そうとした。
染み着いているんだ。殺すことが当然になってる。
僕に――姉さんに危害を加えた奴は、殺さなきゃ。
そんな自分にぞっとした。
たぶん昔の僕なら何ら不思議に思うこともなかったろう。
だが、僕は今、普通の子供に近い。
だから僕は、自分自身を汚らわしい存在だと思った。
- 24 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:36:28.67 ID:izrXzXjq0
- ミ,,゚Д゚彡「……その子は何十人も殺してきた。その罪は償わなければならない。
例えその子の意思じゃなかったとしても、許されることではないだろう!?」
(#゚∀゚)「だから殺させるのか!?その元凶となった、鬼違い共を!?」
ミ,,゚Д゚彡「その子は超感覚者だ!適しているんだよ!」
(#゚∀゚)「何で普通に生きさせてやれないんだ!?こいつに罪なんか無いじゃないか!?
確かにどんな理由でも殺人が正当化されるなんてのはあり得ないさ!ましてや一般人だ!
だけどこいつはやっと解放されたんだぞ!?なのにまた、殺人鬼の道に戻れって言うのかよ!?」
ミ#゚Д゚彡「お前は――!!」
がしっと布佐の兄さんが姉さんの肩を掴む。
姉さんの耳に、布佐の兄さんが小言で何かを呟く。
僕にはそれが聞き取れた。
ミ#゚Д゚彡「……これを拒むと、上が抹殺するように命令しているんだ」
(#゚∀゚)「――!」
じろっと姉さんが布佐の兄さんの後ろに控える奴らを睨む。
ミ# Д 彡「頼む、耐えてくれ。俺だって……俺だってブーンをこんな道に堕としたくはない……!
だが、これはブーンを生かすためなんだ……!」
二人が離れる。
姉さんは、僕に近寄ると強く抱きしめた。
- 25 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:38:37.19 ID:izrXzXjq0
- (* ∀ )「ブーン」
( ^ω^)「……姉さん?」
(* ∀ )「学校、楽しいか?」
( ^ω^)「……うん」
(* ∀ )「友達、いっぱいできたか?」
( ^ω^)「……うん」
(* ∀ )「ご飯、美味しいか?」
( ^ω^)「……うん」
(*゚∀゚)「オレは、好きか?」
僕の目を見つめてそう問う。
( ^ω^)ノ「……大好きだお」
僕は、彼女の頬を撫でてやる。
今にも泣きそうな顔だったから。
僕は姉さんに泣いてほしくなかったから、そうした。
(* ∀ )「ごめんな……ごめんな、ブーン」
( ^ω^)「大丈夫……大丈夫だお……姉さん」
- 27 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:40:45.66 ID:izrXzXjq0
- 僕は強いから。
全てを受け入れるから。
生きるために、僕はそれに頷く。
再び僕が殺人鬼になる事をよしとしよう。
普通は僕には贅沢過ぎた。
姉さんは、何も謝ることは無いんだ。
全てを理解できていた。
後ろに控える奴らが、敵になり得たかもしれないということも。
僕がこの先、自由と呼べるものを手に入れることができないことも。
でも、それでも。
僕は姉さんと一緒にいられれば十分だった。
だから僕は頷く。
僕は、『国解機関』にその命を預けた。
- 29 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:42:54.17 ID:izrXzXjq0
- できるだけ姉さんは僕が普通に生きることを望んだ。
それからも、学校には通い続けた。
ただ、友達とは距離を置くことに決めた。
最悪、もう次が無くなるかもしれないから。
別れは辛いだろう。僕にとっても相手にとっても。
(*゚∀゚)「お前は殺人鬼の素質がある」
( ^ω^)「おっ」
姉さんに包丁を渡され、僕は何羽目か分からなくなるほど、鶏を捌いていた。
(*゚∀゚)「鶏を捌くのも、人間を捌くのも変わらない。
ようはどれだけ早く構造を把握し、見極められるかだ」
姉さんがペティナイフで、鶏をゆっくりと、骨や筋肉を一つ一つ確かめるように捌く。
(*゚∀゚)「いいかブーン。人間なんかも、ペティナイフ一本あれば十分だ。
刃に指を当てろ。切れるだろ。それを信じろ」
それ一本で、何処までも、何人でも斬り殺せる。
姉さんはそう語る。
- 30 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:45:03.96 ID:izrXzXjq0
- 徒手格闘、組手、体術も一通り姉さんに叩き込まれる。
経験して分かったことは、いくら感覚や才能が恵まれているからと言っても、
拳の形、腕の動き一つをとっても本物相手じゃ敵わないということだ。
(; ω )「ぐええええ!!」
姉さんが僕の首を絞める。
(*゚∀゚)「いいか。この状態で首を捻る。軽くでいい。流すように、自然にだ」
ぎっぎっ、と僕の骨が軋む。
(;^ω^)「ぜはーっ!ぜはーっ!」
解放され、酸素が体中を駆け巡った。
生きている。
姉さんと訓練をしていると、毎度毎度生きていることを実感できる。
姉さんは強かった。
それこそ、僕が敵わないくらい。
動きの一つ一つに無駄が無く、武器を持たせたら誰もが敵わない。
素手でも、僕がぼこぼこにされるくらいだ。
(*゚∀゚)「まだまだだな」
姉さんは毎度決まってそう言った。
(;^ω^)「おっおっ。直に追いついてやるお」
僕も毎度決まってそう答えた。
- 32 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:47:11.29 ID:izrXzXjq0
- 何時しか僕は姉さんと共に、鬼違いを狩る毎日に身を投じていた。
最初に殺した鬼違いはどんな奴だっただろうか?
そんなことすら覚えられないくらい、僕は殺してきた。
罪を背負っていたんだ。
鬼違いでもない、年端もいかない子供たちや、一般人を殺してきたんだ、僕は。
だから僕は償いの意味も込めて鬼違いを殺す。
嘗て僕を飼っていた鬼違いの豚野郎を重ねて。
殺す事が贖罪になるとは思わない。
けれど、それ以外に僕は方法を持たなかった。
(*゚∀゚)「大分いい動きになってきたな」
( ^ω^)「おっおっ。姉さんのお陰だお」
中学一年生になると、僕は何時しか機関でもそれなりの立場になっていた。
曰く、序列三位。
一位は姉さん、二位は布佐の兄さん、そして三位が僕。
(#^ω^)「布佐の兄さんは銃使ってるからだお」
(*゚∀゚)「馬鹿野郎、銃の扱いは武器の中で一番難しいんだぜ?」
僕は殺す際に包丁を使う。
姉さんの影響だった。
- 33 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:49:19.71 ID:izrXzXjq0
- ( ^ω^)「姉さん」
(*゚∀゚)「ん?」
死体を片付けながら、僕は常日頃思っていた疑問を投げかける。
( ^ω^)「どうして包丁なんだお?」
姉さんの家には、銃だって、刀だって、なんだって揃っているのに。
なのに何で態々包丁を?
(*゚∀゚)「ああ、そのことか」
ぽりぽりと顎をかいて姉さんは答える。
(*゚∀゚)「だって包丁ってそういうための物だろ?」
- 34 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:51:28.21 ID:izrXzXjq0
- その年の、雪の強い冬だった。
(;^ω^)「さみーおー」
頭や肩に乗った雪を払い落し、僕は我が家へと帰宅する。
今日は学校――中学校――でテストがあった。
勉強はどうにも、この歳になっても苦手なままで、僕は普段使わない頭を酷使したためか酷く疲れていた。
扉を開けてリビングに出る。
ミ,,゚Д゚彡ノ「おう、ブーン」
( ^ω^)「兄さん!久しぶりだお!」
そこには、向かい合って座る姉さんと、布佐の兄さんの姿があった。
かれこれ半年は見ていなかったから、僕は嬉しさのあまり彼に抱きついた。
相変わらず濃い髭が頬に当たって痛い。
(*゚∀゚)「今日は寒かったろ?早く風呂入って温まりな」
( ^ω^)「あいあいおー」
促されるままに僕は風呂場へと向かう。
- 35 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:53:36.78 ID:izrXzXjq0
- しっかし、未だに考えられない。
こんな生活、あの頃じゃあり得なかったろうな。
程良い温度の湯を身体に浴びせて思う。
身体を綺麗にすることは好きだ。
湯船につかれば疲れも取れる。
風呂はいい。大好きだ。
(;^ω^)「あ、シャンプーねーお」
何度押しても洗剤が出ない。
仕方がないが自分で取りに行こう。
浴室の扉を開ける。寒っ。
(;^ω^)(えーと、確か……)
洗面器の下の棚を開く。
あったあった。
(;^ω^)(姉さん、これくらい補充しといてくれお)
と、そんな事を思っていると耳に何か話声が届いた。
( ^ω^)(……?)
意識を耳に集中させる。感覚を研ぎ澄す。
姉さんと布佐の兄さんの声だ。何かを話し合っているようだが……。
- 36 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:55:45.33 ID:izrXzXjq0
- 「……と、言う訳だ」
「へえ……路麻と伊藤を殺せるほどなのか」
「どうする、やるのか?」
「今この街に来てるんだろ?」
「ああ……」
「なら、やるさ」
「でも」
「お前が態々出向いてまでこんな話を持ち掛けてきたんだ。相当ヤバイ奴なのは分かってるよ」
「……つr」
「ストップ。その名前で呼ぶな……」
「スマン……」
……仕事の話だろうか?
(;^ω^)(路麻のおっさんと伊藤さんが殺されただって?)
- 38 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 01:57:54.86 ID:izrXzXjq0
- 僕の記憶が正しければ、二人ともかなりの実力者だ。
各個人の戦闘力はそこまで高くは無い。
だが二人の連携には目を見張るものがある。僕だって相手しきれるか危うい二人組だ。
その二人が、殺されただって?
バスタオルを腰に巻いたままリビングへと入る。
布佐の兄さんはしまった、という顔をして、姉さんは上を向いて呻いた。
(;^ω^)「姉さん」
(*-∀-)つ「ん」
と、寄越されたのは分厚い資料。
適当に捲って目ぼしい情報だけを頭に叩き込んでいく。
(;^ω^)「んな」
きっと、日本史上、いや世界の殺人史上、これほどの大量殺人を犯した人間は多分いない。
(*゚∀゚)「必ずしも全てそいつが殺しているというわけじゃない。証拠も不足している」
だがそいつは確実に百を超える殺人を犯している。
そう姉さんは言った。
(*゚∀゚)「ここ何年か、行方不明者と死体の数が異常に増えているんだ。
それと同時にそいつがちょこちょこと姿を現すようになった」
- 39 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:00:03.37 ID:izrXzXjq0
- そしてつい先日、そいつは路麻のおっさんと伊藤さんが担当する地区で発見されたそうだ。
(*゚∀゚)「二人が生きていれば……奴の目的やら色々と情報が増えただろうに……」
だが、顔は割れていたようだ。
(*゚∀゚)「名前は無い。その上、そいつには戸籍も無い」
何だそれは。
まるで昔の僕のようじゃないか。
(;^ω^)「…………」
顔写真を見つめる。
こんな……穏やかそうな顔をした奴が、鬼違い?
こんな普通そうな奴が何百人を殺し回っている殺人鬼なのか?
( ´∀`)
(*゚∀゚)「奴の目的は極めて謎だ。ただ単に殺し回っているようにしか見えないんだよ」
次の貢を見てみろと言われて言う通りにする。
- 41 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:02:20.26 ID:izrXzXjq0
- (;^ω^)「……?」
さっぱりだった。
こいつの目的が理解できなかった。
(*゚∀゚)「分かるか?オレには分からない。そいつの目的なんか理解できないよ」
何も無いのだ。
持ち帰る物も無い。残す物も無い。
そう、そいつはただ、殺していくのだ。
あまりにも淡泊に、ただ狩っていくのだ。
分からない。
こいつは今まで出会った鬼違いとは何かが違う。
- 42 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:04:28.59 ID:izrXzXjq0
-
五 其の二
- 45 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:06:37.16 ID:izrXzXjq0
- 路麻のおっさんは胴体を横に真っ二つに、伊藤さんは袈裟斬りに殺されていた。
(;^ω^)(何だ?何が目的なんだ?)
こいつは、果たして本当に鬼違いなのか?
(*゚∀゚)「考えても無駄だ、ブーン」
それより、と姉さんは立ち上がる。
(*゚∀゚)「今回の仕事はオレ一人でやる」
(;^ω^)「はあ!?」
何を言っているんだこの人は。
姉さんがどれだけ強いかは知っている。
だがあの二人組ですら敵わなかった相手に一人で挑むなんてのは自殺行為だ。
(*゚∀゚)「半人前が一丁前な事言うじゃねーか?」
うりうりと頭をぐりぐりされる。
だがこれは笑い事じゃない。
ミ,,゚Д゚彡「ブーン」
と、布佐の兄さんが低い声で僕を呼んだ。
- 46 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:08:45.63 ID:izrXzXjq0
- ミ,,゚Д゚彡「分からないのか。こいつは俺も、お前も、足手まといだと言ってるんだ」
(;^ω^)「…………」
……確かに、そうかもしれない。
度々思うことはあった。姉さんが戦い辛そうにしていたのを何度か見た事もある。
その理由はきっと僕だ。いや、正確に言えば姉さんはペアでの戦闘が苦手なのだ。
何故かと問われれば答えは一つ。
誰もが姉さんのレベルに合わないということだ。
僕や布佐の兄さんでも、姉さんの動きを完全に把握することができない。
姉さんには癖もないから余計に合わせ辛い。
と言うか不可能に近いので、僕はほとんど勘で彼女に何時も合わせて動いている。
今回の相手はたった一人の鬼違いだ。
だがそれは今まで相手にしてきたような雑魚共とは一線を画している。
実績は凡そ云百人を殺してきている。まるで戦時中の死神のレベルだ。
実力は機関内でも最高のコンビネーションを見せる路麻のおっさんと伊藤さんを倒す程。
これだけを聞くと、やはり姉さん単騎での殺し合いは無謀に思えるかもしれない。
だが僕は、布佐の兄さんの言葉に納得してしまったのだ。
理由は先にも言ったが、姉さんはペアでの戦闘が不得意なのだ。
まだ僕も姉さんが一人で戦っている姿を見たことは無い。
しかし、邪魔が無くなったのなら、彼女はきっと実力を思う存分発揮できるだろう。
(*゚∀゚)「いいな、ブーン」
(;´ω`)「……分かったお」
- 47 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:10:54.15 ID:izrXzXjq0
- 悔しいが、ここは頷く。
姉さんが負けるだなんて思いはしない。だが無事で帰ってくる保証は無い。
不安は当然付きまとった。だが仕事の話となると僕は姉さんの意見に従わざるを得ない。
義姉弟であり、師弟でもあるのだから、彼女の意見は僕にとっては絶対なのだ。
(*゚∀゚)「零時になったら私は動く。布佐とブーンはここで待機。いいな?」
ミ,,゚Д゚彡「了解」
(;´ω`)「了解」
決まったところで、丁度布佐の兄さんの携帯にメールが届いた。
ミ,,゚Д゚彡「今、奴の居場所が特定出来たぞ」
ずいっと携帯を僕たちに見せた。
送り主はケリーとなっている。情報屋だろう。
彼等はそうそう目立てない人間だからよく偽名や渾名を使う。
しかしケリーというセンスは頂けない。
(*゚∀゚)「美歩町……大当たりだな。こりゃ街か……野郎、獲物探してやがるな」
姉さんが舌打ちをする。
犯人は恐らく、次の目的を達成するための被害者を探しているのだろう。
しかし、堂々としすぎじゃないか。
- 48 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:13:02.81 ID:izrXzXjq0
- (*゚∀゚)「木を隠すなら何とやらじゃねえか?まあその中には当然機関の息がかかった連中もいるだろうけど」
奴には絶対の自信がある、そう姉さんは言う。
(*゚∀゚)「こうも堂々としてやがるんだ。顔だって割れてやがるのにも関わらずな。
むしろ奴らが鬼違いに手を出したら終わりだな。大事な人員が減るだけじゃない、下手したら一般人を巻き込んだりしてな」
まあ、そりゃそうか。
この街には僕と姉さんを除いて超感覚の持ち主は一人もいない。
いくら警官や機関の人が頑張ったところで、最強コンビを倒した鬼違いの前じゃ無力だろう。
(*゚∀゚)「まあお前らは俺が返ってくるまでに寿司でも買って待ってろってこった」
じゃ、オレは武器の点検してくるから。
そうと言って姉さんはリビングの扉を開ける。
(*゚∀゚)「ところでブーン」
( ^ω^)「なんだお?」
(*゚∀゚)「寒くないのか?」
そう言われて僕は自分をよく見た。
腰にタオルを巻いただけで、あとは素肌を晒している。
季節は冬で、暖房がきいた室内ではそう寒いとは感じなかったが、ふと体が思い出したように震えた。
(;^ω^)「早く言ってくれお!うーさむいさむい!」
(*゚∀゚)「肩まで浸かれよー」
- 49 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:15:11.38 ID:izrXzXjq0
- かぽん、なんて音が似合いそうな広い風呂の中で、僕は考える。
何でか知らないけど風呂に入ってるときって一番頭が働くよね。
( ^ω^)「……ふぅ」
先に断るが決して賢者になった訳ではない。
今回の仕事は恐らく、姉さんにとっても一番大きな山だろう。
過去、超感覚者が鬼違い相手に不覚を取ったなんて話はよくあったが……。
さながら、死神とでも呼ぼうか。
相手の実力は計り知れない。
現時点で判明されているのはプロが二人掛かりでも倒せないレベルということくらいか。
後は謎の目的か?
まあ目的なんて知ったところで対処しようは無いのだけども。
ただ上の奴らに報告するための情報の一部にすぎない。
しかし、鬼違いもある種、カテゴリーが存在するようだ。
部類分けをするなら物理的、心理的と言ったところだろうか?
死体から何かを持ち出す、或いは何かを残していく者。
死体から何かを見出す、或いは感じる者。
細かく言えば死体に限っているわけではなく、奴等は殺す前後にも目的が関係してくるそうだ。
が、大きく分ければこの二つになる。
- 52 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:17:22.61 ID:izrXzXjq0
- だが今回の事件。
鬼違いと思わしき奴は、何も無いのだ。
何も残さない、何も取らない。
これだけを見れば、奴が物理的欲求者では無いということが分かる。
では心理的欲求者なのか?
一体、何を求める?
( ∩ω∩)「ふぅ〜……」
お湯で顔をごしごしと洗う。
考えても無駄、か。
( ^ω^)「どうなのかお……」
どうせ殺すんだから、知る必要も、理解する必要もないのかもしれない。
兎に角、姉さんだ。
姉さんさえ生きて帰ってくれればそれでいい。
例え相手が尋常離れした強さを持っていようが、超感覚者で、しかも機関最強を誇る姉さんに勝てるものか。
そうだ。
鬼違いに姉さんは負けるはずがないんだ。
- 54 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:19:31.76 ID:izrXzXjq0
- 零時になる。
僕と布佐の兄さんは姉さんを送り出すと、家で待機する。
炬燵に蜜柑。もう冬だ。
これが日本の冬のあるべき姿だと言う。
僕はこれが好きだ。なんとも普通だが、しかし大事なものだと教えてくれるような。
ミ,,゚Д゚彡「なあブーン」
( ^ω^)「お?」
二つ目の蜜柑の皮をむいていると、向かいに座る布佐の兄さんが唐突に僕を呼んだ。
ミ,,-Д-彡「今更だが……すまんかった」
そう言って、布佐の兄さんは僕に頭を下げた。
僕は一体、何を言っているのか分からなくて困惑する。
(;^ω^)「兄さん、止めてくれお!大体何がだお?」
例え座りながらでも、僕の命の恩人であり、姉さんの恋人であり、
何より僕の大好きな布佐の兄さんが、頭を下げるなんてことして欲しくなかった。
ミ,,゚Д゚彡「……ずっとな、思ってたんだ」
兄さんは言う。
僕が、兄さんを恨んでいるんじゃないかと、そう言った。
- 55 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:21:39.79 ID:izrXzXjq0
- ミ,, Д 彡「元凶は俺なんだ。俺が何をしてでも、どんな手を使ってでも抗って、意見すれば……
そうすれば、お前はもしかしたら、今、普通の中学生になっていたかもしれないのに!」
(;^ω^)「違うお!兄さん、僕は貴方に感謝しているんだお!」
一体、誰のおかげで僕は今、こうして生きていられるのか?
それはね、兄さん。貴方と姉さんがいたから。僕を救ってくれたからなんだ。
恨みなんてこれっぽっちも抱いてなんていないんだよ。
貴方達二人のお陰で僕は様々な事を経験できたんだ。
友を知り、家族を知り、勉強を学び、食の楽しみを知り、眠る事の素晴らしさを知った。
そればかりじゃない。数えたら限がない。
貴方達二人が僕の世界を作ってくれたんだ。
そりゃ、少なからず現状を嘆くこともある。
これから先、死ぬまで機関の言いなりになって、鬼違いという部類の人間を殺し続けることは苦痛だ。
だがそれを差し置いても喜びが上回っているんだ。
( ^ω^)「兄さん。ずっと言いそびれていた言葉があるんだお」
僕は兄さんの手を取る。
寒さ故か、はたまた自責の念のためか、彼の手は微かに震えていた。
- 57 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:23:48.36 ID:izrXzXjq0
- ( ^ω^)「ありがとう」
ずっと言いたかったんだ。
本当はもっと大きくなって、立派な人間になった時に、この言葉を言う予定だったのだけれども。
けれど今言わずして僕は何時布佐の兄さんに伝えられただろう?
ミ,,;Д;彡「……馬鹿野郎、大人を泣かすんじゃね゙え゙」
それから兄さんはズビズビ泣いた。
鼻を垂らして子供のようにわんわんと。
ずっと悩んでいたのだろう。僕も、兄さんの立場ならそうだったかもしれない。
( ^ω^)「おっおっ。兄さんは優しい人だお」
僕は外に出てきた。
温かい飲み物を買うためだ。
作戦行動中――待機だが――にこんなことしてちゃいけないんだけども。
けどまあ、布佐の兄さんを落ち着かせるためにも、何か温かい飲み物でも買って来てやろう。
ざっくざっくと雪の積もった道を行く。
今日は酷く雪が降っていた。
零時を過ぎた片田舎の街は、静かで、雪のコントラストが鮮やかに世界を染め上げている。
- 58 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:25:56.87 ID:izrXzXjq0
- ( ^ω^)(慣れない地の文ばかりで窮屈だおね……)
ともかく綺麗だったのだ。
街灯の光に真っ白な雪の粒が輝いて、僕の歩いてきた足跡の上にまた新たな雪の道を描いていく。
ざっくざっくと歩く。
酷く静かだ。冬は空気が乾燥しているから、音が伝わりやすいと言う。
真っ暗な世界に、僕の足音が響くのみ。
しんしんと雪は舞い、真っ黒な世界を白く染め上げていく――
ギン。
( ^ω^)
足を止める。
( ^ω^)(……近くだったのかお)
聴覚を集中し、音を集めた。
微かにだが金属のぶつかりあう音が聞こえる。
( ^ω^)「姉さん……」
音のする方角を見やった。
真っ黒だった。真夜中だから当然だろう。
けれども――
(;^ω^)「……見に、行くかお」
何故だかその道の先は無いように思えた。
- 60 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:28:20.32 ID:D3FPkHh90
- 知らずうちに足は速まっていた。
僕の吐く息が白くなり、体は火照る。
何を急いでいるのだろうか。
というか、飲み物買って帰る予定だったのだけれども。
(;^ω^)「こっちかお」
大通りを抜け、入り組んだ路地に入る。
音のする場所はもう少し先だ。
何故だか僕の胸は苦しかった。
走っているから?違う。あまり慣れない雪が降っているから?違う。
何度か経験したことのある苦しさだ。
緊張感、緊迫感。そして一番大きな不安感。
一体、何を心配しているのだろう?
あの姉さんが負ける姿を想像できるのか?いいやできない。
なら急ぐ必要はないし、そもそも現場に向かう必要もない。
早いところ温かい飲み物でも買って家に戻れ。
さもないと、布佐の兄さんは泣き疲れてるだろうし、仕事が終わった後姉さんに怒られるぞ。
一際大きな音がした。
間違いなく、どちらかが獲物を手放した。
- 62 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:30:28.84 ID:D3FPkHh90
- (;^ω^)「!!」
駆けだす。嫌な予感がするのだ。
どうしても頭の中に浮かんだ映像が離れやしない。
(;^ω^)「畜生、畜生……!」
頼むから……お願いだから勘違いのままでいさせてくれ。
とんだ杞憂だったと笑わせてくれ。
姉さん、お願いだからどうか。
(;^ω^)「姉 さ ん !!」
細い裏路地に出る。
その瞬間、僕の顔に血がかかった。
- 64 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:32:38.85 ID:D3FPkHh90
- ( ^ω^)「――は?」
男が立っている。そこには姉さんも立っている。
(*; ∀ )「いででで……」
まるで抱き合っているようだった。
でも違う。
姉さんは男に寄り掛かっている。
背中から鋭い日本刀が突き出ていた。
( ´∀`)「中々に、強かったモナ」
男は突き立てていたのだ。その右手に持つ日本刀を姉さんの腹に。
姉さんの右腕は、自らの後ろ腰に手を伸ばしたあたりで止まっていた。
ふと僕が一歩踏み込むと、硬い物を踏みつける。
包丁――牛刀――だった。
きっと、姉さんは隠し持っていた包丁を取ろうとした隙を突かれて突き刺されたのだろう。
( ^ω^)「おま、おい」
だから僕は駆けた。
あの時と同じだ。機関に初めて赴いた時と。
奴は姉さんを傷つけた。だから僕はこいつを殺す。
- 66 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:34:47.46 ID:D3FPkHh90
- ( ゚ω゚)「何してんだおおおおおお!!」
( ´∀`)「!」
僕の右足は奴が咄嗟に引き抜いた脇差の峰に受けられる。
( ´∀`)「真打モナ?」
男は笑った。邪悪な笑みだ。
これほど歪んだ奴を僕は知らない。
世に蔓延る悪者達や鬼違い達だって、こいつを前にしたら逃げだすだろう。
僕も内心、この男の放つ殺気に吐き気がした。
今まで味わったことの無いほど強烈で醜悪で下劣だった。
だが僕は引かない。
( ゚ω゚)「っっおお!!」
左足を軸に奴の顔に目がけてバックブローを叩きこもうとする。
( ´∀`)「つまらんモナ」
奴は僕の拳を体制を低くしてかわすと、姉さんに突き刺さっていた日本刀を引き抜き、僕を下から斜めに大きく斬った。
( ゚ω゚)「――――」
- 67 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:36:56.08 ID:D3FPkHh90
- 想像を絶する痛みに呻き、方膝をつく。
しかし傷はそこまで深くはない。幸いにも内臓に達することも無かったようだ。
が、あまりにも鋭い痛みだ。これが斬られるということなのか。
傷口は火が噴きでるように熱を持ち、脈動するごとに痛みが全身へと駆け巡っていく。
こんな痛みを、僕は今まで殺してきた奴らに与えていたのか?
(; ω )「お、おぉ……」
だが今倒れるわけにはいかない。
姉さんは倒れている。早く助けなければ……あの傷じゃ長くは持たない。
( ´∀`)「おお!タフだモナね!」
僕は壁に手を付きながらも、よろよろと立ち上がった。
右拳を握る。上手く力が入らず、今力を入れているのか抜いているのか分からなかった。
(; ω )「師匠がスパルタでお、ちょっとやそっとじゃ僕は死なないお」
スパルタにはスパルタだったが、斬られたことはないな。
痛みにも色々と種類があるんだ。今味わっている痛みは間違いなく生涯で最高を誇るだろうな。
( ´∀`)「でも、俺もう疲れてるんだモナ……さっさとこの女殺したいんだモナ」
どうする?と男は問う。
決まってるだろうが。
(# ω )「ぶっ殺す!!」
- 69 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:39:04.79 ID:D3FPkHh90
- ザクッ。
(; ω゚)「――え?」
一歩。僕が踏み出した。
たったそれだけの動作だった。
( ´∀`)「あー……いい音」
まるで奴は、始めから僕がそこに足を運ぶことを分かっていたかのように。
自然に、流れるように、当然のように、日本刀を突き出した。
そしてそれは僕の足の甲を貫通した。
再び鋭い痛みと熱が襲う。
今度こそ僕はうずくまった。
奴は日本刀を引き抜く。血が噴きでる。
死ぬ。僕は、死んでしまう。
無理だ、こいつには勝てない。
どうなっているんだ、何が起きているんだ。
分からない。こいつは違う、姉さんとも、布佐の兄さんとも、今迄対峙してきたどんな奴らとも違う。
強すぎる。
( ´∀`)「知ってるモナ?人の頭ってボーリング球くらいの重さなんだモナ」
奴は僕を見下ろしそう言った。
首に刃が宛がわれる。
軽く触れただけで首の薄皮がピッと斬れた。
- 71 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:42:10.32 ID:D3FPkHh90
- ( ´∀`)「落ちたとき、結構派手な音がするんだモナー」
試す?
そう男は言う。
試すも何も、僕に決定権などありはしないだろうに。
だってそうだろう。僕にはもう何も無い。
武器も無ければ、体力も無い。
傷だらけで、力も残っていない。
抵抗のしようがないのだ。だからもう、全ての決定権は――僕の生死はこいつが握っている。
「たまらねえな……そいつはよ」
( ´∀`)「モナ……」
高い声。女性の声。
僕は顔を上げ、男は振り返った。
(*;゚∀゚)「そいつはよお……はあ……残念ながら殺させるわけにはいかねーのよ」
姉さんがふらつきながらも立ち上がる。
その両手には大小様々な包丁が指の合間に挟まっている。
( ´∀`)「なら、どうするモナ?」
静寂。そして張り詰めた緊張感。
- 74 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:44:48.13 ID:D3FPkHh90
- (#゚∀゚)「――こうするんだよ!!」
引き金を引いたのは姉さんだった。
その両手に持つ数十本の包丁を、一斉に男に向けて投げつけた。
( ´∀゚)「モナ、モナモナモナモナ……」
そして男は大きく口を釣り上げて笑う。
( ゚∀゚)「――アヒャヒャヒャアアアアア!!」
男が、包丁の群に――姉さんに目がけて駈け出した。
一本一本、向かってくる包丁を正確に日本刀で弾き落としていく。
僕でさえできるか分からない芸当を、男はやってのけていた。
その時点でもう、僕は奴には敵わないことが分かる。
最後の一本。
包丁――ペティナイフ――が、男の顔面に目がけて迫っていた。
姉さんとの距離も後数歩と言うところだ。
( ゚∀゚)「ヒャアア!!」
それを弾く。
もう、奴に対する弾幕は無い。
姉さんは完全に無防備になった。
が。
- 75 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:46:57.77 ID:D3FPkHh90
- (#゚∀゚)「甘いぜ!!」
最後に隠し持っていたと思われるペティナイフを、超近距離で男の顔面に向けて投げつけた。
男は振り上げていた日本刀を急いで振り下ろす。
不味い、まさかあれすら避けるというのか?
( ゚∀゚)「アヒャアア!!」
――弾いた。
完全に、防ぎきったのだ、この男は。
そう思った瞬間だ。
何かが突き刺さる音が僕に耳に伝う。
これは刃物が肉に突き刺さった時の独特な音。
(; ω゚)「!?」
( ゚∀゚)「……アヒャア」
男の左肩に、避けられたと思われるペティナイフが突き刺さっていた。
そんな、馬鹿な。奴は確かにあれを弾き飛ばしたはず……。
(; ω゚)(――そうか!)
姉さんが得意とする陰刀だ。飛刀の際、刃物を陰にもう一本の刃物を潜ませ同時に投げ、
恰も一本であるように思わせる技。
流石にあれは避けられなかったのだろう。男も少々驚いている。
- 77 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:49:06.38 ID:D3FPkHh90
- だが、やはりこの男は甘くは無かった。
既に二人の距離は密着していた。
( ゚∀゚)「――勿体無え」
脇差を抜き、それを目にも止まらぬ速さで姉さんに突き刺す。
果たして満身創痍の姉さんにそれを避けることができるだろうか?
さっきの攻撃が最後の意地だったのだろう、最早立つすら限界だったのだろう。
姉さんの腹にそれは深く突き刺さる。また新たなトンネルが作られたのだ。
(*; ∀ )「ぐぅっ」
ぐらっと姉さんが揺れる。
( ゚∀゚)「いい女だったぜ」
そして止めの一撃が姉さんに叩き込まれた。
大きく袈裟に斬る。姉さんの左肩が、バックリと割けた。
( ゚ω゚)「ねえさああああああああああああああああああんん!!」
- 80 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:51:15.23 ID:D3FPkHh90
- 鮮血と、突き刺さっていた脇差が宙を舞う。
男はそれを得意げに取ると、日本刀共々鞘へと仕舞い込んだ。
終わったのだ。殺し合いは、今終わったのだ。
倒れ伏した姉さんに駆け寄る。
( ;ω;)「姉さん!!姉さん!!」
この、野郎。
許さない、絶対にだ。
殺してやる、殺してやるぞ、この鬼違いが!
だが体は言う事を聞かなかった。僕も既に限界だったのだろう。
そもそもまだ中学生だ。いくら戦闘に特化した感覚を持っていようとも、精神も肉体も子供なのだ。
姉さんを抱きかかえたまま僕は男を睨みつける。
( ゚∀゚)「……へえ」
男は僕を見つめる。
まるで面白いおもちゃを見つけた子供のように興味津津に。
だがふと思い出したように表情を無にすると、男は背を向ける。
- 82 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:53:24.47 ID:D3FPkHh90
- ( ゚∀゚)「俺は鬼違い♪お前らはそう呼ぶ♪
殺しは喜び♪生まれながらに殺人鬼♪
殺す事は生きる事♪生きる事は殺す事♪
永遠に殺す♪気持ち好いから殺そう♪
生まれながらに殺人鬼♪生まれながらに鬼違い♪」
唐突に奴は歌い出す。
( ゚∀゚)「なあ、少年よ。お前もそれなりに殺してきただろうが、俺も大分殺してきたよ。
俺が何時から殺してきたかって?生まれてすぐさ。それが俺に物心がついた瞬間さ」
何だ、何を言っているんだ。
( ゚∀゚)「常識なんかに頼るなよ?今目の前にある物が真実なんだぜ。
俺は殺すために生きているのさ。そのためだけに生まれてきたんだ」
静寂が世界を支配する。
これは、この男は何なんだ、いったい、なんなんだ。
- 86 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:55:32.79 ID:D3FPkHh90
- だが僕は漸くこの男の目的を知ることとなる。
( ゚∀゚)「……どっかにいねーのかな。俺より強い奴は」
そんな呟きが聞こえた。
そう、きっと、これが奴の目的。
( ゚∀゚)「……次は無い」
その一言が僕を呑み込む。
次とは何時だ。
僕は何時、お前を殺せるんだ!
- 87 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:57:41.16 ID:D3FPkHh90
- 雪が降っていた。
その年は、とても寒くて、とても辛くて。
( ;ω;)「姉さん!姉さん……!」
息も絶え絶えな姉さんの名を呼ぶ。
(;*-∀゚)「泣くんじゃねえ……ブーン……そんなんでこれから先、どうする気だ」
姉さんはそう言う。
( ;ω;)「待ってくれお!死なないでくれお!お願いだから!」
僕は我儘を言う。
(;*-∀゚)「聞け、ブーン」
僕の名を呼ぶ。
( ;ω;)「姉さん!」
僕は名を呼ぶ。
(;*-∀゚)「聞くんだ!」
姉さんの大きな声が響いた。
- 89 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 02:59:49.76 ID:D3FPkHh90
- (;*-∀゚)「オレはもう駄目だ。ここに置いていけ。お前は布佐の野郎に、この事を伝えるんだ。分かったか?」
そんな事を言う。
( ;ω;)「そんな事言わないでくれお!」
僕は我儘を言う。
(;*-∀゚)「これは命令だ」
そんな事を言う。
( ;ω;)「嫌だ嫌だ嫌だ!絶対に!絶対に姉さんを連れて帰るお!布佐の兄さんだって待ってるお!」
強く抱きしめる。
(;*-∀゚)「っ……あー……この馬鹿弟子が……わがまま……言いやがって……」
声が小さくなる。
( ;ω;)「姉さん……」
僕は名を呼ぶ。
(;*-∀゚)「……強くなれ、ブーン。お前は、オレの後釜なんだ。オレの弟子なんだ。オレみたいに死ぬんじゃねえぞ」
そんな事を言う。
- 92 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:01:58.37 ID:D3FPkHh90
- (;* ∀ )「ああ……畜生……わりいなー……布佐……先、逝く、わ……」
そんな事を言う。
姉さん、さあ次の言葉を。会話をしよう。
こんなにも二人してボロボロだけども、生きていることを喜びあおう。
……ずっと続くと思っていた。
当たり前の毎日。姉さんの居る生活。
当たり前になるはずだった。
姉さんの作ってくれるご飯、優しい笑顔。
これからもずっと一緒に、ずっと二人で。
そう思っていたのだけれども。
案外あっけなくて、人ってこうも簡単に死ぬんだって。
そう思った。
ねえ、姉さん。
貴女にも、ずっと言いたかった言葉があるんだ。
「ありがとう」って、言った事無いだろう?
ずっと気恥かしくて言えなかったんだ。
ねえ、聞いてくれよ。声を、僕を、聞いてくれよ。
目を開けて、僕を見て。
僕は此処だ。今、確かに此処にいるんだよ。
生きているんだ。僕は意味を持ったよ。
- 95 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:04:06.97 ID:D3FPkHh90
- ねえ、姉さん。
ずっと幸せだったのに。
貴女のお陰で世界に意味が生まれて、僕は自分の存在をようやく認められたのに。
まだ言えなかったこともあるのに。
やれなかったこともあるのに。
それでも死んでしまうのか。
また呼んでくれよ。ブーンって呼んでくれ。
僕の名前を呼んでくれ。その優しい声で僕の名前を。
ざくり、ざくりと雪を踏みしめる音が響く。
僕は手元に落ちていた包丁を無意識のうちに手に取った。
( ω )「殺されたいのかお」
近づいてきた奴の喉元に包丁を突きつける。
今の僕は何をするか分かったもんじゃないぞ。
例え一般人だろうが、何だろうが、殺してしまうかもしれない。
川 ゚ -゚)「殺されるのも悪くは無いな」
女の子だった。僕と同い年くらいの、酷く痩せ細った。
- 97 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:06:21.34 ID:D3FPkHh90
- 殺されるのも悪くない、だと?
こいつ、何て事を言いやがる。
女の子の目を見る。
酷く濁っていた。生気を感じられない、酷くあやふやな眼光。
まるで人形のようで、歪に思えた。
川 ゚ -゚)「だが、頼むよ」
酷く寂しそうな奴だなと、そう、ぼんやりと思った。
まるで、昔の僕のようだった。
生きていようが死んでいようが構わないといった感じだ。
姉さんの亡骸を抱きしめる。胸が痛んだ。
川 ゚ -゚)「この死体を、見せてくれ」
( ω )「お前は……」
理解していたんだ。その時既に、彼女――空が鬼違いであることを。
だが僕は彼女を殺すことはしなかった。
ああ、そうだね、姉さん。
これも運命なんだろう。
- 101 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:08:30.00 ID:D3FPkHh90
-
五 其の三
- 103 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:10:38.49 ID:D3FPkHh90
- はて、私は何処に居るのだろう。
確かここに来るまでは、リムジンとかいう馬鹿でかい黒塗りの車に乗せられ、スリリングなドライブをし、
国会に来て、その地下に来て。
川 ゚ -゚)「おい」
( ^ω^)「何だお」
真っ黒なスーツを着た男――内藤に話しかける。
何故か私も真っ黒なスーツを着せられている。とても落ち着かなかった。
川 ゚ -゚)「此処は何処だ」
( ^ω^)「だから、『国解機関』だお。説明は一昨日全部しただろうお?」
四日前の夜――私がこの内藤という奴に出会った夜――私はこの男に引き取られた。
兎に角広い家だった。
私はそこで奴に色々な事を教えられた。
やれ鬼違いだ、超感覚者だ、機関だなんだ……。
どれも現実離れした話ばかりで、俄には信じ難い話である。
が、事件の当事者であった私は信じざるを得ないと言うか、何と言うか。
そして驚くべきことに私もその鬼違いとか言う奴らしい。
で、何故か私は今、その機関とかいう奴の本部に来ていた。
川 ゚ -゚)「何故私が……」
- 106 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:12:47.17 ID:D3FPkHh90
- 招き通された部屋は、所謂会議室と呼ばれる部屋らしく、私と内藤は円卓の椅子に腰かけている。
ちらりと内藤を見た。
まだ疲れの取り切れていない表情、右足は靴を履いておらず、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
机には松葉杖が立てかけられている。
川 ゚ -゚)(これでよく助かったものだ)
身体には大きく斜めに斬られた痕があり、そこにも包帯が巻いてあった。
何故私がそんな事を知っているかって?
それは私が奴の家に住んでいて、その包帯を取り換えている張本人だからだ。
ガチャリと両開きの扉が開いて、重苦しい表情を浮かべた人たちが入ってくる。
自分の定位置と思わしき席へそれぞれが座ると、髭の濃い男が皆を一度見渡す。
ミ,,゚Д゚彡「今日集まってもらった理由は既に皆知っているだろうが」
何とも重い声色だ。彼の目の下には濃い隈が出来ている。
そう言えばこのおっさんとは内藤の家で一度会った。
満身創痍ながらも、内藤は私を連れて彼の自宅に戻ると、何かをおっさんに伝えた後直に倒れたんだった。
ミ,,゚Д゚彡「……鶴子が死んだ」
- 108 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:14:55.59 ID:D3FPkHh90
- まるで葬式並みに部屋の中は重苦しかった。
或る意味それで意味はあっているかもしれないな。
人一人死んだんだ。おそらく全員、あの女性とは仲がよかったんだろうな。
人殺しの集団だというのに情があるのには驚きだが。
(´・ω・`)「……ブーン、傷は大丈夫かい?」
眉の垂れ下った青年が、内藤にそう問う。
内藤は小さな声で、平気、と答えた。
( ゚∋゚)「どうだったんだ、相手の実力は」
ガッチリした体つきの男がそう口にする。
( ^ω^)「……そうだおね。ありゃどう考えても普通じゃなかったお」
ノパ听)「普通じゃない?」
( ^ω^)「おっ」
一度、内藤が押し黙る。
( ^ω^)「……超感覚者、かもしれないお」
その単語が出た瞬間、室内に動揺が走った。
- 111 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:17:05.35 ID:D3FPkHh90
- (;`・ω・)「なんだと?」
(・∀ ・)「それチョーヤバイんじゃねーのー?」
超感覚。
確か、第六感覚だとか、超能力と言われるやつだったかな。
例えば内藤の場合は戦闘、殺人の感覚が特化しているという。
ミ,,゚Д゚彡「……何故そう思った?」
髭の濃いおっさんがそう問う。
( ^ω^)「一つ目。そもそも普通の人間……鬼違いが、あの姉さんに勝てるわけがない」
それには全員納得した顔だった。
一体どれほどの実力者だったんだ、その女性は。
( ^ω^)「二つ目。実際対峙して分かったんだお。あれは常人のできる動きじゃないお」
たぶん、と続ける。
( ^ω^)「勘が……それこそ第六感覚が異常に発達しているんじゃないかと」
内藤は語る。
奴との戦闘で抱いた疑問。
それはまるで相手の動きを完全に想定しているような動きだったと。
千里眼の持ち主か、或いは第六感覚者か。
何れにしても、そんな奴相手じゃ……。
つーか鬼違いであり超感覚者ってチートすぎないかおい。
- 117 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:19:13.94 ID:D3FPkHh90
- ミ,,゚Д゚彡「そうか……」
再び静寂が室内を覆った。
何だこの空気は。私はどうすればいいんだ。
ミ,,゚Д゚彡「……奴の事はしばらく保留にしよう」
( ^ω^)「保留?」
ごほん、と髭の濃いおっさんが咳払いをする。
ミ,,゚Д゚彡「ブーン、お前でさえ一撃も見舞うことのできない相手だぞ?俺でもたぶん相手にならないだろう。
何故なら奴は機関でも最強を誇る鶴子を殺した。そんな奴を相手にできるほど機関の人間は化け物揃いじゃないんだ」
( ^ω^)「関係ないでしょう、そんなの。なんなら全員でかかればいい話ですお」
ミ,,゚Д゚彡「六人で連携だと?馬鹿言うなよ。お前だって分かってるだろ、それがどれだけ難しいことか。
下手したら全員が本領を発揮できない状態になるぞ」
( ^ω^)「なら警察、いや軍隊を」
ミ,,゚Д゚彡「忘れたのか?俺達の仕事は公にできないんだよ。そんな大それたことできるわけg」
( ゚ω゚)「じゃあどうするんだお!!」
ガン、と内藤が机に拳を叩きつけた。
- 120 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:21:22.42 ID:D3FPkHh90
- ミ,,゚Д゚彡「それを考えておくと言っているんだ。上だって今渋ってる。こんな事態は初めてだからな」
( ゚ω゚)「そうやって考えておくとか、上の指示がどうだとか、馬鹿じゃないかお!!
あんただって僕と同じはずだお!!あいつを殺したくてたまらないだろうがお!!」
ミ#゚Д゚彡「誰も死なせるわけにいかねえんだよ!!」
髭のオッサンが叫んだ。
ミ#゚Д゚彡「分かんねえのかブーン。俺はな、お前を、皆をみすみす死なせるようなことはさせたくないんだよ!!
あいつは、鶴子はお前に何て言ったんだ!!え!?」
(;゚ω゚)「ぐ……」
内藤が顔を伏せる。
全員が止めていた息を思い切り吐いた。
もう勘弁してくれよ……こんなシリアスのぶっ通しとか、疲れるんだよ……。
ミ#゚Д゚彡「いいなお前ら。この件は俺と上が預かる。勝手な事をしてみろ」
ぶっ殺すぞ、とおっさんは続けた。
おーい、おい、矛盾してますぜ旦那。
- 123 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:23:30.95 ID:D3FPkHh90
- ミ#゚Д゚彡「でだ、ブーン」
まだ話は終わってないとでも言いたげに、おっさんは私を一度睨むと、もう一度内藤を睨んだ。
ミ#゚Д゚彡「その鬼違いは何だ」
びっと私を指差す。
机を囲む人たち全員が私へと視線を向けた。
川:゚ -゚)(これもしかしてヤバイ状況じゃないか?)
そもそもこいつ等って言わば私を殺そうとしてる連中じゃないか。
だってこいつらは、その、鬼違いとか言うのを殺すために存在しているんだろう?
じゃあ何か?私は今ここで公開処刑をさせられるために今日此処へ来たのか?
( ω )「……彼女は……空は……」
内藤が私の頭に手を置いた。
おい、やめろ、子供じゃないんだぞ。
( ^ω^)「……確かに、鬼違いですお。でも、必ずコイツが人を殺すとも言えないでしょうお?
現に過去、そういう鬼違いは少なからず存在したお」
ちらりと私を見てから続ける。
( ^ω^)「話していて分かったことなんだお。空は生物の死ぬ瞬間を見るのが目的。
なら僕がいればそれは事足りるんだお」
- 125 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:25:39.54 ID:D3FPkHh90
- ……ん?
これはまさか、内藤は私を助けようと?
ミ#゚Д゚彡「馬鹿な、どこにそんな保証がある」
( ^ω^)「ありませんお。でも、しないと思いますお」
万が一にでもそんなことがあったら、と続ける。
( ^ω^)「僕が殺しますお」
ああ、こりゃ私、人を殺すことなんてできないな。
なんてったって、こいつ、救世主であって死神なんだから。
未だ自分が鬼違いだと言う自覚は無いが、それでも殺人鬼の仲間だと言うのは、あの日に理解していた。
そりゃまだ死にたくない。でも死ぬ瞬間は、見たい。
だからここは内藤の言葉に頷くとしよう。
その後は特に何も無く、私は早くも全員と打ちとけ、いつしか解散の流れになっていた。
が、私と内藤は全員が席を立った今、まだ席に座っていた。
ミ,,゚Д゚彡「ほらよ」
と、先ほど出て行った筈のおっさんが手に蜜柑を持って戻ってきた。
それを一個ずつ私と内藤に投げてよこす。
- 127 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:27:48.47 ID:D3FPkHh90
- ( ^ω^)「ありがとうですお。ほら、空も」
川 ゚〜゚)「ん。ども」
礼も余所に私は蜜柑を頬張る。
うん。美味い。
おっさんは内藤の隣に腰かけた。
一度おっさんが内藤の足だとか、腹を見やる。
ミ,,゚Д゚彡「……傷はどうだ」
おっさんが蜜柑の皮を剥きながら訊ねた。
( ^ω^)「……正直、痛くて痛くてたまらんですお」
ミ,,゚Д゚彡「……そうか」
川 ゚〜゚)「…………」
こんな改まった場所で、さらに真っ黒な高級そうなスーツを着た男女三人が、蜜柑を頬張っている。
一体どんな図だろうな。
ミ,,゚Д゚彡「……どうだ、俺を嫌いになっただろ」
おっさんが最後の一粒を食べてそう言う。
- 129 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:29:56.97 ID:D3FPkHh90
- ミ,,゚Д゚彡「俺はそう言う奴なんだ。愛した女が死んでも、俺は規則やら責任やら、そんなものに縛られてるんだ。
誰も死なせたくない気持ちは当然ある。だがそれは上からの命令なんていう言い訳に過ぎないのかもしれない」
酷く寂しそうな瞳だった。
ミ,,゚Д゚彡「本当なら、俺は今直奴の居場所を突き止め、お前と一緒に赴き、敵わなかろうが奴に挑むべきかもしれん」
けどな、と続ける。
ミ,, Д 彡「俺も、死にたくないのさ。どうだ、惨めで醜いだろ?そういう人間なんだ、俺は。
憎しみや怒りや悲しみがどれほど渦を巻いていようが、死という恐怖が目の前にあると、俺の足は竦んじまう」
川 ゚〜゚)「…………」
それはとても人間らしい事だと私は思う。
自分に素直なんだな。それでいて誤魔化す事に慣れていないんだろう。
だから自分の心の中で葛藤が起きているんだ。
人間、誰もが皆強いわけじゃない。
例えおっさんが殺す事に慣れていようとも、当然人間だから感情や弱さと言った物はあるんだ。
特にこのおっさんは顕著な方だ。
( ^ω^)「いいんですお。布佐さん」
内藤が蜜柑を頬張りながらそう言った。
- 131 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:32:05.68 ID:D3FPkHh90
- ( ^ω^)「貴方にまで僕は死んでほしくないからお。僕だって今のままじゃどうにも……」
いや、いいかお、と呟いた。
ミ,,゚Д゚彡「お前、まさか……」
( ^ω^)「それじゃ、僕たちはこれで失礼するお」
さあ行こう、と私に内藤は言う。
内藤は松葉杖をつきながら、それでも私の前を歩いた。
ミ,,゚Д゚彡「ブーン」
背後からおっさんが呼び止める。
ミ,,゚Д゚彡「もう、兄さんとは呼んでくれないんだな」
内藤の背が、とても広く感じた。
まだ会って間もないのに、どうしてこいつはこうも強さに満ち溢れているのだろう?
( ^ω^)「さようならだお、布佐さん」
辛い経験をしたから?強くなろうとしているから?
ミ,,-Д-彡「……ああ、じゃあな、内藤」
いや、違う。
こいつは譲れないものを持っているからだ。
- 133 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:34:14.25 ID:D3FPkHh90
- リムジンに乗り込む。今度はあのスピード狂のじいさんではなく、普通のおっさんだった。
ゆっくりと頭狂の街中を走りぬけていく。
川 ゚ -゚)「なあ」
( ^ω^)「お?」
窓の外を見つめる内藤に問いかける。
川 ゚ -゚)「何故私を生かすんだ?」
お前らが殺すはずの鬼違いにもかかわらず、何故?
すると内藤は微笑んだ。
( ^ω^)「そっくりなんだお」
川 ゚ -゚)「誰にだ?」
( ^ω^)「さあ?」
それきり内藤は無言だった。
私は納得がいかないまま、それでも我慢して内藤に習って外を見る。
川 ゚ -゚)(そっくり、か)
私のような人間が居たとなると、そいつは豪く可哀そうな奴だったんだろうな。
ただ、私のように内藤という救いとなる存在が居たのなら、話は別だが。
- 136 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:36:22.83 ID:D3FPkHh90
-
五 其の四
- 138 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:38:31.36 ID:D3FPkHh90
- ξ;゚听)ξ「同棲してんの!?」
川 ゚ -゚)「そこに食いつく辺りがお前らしいよ馬鹿野郎」
( ^ω^)「中学まではしてたおね。今は空は一人暮らししてるお」
まあできるだろうね。お金いっぱいありますもんね。
どうも皆さん、愛しの津出鶴子ことツンでございます。
ようやく聞き出した内藤達の過去話ですが、うん、シリアス☆
私には向かないのよね、そういうの。聞いてて辛いと言うかなんと言うか。
ボケる余地もありませんですよ。うんこ。
ξ#゚听)ξ「耐えられねえんだよ糞がああああああ!!」
一気にぶち壊す!それがシリアスブレイカーなのだよ。
でもこの空気壊しにくい!不思議!
とっても頑丈で怖い!
現在は帰りの新幹線の中。とりあえず緒綿のおじさんには安全運転を心がけてもらいたい。
車の中で大半の話を聞かされたが、大事な部分は正直あまり覚えてないのよね。
何せ命がけでしたからね!
- 143 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:40:39.85 ID:D3FPkHh90
- ( ^ω^)「まあそんな面白味も無い話だっただろうお?」
ξ゚听)ξ「まあ暇つぶしにはうってつけだったわよ」
ふん、誰も同情だとかしませんからね。
川 ゚ -゚)「ん?お前目元どうしたんだ?すっげー涙溜まってるぞ?」
ξ;凵G)ξ「うるせええええ!!泣ける話だったんだよおおおおお!!」
勘弁して下さいよ……私アルプスのハイ○でクラ○が立ったシーンでさえ泣いちゃうんですよ?
そんな私に何?何なの?そんなに私を泣かせたいの?
ξ;凵G)ξ「苦労したんやなあんさんら……ほんま世知辛い世の中やでええ……」
(;^ω^)つ「そんな鼻水たらしてまで……ほら、ハンカチ」
とξ(;△;ξ「ありがとう……」
内藤から受け取ったハンカチに私の鼻水をこれでもかと吹きつける。
ぐっちょぐっちょ……。
_,
ξ*゚听)ξ「卑猥だなあ」
川 ゚ -゚)「無理やりそっちにもってくな。後頬を赤く染めるな」
- 144 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:42:48.37 ID:D3FPkHh90
- まあそんなこんなで家へと戻ってまいりました。
いやあ疲れた疲れた。今日は散々だったぜ。
くっそ暑い中新幹線待たされたり、夢の王国の絶叫系アトラクション顔負けのスリリングなドライブだとか、
体力測定だとか……。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、お帰りー。遅かったね?お風呂あるよー」
ξ゚听)ξ「うーっす……」
スーツをそこらへんに脱ぎ捨てて、私は風呂に入る。
きゅっと蛇口をひねる。温かいお湯が私を包み込んだ。
ξ--)ξ「…………」
確かに興味はあった。
内藤の過去や、直の過去。
二人とも、私の境遇と遥かにかけ離れていたんだな……。
私と零なんて、まだまだいい方だったんだろう。
内藤……幼いながらに彼は殺人鬼だったと言う。
驚くべきは、スナッフビデオに出演していたと言う事実だ。
その時点で彼の運命は決まっていたのかもしれない。
- 146 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:44:56.87 ID:D3FPkHh90
- ξ゚听)ξ「姉さん、ね」
まさかのシスコンだとはな。
いや、命の恩人であり親のような存在だったのなら、彼の姉に対する愛情はむしろ当然とでも言おうか。
内藤をも凌駕すると言う実力。
しかしそれほどの力を持ちながらも、彼女は例の鬼違いに殺されてしまったと言う。
ξ゚听)ξ「内藤だって強いわよ」
当時まだ中学一年生の話だと言うじゃないか。
今は高校二年生。この四年で彼はまた強くなっているだろう。
もしかしたらその姉と言う人を越えているかもしれない。
ξ゚听)ξ「だって……」
欝田ドクオをバラバラに解体した。
若竹益男を一撃で殺した。
双子の大量殺人鬼を相手に、圧勝した。
そんな内藤よりもその姉と言う人は、その鬼違いは上を行くと言うのか?
- 149 名前: ◆io1Iv96tBU 投稿日:2009/10/06(火) 03:47:05.63 ID:D3FPkHh90
- ぶるぶると頭を振る。んなわけあるか。
内藤は誰にも負けやしないさ。私が見てきたんだ。
ξ゚听)ξ「でも保証はない、か」
内藤はまだ例の鬼違いを殺す事を諦めていないと言う。
ξ゚听)ξ「……私の知ったこっちゃないわよね」
考えたって分からない。
実際に何時か、その鬼違いとまみえるまで。
その時に白黒つくだろう。
「次は無い」か。
ξ゚听)ξ「それはどっちのかしらね」
最強の鬼違いと最強の殺人鬼。
その次は来るのだろうか。
続
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