- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:09:01.50 ID:/Z3LYdXQP
第十四話【暗闇と雨】
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:11:22.06 ID:/Z3LYdXQP
- 刃と爪がぶつかり合い、火花が散った。
剣を握る腕が震える。
さすがにドラゴンの一撃は重い。
(#^ω^)「うおおっ!!」
渾身の力を込め、剣を押し返す。
(;<●><●>)「な、何者です!」
漆黒の鎧に身を包んだ男が僕を見て叫んだ。
その足元に倒れているのはプギャーだろうか。
男は巨大な剣を構えた。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:13:29.93 ID:/Z3LYdXQP
- (;<●><●>)「!!」
直後、緑の光の筋が視界を走った。
男はとっさに飛び退いてそれをかわす。
ξ#゚听)ξ「だらっしゃぁぁぁぁ!!」
(;<●><●>)「しまっ……!」
男は空中で身動きがとれない。
そこへツンが強烈な蹴りを叩き込む。
鎧が砕け散り、男は地面に叩きつけられた。
( ^ω^)「ふたりともナイスコンビネーションだお!」
ノリ ゚ -゚)「別に協力したわけではない」
ξ゚听)ξ「そいつが矢を外したから私がフォローしてあげたのよ」
ノリ#゚ -゚)「ちっ」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:15:41.67 ID:/Z3LYdXQP
- (;´_ゝ`)「ブーン、プギャーが……」
兄者が僕の足をつかんだ。
背中には大火傷を負っている。
呼吸が荒い。
(;'A`)「おい、プギャー!!」
追いついてきたドクオが声をあげた。
(;゚∀゚)「こりゃヤバいぞ!」
ジョルジュが杖をかざして回復呪文を唱えた。
ドクオもかけよってそれを手伝う。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:17:47.38 ID:/Z3LYdXQP
- ( <●><●>)「なるほど、わかりました」
男がむくりと起き上がった。
ツンのあの蹴りを食らってまだ立つか。
( <●><●>)「噂に聞く勇者とやらですね。あのオサムを倒したという」
( ^ω^)「知らないお」
ξ゚听)ξ「あんたが昔倒した竜騎士よ」
例によって全く記憶にない。
というか僕は竜騎士まで倒していたのか。
我ながらなかなかやるものだ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:19:47.09 ID:/Z3LYdXQP
- ( <●><●>)「それに、見たところ勇者のパーティーですね。さすがにキツいのはわかってます」
男はドラゴンの背中に飛び乗った。
ドラゴンは男を乗せて高く舞い上がった。
ξ゚听)ξ「誇り高き竜人族さまが逃げるってわけ?」
ツンが挑発するように言った。
( <●><●>)「逃げるわけではないのはわかってます」
男がゆっくりと手をかざす。
ドラゴンの口から漏れ出す赤い光が、みるみる男の手に集約されていく。
( <●><●>)「“竜魔法”をお見せしましょう」
光の玉が男の掌に浮かんだ。
まるで小さな太陽だ。
中で物凄い魔力が渦巻いているのが手にとるようにわかる。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:21:45.85 ID:/Z3LYdXQP
- (;゚∀゚)「あれはマズい!!」
ジョルジュが叫んでプギャーを肩に担いだ。
(;゚∀゚)「逃げるぞ!」
ノリ;゚ -゚)「その方が良さそうだ……」
( <●><●>)「遅いのはわかってます」
男がそれを放つ寸前に、一筋の青い光が男の腕を掠めた。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:23:26.69 ID:/Z3LYdXQP
- (;<●><●>)「矢!?」
光の玉は軌道が大きく逸れ、塔へと命中した。
一瞬にして塔は灰と化した。
川 ゚ -゚)「外したか」
('A`)「クー!!」
少し離れた所に三人の人影が見えた。
弓を構えた黒髪の女性。
あれがクーだろうか。
その横にはヒートと弟者が立っている。
ノパ听)「おーい!! ジョルジュー!! ツーン!!」
ヒートがこちらに向かって手を振った。
( ゚∀゚)「無事だったか……よかった……」
ジョルジュが小さく呟くのが聞こえた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:25:44.24 ID:/Z3LYdXQP
- ( <●><●>)「次から次へとわらわらと」
再び竜人が手をかざす。
( ^ω^)「来るお!」
( ゚∀゚)「逃げるぞ!!」
ξ゚听)ξ「どうしてよ!」
( ゚∀゚)「さっきの見たろ! 勝てっこねえ!」
ジョルジュがプギャーを担いで駆け出した。
ξ゚听)ξ「昔ブーンがひとり倒したわ!」
いやいや、あんなの勝てるわけがない。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:27:51.99 ID:/Z3LYdXQP
- (,,゚Д゚)「どうした、おまえら!!」
大橋の上では、まだVIPの兵士たちがオークの大軍と剣を交えていた。
たかがオークといえど、圧倒的な数の差は物を言う。
彼らも苦戦を強いられていたようだ。
( ゚∀゚)「ギコ、一番の目的は果たした! ニュー速を潰すのは諦めよう!」
(,,゚Д゚)「なぜだ!」
ギコと呼ばれた男が、オークを吹き飛ばしながら叫んだ。
(,,゚Д゚)「俺たちはまだ戦える! このまま突き進めるぞ!」
その瞬間、眩い閃光に視覚が奪われた。
鼓膜が破れそうなくらいの爆音。
だんだんと視界が戻ってくる。
そこで僕は何が起きたのかを理解した。
あの竜魔法が、すぐそばに着弾したのだ。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:30:10.97 ID:/Z3LYdXQP
- (,,゚Д゚)「いったい何が……」
敵味方の区別もない。
数百人が一瞬にして塵も残さず消し飛んでいた。
(´<_`;)「なんだよこれ……」
頭上にドラゴンの影が見える。
さっきまでのとはまた別の竜人族だ。
(,,゚Д゚)「竜人族がいるなんて聞いてないぞ!」
川 ゚ -゚)「おい、状況を説明しろ。この兵士たちはなんだ」
突然、クーが僕に声をかけた。
僕からしたら、彼女は初対面だ。
だが戸惑ってる暇も、話している暇もない。
( ^ω^)「あとで話すお!」
今は逃げるのが最優先だ。
複数人の竜人族とまともにやり合ったらただじゃ済まない。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:32:16.92 ID:/Z3LYdXQP
- (,,゚Д゚)「撤退だ! 全員、ニュー速の外へ!」
兵士たちは我先にと、大橋の先の大階段を目指す。
だが、そこへオークの大軍が追い討ちをかける。
空からはドラゴンの火の玉が降り注いでくる。
(;゚∀゚)「走れ! 門の外へ!」
門が見えた。
そのときだった。
「門を閉じろ!! ひとりも逃がすな!!」
敵の誰かが叫んだ。
城壁の上でトロルが鎖を引き始める。
ノハ;゚听)「門が閉じていく!」
(´<_`;)「閉じ込められたら終わりだぞ!」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:33:38.51 ID:/Z3LYdXQP
- そのとき、青と緑の二本の光がトロルを貫いた。
クーとフィーが矢を放ったのだ。
('A`)「二人ともナイスだ!」
川 ゚ -゚)「む……」
ノリ ゚ -゚)「なんだ貴様」
川 ゚ -゚)「貴様こそなんだ」
ξ゚听)ξ「そこ、ケンカしてる場合じゃないわ!!」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:35:31.51 ID:/Z3LYdXQP
- そう叫ぶツンの背後に、激しい光が見えた。
竜人族の放った光弾が、すぐそこまで迫ってきていた。
( ^ω^)「ツン、危ないお!!」
反射的に僕は飛び出していた。
身体が勝手に動いた。
光の玉の中心を剣で受け止める。
直後、爆音と共にそれは炸裂した。
(;^ω^)「うおっ!?」
次の瞬間、その衝撃で足下の地面が砕けた。
ξ;゚听)ξ「ブーン、早くこっちへ!」
周りの地面が高くなる。
いや、違う。
足場が崩れたのだ。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:37:59.08 ID:/Z3LYdXQP
- (;^ω^)「やばっ!」
橋が崩れ落ちていく。
ξ;゚听)ξ「捕まって!!」
僕は手を伸ばした。
指先が一瞬彼女の手に触れた。
だが、届かない。
ξ;゚听)ξ「ブーン!!」
ツンの叫び声が、いつの間にか遠くなっていた。
僕は瓦礫と共に、遥か下の闇へと落ちた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:39:40.31 ID:/Z3LYdXQP
- 〜〜〜〜〜〜
ξ;゚听)ξ「ブーン! ブーン!!」
ブーンの姿が闇の中に消えた。
私は底の見えない暗闇へと、ただただ叫び続けた。
(;'A`)「ツン、行こう!!」
肩を掴まれて、私は我に返った。
(;'A`)「俺たちまでやられる!」
ξ;゚听)ξ「でもブーンが!!」
(;'A`)「ブーンは……」
ドクオは顔を伏せた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:41:25.92 ID:/Z3LYdXQP
- ξ゚听)ξ「私も降りる!」
(;'A`)「馬鹿言え! こんなところから落ちたら……」
そう言ってドクオは言葉を切った。
ξ゚听)ξ「ブーンを助けにいくわ!!」
(;'A`)「やめろ! 冷静になれ!」
ドクオが私の両肩を掴んで引き寄せる。
ξ゚听)ξ「放して!」
(;'A`)「ブーンのことは今は忘れろ! まずはおまえが生き残ることを考えろ!」
ξ゚听)ξ「そんなことできない!!」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:43:29.37 ID:/Z3LYdXQP
- ( ゚∀゚)「おまえら、早くしろ!! 門がまた閉まり始めたぞ!!」
そのときだった。
脇腹に鈍い衝撃。
見ると、ドクオが杖を握りしめていた。
ξ;゚听)ξ「何を……」
('A`)「悪い、こうするしかないんだ」
全身の力が抜け、視界が暗転した。
そのまま私は意識を失った。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:45:44.84 ID:/Z3LYdXQP
- ……目を覚ますと、柔らかいベッドの上にいた。
天井には豪華な照明が吊されている。
だが灯りは付いていない。
部屋は暖炉の火だけでぼんやりと照らされていた。
ξ;゚听)ξ「痛っ……」
わき腹が痛んだ。
見ると青い痣ができていた。
('A`)「ごめん。強く突きすぎたんだ」
枕元にドクオが座っていた。
私は起き上がってうっすらと暗い部屋を見回した。
クーとヒートがベッドに腰掛けていた。
そのわきにはジョルジュが突っ立っている。
弟者が兄者の包帯を取り替えている。
フィーは壁にもたれ掛かって窓の外を眺めていた。
どこを探しても、ブーンの姿は見当たらなかった。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:47:32.83 ID:/Z3LYdXQP
- ξ゚听)ξ「ここはどこ?」
('A`)「VIPの城だ」
そのとき、部屋の扉が開いた。
暗い顔をしたギコが入ってきた。
( ´_ゝ`)「プギャーは?」
兄者が声をあげて立ち上がった。
(,,゚Д゚)「重傷だったが、命に別状はないそうだ」
( ´_ゝ`)「そうか……よかった」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:49:19.36 ID:/Z3LYdXQP
- ギコはため息をつきながら椅子に腰掛けた。
(,,゚Д゚)「生きてVIPに戻ったのは三割だけだ」
( ゚∀゚)「途中でドラゴンたちが引き返してなきゃ、俺たちゃ全滅だったな」
(´<_` )「なんであそこまで来て見逃したんだ?」
( ゚∀゚)「さあな。運が良かったのか、悪かったのか」
(,,゚Д゚)「まさか竜人族まで味方につけてるとは……」
ギコが頭を抱えた。
たくさんの兵を失ったことが悔しくてならないのだろう。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:51:23.54 ID:/Z3LYdXQP
- 川 ゚ -゚)「失ったものは大きい」
クーが静かに呟いて俯いた。
その言葉が私に重くのしかかった。
暗闇の中へ消えていくブーンの姿が目に浮かんだ。
ノパ听)「ツン、どうしたんだ?」
ヒートが悲しそうな顔をして私を見上げた。
一筋の涙が頬を伝っているのに気がついた。
その途端、何かが決壊したように涙が零れだした。
泣いてはダメだと、何度も自分に言い聞かせた。
泣くことは、ブーンを失ったことを認めることになる。
泣いちゃダメだ。
それでも涙は止まらない。
ノハ;;)「うぁぁぁぁぁぁ!!」
つられてヒートが泣き出した。
私も声をあげて泣いた。
ブーンとの記憶が走馬灯のように蘇っては消えた。
村を旅立つとき、私が守ると誓ったのに。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:53:13.86 ID:/Z3LYdXQP
- ( ゚∀゚)「これからどうするか、だ」
しばらくして、ジョルジュが口を開いた。
(,,゚Д゚)「ニュー速はVIPにとどめを刺しに来るだろう」
ギコが両手に顔をうずめたまま呟いた。
(,,゚Д゚)「この状況で攻め込まれたら終わりだ」
( ´_ゝ`)「どうするんだよ」
(,,゚Д゚)「……すまん。しばらく一人にさせてくれ」
ギコはそう言って立ち上がると、部屋を出た。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:54:56.58 ID:/Z3LYdXQP
- ( ゚∀゚)「兵を失ったのが相当きてるみてえだな」
('A`)「俺たちも部屋へ戻ろう」
ドクオが顔をあげた。
('A`)「話し合いは明日にしよう。今晩はとりあえず寝て心を落ち着かせよう」
( ゚∀゚)「それがいいな」
ドクオが一瞬、私の目を見た。
そのままドクオは部屋を出た。
ジョルジュと兄者、弟者もそれに従った。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:56:54.99 ID:/Z3LYdXQP
- 部屋に再び静けさが訪れた。
雨が降りだしたのだろう。
雨粒が窓を叩く音だけが鳴り響く。
泣き疲れたのか、ヒートは私の隣で寝息をたてていた。
ノリ ゚ -゚)「私は奴らを許さない」
フィーが口を開いた。
ノリ ゚ -゚)「モナーは父親同然だった。絶対に仇を討つ」
そして私の目を見た。
ノリ ゚ -゚)「おまえはどうする? 彼を愛していたのだろう?」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/12(日) 23:59:06.94 ID:/Z3LYdXQP
- ξ゚听)ξ「私は……」
銀色の瞳が私を問いかけるように見つめる。
ξ゚听)ξ「わからない」
ブーンの仇を討つなんて、考えてもなかった。
仇を討ちたいとは思わなかった。
それよりも、ブーンが生きていることを願いたかった。
望みはほとんどないことは理解している。
それでも私は彼が生きていると信じたかった。
川 ゚ -゚)「もう寝よう」
クーが呟いた。
川 ゚ -゚)「疲労もたまってるはずだ。今日は早く寝よう」
そう言ってクーはベッドに横になった。
私も布団に潜り、目を瞑った。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:01:04.86 ID:A4J/j08hP
- 真夜中、私は目を覚ました。
いや、ほとんど眠ってはいなかった。
私はベッドから起き上がった。
寝間着を脱ぎ、ミスリルの胴着に腕を通す。
その上に旅服を羽織って、部屋の扉に手をかけた。
川 ゚ -゚)「どこへ行くんだ?」
振り返ると、クーがベッドに腰掛けてこちらを見ていた。
ξ゚听)ξ「起きてたの?」
川 ゚ -゚)「眠れない理由はわかるだろう?」
ξ゚听)ξ「なら、私がどこへ行くのかもわかるでしょ」
川 ゚ -゚)「だいたいな」
ξ゚听)ξ「止めないの?」
川 ゚ -゚)「無駄なのもわかってる」
クーは悲しそうに微笑んだ。
それから立ち上がって私に歩みよった。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:03:05.32 ID:A4J/j08hP
- 川 ゚ -゚)「帰ってきてくれよ」
そう言ってクーは私の肩を抱いた。
川 ゚ -゚)「君は私の初めての友人なんだから」
ξ゚听)ξ「うん。きっと帰ってくるわ」
川 ゚ -゚)「これを持っていってくれ」
クーは銀色の宝石のペンダントを私に渡した。
川 ゚ -゚)「御守りだ」
ξ゚听)ξ「ありがとう」
私はそれを首にかけ、もう一度クーと抱き合った。
それから、黙って部屋を出た。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:05:15.37 ID:A4J/j08hP
- 「どこへお行きですか?」
一階の大広間に降りると、兵士たちが声をかけてきた。
深夜だというのに、こんなにたくさんの見張りがいるものだろうか。
ξ゚听)ξ「あんたたちは気にしなくていいわ」
「しかし、あなたを止めるように言われてるので……」
ξ゚听)ξ「誰に?」
「……言えません」
あらかたドクオだろう。
ξ゚听)ξ「止めてみる?」
私は意地悪く笑ってみせた。
兵士の眉間が微かに動いた。
挑発されたことに少し腹がたったのだろう。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:07:25.23 ID:A4J/j08hP
- 「武器を使ってもいいと言われておりますので」
兵士たちが剣を抜いた。
ドクオのヤツめ。
そんなことしてもムダだとわかってるだろうに。
床を蹴り、瞬間的に兵士たちの隙間を抜ける。
そのついでに、剣の刃に拳を叩き込んでおいた。
目にすら留まらなかったはずだ。
ξ゚听)ξ「あんたたちじゃ無理よ」
呆気にとられた兵士の手から、粉々に割れた剣が落ちた。
ここまですれば戦意も失せるだろう。
私は呆然と立ち尽くす兵士たちを残して、広間を出た。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:09:02.06 ID:A4J/j08hP
- 外はひどい雨だった。
私はフードをかぶって中庭に出た。
庭の真ん中あたりまで来たときだった。
「おい」
聞き覚えのある声。
銅像の陰に誰かいる。
暗くて顔は見えないが、声で誰かは認識できた。
ξ゚听)ξ「ドクオね」
('A`)「……」
ドクオは返事をしなかった。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:11:16.08 ID:A4J/j08hP
- ξ゚听)ξ「ずっとここにいたの?」
('A`)「まあな」
ξ゚听)ξ「ばっかみたい。風邪ひいても知らないわよ」
('A`)「正直めっちゃ寒い」
ドクオはびしょ濡れの髪をかきあげて私を見た。
ξ゚听)ξ「兵士たちに見張りをさせたのもあんたね? 可哀相に。怖がってたわよ」
('A`)「そりゃ相手がおまえだからな」
ドクオは笑ってみせた。
('A`)「いちおう警告のつもりだったんだがな」
ξ゚听)ξ「ここで待ってたってことは、ムダだってわかってたんでしょ?」
('A`)「まあな」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:13:31.45 ID:A4J/j08hP
- ('A`)「ブーンのところへ行くつもりだろ」
ドクオの目つきが真剣になった。
ξ゚听)ξ「やっぱ、わかってたんだ」
('A`)「あたりまえだ。だてに十ヶ月一緒に旅してねえよ」
ドクオはため息をついた。
しかし雨の音でそれはかき消された。
('A`)「あんま言いたくないが……ブーンのことは諦めてくれ」
ξ゚听)ξ「嫌よ」
ブーンは生きているかもしれない。
あの深い闇の底で、助けを待っているかもしれないのだ。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:15:23.32 ID:A4J/j08hP
- ('A`)「信じたくない気持ちはわかる。俺だってそうだ」
('A`)「でも、お願いだからおまえは行かないでくれ」
ξ゚听)ξ「なんでよ」
ドクオが雨に濡れた顔を静かにあげた。
('A`)「二人も仲間を失いたくないんだ」
ドクオの頬を、たくさんの滴が伝っていた。
泣いているのか、それとも雨粒なのかはわからない。
ξ゚听)ξ「気持ちは嬉しいわ。でも、私は行くわよ」
それが私が決めた答えなのだ。
それがただのごまかしだろうと何だろうと、私はそれでしか納得できないのだ。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:17:10.70 ID:A4J/j08hP
- ドクオは杖を構えていた。
ξ゚听)ξ「私を止めるの?」
('A`)「仲間が死ににいくのを黙ってみてるわけにはいかないからな」
ξ゚听)ξ「いいけど、手加減しないわよ」
('A`)「俺もだ。手足をもいででもおまえを止める」
ドクオが私に杖を向けた。
今まで感じたことのないような強力な魔力をひしひしと感じる。
本気だ。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:19:32.07 ID:A4J/j08hP
- ドクオの強さはわかっている。
あのボロい練習用の杖の一振りが放つ魔法の威力を、私は間近で見てきた。
私はフードを脱いで拳を顔の前に構えた。
ドクオは炎と雷の魔法が得意なはずだ。
この雨なら、おそらく私の方が有利だ。
ξ゚听)ξ「!!」
その瞬間、ドクオの姿が消えていた。
背後の殺気を感じ取り、とっさに身を屈める。
失神魔法を纏った杖がそこを掠めた。
ξ;゚听)ξ「ちっ!」
雨と暗闇のせいで見誤ったのか。
どうやってドクオに後ろを取られたのかわからなかった。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:21:22.41 ID:A4J/j08hP
- だが今度は視界に捕らえた。
腰を捻り、上段の回し蹴りを放つ。
しかし、それは雨粒を切るだけだった。
ドクオは一瞬で距離を取っていた。
ξ゚听)ξ「わかったわ」
('A`)「……」
間違いない。
高速移動呪文だ。
ジョルジュがよく使っていた時魔法だ。
なぜドクオがそれを使いこなしているのかはわからない。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:23:37.42 ID:A4J/j08hP
- ξ゚听)ξ「あんた、何したの?」
('A`)「今は教える気はないね」
ξ゚听)ξ「ならいいわ」
再び、ドクオが高速移動を使った。
もう完全に見切った。
ドクオの顔面が来るであろう場所に、拳をおく。
(;'A`)「!!」
ドクオがすんでのところで顔を逸らした。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:25:48.49 ID:A4J/j08hP
- ('A`)「……殺す気かよ」
私の拳はドクオの頬を皮一枚で掠めていた。
頬から血を滴らせながらドクオが言った。
ξ゚听)ξ「あんたこそ、ただ止めるだけのようには見えないわね」
雨に混じって、髪の焦げる臭いが鼻をついた。
ドクオの炎撃がすぐ耳元を通り過ぎたのだ。
危うく耳が無くなるところだった。
('A`)「手足もいででも止めるっつったろ」
ξ゚听)ξ「私を死なせたくないんじゃなかったの?」
('A`)「動きを止めるだけだ」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:27:48.27 ID:A4J/j08hP
- ドクオの指が微かに動いた。
詠唱無しの魔法の連撃。
ドクオの十八番だ。
しかし、それも今まで十分見てきた。
小さくバックステップ。
直後、目の前に火柱が上がった。
二撃目が後ろから来るのも知っている。
体を反らして炎の弾をかわす。
続けて三発の素速い雷撃。
ξ゚听)ξ「はっ!」
短剣を抜き、それを全て弾く。
ラストに大技が来るはずだ。
足元が赤く輝くのを確認して、私は地面を蹴った。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:29:52.45 ID:A4J/j08hP
- ('A`)「もらった!」
ξ゚听)ξ「!!」
目の前に杖が迫って来ていた。
足で受け止めようとした瞬間、杖が青い光を纏っているのに気づいた。
とっさに足を下ろし、すんでのところでそれをかわす。
そのまま地面を転がって、一旦距離をおく。
('A`)「やっぱさすがだな。全部見切られるとは」
ドクオの杖の軌道を描いたかのように、雨粒が空中で静止していた。
時間停止呪文だろうか。
ξ゚听)ξ「いつのまにそんなの覚えたのよ」
それだけじゃない。
明らかに魔法のレベルが上がっている。
先ほどの雷撃も、魔法無効の短剣が弾き飛ばされそうになるくらいの威力だった。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:32:22.79 ID:A4J/j08hP
- ('A`)「まあいろいろあるんだよ」
ドクオは杖を回しながら言った。
('A`)「今となっちゃ、もう意味ないんだけどな」
ドクオが一瞬さみしそうな表情を見せた。
その瞬間だけ、ドクオに隙ができた。
決めるなら今しかない。
一気に間合いを詰める。
('A`)「!」
ドクオの反応が遅れた。
杖で防ごうとするが、遅い。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:34:21.12 ID:A4J/j08hP
- ξ#゚听)ξ「せいっ!」
真下から蹴り上げる。
ドクオの身体が宙を舞った。
(;'A`)「がっ……」
地面を蹴り、空中へ追撃に向かう。
これで決める。
そのつもりで、ドクオの腹めがけて拳を叩き込んだ。
一瞬、ドクオの意識が遠のいたように見えた。
だが次の瞬間、ドクオの目がかっと大きく見開いた。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:36:37.33 ID:A4J/j08hP
- (#'A`)「まだだぁ!!」
ドクオが血を吐きながら叫んだ。
物凄い覇気に、思わず圧倒されかける。
その瞬間、杖の先が閃光を放った。
ξ;゚听)ξ「!?」
避けきれない。
顔の真横で光が爆ぜる。
私は地面に叩きつけられた。
同時にドクオも銅像に激突した。
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:38:46.08 ID:A4J/j08hP
- ξ;゚听)ξ「っ……」
右肩が焼けただれていた。
(;'A`)「はぁ……はぁ……」
肋が折れたのだろう。
呼吸が荒くなっている。
ξ;゚听)ξ「私の勝ちよ」
(;'A`)「行かせないぞ……死なせはしない……」
それでもドクオは立ち上がった。
だが口から血を流している。
普通ならもう動けないはずだ。
これ以上は命に関わる。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:40:38.19 ID:A4J/j08hP
- ξ゚听)ξ「ごめんね」
掌に気を込め、ドクオの胸を突いた。
('A`)「ちくしょう……」
ドクオは小さく呟いて、地面に倒れた。
ξ゚听)ξ「止めてくれてありがとう」
('A`)「……」
ドクオは空を仰いだまま何も言わなかった。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:42:26.04 ID:A4J/j08hP
- 〜〜〜〜〜〜
雨粒が顔をうつ。
('A`)「ちくしょう……」
俺は、ツンが居なくなった庭に一人横たわっていた。
身体が動かない。
('A`)「ちくしょう……」
またしても守れなかった。
ブーンを救うためにひたすら一人で修行をしたのに。
結局俺はブーンを救うことはできなかった。
そして、ツンも。
俺は悔しくて拳を握りしめた。
(;'A`)「っつ……」
肉刺が潰れ、掌は血まみれだった。
こんなになるまで修行して、なんで誰も救えないんだ。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:44:33.61 ID:A4J/j08hP
- 降りしきる雨の中で、銅像が俺を見下ろしていた。
あの、どことなくブーンに似た像だ。
雨の滴が流れ落ち、まるで泣いているようだった。
('A`)「ごめん、ブーン……」
魔王との決戦の直前、神殿の扉の前でブーンは俺に囁いた。
( ^ω^)『親友の君だから、お願いがあるお』
('A`)『なんだ?』
( ^ω^)『もし僕に何かあったら、ツンを頼むお』
俺は、約束を守れなかった。
悔しくて、涙がこぼれてきた。
大切な仲間を二人も失った。
俺は雨の中でひとり、声をあげて泣いた。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/13(月) 00:46:39.21 ID:A4J/j08hP
- 〜〜〜〜〜〜
私は再びニュー速の城壁の上に立っていた。
肩の火傷に雨が染み込み、ひりひりと痛む。
ξ゚听)ξ「……」
私は遙か下の闇を見下ろした。
この底で、ブーンが助けを待っている。
ξ゚听)ξ「今、助けにいくから」
そう呟いて、私は深い闇の底へと降り始めた。
つづく
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