( ^ω^)炎の紋章のようです

173 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:00:29 ID:1Tygc/Ho0
第六章 

腕試し


( ´_ゝ`)「さて、挨拶も済んだことだし、今度は将軍のとこだな」

ニューソク王アラマキへの謁見を終え、ブーン達はアニジャらに連れられていく。
向かう先は騎士団の修練所。そこに、彼らの上司に当たる将軍がいるらしい。
彼らは城の外れにあるそこまで歩いていった。道中では姫の雑談付であるが。

ξ゚听)ξ「あの人堅物だから注意したほうがいいわよ?
      ちょっとした言葉遣いだけでも怒るんだもの」

(;^ω^)「はぁ」

(´<_`;)「……なんで付いてきたんです?」

ξ゚听)ξ「あそこで父上の相手しててもつまらないじゃない。こっちのほうが暇が潰せるわ」
 _
(;゚∀゚)「王サマも可哀想に……」

174 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:01:49 ID:1Tygc/Ho0
('A`)「それで、その将軍はどんな方なんですか?」

ξ゚听)ξ「さっきもいったけど堅物ね。規律にうるさいわ。
      私でも容赦なく叱ったりするしね。姫なのに」

( ´_ゝ`)「将軍の頭は銀より固い、とか陰口言われてるな。色んな兵に」

(´<_` )「……いつもその輪の中心に居るくせに。
      まぁあの方がいなければ兄者も余計だらけてしまうだろうが」

( ´_ゝ`)「そんなことはない。あの人が仕事をしすぎて俺の仕事がないだけなのさ。
      嗚呼、全く、本当は仕事がしたいのだが、仕様が無いだろう?」

アニジャが芝居がかって言うと、オトジャはそれに呆れるように返す。
二人の掛け合いは姿が瓜二つなせいもあり、鏡に向かって話し合っているようだ。

(´<_` )「では、俺のを手伝ってもらおう。今抱えているのが数件あったのだが……」

( ´_ゝ`)「……うむ?そういえば俺もまだ済ませていない急ぎのものがあったぞ?
      こうなってはしょうがないな、では弟者よ、あとは頼んだぞ」

(;^ω^)「あれっ、行っちゃったお」

175 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:02:58 ID:1Tygc/Ho0
アニジャはオトジャと軽口を叩き合った後、別れて走っていってしまった。
オトジャも声をかけないところを見ると、最初から予想していたようだ。
話し振りなどからして、将軍はアニジャが苦手とするような人物なのだろう。

(´<_` )「いいさ、わかっていたからな。先程も会ったし、用事はないだろう。
      ほら、この先が修練所だ」

从 ゚∀从「おお……強そうなお兄さんがいっぱい」

オトジャが示した先の部屋は大広間になっており、中では多くの騎士が一人で剣を振り、
あるいは仲間と打ち合うことで、各々が研鑽を重ねていた。
その気迫からは、この国の人々を守るため努力する彼らの熱気が伝わってくるようだ。

そんな騎士達を見守る、というよりは見張るかのように、全体を見ることが出来る位置に
初老の男性が腕組みをして立っていた。
誰かが怠けていないか見張っているのだろうか、眉根に皺を寄せている彼は、やはり厳しそうだ。

(´<_` )「将軍、連れてきました。ここにいる彼らです」

176 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:04:21 ID:1Tygc/Ho0
(‘_L’)「……ああ、お前たちがそうか……ふむ……」

(;^ω^)(おお……)
 _
(;゚∀゚)(何か圧力が……)

彼の前に立ち値踏みされるような視線を向けられると、ブーン達はそれだけで冷や汗が流れ出る。
王のそれも、おふざけであったとはいえ統治者だけが持つ威厳、優しさのようなものが感じられた。
対してこちらの男からは、重く厳しい、まさに重圧とでもいうものが発せられているかのようだ。

(‘_L’)「……それより姫。なぜこのような場所におられるので?」

ξ゚听)ξ「申し訳ありません。あまりこのような場所に来るのは好ましいことではないとは分かっていたのですが、
      我が国を守ってくれる騎士達の労をねぎらいたく、またこれからそうしてくれるはずの彼らにも
      期待しているため、せめて最初だけでもと無理を言ってここに連れてきて貰ったのです」

先程言っていたとおり、言葉遣いには厳しいのだろう。
会ってから初めて聞いたような口調は、まさに王女のようだ。
将軍は最初、非難するような雰囲気を隠さなかったが、その切り替えしには降参したようである。

(;‐_L‐)「……むぅ、口が達者になられましたな……よろしいでしょう。今、椅子を持ってこさせます」

ξ゚听)ξ「ふふん」

177 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:05:26 ID:1Tygc/Ho0
(‘_L’)「……私はフィレンクト。ニューソク王国軍の長として任ぜられている。これからよろしく頼むぞ」

(;^ω^)「は、はいですお!!」

(‘_L’)「……まずは、自己紹介も兼ねて、実力の程でも見せてもらおうか。
    お前達は団員と立ち会ってもらう」

(;'A`)「え!?聞いてないですよ!?」

(‘_L’)「異論は聞いとらん」
 _
(:゚∀゚)(おー怖、いつもこうなんですか?)

(´<_` )(……)
 _
(;゚∀゚)(あれ、ちょっと、オトジャさ……)

(#‘_L’)「そこぉ!!!私語は謹まんか!!!」
 _
(;゚∀゚)「はいぃ!!申し訳ございません!!」

从 ゚∀从「……」ツーン

アニジャの恐れるフィレンクトの性格を体験して、ブーン達は幼いころの師匠であるシラヒーゲの
ことを思い出し、一様に怯えていた。
いち早く危機を察知していたハインリッヒだけは一言も発さず、背筋を伸ばして立っていたが。

178 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:06:48 ID:1Tygc/Ho0
(‘_L’)「よし、まずは貴様からだ。名前と、獲物は何を使う」
 _
(;゚∀゚)「俺?ジ、ジョルジュです……武器は、槍を少々……」

(‘_L’)「槍か……そうだな、モナー!!」

フィレンクトが呼ぶと、部屋の端から巨漢が駆け寄ってきた。
重騎士、アーマーナイトと呼ばれる兵の証である、重装の鎧を纏っている。

( ´∀`)「モナ、呼びましたモナ?」

(‘_L’)「うむ、この者達が新規入団者なのだが」

( ´∀`)「ああ……分かりましたモナ、いつものあれモナ」

柔和な笑顔が良く似合う、優しそうな男だ。
顔は少々ふくよかに見えるが、肌が見える所からは鍛え上げた筋肉が見て取れる。

( ´∀`)「僕の相手が君モナね?僕はモナー、よろしく頼むモナ」
 _
( ゚∀゚)「はい!!よろしく頼んます!!」

( ´∀`)(将軍は期待できそうな人が来たらいつもこうするモナ。喜んでいいモナよ)
 _
( ゚∀゚)「!」

モナーはジョルジュに顔を近づけてそう囁く。
そんなことを言われてしまえば、ジョルジュは簡単に気が昂ぶってしまう。
モナーもそんなことを狙って言った訳では無いのだが。

(‘_L’)「何をしている、早く準備せんか」

179 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:08:11 ID:1Tygc/Ho0
( ´∀`)「モナモナ、すいませんモナ」
 _
(*゚∀゚)「……よっしゃ!!」

フィレンクトに急かされ二人は準備を始める。
武器は訓練用の木製のもの。モナーは鎧は脱いでいるが、盾を持つようだ。
ジョルジュは気が急いているようで、目に見えて落ち着いていない。

(´<_` )「ふむ、モナーか……」

('A`)「どんな人なんですか?」

(´<_` )「俺達の同期でな、見かけどおりとても優しい男だが、凄まじい力で、腕も立つ。
      ジョルジュ、というか君たちも相当だが、どうなるか……」

(;^ω^)「勝たなきゃいけないわけでは無いんですおね?」

(´<_` )「まぁそうだな、というよりそう簡単に勝たれてはこちらに立つ瀬が無い」

从 ゚∀从「……あいつがあんなんなら無理だろね」
 _
(*゚∀゚)ー3

(;'A`)「……すぐ調子乗るのが悪い癖なんだよな」

ξ゚听)ξ「どこまで出来るのかしら、ね」

180 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:09:22 ID:1Tygc/Ho0


期待されてる。
そんなこと言われちゃあ、頑張らないのは嘘だろう。
この優しそうな人にゃ悪いが、さくっと片付けて、俺様の強さを見せ付けさせてもらうことにする。

(‘_L’)「……では、始めろ!!」
 _
( ゚∀゚)「しゃあ!!」

( ´∀`)「モナ」

まずはどうするかな、見たとここの人は重騎士、動きは素早くないだろう。
じゃあ素早く動き回って一気に近寄るか、それとも遠目から牽制しつつ……
 _
( ゚∀゚)(ま、いいや)

なんだかんだ細かく決めてもそのとおりにはいかないし、面倒くさくなってしまった。
それに正直この人、でかいだけでそこまで強くは見えねーし。
適当になんとかなるだろ。そう決め込んで、駆け出す。

181 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:10:33 ID:1Tygc/Ho0
 _
( ゚∀゚)(まずは……)

様子見に一撃、とでも考えた直後だった。

( ´∀`)「モナァ!!」
 _
(;゚∀゚)「うぉっ!?」

モナーさんの鋭い突きを、横にステップして避ける。
続けてそのまま槍で薙いできたが、それもしゃがむことでかわす。
次を警戒して、すぐに後ろへとバック転して距離をとった。

( ´∀`)「おお、身軽モナね、凄いモナ」
 _
(;゚∀゚)「っぶねー……」

間合いを測り間違ってた。横にも大きいせいで分からなかったけど、この人は縦にも相当大きい。
その分リーチも当然長いだろう。
 _
(;‐∀‐)(くそ、舞い上がってたか)

間合いを測り間違うなんて、最低だ。今の突きも、相当鋭い。
しかし、冷静にはなれた。
すぐに調子に乗るのは師匠にも、ドクオやブーンにさえ散々言われてたのに、全く直らない。
今まで戦ってきたのは、殆どが訓練を受けていない、言ってしまえば素人だ。

( ´∀`)「どうしたモナ?」

モナーさんは、しっかり訓練を受けている正規の兵。甘く見るのは可笑しいに決まってる。

182 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:11:32 ID:1Tygc/Ho0
 _
( ゚∀゚)「うっし、もういっちょ行きます!!」

こっから仕切りなおしだ。
今度は間合いを見て、相手のリーチぎりぎりまで近づく。
モナーさんが、牽制がてらに一突き。
 _
( ゚∀゚)(……見えてる)

顔に向かってきたそれに合わせて、軽く首を引く。
それだけで槍の先端は俺の鼻先で止まり、それ以上伸びてくることは無い。

モナーさんは素早く槍を引き、続けて何度も突いてくるが、軌道は見えてる。
全て弾き、かわすことが出来た。そのまま俺は少しずつ間合いを詰めていった。
時折俺も攻撃を繰り出すが、盾に防がれてしまう。

( ´∀`)「おお、じゃあこれはどうモナ」
 _
(;゚∀゚)「くっ……」

今度は突くことはせず、槍を振り回してきた。
また同じように弾こうと思い受け止めてみるが、逆に俺のほうが弾かれる。どんな力してんだ。
足元を狙った攻撃を飛び上がって避けるも、返す一撃を受け止めて体勢を崩し、
立て直しを余儀なくされたため、いったん距離を開けるために退く。
モナーさんとの間合いは一歩以上違う。このままだと俺からは何も出来ないだろう。

183 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:12:47 ID:1Tygc/Ho0
それなら
 _
(;゚∀゚)(……集中しろ!!)

振るわれた槍が通り過ぎるタイミングを図り、間合いの内側へと突っ込む。
続けて引き返してくる槍も、姿勢を落としてかわす。
あっぶね!!頭掠った!!

( ´∀`)「モナ!!」

モナーさんは素早く引き戻した槍を短く持ち、俺に突き出してきた。
ここだ。

( ゚∀゚)「……っ!!」

見えている。槍を少しだけ振り上げると、その軌道上にはモナーさんの手。
触れるようにそこに当ててやると、いとも簡単にモナーさんの槍は、宙を舞う。
そして、開いた肩に目掛けそのまま

184 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:13:55 ID:1Tygc/Ho0

(;゚∀゚)「……あらぁ!!??」

(#´∀`)「モナァ!!!!」

次の瞬間、俺の眼前にあったのは、盾。
モナーさんは、体当たりを仕掛けてきた。

(; ∀ )「ぐうっ…げはっ!!」

俺はそれをもろに受け、壁際まで弾き飛ばされた。
立てない。息が苦しい。目の前にモナーさんが立っているのは分かるが、どーしようもねぇ。

( ´∀`)「……モナ」

(‘_L’)「……そこまで、だな」

(;‐∀゚)「……く、そ」

185 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:14:52 ID:1Tygc/Ho0


从;゚∀从「あーあ……」

ξ;゚听)ξ「大丈夫かしら」

(;'A`)「うわ、大丈夫か?」

(;^ω^)「ジョルジュ!!」

吹き飛ばされたジョルジュを見て、ドクオとブーンは駆け寄っていく。
ジョルジュは胸を打ったようで、息が出来ず倒れこんでいる。
 _
(;‐∀゚)「……ゴホっ、……だ、大丈夫、だって」

(;´∀`)「あらら、すまんモナ」

近くに立ったままだったモナーもジョルジュを心配して声をかけてくる。
やはり優しい男なのだろう。自分でやったというのに、ひどく困った顔をしている。
 _
(;゚∀゚)「ハッ…ハァ…ふぅ、いや、なんとも無いです」

ようやく呼吸が落ち着いてきたらしいジョルジュは、ブーンに支えられ体を起こす。
まだ苦しそうではあるが、その表情は非常に悔しそうである。

186 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:16:06 ID:1Tygc/Ho0
 _
(;‐∀‐)「……っかー、負けちまったかー。まだまだだな……」

(;^ω^)「まぁ、そりゃ簡単には勝てないお」

( ´∀`)「いやいや、そんな、実践だったら僕もう動けないモナよ」

そういって、モナーは服を捲って右肩を見せる。
その部分は、見事に赤く腫れ上がっていた。
言わずもがな槍を持っていた手も、折れてはいないようだが真っ赤である。

( ´∀`)「ま、僕のは苦し紛れだモナ。若いのに凄いモナ」
 _
(;゚∀゚)「……でも、負けは負け、だしな……」

(´<_` )「いや、素晴らしいさ、見事だった。」

从 ゚∀从「ほら見ろよ、ギャラリーもこんなにたくさん」

見渡すと、周囲には訓練していた者達がその合間に横目で、またあるものは幾人かで立ち止まって見学していた。
中にはジョルジュに向かって親指を立てたり、口笛を鳴らしている者もいた。

(#‘_L’)「お前等!!油売っとらんで訓練に戻らんか!!」

( ´∀`)(ついでに嫌味言われないように僕も逃げるモナ)

当然、フィレンクトがそれを許す筈も無く、皆蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
しかし、その中から逃げていく一人を呼び止めた。

187 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:17:07 ID:1Tygc/Ho0
(‘_L’)「……いや、モララー!!お前は残れ!!」

( ・∀・)「は?」

(´<_`;)(あちゃあ、モララーか)

呼び止められて歩いてきたのは、ここらでは見ない服を着た容姿端麗の若い男。
服装と、短い髪に髪留めをいくつか付けていることから、遊牧民の国【ロビー】の出であることが分かる。

ξ゚听)ξ「あら、モララー」

( ・∀・)「どうもツン姫、ご機嫌麗しゅう、ってか。
     ……何さ、俺訓練終わらせたぜ?」

(‘_L’)「だからお前は敬語を使えと……いや、もういい。こいつ等と立ち会え」

( ・∀・)「へぇ……どいつ?」

(‘_L’)「そこのお前は剣を持っているな?名前は」

('A`)「はい、ドクオといいます」

(‘_L’)「よし、ドクオ、準備しろ。……お前もさっさとせんか!!」

( ・∀・)「はいな」

188 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:17:51 ID:1Tygc/Ho0
フィレンクトに物怖じもしないモララーという男は、ひょうひょうと準備を始める。
それを見て、オトジャは若干の心配顔でフィレンクトのもとへと近寄っていった。

(´<_` )「……モララーは危なくはないでしょうか?」

( ・∀・)〜♪

(‘_L’)「何、丁度いいだろう。無いだろうが、もしもがある前にそこで止める」

(´<_` )「……まぁ、そう言われるのであれば」

从 ゚∀从「何さ、あいつって危ないの?」

(´<_` )「いや、うーん……止めれば大丈夫だが……」

从 ゚∀从「?」

189 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:18:40 ID:1Tygc/Ho0
('A`)「よし、やってくるかな」

一方、ドクオも木剣を手に取り、軽く準備運動を終えたようだ。
ジョルジュももう問題は無いようで、立ち上がってそれを眺めていた。

( ^ω^)「ドクオ、頑張るお!!」

('A`)「まぁ、ジョルジュみたいにならんようにはな」
 _
(;゚∀゚)「ぐっ……」

('A`)「はは、仇とってきてやるよ」
 _
(;゚∀゚)「くっそ、……お前も負けちまえ!!」

ξ;゚听)ξ「見苦しいわよ……」

隣で聞いているブーンは苦笑い。
ジョルジュの声援を背中に受け、それに手を振って応えながらドクオは歩いていった。

190 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:19:36 ID:1Tygc/Ho0


やっぱ、本職は違うもんだな、ジョルジュが簡単に負けちまったよ。
ま、最近調子乗ってたからアイツには負けたのはいい薬になるだろう。
しかし、負けちまえってどういうことだよ。

('A`)(こっちも一筋縄じゃいかないだろうに)

( ・∀・)

自分の前に立っているのは、軽薄そうな男。顔は幾分か幼く見える。
髪飾りなどから判断するに、ロビーあたりの出身だろうと思う。
あっちの剣士は、こちらとは違う技術を使うと聞いたことがある。

(‘_L’)「よし、始めろ」

始まったようだ、さてどう戦うか。
ジョルジュもブーンも取り合えず突っ込むタイプだが、俺は怖くてそんなこと出来ない。
剣も木製の訓練用であるためか、感覚が若干違う。ジョルジュは気にしてなかったみたいだけど。
それも怖いし、こいつが攻めてくるのを少し待ってみるか……?

( ・∀・)「いつでもいーぜ、お前から攻めて来い」

('A`)「……むっ」

ちょっとイラッとした、が、挑発に乗って熱くはならない。
かといって、相手は完全に待ちの姿勢である。俺から攻めなければ話にならない。
じゃあどう攻めるのかという話に戻るのだが。

191 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:20:37 ID:1Tygc/Ho0
('A`)(スキだらけ、なのか……?)

俺の方は若干腰を落とし、足を開いて素早く動けるような姿勢を取っているが、
モララーは直立。正対はしていないが、普通に立っているだけのように見える。
切り込めばどこからでもやってしまえそうだ。

( ・∀・)「ほら、どうしたよ?」

('A`)「んじゃ、様子見……」

俺は一足飛びに間合いを詰め、ひとまず左斜め上から切り下ろす。
これは簡単にかわされてしまうが、そんなことは折込み済みである
続けて踏み込み、切る、切る、切る。

('A`)「ふっ……!!」

( ・∀・)「お、お、ほっ」

隙だらけに見えたコイツは一発も剣で受けることなく、全てユラリ、ユラリと避けている。
俺はわざと一撃に隙を作ってどう来るか見ようとも思っていたが、反撃も無い。
嘗めてんのなやっぱり。

192 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:21:20 ID:1Tygc/Ho0
( ・∀・)「よっ……なぁ、もっとこう、ガッと来いよ、つまらん」

バックステップしながら、余裕たっぷりにそんなこといってきやがった。

('A`)「……その前にあんたからも攻めてこいよ」

( ・∀・)「? そんなことしたらすぐ終わるだろ?」

('A`)イラッ

首をかしげながら言ってくるが、それが様になっていて更にムカつく。
ジョルジュも何やら騒いでいる。殺せとか何とか、さっき負けた分際で。
……熱くなってるわけではないが、流石にプライドの問題がある。

('A`)「せいぜい嘗めてればいいさ……!!」

もう一度、木剣を腰だめに構え駆け出す。先程とは比較にならないスピードで。
距離が長いとブーンのほうが速いのだが、俺は加速なら誰にも負けないと自負している。
それこそ、この目の前の野郎になんて。

193 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:22:06 ID:1Tygc/Ho0
( ・∀・)「!!」

驚いたようにモララーの眉が吊り上る。ちょっとだけ見返した気分だ。
もちろんそれに満足するわけは無い。間合いに入った瞬間、腰の位置から剣を降り抜く。
全体重を乗せた剣尖は、避けられないであろうタイミングで奴に襲い掛かった。

( ・∀・)「くっ!」

モララーはついに回避ではなく、防御を選んだ。
今まで使う素振りを見せなかった剣をその軌道上に構え、衝撃に備えたのが分かる。

(#'A`)「らっ!!」

しかし渾身の一撃をそんな簡単に止められては困る。
全力で振りぬいた一撃は、受け止めたモララーを軽く吹き飛ばした。
が、体制を崩すとまではいかない。

194 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:23:04 ID:1Tygc/Ho0
(;・∀・)「っくー、手ぇ痺れちゃうよ……」

('A`)「休んでんなよ」

そこで追撃しないほど俺も優しくは無い。
再び間合いを詰め、ここぞとばかりに畳み掛ける。
右から、左から、下から、上から。

(;・∀・)「あっ、くっ、おっ、ちょ、タンマ!!」

(#'A`)「誰が待つか!!」

モララーはたたらを踏みながらも、一撃一撃を受け止めていく。
髪飾りが右に左に揺らし、崩れ掛けのバランスを保ちながら防御を続ける技術は凄いと思う。
だが、そんな状態に隙が出来ないはずはない。

('A`)(そこっ……!!)

(;・∀・)「っ!!」

一瞬を見極め、腹部目掛けて剣を突きだす。
完全に入った、と思ったが、モララーは信じられないほどの反応を見せ、体を捩る。
結果、俺の突きは奴の脇腹を掠っただけとなってしまった。
この時俺にも隙が合ったが、モララーは後ろに下がって距離をとった。

195 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:23:55 ID:1Tygc/Ho0
('A`)「あー、入ったと思ったのに」

(;・∀・)「いって……」

モララーは脇腹を押さえている。それほどいい当たりではなかったが、ショックだったのだろう。
汗が一筋、こめかみを流れているのもいい気味である。
ここでお返しにとばかりに身振りを交えながら俺も挑発してやった。

('A`)「もっとさ、グォッ、と来てくんない?張り合いねーわー」

( ・∀・)「……あ?」

その見え透いた挑発に、みるみる表情が消える。
中身は意外と簡単なようだ。

( ・∀・)「……ははっ、いいさ、死にたいなら殺してやる」

モララーが初めて構えを取る。さっきと姿勢は変わらないが、全く気迫が違うことが感じられる。
一瞬ゆら、と揺れたかと思うと、素早く間合いを詰めてきた。
だが捉えられない速さではない。

196 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:25:13 ID:1Tygc/Ho0
( ・∀・)「はっ!!」

('A`)「……っ!!」

しかしコイツが振るってきた剣筋は、自信があったのもわかるような、素晴らしく流麗なものだ。
河の流れのような、次々に振るわれる継ぎ目の無い連撃は受けるのも難しい。
俺は何とか一つ一つに丁寧に剣を合わせ、避けていく。
が、この体格から振るわれるものにしては、いやに重い。受け損なった一つが俺の腕を掠めていった。
モララーの振るう剣は 続けて何度か、俺の体のあちらこちらに傷を作っていく。

(;'A`)「くっ」

( ・∀・)「はははは、ほらぁ!!どうした!!結局こんなもんか!?」

モララーは手を休めず、ひたすら攻撃を繰り返す。
いい気になっているようで、顔には笑みも浮かんでいた。
だがやっぱガキっぽいな。掠めたぐらいでのぼせてんじゃねぇよ。

(;'A`)「ふっ!!」

(;・∀・)「あ!!?」

いい気になってるモララーは、その攻撃も雑になっていた。
その一瞬の隙を突いて、俺は攻撃に転じる。
コイツは反応したのだが、それは一瞬遅れてしまう。
受けそこなったモララーを突き飛ばし、奴は遂には転んで地面に倒れこんだ。

197 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:26:06 ID:1Tygc/Ho0
('A`)「相手のこと嘗めてっからこーなるんだよ」

(  ∀ )「……」

しばらく寝ていたモララーだが、将軍からふざけるな、との怒声が飛んでくるとゆっくりと立ち上がった。
屈辱だったんだろう、顔には怒りの表情が浮かんでいる。

(  ∀ )「は、ははは……いいよ、わかった。どうなっても知らないんだからな」

そういったかと思うと、再び剣を構えた。
またも構えは変わらないが、圧力の段階が上がったような気がする。
知らず、体に力が入る。

((( ・∀ )「行くぞ」

(;'A`)「……!?」

その瞬間、モララーの体がぶれ始めた、ように見えた。
今見えているのは、数人のモララーが重なっているというおかしな現象だ。

198 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:28:48 ID:1Tygc/Ho0





(((( ・∀ )「……【流」







(#‘_L’)「莫迦者ォ!!!!」


(;・∀・)「せいってぇ!!!!」

(;'A`)「……あ」

199 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:29:46 ID:1Tygc/Ho0
俺がモララーの後ろに居るフィレンクト将軍を見つけた瞬間、それに気付かない奴は
その頭に拳骨を食らってしまっていた。岩が割れたような音が聞こえる。 
先程の緊張した一瞬は消え去り、モララーは床でうずくまって声も発せないようだ。

(´<_` )「……あの拳骨は俺も二度と食らいたくないな。兄者は未だによくやられているが」

(;'A`)「あ、オトジャさん……」

俺の近くに槍を持って構えるオトジャさんに気付いたその時、緊張が解けたようだ。
背中に流れる大量の汗に気付いたのも、同時だった。

(´<_` )「この勝負はお前の勝ちだ、見事だった」

(;'A`)「……」

(; ∀ )「うぐぅぅぅぉ……」

(;'A`)「……はぁ……」

そう言われて、体の力が抜けていってしまったようだ。流石にヘタレ込みはしなかったが。
そんなこと言われても、勝った気がしないんだけどなぁ……

200 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:30:32 ID:1Tygc/Ho0


(#‘_L’)「未熟者が!!相手を甘く見て不覚を取った挙句、未完成の技を繰り出そうとしおって!!
       しかも味方に、だ!!以前失敗して死に掛けたのも忘れたか!!!!」

( ・∀・)「……」

広間にフィレンクトの怒声が響き渡る。恐らく城下町にまで届くのではないか。
目前に座るモララーは、しかし反省もしていないように無視して澄ましている。

(#‘_L’)「……フンっ!!」

(;・∀・)「〜〜〜!!??」

腹に据えかねたか、言っても無駄だと思ったか、もう一度モララーに拳骨を落とし、フィレンクトは歩いていった。
モララーは再び頭を押さえ、地面でもんどり打っている。

ξ;゚听)ξ「あーあ、やられちゃった……」

(#‘_L’)「……怒鳴りすぎて喉が渇いた。少し待っていろ」
 _
(;゚∀゚)(……絶対怒らせないようにしよう)

从;゚∀从「いったそー……」

201 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:31:57 ID:1Tygc/Ho0
(;'A`)「おい、大丈夫か……?」

ドクオはモララーに声をかける。
単純に痛そうだし、何より先程のことが聞きたかったのだ。
あの悪寒の正体はなんなのか、と。

( ;∀・)「あ……?あぁ、だ、大丈夫……」

顔を上げモララーは意外そうな顔をしていたが、すっと立ち上がり服を払いながら強がった。
涙も出ているし、頭も抑えたままだからとてもそうは見えないのだが。

( ・∀・)「……悪かった、侮ったのは誤りだった。すまない。
     俺はモララー、これからよろしく頼む」

('A`)「んあ?いや、いいんだけどさ……
    俺はドクオ、前は自警団をやってた。」

モララーは自己紹介と共に見慣れない奇妙な動作をしてから、頭を下げた。
これはロビー出身の者特有の敬意を表す仕草であったが、それを知らないドクオは同じく奇妙な顔をするだけだ。
別に嫌な気はしていないようなので、素直に謝罪は受け取ったようだ。

202 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:33:01 ID:1Tygc/Ho0
('A`)「それより凄いんだな、やっぱり。ロビーの剣士の技って」

( ^ω^)「お?モララーはロビー出身かお?」

( ・∀・)「ああ、草原の民、ジエン族の出だ。修行であちこち流れてたんだけど、
     ここでちょっと世話になってから何年か居座ってる」

(´<_` )「空腹で倒れそうなときにアニジャに飯奢ってもらったんだったな」

(;・∀・)「おいオトジャ、余計なこと言うな!!」

目上のものであるオトジャも呼び捨てにしていたが、モララーは実際は生意気なだけで
悪くない少年だった。年齢もドクオ等とそう変わらないらしい。
フィレンクトに対しては口うるさいのを嫌ってあの対応らしいが。

('A`)「ところでさ、最後のアレって……何?」

( ・∀・)「あぁ、あれは、俺の流派の奥義だかなんだか……
     詳しいことはいくら味方でも教えらんないな」

(´<_` )「ったく、まだ未完成なんだろう?依然に失敗して隙だらけになった挙句
      殺されそうになった癖に……もし成功しててもドクオはどうなったか」

(;・∀・)「さっきからうるさいんだからなオトジャ!!」

(;'A`)「はは……」

203 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:34:13 ID:1Tygc/Ho0
そうやって皆で談笑していると、フィレンクトが戻ってきた。
どうやら機嫌はなんとか治まったようだ。

(;・∀・)「やば、俺逃げるからな、あと頑張って」

モララーはそう言い残し、フィレンクトに気付かれないように人の影に隠れ逃げていった。
フィレンクトは軽く探したが居ないことがわかると、逃げおったか、と呟いていた。
あまり気にする様ではなかったのは、いつもあることだからなのだろう。

(‘_L’)「……最後はお前だな。名は」

( ^ω^)「はい、ブーンといいますお。」

(‘_L’)「ふむ、斧か……主だったものは今出払っているな……」

204 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:35:14 ID:1Tygc/Ho0
そういって、しばらく考えていたフィレンクトだが、相応しい者が思いついたのか
顔を上げてブーンに正対した。

(‘_L’)「よし、私が相手しよう」

(;^ω^)「お!?」

(‘_L’)「今、まともな斧使いがいないのでな……何、遠慮は必要ない」

(;^ω^)「おお!?」

そういってフィレンクトは準備をするためその場を去っていった。
騎士の長を相手することになったブーンは目に見えて動揺している。
周りから見る分には、実に哀れである。

(´<_`;)「まぁ、なんだ……うん、あの方は厳しいぞ」

ξ;゚听)ξ「きっと手加減……しないわね」

从;゚∀从「うん、えーっと、頑張れ」

(;'A`)「ご愁傷様……」
 _
(;゚∀゚)「骨は拾ってやるよ」

(;´ω`)「何で僕だけこうなんだお……」

205 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:36:06 ID:1Tygc/Ho0


(‘_L’)「さぁ、始めるか!!」

(;^ω^)「お、お願いしますお」

僕の目の前には、この国を守る軍隊のトップについている人が立っている。
言ってしまえばこの国最強だ。相変わらず、とても強いプレッシャーを感じる。
何だかやる気満々のようだし……どうやって戦えばよいのか。

下手を打てばどやされてしまうかもしれない。
僕の戦い如何によって、これからの評価が決まってしまうかも……
最悪の場合、ドクオやジョルジュ、ハインさんや、更には僕を連れてきたオトジャさん達にまで
迷惑がかかるかも……

(;^ω^)「うぅ……」

自然、体の至る所に不必要な力が篭もっていく。
あれ、僕っていつもどうやって斧振ってたんだっけ。

(‘_L’)「?どうした、来ないのならこちらから行くぞ」

あぁ、それは不味い。僕が得意なのは相手の懐まで走りこみその勢いを持って戦うことだ。
只でさえ実力に開きがあるだろうに、得意技まで使えないなら話にならないだろう
ドクオやジョルジュが何か言っているような気がするが、よく聞こえない。
僕はとにかく、フィレンクト将軍に向かって走り出すべきだろう。

206 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:36:52 ID:1Tygc/Ho0
(;^ω^)「い、行きますお!!」

(‘_L’)「おぉ、来てみろ!!」

不安やら何やらを頭から振り切り、僕は最初の一歩目を踏み出した。
何だか体の部分それぞれが繋がっていないような感覚がある。
しかし、どう違うのかわからないし、修正しているような暇は無い。

(;^ω^)「お、おおおぉぉ!!!」

いつも通り、を思い出して斧を振りかぶる。
もう既に僕の間合いであり、フィレンクト将軍は身構えている。
とにかく、全力をぶつけてみるしかない。

(‘_L’)「はっ!!」

(;^ω^)「おっ!!」

(‘_L’)「……」

もちろんその一撃は将軍の斧によって簡単に受け止められた。
その表情は何だか期待はずれ、といったようなもの。
僕は弾かれた斧を再び振るい、勢いを止めずもう一度攻撃を試みる。
が、その隙を衝かれて将軍が攻め込んできた。

(;^ω^)(ここは何とか体勢を……)

(‘_L’)「……ふんっ」

(;^ω^)「うわぁっ!?」

207 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:37:32 ID:1Tygc/Ho0
僕は体勢を整えるため、将軍の斧を受け止めその勢いを利用して飛びのこうとしたのだが
弾かれた力が想像以上に強く、身体も思うように動いてくれない。
吹き飛ばされて足をもつれさせた挙句、僕は尻餅をついてしまった。

(‘_L’)「……」

(;^ω^)「あうあう……」

将軍はそこに立ったまま見下ろしてくる。
情けない、と思った。
将軍からは、ふざけているのか!!などと叱られるかと思ったが、次にかけられた言葉は
怒りなどではなく、失望が込められていた、ような気がする。

(‘_L’)「……シラヒーゲ殿の弟子もこんなものか……?」

(;^ω^)「……爺ちゃんのことを知っておられるんですかお」

(‘_L’)「あの方は、私の遠い昔の上司だ。……よく面倒を見てもらったものだ……
     お前達のことはアニジャの馬鹿者から報告を受けたからな、弟子だということを聞いた」

(;^ω^)「……」

208 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/01/27(金) 02:39:19 ID:1Tygc/Ho0
(‘_L’)「退役して都を去る、と聞いたときは残念だった。まだ教えを請いたいことも
     数多くあったのだが、我侭を言うわけにはいかない」

(‘_L’)「……あの方が死の間際に残された弟子達が居たと聞いて、嬉しかった。
     しかし、それがこんなものだというのか?」

(‘_L’)「あの方がお前達に遺せたもの、それは何だ?
     今の何も感じない攻撃、そこに全ては込められていたのか?」

( ^ω^)「……」


語るフィレンクト将軍の言葉を聴いていて、頭に浮かんできたのは、村を出るときのドクオのおばさんの言葉。
そして、爺ちゃんやドクオ、ジョルジュと稽古した日々

不甲斐ない姿を見せるのは、皆に申し訳ないと心から思った。
そう考えると、余計な力が抜けていくような気がした。

209 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:40:25 ID:1Tygc/Ho0
( ^ω^)「……申し訳ありませんでしたお。もう一度、仕切りなおしをお願いできないでしょうかお」

(‘_L’)「……顔つきが変わったな。うむ、許可しよう」

僕は立ち上がり、少し離れてから一礼した。
そして斧を構えなおし、二度目の攻撃への体勢を取る。

( ^ω^)「シラヒーゲの弟子、ブーン、行きますお!!」

(‘_L’)「うむ、ニューソク騎士将 フィレンクト、全力を持ってお受けしよう!!」


一歩目を踏み出す。先程とは全く違う、地を掴む感覚がある。

二歩目を突いたときには、既に間合いは自分のものとなっている。

三歩目と同時に、全身全霊、最高の攻撃を心がけ、振るった。

(#^ω^)「おおおおおおおっ!!!!」


(‘_L’)「うむ!!それでこそ!!」

210 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:41:29 ID:1Tygc/Ho0
裂帛の気合とともに振るった僕の一撃が、高い音を鳴らして将軍に受け止められる。

しかし僕の勢いは死んでいないはずだ。そのまま押し切ろうと更に力を込める。

(#^ω^)「おおっっ!!」

(‘_L’)「……だが、まだまだだな」

(; ゚ω゚)「がっ!?」

そのあと記憶に残っているのは、全力を込めていた一撃が弾かれ、まさか、と思った瞬間に
体に感じた強い衝撃。それと、意識を手放す瞬間に感じた床の冷たさだけだった。

211 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:42:22 ID:1Tygc/Ho0


( ´_ゝ`)「やぁやぁ、長いこと待たせてすまんね」

騎士団詰所のとある一室。
普段はアニジャとオトジャ、騎馬隊の長である二人が事務仕事などで使っている部屋であるが、
今アニジャとここに居るのはオトジャではなく、酔っ払いの傭兵であるギコだ。
椅子に腰掛けたまま、アニジャを迎えている。

(,,゚Д゚)「別にそこまで待ってねぇよ」

( ´_ゝ`)「そうか、茶でも飲むかな?」

(,,゚Д゚)「酒がいい」

( ´_ゝ`)「……ここ仕事部屋だしさぁ、まだ昼間だぞ」

二人は机を挟み、向かい合わせに座っている。
仕事を依頼されているわけでもアドバンテージを握っているわけでもない、只の傭兵であるギコは
へりくだるわけでもなくアニジャと接している。
本来なら二人の身分には天と地ほどの開きがあるはずなのだが。

212 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:43:08 ID:1Tygc/Ho0
( ´_ゝ`)「ところで、あのお嬢さんはどこに?」

(,,゚Д゚)「暇だっつってな、見学するってどっか行ったぞ。構わないだろ?」

( ´_ゝ`)「……本当は好ましくないんだけど、まぁいいか。
      魔道の大家、ラウンジ最大級の貴族スナオ家のお嬢さんがおいたすることもないだろ」

(,,゚Д゚)「あぁ、知ってたか」

( ´_ゝ`)「騎士だからな、お偉いさん方の舞踏会で護衛もするさ。
      人気もあったが、あの家は学問の虫だから皆にべも無く振られていたな。
      ついでにあんたのことも知ってるよ?」

(,,゚Д゚)「……」

( ´_ゝ`)「最近名を上げてきている傭兵団の頭、通り名は【酒瓶】だっけか」

(,,゚Д゚)「……俺、そんなに有名だったか?」

( ´_ゝ`)「仕事柄、あんた等みたいなのに依頼することもあるしな。
      まぁこっちは表向きの話だ」

そういってアニジャは足を崩し、ギコの方へと身を乗り出す。
若干雰囲気が変化したのが感じられる。
アニジャは口角を少しだけ上げて、静かに喋りだした。

213 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:45:12 ID:1Tygc/Ho0


( ´_ゝ`)「……ラウンジ貴族、ハニャン家の血筋でありながら傭兵に身を置く、ギコ=ハニャン殿。
      クー=スナオを引き連れて我が国に何の用だ?」


(,,゚Д゚)「……」


( ´_ゝ`)「何が目的かでそのようなことをしているのかは知らないが、もしも我が国に不利益が生じるようなことを
      画策しているのであれば、それを成させるわけにはいかない。
      どうなろうとも、 我が身を賭してでも、阻止させてもらう」

雰囲気の変化が決定的なものとなり、空気は何かが動けば壊れてしまいそうなほど張り詰めた。
アニジャは素手だが、この部屋は彼の慣れ親しんだ部屋であり、何が置かれているかわからない。
ギコはいつでも動き出せるよう、密かに準備をしていた。
そしてその空気を壊したのは、それを作り出した本人であるアニジャだ。

214 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:46:42 ID:1Tygc/Ho0
( ´_ゝ`)「なーんつってぇ」

(;,,‐Д‐)「……」

( ´_ゝ`)「あぁーあ、いかんな、しばらくこういうことをやっていないと疲れちゃうわ」

そういって後ろに倒れこみ、椅子の背もたれに大きく体を預け込んだ。
空気は弛緩し、ギコも体の力を緩める。

( ´_ゝ`)「だからさ、たまにこうやって慣れとかないといざという時ヘマすっからね」

(,,゚Д゚)「はぁ、遊ばないでもらいてぇな。一瞬どうやってヤろうかと思ったぜ」

( ´_ゝ`)「すまんね、まぁ大体目的とかもわかってるし。
      そっちも不穏な動きを掴んでいるんだろう?」

(,,゚Д゚)「まぁ、そうだな。その為の情報収集、ついでにクーの護衛だな」

( ´_ゝ`)「依頼元は生家、というか国か?そうなってくると、ラウンジとも協力体制をとれるか……」

(,,゚Д゚)「そうしてくれると、ありがたい」

( ´_ゝ`)「クー殿の目的は、やはりその関連と見ていいんだろう?」

(,,゚Д゚)「確証は無いが、恐らくな。クーには俺のことも含め、教えていないが」

215 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:48:27 ID:1Tygc/Ho0
( ´_ゝ`)「……ま、そういうことなら問題ないよ。情報提供は構わない。
      その代わり、ちょっと手を貸してもらいたいことがある。」

(,,゚Д゚)「わかった。暫く雇われよう。金は貰うけどな」

そういってニヤリと笑うギコに、アニジャは苦笑いで返す。

( ´_ゝ`)「色んなゴタゴタが片付けば全軍を挙げて動き出す予定だ。それまで頼む」

(,,゚Д゚)「……しかし、あいつらは何処で拾ってきたんだ?
    なかなかやる様だが、兵士でも貴族の息子でもないんだろう?」

( ´_ゝ`)「シラヒーゲ、っつって判るかな、その方の弟子なんだが」

(,,゚Д゚)「あぁ、爺さん連中から名を聞くことがある。そうか、通りで」

( ´_ゝ`)「で、それだけじゃない。まぁ、こっちは追い追い……くくっ」

(,,゚Д゚)「?」

ギコは首を傾げるが、対するアニジャは少し楽しそうな顔。
その表情は、例えるなら悪戯を思いついた子供のようだ。

216 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:51:02 ID:1Tygc/Ho0
(,,゚Д゚)「……しかし噂に違わないな、馬鹿騎士」

(;´_ゝ`)「やめてくんない、それ悪口の方だろ。そっちも変人とか言われてるくせに」

(,,゚Д゚)「ははは、まぁ俺の場合貴族生活なんて耐えられんだけだ。半分絶縁みたいなもんだしな。
     お前は赤騎士が通り名だったか。傭兵やってても名前を聴くぜ、
     策略巡らす才気の赤騎士、ニューソクを護る双将の一、ってか」

(;´_ゝ`)「……大げさだな、何回か戦略練っただけなのに…… 
      体動かすより楽なだけだよ」

(,,゚Д゚)「ま、何にせよこれからよろしく頼む」

( ´_ゝ`)「あぁ、よろしく」

217 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:51:59 ID:1Tygc/Ho0


从 ゚∀从「起きろよーブーンー、俺も合格したのにー」

( ‐ω^)「……ん」

ハインリッヒに頬を叩かれてブーンが目を覚ましたのは倒れた数分後のこと。
顔を上げてみるも、頭と体が痛む。地面に頭を打ったのが気絶の原因らしい。
ブーンは壁際に座らされている状態だったようだ。

(;^ω^)「痛っつ……」

('A`)「・・・なんかお前最近気絶してばっかりじゃね?」

(;^ω^)「くっ……言い返せないお」

ξ゚听)ξ「しょうがないわよ、あのフィレンクトが相手だったんだから」

姫はまぁ、頑張ったんじゃない?と労いの言葉を掛けてくる。
その手には、先端に宝珠がついた杖を持っていた。

218 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:53:04 ID:1Tygc/Ho0
 _
( ゚∀゚)「礼言っとけよ。姫が回復術を使ってくれたんだ」

ξ*゚听)ξ「か、勘違いするんじゃないわよ!!凄い音がしたモンだから……」

(´<_` )(モナーも痛そうだったが……兄者が居たら、存分にからかっただろうな……)

(;^ω^)「ありがとうございますお……姫は、回復術が使えるのかお」

ξ*゚听)ξ「ま、まぁね。まだ【ライブ】ぐらいだけど」

回復術とは、神に仕える者などが使える、人の体を癒す力である。
姫が行なったものは【ライブ】という、初級の術式である。
旅の聖職者などが路銀を稼ぐために各地で使われることもあるため、ブーン達も目にしたことがあった。

( ^ω^)「おぉ、そうだ、ハインさんはどうだったんだお?」

从 ゚3从「おせーよー、すねるぞ俺」

('∀`)「凄かったぜ中々。くくくっ」
 _
( ゚∀゚)「……こっちは笑えねぇっつーの」

(;^ω^)「?」

219 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:53:49 ID:1Tygc/Ho0
ドクオが話すには、こうだ。


ブーンが気絶している間、一騎討ちさせるわけにもいかないハインリッヒをどう判断するか、とフィレンクトは考えたらしい。
その時、ハインリッヒがポシェットから城下町で買ったらしいリンゴを取り出し、こう提案した。


从 ゚∀从「よし、ジョル君、壁際でこれ頭に乗っけて」
 _
(;゚∀゚)「は!?何で?判った、それを遠くから撃つんだ!!やだ!!」

从 ゚∀从「いいから」
 _
(;゚∀゚)「嫌だよ!!こえーもん!!」

从 ゚∀从「いいから」
 _
(;゚∀゚)「矢だよ!!あ、違う!!やだよ!!」

(‘_L’)「よし、それでいい、やれ」
 _
( ゚∀゚)

220 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:55:01 ID:1Tygc/Ho0
その後、かなり広いこの部屋の壁際に立たされたジョルジュは、同じく壁際まで離れたハインリッヒに
見事神業のごとく頭の上のリンゴを射抜かれ、鼻水を垂らし情けない顔をしながらへたり込んだ。
それを横目で見ていた騎士達も思わず賞賛の声を飛ばしたという。
その後、彼らにフィレンクトから怒鳴り声が飛んだのは言うまでも無い。
 _
(;゚∀゚)「……くっそ、ドクオでもよかったじゃねーかよ……マジで怖かったぜ」

(´<_` )「ふふ、俺も将軍の楽しそうな顔を久しぶりに見たぞ。ああいうの意外と好きなんだな」

( ^ω^)「ところでその将軍は?」

(‘_L’)「おお、漸く起きたか」

ブーンがそう訪ねたとき、フィレンクトがある一室から出てきた。
その手には小さな勲章のような物が四つ、重ねられている。

221 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:55:50 ID:1Tygc/Ho0
(‘_L’)「これは誇りあるニューソク騎士団員の証である。
     お前らの力は見せてもらった、これからも努力を怠ることなく、我が国を守る力となれ。
     分かったな?」

( ^ω^)「おお……」

('A`)「……」
 _
(*゚∀゚)「これで、騎士……」

从 ゚∀从「へーぇ……」

(#‘_L’)「……返事はどうした!!」
          _
( ^ω^)('A`) ( ゚∀゚)从 ゚∀从「はっ!!!!」

こうして、彼らの軍人としての人生が始まる。
そして、否応無く、目まぐるしい戦いの中に身を置いていくことになるのだった。

第六章 終

222 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 02:59:37 ID:1Tygc/Ho0
ユニット
       
モララー  ( ・∀・)    移動 5 
剣士               重量 8
LV 5  EXP 00
HP 23/23
 Personal Date  速さ   11
   力   7      幸運   5
  魔力   2      守備   4
   技   13     魔防   0

持ち物   E 鉄の剣

ロビーの遊牧民 ジエン族の剣士
生意気だが 根は気のいい若者
       
モナー  ( ´∀`)    移動 4 
アーマーナイト       重量 18
LV 7  EXP 00
HP 27/27
 Personal Date  速さ   6
   力   11      幸運   6
  魔力   0     守備  10
   技   7     魔防   3

持ち物   E 鉄の槍

ニューソク騎士団に所属する 重騎士
心優しく 頼りになる男

223 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/01/27(金) 03:01:44 ID:1Tygc/Ho0
フィレンクト  (‘_L’)   移動 6 
ジェネラル           重量 22
LV 7  EXP 00
HP 45/45
 Personal Date  速さ   9
   力   18      幸運   8
  魔力  6     守備  20
   技  15     魔防   9

持ち物   E 銀の斧
        はがねの槍

ニューソク騎士団を束ねる 将軍
その厳しさは 多くの部下に恐れられている


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