( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

3 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:33:27.71 ID:ds51EKSRO


第十五話「善と悪」



5 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:35:26.71 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「降りてこいよ」

モララーは何事も無かったかのように俺達に促した。
煙草を咥え、指先に小さな火を灯して着火させる。

('A`)(余裕こいてやがるな……)

相手の出方が分からない時、大っぴらに相手の懐に突っ込んでゆく行為は愚の骨頂。
故にこのような状況で近接戦闘を促す行為はよほどの事が無いと有り得ない。

だがモララーはそれをした。
つまりその『よほどの事』が今現在、適応されているという事だ。

('A`)「降りるなよ」

( ω^)「…………」

俺の呼び掛けに対して内藤は無言で羽をはためかせ、少し上へ浮上した。

('A`)(考えろ……アイツの言葉の一つ一つに何か意味がある筈だ。安易に向こうの策にハマってたまるか)

6 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:36:39.29 ID:ds51EKSRO
俺は内藤のベルトを掴む腕に力を込め、下唇を噛む。
腕に伝わる痺れと痛みが少し和らいだ。

('A`)(考えられる事は……俺達が地上に足をつけた時に発動される技を、向こうが有している?)

いや、違うな。
そうなるとブリューナクを打ち破った後に向こうからの追撃が無かった理由にはならない。
むしろ追撃が無ければおかしい筈だ。
空にいる敵を地面に落としたければ空に居られなくすれば良い、つまり上空に対してあの炎を放ってやれば良いだけの話だ。

ならば炎を放つのに時間の制限、或いはそれに準ずる枷がある?

いや、これも違う。
それを悟られぬ為のあの余裕の態度だとしてもそれはあまりにもリスキー過ぎるし、校舎を燃やすあの炎の規模からしてそれは確実に有り得ない。

7 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:38:00.53 ID:ds51EKSRO
ヤツは眼前に迫るブリューナクを物怖じすることもなく打ち破った。
その力を俺達に向けさせない為には、今俺達が知らず知らずの内に握っているアドバンテージに気付く必要がある。

('A`)(ブリューナクを目の前で打ち破る……目の前……眼前……)

一時間にも二時間にも感じられるような長い思案の果てに、俺はある答えを導き出した。

('A`)(……! あの炎には射程距離が定められているのか?)

この考えに至るまでの間に攻撃が来なかったのも、モララーが攻撃しなかったのではなく、出来なかったのではないか?

('A`)「内藤、威力は強くなくても良い。ここからアイツに向けて攻撃してくれ」

( ω^)「あいお」

合点と共に黒い球が五つ、モララーの元へ飛んでいった。

8 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:39:05.40 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「んなしょっぺぇ攻撃で俺を倒せると思ってんのかよ!!」

モララーが怒号と共に手を振った瞬間、ヤツの足元から間欠泉が噴き出るかのように血の色をした炎が舞い上がった。
黒い球はそれに巻き込まれると、元から存在しなかったかのように跡形も無く消し飛んだ。

('A`)「追撃だ。後十発ほど撃てるか?」

(; ω^)「……? 把握したお」

表情を確認する気にはならないが内藤の声色から疑念が感じられる。
まぁ心配するなよ。
俺だって何も考えてないわけじゃないさ。

( ・∀・)「はぁ!? マジでふざけてんのかよてめぇはよぉ!!」

再び放たれた黒い球を見て、モララーは苛立ちを隠そうともせずに声を荒らげ、先程と同じように球を焼き尽くした。

9 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:40:12.38 ID:ds51EKSRO
(# ・∀・)「降りてこいっつってんだろうがよぉっ!! 何企んでやがんだぁ!?」

敵意は痛いほどに感じられるがあくまでそれだけ。
モララーが俺達に対して攻撃を仕掛けるという事は無い。

('A`)「内藤、これはあくまで憶測だが……アイツの炎は無条件に何処にでも放てる、というわけじゃないみたいだ」

( ω^)「範囲外に居ればこっちに攻撃が及ぶ事はないという事かお」

('A`)「恐らくな……」

確信を持って言えるかといえばそうでもない。
むしろ自分の都合の良いように解釈して逃げ道を作っているとも言えるだろう。

だからこそ、この考えを裏付ける決定的な何かを掴んでおきたい。

('A`)(か細い理に縋りついて何とかなるのは運が良い時だけ、だからな)

10 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:41:05.93 ID:ds51EKSRO
閉塞。
今俺達が置かれている状況を一言で表すならまさにそれだろう。
なまじ逃げ道を得てしまったばかりにその均衡状態から抜け出せない。
アドバンテージに気付いてもそれだけでは意味が無い。

('A`)(並行してこっちの攻撃を通す術を考える必要があるな……だがどうする?)

一石投じてやるにしてもこちらの攻撃はその殆どが無力化されてしまう。
俺達が向こうの攻撃を受け付けないのと同じように、モララーもこちらの攻撃を受け付けないからな。

('A`)(物理的な干渉はあまりにもリスキー過ぎる……となれば残るは……)

精神的干渉、つまりは言葉による揺さぶり。
最も失敗する確率が低く、 失敗した時のリスクが少ない手段だ。

11 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:41:49.24 ID:ds51EKSRO
('A`)「モララー」

お前の力量の底、推し量ってやるよ。

(# ・∀・)「あぁ!?」

('A`)「そんなに俺達を降ろしたけりゃ自分の力で引き摺り降ろしてみろよ」

投じた一つの石が波紋を立てた。
モララーの顔が醜く歪み、それと同時に生温い風が辺りに吹き付けた。

(# ・∀・)「…………」

('A`)「出来るか? 出来ないよなぁ……それが出来るんなら俺達はとっくに地べたに這いつくばってるだろうよ」

('A`)「諦めろ。確かにこのまま行けばジリ貧だろうが、それでも俺達がお前に負ける要素は一切無い。だが逆もまた然りってわけでもない。こっちには攻撃手段があるんだからな」

(  ∀ )「…………」

モララーはがくり、とうなだれて、手に持っていた煙草を落とした。

13 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:43:20.80 ID:ds51EKSRO
( ω^)「呆気なかったお」

('A`)「ま、運が良かったんだろうよ」

( ω^)「僕の力が汎用性に長けていたお陰じゃないかお?」

したり顔で言う内藤を華麗にスルーして、俺は今回の件を引き起こした元凶を見た。

(  ∀ )「…………」

モララーは俯き、両手で頭を抱えている。
まぁ無理も無いだろう。
折角手に入れた力を否定され、羽をもがれた鳥のような扱いを受ければ誰だってそうなる。
モララーのように周りより優れている人間なら尚更だ。

(-A-)「まぁ運が悪かったんだろうよ……」

(  ∀ )「ぎゃっはははははははっ!!!」

('A`)「は?」

モララーは突如、堰を切ったかのように笑いだした。
こちらから見ているとそれはひどく滑稽に思えた。

14 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:44:36.39 ID:ds51EKSRO
ひとしきり笑うとモララーは息を切らせ、途切れ途切れに、それでいてこちらに聞こえる程高らかな声で言った。

( ・∀・)「履き違えてんじゃねぇぞ……俺の純粋な善意を深読みし過ぎなんだよ能無しがぁ……っ!」

(;'A`)「っ!?」

先程まで生温かった風が不自然なほどに熱く、吹き荒れる。

( ・∀・)「俺がお前に追い討ちをかけなかったのはそれじゃつまんねーからだよ」

風、というより辺りの気温の上昇に肌と感覚がじりじりと反応している。
そして脳へと警鐘を鳴らす。

ここは危険だ、と。

(# ・∀・)「ちょっとでも長生きしてぇなら素直に俺を楽しませる努力をしやがれってんだ!!」

モララーの両手がゆっくりと俺達に向けられた。

15 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:45:32.28 ID:ds51EKSRO
間違った?
何処で?
何を?
何で?

血のような色をした炎の狼が眼前に迫り来る僅かな間に、様々な思考が頭を過ぎった。

視界がスローモーションで動く。
不思議と先程まで感じていた恐怖、焦燥、身を焦がすほどの熱さは消え失せていた。

自分の身体も思うように動かせず、じわりと目の奥から溢れ出た液体のせいで歪んだ世界を見つめながら……

やけにクリアな思考で、俺はこれから起きる事、自分が経験する事を予測した。

('A`)(あ、俺死んだわ……)

16 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:47:09.83 ID:ds51EKSRO
諦めて目を閉じようとしたその時、不意に全身を揺らがせる衝撃が走った。

( ω^)「重たいお」

両手で俺の腕をがっしりと掴み、内藤は空を駆けた。
ようやく意識が再び覚醒し、ふと自分の腕を見るとベルトを掴んでいた筈の手は力無く開かれていた。

( ω^)「人間の身体ってのは意外なもので、力を込めるより力を抜いた時の方が重たくなるんだお?」

( ω^)「まぁ何が言いたいかっていうと……」

( ω^)「諦めるほど僕達はピンチじゃないって事だお。だから諦めて気を抜く事は僕が許さんお」

('A`)「内藤……」

こんな時にまで皮肉を交えてくる内藤に、いつもなら苛立ちしか感じないだろう。
だがそんな下らない戯言が、俺を勇気づけるための粋な計らいに思えて……俺は笑った。

17 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:48:14.75 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「何やらぼそぼそ話してるところ悪いけどよぉ……後ろにゃ気をつけた方が良いぜ?」

モララーの言葉とともに熱風が俺を襲った。
身体中が焦がされてゆくような熱さに俺は思わず目を細める。

(;-A`)「っつ!」

熱が背中越しに伝わっていることから、その熱の根源が俺達の背後にあるのはすぐ分かった。

恐る恐る後ろに目を向けると、そこには黒い壁に阻まれた赤い狼がいた。

( ・∀・)「ひゅー、良いねぇ……それぐらい防いでくれないと面白くないってもんだぁ!!」

(; ω^)「…………っ!」

蝿達と狼がぶつかり、押し合っている。
内藤は苦悶の表情を浮かべ、俺の腕を掴んでいる手に力を込めている。

18 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:49:18.11 ID:ds51EKSRO
(;'A`)「ちっ……降りるぞ内藤!!」

(; ω^)「おっ!」

直後に垂直落下。
ジェットコースターの下り坂の部分だけを体感しているような浮遊感が身体中に走る。
地面に衝突する手前でふわりと一度だけ上昇し、地に足を着ける。

上を見るとそこには相殺し、赤と黒の塵となった力の欠片があった。
禍々しい黒と雄々しい赤が混ざり合い、この世の終わりを思わせるような景色を作り出す。

( ・∀・)「かっかっかっ、やっぱそうこないとなぁ……」

モララーはカラカラと笑い、咥えた煙草を吐き捨て、新たに取り出した煙草に火をつけて煙を吐き出す。

(  ∀ )「俺はお前を殺すぜ……」

モララーが放つ雰囲気が一転し、痺れるような見えざる力が辺りを覆う。
その渦の中心でモララーは不敵な笑みを浮かべて言った。

( ・∀・)「魔王ベルゼブブ」

20 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:50:46.98 ID:ds51EKSRO
魔王ベルゼブブ。
その言葉がモララーの口から放たれた瞬間、今まで感じていた力がさらに明確な圧力となった。

(;'A`)(何故だ? 何故知っている……? 上位の悪魔ってのは相手の腹ん中に何があるかまでも分かるってのか?)

いや、それだとこの状況の説明がつかない。
モララーが『俺達』という力の核となるベルゼブブの存在を知っているにも関わらず、俺達はモララーの力の正体、つまり核となる者の正体を知らない。

(-A`)(ベルゼブブって言えば俺でも聞いた事がある程の高名な悪魔だ。そのベルゼブブの力を以てしてもアイツの正体が判らないってことはつまりそういう事なんだろうな……)

相手の力の探知、或いは悪魔絡みの知識を与えられたかってところか。

21 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:52:16.07 ID:ds51EKSRO
他に考えられるとすれば、モララーの身に宿った悪魔がベルゼブブよりも高位の悪魔だというパターン。
だがそれは考えるまい。というよりも考えたくない。
もしそうなら一貫の終わりだ。諦めなくてもそこで試合終了だ。

( ω^)「どこまで知ってるんだお?」

( ・∀・)「全てさ」

内藤の問いに、モララーは簡潔過ぎる一言を返す。

( ・∀・)「過去、現在、未来、全ての世界に存在するあらゆる知識をコイツが教えてくれた」

大気が渦を巻き、熱を帯びてゆく。

( ・∀・)「魔王ベルゼブブ、世界変革、適応者、神託の火」

( ・∀・)「大層なこった。この俺を差し置いて、こんな愉快な事をやってたとはな……許せねぇ、許せねぇよなぁ?」

22 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:53:20.52 ID:ds51EKSRO
(  ∀ )「『アモン』」

紡がれるは力ある名前。
深紅の炎が地面から沸き立ち、幾つもの赤い柱が空へと伸びる。

( ・∀・)「ひゃっはははははっ!!! ドクオくぅん! 内藤くうぅぅぅん!!! これが力ってやつだあぁぁっ!!」

空へと伸びた赤は散り散りになり、数多の槍となって俺達の元へと降り注ぐ。
俺は咄嗟に身構え、回避の体勢に入る。
だが内藤は……

( ω^)「…………」

塞がっていない左目で降り注いでくる槍をただ見つめているだけだった。

(;'A`)「内藤! 惚けてる場合じゃねぇぞ!!」

あの異端の力に内藤の絶対防御が通用する確証は無い。
このままいけば最悪の場合、あの炎の槍に貫かれて身体の内側から焼き尽くされてしまう。

23 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:54:51.85 ID:ds51EKSRO
それでも内藤は俺の呼び掛けに応えることもなく、ブツブツとうわ言のように何かを呟いている。

( ω^)「ひーふーみーやー……ざっと十五本ってところかお」

(;'A`)「内藤!!」

再び声を張り上げ、呼び掛けるが内藤はその場を動こうとしない。
降り注ぐ炎に巻き込まれないよう、俺は脇目も振らず横っ飛びでその場を離れた。

(;'A`)「っつ!!」

アスファルトの上を滑ったため、身体のあちこちを擦り剥く。

だが槍が降り注いだであろう場所、つまり俺の背後からは物音一つしない。
不審に思い、起き上がると同時に内藤が居る場所に目をやると、そこには目を覆いたくなるような光景があった。

( ω^)「…………」

(;'A`)「おいおいおいおい……」

24 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:56:15.11 ID:ds51EKSRO
撃ち放たれた十五本(内藤曰く)の炎の槍は、内藤の左手で鷲掴みにされていた。
だが驚くのはそれじゃない。
俺が驚いているのはその槍を鷲掴みにしている内藤の腕が、明らかに異質なモノになっている事だ。

( ω^)「おっ、これはなかなか……」

炎を掴む内藤の腕を、俺は見た事があった。

内藤の身体には明らかに不釣り合いな、全長にすると二メートルはありそうな太く、長く、筋骨隆々とした腕。
その腕を覆っている赤黒い体毛。鋭い爪。

(;'A`)(ベルゼブブの腕……)

嫌でも連想されるあの暴虐無人の大魔王の面影に、俺は言い様のない恐怖と戦慄を感じていた。

25 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:57:38.01 ID:ds51EKSRO
( ω^)「美味しいお。もっと欲しいお」

掴んだ炎を優しく揉み消すように、或いは……

上等な料理を咀嚼するかのように……

内藤の腕は赤い炎をかき消した。

( ω^)「ごちそーさん。もう打ち止めかお?」

二、三度付け根から異端なモノに変わってしまった左肩を回し、何事も無かったかのように内藤は言った。

( ・∀・)「…………」

(;'∀`)「はは……は……」

モララーは眉一つ動かさず、現状を見つめているだけだった。
対して俺は、人間を辞める事に対して何の感慨も無く見える内藤のこの変貌ぶりを見て、ただ笑うしか無かった。

そもそもこんな大層なモノを持っているにも関わらず、何故コイツはそれをこうも出し惜しみするのだろうか。

26 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:58:36.77 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「……幾つかお前に聞きたい事がある」

( ω^)「なんだお?」

急に深刻な顔になったモララーの声を聞いて、俺は再び我に返る。

( ・∀・)「お前は俺の力、つまり『アモン』の力について何処まで知っている?」

( ω^)「過去、現在、未来のあらゆる知識、つまり悪魔の叡智とも言える、人の域を超えた知識」

( ω^)「それと今僕がこの腕で食った魂ごと焼き尽くす炎。まぁざっとこんなモンかお?」

(;'A`)「おいっ!!」

コイツは何故こうも考え無しにベラベラと相手に情報を与えるんだ?
相手の力をこちらが何処まで知っているか、なんて簡単に敵に話して良いものじゃない。
それを隠す事で相手にプレッシャーを与え、それだけで優位に立つ事が出来るというのに。

27 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 22:59:37.47 ID:ds51EKSRO
( ω^)「そういきり立つもんじゃないお。モララーだってこっちに情報を提供してくれた。こっちもそれに応えてあげないとフェアじゃないお」

( ・∀・)「そーゆーこった。気付いてないのはお前だけだぜ? お前の思考はどれも的外れなんだよ。常識を捨てろ、常識を」

(;'A`)「くっ…………」

モララーは挑発的に自分のこめかみを指で小突く。
無論俺はそんな安い挑発にいきり立つほど短絡的な思考回路はしていないと自負出来るが、常識の域を超えたこの二人のやり取りに着いていけない自分がもどかしく、腹立たしく思えた。

( ・∀・)「次の質問だ」

モララーは言いながら指を二本立てる。
空いたもう片方の手で煙草を取り出し、本日何本目、或いは何十本目かの煙草に火を点ける。

29 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 23:01:44.18 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「お前が世界変革を企んでいる事は知っている。だがそれがどんな事かをお前は正確に知ってんのか?」

( ω^)「分かってるお!」

モララーの第二の問いに内藤は若干声を荒らげて応えた。

( ω^)「君達みたいな要領の良い人間だけが搾取して、昔の僕みたいな人間が淘汰される。そんな腐った世界をブチ壊すんだお」

( ω^)「人はみんな報われないと駄目なんだお! 君達みたいな人間だけが美味い汁を啜って良い道理があるかお!!」

( -∀・)「…………」

魔王モード(仮)の時以外で内藤が怒るのは初めて見たな。
モララーも若干物怖じしているようで、片目を閉じて苦虫を噛み潰したような顔をしている。

30 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 23:02:40.34 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「内藤くぅん……お前、何から何まで履き違えてんぞ?」

呆れたように、或いは諭すようにモララーは言う。

( ・∀・)「俺が搾取する側? 美味い汁を啜ってる? はっ、ちゃんちゃらおかしいぜ!」

(# ω^)「…………」

内藤は無言のまま、アスファルトの地面を左手で殴りつける。
腹の底に響く重低音と共に、硬いアスファルトがひび割れた。

( -∀・)「おーこわっ、だが言わせて貰うぜ……」

( ・∀・)「俺が何の苦労もなく充実した生活を送ってるってのは、あくまでお前の主観だろうが」

(# ω^)「…………」

(;'A`)「おっ……おい…」

内藤の左手が置かれた地面が更に鈍い音を立てて陥没してゆく。
コイツは不味い、非常に不味い。
これ以上煽られたら内藤が暴走してしまいそうだ。

31 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 23:04:05.92 ID:ds51EKSRO
( ・∀・)「お前が俺を一方的に搾取する側、つまり俺を悪だと認識したのは良いだろうよ。人それぞれ価値観や思考ってのは違う。一つの物事を百人が見てもそれに対する意見ってのは往々にしてバラけちまうモンだ」

( ・∀・)「それに対して憤りを感じて違う意見のヤツらと争う。これも俺は肯定するぜ? ニュースなんかでやってる戦争なんかも突き詰めて言えば価値観の相違ってヤツだもんなぁ……」

(# ω^)「何が言いたいんだお」

ニヤついた表情で延々と語るモララーに痺れを切らしたのか、内藤はもう一度地面を叩き付け、重々しく言った。

( ・∀・)「長ったらしいのは嫌いかい? じゃあ結論から言ってやるよ。てめーのやってる事は間違いだ」

33 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 23:05:41.56 ID:ds51EKSRO
モララーが言い放った一言で辺りの空気が一瞬で重苦しいものになった。
その重い空気の発信源となっているのは言うまでもなく内藤だ。

( ・∀・)「安っぽい威嚇なんかして現実逃避してんじゃねーぞ。お前が望む世界を望んでいるヤツなんざこの世には一握りしかいねぇ。そんな世界に変えようとするって事は大多数の人間を選択肢も与えずに苦しめるのと同義なんだよ!」

重たい空気を払拭するかの如く、或いは歪んでしまった俺と内藤を正すかの如く、モララーは光の言葉を俺達に投げ掛ける。

('A`)「…………」

(# ω^)「…………」

内藤はどうかは知らないが、俺はモララーの説教を聞いて反論する言葉を見つけられなかった。
それは何故か?

そんな事は言うまでもないだろう。
全面的にモララーが正しい。
少なくとも俺はそう感じたからだ。

34 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 23:06:53.63 ID:ds51EKSRO
どいつもコイツも幻想みたいな正義を振り翳しやがる。
確かにお前らのようなヤツの意見が罷り通るならさぞ世の中は平和になるだろうよ。
だが現実はそうじゃない。

追い詰められ、淘汰され続けて、逃げ場を失った内藤は力を手にし、自分が望む世界を作ろうとする。
俺はその内藤に命を握られ、寿命の延命の為にその悪行に荷担した。

あぁ悪行だ。

全くもって、褒められた行為じゃないだろうよ。

だが俺達が歪んでしまった原因は何だ?

元を辿ればこの世界がこの形で存在している事じゃないだろうか。

('A`)(幼稚な責任転換。だがこれを悪と見なす人間がいても止める権利は誰にも無い)

('A`)「そうだろ? 内藤」

( ω^)「…………」

35 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/18(日) 23:08:05.48 ID:ds51EKSRO
もう何も言う事は無い。
俺は静かに臨戦体勢に入る。
内藤も考えている事は同じなのだろう。
身の丈に合わない左腕を静かに握りしめている。

( ・∀・)「おっと……まだ質問は終わってねぇぞ」

手に持った煙草を指で弾き、おどけた調子でモララーは言う。

( ω^)「聞くだけなら聞いてやるお」

( ・∀・)「ところがどっこい、今度の質問はお前宛てじゃねーんだ」

俺はモララーの視線が自分に向いている事に気付いた。

('A`)「何だ?」

努めて冷静に受け答える。
対するモララーは俺のその努力を知ってか知らずか、いたって軽い調子でとんでもない事を言ってのけた。

( ・∀・)「これは質問っつーか頼みだ」

( ・∀・)「ドクオ。お前、俺の仲間にならねーか?」

(;'A`)「…………」

悩みの種は決して尽きない。
俺の前世はさぞ悪名高い人間だったんだろうな。


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