( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

7 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:51:31.16 ID:M6USdiaWO


第十六話「相棒」



9 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:52:45.20 ID:M6USdiaWO
(;'A`)「はぁっ!?」

思わず素頓狂な声を上げてしまう。
だってそうだろう。
少なくとも俺と内藤は怒りと覚悟という、闘う為のモチベーションは充実している状態だった。
その出鼻を思わぬ形で挫くような真似をしやがって……
それも言うに事欠いて仲間になれだと?

(;'A`)「ふざけてんのか?」

( ・∀・)「いたって真剣。真面目な話さ」

その言葉とは裏腹に、モララーは調子外れ鼻歌を口ずさんでいる。
嘆息―。

俺は大きな溜め息をつき、すっかり削がれてしまったモチベーションを立て直す為、やや威圧的に問いただした。

('A`)「それが俺にとってどんな利益をもたらしてくれるんだ?」

( ・∀・)「さぁな」

オーケー、聖戦(ジハード)の始まりだ。

10 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:53:50.10 ID:M6USdiaWO
両足に力を込め、直ぐにでもモララーの懐に飛び込める体勢を整える。

( ・∀・)「だが……」

心なしか身体が軽く感じる。
これは神経を逆撫でしてくれたモララーに感謝しないといけないな。

( ・∀・)「救ってやれる」

('A`)「……っ!」

不意に足が止まる。
再び闘う気力が削がれる、いや、消されてゆく。
それほどまでにモララーが放った一言は深みと重みを持っていた。

('A`)「どういう事だよ……」

( ・∀・)「そのまんまの意味さ。お前達の関係、今の俺ならおおよそ予想出来るからな」

( ・∀・)「辛いだろ? 苦しいだろ? 命を握られてる感覚なんざ俺には理解出来ねぇが……そんな感覚味わわないに越したことはない」

内藤を諭した時の様に長々と延々と、焦らすようにモララーは語る。

12 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:55:10.74 ID:M6USdiaWO
('A`)「要点だけを述べろ。簡潔にな」

その言葉を聞いていると猜疑心、動揺が心を冒してゆくような気がして、俺は揺れかけた心の芯を保つために結論を促す。

( -∀・)「お前も回りくどいのは嫌いなクチかよ。要点だけの会話には趣が無いぜぇ?」

それでもモララーはゆったりとした語り口調を止めない。
内藤に対する猜疑心、モララーの言葉による動揺。
意識する間もなく、それらは膨れ上がってゆく。
これもモララーの策だというなら、俺はこいつにはどう足掻いても勝てないだろうな。

( ・∀・)「まぁいいや。そんなに結論を急ぐんなら教えてやるよ。お前が俺の側につくんなら、お前の命を俺の命と同等に扱ってやる」

( ・∀・)「つまり、仲間になったお前を何に代えてでも守り抜いてやる」

14 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:56:42.91 ID:M6USdiaWO
('A`)「…………」

この瞬間まで想像した事もなかった無償の救い。
アモンの力を宿したモララーの力を以て保証される命。

そんな破格の提案を前にして、俺はイエスともノーとも言えなかった。
それは何故か?
知るかよそんな事。
この心の中の蟠りを払拭するには俺の精神は幼な過ぎるようだ。

(;-A-)(どうすりゃいい……?)

ちらりと内藤の方に目をやるが、肝心の内藤は眉一つ動かさず、憮然とした態度を保ったままだ。

( ・∀・)「内藤よぉ……だんまり決め込んでるとこ悪いけど、これはてめーの問題でもあるんじゃねぇの?」

確かにその通りだが今はそれどころじゃない。
思考する為の情報、選択する為の覚悟を集める時間と猶予を与えて欲しいもんだ。

15 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:57:55.00 ID:M6USdiaWO
( ・∀・)「神託の火」

('A`)「あ?」

( ω^)「っ……」

変わらない平坦な調子で放ったモララーの一言。
その言葉を受けて、内藤の表情が一瞬だけ動いたのを俺は見逃さなかった。

( ・∀・)「それがドクオにどんな影響を与えるのか分かってんのか?」

( ω^)「お前には関係無い事だお」

( ・∀・)「いーや、大有りだ。俺はこの世界をわりと気に入ってるんでね。この力を使ってこの世界の頂点に立つ! お前の好きにはさせねぇさ」

( ・∀・)「新世界を征く適応者、ドクオは絶対お前にゃ渡さねぇぞ」

何だよこれ……
俺の知らないうちにこんなブッ飛んだ話になってたのか?
新世界を征く適応者? 知るかよそんなモン。

17 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/24(土) 23:59:19.77 ID:M6USdiaWO
俺は普通の、強いて言えば影の薄い何処にでもいるような高校生だ。
親父が実は魔族の王だとか、母ちゃんが実は戦乱の世を駆る戦乙女とか……
そんな夢見がちな中学生の、妄想の中の主人公のようなステータスは俺には無いはずだ。
断言出来る。
俺の両親に当たる一組の男女の平凡な愛の営みによって生まれてきた平凡な人間。

それが俺、だ。

その平凡な人間がどうしてこんな学園異能バトルの渦中に俺が居る理由に、俺自身のステータスは一切関係無い。

ただ運が悪かっただけ。

そう思ってきた、そう自負してきた。

(;-A-)(神託の火、適応者、世界変革、アモン、ベルゼブブ、新世界……)

目まぐるしく頭の中を動き回る平凡な日常とはかけ離れた単語達。

(;-A-)「…………」

なんだこれ?


19 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:00:41.23 ID:M6USdiaWO
( ・∀・)「ドクオ、お前は俺につくべきだ。俺程じゃねぇが、出来の良いその脳味噌で考えればそれくらい分かるだろ?」

(;'A`)「ない……とう」

モララーの言う事は全て真実なのかもしれない。
このまま俺が内藤の思うままに行動していれば、確実に世界は狂ってしまう。
ベルゼブブが俺に告げた内藤の目論みと、今俺が知った事を照らし合わせてもそれはそれで辻褄が合う。
だが……

(;'A`)「何で……お前は黙ってんだよ……」

( ω^)「…………」

(;'A`)「なんでだよ!!」

お前は全部分かってたのか?
お前は俺に言ったよな。
君は天才だ、と。
あの言葉は……そういう意味だったのか?

荷が重過ぎる……

キーパーソンなんて願い下げだ。

21 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:02:04.49 ID:og9MsFVEO
( ω^)「ドクオ」

胸の奥から熱い何かが込み上げてくる。
理性という枷を投げ捨てて、感情が暴走しそうになったその時、内藤の声によってそれは防がれた。

( ω^)「モララーが言ってる事は本当だお。君を生かすと言ってるのも……恐らく」

('A`)「え……?」

( ω^)「だから君があちら側につく事を、僕は止めはしないお。その時は君もろともモララーを殺す」

( ω^)「君自身で決めるんだお」

その言葉を最後まで聞いた直後、俺の身体は宙を舞った。

('A`)「へっ?」

一拍遅れて自分が置かれた状況を悟った。
俺は投げ飛ばされたのだ。
内藤の左手に掴まれ、ハンドボールでも投げるかの如く。

23 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:05:41.61 ID:og9MsFVEO
(;'A`)「ええぇぇぇえっ!?」

気付いた時にはもう遅い。
後ろを見ると窓ガラスが目前に迫っていた。

(;'A`)(ここ、三階だぞ?)

一生の内で味わう事は無いであろう痛みと衝撃と共に、俺の身体は窓ガラスをぶち破り、その先の教室の戸にぶつかった。

(; A )「がはっ……!」

堪らずその場をのたうち回る。
それでも痛みは消える事なく身体中で暴れまくる。

(; A )「骨は……折れてない……か」

焼かれたわけでもないのに身体中が熱を持って悲鳴を上げている。
こんな笑えねー冗談があるか?
午前中はモララーに滅多打ちにされ、大した間も置かずにモナーからお説教を頂き……
挙句の果てにはこれかよ。
全身打撲ってレベルじゃねーぞこれ。
身体の至るところにガラスが刺さってやがる。

(# A )「まるでゾンビじゃねーか!! 許さねぇぞ蝿野郎ぉぉぉっ!!!」

25 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:06:48.43 ID:og9MsFVEO

――
―――

校舎の三階、つまり僕がドクオを投げ飛ばした辺りから罵声が聞こえてきた。
少しやり過ぎてしまったかもしれないな。
死なない程度に加減はしたつもりなのだけれど、どうにも彼は軽過ぎる。

( ・∀・)「はっはーん。今直ぐ高校野球を始める事を薦めるね。その強肩なら即ドラフト一位だ」

ぼんやりと声がした方を眺めていると、胸糞悪くなるような猫撫で声が聞こえた。

( ω^)「この腕でかお? お茶の間のお父さん達が卒倒する事間違いなしだお」

意地を張っておどけた冗談で返す辺り、やっぱり僕もまだ人間らしいところがあるんだな、なんて下らない事を考えるのだけど。

( ω^)「ちっとも面白くねーお」

僕の怒りメーターは爆発寸前。
今なら比喩でもなく、へそで茶を沸かせそうだ。

27 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:07:59.43 ID:og9MsFVEO
( ・∀・)「まぁ良い判断だと思うぜ。一旦アイツを隔離して考える時間を与える。クラスのゴミクズにしては考えた方なんじゃねーの?」

そう言うモララーの腕は赤い炎を纏っている。

( ω^)「まぁ今のアイツは邪魔なだけだお。ちょいとばかし頭を冷やしてもらうお」

それに応え、僕も左腕をモララーに向かって突き出す。

突撃、放出、何でも来いだ。
それを喰らう為の力を、僕は持っているのだから。

( ・∀・)「そぅら!!」

モララーが腕を払うと同時に、纏っていた炎が僕目掛けて襲い来る。
俺は学年一位だの、僕をクラスのゴミクズだのと罵っているわりには学習しないやつだ。
そんな猿でも閃くような単純な攻撃なんか……

( ω^)「僕には通用しないお!!」

29 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:09:43.15 ID:og9MsFVEO
迫り来る炎は全て握り潰し、喰らう。
左腕から炎に宿った悪魔の力が全身に伝った。

( ω^)「どんな上等な料理でも同じ味だと飽きてくるお。ちょっとは頭使ったらどうだお?」

( ・∀・)「そりゃすまなかったな」

僕の挑発にいきり立つ事もなく、モララーはやや明るめの茶髪を弄りながら、空いているもう片方の手の中指を立てて僕に向けている。
この白痴が……まだ意味の無い挑発を続ける気だろうか。
これではしたり顔で挑発合戦に区切りをつけたつもりだった僕が恥ずかしいじゃないか。

( ・∀・)「ヒャッハーッ!」

不愉快な笑いと共に中指を立てるモララー。
だがその行為に疑問を抱くなんて余裕は無い。

(; ω^)「っ!!」

炎の槍が三つ、後ろから僕の身体を貫いた。

31 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:11:18.10 ID:og9MsFVEO
(; ω^)「おっかねーお……」

どうやら僕の反応速度の方が速かったようで貫かれた箇所は蝿となって、燃えては再生する、を繰り返している。
オッケーオッケー、痛くない。

( ω^)「よっ……と」

どうせ痛みも無いので強引に槍を引っこ抜く。
どういう原理でそうなってるのかは知らないけれど、何故か握る手に質感が伝わってくる悪魔の炎を、悪魔の左手で握り潰した。

( ・∀・)「お前はどこ突っ突けば死ぬんだ? 保健室の時みたいに大人しく殴られてりゃ良いものを……」

( ω^)「僕はその気になれば不死身になれるんだお。お前こそさっさと諦める事をおススメするお」

勿論僕が不死身になれるなんて事は今の段階では有り得ない。
だけどそんな事教えてやるもんか。
情報提供はもうお終いさ。

33 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:12:23.45 ID:og9MsFVEO
( ・∀・)「うっさんくせー話だなそりゃ」

( ω^)「事実だお。そんな事言われてもこれ以外に言葉が見つからないんだお」

適当にブラフをかましておけば諦めてくれる。
そこまでは思わないけれど、少しでもモララーの心を揺さぶる事が出来ればそれで万々歳だ。

( ・∀・)「ま、アモンに聞けば一発で分かる事なんだがな」

さいですか。

( ω^)「その前に死んどけお」

蝿達が僕の意志に従い、無数の槍となる。
簡易ブリューナクの大量生産、言わば針千本ってやつだ。
右手をモララーに向けてやる。
それだけで千本の槍はモララーに目標を定める。

( ω^)「刺突七十パーセント、爆発三十パーセント。死角の無いこの攻撃をどう防ぐんだお?」

モララーを取り囲む槍は一斉を放つ。

35 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:14:13.82 ID:og9MsFVEO
モララーを取り囲む槍を一斉に放つ

で補完お願いします

37 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:15:33.82 ID:og9MsFVEO
( ・∀・)「お前も芸が無いヤツだなぁっ!!」

モララーが地面を強く踏みつけた。
遅れてモララーの周囲からアスファルトを突破って炎が吹き上がる。
まぁここまでは想定の範囲内。
コイツがこの程度で仕留められる敵なら、今頃昼ご飯を食べながら相手にしているさ。

( ω^)「爆ぜろ」

さっきまで有って今は無いもの。
それは僕とモララーの間にある長い距離だ。
今の僕達二人の間にある距離は大股で十歩分ぐらい。
炎を盾にして自分の視界を塞いでしまうなんて愚の骨頂さ。

( ω^)「おっ!」

左腕を地面にあてがい、力を込めた。
その瞬間、人の力を越えたバネ運動が僕の身体をモララーの元へと向かわせる。

39 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:16:56.80 ID:og9MsFVEO
立ち塞がる炎の壁に蝿の槍がぶつかり、小規模の爆発が巻き起こる。
そしてその爆発に触れた槍が爆発してゆき、粉塵が巻き起こった。

この状況なら僕とモララーとも互いに視覚は機能しない。
ならば僕はこの左腕の気の向くままに、暴れ狂ってやるだけだ。

( ω゚)「ふぉぉぉぉっ!!」

炎の壁を打ち破り、僕の左腕はモララーを捉えた。

(; -∀・)「がはっ……!」

モララーは咄嗟に右手でガードしたのだろう。
堅い骨を粉々に打ち砕く心地良い感触が伝わってきた。

モララーの身体は宙を舞い。
力無く落ちてゆく。
粉塵の隙間からそれを見ていると、突然全身を焼く熱と痛みが僕を襲った。

(; ω゚)「え……?」

左手で喰い破った炎の残滓が、蛇のように僕の身体を舐めていた。

41 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:18:15.36 ID:og9MsFVEO
(; ω゚)「あっちぃ! あっちぃおっ!!」

堪らず地面を転げ回る。
その途中でふと冷静になった頭で、燃やされた箇所を蝿に変えて何とか事なきを得た。

(; ω゚)「おっ……おっ……」

あのまま冷静な思考を手放していたらと思うとゾッとする。
魂をも焼き尽くすあの炎に包まれ、骨の髄まで焦がされてゆく自分の姿を想像すると、それだけで心臓の鼓動が三割増速くなったような気がした。

(; -∀・)「いってーなおい……ははっ…ははは」

モララーが笑いながら立ち上がる。
僕が与えたダメージはかなり大きかったようで、右肩から下を力無く垂れ下げ、ふらふらと僕の元へと歩み寄って来る。

( ・∀・)「ぎゃっはははははははっ!! ざまぁねぇな蝿の王!!」

お前が言えたことか。

43 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:19:50.53 ID:og9MsFVEO
( ・∀・)「痛いのが怖いならとっとと糞の山にでも引きこもってたらどうでちゅかぁ?」

脳味噌をどのように弄ればこれほど人の神経を逆撫でする言葉をほいほいと吐けるのだろうか。
ましてや自分の片腕が完全に機能停止しているにも関わらず、だ。
まぁこれに関しては僕も人の事を言えた身ではないのだけれど。
不意に黒塗りの刃物を擬人化したような、僕の『相棒』の顔が頭を過ぎる。
今頃彼も四苦八苦している事だろう。
僕もぼんやりしてられないな。

( ω^)「よっこらせっ……と」

彼を『相棒』などと称した自分の気持ちに対してクスッと笑い、僕は地に着いた膝を上げた。

(# ・∀・)「…………」

モララーがその一連の動作をどんな気持ちで見ていたのかは僕には分からないけれど、決して快く思っていない事は容易く想像出来る。
それほどまでに僕を見るモララーの顔は醜悪に歪んでいた。

46 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:21:07.68 ID:og9MsFVEO
(# ・∀・)「なーめてんのかぁ? この俺を前にして、何呑気に笑ってんだよ」

モララーは既に手の届く距離まで近寄っていて、冷ややかな目で僕を見下ろしている。
この長身イケメンめ、こんな些細なポイントですら僕をコケにする気か。

( ω^)「恐るるに足らない敵を前にして余裕こいて何が悪いんだお?」

勿論本心ではない。
モララーは決して弱い敵ではないだろう。
恐らく世界変革を行う過程で闘う適応者の中でも、最強の力を持つ男だ。
悪魔の力、選ばれし者の力を持った僕の感性と本能がそう告げている。

(# ・∀・)「お前のその鬱陶しい力の弱点は分かってんだよぉっ!!」

背中に刺すような熱さを感じ、僕は半身だけ振り返って左手を翳す。
赤い炎はたちまち喰われてゆき、跡形もなく消え去った。

48 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:22:36.19 ID:og9MsFVEO
これと同じ感覚を僕は味わったことがある。
考える間もなく、僕は本能的に左手を翳した。

( ・∀・)「使う度に身体にかかる負荷、自分の反応速度を越えられないその遅さ。それがお前の鉄壁の穴だ!!」

狼を模した赤い炎が駆けて来る。
それは一秒と数える間もなく、僕の左手とぶつかり合った。

(; ω^)「つっ……!」

左腕に宿る異形の力のお陰で炎の熱さは殆ど感じられなかったが、それでもその左腕を介して伝わってくる衝撃は殺せない。

( ・∀・)「ひゃっはははははっ!! 大層な力を持っててもゴミクズは何処まで行ってもゴミクズってこった!」

(; ω )「っ!!」

モララーの言葉に身体、心というよりも僕という存在が反応した気がした。

50 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:23:50.22 ID:og9MsFVEO
( ・∀・)「はっはーん。アモンに聞いた時にゃ半信半疑だったがこりゃ当たり臭いな」

薄ら笑いを浮かべるモララーの顔面に左の拳を叩き込んでやる。
だがその動作は身体的にトレースされる事なく、続け様に真上から放たれた炎の槍によって僕の脳内にのみ留められた。

( ω^)「っ!!」

バックステップで垂直に落下する槍を躱す。
その間にモララーは自分の傍らに槍を形成し、僕目掛けて放ってきた。
右、左、右、半身を捩らせて放たれたそれを全て躱す。

( ・∀・)「穴だらけの力だなぁおい! 不死身だぁ? 何のジョークだよそりゃ! 溜め息も出ねーぜ!!」

辺りの空気が熱で捩じ曲げられるような感覚が僕を襲う。
モララーは左腕を翳し、不敵な笑みを浮かべている。

52 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:26:10.44 ID:og9MsFVEO
度々すみません
>>48と>>50を順番逆にして補完してください

53 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:28:00.05 ID:og9MsFVEO
喉が焼けるように熱い。
胸の奥で何かがきつく絞まるような感覚。
それがモララーに圧され、罵られている現状対する悔しさなのだと気付くのに数秒と掛からなかった。

( ω )「…………」

無言で左腕に力を込める。
ああ、今なら天上の神々を相手取っても負ける気がしないな。

(; ・∀・)「なっ……!?」

炎の狼はゆっくりと僕の腕に飲み込まれていった。
だがまだだ。
僕を罵った罰を与えていない。
取り敢えずあの整った男前の面に一発かましてやりたいな。

( ω^)「あんまり」

ブリューナクを形成し、モララー目掛けて飛ばしてやる。
それと同時に小細工無しに僕は駆け抜けた。

( ω^)「調子に……」

ブリューナクはあっさり地面から吹き出る炎によって焼き尽くされた。
だけどモララー。
コイツはどうやって防ぐんだい?

55 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:29:15.94 ID:og9MsFVEO
駆け抜けている中で、モララーの顔が青褪めてゆくのが見えた。
半身を引き、使い物にならない右手を庇うように、モララーの左手は僕の悪魔の腕に備えている。
潔い判断、攻守のめりはり、自分の身体のダメージを把握する力。
そのどれもが天才の域に達しているモララーが取った構えは守りの構え。
ある程度のダメージは諦め、致命傷だけを避けるモララーのその構えは素人目から見ても隙が無かった。

でも違う、お前は分かってない。

こういう事は理屈じゃないんだ。
それを僕は怒ったり驚いたり(主に怒ってばかりだが)ころころ表情を変える彼から学んだんだ。

( ω^)「乗るんじゃねーお!!」

何の力も宿っていない僕の右手が、モララーの頬を捉えた。

56 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:30:30.07 ID:og9MsFVEO

――
―――

(;'A`)「くっそ……!」

此所に投げ出されて十数分。
俺は自分が置かれている状況の危うさに気付き、苛立っていた。

身体の痛みはいくらか引いたし、動く分には何の支障も無い。
このまま真直ぐモララーと内藤の元へと戻る事を考えたが、どうも神様は俺の事が嫌いらしい。

(;'A`)(こっちも駄目か……)

俺があの二人の元へ戻る為には階段を下って一階から外に出る必要がある。
だが此所から下の階に繋がる階段が全て、踊り狂う炎によって塞がれているのだ。
潔く飛び降りるなんて考える気にもなれないね。
人間は追い詰められると脳の働きを抑える枷が外れて、異常な力を発揮すると聞く。
だが俺にはその力を発揮する為に腹を括る事も出来ないチキンなのだ。

59 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:32:06.36 ID:og9MsFVEO
だったら消火器を使えば良い。
大多数の人がそう思うだろうが、それも失敗に終わった。
整備不良が見て取れる消火器のピンを勢いよく抜いた瞬間、ノズルがへし折れて終了だ。
あまりにも腹立たしかったので勢いよく、燃え盛る炎の中にその屑鉄を蹴り込んでやったが破裂音と共に辺りに撒き散らされた粉が僅かに火を消しただけだ。
焼け石に水、何の解決にもなりはしない。

(;'A`)「どうしたもんかね……」

出口を炎で塞がれているにも関わらず、俺はこの現状に対してパニックを起こすでもなく、悠長に愚痴をこぼすまでに落ち着いていた。
これも今まで目茶苦茶な非日常の渦中にいたお陰だろうか。
まぁそれも大して役に立つような事ではないがな。

60 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:33:15.69 ID:og9MsFVEO
どちらにせよこのまま手ぶらで脱出したところで意味が無いだろう。
適応者だか何だか知らないが、流石兄弟やモララーは都合良くその力を発現させているにも関わらず、俺はここに来て一度も自分の力を垣間見た事が無い。
ベルゼブブ曰く、俺の力が働いたお陰で内藤は存在を喰われずに済んだようだが、そうは言われてもいまいち実感が湧かない。
つまり俺は自分で自分を考察した限りでは、何の力も持たない凡人だ。
その凡人が何の武器も無しに内藤とモララーが闘っているあの場に戻ったところで、運が良くても俺だけ蚊帳の外になり、運が悪ければ死んでしまうだけだ。

('A`)(幸い此所は学校だ。探せば殺傷能力のあるモノぐらい見つかるだろ……)

61 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:34:34.70 ID:og9MsFVEO
俺が今やるべき事は三つ。

一つ目、自己防衛の為の武器を見つける事。
二つ目、この校舎から出来るだけ傷を負わずに脱出する方法を考える。
そして……

(;-A-)「内藤とモララー、どっちに味方すれば良いのか考えないとな……」

今まで何度も心を揺さぶられたが、今日ほど動揺した日は無いだろう。
内藤とモララー。
俺の目から見るとその力はほぼ互角。
自惚れるつもりは全く無いが、俺がどちら側につくかで勝敗が決まる。
そんな気がした。

('A`)(ここから行けるのは調理実習室と音楽室ぐらいか……)

先ずは武力を手に入れる事が先決だ。
幸い調理実習室は刃物のオンパレード、武器を手に入れるにはうってつけの場所だからな。

63 名前: ◆4KLmqjbvG6 投稿日:2010/04/25(日) 00:36:13.46 ID:og9MsFVEO
まだ少し痛む身体を労りながらゆっくりと立ち上がる。
地面につけた手の平にチクリと硝子が刺さって、この状況で自分がまだ生きているという実感を与えてくれた。

('A`)「ん……?」

歩きだそうとしたその時。
校舎を焼き尽くす炎に変化が生じている事に気付いた。

('A`)(これは……?)

気のせいと言われればそれまでの、ほんの僅かな変化。
俺達がモララーと邂逅した時よりも、炎の色は淡くなっていた。

('A`)(どういう事だ……?)

血のように赤かった炎は、自然の火のような淡いオレンジ色になっている。
これ発見が俺にとって良いものになるか悪いものになるかは分からないが、意識の隅に留めておくに超したことは無いだろう。

('A`)「…………」

胸の奥で何かがざわめいた気がした。


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