( ^ω^)蝿の王のようです('A`)

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:05:30.42 ID:PBrn21LSO


第三話「正義の旗」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:08:05.97 ID:PBrn21LSO
「ターゲットの名前は津出 麗子。僕達が通う高校の二年八組の生徒だお。時間は今日から三日以内、条件は……喜びの中で死なせる事」

この言葉を聞いてから俺は自分の思考回路を極限まで展開し、徹夜で殺す方法を考えた。
という訳でもなく、俺は電話を切った後も普段と変わらない時間をダラダラと過ごしていた。

('A`)「まぁ標的と接触してみない事には何も分からんだろう」

我ながら緊張感の無い言葉だ。
こうしていると、自分はベルゼブブなんかとは別次元のところで、平穏な学校生活を送っているような錯覚に陥ってしまう。

('A`)「うーん…行くべきか、行かぬべきか」

俺が何を悩んでいるかは、今俺がいる場所を見ればすぐ分かるだろう。
二年八組の教室前。
そう、俺は今告白する相手を呼び出す前の健全な男子高校生のようにある二択の選択に悩まされている。

津出 麗子を呼び出すべきか
おとなしく回れ右をして自分の教室に戻るか

本来は自分の命が危機に晒されているのだから迷うような事があるか、と思うだろう。
だが、俺はこんな状況に陥っても自分のこれからの学校生活の安定を考えてしまうのだ。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:09:47.86 ID:PBrn21LSO
この状況で考える学校生活の安定とは何か。
そんなものは言うまでもないだろう。
普段は教室の隅に飾ってある花瓶よりも存在感が無い俺が、昼休みに違うクラスの女子生徒を呼び出したとなればその情報はたちまち学年中に広がるだろう。

俺は出来るだけ目立たないように生きていたいんだ。
だから魔王の力を持ったいじめられっ子を助けるような事もしなければ、友人(仮)と過剰な馴れ合いをすることもない。
保身? 卑怯者?
知ったことかそんなもん。

だがしかし……

('A`)「行くしかねぇよなぁ…」

そうと決まれば早いもんだ。
俺は一回だけ大きな深呼吸をして、教室の扉を開けた。

時間が昼休みなだけあって、他クラスの俺が教室に入ってもそこまで物珍しそうな視線を当てられる事は無かった。
こんな事で悩んでいたのが馬鹿みたいだ。
俺は一番近くの席に座っていた金髪ロールの女子生徒に話し掛けた。

('A`)「あの…津出さん、津出 麗子さんはいるかな?」

金髪ロールの女子生徒は俺の言葉を聞くなり首を傾げた。
ほう、良く見るとかなりの美少女じゃないか。

ξ゚听)ξ「アタシだけど…何か用事?」

おぅふ。若干心の準備が足りなかったみたいだ。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:12:12.56 ID:PBrn21LSO
('A`)「えぇっと…ちょっと此所じゃ話しにくい事なんだ。一緒に来て貰えるかな?」

しまった。
俺は直ぐさま今の発言を撤回したくなった。
これじゃあ本当に俺が今から告白するみたいじゃないか。
見ると周りにいた数人の生徒が奇異の目でこっちを見ている。

ξ゚听)ξ「……良いわよ」

お前も全て分かってます的な顔すんじゃねぇ。

それからの道のりははっきり言って苦痛でしかなかった。
ランク付けするなら間違いなく特Aランクの美少女と存在感皆無な俺が肩を並べて歩いている。
それだけで他のヤツからは先程教室で浴びた奇異の視線を浴びる事になるのだ。
途中で内藤にすれ違った時のアイツの表情ときたら…

( ^ω^)「…………ww」

あんなに愉快そうにニヤけた面の内藤は見た事が無い。
今思い出しただけでも殺意が沸くね。

ξ゚听)ξ「で…話は何なの?」

だからその分かってるとでも言いたげな顔は止めろ。
さっき浴びた苦痛の視線を思い出してしまうだろうが。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:14:52.12 ID:PBrn21LSO
('A`)「多分君が思ってるような事じゃないよ」

前もって言っておこう、さすがの俺もこれ以上は耐えられそうにない。

('A`)「要件は……」

一呼吸おいて

('A`)「内藤ホライゾンについてだ」

俺の発言を聞いて何を思ったのか、津出 麗子は悲しそうに目を伏せた。

('A`)「…………」

ξ゚听)ξ「…………」

何か喋ってくれよ。
言い忘れていたがここは校舎の屋上だ。
そんな場所で男女二人が無言で見つめ合っている、なんてシチュエーションに長い時間耐えきれるほど俺の神経は図太くないんだよ。

('A`)「アイツの事で何か後ろめたい事情でもあるのかな? えーと…津出さん」

ξ゚听)ξ「ツンで良いわ。皆にもそう呼ばれてるし」

女に免疫があるわけじゃないから初対面の女の子を渾名で呼ぶのは気恥ずかしいものがあるんだがな。まぁいいさ。

ξ゚听)ξ「話が逸れちゃったわね。彼に関しては中学が一緒だったからよく知ってるわ。後ろめたい事情も……無いことも無いわ」

ほう、そいつは面白い話が聞けそうだ。
俺は性格が悪いんでね。その後ろめたい事情を先に聞かして貰うよ。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:17:17.80 ID:PBrn21LSO
('A`)「そうか…悪いんだけどその後ろめたい事情を聞かして貰っても良いかな?」

ξ゚听)ξ「悪いけど…あまり人には言いたくないの」

そういうわけにはいかないぜツンさん。
そんな面白そうな話をちらつかせておいて今さら言いませんはねーよ。

('A`)「そこを何とか…」

ξ゚听)ξ「ごめんなさい」

断固拒否か。
まぁ良い…この短いやり取りの中でお前について分かった事がある。

('A`)「内藤の為なんだ…」

ξ゚听)ξ「…っ!!」

ビンゴ。

内藤ホライゾンという単語を出しただけであそこまでバツの悪そうな顔をして…それに後ろめたい事情があると来た。
そりゃ大層な罪悪感がアイツに対してあるんだろうよ。
内藤の為。こんな薄っぺらな言葉で動揺してるのが何よりの証拠だ。

ξ゚听)ξ「そっちの事情を教えてくれる…? えぇ…と」

('A`)「鬱田、鬱田 毒男だ。好きなように呼んだら良いよ」

ξ゚听)ξ「ドクオくん…そっちの事情も聞きたいの。アタシから内藤の事を聞いてくるような事情を」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:20:41.10 ID:PBrn21LSO
悪いがこっちは事情を話すつもりなんてさらさら無いんだなこれが。
五分五分の取引ってのはお互いが対等な立場にあって初めて成立するモンなんだぜ?
よってお前は不合格だ。
俺と同じ土俵に立つにはまだ早いって事だよ。

(;'A`)「事情は…まだ話せないんだ…」

ξ゚听)ξ「それじゃあ…」

('A`)「でも……!」

俺はやや深刻そうな顔をして強く言う。
まぁ言うまでもなくこんな態度は全て真赤な嘘。
身も蓋もない薄っぺらな演技だ。

('A`)「一週間……一週間経ったら絶対に話す。何なら君の言う事を何でも聞くっていうオプションをつけたって良い」

まぁお前が一週間生き残れたらの話だがな。
魔王に寿命三日の宣告をされたんだ。
お前が俺の口から真実を聞く事はまず有り得ないだろうよ。

ξ゚听)ξ「………」

('A`)「お願いだ…!」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:24:47.12 ID:PBrn21LSO
これだけ言えば確実だ。
もうお前の頭の中にNo、なんて選択肢は残って無いだろ?

ξ゚听)ξ「分かったわ…」

ほらね。

まぁせいぜい有力な情報を提供して貰うぜ?
アンタを殺すために繋がる…そして内藤ホライゾンを理解するための情報をな。

('A`)「ありがとう。感謝してるよ」

そう言って俺は自分の口元を手で覆った。
零れる笑みを抑えきれそうにないんでね。

ξ゚听)ξ「アイツ…今もいじめられてるんでしょ?」

('A`)「うん…」

まぁアイツがその気になれば今までの痛みを百倍以上にして返せそうだがな。

ξ゚听)ξ「アイツ、中学の時もいじめられてたの」

('A`)「…………」

ξ゚听)ξ「中学の時はアタシ達三年間クラス一緒だったから…アイツがいじめられそうになった時に守ってあげられたの」

反吐が出る程御立派なことで。
世界中の人間がアンタみたいな性格だったら、きっと世界は平和になってたんだろうね。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:26:29.25 ID:PBrn21LSO
ξ゚听)ξ「でも高校に入ってからは変わったわ…」

('A`)「クラスが?」

ξ゚听)ξ「いいや…」

じゃあ何が変わったってんだ。
やっぱりアンタも心変わりしたってやつかい?

ξ゚听)ξ「変わったのは内藤よ…」

なんだって?

じゃあアイツのあの性格は生まれ持ってのものじゃないって事なのか?

('A`)「詳しく教えてくれるかな?」

ξ--)ξ「そうよ……あの時アタシがちゃんとついててあげたら…」

ξ;;)ξ「アイツは…内藤は…っ!」

津出 麗子はそのまま膝を折って屈んでいく。
何やら随分過去の事が心残りみたいだな。
だがツンさんよ。アンタがいくら悔やんだところでそれは無駄ってもんだぜ?

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:28:25.27 ID:PBrn21LSO
それから十分程経って…
この美少女はようやく落ち着いたのか、冷たいコンクリートの上で体操座りをして空を見上げている。
まだ目は真赤で若干腫れているようにも見えるが、まぁ話す分には支障は無いだろう。

('A`)「落ち着いた?」

ξ-听)ξ「ごめんなさい……もう大丈夫よ」

だったらぼんやり空なんか眺めてないでさっさと話せ。
良い加減このバカ丁寧な言葉遣いにも疲れてきたんだよ。

ξ゚听)ξ「続きを話すわ。内藤は高校に入ってもいじめの標的になったわ。主犯格は……」

('A`)「モララー」

ξ゚听)ξ「そう。よく知ってるわね」

そりゃそうさ。俺とモララーと内藤は一年、二年共に同じクラスだからな。
ついでに言うならあのしょぼくれ眉毛も一緒だが……まぁそれはどうでも良いだろう。

ξ゚听)ξ「モララーにいじめられるようになってから内藤は次第にアタシを避けるようになったわ」

俺が教室の空気と同化して学校生活を送っている間にそんなやり取りがあったんだな。
こりゃあ、いつも寝てばっかりの生活も少しは見直すべきかも分からんね。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:30:26.58 ID:PBrn21LSO
ξ゚听)ξ「内藤はモララーにいじめられだしてからアタシの事を避けるようになったわ…」

('A`)「………」

ξ゚听)ξ「最初は嫌われちゃったのかなって思ったの…でも違った! アイツはアタシに言ったの」



……

( ^ω^)「ツンは僕なんかと一緒に居ちゃダメだお! 今は辛いけどこんないじめもすぐに無くなるお。だから……ツンはちゃんとした友達と楽しい生活を送ってくれお!」

ξ゚听)ξ「いつも青アザ作ってたアイツがよ。笑っちゃうよね」

今の内藤を知ってる俺からすれば、アイツがそんな事言ってたなんて信じられないけどな。

('A`)「それでアイツから離れていった事に今後悔してる…と」

そんなに気に病む事でもないと思うのは俺だけか?
まぁ短絡思考な女子高生が考える事なんざに興味は無いけどな。
俺が知りたいのはあくまで内藤の事だ。

ξ゚听)ξ「ううん…違うの」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:33:06.90 ID:PBrn21LSO
ξ゚听)ξ「それからの内藤は……内藤じゃないの」

訳の分からん事を…
真面目な顔してそんな事を言われてもな。
津出 麗子は切れ長でくっきりと開いた両目を真直ぐ俺に向けている。

ξ゚听)ξ「何て言ったら良いのかよく分からないの…アイツの雰囲気っていうか周りの空気がどす黒くなったような……」

('A`)「…っ!」

なるほどね。恐らくそれが俺が知ってる内藤ホライゾンだ。
こりゃなかなか有力な情報を掴めたぞ。
昔からアイツを見続けていたこの女だからこそ、その変化にいち早く気付けたという事か。

ξ゚听)ξ「アタシは内藤のあの雰囲気に耐えられなかった、だから逃げた。それがアタシが唯一心残りにしてる事なの」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:35:03.14 ID:PBrn21LSO
立派なもんだ。
人の為にそこまで心を痛める事が出来るなんてな。
自分を徹底的に否定されてるみたいだ。

気持ち悪過ぎる。

('A`)「そうか……」

駄目だ。吐き気がしてきた。人間なんてここまで綺麗なもんじゃないはずだろう。
コイツは一体何なんだ。

('A`)「それだけ聞ければ充分だよ……時間を取らせて悪かったね」
俺はそれだけ言うと足早にその場を去っていく。

ξ゚听)ξ「用事があって呼んだんじゃないの!?」

後ろから声が聞こえるが知った事か。
これ以上こんな空間にいたら文字通り死にたくなるよ。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:37:47.20 ID:PBrn21LSO
(;'A`)「ぐっ…! おぇえええっ!!」

俺はトイレの個室の中で嘔吐物にまみれた口を拭う。
全く、悲惨なもんだ。
吐き気のみならず頭痛も酷い。こりゃ午後の授業は無理そうだな。

(;'A`)「だが……」

良い事を聞かせて貰ったよ。
津出 麗子の性格、過去。
お前を殺すにはこれだけあれば充分だ。
俺は意識的に下唇を噛んだ。嘔吐物特有の刺激臭が鼻を通して脳内を刺激する。

('A`)「…………よし」

脳内シュミレーション完了。
まぁ成功率は百パーセントというわけではない…が十中八九上手くいくだろう。

それに…

('A`)「内藤ホライゾン…お前の目的がぼんやりとだが見えてきたぜ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:39:28.57 ID:PBrn21LSO
俺はゆっくりと立ち上がり、洗面所へ向かってゆく。

('A`)「………ふぅ」

口を濯ぎさらっと手を洗い、鏡を見る。
野暮ったく伸びた前髪が鬱陶しい、その間から覗く両目は自分で言うのもなんだが理想のものとは思えない。
いつからこんな目になったんだろうな。
どす黒く濁った目は嘘とに塗れている。
あんなものを見せられたからだろうな、こんなに自己嫌悪に陥ったのは久し振りだ。

('A`)「帰るか…」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:42:23.05 ID:PBrn21LSO
それから俺は家に帰ってひたすら惰眠を貪った。
このまま朝まで眠っていたかったんだがそうにもいかない。
何故なら俺の頭のすぐ横でケータイがやけに耳につく電子音を放っているからな。

(-A-)「もしもし……」

「ツンと接触したのかお?」

相変わらずこっちの事情を考えないヤツだな。
まぁ明日にでも話すつもりだったから先に話しておくかな。

('A`)「あぁ…この調子なら上手くいきそうだ」

「それは頼もしい限りだお」

どうも……まぁ元々お前さえいなければこんな事しなくて済んだんだ。
褒められたって嬉しくもクソもないけどな。

('A`)「そうだ…お前に話す事がある。津出 麗子を殺す為のプランが決まった」

「おっおっおっ。是非聞かしてもらうお」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:45:12.07 ID:PBrn21LSO
………

('A`)「というわけだ」

「……喜びの中で殺す、という条件を満たすには少しギャンブルをするハメになりそうだお」

('A`)「そのリスクを軽減する為にお前には働いて貰うさ。明日お前にも津出 麗子に接触して貰う」

「接触して何をするんだお?」

('A`)「簡単な事だ…」

それから俺は内藤に事前準備の旨を伝えて、さっさと電話を切った。

('A`)「今度こそ朝まで寝よう…」

そして俺は意識を手放していった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:47:55.60 ID:PBrn21LSO
('A`)「なぁ、しょぼくれ眉毛」

(´・ω・`)「いい加減その呼び方止めてくれないか? まるで僕のアイデンティティーが眉毛だけみたいじゃないか」

おっと、違ったのか…
あれから俺はまた泥の様に眠り、いつもと同じ時間に起きて、いつもと同じ様にこの学校に来た。
時刻は十二時過ぎ。つまり昼休みだ。
今俺はこのしょぼくれ眉毛と一つの机を囲み、食事という名の身体への栄養摂取を行なっている

('A`)「お前のアイデンティティーなんてどうでも良いさ。それより聞きたい事がある」

(´・ω・`)「君が僕に質問なんて珍しいね。次の数学の小テストの範囲なら教えないよ。寝てた君が悪いんだからね」

(;'A`)「なんだそれ!? それは後で教えて貰うとして…」

(´・ω・`)「貰うとして?」

('A`)「お前は性善説を信じるか?」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:50:07.05 ID:PBrn21LSO
俺の質問を聞いてしょぼくれ眉毛はあんぐりと口を開けている。
おーい、箸からミニトマトが落ちたぞ?

(´・ω・`)「昼ご飯を食べながらするような話じゃないよねそれって」

('A`)「分かってるよ」

何か文句がありそうな顔してるな。
だが答えて貰うぜ? 昨日あんな気持ち悪いモンを見せられたんだ。
誰かの意見でも聞かないと不安でたまらないんだよ。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:53:02.20 ID:PBrn21LSO
(´・ω・`)「まず質問の答えだけど……僕は信じないね」

そいつは良かった。
お前まで人間は本来善なるものだ、なんて言い出してみろ。
俺はこの場で色んな物を撒き散らしながら卒倒する自信があるね。

(´・ω・`)「だけど性悪説も信じない」

('A`)「ほう」

(´・ω・`)「だってそうだろう? 人間本来の性質をどうこう言うなら何の付加も無い純粋な人間、つまり生まれてきて一度も善悪に関する事柄に触れた事が無い人間こそが純粋な人間という事になるよね?」

('A`)「まぁそうなるな」

(´・ω・`)「まぁ僕達の年になってそれに該当する人間はいないだろうし、生まれたばかりの赤ん坊なんかがそれに当て嵌まるんじゃないかな。で、その赤ん坊を見てそれが善だの悪だの言う事が出来るかい? 僕にはとてもじゃないけど出来ないよ」

熱が入ってきたみたいだな。
しょぼくれ眉毛は目を爛々と輝かせて俺に向けている。
興奮するのは良いが鼻息が荒いのはいただけないな。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:55:57.60 ID:PBrn21LSO
それから放課後まではひたすら爆睡。
小テスト? なにそれ食えるの?
帰りのホームルームが終わってしょぼくれに叩き起こされてようやく俺は目を覚ました。

(-A`)「よう…今何時だ?」

(´・ω・`)「死ねばいいのにね」

ですってよ。

(´・ω・`)「まだ気付いてないのかい?」

しょぼくれはそう言って両手をヒラヒラと振っている。

気付いているさ。
だからと言ってお前がそんな態度を取る必要は無いんじゃないか?
やれやれ、と言って溜め息をつきながら俺は教室の窓ガラス越しに見える人物を見据える。

ξ#゚听)ξ「…………」

こりゃまた怒り心頭な事で。
津出 麗子はガラス越しに俺達を修羅の如き眼光を輝かせながら睨み付けている。

(´・ω・`)「何やらのっぴきならない状況みたいだけど」

('A`)「ほっとけ。俺は眠いんだ、さっさと帰るぞ」

(´・ω・`)「やれやれだ。何も知らない僕まで敵視されてるみたいだけど?」

そりゃお気の毒なことで。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 11:58:32.32 ID:PBrn21LSO
ξ#゚听)ξ「内藤に何かしたらアンタ………殺すわよ」

俺達は津出 麗子の隣りを無言で通り過ぎようとしていた。
掛けられた言葉があまりにも予想通り過ぎて、俺は思わず吹き出してしまった。

('∀`)「ぷっwww」

(;´・ω・`)「ぅえっ!?」

しょぼくれ、お前さっきからビビり過ぎだよ。

ξ#゚听)ξ「何がおかしいのよ!」

('∀`)「何の事でしょうね? 身に覚えの無い事で脅されてるからおかしかっただけだよ」

ξ#゚听)ξ「なら現行犯で捕らえてやるだけよ!」

(;´・ω・`)「あわあわ…」

仕方ないなこのしょぼくれは。
俺は強引にショボンの腕を引っ張り、足早にその場を離れていった。

(´・ω・`)「さっきのは何だったんだい?」

('A`)「ただの正義感が強い女だよ」

(´・ω・`)「はぁ?」

('A`)「俺が内藤いじめの主犯格だと勘違いしてるみたいだよ。こんだけ言えば充分だろ?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:01:59.81 ID:PBrn21LSO
(´・ω・`)「何でまたよりによって君が勘違いされてるのさ?」

('A`)「それが分かれば苦労しねーよ。…って言っても俺自身結構楽しんでるんだがな」

(;´・ω・`)「こっちはとんだ災難だよ」

まぁコイツにはこれぐらいの嘘で良いだろう。
あまり嘘で固めた発言を続けてボロが出たりしたら目も当てられないしな。

('A`)「そこまでいうならお詫びにジュースでも奢ってやろうか?」

(´・ω・`)「遠慮しておくよ。昔君に五百円借りて、利子つきで五千円払わされた事忘れてないんだからね。何があるか分かったもんじゃない」

その節はどうも。
しかしそこまでされて俺とつるみたがる理由が分からないな。
まぁどうでも良い事だが。

(´・ω・`)「じゃあまた明日」

('A`)「あいよ」

しょぼくれと別れて、俺は真直ぐ家に向かう。
何やら鼻につく匂いがするな。
まぁ正体は分かってるんだがな。
居るんだろう? 内藤ホライゾンよ。

( ゚ω゚)「ふひっ、ふひひひっ」

('A`)「…………」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:03:58.72 ID:PBrn21LSO
('A`)「よう……決行は明日だからな」

( ゚ω゚)「ふひひひっ! ふひひっふひっふひっ!」

ツンさんよ。アンタ今のコイツを見て、俺にさっきと同じ事が言えるか?

俺は無理だね。

津出 麗子との会話でもう一つ分かった事がある。
それはベルゼブブの能力が後天的な物で、とても人間如きがコントロール出来る代物じゃないって事だ。
それなら津出 麗子が気付いた内藤の急変にも辻褄が合う。

まぁどちらにしても…

コイツはもう人間を辞めちまったんだ。
アンタの下らない正義感でどうこう出来る問題じゃないんだよ。

内藤の足元はドロドロに溶けてしまっている。
言うまでもなく例の腐敗の力だ。
本来腐らないはずのアスファルトはもう原型を留めておらず、辺りに強烈な腐乱臭を撒き散らしている。

('A`)「嬉しいか? 内藤よ」

( ゚ω゚)「ふひっ! うんおっうんおっ」

内藤は千切れんばかりに首を縦に振る。
こりゃもうただの獣だな、魔王モード(仮)もクソもねぇよ。
恐怖心なんてものは当然の如く皆無だ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:06:48.00 ID:PBrn21LSO
('A`)「少し落ち着け」

( ゚ω゚)「ふひっ! おちつくっ! ふひっふひっ!」

駄目だこりゃ。
何か落ち着かせられるような言葉は…………あったぞ。

('A`)「お前がそんなんじゃ成功するもんも成功しないぞ?」

(; ゚ω゚)「おっ!?」

あからさまに動揺しやがって。
まぁ良いさ、これでようやく会話が出来る。

('A`)「落ち着いたか?」

(; ^ω^)「おっ! 少し興奮し過ぎてたお…」

('A`)「分かってるな? 明日の計画は八割方お前の動きにかかってる。ミスったって良いがそれは俺の責任じゃないからな」

( ^ω^)「任せておけお」

この調子なら大丈夫そうだな。
津出 麗子よ、お前が掲げた薄汚い正義の旗。
この俺が叩き折ってやるよ。
人間は決して見返り無しに善になんかならない。
何としてでも生き残って証明してやる

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:09:25.19 ID:PBrn21LSO
そして計画当日…

初めて人を殺すという緊張感からか、俺はいつものように授業中に眠る事が出来なかった。

('A`)「…………」

( ´∀`)「鬱田が起きてるなんて珍しいモナ。今日は何か良からぬ事が起きそうモナ」

殺されたいのか老害。
間違っても聖職者が吐くような言葉じゃないだろうが。
糞ったれ! 今はモナー先公もしょぼくれもモララーも皆鬱陶しく感じるぜ。

('A`)「…そうっすね」

まぁ此処で暴れたところで何の意味も無い。
無難な言葉を選ぶように努めるのがベターだろう。
ふと内藤の席の方に視線を移してみる。

(^ω^)「…………」
こっち見んな、いじめられっ子。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:11:59.61 ID:PBrn21LSO
昨日内藤に言った手前、俺がここで取り乱すわけにはいかない。
あまり使いたくなかったが奥の手を使うか。

('A`)「先生。気分が悪いんで保健室行って良いっすか?」

( ´∀`)「珍しいと思ったら体調が悪かったのかモナ。あまり酷いようなら早退した方が良いモナよ?」

('A`)「へーきっす。ちょっと寝てれば治ると思うんで…」

教室を出ようとして席を立つと、教室内の生徒が一斉に俺に視線を移す。
だから嫌だったんだ。
まぁいいさ。この数十秒の苦痛に耐えれば後は放課後までのんびり出来るしな。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:14:00.52 ID:PBrn21LSO
('A`)「ふぅ……」

さっきまでの苛立ちと倦怠感が入り交じった感覚が嘘みたいだ。

レースのカーテンという薄い壁一枚で閉鎖された保健室のベッドという空間。
そのど真ん中で大の字になっていると少し安らかな気持ちになった。

('A`)「うぼぉぁあああっ…」

自分でもよく分からない声を上げながら俺はゆっくりと伸びをする。
親父、母ちゃん。
アンタらの息子は高い金払って行かせてもらってる学校で日々惰眠を貪っております。
しかし反省も後悔もしていません。

緊張の糸が切れたからか、いつも以上に下らない事を考えてしまったな。
後何時間後かに俺は犯罪者になる。
まぁ百パーセント警察のお世話になることは無いので実質は少し違うかも知れないが…
そんな状況で両親の事を考えるなんてな。
罪悪感で少し胃が痛みそうだ。

('A`)「寝よう…」

全ては俺の命がかかってるんだから致し方あるまい。
これ以上あれこれ考えるのは止めだ。
計画に支障が出ても困るしな…

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 12:41:22.37 ID:PBrn21LSO
('A`)「んっ…」

どうやら本当に放課後まで寝てたらしい。
今の時間は……と

('A`)「四時四十分か…」

ブレザーのポケットからケータイを取り出して時間を確認する。
どうやら丁度良い時間に起きれたようだ。
さっさと荷物をまとめてあの場所へ行くとしよう。

………

( ^ω^)「…………」

('A`)「どれくらい待った?」

( ^ω^)「今は五時過ぎだから三十分ぐらいだお……」

今俺達がいるのは内藤がベルゼブブの力を見せた例の廃工場だ。
相変わらず気味の悪いところだ。

( ^ω^)「…………」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 20:55:08.89 ID:PBrn21LSO
('∀`)「始めようか」

そう言って俺は手を内藤に向けて翳す。
すると俺の手を中心に悍ましい蝿の大群が集まってゆき、黒い球体を作り出す。

('∀`)「爆ぜろ」

黒き球体は内藤目掛けて駆けてゆく。

蝿の王の力、圧倒的暴力。
それが本来の持ち主であるはずの内藤を破壊しようとする

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/12(木) 20:58:15.01 ID:PBrn21LSO
( ^ω^)「……っ!!」

黒い球体が被弾する前に内藤は横っ飛びでそれをさける。

('∀`)「もう一度だ!」

再び俺は手を翳す。
すると今度は先程よりも一回り大きな球体が形成される。

('∀`)「爆ぜろおぉぉおお!!!」

速さも威力も段違いの圧倒的な暴力が駆け抜ける。

それは内藤の頬を掠めてその奥の壁をぶち抜いた。

轟音が鳴り響き工場全体が揺れているような錯覚が起きる。

始まりの花火は必要だろ? 内藤よ。


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