- 1 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/20(土) 21:48:53 ID:hApPLiLI0
- Contract1−『ロンゲスト・プレゼント』
-Prologue-
機械の甲高い電子音と1人の男の荒い息が響く手術室。辺りに転がっているのは血だらけの事切れた手術着の男たち。
所々血に塗れた手術台に寄りかかりうずくまる。まるで水に潜っているようで、呼吸がうまくできない。
暗く赤みがかった視界には自分の手と血に濡れて鈍く光るメスが写る。
あの男たちを殺したのは俺なのか? ここはどこなんだ? そもそも俺は……、俺はいったいいつからここにいる?
疑問の渦に落ち行く瞬間に錯乱した頭がひどく痛み出す。まるで何かを思い出す事を拒否しているかのように。
意識が朦朧としてきて思考が纏まらない。酷く耳鳴りがする。俺は、俺は………。
すると急に目の前が明るくなる。光源を求めて顔を上げると目の前のドアが開いている。
どうやら数人の男たちが銃のような物を構えて入ってきたようだ。逆光で顔がよく見えないが、何かひどく驚いているような声が耳に入る。
「お、おい! 生存者がいたぞ!」
「……くそ! いったい何なんだこの部屋は? 血だらけじゃないか……」
「信じられない……皆コイツがやったのか?」
「おい……お前! 両手を頭の上に置いてゆっくりと立ち上がれ。良いか、怪しい行動をとったら撃ち抜くぞ」
男たちの話している内容が理解できない。目の前の男たちは敵なのか。男たちがゆっくりとこちらに近づいてくる。
混濁した頭でもこの身体には闘いが染みついているのだろう、本能的に体が臨戦態勢を取ろうとする。
手の内のメスを逆手に握り直し立ち上がろうとする。
「おい! 聞こえているのか!? くそッ! コイツ刃物を持ってやがる!」
「待てッ! まだ撃つな。何か様子が変だ」
しかしおぼつかない足元に、急に視界がぼやけ淡く黒に染まっていく。平衡感覚が希薄になり自分が立っているのかどうかも解らなくなってきた。
このままじゃ不味い、そう思って何とか身体を立て直そうとしても耳に入るのは自分の身体が地面へと倒れこむ音。
もはや身体が命令を拒否して瞼を閉じようとする。五感の内、唯一機能している耳には何か話し声が入ってくる。
「……倒r…え…!」
「H…発s……者の…意…g………救…ヘリ…y……r…」
そうして俺は、見知らぬ男の声を最後に意識を手放した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 2 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2011/08/20(土) 21:50:41 ID:hApPLiLI0
-
21世紀に突入してから数十年が経過した頃。科学技術が発達しても車は空を飛ばず、戦争も消えていないが代替エネルギー問題や食糧問題が解決しかけている。その程度の未来のお話。
物語の舞台となるのは、かつて最も成功した共産主義国家と皮肉られた極東の島国「ヤーパン」。
勤勉な国民性と大国の庇護によって発展したその国は、社会構造の変化と周辺国の台頭によって緩やかな死を迎えかけていた。
しかし数年前のある有能な独裁者の登場によって、曖昧な存在だった国防組織の国軍化、高級移民の受け入れ、国家財政の改革などが行われた。
こうしてヤーパンは「落ち行く太陽」から強大な軍隊と確固たる科学工業技術を擁する多民族国家へと生まれ変わった。
しかし大国の復権の一方、急速な革新は様々な反発を生んだ。
かつての友好国である巨大な軍事国家アメリシア共和国や周辺国との軋轢は増え、移民により治安は悪化、犯罪組織が跋扈し反政府組織が政権転覆の隙を狙う時代となってしまった。
- 3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 21:52:46 ID:hApPLiLI0
そんな先進国ヤーパンにおいても西の辺境には険しい山岳地帯が存在する。
工業国において半ば見捨てられたその過酷な自然は反政府組織の隠れ蓑でもあり、また裏社会の非合法な取引の温床となっていた。
その山の中腹にある小規模な反政府組織のキャンプを監視する二人の男女。時刻は午後を僅かに過ぎたころ。
二人は深い谷を挟んだ場所でキャンプを望む。
一方の男の手には双眼鏡、もう一方の女の手には減音器付狙撃銃のサムホールグリップが握られていた。
さんさんと太陽が照りつける中、どちらも暑苦しいギリースーツを身に纏い地に伏せながら、峡谷の風が吹き止む瞬間を待っている。
「スタンバイ。距離750m、北東の風2kn。目標は左から三番目の無線機を持った背の高い男だ。野郎が目標の反政府組織の幹部だな。今がチャンスだ、撃て」
「…………」
- 4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 21:54:18 ID:hApPLiLI0
端正な顔立ちを迷彩のフェイスペイントで汚した女は、ロクな返事もせずに軽く息を吸い込み止める。辺りの音がすっと遠くなり、スコープを覗く視界が深く鋭く研ぎ澄まされていく。
スコープの先の目標を見据えながら軽くトリガーに指をかける。グリップを握る手の平にはじんわりと汗が滲んでいる。
レティクル上に浮かぶ目標の頭へ狙いを付け、トリガーをゆっくりと引き絞る。
フェザータッチに改造されたそれが指先に小さく確かな感覚を伝えた瞬間、低く減音された発砲音とともに伏せた体に鋭い衝撃が走った。
マズルフラッシュも無く減音器から飛び出した7.62 x 51 mm NATO強装弾は明確な殺意を持って喰らい飛び、目標の頭部の三分の一ほどを吹き飛ばす。
突如として吹き飛んだ上司の頭を見た部下たちが大騒ぎしている様子をスコープ越しに確認し、ため込んだ長い長い息を吐き出す。
ボルトハンドルを引き起こし、排莢するとスコープから目を離さずに隣の顎髭男へ耳を傾ける。
(,,゚Д゚)「……よし、目標頭部への着弾を確認。殺害成功、この距離でよくやった。これで今日は久々の給料日だな!」
川 ゚ -゚)「依頼成功だな。さっさと撤収しよう」
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- 6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 21:55:02 ID:hApPLiLI0
(,,゚Д゚) GIFTのようです
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- 7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 21:57:20 ID:hApPLiLI0
- 先ほどの狙撃地点にてPDAを眺めながら衛星通信機のスイッチをいれる。 傍らにある道中の敵兵から奪った無線機からは混乱したどなり声が聞こえている。
どうやら幹部を失った反政府組織は集合して山狩りを行おうとしているようだが連携が取れていない。無理もない、今回殺ったのは連中の指揮を担っていた男だった。
幸いこちらの位置も割れてない。まとまった反撃が来る前に撤収するチャンスだ。
早くこのまとわりつく埃をシャワーで洗い流したい。この場で狙撃のチャンスを待ってすでに数時間が経過している。
時刻は昼下がりだ、日が沈む頃には帰宅したい。
(,,゚Д゚)「こちらボルゾイ。目標を達成した。これより予定通り座標地点2X-1YTへ向かう。回収準備を頼むぜ」
_
( ゚∀゚)「OK、すぐに向かう。はっ、この前みたいにケツ撃たれちゃたまんねえからな。回収地点はちゃんと掃除しねえと助けねえぞー☆」
( #゚Д゚)「うるせえごちゃごちゃ言ってないで早く来い!」
_
( ゚∀゚)「へいへーい、蒸し熱いからってイライラするなよ。ターキー、オーバー」
- 8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 21:58:36 ID:hApPLiLI0
-
ギコと呼ばれている男は無線機を切ると、周辺の狙撃の証拠を抹消する。PDAには兄者が送信してくる最新の情報が入ってきている。
急速に雨雲が近づいているらしい、事前の予測と違い雨になりそうだ。
濡れ鼠になる前に撤収しようと肩から下げた短機関銃を構え直し、どこか誇らしげな雰囲気で狙撃銃を背負った女に話しかける。
(,,゚Д゚)「よしクー、これから近くの回収地点にむかうぞ。ジョルジュのお迎えが来る前に回収地点を確保しよう」
川 ゚ -゚)「ああ。ところでさっきので今日の殺害数はお前が3、私が4だよな? 多い方がバーボンハウスで奢りにしないか?」
(,,゚Д゚)「ん、かまわんぞ。……今日はウォッカの気分だっ!」
突然振り向いたギコは瞬間的に後ろの岩陰へと弾丸を叩き込む。彼の武器は減音器付のH&K社製アサルトライフルHK416、断続的に発射された弾丸が隠れて隙を窺っていた2名の男たちを貫く。
ギコの視界はまるでスーパースローのように遅く肉体の反応は恐ろしく速い。突然の鉄の雨に男たちは何が起こったのかも理解出来ずに死んでいった。
銃を構えたまま獲物が絶命しているのを確認すると勝ち誇るように宣言する。
- 9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 21:59:55 ID:hApPLiLI0
(,,゚Д゚)「TangoDown. ……ぬはは、これで俺の勝ち点1だな」
するとおもむろにクーが背中の狙撃銃を持ち直して、向かいの小高い丘へ構える。数秒後くぐもった銃声が辺りに響き、愚かにも単独で索敵していた男の眉間を貫く。
狙撃銃を背負い直し懐から短機関銃を取り出して呟く。
川 ゚ -゚)「ふっ、残念だったな。これでイーブンだ」
ここで二人はお互いの死角をカバーしながら回収地点へと迅速に移動し始める。
谷にはすでに迎えのヘリのローター音が鳴り響き始めている。
山の天気は移り変わり安い。早くも遠くの峰には雨雲がかかり始めていた。
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- 10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:01:19 ID:hApPLiLI0
- 狙撃から数時間。場所はヤーパンの首都近郊のベッドタウン。
街の裏通りにある小汚いオフィスビルの二階奥。そこが俺たちの会社「Black.Dog」の事務所だ。
この会社は一種の人材派遣サービスをやっている。社員は7名。表向けはただの清掃会社と登録している。
が、その実態は高い軍事技術を持ったオペレーターを派遣し表沙汰にできない任務を遂行する小規模PMC、いわゆる傭兵屋だ。
俺はこの会社の代表兼戦闘員のタロウ・ギコーネ、ヤーパン人とアメリシア人のハーフだ。歳は今年で32になる。
不安定な時流にあるこの国では主に政府や企業からの需要が尽きない。今日の依頼も伝手にしている政府高官からのものだった。
- 11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:02:21 ID:hApPLiLI0
- (,,゚Д゚)「ん、だいぶ埃がついているな」
今俺は物が散乱した薄暗い部屋の中、ただ一つ明りのついた机に向かっている。
先ほどの戦場から難なく脱出した俺は事務所に顔を出して帰宅していた。それからシャワーを浴びて日課の銃器の手入れをしている。
この銃はSIG SAUER P229、アメリシア軍に身を置いていたころから使っている。
もう整備は慣れたもので手早く分解清掃、弾薬の状態をチェックしてからマガジンを戻しセイフティを掛ける。
整備を終えると、おもむろに洗面台へ向かい、鍵を掛けた引き出しからいくつかの薬のシートを取り出す。
(,,゚Д゚)「…………」
- 12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:03:43 ID:hApPLiLI0
少し錆びついた蛇口を捻ってコップにカルキ臭い水を注いでから、シートから押し出した錠剤を数秒の間だけ眺める。
その錠剤の毒々しい赤色は劇薬ゆえの誤飲防止であろうか。まるで服用する事を牽制しているかのように自己主張している。
だが、ふと思い出したかのように錠剤を口に含み、先程コップに注いだ水で飲み下す。
目の前の汚れた鏡にはどこか苦々しげな顔をした男が写っている。
(,,゚Д゚)「……ん?」
そうして机に戻って煙草に火を着けた瞬間、塞ぎ込んだ思考を打ち破るように部屋の呼び出し音がなる。
そうだ、忘れていた。もう約束の時間だ。結局賭けに負けた俺が皆にバーで奢らなければならないのだった。
あわてて着けたばかりの煙草を灰皿に押し付け、部屋のドアに走り寄って開けると目の前には2人の男。
- 14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:05:47 ID:hApPLiLI0
( ´_ゝ`)「よう大将、迎えにきたぜ」
( ^ω^)「今日はお仕事お疲れだおねー」
(,,゚Д゚)「おう、すまんな。もうそんな時間だったか。他の連中はショボンの所か?」
目の前のよれよれのパーカを着た細長い男は流石兄者、チームの情報処理を担当しているインドアを体現したかのような人間だ。
ちなみに双子の弟の流石弟者も社員で、弟の方は兄と違ってチームの戦闘連絡員だ。
その横で太めの体を揺らして笑っている男は内藤皆平。周りからはブーンと呼ばれている。軍役限定の医師免許を持っていて、チームの医療と戦闘を担当している。
このノッポとデブのこの2人が並ぶとまるで一昔前の芸人風情といったところで愉快だ。こっそり笑いを噛み殺していると衝撃的なことを告げられる。
- 15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:06:31 ID:hApPLiLI0
( ´_ゝ`)「ああ、クーとツンに至っちゃもうかなり飲んでるぞ。お前の奢りってことで高い酒ばっか空けてやがるぜ」
(,,゚Д゚)「Oh……」
( ^ω^)「おっおっおっ、ザマあだお。ギコが遅いもんだから弟者はしこたま飲まされて死んでるお。きっとこれからギコの財布も死ぬ運命だお」
(,,゚Д゚)「Oh…………」
( ´_ゝ`)「巻き添えを食いたくないから次の生贄を迎えに来たんだよ。さっさと準備して行こうぜ」
(;゚Д゚)「くそ、あんな賭けするんじゃなかったぜ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:09:02 ID:hApPLiLI0
ギコが干しっぱなしのくたびれたスーツに着替えるのを待ってから家をでる。彼のすこし大きめのジャケットの裏にはいくつかの『物品』が吊るせるようになっていてスーツの素材自体にも若干の防刃効果を持たせているそうだ。
集合場所のバーへと向かいつつ隣のいつも通りノータイスーツのギコを眺めると疑問がわいてくる。
この年がら年中スーツ男はいい加減私服などを購入したのであろうか。
仕事の収入で懐は暖かい筈なのだが、この男はいつも金がなさそうに見える。
- 18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:09:45 ID:hApPLiLI0
(;^ω^)「まーたきったねえスーツだおね?もうちょっと私服の種類も揃えたらどうだお?」
(,,゚Д゚)「めんどうだからいい。それにどこでも違和感なく拳銃を隠せる服ってあまりないしな」
( ´_ゝ`)「ブーン、この銃器中毒者に何言っても無駄だ。銃とナイフ無しじゃ落ち着かない習性の野蛮なバカだからな」
(,,゚Д゚)「はっ、何度教えても的にかすりもしない男がよく言うもんだ。たまには弟者を見習ってみろよ、この軟弱ぅ!軟弱ぅぅ!」
(;´_ゝ`)「う、うるせいやーい!俺はそんなもん使わなくてもPCで十分だもんねー!だいたい武器しか使えないとか原始人かよwwwwバカスwww」
(;゚Д゚)「て、てめえぇぇ今度チンピラに絡まれても助けてやんねーぞゴルァ!」
(;^ω^)「まったく、2人とも喧嘩はほどほどにするおね……」
- 19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:10:51 ID:hApPLiLI0
バーの入口についても程度の低い争いを続ける2人を余所に僕は店の扉に手を掛ける。
ここは『バーボンハウス』。年齢不詳優男のショボンという男が経営するバーで、裏路地にひっそりと佇むせいか普段からあまり来客は少ない店だ。
………………表向きでは。
ここのマスターの裏の顔は非合法の商人。世界に広がる人脈で高価な軍用銃の仕入れから仕事の斡旋まで金次第でなんでも行う。
軍から追い出された後に、孤児院出身で身寄りも働き口も無かった僕はたまたまショボンにギコを紹介してもらったおかげで今ここにいる。
――――――もちろんしっかりと紹介料はとられたが。
- 20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:12:29 ID:hApPLiLI0
そんな闇の取引場でも、手を掛けた扉を開けると、店内は裏の顔を思わせぬ落ち着いた雰囲気。カウンターには間接照明に薄明るく照らされた2人の女。
片方は黒の長髪であまり表情がない、もう一方はカールのかかった明るい金髪でこちらは不機嫌にみえる。
店の床には洒落た雰囲気に似合わぬ泥酔した2人の男。ピクリとも動かない、しかばねのようだ。
_
( ∀ )( <_ )「」
そしてカウンターのまえで丁寧にグラスを磨いていた男がこちらに顔を向ける。
(´・ω・`)「やあようこそ、バーボンハウスへ。このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」
( ^ω^)「ありがたいけどさっきも頂いたお。それはツンにでもあげてくれお。」
川 ゚ -゚)「ふーん、ツン良かったな。彼氏様のご登場だぞ」
ξ゚听)ξ「クーうるさいわね。というかブーン遅いわよ」
( ^ω^)「すまんお。2人ともだいぶ酔ってるおね。やっぱりジョルも犠牲になってるし」
- 21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:13:33 ID:hApPLiLI0
ツンと呼ばれている白人の彼女の名はツンデレート・スミス、アメリシア系ヤーパン人。僕の幼馴染の陸軍時代からの同僚で、しかも気づいたら付き合っていた。時間の流れとは恐ろしい。
種々の問題を起こして退役した彼女をギコに紹介したのは僕だ。今ではギコに次いで近接戦闘が得意なオペレーターだ。
自分よりも戦闘派の彼女はアルコールが入ってご機嫌斜めのようで、とりあえずツンの隣に腰を下ろす。
ξ゚听)ξ「潰れるのが早すぎるのよ。ちょっと飲ませただけで倒れちゃって情けない」
(;^ω^)「あー南無南無……。ま、僕も飲むけど少しは手加減してくれお。この前みたいに無理やり口に瓶を突っ込まれるのは勘弁だお」
ξ゚听)ξ「前向きに検討します」
(;^ω^)「ちょ、おま、政治家かwww明らかに飲ませまくる気ありありじゃねーかおい!」
- 22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:14:18 ID:hApPLiLI0
するといつの間にか店に入ってきていたギコもクーの隣へ腰を下ろす。兄者は弟者を診ているようだ。
(,,゚Д゚)「ようショボン、いきなりでなんだがMP7用の4.6mmx30を10ケースと.40S&Wを3ケースほど入手して欲しい」
(´・ω・`)「やあギコ、いらっしゃい。そうだね、MP7用の方は2週間ほどかかりそうだけど構わないかい?40口径弾は3日ぐらいで手に入ると思うけど」
(,,゚Д゚)「ああ構わないぞ、いつもの口座に振り込んでおく。 ところでクー、お前大丈夫か?」
川 - )「…………少し飲みすぎた。気持ち悪いかも、…………トイレ」
ふらふらとトイレへ立ち上がったクーを見かねたギコが支える。クーがここまで酔うのも珍しい。
- 23 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:16:19 ID:hApPLiLI0
(;゚Д゚)「おいおい、調子に乗って飲みすぎてんじゃねえよ」
川 - )「人の金でなら……思う存分飲めるだけ……飲もうと思って……うぷっ」
(,,゚Д゚)「お前バカじゃね?普段はクールぶってるけどお前バカじゃね?」
ギコがツッコミ役に周っている、珍しい。 と思っていると、いきなり目の前にジョッキになみなみと注がれたお酒が現れる。 えっ、なにこれこわい。
ξ゚听)ξ「さっきのお返しのテキーラよ。はい、これ塩とライム。今日こそは逃がさないからね」
( ^ω^)「」
嗚呼、今日もバーボンハウスの夜は長くなりそうです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 24 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:17:50 ID:hApPLiLI0
- あれから数時間、すでに意識を保っているのは俺とクーとツン、それに弟者の3人だけ。残りの連中は酒豪ツンの犠牲となり床で死んでいる。
どうやらクーと弟者は時間とともに幾分か酔いが醒めてきているようだ。2人の目の前にはノンアルコールカクテル。
一方の俺はというと薬物への耐性が高い体質のせいか少量のアルコールじゃなかなか酔えない。やっと今頃酔いが回ってきたところだ。
(;´_> `)「はあ、やっと気分が良くなってきた」
川 ゚ -゚)「私も気分が良くなってきた。ここまで飲んだのは国防軍時代以来だ」
ξ゚听)ξ「2人ともだらしないわね。少しはギコを見習いなさい」
(;゚Д゚)「おいおい、無茶言ってやるなよ」
- 25 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:19:11 ID:hApPLiLI0
すると『くさったしたいその1』が小さなうめき声をあげる。まだ息が有ったらしい。
( ω )「ツン……ごめん、吐きそう……ウエップ」
ξ;゚听)ξ「あぁもう、仕方ないわね。ほらブーン立てる?」
( ´_> `)「おーおー、仲がよろしいことで」
ξ゚听)ξ「うるさいわねーもう!」
ツンに巻き込まれてジョッキで高度数の酒を飲みつづけたブーンは決壊が近づいているらしい。もはやツンの尻に敷かれるというよりは床に敷かれているのかもしれない。
- 26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:20:43 ID:hApPLiLI0
- 何とかツンに連れられてブーンがトイレへ消えたところで、突然ショボンがグラスを磨いていた手を止める。何か、そう、ショボンの身に纏う雰囲気が少しだけ鋭くなる。
どうやら仕事の話のようだ。俺もグラスの傾きを止めて軽く身を乗り出す。
(,,゚Д゚)「…………ショボン、新しい仕事か」
(´・ω・`)「うん、楽しく飲んでる最中に悪いね。また今日も依頼が入ってきたんだよ。急ぎの内容じゃないみたいだけどね」
(,,゚Д゚)「やっとこさ新しい依頼をこなしたばっかりだってのに。最近は特に忙しいな」
川 ゚ -゚)「ふむ、大方モナー辺りからだろう?ここの所レッドクルーの活動が活発化してきているみたいだしな」
ここのところヤーパンのみならず世界でも有力な製薬会社の『SMG』と、隣国シナーの支援を受けた反政府組織『レッドクルー』が急速に接近しているとの噂がある。
なんでも実験体の提供と引き換えに非人道的兵器な兵器の技術提供を行っているのだとかいう眉唾ものの話だったが。
- 27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:21:37 ID:hApPLiLI0
(´・ω・`)「そうだ、モナーからの依頼だよ。これが依頼の書類だ。国外にSMGが所有する研究所に秘密裏に攻撃を仕掛け、あるデータを奪取して欲しいそうだ」
( ´_> `)「国外のSMGの研究所?何でまたそんな所に?」
川 ゚ -゚)「例の噂か。非人道兵器の実験が行われているという」
(´・ω・`)「さあね。噂との関係は解らないけどナノマシン研究のデータ提出を拒否して逃亡した国家研究員がいるそうだ。東欧でSMGが匿っている事が発覚したけどあまり表沙汰にせずにデータと研究員を回収したいらしい。だから殺害は必要最小限だよ」
(´・ω・`)「我が国の出来立て特殊部隊には荷が重いだろうね。そこで君たちの出番さ。政府も君たちの実力を高く買ってる。報酬は120万$、口止め料入りにしてはなかなか高額だ。よほどの研究なんだろうね」
いつの間にかツンとブーンが戻っていた。床に転がっていた連中も起き上って書類に目を通している。
俺も依頼の書類に目を移すと、件の研究員の名前が記されている。
名前は朝日祐介か。写真には神経質そうな眼鏡の男が写っているが、国外逃亡を犯すほどの人間には見えない。
書類を読む分には研究内容も怪しい所はないが、兄者に調べさせておいた方が良いだろう。
- 28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:22:19 ID:hApPLiLI0
ξ゚听)ξ「ふん、最っ高に怪しいけど悪くないわね。SMGは私兵部隊がいるって話だけど」
( ´_> `)「あそこの私兵部隊は金回りが良くてなかなか優秀らしいな。やりがいが有るじゃないか」
( ´_ゝ`)「依頼の期限は3週間か。国防軍の支援もある程度までは提供されるようだな。流石だな、人工衛星も間借りOKだとよ」
_
( ゚∀゚)「ヘリは軍から貸与される形か? お、MH-60Kナイトホーク、ウチのと同型だ。悪くない」
川 ゚ -゚)「しかし、ウチの会社に来るって事は何か裏があるな。人間なら構わんが、細菌兵器なんて勘弁だぞ」
( ^ω^)「おっおっおっ確かに怪しい依頼だけど、なおさら僕たち向けなのは間違いないおねー」
全員の顔がやる気だ。周りが熱気に包まれる。
- 29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2011/08/20(土) 22:29:32 ID:hApPLiLI0
(,,゚Д゚)「……そうだな、これは俺たち向けの仕事だ。」
(,,゚Д゚)「皆、こいつは久々にデカいヤマだ。全員で当たるとしよう。いいな?」
「了解!」
皆の揃った返事が響く。これからまた忙しくなる。今回は何かきな臭い依頼だ、入念な準備が必要だろう。
(,,゚Д゚)「よしショボン、依頼を受けるとモナーに伝えておいてくれ。それと前金が入金され次第行動を開始すると」
ショボンが手元のキーボードを叩いている。おそらく秘匿回線でモナーと連絡しているのだろう。手を動かしながらショボンがこちらへ顔を向ける。
(´・ω・`)「うん、わかったよ。そうだ、最近依頼ばっかりだしね。今日皆が飲んだ分は僕の奢りにしておこう。」
(´・ω・`)「じゃあ、注文を聞こうか」
店に悲鳴と歓喜の声が響き渡る。
まだまだ夜は長い。こうして大仕事を前にした戦士たちの夜は更けていく……
next chapter is coming soon.....
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