(,,゚Д゚) GIFTのようです


130 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:44:00 ID:e4yISufU0
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                  (,,゚Д゚) GIFTのようです Contract1−『ロンゲスト・プレゼント』 chapter5





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131 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:47:33 ID:e4yISufU0

 一方多少時間は巻き戻され、ちょうどギコが勢いよく保安室に飛び込んだ頃。
 最初にギコの目に飛び込んできたのは、閃光手榴弾の余韻であろう火煙と暗闇に慣れた目には少々辛い電子の光。
 元は倉庫だった空間か何かを研究所の保安室に改造したのであろう。
 足を踏み入れた室内はあまり広くなく、おそらく大の大人が10人もいれば手狭になるであろう程度の広さであった。
 壁一面には数多のモニターと電子機器が取り付けられており、室内は電子機器の光に溢れていった。
 
 その室内の床には作業に従事していた四人の警備兵が突如として襲い掛かった音と光の洪水に苦しんでいた。
 一人は椅子から滑りこける瞬間で、その男の右手が机の上の大量の紙を空中に巻き上げていた。
 
 だがギコにはその紙はまるで空中にとどまったままかのように、ゆっくりと落ちていくように見える。
 まるで周囲がスーパースローモーションの処理が施されたように感じられ、ギコの視界は恐ろしいほど鮮明だ。
 机から舞い上がった紙も、床で悶える男たちも、非常に緩慢に見える。
 だが異常に研ぎ澄まされた感覚は、その紙に踊る文字も、床の男の顔に走る皺一つまでさえも取り入れ得る全ての情報をギコの脳へと送る。

132 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:53:45 ID:e4yISufU0
 これはギコには馴染みの感覚だ。
 まるでその場の全てを把握したかのような超感覚。
 この能力こそが、まさにギコを無敗の戦士足らしめているのだ。
 
 この異常な時間感覚も、頭に走る微かな頭痛も。
 その全てを受け止めて、ギコは素早く力強い一歩を踏み出す。

 無音のスローの世界にただ一人、現実の時を得たギコは肩付けに構えたライフルの引き金を引き絞る。
 床の警備兵と椅子の男に向けてそれぞれ数発ずつ素早く弾丸を送り込む。
 それぞれが最も効率よく生命活動を停止させるよう計算された一撃だ。
 
 反作用の法則により、肩に当てたストックへ鋭い反動が来る。
 ギコは回転しながら直進する弾丸が警備兵の頭蓋骨を吹き飛ばす瞬間をはっきりと目にした。
 
 ちょうど空中へ緩やかに舞った薬莢が地面と音を奏で、そして執務机から舞い上がった紙が床へとたどり着く頃。
 まるで古いレコードを早送りにしたかの様に、ギコの耳へ聴覚が舞い戻る。
 閃光手榴弾の爆音によって鈍った耳に最初に届いたのは、自分の声だった。


(,,゚Д゚)「Clear」


 肺に溜めた長い息を吐き出す。
 と、ツンとブーンが唖然とした表情で部屋に続いてきた。
 あまりのギコの早業に後続のツンとブーンは一発の弾丸を発射するどころか、自らの身体の半分ですら室内に入れていなかったのだ。
 ギコが制圧に費やした時間は僅か一秒と少し。
 たったそれだけで数人の目標に的確な致命弾を浴びせている。
 ギコが改めて制圧を確認すると銃口を上げてモニターに視線を向けた。

133 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:55:31 ID:e4yISufU0
(;^ω^)「オウフ」

ξ;゚听)ξ「凄い……」

 普段からギコの早業を見ている二人にも、これは余りにも早すぎる。
 まるで『機械』のように的確で高速の射撃術。
 疑問を抱いたツンがギコに問いかけようとした瞬間、三人のイヤーホンに無線のノイズが入る。

( ´_ゝ`)『よう、終わったのか?』

(;^ω^)『おー、6があっという間に全部始末したお』

( ´_ゝ`)『そうか、悪いが時間が押してる。例のモジュール接続を急いでくれ』

 驚いた表情ながらもブーンは慣れた手つきで警備兵の生死を確認し、ツンはすかさず扉を閉め電子ロックを掛け直している。
 ギコは何事もなかったかのように通信モジュールを取り出して接続を試みている。
 ツンが扉をロックし終えると、つかつかとギコの元へ歩み寄る。

134 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 20:57:21 ID:e4yISufU0
ξ;゚听)ξ「ギコ、流石ね。早すぎて私には何も出来なかったわ」
 
(,,゚Д゚)「俺の取り柄はそれぐらいだからな。たまには仕事しねえとクーにどやされるぜ。
     ぬ? あー……、ブーン。接続が上手くいかないんだ。代わってくれ」

( ^ω^)「いやー全員即死だったお。
      っておいおいギコ、まるっきり繋ぐ所が違うお。貸してくれお」

 ブーンがギコからモジュールを受け取るとコンソールに正しく接続した。
 すると一拍おいて画面が青く豹変し、大量の白文字が下から上にかけて流れていく。

( ^ω^)『ビーグル2、接続が完了したと思うお』

( ´_ゝ`)『あぁ大丈夫だ、繋がってる。ちょっと待ってろよ。
       ……おいオッパイロット、今は邪魔すんじゃねえよ』

 どうやら無線の向こうでジョルジュが騒いでいるらしい。
 無線越しに兄者がヘリに積んだコンピュータの端末を叩く音が聞こえる。
 兄者の指の音に合わせて目の前のモニターの表示が目まぐるしく変わっていく。
  _
( ゚∀゚)『イエー、根暗野郎が構ってくれねえから暇なんだぜ』

( ^ω^)『すっこんでろ』
  _
( ;∀;)『出番少ないのに手厳しい!』

(,,゚Д゚)「相変わらずバカだな」

ξ゚听)ξ「まったくね」
  _
( ゚∀゚)「仕方ないじゃねえか。お前らが仕事済ますまでこっちはお留守番だぜ」

 ふざけているジョルジュを無視していると無線に兄者の独り言が割り込んできた。

135 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:00:40 ID:e4yISufU0
( ´_ゝ`)『おし、もうすぐセキュリティーを乗っ取れる。
       …………よし、来たぞ』

( ´_ゝ`)『セキュリティシステム掌握。AA兵器をすべてオフライン。セキュリティパスダウン。
      全自動兵器の操作をマニュアルに、二次接続をロック』

( ´_ゝ`)『くそこの忙しいときに、すまん、今違う無線が入ってるんだ、待機してくれ。
       ……おいオッパイロット! このコンソールをもっとけ!』
  _
( ゚∀゚)『へいへい解りましたよっと』

 一旦兄者たちの無線が切れる。
 ギコが椅子から立ちあがり、部屋の中央の大机の上にあった書類を全て払い落とした。
 リグのポーチから折りたたまれた建物の見取り図を取り出す。

(,,゚Д゚)「ちょうど良い、今のうちにこれからの動きを確認しておこう」

ξ゚听)ξ「ええ……。確か、この後は連絡橋を通って研究棟を捜索よね」

(,,゚Д゚)「そうだ、この階にある連絡橋だ」

( ^ω^)「朝日かお……研究棟の最上階にいるはずおね」

(,,゚Д゚)「ああ。そこで軟禁されてるはずだろう」

 ギコが机の上に取り出した地図を広げ、警備棟と研究棟を繋ぐ連絡橋を示す。
 研究棟は今三人がいる階から直通しており、朝日はその研究棟の最上階で軟禁同然の研究生活に従事しているはずだ。
 ふと改めて部屋を見渡し直すと、モニターの前に貼られた巡回図が目に入った。

136 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:04:09 ID:e4yISufU0
(,,゚Д゚)「ん? なあ、この地図は持ってきたのと少し違うな」

ξ゚听)ξ「あら、この地図だと、ここを出てからすぐに武器庫があるじゃない」

( ^ω^)「ふむ……、C4の残りはギコがもってるおね?」

(,,゚Д゚)「おう、でかい花火をぶち上げるのも悪くないな……っと?」

 突然部屋中のモニターが兄者の顔を映し出した。
 ヘリのコ・パイロット席の映像で隣には何かのコンソールを操作しているジョルジュの姿が僅かに見える。
 映像にリンクして無線に音声が入る。

( ´_ゝ`)『今、政府軍が正面ゲートを制圧中だ。すぐに上手く行くだろう。
      それと、オッパイロットがオートタレットで警備兵を蹴散らしてる』

(,,゚Д゚)『そうか、ジョルジュはともかく……良くやった。これで一つ片付いたな』

( ´_ゝ`)『待ってくれよ。
      それとお前らに良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?』

(;゚Д゚)『……じゃあ、良い知らせからで』

 画面の向こうの兄者がかすかに口角をあげた。

137 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:07:15 ID:e4yISufU0
( ´_ゝ`)『朝日の場所を絞ることに成功した』

ξ゚听)ξ『あら良いじゃない。それで?』

( ´_ゝ`)『ただし二つまでしか絞れなかった。しかも片方の場所には強化外骨格兵がいるっぽい』

(;^ω^)『んなっ!! ここはパワードスーツまで配備されてるのかお!?』

ξ;゚听)ξ『順当にいくとシベリアのツァーリかしらね』

( ´_ゝ`)『大正解! あの悪名高いツァーリが二名様だ。
       こんな辺鄙な場所にお目にかかれるとは、やはりシベリアが一枚噛んでるな』

 正面のモニターに件の強化外骨格兵の情報が表示される。
 ソビエト製戦闘用強化外骨格兵U型。
 7.62mm弾まで防ぐ防弾性、個人携帯用の重機関銃を有し、水素電池による動力駆動で軽快な動作を可能にしているという。
 歩兵とは思えない強力な武装で、被弾をものともせずに高速で進軍してくるその様はまさに悪夢としか言いようがない。
 詳細なスペックは不明だが、一年ほど前にヤーパン・シベリア間で勃発した冬紛争にて少数投入され多数の戦果を上げているそうだ。
 その際、シベリア側は「ツァーリ」もしくは吸血鬼「ヴゴドラク」と呼称していたことが暗号解読にて判明している。

(,,゚Д゚)(やっぱりこいつは、例の……)

(,,゚Д゚)『……ますますきな臭くなってきたな。それで? その二つの場所とは?』

138 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:09:32 ID:e4yISufU0
 ギコは忌々しそうに口元を歪める。
 まるで、何かの苦痛を思い出したかのように。
 しかしブーンとツンはギコの表情に気づかず、目の前のモニターを睨んでいる。
 兄者がギコの顔から何かを察したようだが、しかし何も見なかったかのように淡々と話を続ける。

( ´_ゝ`)『最上階の研究室にある朝日のセーフルーム、もしくはその一つ下の謎の広い空間だ』

ξ゚听)ξ『謎の空間?』

( ´_ゝ`)『ああ、詳しくは解らないが何かの研究に使うのかもしれない。そっちに強化外骨格兵がいるようだ。
       二時間前の警備記録では最上級のセキュリティーパスの通過歴もあった。朝日かもしれない』

(,,゚Д゚)『朝日か……』

(;^ω^)「ギコ、どうするお? このままシエラの到着をまつか、それとも3人でセーフルームを奇襲するかお?」

ξ;゚听)ξ「そうね、でも時間はあまり無いわ。
       それに強化外骨格も気がかりだわ」

139 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:15:32 ID:e4yISufU0

 ギコはモニターの前のデスク上に座りかかり、武器を下ろして腕を組み熟考する。
 一方にはパワードスーツ兵、こちらには三人のみ。
 同時に奇襲しなくては朝日が逃走するどころか、最悪口封じに殺害される可能性がある。
 幸いにも未だギコ達の侵入は露呈してはいないものの、兄者による欺瞞工作も時間の問題だろう。
 と、ギコは顔を背けたまま、背後のモニターに移る兄者へと問いかける。

(,,゚Д゚)『ビーグル2、シエラチームは?』

( ´_ゝ`)『もう警備棟に侵入している。もう着くんじゃないか?』

(,,゚Д゚)「……よし、連絡橋を抜けたらツンとブーンは研究室のセーフハウスへ。
     俺はシエラと合流し、外骨格野郎の相手をする。
     どちらかが朝日を拘束したら屋上のヘリポートへ向かうぞ。いいな?」

 そのまま、ギコはあっさりと椅子から立ち上がると、小銃のコッキングレバーを引いて薬室の装填を確認する。
 ところがギコの言葉を聞いたブーン達の顔色がさっと青ざめた。

ξ;゚听)ξ「そんな無茶よ! 
      冬紛争は強化外骨格のたった一体に私の知り合いの一個小隊が全滅したのよ!」

(;^ω^)「せめて全員でやるしかないお!」

(,,゚Д゚)「それじゃあ時間がない。
     ……大丈夫だ、強化外骨格はアメリシアにいた頃に仕留めた事がある」

(;゚ω゚)「うそんっ!」

ξ;゚听)ξ「でも……」

(,,゚Д゚)「安心しろ、俺を誰だと思ってやがる。天下のギコ様だ。
     お前らこそ、二人だからっていちゃいちゃしてヘマすんじゃねえぞ。
     さあ、残弾を報告しろ」

140 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:17:37 ID:e4yISufU0
(,,゚Д゚)「とりあえず外の武器庫が見たい。今の装備じゃ外骨格を敵に回すには少しさびしいんだ」

 ギコは装備を確認すると、ふところに隠し持ったリボルバーを抜き出す。
 S&W M686の4インチ、ステンレスモデル。
 いざという時のためにギコはこれをスピードローダーと共にチェストリグに常に入れている。
 ギコは、この確実な動作と強大な威力を誇るリボルバーに命を助けられたことがあったのだ。
 シリンダーを横に降り出して装弾を確認すると、そのままリボルバーを元のポーチへと収納する。

ξ゚听)ξ「まったく、このバカは……。マガジン7。グレネードそれぞれ2」

( ^ω^)「……死んだら承知しないお、ヒゲ野郎。マガジン9。グレネード3、フラッシュ2」

(,,゚Д゚)『うるせえクソったれ。次の仕事に移るぞ。ビーグル2、扉を頼む』

( ´_ゝ`)『あいあい。ん? ……待て、シエラチームから通信だ。そっちにも繋ぐ』

川 ゚ -゚)『こちらシエラチーム、警備棟14Fに入った。マスティフチームは?』

(,,゚Д゚)『こちらマスティフ。保安室は制圧した。これより研究棟へと移る所だ』

( ´_ゝ`)『保安室の電子ロック解除はこちらでする』

川 ゚ -゚)『了解、今すぐそちらに合流しよう。保安室だな、アウト』

( ^ω^)「とりあえず待つかお」

141 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:23:18 ID:e4yISufU0
 と、ドアの電子ロックが解除される音が室内に響き渡る。
 間を置かずして、三人は素早く扉へと銃を向ける。
 同時に扉の蝶番が軋みを上げながら大きな扉はゆっくりと開き、暗闇から二人の男女の姿が現れた。
 現れたのは弟者とクーの二人だった。
 安堵した三人は構えた銃口を下ろす。

(´<_` )「やあ久方ぶりだな」

川 ゚ -゚)「外の騒動の御蔭でここまで来るのに苦労しなかった」

 暗闇に合わせて暗めの迷彩を身にまとった二人は、疲労を感じさせない軽い足取りでデスクへと歩みを進める。

(,,゚Д゚)「よし、二人は俺と一緒に来てくれ。詳しくは移動しながら話すが、とりあえず外の武器庫が見たいんだ」

(´<_` )「武器庫? なんでまた?」

(;^ω^)「この先にシベリア製の強化外骨格がいるみたいだお。その対策品探しだお」

(´<_`;)「はぁ?」

川 ゚ -゚)「ツァーリか……! まったく、ここはシベリアの軍事基地なのか?」

142 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:24:33 ID:e4yISufU0
ξ゚听)ξ「とりあえず移動しましょう、もうここには用はないわ」

 五人は扉を開け、そとの暗がりへと舞い戻る。
 そこは相変わらず静かで、外の喧騒に比べて奇妙なほど人影が見当たらない。
 保安室を出てから10m先に例の扉があった。
 暗がりでは良く見えないが、そこには武器庫と記された札が掲げてある。

(,,゚Д゚)『ビーグル、頼む。皆は中へ入ったら外を警戒していてくれ』

 兄者がろくな返事もなく扉のロックを解除した。
 どうやら保安室を制圧した偽装工作をしているようだ。
 警戒して扉をくぐると、そこは所狭しと武器がならべてある少し手狭な部屋だった。
 ぐるりと室内を見渡して一際目を引いたのは、奥の机の上に置かれた黒々とした大きな火器だ。

(,,゚Д゚)「これは……」

川 ゚ -゚)「どうした?」

143 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:30:19 ID:e4yISufU0

(,,゚Д゚)「ライフル……MOM製のゲパード、おそらくM6だな。
     GM6、愛称はLynx……つまりオオヤマネコだ」

 14.5mm弾を使用するゲパードM6・lynx(リンクス)。
 セミオート式ブルパップの対物ライフル。
 二度目の世界大戦中に、対空対戦車用途にシベリアで開発された弾薬を使用し、驚異的な威力と精度、有効射程を誇る。
 1q先の人間を易々と殺害できる代物で、昔は対戦車ライフルと呼ばれていた種類の口径だ。
 しかし実際の目の前にあるライフルはお世辞にもあまり狙撃向きの銃には見えない。

川 ゚ -゚)「これがあのゲパード? 少なくとも、狙撃用途のアクセサリーじゃないな」

(,,-Д゚)「ああ、スコープの代わりにEotech社製ダットサイトとマグ二ファー。
     二脚を外してフォアグリップを取り付けている。
     それにマズルブレーキを変えているな。
     レーザーサイトにフラッシュライト、あとはキャリングハンドルも追加しているな」

川 ゚ -゚)「ここまで銃身の改造を行えば、元々の精度は望め無いだろう。
     すくなくとも本来の目的の狙撃は無理じゃないか?」

(´<_`;)「つまり……、近接戦闘用の大口径ライフル? そんな、冗談にしては性質が悪いぞ」

 ギコがライフルを手に取り軽々と構えると、思ったよりはかなり軽く感じられる。
 恐らく何らかの新素材でライフルを再構築したのだろうが、それはライフルの反動を強烈にする諸刃の剣でもある。
 巨大なマガジンを引き抜き、その中身を覗く。
 続いてアッパーバレルを分解し机の上に置いていく。
 ギコは分解したロアレシーバーの撃針を確かめている。

(,,-Д゚)「ふむ、かなり軽量化を施している。M60なんかよりは軽い。
     おそらくヘビーバレルを長さを切り詰めた軽量バレルに変えたか。
     全長はフルサイズライフルと変わりないな。
     弾薬は……、鉄鋼焼夷弾だ。撃針もついている。激発機構も作動する、問題ない」

ξ゚听)ξ「いったい誰の為にそんな改造が……」

144 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:32:38 ID:e4yISufU0
(,,゚Д゚)「14.5o、バレットM82の二倍のエネルギーか。
     リンクスか……これならツァーリの装甲も問題ないか」

(;^ω^)「おい、ガンマニア。まさかそんな頭がぶっ飛んだ代物持っていくのかお」

(,,゚Д゚)「うるせえ、コイツは役に立つぞ。持っていく」

ξ;゚ー゚)ξ「つまり対物ライフルを振り回してツァーリと戦うって言うの? アナタ頭大丈夫?」

(;゚Д゚)「まったく、ひでえ言い草だぜ……」

 ギコは分解したゲパードを素早く組み直し、手近な三点スリングを拾い上げ銃のストラップに取り付ける。
 近くにあった予備のマガジンと弾薬をポーチに入れ、代わりに取り出したC4爆弾と無線信管を弾薬箱にセットする。
 立ち上がってゲパードを持ち上げると肩に背負う。
 手に入れたのは特殊大口径ライフルとその弾をマガジン3つ分の15発。

(,,゚Д゚)「トラップも設置と、うん。待たせて悪かった。移動しよう」

 新たな武器を手にしたギコ達は次の獲物を求めて歩みを進める。
 目指すは研究棟、朝日。
 扉をくぐり冷たく暗い廊下へと戻る。
 ギコの背中に担がれた漆黒の火器が廊下の非常灯が放つ僅かな明りを得て鈍く輝いていた。
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145 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:34:53 ID:e4yISufU0
 
 ギコ達が武器庫を出てから数分後、研究棟14Fの非常階段近くの廊下にて。
 研究棟にたどり着いたギコ達は朝日を防衛する警備兵と本格的な戦闘に突入していた。
 しかしながら兄者の電子的な援護とギコ達の暗闇からの突然の奇襲に警備兵は難なく壊走していく。
 しかし、ついに態勢を整えて廊下に陣取った警備兵の額をツンの放った弾が貫く。

ξ゚听)ξ「エネミーダウン!」

( ^ω^)「よっしゃ!」

(,,゚Д゚)「よし、もうすぐ例の場所だ! クーと弟者は俺についてこい!」

 辺りに響く発砲音に負けないようにギコが叫ぶ。
 現在いる一本道の突き当りに13Fへとつながる階段がある。
 途中で左に曲がると朝日の研究室につながっている。
 その研究室の方へ向かってブーンが制圧射撃を行っている。

川 ゚ -゚)「了解」

(´<_` )「了解!」

 まずギコが素早く角から飛び出した。
 しかしその瞬間、制圧射撃を行っていたブーンの小銃が運悪くジャムを起こす。
 
(;^ω^)「んなっ!?」

146 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:40:02 ID:e4yISufU0
 その時ギコの目に研究室から軽機関銃を持った警備兵が顔を出したのが見えた。
 タイミング悪く、その殺意に光る銃口が駆け抜けるギコへと向けられる。
 しかし全身で踏ん張り、素早く走り抜けようとする。
 機関銃から発射された複数の弾丸が、俊敏に回避しようと向こうへ飛び込むギコの身を掠めた。
 背後の壁に着弾し、その衝撃で壁のタイルが剥がれ落ちる。

(´<_`;)「ギコ! 大丈夫か!?」

(#゚Д゚)「くっ、大丈夫だ当たっていない! くそっ、ツイてねえな!」

 破壊されたタイルの埃が舞い散る中、機関銃手によってギコは仲間と分断されてしまった。
 ブーンが忌々しげにポートに詰まった薬莢を強制排莢する。
 ギコは跳弾の危険性を低減するために、曲がり角の近くで姿勢を低くてしゃがみこんだ。

(;^ω^)「こんのクソ小銃! ギコ、どうするお!?」

 いまだ自己主張する機関銃の劈くような発射音の中、ギコが首元のインカムへと語りかける。

(#゚Д゚)「良いか良く聞け! 時間がない! 俺は一人で下に行く!
     お前らは反対側から回り込んで、あのクソ機関銃を制圧しろ!」

川;゚ -゚)「んなっ! お前正気か!」

(,,゚Д゚)「もとから正気だ! ここで足止めを食うわけにはいかない!
     お前らは研究室を頼んだ!」

ξ;゚听)ξ「待ちなさい!」

(´<_`;)「ちょ、おまっ」

(#゚Д゚)「いいや! 俺は行く! またヘリポートで会おう!」

147 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:43:28 ID:e4yISufU0
 ギコはゲパードを背負い立ち上がると、その身を翻して向かいの扉へと消えて行った。
 追いかけようにも警備兵の機関銃がその威力を発揮し、向こう側へとたどり着けない。
 降りかかる壁の破片を払いながら弟者が唸った。

(´<_`;)「くそ、行きやがったあの野郎!」

川 ゚ -゚)「……まずはあの機関銃手をどうにかするぞ。
     ツン、あそこには回り込めるか?」

ξ;゚听)ξ「そうね……、手前の部屋に回り込めば狙えそうね。あそこよ」

(;^ω^)「仕方ない、やるしかないおね! 僕が行く、開けてくれお!」

 弟者が手前のドアを開けると中には警備兵が二人。
 ブーンが男へ弾丸を素早く叩き込む。崩れ落ちる敵を横目にブーンとツンが部屋へとなだれ込んだ。
 このまま部屋ごとに移動していけば機関銃手を狙える位置に行ける。

川 ゚ -゚)「弟者も行け! ここで私が機関銃を引き付ける」

(´<_` )「っ、解った!」

 弟者もツンへ続いて部屋へと駆け込んでいく。
 クーが背後に注意しながらも銃だけを角から差し出して射撃する。
 報復射撃に対して身を隠したのか、機関銃の射撃が数秒ほど止む。
 こうやって敵の気を引いていればブーン達が機関銃をすぐに黙らせてくれるだろう。
 後ろの資材を壁にしてクーは考える。

川 ゚ -゚)(ギコ)

 すると後方から応援の警備兵数名がかけつけるが、クーは資材の影から振り向きざまに弾丸を浴びせる。
 殺到した敵の沈黙を確認すると弾倉を交換し、無線のスイッチを回す。
 兄者に後ろの隔壁を下ろしてもらった。
 少なくともこれで多少の間は後方を心配する事がない。
 黙々と作業と言う名の戦闘をこなしながらも、しかしながらクーの思考はある遠いところにある。

川 ゚ -゚)(ギコ、死ぬなよ)

 クーの右手は引き金を引き続ける―――――――
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148 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:48:51 ID:e4yISufU0
 一方、ギコは研究棟14Fから13Fに繋がる階段を下りていく。
 あまりにも長く続く階段は暗に13Fに存在する空間の高さを示している。

(,,゚Д゚)(長いな。……それにしても、なんだこの違和感は)

 背に黒々とした武器を背負い、ライフルを構えた傭兵はある種の確信めいたものを抱いて先を目指している。
 やっと終わった長い階段の目の前には隔壁とも呼べるであろうオートドアが鎮座している。
 不必要なまでに重厚なそれは、まるで訪問者を拒むというよりは……まるで「内部」のものを逃さぬために作られたようで。
 ギコの心のざわつきが、違和感を示す心の波が、強く強く揺り返し始める。

(,,゚Д゚)(やっぱり、ここは……俺の……)

(,,゚Д゚)『……ビーグル2、例の13Fに繋がるドアに着いた。非常階段の扉を開けてくれ』

( ´_ゝ`)『ああ、今開ける』

 兄者いわくセキュリティにおいて最も高いレベルの隔壁の一部が横へスライドする。
 ライフルを構え内部を窺うが、そこには人の気配もなくただ非常電源のみが灯された部屋だった。
 辺りへの警戒を怠らずにギコは部屋へと足を踏み入れる。
 その部屋にはとりわけ目を引く物は無い。
 中央に存在する大きな隔壁、もは城門といった様相を呈している扉を除いては。

( ´_ゝ`)『そこにある門を抜けたら、ほぼ一つの階が全て空間になっているようだ。
       記録にはそれ以外何も残っていない、おそらく逐一記録を抹消しているのかもしれんな』

(,,゚Д゚)『そしてそこには強化外骨格が守る何かがある……というわけか』

( ´_ゝ`)『まさにダンジョンを守る怪物だな。出てくるのは宝か、呪いか』

(,,゚Д゚)『なら尚更踏み込む価値はありそうだ。俺は金銀財宝が好きなんでね。
     兄者、コイツを開けてくれ』

( ´_ゝ`)『おk、少し待ってくれ。コイツは少し手ごわそうだ』

149 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 21:57:35 ID:e4yISufU0

 ギコはただ扉の前に静かに佇んで、その時を待っている。
 その額に深く皺を刻んだ顔には、何とも言えぬ表情を浮かべている。 
 薄皮一枚下に滾るは怒りか、悲しみか、それとも喜びか。
 判然とせぬ雰囲気を纏って、ギコは扉を見つめ続ける。

(,,゚Д゚)「……」

 背中に回した対物ライフル、リンクスのスリングを腰から伸びたカラビナに通し固定する。
 これで激しい動きをしても、この大型の銃器が慣性に振り回される事も無いだろう。
 改めてライフルのグリップを握り直す。
 手汗をかかないように掌とグリップの間に僅かに隙間を開けた。

 微かに顔を伏せ、目を閉じて神経を研ぎ澄ます。
 その姿は、傍からには瞑想する騎士か何かのように見える。
 ギコは、まるで周りの全ての空間を手の平の上のように把握した感覚を得た。
 そのままさっと顔を上げ眼前の扉に据え付けられた赤いランプを睨む。

(,,゚Д゚)「……」

( ´_ゝ`)『今に開くぞ、準備しろ』

(,,゚Д゚)『ああ、ありがとう』

( ´_ゝ`)『なあ、ここは例の…………いや、いい。何かあったら連絡してくれ、アウト』

 まさに兄者の言葉通りに、睨みつけていたランプの放つ光が鮮やかな赤から暗い緑へとその色を変えた。
 ギコはライフルを構え、まさにその瞬間に備える。
 巨大な門が油圧アクチュエーターの作動する鈍い音を響かせながらゆっくりと開く。
 門の先に広がる巨大な空間が次第に露わになっていく。

(,,゚Д゚)「何だ……こいつは……」

150 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 22:00:54 ID:e4yISufU0

 ぽかんと開けたその空間はちょうどコロッセオと呼ばれる闘技場に似た広さと構造を有していた。
 地上には一定間隔ごとに様々な形や大きさの構造物が地面から生えている。
 まるで遮蔽物にしてくれと言わんばかりのその構造物には数多の銃痕が見て取れた。 
 
 向かって正面には巨大なモニターが壁面一杯に見える。
 そして一度目を上方に向けると、そこには天井を壁に沿って空間を一周する形でガラス張りの中二階が此方を見下ろしている。
 とりあえずは見渡す限りに人影はない。
 ギコは辺りを警戒しつつ、空間の中央の方へと足を進める。

(,,゚Д゚)「まるで闘技場だな……」

(;゚Д゚)(……? くそ。どこからか見られている気がするな)

 見えぬ視線を感じたギコは神経を張りつめらせて辺りを窺う。
 だが、広場の奥で空気の漏れるような音が響いた瞬間、手近な構造物に素早く身を隠した。

(,,゚Д゚)(ちっ、何の音だ?)

 音源の方向へ向かって顔を出すと、向かいの壁の何か所かがせり出しているのが目についた。
 ちょうどそれのせり出した部分が人間大であることにギコは気付く。
 ことに目を凝らすと、それはまさに棺桶のような形をした構造物で壁から二十か所ほどが飛び出ている。
 と、主電源の落ちているはずのスピーカーから電源の入るノイズが聞こえ、辺りに見知らぬ機械合成の声がけたたましく響いた。

≪ようこそ! この恐怖の闘技場に!≫

(,,゚Д゚)「!」

151 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 22:04:12 ID:e4yISufU0
 その声はまるで道化師のようで、機械的に変声された声色はギコの神経を逆なでにする。
 ライフルの照準と連動した視線が慎重に周囲を見渡す。
 だがどこにも人影は見当たらない。
 音声は辺り一帯に反射しているのか、音源を突き止めることが出来ない。

≪歓迎しようではないか、冥府の犬……いや人の造りし鬼の始祖よ! よくぞここまで来た!≫

 しかしなおも姿の見えぬ者の独演は続く。
 すると、前方の壁からせり出した構造物に変化が起きた。

≪此処には君の力を試す人形がたくさん備えられている!≫

 まるで棺桶のような形に突出した構造物たちが真ん中からぱっくりと割れ、暗い中から人のような物が足を踏み出す。
 現れたものは全身を黒い金属のスーツに包まれた人間のような物。
 悪魔のように禍々しい、そのヘルメットの顔面部分にはガスマスクのような装置が飛び出している。
 体には高機動を邪魔しない最低限のタクティカルベストを身に着けており、まるでSFの未来兵士のようだ。

≪彼らは我らが誇る強化クローン人間! つまりは君の後続というわけだ!≫
 
 力なく立ち並ぶ強化人間のヘルメットに、まるで『吸血鬼の瞳』のように真っ赤な眼光が灯されていく。
 次々と灯されていく赤い光を眺めながらギコが顔を歪めて歯を食いしばる。

(,, Д )「なめやがって……」


≪さあ準備は整った! 犬へと成り下がった鬼よ、始めようではないか! 見せてくれ。貴様はこやつらとどう戦う?≫

 ブツッという鈍い音を残してスピーカーが沈黙する。
 ギコの目の前に立ちはだかる物、それは「強化人間」。
 彼らは軍事的な目的におけるコストを度外視した規格外品である。
 全身を黒い超軽量合金で覆い、その手にはA‐91と呼ばれるシベリア製のブルパップ小銃が握られている。 
 
 彼らのスーツに配された軽量の人工筋肉が全ての動作を俊敏にし、まるで伝説のアサシンのような動きを可能にしている。
 しかもクローン人間の彼らには恐怖や感情といった思考は存在しない。
 彼らはただ与えられた任務をこなす「生きたロボット」なのだ。

152 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 22:05:47 ID:e4yISufU0
 
 しかし、立ちふさがる敵の事をギコは良く理解している。
 ギコが彼らと相対するのはこれが初めてではないのだ。
 じりじりと感覚が極限へと研ぎ澄まされていき、やがて常人にはたどり着けない超感覚の領域へと達する。

 全身の細胞に酸素が行き渡り、力がみなぎる。
 無性に心がざわついている、がそれはどこか清々しくて。
 心には水面の静寂を、手足には灼熱の怒りを。 

(,, Д )「なるほど。今日はツイてるぜ。
     やっと……、やっとお前らの尻尾を、……掴んだぞ」

 その数は約二十体。すべての強化人間が出そろうと、彼らは一斉に銃器を構える。
 そのまま一目散にギコ目がけて駆けだした。
 暗がりの中、鈍く輝く四十の赤い灯が素早い軌跡を描きながらギコへと恐ろしい速度で迫りくる。
 高速で移動しながらも安定して短小銃を構え、その光学照準器で狙いをギコへと定める。

153 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 22:07:40 ID:e4yISufU0

 しかし、ギコが言葉にならぬ唸り声を上げた瞬間、彼らの赤い視界からギコが消えた。
 そのまま最前列に居た三人の意識が、荒くるう弾丸の嵐に一瞬で刈り取られた。
 彼らが射撃点を見やると、まるで瞬間移動したかのようにギコは隣の構造物の影に移っていた。
 すでに三人を始末した小銃を次の獲物へと向けると、鉛弾を次々と叩き込む。

 するとギコは左手で腰のシースから黒塗りのナイフを素早く引き抜き、振り向きざまに後ろに忍び寄る男に切りつけた。
 ギコの愛用のコンバットナイフは、それ自身が超振動して対象の分子結合を切断する単分子カッターである。
 軽合金装甲を紙のように易々と切り裂いた斬撃は、忍び寄る男の頸動脈と気管を寸断した。
 
(,,゚Д゚)「ヒュッ」

 すると頸部から血飛沫を上げながら悶える男の影に隠れて、強化人間が死にゆく仲間を遮蔽物にしてギコへ発砲する。
 しかし、ギコは左手で構えたナイフを一閃し、襲い掛かる弾丸全てにその切っ先を掠めさせる。
 僅かに触れた切っ先が至近距離から発砲された弾丸の軌道をずらし、ギコの頬を掠めて後ろの壁面に着弾する。
 
 そのままギコは流れるように右手の小銃を仲間を盾に攻撃してきた強化人間へと向ける。
 引き金を断続的に引き絞り、男の黒いヘルメットごと頭部をズタズタに引き裂く。
 そして銃の反動に逆らわずに衝撃を受け流すかのようにバックステップし、遮蔽物へとその身を隠した。 

(,,゚Д゚)「!」

154 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/03/09(金) 22:09:54 ID:e4yISufU0
 
 しかし、強化人間たちは仲間の死に臆すること無く、機を逃すまいとギコの間合いへと飛び込んでくる。
 まるで感情がないように見える機械的な軌道がギコにはひどく単調でスローに見える。
 自分を狙う銃口も、迫り来る強化人間も、感覚を研ぎ澄まし全てを瞬時に把握、計算しする。

 ギコは周りに広がる空間を瞬時に安全地帯と死地に判別し、そのちょうど間を踏み分ける。
 弾切れを起こしたライフルを間近に迫る一人へ投げつけると、太もものホルスターからハンドガンのP229を引き抜く。
 そのままバランスを崩した目前の男の額へ向けて10oショート強装弾を数発撃ち込む。
 放たれた弾はヘルメットの同じ場所に重ねて着弾し、易々とその装甲を貫通する。
 
(,,゚Д゚)「ッ!」

 続けて振り向きざまに左手のナイフを薙ぎ払うと、死角から迫るすべての弾丸の軌道を逸らした。
 隙を逃さずに右手のハンドガンをナイフを持ったまま構え発砲し、後方の二人の奇襲者を絶命させた。
 そのまま周囲を素早く見渡して次の追撃に身構える、…………が、周囲には何も動作がない。
 機械的な思考を持つ強化人間も、僅か数十秒の攻防で八人を屠ったギコの認識を改めたのか、周囲で足をとどめ始める。
 
 強化人間達はゆらりと物陰に身を潜め、ギコの出方を窺っている。
 ギコの腰にはゲパードM6・リンクス、右手にはハンドガン、左手には黒塗りのナイフ。
 素早くマグチェンジを行い、頬から滴る血を拭うと、辺りをゆっくりと見渡す。
 ふいにギコはその顔を不敵に歪め低く唸った。

155 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 22:14:37 ID:e4yISufU0

(,,-Д゚)「おいおい、列に並んでる時間は無いんだぜ。
     こっちはノンビリしていられないんだ。
     ……このまま来ないなら、」

 ギコは何を思ったのか、右手のハンドガンを太もものホルスターへ戻した。
 そのまま空いた右手で腰に回したスリングを引き回し、大口径ライフルを腰だめに位置に構える。
 左手にナイフを持ったまま、その二本の指でチャージングハンドルを引いて巨大な弾薬を薬室へと送り込んだ。
 
 ジャキリ、と金属の噛みあった鈍い音が響くと、彼は予想される最大の衝撃に備えて姿勢を低く身構えた。
 狙いは前方の遮蔽物の一つ。
 適度な軽さを持った引き金に指を掛けてジリジリと引き絞る。



(,,゚Д゚)「こっちから殺らせてもらう」



 いきなり耳を劈くような破裂音が轟き、リンクスが巨大な銃火を上げる。
 その瞬間、ギコの視線上に鎮座する鉄筋コンクリートの構造物が中央から爆散する。
 鉄鋼焼夷弾は強固な構造物をものともせずに、その陰に潜む犠牲者の身体を食い破った。
 着弾の衝撃で弾丸が直撃した強化人間は、胴体から分断されるともんどりうって明後日の方向に転がっていく。

 しかし厚さ100oの鉄筋コンクリートと強化人間を貫通しても、なおも弾丸の運動エネルギーは失われてはいない。
 多少その軌道を変えた弾丸は貫通物を経ることによって一発の銃弾から数十の細かな金属片と砕け散った。
 まさに散弾と化した弾丸は、そのまま2mほど後方で遮蔽物から顔を出して様子を窺う人造人間へと襲い掛かる。
 黒いヘルメットが弾丸のエネルギーを全て受け止めて歪にひしゃげると、その強化人間は勢いよく横殴りに倒れ込んだ。 
 砕かれたコンクリートに混ざって散らばる血肉、そこを不自然に歪んだヘルメットが転がっていく。

156 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/03/09(金) 22:16:46 ID:e4yISufU0

 渦巻く硝煙をその身に纏い、彼らの前に立ちふさがるギコの姿はまさに「鬼」。
 たった一撃で仲間を二人も減らされてしまった人造人間たち。
 彼らの冷たい心に変化が起きる。
 あらかじめオミットされているはずの感情である「恐怖」に似た何かが、彼らの中で再現されようとしていた。
 
(,,゚Д゚)「ほお、なかなかの威力だ。気に入った」

 すると、またもやギコの姿が彼らの視界から立ち消える。
 この戦いはどちらか一方が屈するまで終わらない。
 後に記される事となる密室の惨劇はまだ始まったばかり……。

 next chapter is coming soon.....


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