最後の挨拶のようです

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 21:32:16.98 ID:yKO1vqPLO
Case3 (*゚∀゚)


「んんっ……あぁ」

南向きの窓からカーテンを通り抜け差し入ってくるお日様の暖かい陽射しに目を覚ました。

体を限界まで捻り、眠っていた間に固まってしまった関節をほぐす。

小気味の良い音が身体の内側から聞こえてくる。

私のリズムがまた生まれる。

いつもは憂鬱な土曜日も今日は違っていた。時計を見る。短針は7を指し示していた。

「さて、用意すっかね」

私が土曜を憂鬱に思う理由。それはとっても簡単。

だって土曜は学校が無いんだもんっ。

自然と気分が高まっていく。口が一人でに鼻歌を奏でる。

「るんるるー♪らんらららー♪らんらんるー♪」

お気に入りのピンク色の歯ブラシに少し歯みがき粉を乗せる、寝起きのねばっこい口腔を吹き飛ばすミントの香りが鼻に広がった。

寝惚けの頭がクリアになっていく、心の中に流れ続ける曲はそれに比例してどんどん大きくなっていく。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 21:36:00.20 ID:yKO1vqPLO
私の髪形はショートボブ、小学校に入学してからずっとこのスタイルを貫いている。

お母さんの使っている寝癖直しを少しだけ拝借して、髪に振り掛けた。
櫛を使って髪を整えていく。

この時間が好き。

鳥さん達の朝を知らせる歌声を聞くのが好き。

今日はなにをしようかな?なんて考えるのがどうしようも無く好き。

でも気が付けばもう六年生。あと一年経ったら私は駅でも大人用の切符を買わなきゃならないわけ。

はやく大人になりたい。そう願う気持ちは確かにある。

でも

ずっと子供でいたい。そんな気持ちも、無くはないかな。


『ツー!いつまで歯を磨いてるの?早くしないとココア冷めちゃうわよ?』

「あいよー、すぐ行くっさ」

んー、やっぱりまだ子供で良いかな。

私は手早く髪をとき頬を叩いて気合いを入れる。

さぁ、今日も楽しもう。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 21:41:05.82 ID:yKO1vqPLO
『全く、ツーはいっつも早く起きるのに準備に手間取るから、パパもう行っちゃったわよ?』

「えぇー、せっかく今日はパパに車で学校まで送ってもらえると思ったのに」

『仕方ないじゃない、パパだって忙しいんだから。はやくツーも朝御飯たべちゃいなさい』

「ぶぅ……はーい」

ちぇ、昨日は珍しくパパが帰ってきたから送ってもらえると思ったのになぁ。

テーブルにはこんがりと片面だけ焼かれた目玉焼き、お母さん手作りのあまーいイチゴジャムをたっぷり付けたトーストがのっている。

「頂きまーす」

『はいはいwよく噛んで食べるのよ』

お母さんがコンロでココアを温め直してくれている。

『はい、どうぞ』

「うひょー!ココア♪ココア♪」

私はお母さんが作ってくれるココアが大好き、よく言うじゃない?ミルキーはママの味とか、私にとってママの味というのはこのカップから湯気をふつふつと出しているココアがそうなんだと思う。

「んー、美味じゃ」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 21:47:04.22 ID:yKO1vqPLO
『はいはいw素直に美味しいって言いなさい』

「ぶぅ、難しい言葉を使いたい年ごろなんだよー」

『もう、変な子ね』

母の優しい眼差しと、ココアの暖かい口溶けを堪能しつつ私の朝は過ぎていく。

『今日は土曜日なのに本当に学校あるの?』

「うん、なんでも総合学習?ってのがあるんだよね」

『お母さんなら確実に休むわね、それ』

「えへへ、でも学校大好きだから良いんだー」

『ツーは、私と瓜二つなのにそこだけ違うのねw』

私とお母さんはよく似ている。パパには、どうだろう?目元が似てるって言われたことがあるな。でも私の性格は完全にお母さん譲り。
パパは真面目で堅物。ほんと嫌になっちゃう。

『パパ……喜んでたよ』

「ん?何が?」

『あの人夢だったらしいわよwパパって呼んでもらうのw』

お母さんとパパ、統一性の無い呼び方は言葉を喋れるようになった頃から続いている。らしいよ。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 21:55:19.24 ID:yKO1vqPLO
「お父さんでいいのに」

『良いじゃないww私としたらけっさくだったわ、あの人の落ち込み様がね』

なんでも私が一番最初に覚えた言葉は“おかあさん”らしい。

『このままじゃあの人、自分のこともお父さんって呼ばれるんじゃないかってwそれからずっとツーの耳元でパパって呟いてたわwww』

お母さんが口を押えながら笑う。

「パパwww 必 死 だ な 」

『ふふっ、良いじゃない、その甲斐あってツーが六年生になった今でもパパなんだから』

「あっ、時間やばい」

『はいはい、いってらっしゃい』

「行ってきまーす」

お母さんと話していたら大分時間が経っていた。

こりゃ急がなきゃ遅刻だ。五年間でボロボロになった相棒、まぁランドセルを引っ掴み玄関に急ぐ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 21:58:29.35 ID:yKO1vqPLO
「あっ、髪飾り忘れた」

『全くwそそっかしいところはあの人そっくりね。はい、これ』

「おっ、サンキュー」

これがなきゃ、私じゃない。お気に入りの髪飾りをお母さんから受け取ると再び玄関に向かう。




「ありっ?パパどうしたの?」

『ネクタイ……忘れた』

お母さんの笑い声がキッチンから聞こえてきた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:01:32.60 ID:yKO1vqPLO
というわけで、今はパパの車のなか。

「遅刻しそうなのぉ、お・ね・が・い・パ・パ」の一言できっちり助手席をがっちり確保、ちょろいな。

ネクタイをきっちり締めたパパが運転席へと乗り込む。

私のパパは、うーん、やっぱり格好良い。ダークブルーのスーツに朱色のネクタイ。髪はボサボサだから減点一ね。でもそれを差し引いてもかなりいい線いってるんじゃないかなぁ。

『土曜日なのに学校があるのか?』

「うん、なんか総合学習?っていうのが、ってそれお母さんと同じ事聞いてるよ」

『はははwツーはそそっかしいからなぁ』

ん、ちょっとムッときた。朝からなんで二回もそそっかしいって言われなきゃならないのよ。

「お父さんだって、そそっかしいじゃない」

『むっ……そっか、そうだよな』

それっきり会話は無し、学校までは車で十分、別にパパ相手に気まずいとは思わないけど、お父さんって言われたのがショックみたい。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:08:42.39 ID:yKO1vqPLO
『ツー、今日も精一杯楽しんでおいで』

ドアを開いた時、パパが私に言った。

「……うん、パパも早く帰ってこないと駄目なんだからね!!」

『あぁ、頑張るよ』

パパの車はクラクションを二度鳴らし、もと来た道に引き返していった。

「うーん」

身体を伸ばす。出来るだけお日様に近付ける。

おはようございます。

太陽と、校舎に挨拶する。

『ツーさん!おはようございますなんです!!』

正門には担任であるビロードが立っていた。

「おっす!!ビロード、今日も元気そうだね!!」

『そりゃあもう!皆の笑顔が見れますから!!』

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:12:59.15 ID:yKO1vqPLO
にぱー☆

『ん?どうしたんですか?』

「ちょっと//あたしがせっかく満面の笑みをアンタにプレゼントしてやったのに//」

『あっ、それは申し訳ないんです!ありがとうございます、より一層元気がでました!!』

「よーしっ、んなら教室まで競争っさ!」

『あっ、おはようございますなんです!』

ズコー、私は思わずつんのめる。

『あっ、ツーさん、先に行っててください』

「ぶぅ、あいよー」

『ビロード先生!!早くしないと朝礼に間に合わないことはわかってます』

「あっ、ワカッテマス!おはよー」

『先生を付けなさい、ビロード先生、もう時間です。早くしないとまた朝礼に間に合わないですよ』

『待ってください、あと一人に挨拶したら』

『駄目です』

あーあ、ワカッテマスにビロード引きずられちゃってるし。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:24:30.94 ID:yKO1vqPLO
『まだクラスの全員に挨拶を』

『そんな事出来ないのはわかってます』

「ビロード、先に教室行ってるね」

『あっ、ツーさん。ビロード先生が間に合わなかった時は委員長さんに朝礼の代わりをお願いしてください。あの子になら任せられます、とくに連絡事項はありません』

「はーい」

ワカッテマス先生とビロード先生は仲が良い。まぁ歳が近そうだし、当然かな。

私はスキップしながら下駄箱に向かう。自分の下駄箱を開けて、靴を放り込みながら同時に上履きを取り出す、後は去り際に鞄で扉を閉める。

その間およそ三秒。私が五年間で身につけた遅刻を免れるための動きだ。

六年二組は廊下からでも分かるくらい賑やかだった。

「おいーっす!!」

何のためらいもなくドアを開ける。

『ツーちゃん、おはよう』

『ツーwwおはっすw』

『おはよう』

いろんな返事が聞こえてくる。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:34:06.79 ID:yKO1vqPLO
「あっ、委員長、ビロードがワカッテマスに捕まったから朝礼宜しくだって」

『うはwまたアイツ捕まったのかよ、何回目だ!』

『ビロード鈍そうだもんね』

『はぁ、やれやれ。それで何か言わなきゃならないことはあるのかな?』

「うんにゃ、これといって無いそうだよ!」

チャイムが鳴る。

『はーい、じゃあ皆席に着いてー』

同じ生徒が仕切っているというのに、ビロードより皆言うことを聞くんじゃないか?

などとクスクス笑いながら考える。

『遅れて申し訳ないんです!』

前方のドアから渦中の人物ビロードが現れる。ドタバタと教壇を踏みならして。

『やれやれ』

委員長は自分の役目が終わったことに気付くと、起立、とだけ言った。

『皆、おはようなんです!!』

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:37:09.34 ID:yKO1vqPLO
『おい、ビロード!またワカッテマスの野郎に捕まったのかよ』

『鈍臭いなぁ』

『ちょっと挨拶しすぎたんです!じゃあ出席を取ります』

一時間目、算数。

嫌い。

二時間目、図工。

ちょっぴり好き。

三時間目、体育。

大好き。

そして、四時間目、国語。

読んでいるのは国語の教科書、題材は『走れメロス』。

私は国語が大好きだった。いや、国語というより読書かな?

色んな本を読むことによって、自分もその主人公になったような気分になれる。一時間読書をすれば、人の一生を体験する事が出来る。

私は、多分同級生の子達よりもずっとたくさんの本を読んでいるんじゃないかな?

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:41:34.11 ID:yKO1vqPLO
将来は作家になろうなんて思ってた時期すらあった。

でも止めた。誰にも相談せずその夢は心の中に閉まった。

両親?まぁ応援してくれるんじゃないかな。まず本気にしてくれ無さそうだけど。

ビロードに言ったら、多分喜んでくれて、それで天国までいっちゃうくらい舞い上がるんじゃないかな。

『なれます!なれるんです!!君なら絶対夢を叶えられるんです!!!』

真っ赤になって、私より真剣な目をして。

想像しただけでニヤケてしまう。

―――メロスは激怒した


教科書に再び目を戻す。このメロスと言う人は何の為に走っているんだろう。

人質にとられた友の為?王に苦しめられている民の為?

どちらにしても

「あたしには無理だなぁ」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:43:18.05 ID:yKO1vqPLO
この世界に何人いるのだろうか?

友の為に、見ず知らずの人の為に命を懸けて走り続ける人が。

でも


(*ー∀ー)「素敵だねぇ」


今日、九回目の昼休みを告げるチャイムが鳴り響いた。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:46:42.79 ID:yKO1vqPLO
「さぁ、野郎共!!箸を取れ!!そして祈れ、今からアタシ達の糧となる様々な生物に感謝を込めろ。目を瞑れ!!そしてアタシの言葉に続いて来い!!!」

「いただき」

『いただきまーす!!』

「はええよwww」

お昼休み、給食の合唱は私の仕事だった。
何故かは分からないが私がしたほうが締まるらしい。まぁ楽しいからいいけどね。

皆が給食を食べ終え、雑談していると再びガラガラと前のドアが開いた。

「みんなー、集まるんです」

「どうしたんだい?ビロード」

『お説教かよ』

「今日はお昼以降の授業が無くなるんです!!皆速やかに帰りの準備をするんです」

へっ?休み?帰っていいの?

『……いやっふうううぅぅぅ!!!!』

『マジかよ!?』

『よっしゃ!どこで遊ぶ?』

皆が歓声を上げた。うん、こりゃビロードじゃ収集不能だわ。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:50:08.91 ID:yKO1vqPLO

「みんなっ!!」


思わず身体がビクッと固まった。初めてだった。ビロードの大声を聞くのは。

『……なんだよぉ、ビロード。いいだろぉ、休みになって嬉しいんだよ』

『そうだよ、遊ぶ約束ぐらいさせてよね』

皆最初は驚いちゃったみたいだけど、直ぐにビロードに非難の目を向ける。でもやっぱりいつもと比べるとどこか遠慮がちだな。


あれ?ビロード先生の目が、潤んでる。たぶん間違いない。

ビロード先生は

(*゚∀゚)「先生……泣いてるの?」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:52:26.62 ID:yKO1vqPLO
『うわwwwだっせwww何泣いちゃってんだよwww』

『……先生、どうしたの?』


「ちがうんです」


「皆が、これからどんな道を歩いていくのか、想像したら涙が出ちゃったんです」

『なーにwwwそれ、変な先生www』

『ビロード、俺達卒業まであと一年あるんだから、泣くなよ』

『修学旅行すら行ってねーのに卒業とかwww勘弁www』

「その通りなんです!!まだまだ先生は皆に話したいことが一杯あるんです!!」

『じゃあ帰るまでまだ時間があるんです!!ちょっと皆さんの夢について話してみませんか』

『はいはーい!!俺は警察官になるんだ!!幼稚園の時はウルトラマンになって世界の平和を守ることだったんだけど……無理っぽいから警察官になる』

ウルトラマンという突拍子の無い夢に皆から笑いが零れる。でもバカにしたような笑い方じゃない。

そうだよね。誰でも一度は憧れるよね。

『なるほど!!それはいい考えなんです!!警察官は立派なお仕事なんです!!体育ばっかりじゃなく勉強もしっかりするんですよ』

『うげぇ……はーい』

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 22:58:51.99 ID:yKO1vqPLO
『先生!!私はコックさんになりたいの!!お母さんやお父さんに一杯美味しいものを作って上げるんだ!!それにポチにも、あと仲良くないけど妹にも作って上げようかな』

『素晴らしい考えなんです!!大切な人に作って上げる料理……僕も食べてみたいんです!!頑張って下さい!!毎朝ウサギの世話をしてくれるような優しい君は、きっと優しい味を作り出せるコックさんになれるんです!!』

『はーい!!絶対食べに来てね』

『わたしはぁ、お嫁さんかな?』

『お嫁さんですか?良いですねぇ。飛びっきり可愛い貴女にきっと純白のウエディングドレスは似合いますよ』

『エヘヘ//ありがとっ、ビロード』

『僕は医者になりたいです、ずっと小さい頃からの、僕と両親、三人の夢でしたから』

『なれます!!絶対になれますよ!!僕が保障します!!誰もやりたがらないクラス委員をずっと嫌がらずに引き受けてくれる君なら立派なお医者さんになれます!!
これからしっかり勉強すれば、君の夢はどんどん近づいてくるはずです!!』

『ありがとうございます、先生』

こうして聞いていると皆色んな夢を持っていることに改めて気付いた。それに、一人も同じ夢を持ってない。皆違う。

じゃあ私は?何になりたい?作家の夢は胸に閉まったまま、引っ張りだしてくる気はない。

でもね、ビロード、それは無理だとか、なれるわけないって思ったからじゃないの。

もっと

もっと素敵な夢を見つけたからなんだっ。

(*゚∀゚)「私は、ビロードになりたい!!」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:04:31.24 ID:yKO1vqPLO
『ふぇっ!?僕ですか?』

(*゚∀゚)「ちがうよぉw私は小学校の先生になりたいの!」


『なるほど、どうしてツーちゃんは小学校の先生になりたいんですか?』

どうしてかって?私は皆が大好き、先生が大好き、この教室が大好き、ここから運動場で遊んでいる皆の姿を眺めながら友達とお喋りする時間が、大好きだから!!

(*゚∀゚)「だって私、小学校が大好きなんだもんっ!!」


十回目、昼休みの終わりを告げる、今日最後のチャイムが鳴った。

皆一斉に鞄を片付ける。

準備完了。

『じゃあな、ビロード』

『ばいばい、ビロード』

『さようなら、先生』

(*゚∀゚)「また、明日ね。ビロード」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:06:19.88 ID:yKO1vqPLO
『おい、ツー!明日は日曜だろw』

『ツーは学校が大好きなんだよねーw』

あー、やっちまった。

『……さよならなんです』

(*゚∀゚)「……」


今、私の目が節穴じゃなかったら

ビロードは

また泣いてた。

50 名前:保守ありがとうございます 投稿日:2008/04/29(火) 23:29:22.67 ID:yKO1vqPLO
帰り道、私は別れ際の時に見たビロードの涙を思い出していた。

なにがあったんだろう?

先生、辞めちゃうのかな?

頭を振って否定する。そんなわけ無い!ビロードが私達を置いてどこかに行っちゃうなんて有り得ないよ!

じゃあなんで泣いてたんだろ?

考えているうちに、私はもう家の前に立っていた。

「あれ?パパの車がある」

不思議だ、確かにパパは仕事に向かった。スーツ姿だったし。

じゃあなんでパパの車が?私が意地悪したから今日は早く帰ってきてくれたのかな?

久しぶりに家族皆でどこかに遊びに出かけるとか、うーん、ありだな。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:37:11.48 ID:yKO1vqPLO
(*゚∀゚)「たっだいまー♪」

ドアを勢い良く開けて何時もの五割増しの大声を出す。

しかし


(*゚∀゚)「ありゃりゃ?お母さーん、パパー、いないのかい?」

家の中から応答はない。

(*゚∀゚)「まったく鍵を掛けないでどこかに行っちゃうなんて無用心にも程があるよ」

リビングに入るとテーブルの上に手紙が置いてあった。お母さんが急用で出掛ける時は毎回のことだ。

(*゚∀゚)「どれどれ」

『私達の可愛い娘へ』

一番上には、お母さんの、暖かい字でそう書かれてあった。

『ツー、お帰りなさい。今日は早かったのね。お父さんとお母さんは少し出掛ける事になりました。急用が出来ちゃったの、ごめんね。
貴方は直ぐにこの家を出なさい。戸締まりまきちんとするのよ。貴方そそっかしいから。
家を出たら、真っ直ぐ貴方の行きたいところに行きなさい。そしたら私達が迎えに行くからね。お母さんはツーがどこに行くのかちゃんとわかってますよ。
待っててね、直ぐに迎えに行くからね、出来れば……行きたくないわ。ちゃんと待ってるのよ、じゃあね

貴方のお母さんより』

(*゚∀゚)「……なんだこりゃ」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:41:20.28 ID:yKO1vqPLO
またまた奇怪な手紙だなぁ。
っというか可愛い娘とか


(*>∀<)「照れちゃうぜぇ」

まぁ、パパもお母さんもまだまだ若いし、たまにパパが早く帰ってきたならする事もあんだろな。

(*゚∀゚)「うーしっ、行くなら」

決まっている。

(*゚∀゚)「学校だな」


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:48:51.07 ID:yKO1vqPLO
私は今椅子に座っている。自分の教室にある、自分の椅子にだ。

ここからは色々な物が見える。

窓の外に広がる私の街、今日の街は静かだなぁ。

「二人とも、どこに行ったんだろう」

でも心配はしていない。

だって、私のお母さんとパパだから。

「ふぁー、夜っていつだよ、どんなけアバウトなんだ」

学校の机っていうのは何故こんなに睡眠を促すんだろう、うん、不眠症に悩む人がいるなら薬よりもまず学校の机を処方すべきだ。

「あーぁ、夜って書いてあったし、寝るか」

そして

私は

長い

眠りに就いた。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:51:35.40 ID:yKO1vqPLO
私は夢を見ている。誰もいない教室で、一人私は座っていた。

お母さんも、パパも、友達すらいない世界で私は、独りぼっち。

そんな時、手に暖かい感覚を覚えた。

あれ?

これって

もしかして

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/04/29(火) 23:53:44.90 ID:yKO1vqPLO
『――√\√^……ますか?ハロー、ハロー、聞こえますか?届いてますか?私の声が
最後の挨拶を……――√\√』



(*ー∀ー)「あったかいやぁ」


『最後の挨拶のようです』

Case(*゚∀゚) END


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