( ^ω^)は島を守るようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 21:54:15.45 ID:rVN58s+s0
 
(゚、゚トソン「─v─目標地点到達まで、あと3分ほどですvヘ√レ───」

通信機からオペレーターのトソンの声が届く。
基地からはだいぶ距離も離れている為、多少ノイズが混じっている。

从 ゚∀从「了解。お前ら、油断すんじゃねーぞ?」

トソンの声に応じるように、サブモニターに映し出されたハインリッヒが全員を叱咤する。
職業軍人であるしぃが復帰したが、部隊の指揮権はハインリッヒが持ったままだ。

しぃが作戦に参加すると決まった時点で、ハインリッヒはしぃに指揮権を返還しようとしたが、それは他ならぬしぃの手に
よって阻止された。
フェイスとの戦闘経験の多さや、部隊の運用経験の長さなどを考慮すればその方がいいとしぃは言った。

ハインリッヒは当初渋ったが、復帰間もないし、自分の事で手一杯だとしぃに言われてしまえば素直に頷くしかなかった。
  _
( ゚∀゚)「ったりめーだ」

サブモニターがいつも通りの挑戦的な笑みを浮かべたジョルジュの顔に切り替わる。

(*゚ー゚)「ええ、ハインも気をつけてね」

次いで、しぃの戦場にいるとは思えないほどの柔らかい笑みがサブモニターに映る。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 21:56:17.05 ID:rVN58s+s0

( ^ω^)「了解。それに油断はしようもねーお」

从 ゚∀从「お、随分強気発言じゃねーか、珍しい」
  _
( ゚∀゚)「フェイスなんか目じゃねーってか、頼もしいねぇ」

(*゚д゚)「おおー、しばらく見ないうちにたくましくなったねー」

内藤の強気な発言に、ジョルジュ達めいめいは囃し立てる。
どちらかと言えば温厚な性格で、戦闘の只中でもなければ内籐の強気な発言など滅多に聞けるものではない。
自分を、そして仲間を鼓舞するためにはこういった強気な発言も有効なのだと、内藤が理解して意図的に
そういった態度を取っているのだろうと、皆は内藤の成長に頬を緩める。

(*゚ー゚)(ホント、成長したね、ブーン君……)

万感の思いでモニター映る内藤の顔を見詰めるしぃ。
しかし、モニターに映る内藤の顔はどこか青ざめた表情を浮かべていた。

(|ii^ω^)「昨日、あんだけ油ぎっとぎとの料理食わされたんだお。しばらく油なんか切れねーお」

从#゚д从「な!? てめえ!」

内藤が何の話をしているのか気付いたハインリッヒが、その顔を怒りに染める。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 21:58:05.06 ID:rVN58s+s0

(;*゚ー゚)「え?」

先ほどまで感慨に浸っていたしぃは、内藤の言葉、そしてハインリッヒの怒る意味がわからず疑問の声を上げる。
  _
( ゚∀゚)「ああ、お前、昨日よりによってハインに飯作らせたんだってな。命知らずな……」

ジョルジュが大きく首を振り、さも呆れた様に呟く。
その仕草に更にハインリッヒのボルテージが上がった。

从#゚д从「そりゃ、どういう意味だ? あ?」

(|ii^ω^)「どうもこうもないお。あそこまで不器用だとは思わなかったお」

从#゚д从「てめえ、きっちり完食しておいてその言い種は何だ!?」

(|ii^ω^)「出されたものは残さず食べる。それが内藤家の家訓だから已む無くだお」

なおも言い合う2人の様子に、事情を察したしぃは苦笑いを浮かべる。

(*゚ー゚)「戦闘前だってのに、随分余裕なんだね」
  _
( ゚∀゚)「まあ、2人ともバカだからな」

从#゚д从「お前に言われる筋合いはねーよ!」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:00:01.28 ID:rVN58s+s0

('、`*川「─vw─うん、そろそろ真面目にやろうか?ヘ√レv───」

割って入ったペニサスに、ハインリッヒは不服そうな顔を向けたが渋々納得の意を返す。

('、`*川「─v─で、内藤君は体調は大丈夫?─vw─v─」

( ^ω^)「ちょっと胃もたれしてますが平気ですお。作戦に支障ありませんお」

内藤の言葉に、ハインリッヒは膨れっ面をしてみせたが、内藤はそれに気付く事無く、体調に問題がない事を続けて主張する。

('、`*川「─vw─ならいいけど……もうしばらくしたら作戦空域だから─vw─v─」

その前にこの辺りに通信用のブイを設置するようペニサスは内藤に指示する。
島からはだいぶ離れたこの場所では、恐らくフェイスとの戦闘中はフェイスによるジャミングで島との連絡は取れない
可能性が大きい。

故に中継点を設置する事で、島との通信を維持する必要がある。

( ^ω^)「了解ですお」

元々の用途により、制裁量の大きいシュトルヒが抱えていた通信設備を設置する。
その間にシュヴァルベが先行し、偵察に当たる。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:02:32.79 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「偵察って言葉の意味、わかってるよな?」
  _
( ゚∀゚)「体よくさっさと敵を片付けて来いって意味だろ?」

从#゚∀从「ちげーよ! 単機で無茶すんなって言ってんだよ!」

ハインリッヒの言葉を聞き終わる前に、ジョルジュはシュヴァルベを加速させる。
勿論、先の受け答えは冗談ではあるが、可能ならば強襲をしかけようと思っていることもまた事実だ。

从 ゚∀从「……ったく、あの馬鹿は」

(*゚−゚)「……」

( ^ω^)「どうしましたかお?」

内藤は、何も言わずジョルジュが飛び去った空を見詰めているしぃに声を掛ける。

(*゚−゚)「え……? あ、うん……」

しぃは言い淀み、それから内藤に接触回線で語り掛けて来た。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:04:27.09 ID:rVN58s+s0

(*゚−゚)「何かジョルジュ君、随分と焦ってる様に感じて……」

( ^ω^)「ジョルジュさんが?」

しぃの言葉を聞いた、内藤の感想は意外な話だという事であった。
内藤にしてみれば、いつも通りのジョルジュに見えるし、せっかちなのもまたいつも通りだ。

(*゚−゚)「そうなんだけど……それでも、何かね……」

状況を考えれば、ジョルジュが責任や焦燥を感じても不思議はない話であはある。
しぃがいない間は最年長のSA搭乗者として、少なからず責任は感じていたはずだ。

(*゚−゚)「そういうのともちょっと違う……何だろ?」

( ^ω^)「お……」

そこまで言いかけて、しぃは自分の失策に気付いた。
それはまず、自分の中で答えを出してから話すべき話であった事に。
少なくとも、内藤がその事に気付いていない時点で話を切り上げるべきだったとしぃは思う。

相談相手は欲しいが、今すべき話でもない。
しぃは、思い過ごしかなと内藤に笑ってみせて、また後でと話を打ち切った。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:06:56.14 ID:rVN58s+s0

程なくしてブイの設置を終え、前進し出した辺りでジョルジュのシュヴァルベが戻って来た。

(*゚ー゚)「おかえり、どうだった?」
  _
( ゚∀゚)「変化なし、ってとこかな」

全員しばらく無言で、ジョルジュが持ち帰ったデータに目を通す。

从 ゚∀从「思ったより雑魚が多いな」

( ^ω^)「それ以外は特に変わった点はなさそうですおね」

('、`*川「─vw─そのようね。なら作戦に変更はないわヘ√レv───」
  _
( ゚∀゚)「ああ、まずはあの邪魔な大腕を斬りに行く」

(*゚ー゚)「それじゃ、行きましょうか」

しぃの言葉を合図に、全機前進を再開する。
眼前には冬の灰の空と、静けさを湛えた凪いだ海が広がっている。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:09:33.21 ID:rVN58s+s0


  _
(#゚∀゚)「邪魔だぁぁぁぁッ!」

咆哮と共に真紅の機体が空を切り裂く。
音もなく、無数の透明なきらめきが霧散する。
おおよそ統率の取れているとは思えない動きで手近なSAの元に近寄るフェイスは、シュヴァルベの翼の一薙ぎで空に消えた。

从#゚∀从「雑魚には構うな! 右から行くぜ!」

兄と同じく叫びつつ、ハインリッヒのレルヒェが後方からセイクリッドライフルで的確にフェイスを打ち墜としていく。

(*゚ー゚)「前線上げるよ、ハインちゃん」

そのハインリッヒを守るように、しぃのナハティガルがレルヒェの前面に立つ。
レルヒェのライフルよりは一回り小さい、セイクリッド・ガンで近付くフェイスを打ち墜としながら前進を始める。

( ^ω^)「露払い、行きますお」

ナハティガルに並ぶように飛んでいた内藤のシュトルヒが、更に前に躍り出る。
携行したヴェノム・ブレイドは用いず、左手のセイクリッド・ブレードのみでフェイスを斬り墜としていった。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:13:39.98 ID:rVN58s+s0

从#゚∀从「お前は露払いじゃなくて本命だろうが! 下がってろ!」

(;^ω^)「お……、このくらいなら平気ですお。それに……」
  _
( ゚∀゚)「腕ぐらいならヴェノムじゃなくても墜とせる!」

内藤とハインリッヒの通信に割り込んだジョルジュが、言い終わるや否や巨大フェイスの右の大腕に斬り込んで行く。
巨大フェイスから無数の触手がシュヴァルベ目掛けて襲い掛かるが、ジョルジュの前進は止まらない。

从#゚∀从「無茶すんじゃねー!!!」

(*゚ー゚)「しょうがない、ハインちゃん、行くよ?」

そう宣言し、しぃはナハティガルの速度を上げ、さらに前進させる。

从;゚∀从「あんたもかよ!?」

どいつもこいつも考えなしに突っ込みやがる、と怒鳴りつつもハインリッヒはレルヒェをナハティガルに従わせ、速度を上げる。
前進した2機に対し、新たなセイクリッドの塊を目掛ける様に無数のフェイス触手が襲い掛かる。

从 ゚∀从「チッ!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:19:14.86 ID:rVN58s+s0

レルヒェがセイクリッド・ライフルを構え直し、襲い掛かる触手を迎撃するよりも早く、しぃのナハティガルが両手を広げる。

(*゚д゚)「無駄よ! セイクリッド・フィールド!」

しぃの大音声と共に、ナハティガルのバックパックから伸びた両肩部分の放出パーツと腰の部分から視認できる濃い白色の
粒子が広がる。
粒子はナハティガルを中心に円形に広がり、フェイスの触手での攻撃を弾く。

从 ゚∀从「ナイス!」

しぃの行動を察したハインリッヒは射撃を標的を手近な触手から、奥のジョルジュたちに迫る触手に変更する。
こちらに来る分は、ナハティガルの防御システム、セイクリッド・フィールドが防いでくれるだろう。
ならば無力化された触手は放っておき、ジョルジュ達の援護をするのが得策だとハインリッヒは判断した。

後方からの射撃で、触手の一部が霧散する。
その刹那、ジョルジュ達は触手の包囲網が破れた地点に機体を滑り込ませるようにして突破した。
  _
(#゚∀゚)「うおらぁぁぁぁッ!」

(#^ω^)「おぉッ!」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:22:07.34 ID:rVN58s+s0

从;゚∀从「お前ら、前!」

セイクリッド・ライフルの照準を覗いていたハインリッヒが、いち早く巨大フェイスの動きを察する。
触手の攻撃をかわし、接近した2機に対し、巨大フェイスの大腕が振るわれようとしていた。
  _
(#゚∀゚)「わーってるッ!」

最前列にいたシュヴァルベに、巨大な右の上腕が跳ね上がるようにして襲い掛かる。
ジョルジュはそれを極めて最小限の動きで旋回してかわし、次撃に備える。

(#^ω^)「なんとぉーッ!」

続いて巨大フェイスの攻撃範囲内に入ったシュトルヒが機体を急降下させる。
距離を離さぬ様、巨大フェイスに接近しつつ攻撃をかわす。
  _
( ゚∀゚)「内藤!」

( ^ω^)「見えてますお」

巨大フェイスは更に右の下腕で攻撃するが、予め備えていた内藤達2機は余裕を持ってそれを回避する。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:24:30.53 ID:rVN58s+s0
  _
( ゚∀゚)「ここだ!」

ジョルジュは2撃目をかわすや否や、ここぞとばかりに巨大フェイスの下腕の根元に斬り込む。
2本とも右の大腕が振り上げられた今、絶好の攻撃のチャンスだ。

( ^ω^)「ヴェノム!」

内藤は待機モードで格納していた右の副腕を展開させると共に、長大な刀、ヴェノム・ブレイドを右手に構える。
右手が2本になり、かつヴェノムを持つ事により機体のバランスが極端に悪くなったが、姿勢の制御、及び副腕の制御はAIにより
管理されているので今の所問題はない。
  _
(#゚∀゚)「ぶった斬ってやらぁッ!」

ジョルジュはシュヴァルベを急加速させ、その翼で斬り付ける。
その一撃は巨大フェイスの大腕の表皮を切り裂き、まっすぐな線を描く。

(#^ω^)「もう一丁ッ!」

ジョルジュに続き、ヴェノムを振りかぶり追撃を仕掛ける内藤のシュトルヒ。
そのシュトルヒを狙い、周りにいた無数のフェイスが攻撃を仕掛けようとするが、それは後方からの射撃により悉く墜とされていく。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:27:31.84 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「行けッ! 内藤!」

(#^ω^)「おぉぉぉぉッ!!!」

下段から振り上げられたヴェノムが大腕と接触した瞬間、金属を削るような甲高い音が響く。
その太さに加え、攻撃手段に使われるだけはあり、巨大フェイスの大腕は相当の硬度を誇る。

(#^ω^)「ふんぬッ!?」

その硬さに押し返されそうになる刀を、シュトルヒの出力を上げ、押し込むように斬り付ける。
機体の姿勢制御をAIに預け、内藤はスロットルレバーを力の限り倒し込んだ。

(#^ω^)「おらッしゃぁぁぁぁッ!!!」

内藤の気合に後押しされるかのように、ヴェノムは巨大フェイスの大腕を徐々に斬り裂いて行き、鈍い金属音を残して反対側へ貫通した。
  _
( ゚∀゚)「おっしゃぁ!」

从 ゚∀从「よし、2機とも一旦離脱、体勢を立て直す」

( ^ω^)「了解!」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:31:09.54 ID:rVN58s+s0

ハインリッヒの号令と共に、4機は巨大フェイスの射程圏内から急速離脱する。
フォーメーションを整え、巨大フェイスの動向を観察するが、目論見通り大腕がすぐさま復活する事はなさそうだ。

(゚、゚トソン「──wwヘ√レwv─状況の確認ヘ√レヘ√レwv─作戦はそのままで継続─wv─」

同じく状況を確認し終えた司令部からノイズ混じりの通信が届く。
通信用のブイを設置したとはいえ、距離も離れフェイスからのジャミングの多いこの場ではかなり聞き取り辛いものがある。

从 ゚∀从「了解。再度仕掛けるぜ」

(*゚ー゚)「狙い目は右側のもう1本ね」
  _
( ゚∀゚)「先行する」

从 ゚∀从「無茶すんな……つっても無駄だろうな」

ハインリッヒのぼやきを聞き終える前に、ジョルジュはシュヴァルベを加速させる。
ハインリッヒからしてみれば、考えなしに突貫しているように見えるジョルジュの行動は心配で仕方のない事なのだろう。
しかしながら、ジョルジュ自身は無茶をしているつもりはない。
それが自分の役割で、そしてそれが出来るからこそ先陣を切っているに過ぎないのだ。
  _
( ゚∀゚)「心配すんな。あんなとろい攻撃をもらってやるつもりはねーよ」

ハインリッヒの言葉に答えながらも、既に機体はフェイスの密集した地点に到達している。
ジョルジュはその言葉通り、フェイスの攻撃を危なげなく掻い潜り、再び巨大フェイスに接近した。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:33:14.51 ID:rVN58s+s0



(゚、゚トソン「巨大フェイスの右上腕の破壊を確認しました」

ミセ*゚∀゚)リ「さっすが、ジョルるん!」

ブリッジのモニターには巨大フェイスの右腕が海に落ちて行く様が映し出されていた。
現在はSA各機からの映像がリアルタイムで映し出されている。

('、`*川「今の所は予定通りですね……」

( ゚д゚ )「ああ、皆、よくやってくれている」

作戦は滞りなく遂行されているが、ブリッジクルーの表情は1人を除き緩む事はない。
楽天家で常に笑っているようなミセリは除き、他の面々はこれまでの経験から油断は出来ない事はよく理解している。

( <●><●>)「順調ですね」

('、`*川「しぃさんの加入が大きいようですね」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:36:08.02 ID:rVN58s+s0

( ゚д゚ )「ナハティガルの持つ防御性能は大いに役立っているようだな」

( <●><●>)「セイクリッド・フィールド、高濃度のセイクリッド粒子を流動させ、防御壁とする機能ですね」

( ゚д゚ )「うむ、あれならその辺のフェイスの触手ぐらいに破られる事はないからな」

( <●><●>)「流石にあの大腕は質量的に無理でしょうが、それでも十分ですね」

( ゚д゚ )「そうだな。このまま、押し切って欲しい物だ」

( <●><●>)「……向こうに全く変わった動きがないのは気になりますが」

('、`*川「この侵攻事態が普段からすれば変わった事ですからね。それで打ち止めかもしれません」

ともすれば心配し過ぎにも聞こえるワカッテマスの言葉に、ペニサスはほんの少し楽観的な言葉で答えた。
気休めに近いが、慎重論は司令と副司令に任せて、こちらは少し明るめに振舞う方が全体的な空気を和らげるとペニサスは
理解している。

( <●><●>)「そうかもしれませんが……」

( ゚д゚ )「警戒は怠らずに、最後まで慎重にな」

('、`*川「了解です。まあ、彼らもその位はわかっていると思いますよ?」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:39:20.33 ID:rVN58s+s0

物の見事に2人が慎重論を口にするのに、思わずペニサスは吹き出しそうになった。
どちらも真面目過ぎる嫌いがあるが、それが功を奏したのか、上手く噛み合ってここまでやって来れた。

ミルナにワカッテマス、この2人がいなければこの基地を存続させ、戦い抜く事は出来なかっただろう。
2人はこの基地にとって必要で、そしてこれからの戦いにも必要なのだ。

('、`*川「……」

( <●><●>)( ゚д゚ )

ペニサスは並んで情勢の見解を話すミルナとワカッテマスを見詰めていた。
先日の持ちかけられたあの話を、自分はどうするべきなのか今も決め兼ねている。
言い分はよくわかるし、確かに彼ならばそういった行動を取りそうでもある。
しかしながら、まだ別の手も考えられるのではないかとペニサスは思う。

(゚、゚トソン「SA各機、巨大フェイスの左腕に向かって攻撃を仕掛けます」

ペニサスの考え事がトソンのよく通る声によって遮られる。
今は余計な事を考えているべき時ではないと、ペニサスは大きく頭を振り、モニターに集中した。

('、`*川「巨大フェイス下方よりフェイスの一群接近中。全機、気を付けなさいよ?」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:41:34.19 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「──wwヘ√レwv─了解─wv─」

( ^ω^)「──wwヘwvさっきから気になってたんですが……─wv─wv─」

(*゚ー゚)「─wwヘ√レwv─ん? 何かあった?─vwv─」

( ^ω^)「──wwヘwvこいつの下の方からフェイス湧いて来てますお─wv─」

こいつと、内藤は巨大フェイスの下方をズームアップした画面をSA各機と司令部の方に送る。
そこにはフェイスの集団が巨大フェイスを囲むように存在していた。
.  _,
从 ゚∀从「─wwヘ√レwv─よく見えねえな……─wv─」

(゚、゚トソン「画像、解析終了しました」

(*゚ー゚)「─wwヘ─おお、さすが手早いね─vwv─」

( <●><●>)「これは……クラックですね」

ミセ*゚д゚)リ「うへえ、これって巨大フェイス内に存在してるんじゃないの?」

ミセリの言葉通り、クラック・ポイントが巨大フェイスに内包される様に複数存在していた。
さして進化がないと判断していた巨大フェイスではあったが、それはどうやら間違いだったらしい。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:44:21.39 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「─wwヘ─なるほど、もっと後方の海中にでもあるのかと思っていたら、これは盲点だったな─wv─」
  _
( ゚∀゚)「─wwヘ√レw─なーに、むしろクラックを探す手間が省けたじゃねーか─wv─」

気軽な調子でいうジョルジュに、ハインリッヒは一瞬、呆れた表情を浮かべたが、違いないと同意した。
それに内藤、続いてしぃも頷き、SA搭乗者達は気圧される事無く、巨大フェイスに向かう。

(゚、゚トソン「各機、任務続行……気を付けてくださいね」

( ^ω^)「──wwヘwv任せてくださいお─wwヘ√レw─」

('、`*川「ちゃんと帰ってきなさいよ」

从 ゚∀从「─wwヘ√レwv─ああ、わかってるって─wv─」

ペニサスはSA搭乗者全員の顔を確認する。
これからの事を考えれば、誰も失えない戦いだ。
そしてこれ以上、誰も失いたくないとペニサスは思う。

先に逝った者達一人一人の顔がその脳裏に浮かぶ。
彼女はその顔を、名前を、一生忘れないと心に誓う。
それが残された者の責務だと。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:49:05.62 ID:rVN58s+s0



  _
( ゚∀゚)「よし、先に行くぜ!」

いつも通り誰かの返事を待つ事もなく、ジョルジュはシュヴァルベの速度を上げ、巨大フェイスに向かう。
ハインリッヒはそれを既に想定しており、シュヴァルベの進路上のフェイスを狙撃する。

从 ゚∀从「内藤、ジョルジュの後ろを頼む」

( ^ω^)「了解ですお!」

答える内藤も既にシュトルヒを前進させていた。
言われずとも自分がやるべき事は理解している。

もとより出来る事が限られているのだ。
限られた人員、限られた機体、必然的に取れる戦術も限られて来る。
後はその限られた中で、その精度を上げて行くしかない。

それが自分達が生き残る道で、島を守る為の道なのだ。

从 ゚∀从「しぃさん、こっちも戦線上げますよ!」

(*゚ー゚)「オッケー、ちゃちゃっと決めましょ!」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:53:30.37 ID:rVN58s+s0

ナハティガル、レルヒェの順に残りの2機もゆっくりと前進を開始する。
前進しながらも後方からの狙撃で先を行く2機の援護の手は休める事はない。

从 ゚∀从「大腕、来るぞ!」
  _
( ゚∀゚)「わーってるよ! 内藤、2本ともかわしたら下から行くぜ?」

( ^ω^)「把握!」

迫る大腕に怯むことなく、シュヴァルベとシュトルヒは速度を保ったまま前進する。
2機は大腕とすれ違うようにその機体を下方に滑らせた。
  _
( ゚∀゚)「おっしゃぁっ!」

( ^ω^)「お先に」

急制動を駆け、上昇しようとするシュヴァルベの横をシュトルヒがいち早く大腕に向かう。
機体制御をAIに預け、速度調節に専念した結果、内藤のシュトルヒの方が素早く体勢を立て直せた。
  _
(;゚∀゚)「んな!? 俺より早いだと!?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:56:32.74 ID:rVN58s+s0
( ^ω^)b「You are slowly」
  _
(#゚∀゚)「んだと!? コラァァァァ!!!」

(゚、゚トソン「──wwヘ√レwv─内藤君、その英語間違ってますよ?─ww─」

(;^ω^)「ちょ、先生、こまけえwww」

从#゚∀从「お前ら、遊んでんじゃねえぞ!」

( ^ω^)「わかってますお! ヴェノム!」

機体の後方に回していた大刀、ヴェノムを担ぎ直し、上段から振り下ろす。
巨大フェイスの大腕とヴェノムが触れた瞬間、金属を削るような甲高い音と共に一際大きな火花が散る。

( >ω<)「うぉ、眩しい!?」

モニターを埋め尽くした光に思わず内藤は目を閉じる。
そのままヴェノムを押し付けるようにして大腕を切断した。

( うω^)「一丁上が──」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 22:59:01.90 ID:rVN58s+s0

从;゚д从「内藤!?」

斬り墜とした大腕とは別の大腕が、シュトルヒに向かって振り下ろされる。
かわしたはずの大腕は、上空に振り切る前に逆方向に向かって斬り返されていた。

(;^ω^)「やべッ!?」

無理矢理ヴェノムを押し切り、大腕を切断したシュトルヒの体勢は大きく崩れていた。
内藤は姿勢制御にAIを当て、ヴェノムを機体の眼前に掲げ、振り下ろされる大腕の攻撃をいなそうとする」

(;^ω^)「お?」

不意に両腕が軽くなった。
それがヴェノムを取り落したのだと気付くわずかな時間、内藤は死んでいった仲間の顔が浮かんだ様に思えた。
目前に迫る巨大フェイスの大腕が自身に告げる物を、内藤は無意識に理解していた。

从;゚Д从「内藤ぉぉぉぉ!!!」

(*゚д゚)「まだ!!!」

その声と共に、しぃのナハティガルがシュトルヒと大腕の間に入り込む。
両手を広げ、シュトルヒを、内藤を守るように。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:02:09.78 ID:rVN58s+s0

从;゚∀从「しぃさん!? いつの間に──」
  _
(;゚∀゚)「しぃさん、無茶だ──」

(;^ω^)「しぃさん!? 逃げ──」

ナハティガルのセイクリッド・フィールドを持ってしても、あの大腕の質量を受け止める事は不可能だ。
それをわかっていた内藤達は、口々にしぃを止めようとするが、しぃは臆する事無く大腕に向かう。

(*゚д゚)「行くよ!」

ナハティガルの両腕をそれぞれ逆の肩に添え、セイクリッド・フィールドの放出パーツを取り外す。
そのまま両手を交差させ、それぞれの腕に取り付け、腕に収納されていた鎖を巻きつけた。

(#*゚д゚)「セイクリッド・チェェェェンソォォォォッ!!!」

从;゚д从「な!」
  _
(;゚∀゚)「何と!?」

(;^ω^)「予想外です!」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:04:57.01 ID:rVN58s+s0
しぃの大音声と共に、放出パーツが回転し、高密度のセイクリッドが放出される。
パーツに巻き付けられた鎖も、高密度のセイクリッドを纏いながらチェーンソーのように回転する。

(#*゚д゚)「どっせぇぇぇい!!!」

しぃが吼え、殴り付けるようにナハティガルの両腕を巨大フェイスの大腕に伸ばした。
一際大きい金属を削るような甲高い音が響き、振り下ろされる大腕が止まる。

(#*゚ぺ)「ぐぬぬぬぬ──!!!」

高出力のセイクリッド・フィールドを流用したセイクリッド・チェーンソーのお陰で大腕に押し切られる事は何とか防いではいるが、
機体自体の出力が低いナハティガルではそう簡単に大腕を切断する事が出来ずにいる。
  _
( ゚∀゚)「内藤!」

( ^ω^)「!」

ジョルジュの声に、一瞬呆けていた内藤は自分が今何をすべきか悟る。
声と共に下方から投擲された何かに気付き、内藤はそれを追った。

( ^ω^)「サンクス、ジョルジュさん!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:07:45.64 ID:rVN58s+s0
( ^ω^)「しぃさん!」

その言葉で状況を察したしぃは、ナハティガルの出力を一気に上げ、大腕を押しやるように両腕を押し付け、その反動で後方に退避した。
内藤は下方から投げ渡されたヴェノムを構え、ナハティガルと同じ場所に斬り付ける。

(#^ω^)「うおぉぉぉぉぉ!!!」

気合一閃、内藤はヴェノムを下段から振り上げる。
金属音と火花を散らし、最後の大腕はあっさりと空に舞った。

从 ゚∀从「いよっしゃッ!」

(゚、゚トソン「──wwヘ─下方からフェイスの一団、来ます─ww─」

喜びもつかの間、巨大フェイスの下方より湧き出るフェイスがその数を増した。
大腕を全て失った事により、防衛機能をそちらに回したのかもしれない。
  _
( ゚∀゚)「内藤、そのまま行け!」

シュヴァルベを迫るフェイスの方に急降下させ、ジョルジュは怒鳴るように内藤に告げる。
その意を察したハインリッヒとしぃも、既に機体を展開させ、シュトルヒの援護に回っている。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:10:49.11 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「内藤!」

(*゚ー゚)「内藤君!」

( ^ω^)「了解!」

振り上げたヴェノムを上段に構えたまま、内藤は巨大フェイスのコアに向け、一直線にシュトルヒを飛ばす。

防御は考えていない。

そこに頼れる仲間がいるから。

(#^ω^)「こいつで、終わりだぁぁぁぁッ!」

内藤はヴェノムを大上段から斬り下ろし、外殻ごと巨大フェイスのコアを真っ二つに斬り裂いた。

空に霧散する巨大フェイスだったものの残骸が、この戦いの終わりを告げた。




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:15:24.59 ID:rVN58s+s0

ξ゚听)ξ「おかえり。お疲れ様」

( ^ω^)「お、ただいまだお」

ツンから差し出されるドリンクを受け取り、内藤は笑顔でツンに挨拶を返す。
残りのフェイスを掃討し、内藤達4人は島に帰投した。

从 ゚∀从「そっちは変わりないか?」

(´<_` )「残りのフェイスがこちらに強襲って事もなく、静かなもんだよ」
  _
( ゚∀゚)「しぃさんは大丈夫かい?」

(*゚ー゚)「うん、流石に久しぶりなんでちょっとしんどかったけど、大丈夫だよ」

それぞれの表情が激しい戦いの後でも比較的明るいのは、人的被害を出さず、機体の損傷も軽微であった事が大きいだろう。
前回は数多くの犠牲を出し、ようやく倒せた巨大フェイスを誰も欠けずに倒せたのは気分的にだいぶ楽になった。
  _
( ゚∀゚)「そっか、でも、あんまり無理しないでくださいよ」

(*゚ー゚)「ええ、無理はしない。私に出来る事をするだけだよ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:18:49.36 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「しかし驚いたな。いつの間にあんな隠し玉仕込んどいたんだ?」

ハインリッヒが言う隠し玉が指す物は、今回の戦闘でナハティガルが使用した武器、セイクリッド・チェーンソーの事だ。

(´<_` )「ああ、あれか。昨日色々とな」

先日、弟者達がしぃを呼び止め、同様にしぃが話があると持ちかけた話、ナハティガルの武装の話だ。

( ´_ゝ`)「前回の任務の際、その性能の多くを通信系に割いていたからな」

(´<_` )「改修の際、他の機体と同じ様に出力を上げていたし、通信性能も若干下げて、武装追加できる余裕は作っていた」

(*゚ー゚)「今後は戦闘任務がメインなんだから、それ以外の機能は削減して、って話をしようと思ったんだけど先にやってあったよ」

从 ゚∀从「なるほどなー」

随分と手際のいい話だとハインリッヒは感心して兄者達の仕事を褒める。
しぃもそれに頷き、2人を褒めた。

(´<_`*)「ま、まあ、整備士としては当然の事だがな……」

(*´_ゝ`)「崇め奉ってもらっても私は一向に構わんよ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:20:46.14 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「調子に乗んな、馬鹿兄」
  _
( ゚∀゚)「そこで切ると俺が馬鹿って言われてる気分になるんだが?」

从 ゚∀从「間違ってはいないからまとめて言った」
  _
(;゚∀゚)「馬鹿はともかく、兄者と一緒にすんなよ」

( ´_ゝ`)「あれ、何か俺、不当に貶められてね?」

(´<_` )「いつもの事だから気にするな」

( ´_ゝ`)「え? あ、うん、そうだね、いつもの事だよね……」

从 ゚∀从「てか、何でチェーンソーなんだ? 格闘武器にする理由は他武装とのバランスでわかりはするが」

(*´_ゝ`)「そんなもん、カッコイイからに決まってるじゃないか!」

ハインリッヒのその問いに、肩を落としていた兄者が詰め寄らんばかりの勢いで目を輝かせて答える。
.  _,
从 ゚∀从「カッコイイか、あれ?」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:25:06.98 ID:rVN58s+s0

(´<_` )「コンパクトな構造で高出力を引き出せるという点では、理に適った武器だが、カッコイイかどうかは……」
  _
( ゚∀゚)「何言ってんだ、カッコイイじゃねえか、チェーンソー」
.  _,
从 ゚∀从「うるせーよ、同類」

またいつのもよくわからない漢の浪漫とかそういうものだろうと、ハインリッヒはばっさりと切り捨てる。
兄者達が言うような、気合で何でも出来るなら信じてやってもよいが、現実はそれだけでは如何ともしがたい。

(*´_ゝ`)「世の中の大半は気合で何とかなるぞ? 気合があれば何でも出来る」
.  _,
从 ゚∀从「出来ねーよ」

(*´_ゝ`)「気合が上がれば与えるダメージは増え、受けるダメージは減る」
.  _,
从 ゚∀从「どこの世界の理屈だよ」

ハインリッヒは付き合ってられないと仕草をし、視線を移す。
話に絡んで来ないと思ったら、内藤はツンと何やら熱心に話し込んでいるようだ。

そのハインリッヒの視線の向く先に気付いたのか、兄者が内藤に声を掛けた。


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:30:02.32 ID:rVN58s+s0

(*´_ゝ`)「なあ、ブーン、お前もカッコイイと思うよな、チェーンソー!」
.  _,
从 ゚д从(空気嫁よ、馬鹿兄者……)

(´<_` )「……」

( ^ω^)「お! 僕もカッコイイと思いますお!」
  _,
从;゚д从「うぇ!? お前もそっち側?」

(*´_ゝ`)「フッフッフ、これで3対2だな、ハイン君?」
  _,
从;゚皿从「何か兄者に勝ち誇られるとムカつく!」

(´<_` )「確かに。ものすごくどうでもいいことなのに、兄者だと腹立たしい事この上ないな」

(;´_ゝ`)「いや、何かさっきから俺の扱いひどくね?」

( ^ω^)「いつも通りですお!」

(;´_ゝ`)「そんな素敵な笑顔で言うなよ……」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:36:13.75 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「ツン、お前はどう思う? ダサいよな、あれ」

兄者がへこんでいる隙に、ハインリッヒは新たな賛同者を得ようとツンの方に声をかける。
しかし、ツンからは返事がなかった。

从 ゚∀从「ツン? どうした? 聞こえてるか?」

ξ゚听)ξ「え……? あ……何?」
.  _,
从 ゚∀从「何だよ、ぼーっとして。あれだよあれ、ナハティガルのノコギリ、ダセーと思わね?」

( ´_ゝ`)「ノコギリじゃなくてチェーンソーだ。ノコギリはノコギリで味があるがな」
  _
( ゚∀゚)「今度、レルヒェの頭と両肩にノコギリ付けてみね?」
  _,
从;゚д从「止めろ! ダサくて死ぬわ!」

(*´_ゝ`)「当然丸ノコだろ? いいねぇ。腹にも仕込むか」

从#゚皿从「止めろっつってんだろうが!」

ハインリッヒが兄者に掴みかかり、その首を絞める。
それでも兄者は次の出撃を楽しみにしてろと、顔を蒼くしながらも笑い続ける。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:46:12.81 ID:rVN58s+s0

ξ゚听)ξ「その辺にしときなさいよ、こんなんでもまだやらせる仕事あるんだから」

从;゚∀从「お、おう、それもそうだな……」

普段から年の割には大人びた雰囲気のあるツンだが、いつもにもました静かな空気に、ハインリッヒは思わずその手を緩めた。
そこに若干の引っ掛かる物はあったが、ツンの顔からは何も読み取る事は出来なかった。

(|ii´_ゝ`)「ウフフ……助けられたけど、こんなんって」

ξ゚听)ξ「ついでに言えば、私もあれはダサいと思うわ」

(|ii´_ゝ`)「何……だと……」

从 ゚∀从「これで同票だな」

( ´_ゝ`)「……」

从 ゚∀从「……」

( ´,_ゝ`)「……」

从 ゚一从「……」

ハインリッヒと兄者は一瞬の間の後、不敵な笑みを浮かべこの場にいる最後の一人、しぃの方に目を向ける。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:50:59.99 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从( ´_ゝ`)「しぃさん!」

(*゚ー゚)「え? 私?」

(*゚ー゚)「そうね、私は……」

(*^ー^)「カッコイイと思うよ?」
  _,
从;゚д从「mjd?」

( ´_ゝ`)「……」
  _,
从;゚д从「……」

( ´,_ゝ`) プッ

从#゚−从「ウゼぇ……」

(´<_` )「さて、馬鹿話はその辺にしておこうか」

今にも兄者を殴り飛ばしそうな勢いのハインリッヒを弟者がやんわりと制す。
弟者は既に話の輪からは抜けており、その手には整備用の携帯端末が握られていた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:54:36.66 ID:rVN58s+s0

从 ゚へ从「何だよ、やけに冷静じゃねーか。お前はこのセンスのない集団の中にいるのが耐えられるのか?」

(´<_` )「最終的にチェーンソーの採用を決めたのはしぃさんだったからな。こうなるのはわかっていたし」

从 -∀从「ああ……」

諦めた様に大きく首を振り、ハインリッヒは後ろを振り向く。
こいつらの嗜好とは一生分かり合えないと考えているハインリッヒではあるが、時折自分も武器名を叫んでいる事に
気が付いていないようだ。

(´<_` )「ほら、兄者、俺らは整備だ。今日はここで終わりってわけじゃないんだ」

( ´_ゝ`)「おっと、そうだったな。……お前らも、ちゃんと休んでおけよ」

1体の巨大フェイスは倒したが、残り3体の巨大フェイスは未だ島に向けて侵攻中だ。
島からの脱出の為、駆除する必要があったのは東側の1体だけではあったが、1体倒された事により、残りの巨大フェイスが
意図せぬ行動を取る可能性も考えられる。
そんな有事の場合に備えて、機体の整備を急ぐ必要があり、搭乗者達は待機する必要がある。
  _
( ゚∀゚)「ああ、そうだな。ちゃんと休んどかねーと、大事な時に誰かさんみたいにポカやらかしかねないしな」

そう言ってジョルジュは揶揄するような笑みを内藤に向ける。
今日の戦闘で、内藤がヴェノムを取り落とした事を言っているのだろう。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:57:38.59 ID:rVN58s+s0

(;^ω^)「お……」

内藤は困った表情で返答に詰まる。
ジョルジュがからかい半分なのはわかっているが、あれは確かにまずいミスだったと思う。
しかし内藤が口を開くより先に、ツンが声を上ずらせ、割って入る。

ξ;゚听)ξ「あ、あれは──!」

(;^ω^)「ごめんお! ちょっとドジっちゃったお。次は気を付けるお」
  _
( ゚∀゚)「おう、気ぃ付けろよ? 俺達は今1機でも欠けるわけにはいかねーんだからよ」

今度は内藤が割って入り、強引に話を終わらせる。
何か言いたげなツンに向かい、自分が悪かったと再度内藤は謝る。

ξ;゚听)ξ「それは違……」

( ^ω^)「大丈夫だお。次はちゃんとやるお」

そう言って内藤はツンの両肩を軽く叩く。
その笑顔にツンは何も言えなくなった。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:59:10.87 ID:rVN58s+s0

ξ; − )ξ(あれは……私の……)

(*゚ー゚)「さあ、私達は整備の邪魔をしないように休憩室にでも行きましょうか」

从 ゚∀从「そうしますかね。よろしく頼むぜ、弟者、馬鹿兄者」

(´<_` )「ああ、任せろ」

(;´_ゝ`)「何か余計な冠詞が付いてるぞ?」

(´<_` )「うるさい馬鹿兄者。いいからお前はシュヴァルベの──」

整備をと言い掛けた弟者の言葉をサイレンの音が遮った。

緊急警報。

それが指す事の意味を一瞬にして把握した全員は、それぞれのやるべき行動を取る。
  _
( ゚∀゚)「兄者! 補給は終わってるな?」

( ´_ゝ`)「あと五分待て! 残りの各機もだ!」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/03(土) 23:59:49.42 ID:rVN58s+s0

从 ゚∀从「防衛戦なら満タンはいらねえ。早めに切り上げろ」

( ´_ゝ`)「それを踏まえての5分だ」

(*゚д゚)「5分は長いよ。40秒で支度しな!」

(;´_ゝ`)「イエ……じゃなくて、無理です、マム」

(´<_` )「3分待ってください。その間に搭乗者達は状況の確認を」

( ^ω^)「把握!」

内藤は弟者の言葉に従い、ブリッジへの連絡用のフォンを手に取ろうとする。
しかしそれをいち早くツンの手が掴んだ。

ξ゚听)ξ「ブリッジ! 状況はどうなってんの! この警報は何!?」

ミセ;゚д゚)リ「うひょえあ、その、あの、敵がにょわーって」

ξ#゚听)ξ「落ち着きなさいよ! つーか、トソン!」

全く要領を得ないほど焦りまくっているミセリに業を煮やし、比較的落ち着いてるはずであろうトソンを名指しする。
次の瞬間、受話口からトソンの落ち着いた声が届く。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:01:41.23 ID:r4iwyjLx0

(゚、゚トソン「はい、巨大フェイスに動きがありました。しかし……」

ξ゚听)ξ「しかし?」

(゚、゚トソン「すみません、この警報は無しになるかもしれません」

ξ;゚听)ξ「は?」

( ^ω^)「トソンさん、何て言ってるんだお?」

呆気に取られたツンの反応に、不思議そうな顔で内藤が状況を尋ねる。
ツンはそれを片手を挙げて制し、トソンに再度尋ねる。

ξ;゚听)ξ「どういう事? わかるようにお願い……します」

(゚、゚;トソン「そ、そうですね。その、残りの巨大フェイスの変化が、どうも緊急ではなさそうな状態でして……」

詳しくはブリッジに来てもらった方がいいと言うトソンの言葉に、ツンは了承の言葉を返し、内藤達に告げる。

ξ゚听)ξ「ブリッジに行くわよ」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:03:36.32 ID:r4iwyjLx0

( ^ω^)「把握したお」

从 ゚∀从「今すぐ何かあるって話じゃなさそうだな」

(´<_` )「とはいえ、俺らは整備を続けておくべきだろうな」

(*゚ー゚)「そうだね。万が一に備えて、いつでも飛べるようにしといてね」

( ´_ゝ`)「うむ、任せてくれ」
  _
( ゚∀゚)「よし、行くか」

ジョルジュの先導の元、SA搭乗者の全員とツンはブリッジへ向かう為、エレベーターに乗り込んだ。
途中、全員が無言だったのは、この状況を各自分析していたからなのだろう。

ξ゚听)ξ(緊急ではない変化ね……。状況が好転するとも思えないんだけどね)

エレベーターが止まり、全員早足でブリッジへ向かう。
真っ先にブリッジに辿り着いたジョルジュが、室内に入るなり質問を浴びせた。
  _
( ゚∀゚)「状況は? どうなったんだ?」

(゚、゚トソン「これをご覧ください」

待ち構えていた様に間髪入れず答えたトソンが、ブリッジのメインモニターに近辺の地図を映し出す。
現在、この地図は戦略図として用いられており、巨大フェイスの侵攻ルートや現状が細かく記載されている。

( ^ω^)「お? ルートが?」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:04:40.65 ID:r4iwyjLx0

すぐに戦略図の異変に気付いた内藤が、思わず呟く。
巨大フェイスの侵攻ルートを表す赤の矢印の向きが、これまでとは明らかに変わっていた。

(゚、゚トソン「ええ、そうです。残りの3体の巨大フェイスの侵攻ルートが変わりました」

ξ゚听)ξ「西と南の巨大フェイスがそれぞれ南よりと西よりに向かってるわね……」

从 ゚∀从「何でこんなに逸れてんだ?」

('、`*川「理由は今のところ不明よ。でも……」

( <●><●>)「逸れていると言うよりはこれはまるで合流しようとしている様に見えますね」

( ^ω^)「合流……」

そういわれて見れば、確かに2体の巨大フェイスはそれぞれの距離を縮め、合流しているようにも見える。
何がそうさせたのか、理由は推測こそ出来ても、解明する事は難しいだろう。

(*゚−゚)「単純に考えれば、1体倒されたた事で、1体では敵わないと判断しての合流なんだろうけど……」

ξ゚听)ξ「そんな知能がフェイスにあったのかって話ですよね」

ツンの言葉にしぃは無言で頷いた。
これまでのフェイスは、単純により強いセイクリッドを求め、それに向かって来る様な本能的な行動しか見せていなかった。
状況に応じて音響壁を使って来てはいたが、あれも本能的な防御行動と考える事が出来る。
個体の進化こそすれど、その侵攻手段はお世辞にも知恵を使ったものとは思えなかった。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:07:44.71 ID:r4iwyjLx0

(゚、゚トソン「今の所判断付き兼ねていますが、進路が逸れた事により、島への侵攻が遅くなる事は確実です」

たとえ、巨大フェイスが何らかの目的の元、合流を果たそうとしていたとしても、それにより、島への到達が遅れるのならば、
その間に我々は脱出計画を遂行出来るとトソンは言う。

( <●><●>)「それならば無闇に手を出す必要はないだろうという判断を下したい所ではありますが」
  _
( ゚∀゚)「それだけで終わらない可能性もある、か……」

何にせよ、偵察は必要だろうとジョルジュは言う。

从 ゚∀从「もう、だいぶ近くに来てるんだ。情報だけなら今の無人機で十分だろ」
  _
( ゚∀゚)「だが、自分の目で確かめてこそわかるものもある」

( <●><●>)「どちらにせよ、今すぐに偵察に向かう必要はないと現時点では判断しています」

機体の整備と搭乗者の疲労もあるので、実際に偵察に向かうにしても、翌日以降にすべきだとワカッテマスは言う。
その考えの下に、非常警報も止めたらしい。

ξ゚听)ξ「西と南の巨大フェイスの状況はわかったわ」

( ^ω^)「北の巨大フェイスは……お? これ、止まってるのかお?」

最後の1体、北の巨大フェイスの状況を戦略図で確認すると、内藤が言う様にその進路を指す矢印がどこにも記載されていない。

ミセ*゚ー゚)リ「みたいだね。西と南と時間を同じくして侵攻を止めたよ」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:09:09.52 ID:r4iwyjLx0

(*゚ー゚)「これは単純にラッキーと考えていいのかしら?」

( <●><●>)「今の所はどうとも判断出来ませんね。ですが……」
  _
( ゚∀゚)「楽観視出来るもんでもない、か」

ジョルジュの言葉にワカッテマスが深く頷く。
いつになく慎重かつ、的確な意見を述べるジョルジュの姿に、ハインリッヒはほんの少し違和感を覚えた。
根は真面目な兄だと知ってはいるが、何と言うべきか、どこか余裕のなさを感じてしまう。

从 ゚∀从「……こっちも偵察が必要か」

(゚、゚トソン「こちらはそう簡単にはいかないかもしれませんね」

トソンがモニターを操作し、1枚の映像を映し出す。
そこには、海面に伏すように背を曲げた巨大フェイスの姿と、それを取り囲む多数のフェイスの群れが小さく映っていた。

(゚、゚トソン「無人偵察機を飛ばしていたのですが、近付く前に撃ち落されました」

(;^ω^)「これはまた……」

ξ;゚听)ξ「絶対何か企んでますって感じよね……」

明らかに巨大フェイスを守る様に取り囲むフェイスの群れ。
その中央で動きを止めた巨大フェイス。
それは進化の兆候か、はたまた戦力の増強か今の所はわからないが、どちらにしろ島への到達が遅くなるなら無視しても
構わないものでもある。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:12:07.86 ID:r4iwyjLx0

('、`*川「リスクを考えたら、動かず防衛って話になるだろうけど」

ミセ*゚ー゚)リ「ちゃちゃっとやっつけちゃった方が良い気もしますよ?」

ξ--)ξ「ちゃちゃっとやっつけられるなら苦労はしないわよ」

どちらかと言えばミセリの意見の方が指示されそうな空気であったが、ツンの冷静な一言で全員は黙り込む。
ミセリが言うように簡単にやっつけられるなら島は捨てずに済む話である。
それが出来ないからこそ、今、脱出計画が実行に移されようとしている状況だ。

( ゚д゚ )「そういう事だ。ツンちゃ──ツン君が言うように、現状は専守防衛に努めるしかないと判断せざるを得ない」

それまで無言を貫いていたミルナが話をまとめる。
ハインリッヒや内藤は不安と不満が入り混じったような表情を見せたが、ミルナの言い分が正しい事は理解している。
その他の皆も一様に頷いた。

('、`*川「というわけだから、今日はSA搭乗者の皆は解散、帰宅ね」

このまま変化がなければ明日は休息を取り、明後日にまたブリーフィングを行うとペニサスは告げる。
この状況下で心休まるものでもないが、身体を休ませないとこれからの事全てに差し障る事は皆理解している。

( ゚д゚ )「うむ、では、解散」

ミルナの宣言に従い、内藤達は再びエレベーターに向かう。
一旦格納庫に降り、内藤達は私服に着替えた。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:16:16.28 ID:r4iwyjLx0

( ´_ゝ`)「そりゃまた謎な話だな」

(´<_` )「意図が掴めないのはどうにも厳しいな」
  _
( ゚∀゚)「お前ら、過去の記録を色々調べたんだろ? これと類似した状況とか心当たりねえの?」

一足先に着替えたジョルジュが、兄者と弟者に先ほどのブリッジでの話を説明していた。
ジョルジュにしては気が利き過ぎるし、要領が良過ぎるのではないかとハインリッヒはまた不安になる。

(´<_` )「そういう話なら、しぃさん、何かないですかね?」

(*゚ぺ)「うーん……ちょっと心当たりは思い浮かばないかな?」

アメリカで見た資料にはこのようなフェイスの行動は記録されてなかったらしい。
恐らく、未知の状況だと考えた方が無難であろうとしぃは結ぶ。

ξ゚听)ξ「はいはい、この話はその辺で。あんたらはちゃんと自分達の任務をこなしなさいよ」

更に話し込もうとするジョルジュや弟者達に、ツンが割って入る。
兄者と弟者は機体の整備、SA搭乗者達は休養と、それぞれやらねばならない事があるのだ。

(´<_` )「そうだな。下手な考え休むに似たりってな、兄者よ」

( ´,_ゝ`)ニタリ

(´<_`#)「うぜえ……」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:21:40.24 ID:r4iwyjLx0

从 ゚∀从「ま、ツンの言う通りだな。アタシらは大人しく帰る事にしますかね」

そう言ってハインリッヒはジョルジュの方に視線を向ける。
  _
( ゚∀゚)「あ? ああ、俺はもうちょい残るってか、今日は泊まるわ」

从 ゚∀从「は? 何でだよ?」
  _
( ゚∀゚)「有事に備えるってやつだよ。心配すんな、何もなきゃちゃんと宿直室で寝てるから」

ハインリッヒはジョルジュの顔をじっと見る。
普段と何ら変わらない、陽気さと勝気さの窺える、いざという時は頼り甲斐のある顔だ。

しかしハインリッヒは、今日のジョルジュの様子に何度となく違和感を覚えていた。

从 ゚−从「……何だよ?」
  _
( ゚∀゚)「何がだ?」

从 ゚−从「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

ハインリッヒはジョルジュの真意を探るかの様にその目を見続ける。
ジョルジュはその目を逸らすことなく見詰め返した。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:26:18.99 ID:r4iwyjLx0

从 ゚−从「……無茶はしないでよ?」
  _
( ゚∀゚)「……ああ、皆で、俺も含めた皆で生きる」

その答えに満足したのか、ハインリッヒは大きく頷き、頷いた頭を下げたままで目を閉じる。
ジョルジュは軽く微笑み、その頭をやさしく撫でた。

( ^ω^)「僕らも帰るかお?」

ξ゚听)ξ「私は帰らないわよ。まだやる事があるんだし」

( ^ω^)「お……、でも……」

ツンはここ最近、根を詰め過ぎているように見える。
そう喉まで出かかった言葉を内藤は無理やり押し込んだ。

ξ゚听)ξ「あんたはあんたの仕事をこなした。だから今度は私が私の仕事をこなす。それだけの事でしょ?」

( ^ω^)「……お」

ξ゚ー゚)ξ「大丈夫よ。そんな徹夜ばっかしてないから。お肌荒れちゃうしね」

ξ゚ー゚)ξ「だからあんたは家に帰って、ご飯食べてゆっくり休みなさい」

そう言ってツンは内藤の胸を小突く。
内藤は耐えるようにほんの少しだけ体を反らせ、ゆっくりと頷いた。

( ^ω^)「わかったお。また明日だお」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:30:16.90 ID:r4iwyjLx0

ξ゚听)ξ「明日はあんたは休みよ。まあ、来る分には来てもいいけど、作業とかしなくていいからね?」

( ^ω^)「お、了解だお」

内藤はツンに笑顔で手を振り、他の皆に頭を下げてエレベーターに向かう。
エレベーターの前にはハインリッヒが待っており、内藤に向かって声を掛けた。

从 ゚∀从「んじゃ、帰るか」

( ^ω^)「……」
.  _,
从 ゚∀从「何だよ……?」
     ボソッ
( ^ω^)「……お前の飯は2度と食わんお」

从#゚∀从「あ!? 何だと、コラ? お前が勝手なルール持ち出して作らせたくせに何言ってやがる!」

内藤は激昂するハインリッヒを馬鹿にする様に大きく首を振り、わざとらしく溜息を吐いてみせた。
ハインリッヒは内藤の態度に顔を高潮させ、握った拳を震わせる。

从#゚∀从「おい、コラ……。てめえが作れっていたんだろうが?」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 00:35:11.41 ID:r4iwyjLx0

( ^ω^)「僕は料理を作れと言ったんであって、化学兵器を作れとは言ってないお」

从#゚д从「よし、ブッ殺ぉぉぉぉすッ!!!」

ハインリッヒが拳を振り上げた瞬間、内藤は到着したエレベーターに乗り込み、すぐさまドアを閉めた。
一瞬の事に何が起きたかハインリッヒが理解した時には、既に上昇するエレベーターの中から手を振っている内藤の姿を
確認する事しか出来なかった。

从#゚д从「てめえ、この、待ちやがれぇぇぇぇ!!!」

( ^ω^)「待てと言われて待つバカはいないお」

内藤は先日と同じ台詞をもう聞こえていないであろうハインリッヒに向けて呟く。
昨日の仕返しにしては少しからかい過ぎた気もするが、先ほどからどこか元気のなかったハインリッヒがこれで復調して
くれるなら幸いだろうと内藤は思う。

(;^ω^)「後が少し怖いけどね」

出会い様に殴りかかってくるケースも考慮せねばならぬが、あの怒りはたぶん、今格納庫にいる皆に向けて発散されるだろう
という計算もあった。

ハインリッヒが妙に真面目なジョルジュの態度を心配していた事には気付いていたが、責任感の強いジョルジュがこの状況下で
ああいった態度を取る理由も内藤にはわかる気がした。
しぃもだいぶ気にしていたようだが、内藤はそれほど心配していない。
共に戦った仲間の事だ。ジョルジュは自分で考えられる人間だと内藤は理解している。

だからあまり思い悩むなと、内藤なりにハインリッヒの懸念を紛らわしたつもりだった。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 01:00:14.51 ID:r4iwyjLx0

( ^ω^)「まあ、皆が思い悩むのもわかるおね……」

いつも通り、というわけには行かない状況だ。
それぞれが思い悩み、不安を抱いている事は考えるまでもなくわかる。
それが当然で、本来それは自分が納得いくまで悩むべき物なのだ。

( ^ω^)「でも、時間がないお」

やがて、エレベーターが止まり、内藤は速やかに基地を出る。
ハインリッヒが追って来る可能性もあったが、背後から怒声が響いてくる事もなかった。

( ^ω^)「さてと、どうするかおね」

どうすると言っても、ツンと約束もしたし、食事を取って休むつもりではあるが、その食事をどうするか内藤は考えていなかった。
自分で作っても良いのだが、戦闘後という事もあり、身体はそれなりに疲弊していた。

( ^ω^)「食堂に行くかお」

(*゚ー゚)「さんせーい」

(;^ω^)「お!?」

自分に向けた呟きに返事が来るとは思っていなかった内藤は、勢いよく声の方を振り向く。
いつの間にそこにいたのか、しぃがにこやかな笑みを浮かべ立っていた。

(;^ω^)「しぃさん……いつの間に」

(*゚ー゚)「ついさっきよ」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 01:03:01.45 ID:r4iwyjLx0

( ^ω^)「今日はもうお帰りですかお?」

(*゚ー゚)「ええ、特にやる事もないしね」

そう言ってしぃは歩き出した。
内藤が立ち尽くしたまま、歩き去るしぃの姿を眺めていると、数メートル歩いた辺りでしぃは足を止め、内藤の方を振り向いた。

(*゚ー゚)「行かないの?」

( ^ω^)「お?」

(*゚ー゚)「食堂」

( ^ω^)「おー」

いつの間にか一緒に行く流れになっていたらしいとやっと内藤は気付いた。
特に断る理由もないので内藤も返事と共に歩き出してた。

(*゚ー゚)「急がないとハインちゃん追って来るかもよ?」

( ^ω^)「今頃兄者さん辺りがサンドバッグになってるから大丈夫ですお」

(;*゚ー゚)「有り得るけど、君も事も無げに言う様になったわね」

( ^ω^)「成長しましたお」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 01:03:58.26 ID:r4iwyjLx0

勿論、冗談ではあるが、事実になっている可能性も否定出来ないと内藤は思う。
しゃべり方こそ敬語を使うなどしてはいるが、共に戦い抜いた仲間達だ。
余計な気を置く必要のない、本年の付き合いが出来ていると内藤は考えている。

(*゚ー゚)「そうだね、ブーン君は随分成長したように見えるよ」

( ^ω^)「お?」

しぃは立ち止まり、内藤の正面に立つ。
そしてちょいちょいと指を自分に向けて動かし、近くに寄る様に指示する。

内藤がそれに素直に従い、しぃに近付くと、しぃは今度は手のひらを下に向け、上下に揺らす。
内藤はその動きの意図を察せぬまま、その手をよく見るため、身を少し屈めた。

(*゚ー゚)「ほら、やっぱり背もこんなに伸びてるね」

不意に頭に柔らかな感触を感じた。
少し前にも感じたそれが何か、内藤はすぐに気付いた。

( ^ω^)「そんなには変わってないと思いますお?」

(*゚ー゚)「そんな事ないよ。ほら」

しぃは内藤の頭を撫でていた手を内藤の胸に当て、まっすぐ立つように促す。
そして内藤の真横に立った。

(*^ー^)「前は顔を上に向けなくても良かったのにねー」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 01:05:11.79 ID:r4iwyjLx0

( ^ω^)「しぃさんが縮んだんじゃないですかお?」

(*゚д゚)「縮んでないわよ」

成人女性にしては比較的小柄なしぃは身長の事をからかわれるのが好きではない。
よくギコがその事をからかっていた事を内藤は思い出していた。

( ^ω^)「僕は変わってないですお」

内藤は笑っていた顔を引き締め、真面目な顔でしぃに言う。
その微妙な意味合いを、しぃならわかってくれると内藤は理解していた。

(*-ー-)「そうだね……君は変らずやさしい子だね」

(*-ー-)「……でもやっぱり変ってはいるよ。立派に成長してる」

( ^ω^)「自分ではよくわかりませんお……」

(*゚ー゚)「そんなもんだよ」

自分の事だからこそ、気付き難い事もある。
他人の事を第一に考えている内藤だからこそ、自分の成長に気付いていないのだろうとしぃは思う。

しぃは内藤の肩を軽く叩く。
そんなものだと、もう1度同じ言葉を掛けて。

そんなしぃの姿に、そんなものかもしれないと内藤も笑って言った。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 01:06:57.81 ID:r4iwyjLx0

(*゚ー゚)「時間は絶えず流れて、人は絶えず成長して行くの」

(*゚ー゚)「それをただ変化と捕らえるか、成長と感じるかは自分次第だよ」

( ^ω^)「……島を捨てる事は、成長なんですかお?」

(*- -)「……それは難しい話だね。でも……」

(*゚ー゚)「それを知る為にも、私達はがんばらないとね」

( ^ω^)「……はい」

ちゃんと答えをあげなくてごめんと謝るしぃに、内藤はゆっくりと首を振った。
皆それぞれ、自分の答えを胸に脱出の日を迎えようとしている。
だから自分も、自分の答えを自分で見つけねばならないと、内藤はしぃに言う。

(*゚ー゚)「うん、良い答えだね」

( ^ω^)「まだ答えじゃないですお。でも、ちゃんと自分の答え、見つけますお」

内藤は少しだけ心の靄が薄れた気がした。
いつまでもぐずぐずと悩んでいる場合ではない事はわかっていても、自分が未だ島を捨てるという考えを受け入れられず、
どうしてもその蟠りを拭い去る事が出来ていなかったのだ。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/04(日) 01:07:58.51 ID:r4iwyjLx0

(*^ー^)「うん、いい答えだね」

しぃはそう言って再び内藤の頭を撫でる。
今度は自分が背伸びをして、立ったままの内藤の頭を撫でた。
内藤も頭を下げる事はせず、そのままの自分でいた。

( ^ω^)「その癖、直りませんおね」

(*゚ー゚)「ここは変らなくてもいい部分だからね」

嫌だった? と問うしぃに内藤は無言で首を振る。
しぃが内藤の頭を撫でる時、自分の事の様に嬉しそうな顔をしていたギコの姿を思い出しながら。

( ^ω^)「じゃあ、そろそろ食堂行きますかお。僕はもう、お腹ぺこぺこですお」

(*゚ー゚)「ええ、行きましょうか」

(*^ー^)「今日はブーン君の成長を祝してしぃお姉さんが何でもおごってあげちゃうぞー」

( ^ω^)+「その言葉、後悔しないでくださいお?」

内藤としぃは並んで食堂に向かい歩く。
お互いがお互いの足取りを軽くしてくれた事に感謝の念を抱きながら。

今は亡き人の、今も在る思いを胸に、2人は同じ道を歩く。


    ( ^ω^)は島を守るようです  後々々々編 終わり



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