とある島のようです

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:22:17.15 ID:fvQMbOe10

捨てられた島があった。


地図には載っておらず、名もない島。
位置を何処かと言えば正式な名称等があれば、九州の長崎に属すると思われる名無しの島。


元々この島は、日本の著しい経済成長の発展の証として作られた島。
しかし、無能な政権が執った政策で成長期が終わりを迎えるや否や、この島はトカゲの尻尾きりの様に捨てられた。


本土と島を結ぶ橋は、とうの昔に壊れてしまった。
何で壊れたかのかは、分からない。


災害で壊れたとか、誰かが壊したとかそんな話があった。
しかし、壊れた今となってはどうだって良い話だ。


その捨てられた島は、不恰好に生きていた。
本土から流れ着いた、不恰好な人間達と共に。


"その島は、確かに生き続けていた"



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:24:19.55 ID:fvQMbOe10

怠け者だけを集めれば、その中で自然と働き出す者が出てくる。
その捨てられた島はそうやって島独自の社会を生み出していた。


法律などは一切無い。いや、一応は国の領土内なので法律はある。
ただ、この捨てられたこの島では本土の法律などまったく意味を持たず、存在しないに等しいのだ。


別に人を殺そうが、犯そうが、物を奪おうが、盗もうが構わない。
相手次第では中途半端に生かしておいたが為に後々復讐されてご臨終、なんて事もある事だろう。
いわゆる、やっていいのはやられる覚悟が有る奴だけだと言う事だ。


この島で生きている限り、死の確率は宝くじが当たる確率よりは遥かに高いだろう。
島で暮らす者の中で本土から来た者は、己が吸う空気の味が本土とは全く違っている事に自然と気づかされる。


時に血なまぐさい戦場で戦う者、時にただ気ままな生活を送る者、そんな奴らが暮らすのがこの島だ。


この島の土は多くの人間の血を吸っている。
そうやって、島の社会は生まれてきた。島は生き続けてきた。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/01/21(土) 00:25:39.87 ID:fvQMbOe10

この島は4つの区画に分かれている。
東区画、西区画、南区画、北区画の4区画。


それぞれが己の自治区として野蛮な戦士達は勢力争いを繰り広げていた。


一つ区画が変われば文化も違う。
一つ区画が変われば空気も違う。
一つ区画が変われば社会も違う。


ただ、共通して言える事は、全員が何かしらの泥臭い反吐の出るような過去を持っている事だ。
家族を捨ててきた者、親に捨てられた者。人を殺した者。社会から逃げてきた者。


だが、それを誇りに思っている奴もいる。


島の住人は、何かしらの事情を持ってこの島で生活している。
島は生きている。ただ、不恰好に。ただ、無様に。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:27:21.06 ID:fvQMbOe10

北、東、南、西の区画はそれぞれ違った区画名で呼ばれている。
その名は、区画を統治する集団の名前でもある。

       ミ ヤ ズ
北区画の"美夜守隊"

       ツ ム バ
東区画の"都武覇隊"

       ヨモツ
南区画の"黄泉衆"

       クニガミ
西区画の"国神党"


また、何処にも属さない己の気ままに島に住む稀有な人間もいる。
それは、どの区画からも狙われる事がある反面、恐れられている存在だからだ。


この島では友がいつ死んでも、敵に回るとも分からない。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:28:27.75 ID:fvQMbOe10

この島には幾つかの都市伝説が存在する。
その中で特に話題になるのがこの3つだ。


一つはどの区画にも属さない悪鬼の存在。
一つは東西南北の集団以外の第五の集団。
一つは男女二人組の正体不明の存在。


島内では、この噂について色々な話が飛び交う。
悪鬼を2m近い化け物女だと言う者いれば、鬼の面を着けて素顔を見せない男だと。
第五の集団は存在しない。存在するとすればこの島で死んだ人間達の悪霊だと。


男女二人組に関しては誰もどんな人なのかもまったくわからない。
ただ一つ分かっているのはその2人組が"この島にいる"と言う事だけだ。


誰がその二人組なのか、何処にいるのかはわからない。分からないから都市伝説なのだ。
そんな都市伝説たちが住まう島。


どこかで、誰かが呟いた。


『歓迎するヨ。ウェルカム、糞みタいナ島ヘ』



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:29:53.83 ID:fvQMbOe10










とある島のようです

            第一話「島と住人と」








                         ※本作品は元ネタ有作品です
                         元ネタ:成田良悟氏作 「がるぐる!」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:31:57.37 ID:fvQMbOe10

「なぁ、そいつをこっちに渡してくれないか?」

南区画のとある場所で二人の男が向かい合っていた。
いや、正しくは三人だ。しかし、一人は完全に気を失って倒れている。

周りには人気の無い建物があるだけだ。
建物のコンクリートは所々がどす黒く黒ずみ、コケやカビが繁殖し、長い間放置されていると言うのが分かる。

「………」

言葉を投げかけられた男は口を閉ざし黙秘を続ける。

「散々うちの区画で悪さをして、その挙句に捕まりそうになったらこれだ」

「しかも逃げる方向がこっちの区画と来た。これはお前の区画の差し金って奴か?」

黙していた男がゆっくりと口を開いた。

「どう解釈をするかはそっちの勝手だが、自分の区画の人間が襲われているのを見逃すほど────」

「────俺は心が腐ってないんだよ、"糞アニキ"」

二人の男は不気味なほどに顔がそっくりだった。
まるで鏡のように同じ姿で向かい合う二人の男。

それは、南区画"黄泉衆"の流石兄者と西区画"国神党"の流石弟者の二人。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:33:45.02 ID:fvQMbOe10

( ´_ゝ`)「なるほど、それがお前の答えと言うわけだな? "愚弟"よ」

(´<_` )「………」

二人の間には剣呑な空気が流れる。
まさに一瞬触発の状態となっていた。


( ´_ゝ`)「「──────ッ!」」(´<_` )


刹那、二人は全く同じタイミングで動き出す。
ただ単純に相手の"命"を奪う為に。

兄者は驚異的なスピードで相手に迫り、腰の刀を抜刀する。
対する弟者は懐から素早く銃を取り出し、迫り来る兄者にその銃口を向ける。


(#´_ゝ`)「「貰ったあぁ!!!」」(´<_`#)


勝負は一瞬で終わりを迎える。

兄者の刀は、弟者の首筋でピタリと止まっていた。
対する弟者の銃口は、正確に兄者の眉間へと狙いを定めていた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:35:03.84 ID:fvQMbOe10

二人はそのまま動かずに、ただ互いの顔を見合っていた。
しかしそれは、ほんの少しでも気を緩ませようものならと言う虎視眈々とした眼差しだった。

( ´_ゝ`)「おい、愚弟」

(´<_` )「なんだ糞アニキ」

( ´_ゝ`)「建物から狙ってる連中はお前の仲間の奴らか?」

(´<_` )「奇遇だな糞アニキ。その問いをそのまま返す」

二人は武器をゆっくりと相手から離す、そしてある建物の入り口を見つめた。
それを見計らったかの如く、その入り口から一人の人物がゆっくりと登場した。
全身を黒のスーツの服装で、両手をポケットに突っ込んで歩いてくる男。

「あれ? もう終わり? 殺さないの?」

( ´_ゝ`)「おいおい、何でお前がここにいるんだ?」

兄者のその問いに現れた男は答えた。

「決まってるじゃあん」

その表情には、薄っすらと笑みを浮かべている。

('∀`)「お二人の命を頂戴しに来たんだよ」

その男は、東区画"都武覇隊"幹部の一人、欝田ドクオであった。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:37:07.50 ID:fvQMbOe10

それが当たり前の事のようにドクオは隠す事無く答えた。
半ば呆れた様な口調で、流石兄弟はドクオへと言葉を発する。

(´<_` )「それがどういう事か……分からないお前じゃあ無いよな?」

( ´_ゝ`)「まぁ、殺るってんなら……容赦しないぜ?」

その二人の言葉にドクオは浮かべていた笑みを消す。

('A`)「冗談真に受けちゃってつまんねぇ兄弟だな、おい。
    東の代表として南の大将に会いに来たんだよ」

( ´_ゝ`)「ただの挨拶にしては、兵隊の数が多いようだが?」

('A`)「あ? 護身だけど何か文句でも?」

こいつは何を言ってるんだと言わんばかりにドクオは溜め息をついた。

(´<_` )「興が削がれた。俺は帰る」

( ´_ゝ`)「さっさと帰って泣き寝入りでもするんだな愚弟。そいつは置いていけよ」

(´<_` )「黙れ糞アニキ。こいつはうちの区画の人間だ。連れて帰るに決まってんだろうが」

そう言うと気絶した男に歩んで行き、面倒くさそうに肩に担いでそのまま弟者は去っていった。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:38:47.70 ID:fvQMbOe10

('A`)「兄弟愛ってもんが全く無いんだな」

( ´_ゝ`)「愚弟をどうやって好きになれって? 賢兄の苦労も知らずにな」

唐突に、一発の銃声が建物に反響し、周囲に響き渡る。
誰も微動だにせず、ただ、兄者の頬がぱっくりと裂け、頬を伝い、血が流れていた。

('A`)「大した狙撃手だね全く。さぁ、早く大将の所へ案内して貰おうか?
    それとも、わざわざ出向いた客を門前払いするのが南の礼儀なのか?」

(メ´_ゝ`)「お前ならそれでも構わ─────」

言い終わるか否かのタイミングで、ドクオのポケットに入れられていた左手が兄者の首へと突きつけられる。
その手には小さなナイフが握られていた。

('A`)「冗談をするのは大好きだが、されるのは好まねぇ……」

(メ´_ゝ`)「悪かった。兵隊も下げてくれ。案内するよ」

それをされるのが当然だったかのように兄者も対応する。

二人は幾度と無く同じ戦場で戦ってきたのだ。時には仲間として、そして時には敵として。
相手の性格も自然と分かってくると言うものだ。

(メ´_ゝ`)「ん、あれ。もしもーし。おーい」

('A`)「ん、どうしたんだ?」

(メ´_ゝ`)「無線機壊れてるわ……」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:41:18.73 ID:fvQMbOe10

その一言で迎えが来ないことを察したドクオ。

('A`)「まぁ良いよ。歩いて行こう。今日は気分が良いから」

この一言が出るまで、ドクオが兄者に散々文句を言っていたのは言うまでも無い。
二人は目的地へと向かいながらたわいも無い雑談を繰り広げていた。
しかし、それは日常とはかけ離れたような会話だが、彼らにとっては日常その物なのかも知れない。

(メ´_ゝ`)「ところで、内藤の調子はどうよ?」

('A`)「あぁ、相変わらず元気にやってるよ。この前は北の連中とドンパチして死に掛けてたけどな」

(メ´_ゝ`)「相変わらずって所か、しかし、北とドンパチねぇー……」

('A`)「なんだ? 別に他の区画の事何ざ眼中にねーんだろ、お前さんは」

(メ´_ゝ`)「んーまぁな。ただ、北にはちょいとした────」

( ・∀・)「やぁ!」

この島の都市伝説は何の前触れも無く、二人の目の前に姿を現した。

(;'A`)「!?」

行き成りの登場にドクオは驚きを隠す事が出来なかった。
それは余りにも唐突な登場だった。
一体誰が予想するだろうか?

上から"人"が落ちてくるなどと。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:42:59.43 ID:fvQMbOe10

( メ;´_ゝ`)(おいおい、タイミング悪すぎるぜ全く……)

( ・∀・)「そうかい? 個人的にはナイスなタイミングだったんだけどね」

( メ;´_ゝ`)「サトリか、お前は」

( ・∀・)「あははは。面白い事を言うね」

そして( ・∀・)「ドクオはナイフを投擲する」

(;'A`)「んな!?」

モララーはドクオの奇襲とも言える行動を予知して、投げられたナイフをあっさりとかわした。

( ・∀・)「危ないなー当たったらどうする気さ? 死んじゃうじゃん」

( メ;´_ゝ`)「てめーみてぇな奴はさっさと死ぬに限るけど…なッ!」

今度は兄者がモララーへと、先の弟者と同じように間合いを詰めて抜刀する。
剣先はモララーの胴体部を鮮やかに一閃。しかし、手ごたえは皆無。
切るべき相手がいない切っ先はただ空を流れるばかり。

( メ;´_ゝ`)「掛かった!」

('∀`)「空中じゃあ、避けられないだろ?」

にやりと笑みを浮かべるドクオ。投擲された二本のナイフの一本は心臓部へ、もう一本は頭部へ。
先の攻撃をジャンプして避けたモララーへと迫る。
ドクオは兄者の攻撃を避ける為にジャンプすると先読みをして時間差でナイフを投擲していたのだ。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:46:20.28 ID:fvQMbOe10

( ・∀・)「ふぅー、驚かすね全くー」

しかし、モララーは何事も無かったかのように地に立っていた。
その手には、ドクオが投げたナイフが二本とも握られている。

( ・∀・)「君達も十分サトリじゃんかよー」

('A`)「………。兄者、ここまで案内して貰ったけど悪いな、俺帰るわ……萎えた……」

大将にはドクオが来たと伝えてくれ。そう言うとくるりと反転して来た道を戻り始めた。
それを見てモララーは子供のように声をあげる。

( ・∀・)「えー、帰るのー? まだ遊ぼうよー」

(メ´_ゝ`)「俺も遊びに行くかー……」

( ・∀・)「えー、兄者もー。つまんなーい」

( ・∀・)「じゃあ今度は北に行ってみよーっと。ばいばーい!」

言うが早いかモララーはそう告げると無邪気に去っていった。
モララーはかなり気ままな男だが、この島では最も危険視されている男だ。

相手の次の行動を瞬時に察知し、驚異的な運動能力を見せる。
痩せたその体躯の何処にそんな力がと思わせるような力も持っている。

( ´_ゝ`)(ちっ…相変わらず自由奔放すぎるぜ。"殺人機"が……)


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:48:02.00 ID:fvQMbOe10

( ・∀・)「ふんふんふーん♪」

鼻歌を歌いながら人気の無い路地を歩いていくモララー。
しかし、彼の鼻歌は機械的な声によって遮られる。

『上機嫌だネ。モララー』

その声を聞き、ピタリと歩みを止める。
足元には片腕が?げた人形が転がっていた。残る片腕で大事そうに"無線機"を抱きながら。

それを見てモララーは不快感を露にした表情を見せた。

( ・∀・)「なんの用だよ」

『何、大した話ジャないんだガね』

( ・∀・)「そう、だったら俺は行くよ」

そう言うと人形ごと無線機をぐしゃりと踏み潰した。
そのまま歩みを続けると、今度はゴミ箱の陰から子犬が現れた。

白の毛には対照的な"黒い無線機"を背負いながら

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:49:38.17 ID:fvQMbOe10

( ・∀・)(実録、動物虐待の瞬間って所だな…)

『無線機もタダじゃ無いんダかラ簡単に潰さなイでくれヨ』

( ・∀・)「用件は何だ、"ロミオ"」

『フッフッフッ、それは過去の名サ。今ノ僕ハ、"ジャンヌ"と言う名だヨ』

( ・∀・)「………」

『所で君ハ君は気づいテいたかナ? 君を監視してイる人間達に』

( ・∀・)「気づかないとでも思ってるのか?」

『君の目がソコまで節穴だトハ思っていナイよ』

( ・∀・)「何処の区画の人間なんだろう…分かればそこの幹部でも殺してあげるのに」

『僕ハ親切だから教えてアげるけどネ。彼らハこの島ノ人間ジャないんだヨ』

『そうダネ。君を追って本土かラ来た人達とデも行ってオこうカ』

そう言うと、モララーの眉間の皺はより一層深く刻み込まれた。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:51:46.36 ID:fvQMbOe10

( ・∀・)「……なんでお前は俺の過去を知っている? 誰にも話した事は無い筈だ」

『イヤいや、もしかすると寝言で言ってイタりとかネ? そレに僕はこの島ジャ知らないコトは無い』

『モチロン、"人"も例外デハ無いヨ』

( ・∀・)(この盗撮魔が……)

( ・∀・)(いや、盗聴魔の方が正しいのか? 盗撮聴魔、これは言い難いから無しだな)

( ・∀・)(いやいや待てよ、別に合体させたからって変わらないし何か別の言い方があるはずだ…)

( ・∀・)(固定観念にとらわれてはいけない…何かこう新しい発想を……)

『アー。盛り上がっテる所悪いガ、周りを見渡してゴらん?』

( ・∀・)「?」

言われたとおりに周囲を見渡すモララー。
明らかに空気が変わっていた。
監視していた気持ちの悪い視線と気配が消え去っていたのだ。

『コレは貸しにしテおくよ。モララー』

無線機からそう聞こえると子犬は何処かへとトタトタと去っていった。

( ・∀・)「おい、動物はもっと可愛がるもんだぞ」

その声が無線機に届いたのかは定かではない。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:53:28.08 ID:fvQMbOe10

(メ;ω;)「痛い! 痛いお! もっと優しく塗るお!」

ベッドにうつ伏せに横たわり、内藤は痛みに苦しんでいた。
彼、内藤ホライゾンは都武覇隊の纏め役である。しかし、今のその姿に隊のリーダーの風格は微塵も感じられない。

( ><)「んな事言ったってしょうがないんです! 傷口に塗ってるんだから痛いのは当たり前なんです!」

彼はビロードと言う、この党の若手幹部候補生だ。後方支援を主にする為、事務所にいる事が多い。
そして、わざとだと言わんばかりに傷口へと直接塗り薬を大量に塗るビロード。

(メ;ω;)「そんなダイレクトに! あ! ちょっとこう周りからゆっくり塗って! 痛い!」

( ><)「子供か! 良い大人が傷口に薬塗るだけで痛がるんじゃないんです!」

(メ;ω;)「ビロード! 後で覚えてろお!」

( ><)「あれあれ? そんな事言っちゃって良いんですか? えい」

(メ;ω;)「ぎゃああああああああ! わ、悪かったお! 冗談だお! つんつんするなお!」

( *><)「なんか自分の中で目覚めそうなんです! 楽しいんです!」

( <●><●>)「はい、ストップ。そこまで」

( ><)「あ!」

ヒョイとビロードが持っていた塗り薬を取り上げるワカッテマス。
威圧感のある瞳のが特徴の彼は、この党の情報処理と後方支援を担当している。
ビロードと同じく幹部候補生で目つきこそは違うが、血を分け合った兄弟で、兄なのだ。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:55:28.88 ID:fvQMbOe10

( <●><●>)「痛がってるでしょうが、それに薬はそんなベタベタ塗るもんじゃありません」

(メ;ω;)「流石ワカッテマス! ブーンの気持ちを理解出来る男! そこに痺れる憧れるぅ!」

( <●><●>)「あ、手が滑った」

(メ;ω;)「ぎゃああああああああああ! この鬼! 悪魔! 鬼畜! ギョロ目!」

( <●><●>)「あれあれ? そんな事言っちゃって良いんですか? えい」

(メ;ω;)「ぎゃああああああああああああ!!!」

傷口をわざとツンツンと突くワカッテマスと喚くブーン。
それを見てビロードが兄を止めようとする。

( *><)「やりすぎなんです! ブーンさんホントに痛がってるんです!」

(*<●><●>)「良薬口に苦しと言いますからこの位が丁度良いんですよ」

( *><)「痛がってるんです! やめるんです!」

口ではそんな事を言いながら、塗り薬を指先につけて傷口をツンツンする二人。
その目は完全にサディストの目だった。

(メ;ω;)「ぎゃああああ! 痛い! 止めろ! お前らわざとだろ!」

ガチャと部屋の扉が開き全身黒スーツのドクオが現れた。
ワカッテマスとビロード、そしてブーンの視線もドクオに向けられる。

('A`)「何やってんの……?」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 00:57:55.34 ID:fvQMbOe10

( ><)「と言うわけなんです!」

事情を聞き終えてドクオはふぅーっと深い溜め息を漏らし、呆れた声を出す。

('A`)「おい、ブーン。腐っても隊を纏めてるんだからさ、もっと威厳を持とうぜ……」

(メ^ω^)「痛いもんは痛いんだお……あと腐ってないお……」

('A`)「それに二人もさ、仮にもお前らの上司だよ?」

( <●><●>)「日頃の恨み辛みとでも言いましょうか……」

( ><)「何かこう自分の中で目覚めそうだったんです!」

それを聞いて先ほどよりも長い溜め息を吐く。

('A`)「こっちの兄弟は仲が良いってのあの二人は何であんなに中が悪いのやら……」

それを聞いてブーンは思い出したかのようにドクオに尋ねる。

(メ^ω^)「そう言えば南の大将には会えたかお?」

('A`)「あー、悪いが会えてねぇ。兄者になら会ったんだがな……」

(メ^ω^)「おっおっ? 兄者に会えたなら連れて行ってくれるはずだお?」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:00:31.40 ID:fvQMbOe10

('A`)「道中、モララーが空から降って来たからな……」

"モララー"と言う単語を聞きドクオ以外の3人は体を一瞬強張らせた。

(メ^ω^)「の割にはドクオは怪我をしてないお?」

('A`)「いや、スーツが一つおじゃんだ。あいついつ投げ返したんだよ……糞」

どうやら戦闘中に気づかぬまに反撃を食らいスーツの一部が裂けていたらしい。
道中いつもの店によりスーツを貰ってきたと言うドクオ。

('A`)「で、行く気が失せて帰ってきた。俺が来たって伝えといてって言ったから向こうから誰か来るだろ」

(メ^ω^)「そうだったのかお……。しかし、ドクオが無事で何よりだお!」

('A`)「で、何で事務所がお前らしかいないわけ? 他の奴らは?」

( <●><●>)「それでしたら全員警備に出回っています」

('A`)「あ、そう……」

( <●><●>)「何かあればすぐ連絡をするとの事でした」

('A`)「そうかい。俺は一休みするぜ。後で俺も街に行く」

( <●><●>)「そう言うと思って既に用意してありますので、ごゆっくりどうぞ」

それを聞くとドクオがサンキューと呟き自室へと戻っていった。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:02:22.33 ID:fvQMbOe10

ξ゚听)ξ「被害はどうなってるの?」

川 ゚ -゚)「襲撃による被害は軽微だが、何人か逝った」

その言葉を聞き溜め息をつくのは北区画の"美夜守隊"隊長のツンだ。
彼女の傍に立つのは素直クール。ツンの片腕となり、彼女をサポートしている。

美夜守隊は幹部の全員が"女性"で形成されている。
しかし、兵隊までは皆が女と言うわけには行かない為、当然男も混じっている。
だが、この区画では女性の力の方が強い。

ξ゚听)ξ「まったく、東のバカが急に攻めてくるから……」

川 ゚ -゚)「おそらく偵察がてらに攻めてきたんだろう。兵が少なかったし、すぐに撤退したしな」

ξ;゚听)ξ「そんなに頻繁に偵察に来られても溜まったもんじゃないわ……」

バンと勢い良く部屋の扉が開かれて二人の女が入ってきた。

从 ゚∀从「ただいまー!」

ノパ听)「ただいまああああああああ!」

先に入ってきたのがハインリッヒ高岡。叫びながらの入室は素直ヒートだ。
この二人は美夜守隊の筆頭切り込みコンビとして島では名を馳せている。
そして素直ヒートと素直クールは性格がまったく異なる姉妹。ちなみにクールが姉である。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:03:33.88 ID:fvQMbOe10

ξ;--)ξ「ふぅー…」

ξ;゚听)ξ「あんたらねぇ、もうちょっと乙女らしい行動を取るべきよ?」

川 ゚ -゚)「何処の世界に勢い良く扉を開けて入ってくる女がいる」

ノパ听)「ここにいるぞ!」

川 ゚ -゚)「よし黙れ愚妹。後でしっかり調教してやる」

ノハ;゚听)「え、えぇー…、勘弁してよ……」

从*//∀从「調教って…まさか姉妹で……」

ξ;--)ξ「駄目だ。コイツも早くどうにかしないと……」

ガチャリとゆっくりとドアが開かれて静々と二人の女性がまた入ってくる。

(*゚∀゚)「ただいまです!」

ζ(゚ー゚*ζ「ただいまぁー」

先に入室してきたのはつーだ。明るくボーイッシュで、背丈が低い彼女は美夜守隊の一部の兵からは"何故か"かなりの人気がある。
後者はデレ。ツンと似ているが彼女とは血の繋がりは無い。理由は単純でツンと違い"胸"がでかいからだ。
時に彼女の身代わりとして行動する事もある。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:07:36.54 ID:fvQMbOe10

ξ゚ー゚)ξ「はい、おかえりなさい」

(*゚∀゚)「西区画周辺には以上ありませんでした!」

ζ(゚ー゚*ζ「強いて言えば西の老父にお会いした事ぐらいですねー」

ξ゚ー゚)ξ「ご苦労様、ゆっくりと休んで頂戴」

ノハ;゚听)「あれ? 私らのときと対応が違う……」

ξ゚ー゚)ξ「あの二人みたいに静々と入って来たら同じ対応を取ってあげるわよ?」

从;゚∀从「な…なん、だと……」

ξ;゚听)ξ「何でそれぐらいでこの世の終わりみたいな表情をするのかしらね……」

ちらりと時計を見て時刻を確認しながら、ゆっくりと席を立つツン。

ξ゚ー゚)ξ「クー、後は任せるわ。私は一休みするから」

川 ゚ -゚)「分かった。シャワーの用意がしてあるから使ってくれ」

ξ゚ー゚)ξ「ふふ。ありがと♪」

上機嫌で部屋を後にするツン。それを見送る5人の幹部達。

川 ゚ -゚)「さて、これから忙しくなるぞ……」

クーはポツリとそう呟いた。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:08:44.54 ID:fvQMbOe10

ツンは自室へ戻るとすぐにシャワー室へと向かった。
服を脱ぎ、頭から熱いシャワーを浴びる。

その魅力的な肢体に水が流れていく。
やや物足りなさを感じさせる乳房に、括れた腰のライン。そして引き締まったヒップ。

どれをとっても魅力的な体。相手を惑わす顔つき。
また、それに華麗に映える金色の髪。

目を瞑り、東のとある人物を思い描く。

(メ^ω^)

ξ--)「ブーン……」

密かにツンは東の大将である内藤ホライゾンに思いを寄せていた。
しかし、自分は北のトップ。
ましてや敵でもある他の区画の人間に思いを寄せるなど今の自身の立場からは許される筈も無かった。

いつから彼に思いを寄せ始めたかは定かではない。
幾度も戦いにおいて顔を合わせるようになり、その度に生きるか死ぬかの瀬戸際で殺しあう。
時に彼と共同で戦線を張り、同じ戦場を駆け巡る。気づけば彼女はブーンに魅了されていた。

派手にスコーピオンを弾丸の数を気にする事無く撃ち回し、敵にその毒針を突き刺し、命を奪う。
前線に出るのを好むのかと思えばM16のような狙撃銃で遠距離から目標を鮮やかに狙撃をする。

そんな戦い方に、ツンは魅かれていたのだ。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:10:00.12 ID:fvQMbOe10

気づけばツンは自分の乳房へと手を動かす。

「あ……」

自分の乳房をやんわりと揉み、ぴりぴりと甘美な電流が体を刺激させる。
胸の頂にある果実が少しずつ硬くなっていく。

その果実に指を這わせ、少しずつ自分を焦らしていく。
性感は次第に高まっていき、それに比例して湧き上がる快楽の声。

「あっ、あっ…」

上半身に沸き起こる熱が次第に下腹部にも篭ってくる。
更なる快感を求めて、硬くなった果実をぎゅっと掴み、押し潰す。

「ぅんっ!」

一際強い電流が体を駆け抜ける。
体は本能に忠実に快感を送り込んでくる。

下腹部の熱がいよいよ実態を伴ってこみ上げる。
片手では乳房を揉みながら、片手はゆっくりと下腹部へと動いていく。

己の秘部をなぞり、突起を弄る。
その度に、愛液が湧き出し、シャワーの水と共に流れていく。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:11:10.38 ID:fvQMbOe10

「あっ、あっ、ぅん、ああっ!」

目を硬く閉じ、更なる快感を求めて自慰を行う。
やがて立っている事すらも出来ぬほどになり、座り込むツン。
それでも手の動きは止めようとはしない。

やがて、快感も高まり、愛液は多く溢れる。
秘部をなぞる指は、いつしか秘部へと吸い込まれていく。

そして、その快感はやがて絶頂を迎える。

「んんんっ!あぁっ!」

脳に凄まじい快感が送り込まれ、全身に一際強い電流がはしる。
数度身を震わせ、自慰の快感を身体で感じる。

少しの間、放心するツン。
頭からはシャワーが絶え間無く全身にかかり、少しずつ放心状態から立ち直る。

「ブーン……」

その後しばらくシャワーを浴びたツンは、別の服へと着替え、ベッドへと向かう。
そして、目を閉じるとあっという間に夢の世界へと吸い込まれていった。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:12:23.87 ID:fvQMbOe10

西のとあるビルのとある部屋で一際でかい男の叫びが聞こえてくる。

ミ#゚Д゚彡「うがあああああああああああ! イカサマだろ! この勝負無し!」

( `ハ´)「ホーでは何処にイカサマがあるか教えてもらおうアル!」

ミ;゚Д゚彡「それはその……あの…だあああああああああああ! とにかくイカサマだ!」

ミ#゚Д゚彡「大体何をどうしたら役満ばっかであがれるんだよ!」

( `ハ´)「ほっほー! 運も実力のうちアル! 敗者に口答えは許されないアル!」

( ∵)「………」

ミ#゚Д゚彡「ビコーズも黙ってねぇでなんか言ってやれよ! ああああ糞イライラするううううう!」

(゚、゚トソン「うーん、中々良い所まで行けるんですけど勝てませんよねぇ……」

ミ#゚Д゚彡「トソもそう思うだろ? やっぱこれイカサマ! 無効試合!」

( `ハ´)「フサも往生際が悪いアル! 負けた方がそいつの代わりも見回りって言ったアル!」

ミ#゚Д゚彡「ふざけんな! こんなイカサマで勝負決められてたまるかボケェ!」


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:13:44.25 ID:fvQMbOe10

(´<_` )「お疲れ様でーす」

そう言いながら帰ってきたのは弟者だった。

(゚、゚トソン「あ、弟者さん。お疲れ様です。今お茶を入れますね」

そう言うとトソンは雀卓の席から立ち、やや駆け足で給湯室へと向かう。

(´<_` )「あー、トソンさん申し訳ないですね。ありがとうございます」

いえいえーと給湯室から返事が返ってくる。

(´<_` )「どっこいせっと」

肩に担いでいた男をソファーに寝かしペチペチと頬を叩く。

(´<_` )「おい、いい加減目ぇ覚ませ。ここもう事務所だから」

(^o^)「はっ!」

(´<_` )「はっ!じゃねーよまったく。毎度毎度、気絶だけは上手いんだなホント」

(^o^)「これが私の取り得です」

(´<_` )「もう助けにいかねーからな?」

\(^o^)/「人生おわた!」


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:14:49.26 ID:fvQMbOe10

(゚、゚トソン「はいどーぞ。ちょっと熱いかもしれません」

(´<_` )「あ、どうも」

(゚、゚トソン「オワタさんまた倒れてたんですか?」

(^o^)「ちょっと不覚をとりまして」

(^o^)「ところで私のお茶は?」

(゚、゚トソン「あ、自分で注いで来てください」

\(^o^)/「人間関係もおわた」

弟者たちが話している頃、まだフサとシナーは口論をしていた。
半ばフサはシナーに殴りかかろうとしている。

ミ#゚Д゚彡「ああ言えばこう言いやがって! てめぇちょっと〆る!」

(;`ハ´)「ちょ! 暴力反対! ビコーズ止めてえええええええ!」


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:16:43.63 ID:fvQMbOe10

( ´∀`)「はいストップ。フサ、落ち着けモナ」

殴りかかろうとしているフサを寸前で止めるモナー。
シナーは救世主が現れたような笑顔を浮かべていた。

(゚、゚トソン「あれ、モナーさんいつお帰りに?」

( ´∀`)「今さっきモナ。北の女性陣2人と少し世間話してきたモナ」

(゚、゚トソン「へー。モナーさんもまだまだ若いですねー」

(;´∀`)「え? 何? 別にイヤらしい事とか全然してないモナよ?」

(゚、゚トソン「私何も言ってませんけど……」

(;´∀`)「え? あ、あははは…そうモナね……」

(´<_` )(何かやらかしたんだな……)


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:17:58.82 ID:fvQMbOe10

ごほんと一つ咳払いをして、シナーとフサのほうへと向き直る。

( ´∀`)「さて、お二人はなんで揉めてるの?」

ミ#゚Д゚彡「シナーがイカサマ使って勝ちやがるんですよ!」

(;`ハ´)「だからイカサマなんてしてないアル! 運も実力アル!」

( ´∀`)「あーようは全然勝てないんでフサが切れたと……」

ミ#゚Д゚彡「違いますよ!」

(;`ハ´)「勝てないのはフサの実力アル!」

ミ#゚Д゚彡「やっぱお前殴らせろ! てか殺す!」

(;`ハ´)「暴力反対!」

( ∵)「………」

何も言わずに雀卓を見つめるビコーズを見てモナーはふとある結論に思い立った。

( ´∀`)「あー…シナー。やっぱりイカサマしたモナか?」

(;`ハ´)「モナーさん何を言うアル! 私は正々堂々とやったアルよ!」


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:20:05.45 ID:fvQMbOe10

(;`ハ´)「それに証拠なんてないアル!」

( ´∀`)「証拠なら一つあるモナよ?」

(;`ハ´)「証拠なんてある筈が───」

( ´∀`)「ビコーズと手を組んでたモナね?」

その一言にシナーはピタリと硬直してしまう。
そしてモナーはそれを確実な物にする為にビコーズへと問いかける。

( ´∀`)「そうモナね? ビコーズ」

(( ∵))フルフル

( ´∀`)「今度美味しい物でも食べに行くモナ。モナがおごるモナ」

( ∵)

( ∵))コクリ

(;`ハ´)「あ! ビコーズ裏切っ……」

思わず叫んでしまったシナーは途中で言葉を区切るが遅かった。
フサは黙って拳をポキポキとならしていた。


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:21:59.26 ID:fvQMbOe10

ミ,, Д 彡「イカサマはしてない……ねぇ……」

(;`ハ´)「あ、の、あの、私が代わりに見回りに行くアル! だから今回の事は…」

ミ,, Д 彡「そうだな。俺は今最高に機嫌が良い」

ミ#゚Д゚彡「だから一発で終わらせてやんよおおおおおおおおおおお!!!」

その力強い拳はストレートにシナーの腹部に綺麗に入り、シナーは声にならない悲鳴を上げて吹き飛んだ。
雀卓を乗り越えて牌をあちこちに飛ばしながら一回転して壁にぶち当たった。

ミ,,゚Д゚彡「あースッキリした!」

すると事務所の一室から叫びながら男が現れた。

(#゚Д゚)「うっせぞゴルァアアアアアアアアア!!!」

(#゚Д゚)「会長が寝てんだ静かにしろやあああああああああああ!!!」

(´<_` )「あ、ギコさん」

(#゚Д゚)「何だゴルァアアアアアアアアアアアア!!!」


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:23:07.72 ID:fvQMbOe10

(´<_` )「ギコさんが今一番うるさいですよ?」

(,,゚Д゚)「あ……」

部屋に悲痛な沈黙が訪れ、ただ一言ギコが呟く。

(,,゚Д゚)「スマン……」

そう言うと会長室と書かれたプレートのある部屋の中へと戻っていった。

(゚、゚トソン「ギコさんも大変ですねー」

トソンの呟きに全員がうんうんと頷いていた。

(´<_` )「ところでモナーさんは北の女性と言いましたが誰と話してたんです?」

( ´∀`)「あぁー、えーっと…つーでれコンビモナね」

(゚、゚トソン「と言うか北に何しに?」

( ´∀`)「極秘任務モナ……」

(゚、゚トソン「なるほど、特に意味も無く遊びに行った訳ですね」

(;´∀`)「な、何で分かったモナ?!」

(゚、゚トソン「あ、適当に言っただけだったんですが」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:25:09.88 ID:fvQMbOe10

(;´∀`)「いやー美味しい店が出来たって聞いたもんでつい巡回がてらにぶらりとね?」

(´<_` )「へー、さぞや美味かったでしょうね?」

(;´∀`)「そう…モナ…ね。あの…ごめんなさいモナ……」

いたたまれなくなったのかモナーはただ、謝るしかなかった。

(;´∀`)「まぁ食べ終わって出たらすぐにつーでれコンビに遭遇モナ。
       有無言わさず襲ってきたときは食べた物を戻しそうになったモナよ」

(゚、゚トソン「へぇー、彼女達ってそんなに凶暴でしたっけ?」

(;´∀`)「あ、まぁちょっとその前にお喋り…したかも……」

(´<_` )「どんな話をしたんですか?」

(;´∀`)「今日も良い身体してるモナねーって挨拶代わりに言ったらその…ごめんモナ……」

弟者とトソンの、特にトソンの汚いものを見るように冷たい視線を見てしまったモナーは謝るばかり。


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:26:27.51 ID:fvQMbOe10

(´<_` )「そりゃ襲われますよね。て言うかセクハラですよ」

(;´∀`)「その、もう二度とそう言うことは言わないので…その許して…下さい……」

その言葉にトソンはふと思い出したかのように言う。

(゚、゚トソン「そう言えば私、これから見回りに出かけるんですけど…」

(;´∀`)「モナが代わりに行くので休んでいて結構モナよ? 全然疲れなんていないモナ!」

(゚、゚トソン「あ、悪いですね。それではお言葉に甘えさせて貰おうと思います」

(;´∀`)「早速行って来るモナ! フサとシナーとビコーズも来るモナ!」

ミ,;゚Д゚彡「え? 俺ら関係無いし……」

((; ж ))フラフラ「そうそう! 悪いのは全部モナーアル! あとなんか色々と戻しそうアル!」

( ∵))コクコク

(´<_` )「そう言えば俺が仕事してたにも関わらずお前らは遊んでいた…と?」

(゚、゚トソン「あと、オワタさんも気絶してた分働いてきてくださいね」

\(^o^)/「休み時間おわた」

5人は疾風の如く準備を整えて扉を開けて巡回へ向かった。


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:28:53.22 ID:fvQMbOe10

(´<_` )「あ、そう言えば……」

(゚、゚トソン「どうかされたんですか?」

(´<_` )「いえ、オワタの迎えに行った時に糞アニキと会ったんですが、その時ドクオとも会ったんですよ」

(゚、゚トソン「ドクオと……? それはまたどうして?」

(´<_` )「理由は知りませんがね、ちょっとギコさんに報告してきます」

そう言うと、先ほどギコが戻っていった会長室の扉の前へと行き、ノックする。
しばらくして、ギコが出てきた。

(,,゚Д゚)「どうした?」

(´<_` )「はい、実はかくかくしかじかで」

(,,゚Д゚)「なるほど……」

それから少し考え込むギコ。

彼は、会長の補佐として時に会長の身代わりとなり、手足となり働き、この西の中ではNo.2の地位にあった。
仲間からの信頼も厚く、私兵達からも絶大な人気を誇っていた。

彼の私兵になる事は西の兵達には憧れのようなものでもあったのだ。

(,,゚Д゚)「恐らくだが……」


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:30:33.01 ID:fvQMbOe10

(,,゚Д゚)「あくまで想像に過ぎないが、東は南と何かしらの話をしたいと考えているんだろうな」

(゚、゚トソン「話……? 手を組もうとかですか?」

(,,゚Д゚)「あぁ、ドクオがわざわざ出てくるぐらいだ」

(´<_` )「それで、手を組んでどうするつもりなんですかね?」

(,,゚Д゚)「……共同で攻め込んでくるか、東が北を攻めるのと同時に南がうちへと攻め込んでくる、とかだろうな」

(゚、゚トソン「……どちらにせよ面倒ですね」

(,,゚Д゚)「前者になればこっちは北と手を結ばざるを得ない。二つの区画を相手に、なんて勘弁だからな」

(´<_` )「東と南が一緒に来たら総力戦ですもんね」

(,,゚Д゚)「一つやってみるか……」

(゚、゚トソン「何をです?」

(,,゚Д゚)「兵を複数、東南の境へ送る。南から使いが来れば南幹部を狙撃する。逆の場合は東幹部を狙撃する」

(´<_` )「お互いで争うように仕向けれれば楽ですからね……」

(,,゚Д゚)「手配は任せろ。二人はゆっくり休んでてくれ」


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:33:02.48 ID:fvQMbOe10

広い部屋に長机がコの字に置かれ、それに沿うように椅子が置かれている。
しかし、埋まっている椅子は僅かで、空席が多く目立っていた。

席に着いた各人の視線は全員が同一人物へと向けられている。
視線を受けている当人はどっしりとその視線を受け止めていた。

( ФωФ)「………」

静かに全員を見渡し、ちらりと時計に目を向ける彼こそ、南区画"黄泉衆"の大将、杉浦ロマネスク。
やがて彼は、ゆっくりと口を開き、静かな空間に響く声で話を始める。

( ФωФ)「ふっ、会議への参加は自由とは言え来るのはいつもの面子だけか」

爪'ー`)「大将、面倒な事には関わりたくないのが人間の本能ってもんだ」

(-_-)「フォックス。大将に対してなんて口を聞くんだ」

<ヽ`∀´>「まぁまぁ、いつもの事ニダ。気にしないで良いニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「あれ? そう言えば兄者さんが来てませんよ?」

( ФωФ)「兄者は巡回中だ。時間的にももうそろそろ帰ってくる頃だろう」

そうミセリに告げるとタイミング良く部屋の扉が開いた。

(メ´_ゝ`)「遅くなりました」


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:35:22.99 ID:fvQMbOe10

ミセ*^ー^)リ「わーお。ナイスタイミングね、兄者さん」

(-_-)「兄者、巡回お疲れさん。その頬の傷はどうした?」

(メ´_ゝ`)「いえいえ、大した事じゃありません。愚弟と世間話でもして来ただけですから」

( ФωФ)「ふむ。兄者も揃った所で会議を始めようか」

ロマネスクがそう言うと兄者は手近な席に腰を落ち着かせた。

( ФωФ)「最近、どの区画もやたらと殺気立っている。それは全員が知っている事だろう」

ロマネスクの言葉に全員が黙って耳を傾ける。

( ФωФ)「どうも、島に不慣れな輩が来たらしい。
        正体は分からんがどこぞの都市、いや、島伝説同様、どこにいるかが分からない」

<ヽ`∀´>(モララーの居場所は突き止めてあるから例の二人組ニダか?)

( ФωФ)「今の所、うちの区画ではまだ大した被害は無いが、不審者は発見次第、従う様子なら連行、無理なら殺せ」

爪'ー`)(生死問わずね…そっちが楽で良いわな…)

( ФωФ)「なお今回の件に関してもヒッキーとミセリに情報収集を任せる」

ミセ*^ー^)リ「良い情報が入ったらボーナスは弾んでね!」

( ФωФ)「さて、我輩が言いたい事はこれで全てである。ほかに言う事がある奴は?」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:37:01.48 ID:fvQMbOe10

(メ´_ゝ`)「大将、俺から一つ」

皆の視線が一斉に兄者へと向けられる。

( ФωФ)「……」

ロマネスクは何も言わず、目で発言を促した。

(メ´_ゝ`)「東区画、"都武覇隊"幹部のドクオが会談を求めて来ました」

その発言に全員が興味津々と言った様子を見せる。

( ФωФ)「ほぅ、ドクオが用があるとな? して、そのドクオは?」

(メ´_ゝ`)「案内中、モララーと遭遇し戦闘に、ドクオはそのまま東区画へ帰りました」

(;-_-)「おいおい、モララーに会ったのかよ」

爪'ー`)「ひゅー。兄者はモララーをどうやって振り切ったんだ?」

モララーと戦闘と言う事を聞いたヒッキーとフォックスは兄者を囃し立てる。

( ФωФ)「二人とも、少し静かにするのである」

その一言にピタリと黙る二人。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:38:04.53 ID:fvQMbOe10

(メ´_ゝ`)「帰り際にこちらから使いを送るとだけ伝えましたが……」

( ФωФ)「ふむ、ドクオ自らが来るほどだ。使いでは悪い。我輩が行くのである」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ私が護衛につきますね!」

勢いよくミセリが立候補に名乗りをあげる。
ロマネスクは他のメンバーを見渡すが、皆ミセリに任せる意を見せていた。

( ФωФ)「ふむ、ではミセリに護衛を頼むのである」

そう告げると今一度会議の参加者全員を見渡すロマネスク。

( ФωФ)「ほかに発言者は? いないようならこれで会議を終了するのである」

誰も何も言わないことを確認し、ロマネスクは解散と言った。

全員が退出したのを見届けたロマネスクは一人呟いた。

( ФωФ)「忙しくなるな……」

その呟きは誰もいない部屋の虚空へと消えていった。


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/01/21(土) 01:39:52.39 ID:fvQMbOe10










とある島のようです

            第一話「島と住人と」
                          了








.

7 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:29:20.12 ID:hyEdt1jF0

第一終了時点の登場キャラクター一覧

 ミ ヤ ズ
・美夜守隊 <<北区画>>

ξ゚听)ξ ツン   (美夜守隊隊長)
川 ゚ -゚)  素直クール(美夜守隊副隊長)
ノパ听)  素直ヒート
ζ(゚ー゚*ζデレ
从 ゚∀从 ハインリッヒ高岡
(*゚∀゚)   つー


 ツ ム バ
・都武覇隊 <<東区画>>

( ^ω^)  内藤ホライゾン(都武覇隊代表)
('A`)     欝田ドクオ  (都武覇隊副代表)
( ><)  ビロード
( <●><●>)ワカッテマス


8 名前: ◆uUq2PArJxyrv 投稿日:2012/02/04(土) 20:31:26.36 ID:hyEdt1jF0

 ヨ モ ツ
・黄泉衆   <<南区画>>

( ФωФ)杉浦ロマネスク(黄泉衆大将)
( ´_ゝ`)  流石兄者
ミセ*゚ー゚)リ  ミセリ
<ヽ`∀´>  ニダー
(-_-)   ヒッキー
爪'ー`)   フォックス


 クニガミ
・国神党   <<西区画>>

(,,゚Д゚)   ギコ   (国神党副会長)
(´<_` )  流石弟者
ミ,,゚Д゚彡  フサギコ
( ´∀`) モナー
(゚、゚トソン  都村トソン
\(^o^)/ オワタ
( ∵)    ビコーズ
( `ハ´)   シナー


・所属不明 及び 所属無し

( ・∀・)  モララー(殺人機)
???   ロミオ=ジャンヌ(所在不明)

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