- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:27:56.60 ID:WMgs1TuA0
僕は あなたを思ふたびに
一ばんぢかに食欲を感じる
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:29:52.96 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「ふう、もうすぐ日が暮れそうだ。そろそろ村が見つかってほしいものだが」
(´<_` )「俺なんかは、早いとこ諦めてよりよい野宿場所を見つけた方が賢いと思うんだが、
兄者ときたら、毎度毎度諦めないで、莫迦だな。そうして野宿にも適さない場所で寝る羽目になるんだぞ」
( ´_ゝ`)「そうは云うが、弟者。もしかしたら、だぞ。村が見つかっていい感じの寝床で寝れるかもしれないわけだ。
その可能性を放棄して、野宿などという野蛮人のすることを早々と許容することは、
知性のある己れ様には耐え難い屈辱であって……」
(´<_` )「今まで野宿してきたことは、いいのか?」
( ´_ゝ`)「いた仕方なし、ということも世の中にはあるのだ、弟者」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:32:49.05 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「あったかい茶をすすり、うまい団子を食べ、熱い風呂に入り、
ふかふかの、お日様の匂いのする布団で夢をみる。ここまでしてこその人間様だ。
お前にはわからんかもしれんがな。だから、可能性がある限り、野宿などという行為は…」
(´<_` )「しかし、今までギリギリまで探し求め、ついにはどうしようもない場所で
苦痛に満ちた表情と共に寝ることになった経験が幾度もあるのに、
それらから学ばずに何度も愚行を繰り返す。
これはまさに莫迦のすることだと思うのだが?」
( ´_ゝ`)「お前ときたら、口ばかり達者になりやがって。
お前は人間様にはまだなりきれてないようだな。
いいか、人間様にはな、わかっていてもやらねばならんときがあるんだ。
それが今、まさにこのとき。この感情が理解できんようでは人間とは云えぬわ。」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:35:51.74 ID:WMgs1TuA0
(´<_` )「はあ、はあ、そうやって俺の気遣いを無駄にする兄者こそ、鬼ってもんだ。
俺は別にかまわんのだ、野宿でも。兄者に出会う前は、ずっとそうやって生きてきたからな。
布団が何の匂いでも気にならないし、兄者を食っても掃除もしなくていいし、万々歳だ。
だけど兄者が文句ばかり言うだろう、やれご飯が不味いや、やれ寝床が固い、
その上、寒いや暑いやら。んで次の日は機嫌が悪くて俺に飯を食わせてくれん。」
( ´_ゝ`)「結局、そこじゃねえか。何が気遣いだ、白々しい。
己れは歩き疲れて機嫌が悪いから、気晴らしに言わせてもらうがな、
お前が今まで己れに気遣いらしい気遣いをしたことがあったか?
口を開けば飯が食いたい、腹が減った、腹ぺこだ、とそればかりじゃねえか。
お前の己れを心配するのは、つまりただおのれの飯の……」
(´<_` )「ん?」
ζ(゚ー゚#ζ「もう、付いてこないで頂けるかしら!今度という今度は、私の強靭な堪忍袋の緒が切れたって言ってるでしょう!
もう貴方とは夫婦でもなんでもないって言ってるのよ!」
( ´∀`)「ご、誤解なんだよ、は、は、話をきいておくれよ……」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:37:53.63 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚#ζ「話、ですって!話ならたっぷりと聞きましたわ、あなたの書いた破廉恥なショウセツとやらからね!
ねえ、教えてくださる、わたくし、貴方を十分愛していますわ。知ってました?」
( ´∀`)「も、もちろん、しって、るよ、十分……」
ζ(゚ー゚#ζ「てっきり、知らないと思っていましたわ。知っているなら尚更ひどい仕打ちですけどね!
じゃあもう一つ教えてくださります?
貴方、わたくしの何処がそんなに不満なんですの?」
( ´∀`)「ふ、ふ、不満だなんて。君は、ぼ、くには勿体ないくらい、
う、う、う、……くしぃし、料理、も上手いし、人とも、上手くやっていけるし…
その、その、あ、あ、あ、あ、あ……してるよ……」
ζ(゚ー゚#ζ「あらあら、それはどうも、有り難いお言葉ですこと。
でも、本当かしらねえ。愛してるなんておっしゃるなら、
あんなことをするわけないって、思いますけど?」
( ´∀`)「わ、わかってお、くれよ……あれは、あれだけは、僕、やめられないんだよ……
何度も、言ったじゃないか…」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:40:22.62 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚#ζ「何度も言ったなんてのは、こっちの言葉ですわ。
言っては何ですけど、貴方は、女にはけして好かれない男です。
仕事はほそぼそ、日陰者。生きていくのがやっとなお賃金。ろくに回らぬ舌に、
気の効いた言葉ひとつひねり出さない喉。かゆいところどころか、どこにだって手が届かぬ気遣い。
もう少し挙げてあげましょうか、貴方、ご自覚なさってないようだから。」
( ´∀`)「も、もういいよ、僕……わかっている、そういうこと…。
それなのに、君は文句、言わない………よぉく、支えてくれ、る…
感謝、してもしきれない…」
ζ(゚ー゚#ζ「ならどうして、せめてたったひとつの私のお願いを聞いてくださらないの!?
私、それ以外にひとつも文句を言ってませんわ!それなのに!」
( ´∀`)「そ、それは……だけ、ど……」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:41:38.66 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「お、」
( ´_ゝ`)「お……おい、いかがした。ただならぬご様子だが」
ζ(゚ー゚#ζ「えっ。」
ζ(゚ー゚*ζ「いやだわ、お見苦しいところを。
ご心配なく、旅のお方にご迷惑をおかけするような事柄ではありません。
犬も猫も、鬼も食わない、あまりに馬鹿げた夫婦喧嘩ですわ。
いえ……もう、夫婦では無くなるのですけど。」
( ´∀`)「れ、玲。そんな、ことを言わないでおくれよ……頼む…」
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……?」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:45:16.01 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「………」
(´<_` )「ふむ」
(´<_` )「お取り込み中のところ申し訳ないが、実は我々は今夜の宿を探しているのだ。
この通り、行く宛もなく旅しているものでな。
お二方、この当たりの村に住んでいる方とお見受けする。
よければその村への行き方を教えてはいただけないだろうか。」
ζ(゚ー゚*ζ「あら。それは大変。でも、私達が住んでいた村、すなわち、此処から一番近い村はお勧めできませんわ。
私、元住んでいた村にこれから戻るつもりでしたの。そちらでよろしければご案内いたします。」
(´<_` )「ううむ、こちらとしてはどちらでもいいのだが……。
貴方はそうは仰るが、まだ正式に別れていない以上夫婦は夫婦。
旦那の居る女性に、どこの馬の骨とも知れない男二人が付いていくわけには行きませぬ。
だからといって、この天下分け目の戦いの真っ最中、
圧倒的劣勢の旦那に道案内を頼むことも出来ませぬ。
どうだろう、どうか我々を助けると思って、一旦休戦してはいただけないだろうか。」
( ´∀`)「あ、あ……」
ζ(゚ー゚*ζ「貴方、満足に喋られないのなら黙っていてくださらないかしら。
初対面の方相手に、みっともない。」
( ´∀`)「……」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:47:46.18 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚*ζ「わかりました。夫婦二人で住んでいた村へご案内いたしますわ。
お見苦しいところをお見せしましたお詫びと、
あなた様のお気遣いのお礼と、両方のために。
私、玲と申します。そちらに居る至らない者は、茂名。
どうぞ、よしなに。」
(´<_` )「あなたの海よりも広い心に、ただ感謝する。
俺は弟者。そっちの間の抜けた顔が兄者。
こちらこそ、よろしく頼む。」
( ´_ゝ`)「……よろしく頼む」
( ´∀`)「よろ、よろ、よろ」
ζ(゚ー゚*ζ「馬鹿は放っておいてくださいな。さ、こちらです」
( ´∀`)「しく……」
(;´_ゝ`)「お、おう」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:51:28.29 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚*ζ「あちらに見えますのが、うきぶね村。
私たち夫婦の住んでいる村。
私がもうすぐ去る村でもあります。」
( ´_ゝ`)「あれが村だって?
どうも、己れの目には、湖に、舟がいくつも浮かんでいるようにしか見えないのだが…」
(´<_` )「うむ、俺の目にもそう見える。」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、驚いたでしょう。言い伝えによりますと、もともとは普通の村だったということです。
そこへ、地震で村が沈んで、大雨で、大きな湖が出来て。
それでもこの土地に住みたいと言った人々が、皆で舟を浮かべて村にした、と言い伝えられています。
あの舟のひとつひとつが、普通の村でいう家なのですわ。」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:55:10.46 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「いや、驚いた。長いこと旅をしてきたが、こんな風な村は見たことがない。
舟で村をつくるとは……。どう暮らしているのか、興味深いものだ。
旅の楽しみの、もっとも大きなものは、変わったもの――人でも、物でも、村でもいいのだが――
とにかく、そういったものに出会うことだからな。
それにしても、あの湖も様子がおかしいぞ。白いものがたくさん浮かんでいるように見える。」
( ´∀`)「そ、そ、それ、は…」
ζ(゚-゚*ζ「……あれこそが、私たち夫婦の愛を殺した、死神でございますわ」
( ´∀`)「れ、れ……」
ζ(゚ー゚*ζ「行きましょう」
(;´_ゝ`)「……」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 22:56:39.78 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚*ζ「さ、つきましたわ。私たちの舟はあちらです。夫に甲斐性がないもので、
そこらの泥船よりも頼りないものですが、あなた方を宿に送り届けるまでは、
この私が沈ませません。」
( ´∀`)「こ、こぐ」
ζ(゚ー゚*ζ「まあ、貴方が?客人の前で、よくも面白くもない冗談を。
貴方に舟をこがせるくらいなら、猫に頼んだほうがマシってものよ」
( ´_ゝ`)「玲、よければ己れたちにこがせてくれ。方向さえ指示して頂ければ、大丈夫なはずだから。」
ζ(゚ー゚*ζ「あら、でも」
( ´_ゝ`)「ここまで世話になった身だ、それくらい、やらせてもらわねば面目が立たぬ。
」
ζ(゚ー゚*ζ「では……お言葉に甘えさせてもらいます」
( ´∀`)「……」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:00:21.00 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚*ζ「そちらを、右に」
( ´_ゝ`)「あいわかった。ところで、この湖に浮かんでいるものは……手紙?
これが、あんたらを引き裂いた死神なのか?」
(´<_` )「いや。手紙ではないようだぞ。物語のようだ」
( ´∀`)「しょ、ショウセツです!」
( ´_ゝ`)「驚いた、おまえさん、そんな大きな声が出せたのだな。
ショウセツ?なぜそんなものが湖に浮かんでいるのだ。
それも尋常な数じゃないぞ。」
( ´∀`)「この村は、ショウセツが、さかんで!」
(´<_` )「そんな大きな声でなくとも聞こえるぞ」
( ´∀`)「皆が、思い思いに、思いついたショウセツを、書き、湖にうかべ、流れに託し、
村の、色々な人に、読んでもらうことが、できるのです!」
( ´_ゝ`)「ほう……つまり、此処の村人は皆、ショウセツ家なのか」
( ´∀`)「ショウセツ家にも、なれるし、ショウセツ家にならない、こともできる。
読者に、なれるし、ならないでも、いられる。
本当のところ、どこでも、そうで、あるべきなのだけど、
普通の、村では、こう言った風に、ショウセツを、皆にみてもらえない。
だけど、ここは、湖がある!皆が、たやすく、みることができる!
この村は、すばらしい!」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:04:30.20 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚-゚*ζ「はあ、相も変わらず、自分の都合のいいことばかり、よく舌がまわること。」
(;´∀`)「う、うう……」
ζ(゚ー゚*ζ「此処が宿屋でございます。村にひとつしかありませんの。
何処に行くのも舟が必要という不便な村ですので、旅人もあまり訪れなくて。
ここの主人とは、知り合いなんです。よくしてくれるように頼みに言ってきますわ!」
( ´_ゝ`)「かたじけない」
ζ(゚-゚*ζ「ああ、貴方はそこで待っていて頂戴。」
( ´∀`)「……」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:06:34.29 ID:WMgs1TuA0
(´<_` )「おい、大変だな、旦那」
( ´_ゝ`)「女に尻にしかれてる位がちょうどいいとは言うが、
あんた、流石に敷かれすぎてぺらぺらになってるぜ。」
( ´∀`)「う……」
(´<_` )「やはり、ショウセツが、原因なのか。」
( ´∀`)「そ、う、なんだ……」
( ´_ゝ`)「……ところで、旦那。あんたの嫁さん、名前はれい、なんだな?間違いないな?」
( ´∀`)「へっ?は、はい」
( ´_ゝ`)「そうか……」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:10:03.22 ID:WMgs1TuA0
- ζ(゚ー゚*ζ「お待たせしました。とっても安くして頂けるって!」
(´<_` )「貧乏な我々にはこの上なく有り難いことだ。」
( ´_ゝ`)「ああ、案内だけでも有り難いのに。何度礼を言っても言い足りぬ。」
ζ(゚ー゚*ζ「いやだわ、これくらい何でもないことです。それに、情けは人のためならずと申しますわ。
きっとこれが私の為になるのですから、そう畏まってお礼をおっしゃらないで。」
( ´_ゝ`)「まったく、つくづく出来たお人だな。
よいしょっと、弟者、気を付けろよ」
(´<_` )「兄者じゃあるまいし、落ちないって。
は、これで。」
ζ(゚ー゚*ζ「いつまでここにいらっしゃるの?」
( ´_ゝ`)「あても目的もない、至極適当な旅ゆえに、特に決まっておりません。
明日、明後日、しあさって、と。」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:14:59.64 ID:WMgs1TuA0
ζ(゚ー゚*ζ「なら、お暇になりましたら、私どもの家にお越しになってくださいな。
茂名の家、と舟屋に言えばわかりますから。
もっとも、私はいつまで居るか、わかりませんけど……」
( ´∀`)「うう……」
ζ(゚ー゚*ζ「では、このへんで一旦のおわかれを。」
( ´_ゝ`)「あっ、あの、で……玲!」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ´_ゝ`)「あんた、その……空飛べたり、しない?」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ」
ζ(^ー^*ζ「ふふっ、真面目なお人だと思ってましたけど、じつは、面白い方ですのね。
私の背中に、羽がはえているように見えました?」
(´<_` )「すまないな、兄が戯言を。気をつけて。有難う」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。それでは。」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:19:23.44 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「ううむ、揺れないものだな。不思議だ、中も普通の宿とほとんどかわりないし。
さっきの茂名の舟も、普通の舟に比べて驚くほど快適だった。
舟の技術に特化して発達しているのだろうか…」
(´<_` )「それで?似てるのか?」
( ´_ゝ`)「……何がだ」
(´<_` )「でれに、さ」
(´<_` )「いいや。俺は兄者の弟だから、心なんて読まずとも、わかるさ。
あんたが変な様子になって、あの女が気になって仕方がないのだな、というくらいは。
どうだみてみろ、俺も気を遣えただろう?」
( ´_ゝ`)「むう。確かに、二人を別れさせず、この村まで来ることができたのはお前のお陰だ。
流石なる己れも、お前がまさか、気を遣うということがどういうことか心得ているとは思わなんだ。
しかし、この誤解は己れの責任でなく、普段全くそういう風にみせないお前が悪いのだ。
だから己れは決してお前を褒めたりしないぞ。つまり、食う量をいつもより多く許すということはしない。」
(´<_` )「なんと。兄者は俺のことを鬼畜生だとかなんとか呼ぶが、それは嘘だったのか。
実のところは、兄者が鬼畜生だったのだ。
その証拠に、俺の兄を想ってした行いに、なんの感謝の気持ちも示さない。
人間であるというならば、足の一本や二本くれて当然だというのに。」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:23:46.77 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「見返りを求める優しさなんぞ、偽りだっての。
人間見習いのお前にはまだ難しいかもしれんがな。
しかし、玲の奴には驚いた。生き写しって言葉が辞書から湧いて出たみたいな顔だ。
己れが云うんだから違いない」
(´<_` )「ふうん。そんなにも似てるなら、もらを呼んでやったらどうだ。喜ぶだろう」
( ´_ゝ`)「……お前、本気で云ってるのか?」
(´<_` )「む。兄者のその様子では、何か不味いことを云ってしまったようだな。
しかし、頼む、悪気はないんだ、飯は減らさないで呉れ。」
( ´_ゝ`)「はあ、さっきはああいったけどよ、己れとしては、
お前にも人間らしさが出てきたって思って、ちったあ嬉しかったんだけどな。
そういう、大事な部分がやっぱりわかんねえのは、なかなかの致命傷ってもんだよ……。」
(´<_` )「ふむ。つまり、もらは呼ばない方がいいのだな。喜ぶと思ったが、逆なのだな。」
( ´_ゝ`)「……お前は人間らしくなったというより、
己れの思考を読むことが上手くなったといったほうが正しいのかもな。
まったく、何年経っても仕様のない奴だ。」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:27:41.74 ID:WMgs1TuA0
(´<_` )「別に、いいじゃないか。兄者がいちいち訂正すればいいだけのこと。
俺が人間で居る為には、兄者を食い続ける他ないんだから、
そのついでに兄者が俺を正せばいい。」
( ´_ゝ`)「そういう問題じゃあない。己れが嫌なんだ。お前がそういう風でいるのは。
ただそれだけだが、十分な理由だ。
いいか、弟者。玲は、でれじゃないし、夫が居る。
そんなところに、わざわざもらを会わせるなんて、鬼の所業だ。」
(´<_` )「教えてくれ。でれと、玲は、顔が似てても、違う人間だ。
なら、玲が夫を持っていようと、別に問題がないじゃないか。」
( ´_ゝ`)「教えてやろう。違う人間なのに、顔が似ていること。
顔が似ている人間が、夫を持っていること。これが問題なんだ」
(´<_` )「よし兄者、さっぱりだ。」
( ´_ゝ`)「阿呆が、修行が足りんのだ」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:33:58.25 ID:WMgs1TuA0
- ( ´_ゝ`)「……切ないだろう、そんなの」
(´<_` )「兄者が、か?」
( ´_ゝ`)「……そりゃあ、そうだ。でれだったらって、思ったよ。
もらにでれをあわせてやれるなら、己れはどんなことだってする……。」
(´<_` )「兄者だって、でれを好いていたんだろう?」
( ´_ゝ`)「そりゃ、好いていたさ、いい人だったから……」
(´<_` )「兄者もつくづく駄目だな。隠しきれていないのに隠してるつもりでいる。
兄者がでれを恋い慕っていたのは、もはや周知の事実。
そうやって苦しい気持ちを一人で抱えていれば格好良いとか、
そういうことを思っているなら、本当に莫迦だ。
確かに俺は人間としてはまだ未熟だが、
兄者のことくらいはわかるって、何回も云っているだろうに。」
(´<_` )「俺が聞きたいのは、兄者がもらとでれという夫婦のことを大事に思っていたかではなくて、
兄者が玲をみて、でれに会いたいと思ったかどうかだ。
俺には理解できないが、そういうのを、切ないって云うんだろう?」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:37:25.31 ID:WMgs1TuA0
( ´_ゝ`)「………」
( ´_ゝ`)「そりゃあ……」
(´<_` )「まだ、好いているのだな」
( ´_ゝ`)「皆まで云ってないのだが」
(´<_` )「云わせないのが優しさというものかと思ったんだ」
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「お前、……たまに凄く人間臭いな」
(´<_` )「そりゃ、兄者を食ってるからな。ところで飯はまだか?」
( ´_ゝ`)「あー、はいはい、勝手にくえよ。半分は残せよ」
(´<_` )「あいわかった。いただきます」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:46:12.09 ID:WMgs1TuA0
( ∩_ゝ`)「嗚呼……グロい……
お前を人間臭いだなんて思った己れが莫迦だったと思わざるを得ない……
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )「そうだな、兄者は美味いぞ」
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )むしゃむしゃ
( ∩_ゝ`)「己れが、お前を人間臭いっていったのはよ」
( ∩_ゝ`)「弟のことを、何も言わなかったからってのが、大きいな」
( ∩_ゝ`)「顔が似てるっていやあ、お前、当事者だ。思い浮かんで当然だろうにさ」
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )むしゃむしゃ
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:49:19.90 ID:WMgs1TuA0
(´<_` )「むぐ、聞いた方が、いいのか?」
( ´_ゝ`)「……いや」
( ´_ゝ`)「あいつは、もう弟じゃないしな。己れの弟は、お前だけで手一杯だ」
(´<_` )「ふむ」
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )「あー」
(´<_` )「でも、兄者の、前の弟、死んだ割には美味かったぞ」
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「お前、莫迦だな」
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )「失敬な」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/01(金) 23:51:39.94 ID:WMgs1TuA0
(´<_` )むしゃむしゃ
(´<_` )むしゃむしゃ
( ´_ゝ`)「………ありがとよ」
(´<_` )「感謝の気持ちは食事量で表してくれるとわかりやすいのだが」
( ´_ゝ`)「却下」
(´<_` )「ケチだから女に好かれないんだぞ」
( ´_ゝ`)「五月蝿いやい」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 00:03:46.59 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「しかし、ショウセツか。もらと一緒に居たときは、教養がどうたらで読まされたものだが、
お前と旅をしてからはとんと読んでいなかったな。
どれ、一冊くらい読んでみるか」
(´<_` )「一冊ったって、あんなバラバラに浮かんでたらどれがどれだかわからないだろう。」
( ´_ゝ`)「たしかになあ。だいたい、水に浮かべているのに、
紙や墨が溶けてしまわないのはどういうことなのだろう。
そもそも、ショウセツを村中で蔓延らせるなんて、どういう意図があるのだろうか。
それに、なんたってショウセツが茂名と玲の仲を引き裂くのも、わからない。
この村はわからないことだらけだなあ。」
( ´_ゝ`)びきびき
(´<_` )「おお、早業。美味しそうだ。」
( ´_ゝ`)「とりに行ってくる。」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 00:16:14.64 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「む、番号が振ってある。これで順番を判別するのだろうか。
それに、素人ショウセツなりに、題名もつけてあるのだな……。
しかし、これだけたくさんあると、どれを読んでいいものやら」
( ´_ゝ`)「うむ?この正の字はなんだろう。」
(・∀ ・) 「珍しいなー。ショウセツのことを知らずにこの村に来たなんて。」
( ´_ゝ`)「この村は、ショウセツがそんなに重要なのか?」
(・∀ ・) 「重要もなにも、この村は、ショウセツを書いたり、読んだりする奴らが集まって出来たのさ。
ショウセツなくば、この村は成り立たないってもんよ。」
( ´_ゝ`)「お前も、書くのか。ショウセツ。」
(・∀ ・) 「いいや、俺は読む方だよ。なっかなか、勇気が出ないもんで。
ま、読むだけでも貢献はできっから、いいんさ。」
( ´_ゝ`)「どういうことだ?」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 00:25:14.91 ID:eC9fHqj/0
(・∀ ・) 「兄さんが疑問に思ってる、その正の字。
それは、読んだやつが作者に向けて、読んだぞ、いいぞっていう合図なんよ。
あと、そっちのショウセツをご覧よ。そっちには、感想が書いてあるだろ。
俺ら、読む方は、そういうことをして書く方の応援をしてるんさ。」
( ´_ゝ`)「はあ、なるほど。……応援になるのか、それは?
応援っていやあ、あれだろ、嫌な話になっちまうが、金とかそういうのじゃないのか?」
(・∀ ・) 「俺らは、誰が何を書いてるか知らないからな。
それに、書く方は、金の為に書いてるんじゃないさ。
金のためなら、他の村でショウセツ家になってるだろ。
読む方にしたって、金払わなきゃっていうんなら、読まねえしな」
( ´_ゝ`)「そんなものか」
(・∀ ・) 「ま、一度読んでみてもいいんじゃないか。
ああ、でもあまりショウセツを読まないなら、湖からとって読むのは大変かもな。
この村にはまとめ屋ってのがあって、そのまとめ屋が気に入ったやつをまとめて、本にして、貸しだしてる。
初めてなら、それを読むといいよ。」
( ´_ゝ`)「貸し出してるのか?本を?売るんじゃなくて?」
(・∀ ・) 「そうさ。書く方も読む方も、まとめ屋も、みんな別に仕事を持ってる。
書いたり読んだり、まとめ屋すんのは、趣味みたいなもんなのさ。」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 00:29:44.90 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「趣味にしたって、こんな、湖からショウセツひろって、本にするなんて大変だろう。
金もとらずに貸し出すなんて、物好きだなあ。
いや、それを云うなら書く方もそうか……」
(・∀ ・) 「ははっ、この村に居るやつは、みーんな、物好きさ。
まとめ屋にも色々居るから、あんたの趣味にあるまとめ屋を探すといい。
っていわれてもわかんねえだろうから、とりあえず俺のお勧めのまとめ屋を教えるよ。」
( ´_ゝ`)「おお、親切にどうも。」
(・∀ ・) 「礼はいらねえよ、ショウセツ好きが増えるのは、俺にとっても嬉しいことなんさ。」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 00:40:22.22 ID:eC9fHqj/0
( `ー´)「おお、又吉。久しいんじゃねぇの。と、そちらさんは?」
(・∀ ・) 「何いってんだ、昨日会っただろ。こっちは……」
( ´_ゝ`)「旅の者だ。この村には偶然寄ったもんで、ショウセツについて色々教えてもらっていた。
兄者と云う、よろしく頼む。」
( `ー´)「へえ、ショウセツ知らないのか!ははっ、この村じゃ珍しいんじゃねぇの。
おいらは根野っていう。まとめ屋をやってるんだ。まとめ屋ってのは…」
(・∀ ・) 「それはもう、教えたぜ。そんで、読ませるにあたって、お前のまとめ屋を選んでやったって具合だ。」
( `ー´)「そりゃあ、有り難いことじゃねぇの。さ、どれにいたしやす。
笑えるショウセツ、泣けるショウセツ、楽しいショウセツ、気狂いショウセツ、なんだってありますぜ。
此処にあるのはおいらの気に入った小説ばかり、どれでもお勧めさあ。」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/04/02(土) 00:59:12.67 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「ふうむ……。確かに湖のを拾って読むよりはいいのだが、それにしたって数が多いな。
とりあえずこれとこれにするか……」
(・∀ ・) 「最初はそんなもんでいいさー。
適当でもなんでも、読んでいく内に、たまらなく面白いショウセツに出会えたり、出会えなかったり、
そうやって楽しむもんなんさ、この村は。
読んでく内に、自分も書きたくなったら書いてもいいし、書かなくてもいい。
たくさん読みたいなら、読んでもいいし、読まなくてもいい。」
( `ー´)「勿論、まとめ屋も。まとめたくなけりゃまとめなくていいし、
まとめたけりゃまとめればいい。
( ´_ゝ`)「それ、茂名も云ってたぞ。この村の決まりなのか?」
(・∀ ・) 「特に、決まっちゃいねえけど。でも、自然とそう考える奴が多いんさ。
だって、息苦しいだろう。みんな、好きで集まったのに、何かを強制されるなんてさ。
他の村じゃあ、自分のショウセツを読んでもらうためには、金や、地位、そして才能が必要になる。
でも此処は違う。猫も杓子も、莫迦も阿呆もショウセツが書ける。
湖に流せば誰かに読んでもらえる。
せっかく、そういう場を設けたのに、息苦しくなるなんて、莫迦らしいって……」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 01:05:41.24 ID:eC9fHqj/0
( `ー´)「本当に、そうだ。だけど最近は、人が多くなってなあ、勝手な奴も増えやがって、莫迦みてえ。
息苦しくってたまらんよ。」
(・∀ ・) 「こらこら、お客さんにそんなこと云うもんでねえよ。
まあ、お前も大変だわな……、最近は。
あとで愚痴聞いてやっからさ、とりあえずお客さんを届けてくるよ。」
( ´_ゝ`)「なにぶん馴染みがないもので、全ては理解できないが、大変そうだな。
本、有難う。読んでみるよ。」
( `ー´)「いや、こちらこそ有難うよ。なあ、覚えておいてくれよ。
それを気に入っても気に入らなくても、
読んで貰えるだけで書いた奴も嬉しいんだ。
そんで、それをまとめた俺もな。」
( ´_ゝ`)「そうなのか。覚えておくよ。」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 01:16:59.94 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「……で、二冊借りてきたから、お前も読むといいよ。教養だ、教養」
(´<_` )「丁重にお断りする」
( ´_ゝ`)「お前、これを読まないと己れのように立派な人間様になれないぞ。」
(´<_` )「何が悲しくて素人ショウセツで教養をつけなきゃならんのだ。
だいたい題名からして知性の欠片もないぞ、なんだニシャタクイツとは。」
( ´_ゝ`)「知るかい、書き手に聞きやがれ。
己れはこっちを読むから、お前はそっちな。読まないと、明日の飯は抜きだ。」
(´<_` )「なんということだ。
おい兄者、俺はさっき、読者になれるし、ならないでもいられると云っていたのを覚えているぞ」
( ´_ゝ`)「ほう、己れの教えより茂名の教えを取るのか。
よほど飯が欲しくないらしいな。」
(´<_` )「鬼畜生め……」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 01:26:56.28 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「ふむ、莫迦も阿呆も書くと聞いていたからどんなものかと思えば、
中々おもしろいじゃないか」
(´<_` )「何だと、こっちは面白くないぞ。せっかく頑張って読んだのに、皆死んだ。」
( ´_ゝ`)「なんだ、物騒な話だな」
(´<_` )「しかも、途中で終わってると来たもんだ。
まあ、俺としては読む分が少なくて助かったがな。
これで明日の飯は確保できた。ああ疲れた。」
( ´_ゝ`)「これくらいで音を上げるとは、育て方を間違えたな。
今思えば、もらは滅茶苦茶なようにみえて、案外まともに己れを育ててくれたものだ。
いや、単に己れが最高に頭が良かったというのもあるが……。
そうか、逆に考えれば、己れほどの頭脳を持ってしてもこんな阿呆に育ってしまった
弟者に原因があるとも思える。ふむ、やっぱり己れは悪くないな。」
(´<_` )「己れの頭が悪いとすれば、それは食事が少なくて、栄養が頭に回ってないからだと思うぜ。」
( ´_ゝ`)「まァた、莫迦云ってら。」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 01:39:50.59 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「はあ、しかし、これが如何にして死神になるのか、ますます気になるな。
死ぬほどつまらないショウセツだって、死神に化けることはないだろうし。」
(´<_` )「茂名に直接、聞いたらどうだ。考えたって仕方がないだろう」
( ´_ゝ`)「そうだな、この本を返すついでに、お邪魔させて頂くとするか。」
(´<_` )「どうせ、ついでじゃなくても行く癖に。
なんだかんだ云って、でれと同じ顔した女が不幸になるのは見たくないんだろ。」
( ´_ゝ`)「よし弟者、明日は指一本で一日頑張れよ。」
(´<_` )「本当のこと云っただけなのに……」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 01:53:07.17 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「おーい、茂名、れ……」
ζ(;ー;*ζ「じゃあ、説明してよ!なんであんなもの書いたのよ!」
( ´∀`)「それは、それは……そのう……ショウセツだから…」
(;´_ゝ`)「……ええと、お邪魔だったかな」
(´<_` )「なるほど、これが修羅場というものか」
( ´_ゝ`)「修羅場って云うのは此処にあと一人女が居ることだぞ、弟者」
(´<_` )「残念だ、修羅場が見れるかと思ったのに……」
ζ(;ー;*ζ「もういいわ!兄者さん、弟者さん!私も一緒に旅にでます!」
(;´_ゝ`)「お、落ち着け、玲、旦那の前で他の男にすがるやつが居るか!
婚姻の契りを思い出せ!」
(´<_` )「ちょっと嬉しいくせに」
(;´_ゝ`)「う、嬉しくなんかあるか!」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 02:08:31.28 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「よしわかった、ふたりとも、話をきかせろ。
話を聞いた上で、もし玲の言い分が正しいと感じたら、
己れたちが責任を持って玲の元いた村まで送り届けてやる。
しかしもし茂名の方が正しかった場合は、夫婦を続けろ。わかったな?」
(´<_` )「おや、ただしい村の一件で、裁判ごとは懲りたかと思ったが、自ら開くとは。
それとも兄者も実は神になりたかったのか?」
(;´_ゝ`)「よりにもよって、みるななんかと一緒にするな!
……それで、玲は茂名の何処が気に入らないっていうんだ、教えて呉れ。」
ζ(;ー;*ζ「ええ、ええ、教えますとも!でも、最初にお聞きになって。
私の夫である茂名、決して出来た人間ではありません。
背も低いし、顔も垢抜けないし、髪の毛は今のうちから後退する素振りを見せている始末。
私と付き合うまではろくに女性と喋ったこともなく、気の利いた贈り物など夢のまた夢。
育ちだけはよかったものの、本人に能力がありませんで、お金もあまり稼げません」
( ´∀`)「むぐぅ……」
(´<_` )「女って、鬼だな……」
( ´_ゝ`)「同意せざるを得ない……」
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 02:17:40.63 ID:eC9fHqj/0
ζ(;ー;*ζ「ですけど……夫は、茂名は……伴侶として最も大事なものは、
しっかりと持っております……。そう、誠実さです。
彼は私を、まっすぐに愛してくれます。
足りないところがあっても、真面目で、一生懸命働いてくれています。
少ないお給料ですけど、二人で生きていくには十分です。
気の利いた贈り物でなくても、私の心は満たされます。
背が低くても、顔が悪くても、髪の毛が一本も無くなっても、
慣れてしまえばよいのです。
そんなものは、彼の誠実さや愛に太刀打ちできるものでは御座いません……」
(*´∀`)「………」
ζ(;ー;*ζ「だけど!それでも、これだけは我慢できないのです!
そう、ショウセツを書くことで御座います!
こんな気違いの所業はやめていただきたいのです、
色々不満はありますが、本当に辞めてほしいのはこれだけ、たったこれだけ、
なのにこの莫迦者は懲りもせず、さっきもまたショウセツを書いておりました!
あれだけ喧嘩した後なのに!頭がおかしいとしか思えません!」
( ´∀`)「ぐ……」
(´<_` )「……鬼じゃないかもしれないけど、女って怖いな…」
( ´_ゝ`)「全く同じ意見だ、弟者…」
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 02:24:32.58 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「い、いや待て、お前が良い妻だということはわかった。
しかし、何故そこまでショウセツを書いて欲しくないんだ?
この村のショウセツを己れも読んだが、気違いの所業とはとても思えなかった。
むしろ面白いと思ったくらいだ、そりゃあ、稚拙なところはあったがな。
茂名の多くの欠点を愛せるお前さんが、何故ショウセツをそこまで忌み嫌うのか、
説明してはくれないか?」
ζ(;ー;*ζ
ζ(゚-゚*ζ「……ショウセツを書く人は、皆、露出狂の、気違いです」
(´<_` )「ろ、露出狂」
( ´∀`)「ご、ご、ごかい!ごかい!」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 02:35:12.78 ID:eC9fHqj/0
ζ(゚-゚*ζ「皆が皆、聖人でないことは、誰しもが口に出さずに了解しています。
だけど、常識をもつ人は、聖人でないことを表に出しては生きていない。
生きていれば、人に言えないような感情を抱くこともありましょう。
異端と呼ばれる思想を持つこともありましょうよ。
けれどみんな、そういったことを隠して生きています。
上っ面だけはいかにもマトモに取り繕って。
当たり前です。それが大人と云うものです。」
ζ(゚-゚*ζ「……ですが、ショウセツは。
そういったものを全て、吐き出しているのです。
皆が隠しているものを、全てさらけ出して」
ζ(゚-゚*ζ「一番ズルイと思うのは、自分の思想の吐露であるにもかかわらず、
架空の登場人物にその罪をなすりつけていることで御座います。
その架空の登場人物も、哀れでなりませんわ。
勝手な期待や、自分の憎しみ、劣等感を投げつけて、形成される登場人物たち。
それらに汚い思想を吹きこんで、叫ばせて、
さらにはそれを人に見せて、喜んでいる。
これが露出狂の気違いの所業といわずに、なんと言いましょう?」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 02:40:29.96 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「れ、れ……」
ζ(゚-゚*ζ「ショウセツという形をとらなければ、何も発言できない弱虫。
自分の好みや、願望や、憎しみを登場人物に押し付けるド変態。
自分の思想や、自分の思い出、そういった物を切り売りするなんて、
そうして、人から賞賛を得るなんて、売春婦とかわりないじゃありませんか。」
( ´∀`)「ち、ちがう!」
( ´_ゝ`)「おお、声が出たぞ」
( ´∀`)「違う、僕は………違うんだ」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 02:52:30.99 ID:eC9fHqj/0
- ( ´∀`)「ショウセツを、書くのが、楽しくて、仕方ないんだよ……
いや…、本当は楽しくないかもしれない…
書いてるときは、苦して……仕方がない、
だって……見たくないもの、汚い感情なんて……
自分の弱い部分なんて…。
書いてるときは、逃げ出したくなる……」
( ´∀`)「だけど……考えてもみて…。
他の人は、一生、自分の中で燻らせているしかない、感情を、
見てもらうことができて、しかも、反応を貰えるなんて、
本当に、素晴らしいことじゃあ、ないか?
ねえ、玲、ぼ、ぼくは、賞賛されなくたって、構わないんだ…
そりゃあ、ね、賞賛されたいけれど……
一番こわいのは、誰にも、見てもらえないこと…
僕をつくる、いろんな感情……だけど表に出せるのは、ほんの一部分…
僕みたいな弱虫は、ぜんぶの感情を出していたら、生きていけないんだ、弱いから…
でも、見せられない部分も、僕なんだ。むしろ、それが僕の、本質なんだ。
それを隠して生きるのは、辛くて、辛くて、仕方が無いんだ…」
( ´∀`)「弱く、愚かな……僕は……云ってはいけないことが多すぎて…
心の中に溜まりこんでしまう……醜い感情が渦巻いて、苦しくて…
吐き出さないと、たまらないんだ…
だから、ショウセツに託すんだ……」
( ´∀`)「書くのは、苦しいけれど……書きあがってみると…
許せないことばかりの僕の……心の欠片のくせに…
なぜだか、許せる気がするんだよ……
どんなに醜い感情でも……」
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 03:02:09.60 ID:eC9fHqj/0
ζ(゚-゚*ζ「………」
( ´_ゝ`)「……。玲は、茂名がショウセツを書くのが好きだって、知っていたんだろう?」
ζ(゚-゚*ζ「……そ、それは」
( ´_ゝ`)「そうだろうな。茂名が、自分の心をここまで占めているものを妻に隠し通せるほど器用にはみえんし、
玲も、それを知らないままでいるような鈍感には見えない。
この村がショウセツのための村だってことも知ってて、此処へ来たんだろう?」
ζ(゚-゚*ζ「それは…」
( ´_ゝ`)「じゃあ、なんでいきなりそんなにも批判するようになったんだい。」
ζ( - ;ζ「……、」
ζ(゚ー゚*ζ「破廉恥なショウセツを書いていたのよ!」
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 03:11:17.24 ID:eC9fHqj/0
(;´_ゝ`)「は?」
ζ(゚ー゚#ζ「男女の営みを書いていたの!」
(;´_ゝ`)「そ、それは……そこまでおかしいことか?」
ζ(゚ー゚#ζ「ええそうね、百歩譲ってそういう場面を書くのは許しましょうよ、
だけど、私との営みを赤裸々に書くなんて、許せるわけがないでしょう!」
(;´_ゝ`)「うわあ……」
( ´∀`)「せ、赤裸々じゃなくて、その、経験が、君としかないから、
そういう場面を、書くときは、君とのことを、参考にするしか…」
ζ(゚ー゚#ζ「参考ですって、どの口がそんなことを!あんなにも鮮明に……いえ、もういいわ。
とにかく、誰が書いたものかわからなくても、それを湖に流すなんて、誰にでも読めるようにするなんて、
私、天と地がひっくり返ろうが、あなたの髪が生えようが、絶対に許すことはできません!」
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 03:17:49.47 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「そ、それは……ごめんね、だけど……」
( ´∀`)「あの……」
ζ(゚ー゚#ζ「いいえ、何もいわなくて結構。
貴方に残された道は、この村を私と一緒に出て行くか、
この村を出て行く私を見送るか、二つに一つ。
他の道は残されていません!」
( ´∀`)「で、でもね・・・」
ζ(゚ー゚#ζ「何度も云っているように、もう貴方と話し合うようなことは……」
(´<_` )「大事なことなら、ちゃんと云えよ」
( ´_ゝ`)「え?」
( ´∀`)「え」
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 03:21:53.94 ID:eC9fHqj/0
(´<_` )「ショウセツを書くのも結構だが、お前、嫁まで貰っておいて、
ショウセツ以外で何かを云うのは遠慮するってのは、許されんだろう。」
(´<_` )「大事なことなら、ちゃんと云え。なんで玲がこんな風に無茶を云うのか、検討がついているんだろう。」
( ´∀`)「な、な、なんで……」
(´<_` )「嗚呼、鬱陶しい。さっさと捨てられろ。莫迦らしくてやってられん。
帰ろう、兄者」
(;´_ゝ`)「一人納得して格好の良いことを云ってさろうだなんて、お前、それは許されんぞ!
茂名、どういうことだ!」
( ´∀`)「……」
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 03:30:32.31 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「玲、君が、僕にショウセツを書くのを、辞めてほしいのは……
いや、この村を出て欲しいのは…
濃ちゃんのことが、関係しているんだろう?」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、そんなこと…」
( ´_ゝ`)「そんなこと、あるみたいだな、玲」
( ´∀`)「……濃ちゃんは、僕達夫婦のお友達で……ショウセツの、書き手でした。」
( ´∀`)「話の作り方、展開の魅せ方、登場人物……
その全てが、僕なんか足元にも、及ばないくらい上手で。
書く話も、面白くて……この村でも、多くの人が、夢中になりました。」
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 03:50:56.75 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「えっと、この村の、ショウセツが読まれる仕組みは、ご存知ですか?」
( ´_ゝ`)「正の字のことや、感想のこと、まとめ屋のことは聞いたぞ。」
( ´∀`)「判子や、掲示板のことは?」
( ´_ゝ`)「いや、それらは聞いてないな。」
( ´∀`)「続きものを、書くときは、違う人がいたずらで続きを書いたら、困るので、
判子を、押しておくことが多いのです。その判子で、書き手が同じ人かわかるという具合で。
で、元々は続きものの、ためのものだったのですが、そのうち、続きものでない、短いものにも、判子を押す人が増えまして。
まあ、そのほうが見るものにとっても都合がよろしいことも多いので、定着していきました。」
(´<_` )「なぜ都合が良いのだ?」
( ´∀`)「ひとつの作品を、気に入ったと、して。それを書いた書き手の、別の作品は、やっぱり気に入る確率が高いのですよ。」
( ´∀`)「あと、もうひとつ判子が定着した理由があります。
掲示板のことです。これは村の掲示板なのですが、あるとき誰かがそこに張り紙を貼りました。
内容は、とりとめのないことです。ショウセツを書くにあたっての悩み、喜び。今読んでいるショウセツのこと。
特筆すべきことは、そこには判子が押されていたということです。しかも、村の中でとても人気のある書き手の判子です。
みんな、興奮しましたよ。あの書き手の普段の声が聞けるなんて……ああ、自分のショウセツについて書いてくれるなんて……って。」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 04:02:34.11 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「皆が後に続きました。最初にあった小さな掲示板では足りなくなって、大きいものに作り替えたくらいです。
掲示板で、書き手の声が聞こえるようになると、書き手個人に親しみを覚える人が増えました。
好きなショウセツを書く人のことを知りたいと思うのは、特におかしいことではありません。」
( ´∀`)「今までぼんやりとしたものだった書き手が、一人の人間として浮かび上がってくる。
それは、読む者にとってだけではなく……、書き手からしても、そうなのです。」
(´<_` )「ひとつ聞いていいか。」
( ´∀`)「はい」
(´<_` )「何故いきなり、そんなにもしゃべれるようになったのだ?」
(;´_ゝ`)「莫迦野郎、話の大事なところで!」
ζ(゚-゚*ζ「昔から、ショウセツに関してだけは、舌がよくまわるのです」
( ´∀`)「むぐう…」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 04:10:05.96 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「……濃ちゃんも、当然、判子を持っていました。
先ほども言ったとおり、判子や掲示板のお陰で、書き手のひとりひとりが、
自分と同じ人間として捉えられるようになり、それはやがて、書き手同士の交流をうみました。
みんなで結託してひとつのショウセツを作ったり、同じ題を使ってショウセツを書きあったり……
そういう風に。」
( ´_ゝ`)「いいことのように聞こえるが……」
ζ(゚-゚*ζ「それは、貴方がいい人だからですよ」
( ´_ゝ`)「んん?」
( ´∀`)「……書き手が一人の人間と捉えられるようになったせいで産まれたものは、
たしかに、いいものもたくさんあります。
だけど、悪い物もあります。つまり……その……嫉妬、です。」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 04:23:04.79 ID:eC9fHqj/0
- ( ´∀`)「ある時から……濃ちゃんのショウセツには、心無い言葉が書き込まれるようになりました。
中傷と云って差し支えないような言葉たちが」
( ´∀`)「もちろん、そんなことがあっても、濃ちゃんのショウセツには変わらず、たくさんの感想、応援、正の字がありました。
けれど、何を書いても何を書いても、やっぱり中傷の言葉がたくさん書きこまれました。
そのうち……彼女の心の中には、感想も、応援も、正の字も届かなくなってしまったのです。
そういった言葉を塗りつぶすように、中傷の言葉だけが彼女を支配してしまいました。」
( ´_ゝ`)「その、中傷ってのは、一体どういうことだ。つまらないとかそういうことか?」
( ´∀`)「彼女の場合は、人格批判とか、あとは、彼女のショウセツを好きな人の批判、ですかね。
どうも、中傷を書く人にとっては、若い年代の人はショウセツを読むにふさわしくないらしくて」
ζ(゚-゚*ζ「……ショウセツを好きだって云うひとも、好きなら何でも云って、いいと思ってるのよ。
自分の望むものじゃなかったら、期待してたのと違うとか、こんなの濃ちゃんじゃないとか、
もう面白くなくなったとか、前の方が良かったとか……」
ζ(゚-゚*ζ「濃ちゃん、限界だったよ……。ただの趣味、仕事じゃあないの、なのにやめなかった。
趣味で、好きで書いてたものの為に、心が滅茶苦茶に踏み荒らされて。もう、駄目だった。
せめて、湖に流すのなんてやめたらよかったのに。別に、流さなくたって、ショウセツは書けるのに」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 04:38:42.20 ID:eC9fHqj/0
ζ(゚-゚*ζ「やせ細って、情緒不安定になって、それでも筆を握り続けて。
私には、大好きな親友が、狂人にしかみえませんでした。
旦那さんが、濃ちゃんをこの村から連れだしたとき。
濃ちゃん、嫌がってたけど、本気では抵抗していなかった。
どこかで安堵していたのだと思います。」
( ´_ゝ`)「……それで、茂名が同じようになる前に、この村を連れ出したかったのか」
( ´∀`)「最近、この村は以前にもましてそういった中傷がひどくなってきているんです。
玲は、それを心配したのでしょう……」
ζ(゚-゚*ζ「もう、この村には、価値なんてないんです。
ただの嫉妬、関係のない中傷で満たされるショウセツ。
お客様感覚でショウセツやまとめ屋に注文を付ける読み手。
ショウセツを書いたり読んだりする為じゃなく、
ショウセツを書いたり読んだりする人と出会う為に引っ越してくる人たち。
申し訳程度にショウセツ書いて体裁を繕ったり。」
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 04:46:49.42 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「なんだ、玲、ショウセツのことよく考えてるんだな」
ζ(゚-゚*ζ「別に、ショウセツなんてどうでもいいわ。
茂名や濃ちゃんを莫迦にする人が許せないだけ。
人と知り合う為に来る人は、特に許せない。
寝ないで必死にああでもないとかこうでもないとか、
莫迦みたいに悩みながら書くひとを莫迦にしているもの」
( ´∀`)「……別に、僕は、そういうのどうでもいいんだけどね」
ζ(゚-゚#ζ「なっ」
( ´∀`)「そういうのが気になるのは、一生懸命やってない人だけだよ、きっと。」
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:08:32.42 ID:eC9fHqj/0
( ´∀`)「僕は、一生懸命、好き勝手に、無責任に、書いてる
だから、楽しくて、面白くて、いっぱいひどいことも言われる。
それが辛くなって、逃げ出すこともできるし、
無茶して真正面から戦うこともできる。」
( ´∀`)「だから、いいんだよ。それで。
書く人も好きに書いていいんだ。読む人も好きに読んでいいんだ。
大丈夫、僕は、弱虫だし、濃ちゃんほど真面目じゃない。
僕は壊れたりしないよ。いつだって君と逃げ出すよ。ショウセツはどこだって書けるもの。
でも、正の字が完成されないほど少ない線に喜んでいられる内は、
此処で頑張ったって、いいだろう?」
ζ(゚-゚*ζ「………」
( ´∀`)「……」
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「………腹減った…」
(#´_ゝ`)「……」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:14:11.39 ID:eC9fHqj/0
ζ(゚-゚*ζ「……莫迦。」
( ´∀`)「ぐぅ」
ζ(゚-゚*ζ「泣いてたら、引きずってでもこの村を出ますから。」
ζ(゚-゚*ζ「………」
( ´∀`)「う、う」
(´<_` )「あ、元に戻った」
( ´∀`)「の、濃ちゃんのお見舞い、いこうね」
ζ(゚-゚*ζ
ζ(゚ー゚#ζ「話をそらさない!」
( ´∀`)「ひぃい!」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:20:47.95 ID:eC9fHqj/0
/ ゚、。 /「お帰りなさい、お二方。茂名さんところにはちゃんと行けましたかぁ?」
( ´_ゝ`)「ああ、大丈夫だった。舟の中が存外快適なもんで、こういう暮らしもいいかと思ったが、
何処に行くにも舟が必要ってのは中々不便だな」
/ ゚、。 /「慣れれば自分で舟を漕ぐのも苦になりませんよぉ。
なんならなれるまでもう数泊……」
( ´_ゝ`)「いや、最初云った通り、明日には帰るよ……」
(´<_` )「何もしてないのに疲れたからな…」
/ ゚、。 /「あらあら、それは残念だわぁ。久しぶりのお客さんなのに……」
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:29:03.72 ID:eC9fHqj/0
(´<_` )「はあ、疲れた、腕をくれ」
( ´_ゝ`)「一人だけ疲れていると思うなよ、己れも疲れてるんだ、再生するのが面倒くさいので却下だ。
……しかし、中身はぜんぜんでれじゃなかった、当然のことだけど。」
(´<_` )「
おや、そうなのか。俺の予想ではあんなものだったぞ。」
( ´_ゝ`)「莫迦、つんの妹だぞ。自分の夫が中傷されようものなら、めためたのぼこぼこの、ぺっちゃんこだ。」
(´<_` )「
ふうむ、会ってみたいものだな、でれに。」
( ´_ゝ`)「みんな、そう思ってるさ」
(´<_` )「そうか。………ところで」
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:31:59.95 ID:eC9fHqj/0
- (´<_` )「はあ、疲れた、腕をくれ」
( ´_ゝ`)「一人だけ疲れていると思うなよ、己れも疲れてるんだ、再生するのが面倒くさいので却下だ。
……しかし、中身はぜんぜんでれじゃなかった、当然のことだけど。」
(´<_` )「 おや、そうなのか。俺の予想ではあんなものだったぞ。」
( ´_ゝ`)「莫迦、つんの妹だぞ。自分の夫が中傷されようものなら、めためたのぼこぼこの、ぺっちゃんこだ。」
(´<_` )「 ふうむ、会ってみたいものだな、でれに。」
( ´_ゝ`)「みんな、そう思ってるさ」
(´<_` )「そうか。………ところで、聞いておきたいのだが、
俺にはショウセツで悩むあの夫婦も濃という奴もひどく馬鹿らしく感じたのだが、
これは人間らしくないのだろうか。」
( ´_ゝ`)「……あー、いや。それを人間らしくないといえば己自身も人間でないということになる。
つまり、同意見だ。いや、しかし」
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:34:32.77 ID:eC9fHqj/0
( ´_ゝ`)「兄としてお前に教えなければいけないことは、
当人が必死でやっていること――趣味でも、恋愛でもなんでもいいんだが、
それらの多くは、他人からみればひどくくだらないものだったりするんだな。
だからといって、当人たちにとっては大事なものであるからして」
(´<_` )「あーあ、莫迦らしい、莫迦らしい」
(;´_ゝ`)「……まあ、今日はいいや。疲れたし……」
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:45:13.81 ID:eC9fHqj/0
/ ゚、。 /「さようならぁ。また、来て下さいねぇ。」
( ´_ゝ`)「安く泊めてもらったのに、舟まで出してもらってすまんな。世話になった」
(´<_` )「多分来ないけど、またな。」
( ´_ゝ`)「嗚呼、やっぱり地に足を付けてるほうが、なんとなく安心するもんだなあ。
この、胸に広がる感動ときたら。大地を司る賢者が莫迦でなけりゃ感謝するところだが……」
(゚A゚* )「待ってー、大ちゃん、ついでに私らを乗せてーやぁ!」
/ ゚、。 /「あらぁ、濃ちゃん!」
( ´_ゝ`)「え?」
(;‘_L’)「の、濃ちゃん、本当に帰るの?辛くないの?」
(゚A゚* )「辛いにきまっとるやろ!せやけど、私が思いつめてる程辛くはないわ。
あんたが連れだしてくれてそれに気付けてよかったわあ。
でも、私のショウセツを待ってる人がおんねん、
もう十分休んだし、ずっと書いてないから書きたくてしゃーないねん!」
(;‘_L’)「もう……仕方ないなあ…」
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:50:51.44 ID:eC9fHqj/0
/ ゚、。 /「二人が居なくなって寂しかったのよぉ。ほら、濃ちゃんのあれの続きも気になってたしぃ……。」
( ‘_L’)「ご心配をおかけしまして……」
(゚A゚* )「はっは、書くで書くで!向こうで一杯書きためしてきてん。一気に流しまくるからな!覚悟しとき!」
/ ゚、。 /「あらぁ、楽しみねぇ。あ、お客さん、失礼しますぅ。」
(;´_ゝ`)「……す、凄いというかなんというか……」
(´<_` )「玲の云ってたこと、間違いじゃなかったな」
(;´_ゝ`)「え?」
(´<_` )「ショウセツを書く人は、皆、露出狂の、気違いってさ。
( ´_ゝ`)「露出狂かはともかく……変だな。」
(´<_` )「おお、ずいぶん柔らかい表現をしたな。流石だ、兄者。」
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/04/02(土) 05:53:19.58 ID:eC9fHqj/0
へんじんがながす紙たちは、
へったりふえたりしながらも、
いつまでもいつまでも、みずうみをしろくそめつづけたそうな。
戻る 次へ