('A`)巡り巡って非日常のようです

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:50:55.91 ID:Niciwha5O
川 ゚ 々゚)「五千の夜を越え、今迎えに参りました」
 
少年はまじまじと、自らをデレと呼ぶ少女を見つめる。
やっと出会えた非日常なのだ。興味を持たずしてどうしろというのだろう。
・・・いきなりキスをするなどというのは、少年としてもいささか不安ではあったのだが。
 
川 ゚ 々゚)「? どうしましたか、デレ」
 
自らを見つめる少年に不思議そうに尋ねる少女に少年は何も答えられなかった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:51:57.54 ID:Niciwha5O
そうして少年と少女が見つめ合っていると、少女は小声で何かを呟く。
 
川 ゚ 々゚)「もしや転生時に記憶を失って・・・」
 
いつもなら少年も気にも留めないであろう呟き。
だが日常ではほぼ使われないであろう単語が、少年の興味を引いたのである。
少年は非日常を求めていたのだから、当たり前といえば当たり前のことなのであるが。
 
('A`)「・・は?転生?」
 
少年の問いかけに対し、やはりかというような表情で少女は話し出す。
 
川 ゚ 々゚)「はい、貴女は前世で俺と愛を誓い合った」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:53:24.24 ID:Niciwha5O
 
 
――――――昔、今から千年ほど昔でしょうか。俺たちは互いに深く愛し合っていた。
そしてあくる日俺たちは結婚の約束をしました。
 
从 ゚∀从「デレ、俺と結婚して下さいませんか」
 
ζ(゚ー゚*ζ「では五千の夜を越えた頃、まだ愛していたならば私を迎えに来てください」
 
と。
 
けれどその晩、貴女は屋敷のベランダから転落死してしまいます。
俺は悲しんだ。悲しんで悲しんで、その後貴女の後を追ったのです―――――。
 

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:54:37.77 ID:Niciwha5O
川 ゚ 々゚)「そして今生に巡ってから五千の夜を越えた今日、俺は貴女を迎えにきました」
 
少女は満面の笑みでそう言い、少年に右手を差し出す。
 
川 ゚ 々゚)「さあ、どうぞ手をとって。今こそ結婚いたしましょう」
 
そして少年は少しの間考えてから、
 
('A`)「・・・」
 
その手を拒絶したのであった。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:56:36.05 ID:Niciwha5O
 
 
・・なに。こんな話をしているのに周りの反応が何もないじゃないか?
それはそうである。この話は少年と非日常さえ見ていればいいのだから、日常を見ても意味などないのだから。
これに関しては読者諸兄にそう納得してもらうほかないのである。

わかって貰えたのならば、少年の非日常な日常に戻るとしよう。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:57:55.94 ID:Niciwha5O
川 ゚ 々゚)「・・・どうして?」
 
どうして、少女の頭はその考えでいっぱいになる。
デレ・・・少年と自分は結婚を誓ったではないか、と。
 
('A`)「どうして、ってそりゃ・・俺にはデレとやらの記憶もないしな」
 
そう。少女が自分の前世の記憶を覚えていようが少年はそんなもの覚えてはいないのだ。
拒絶しない人間は同じように前世の記憶を持っているか、余程の気狂い、物好きだけであるといえよう。
 
川 ゚ 々゚)「・・・」
 
('A`)「・・まあ、そういうこった」
 
少年はその言葉を最後に、少女から顔を背ける。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/10/29(木) 23:59:25.82 ID:Niciwha5O
川 ゚ 々゚)「・・・」
 
('A`)「・・・」
 
無言。
どのくらい続いたであろうか無言は、責めるように少年の背中をチクチクと突き刺す。
 
('A`)「ああ、じゃあ」
 
不意に少年が声を発する。
 
川 ゚ 々゚)「じゃあ?」
 
('A`)「暇な時にでも前世・・だっけ? の話とやらをしてくれ」
 
背けた顔を少女の方に向ける。
 
('A`)「前世の事を思い出したら、結婚を考えてもいいぞ」
 
川 ゚ 々゚)「・・はい」
 
二人は微笑みあう。
少女は綺麗な微笑を。少年の微笑は、少し、歪んでいたような気がした。
 

第一話 「望む少年と非日常」 了


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