- 3 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:40:40 ID:3zkaOYpgO
-
○登場人物と能力の説明
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
从'ー'从 【手のひら還し《イレギュラー・バウンド》】
→『因果』を『反転』させる《拒絶能力》。
.
- 4 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:41:22 ID:3zkaOYpgO
-
○前回までのアクション
( ^ω^)
从 ゚∀从
从'ー'从
→戦闘中
( <●><●>)
→戦闘不能
/ ,' 3
→療養完了
.
- 5 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:43:18 ID:3zkaOYpgO
-
第十話「vs【手のひら還し】U」
比較的年齢層の浅い人々が多い街を歩いていると、
情報というものはいとも容易く手に入るものだ。
どこぞの裏社会が統べる後ろ暗い街ならば別だが、
広告塔やネオンサインや看板が並ぶような繁華街なら
少しそこに繰り出すだけで、世論というものを得られる。
しかし、彼がこの街にやっきたのはそのためではない。
そもそも、彼のような負の感情の集大成とも呼べる存在が
そう易々と表社会に顔を出すはずもないのだ。
がたいはよく、特に腕の筋肉がプロのボクサー並に膨らんでいる。
やや浅黒く、着ている白のティーシャツと青いデニムのパンツがよく映える男だ。
その割に表情はいたって涼しく、何事にも物怖じしていないように窺えた。
それは俗にいう「オトナの男性」ともとれるのだが、
しかし実際はそんな体面のよい肩書きではない。
ただ、何事も受け付けてないだけ≠ネのだ。
.
- 6 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:44:58 ID:3zkaOYpgO
-
このように排気ガスがにおい、
空き缶や紙屑が転がって、
ポスターは当然のように破かれているか落書きをされている。
そんな、近代化に伴ってきた代償だらけの街でも
男は虚無とも呼べる心境のままでいられるのだ。
( ´ー`)「……」
今の心境も、無。
ただ、目的地に着くまでのこの道のりから
風情というものを見出そうとしているだけだった。
ポケットに手を突っ込み、やや上体を屈めるが
顔をあげるその姿は、往年の暴力団組員をも彷彿とさせる。
肝っ玉の小さい都会の人間たちは、彼のそんな姿を見て
畏怖を感じ、そそくさと何かの陰に隠れようとする。
だが、彼はそんなことは全く気にしていなかった。
いや、気にかけようとすらしていなかった。
向かいの男女がこそこそと逃げているのに気づいてすらいなかったとも言えた。
( ´ー`)「………」
暫く歩いていると、徐々に辺りは暗くなってきた。
裏通りに近づいてきつつある証拠だ。
裏表は表裏一体。
その言葉を体現しているかのように、
この街ではちょっと建物の陰に行こうとしただけで
すぐに裏通りに到達することになる。
男の目的は、言わば裏通りにある。
しかし彼は裏社会に精通する者ではない。
裏通りに近寄る目的も裏社会絡みではない。
この、一見矛盾しているように見える現状。
しかし、彼の目的は「裏社会になくて」「裏通りにある」。
.
- 7 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:45:53 ID:3zkaOYpgO
-
裏通りには、いくつかの特徴があるのだ。
ひとつは、裏社会に精通する者の存在が常に懸念されること。
暴力団が常駐しているようなところであり、交戦もしばしばある。
そのたびに飛び交うのは銃弾の嵐だ。
一般人が通りかかったら、まず命の保証はない。
では、他にはあるのか。
あるとしても、やはり裏社会に通ずるものがある。
情報量に長けたバーテンが開くバーや、
法で規制されている非合法の薬や銃、
若しくは「ヒト」を専門に取り扱う商店。
表社会で盗まれた絵画や宝石類なども
ここで競りにかけられることがしばしばだ。
「裏社会に用がない」なら、裏通りに来る必要はないのだ。
しかし、ハイエナならいた=B
偶然裏通りに迷い込んできた、地方の人や
観光客の身包みを剥ぐことを生業とした、賊。
表社会の警察組織にとって、もっとも厄介な相手だ。
そして、この男の目的はそこにあった。
というのも、裏通りに身を潜める賊には――
.
- 8 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:47:28 ID:3zkaOYpgO
-
(;=゚ω゚)ノ「見逃してくれよぅ……」
( ゚∋゚)「ほう」
――巨躯を持つ男が、痩身の男に詰め寄っていた。
ここは裏通りでも相当奥に位置するところで、
決して良心を持った人は助けにこないだろう。
そんなところで、ひ弱そうな男が胸倉をつかまれていた。
必死にふりほどこうとするが、びくともしない。
巨躯の男は、威圧的にその男に金品を要求していた。
( ゚∋゚)「カネがなければその金歯をいただくぞ」
(;=゚ω゚)ノ「か、勘弁……」
( ゚∋゚)「覇ぁッ!!」
(;= ω )ノ「ぎゃっ!」
巨躯の男が胸倉をつかんだままその男を
持ち上げては、近くの壁に叩きつけた。
凄まじい轟音が響き、その壁には大きなクレーターができあがった。
つかまれている男は、苦悶の声すらあげられなかった。
( ゚∋゚)「まだ聞かないのか?」
(;= ω゚)ノ「くっ……」
(;= ω゚)ノ「うあああああっ!」
つかまれた腕から逃れるべく、
男は全力を籠めてその手を振り払おうとした。
顔や下半身の揺れ具合から、相当強い力が籠められていたのだろう。
しかし、びくともしなかった。
少しくらいはその腕がぶれてもよさそうなのに、
つかんでいる男は涼しい顔をしたままである。
少し暴れたのち、意味がないと察した痩身の男は
抗うのを諦め、俯いてぜえぜえと息を荒くさせた。
.
- 9 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:49:15 ID:3zkaOYpgO
-
( ゚∋゚)「たとえこの腕に何トンもの力がかかろうと決して揺らぐことはない」
(;=゚ω゚)ノ「ま……まさか……」
( ゚∋゚)「手前は『能力者』に抗うつもりなのか?」
(;=゚ω゚)ノ「……!」
訊いた男は「やはり」と思い、心臓の鼓動が速くなった。
そもそも『能力者』の存在は稀有なのだ。
《特殊能力》を保持しているだけで、進学や就職で有利になることもある。
そしてそれが抗いようのないほど強力なものであれば、
自然のうちに団体を統べる存在となり、地位が高まるのだ。
自らを『能力者』と名乗った男の口振りから、
向かいの男は彼の有する《特殊能力》が
凄まじいものではないのか、と危惧した。
そしてそれは当たっていた。
(;=゚ω゚)ノ「う……嘘だよぅ?!」
( ゚∋゚)「嘘だと思うなら」
男は空いている拳を構えた。
殴られると思った男は、咄嗟に目を瞑った。
だが、殴られたのは自分ではなく、隣の壁だった。
灰色の破片が飛び散り、煙が舞い上がっている。
そのあまりの轟音に男は少しの間聴力を失った。
恐怖と驚きで言葉を失っていると、
『能力者』はその殴った拳を男に見せた。
どこにも異常のない、平生のままの拳だった。
そして、異常がないことが異常≠セった。
( ゚∋゚)「壁を殴っても傷一つ付かないこの拳を見せればわかるか?」
(;=゚ω゚)ノ「あ……あ……」
.
- 10 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:49:56 ID:3zkaOYpgO
-
( ゚∋゚)「【逆転適応《アップダウンロード》】」
( ゚∋゚)「ここら一帯の賊を統べる者だ」
( ´ー`)「―――ほう。いい話を聞いた」
―――男が、裏通りに訪れる理由。
裏通りには『能力者』が集うからだ。
.
- 11 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:51:22 ID:3zkaOYpgO
-
周りから優遇される『能力者』の行く末は、
だいたいがこの裏通りに顔を出すことになる。
なにをしなくても、ただ『能力者』であるというだけで
厚遇を受け、表社会で普通に定職に就くよりも安定した地位を得られるのだ。
そして、この【逆転適応】と名乗った男の場合、
近辺の賊のリーダーであることがそれに当たる。
表社会よりメリトクラシーの表れが顕著になっている
裏社会の方が、『能力者』としては満たされるのだろう。
―――そして、この男は、『能力者』を倒すことで満たされる。
.
- 12 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:52:38 ID:3zkaOYpgO
-
( ゚∋゚)「誰だ」
( ´ー`)「名を聞くときは、自分からってガッコで教わんなかったか?」
( ゚∋゚)「………」
突如として現れた男は、『能力者』に食ってかかった。
一般人なら、相手が『能力者』とわかれば決まって逃げるか媚びを得るものだ。
だがこの男はそうしなかったので、『能力者』の男は少し戸惑った。
しかし、『能力者』が怯むことはなかった。
その男に負けじと、彼も睨みを利かせ声を低くさせた。
( ゚∋゚)「……いいだろう。俺の名はクックルとい――」
( ´ー`)「誰が個人名を訊いた。
能力についてに決まってんだろ」
( ゚∋゚)「あぁ?」
( ´ー`)「【逆転適応】。なんだその能力」
クックルは黙り込んだ。
男の思考が読めなかったのだ。
だから自然のうちに手に籠める力が抜けてしまい、
つかんでいた男に逃走を許すはめになってしまった。
が、クックルは全く気にしていなかった。
今は目の前のこの男のことしか考えてなかった。
( ゚∋゚)「相手取ればわかる」
( ´ー`)「お?」
.
- 13 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:54:17 ID:3zkaOYpgO
-
( ゚∋゚)「獲物を逃がしてしまった。
代わりに手前の身包みを剥がさせてもらうぞ」
( ´ー`)「へっ。知らねえな、おめえの事情はよ」
二人は――否、クックルだけは戦闘の体勢に入った。
男がクックルを見下した直後に、クックルが彼に襲いかかってきた。
巨躯の割に比較的速い動きで迫ってきた。
フットワークは軽やかそうである。
この手の戦闘には慣れていそうだった。
( ´ー`)「まずはお手並み拝け――」
男は余裕を見せながら、男の拳を受けようと構えた。
いや、左手をポケットに突っ込んだまま、右腕だけを
縦に構えて、クックルの左フックを受けようとした。
それに構えなどはない。
クックルを嘗めているに過ぎなかった。
( ゚∋゚)「覇ぁッ!!」
(;´ー`)「お……?」
――が。
クックルの拳が触れた途端、男は表情を曇らせた。
自分も筋肉には自信があるのだ。
単身でも、国軍の一介の兵くらいなら、まとめて相手取れるほどには。
しかし、クックルの拳はそれとは違った。
あまりにも規格外の腕力だったのだ。
咄嗟に腕をひかなければ、折られてしまいそうだったほどに。
( ゚∋゚)「悪羅ぁッ!!」
(;´ー`)「……チッ!」
続けて、クックルは右膝を畳んで土踏まずを見せ、
男の腹を凄まじい蹴りで見事捉えてみせた。
腹筋に力を籠めていたのに、腹筋の力よりも脚の力の方が勝っていた=B
普段は決してあり得ないのに、男は背中から地面に倒れ込んだ。
それも、しっかり五メートル程飛ばされた上で。
.
- 15 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:56:37 ID:3zkaOYpgO
-
クックルは追撃してこない。
男はそんなクックルに恐れこそ抱かなかったが、
奇妙な心地のまま、のそりと地に足をつけ起きあがった。
白い服が汚れたのを手で払って、
冷や汗をつけた涼しい顔で再びクックルと対峙した。
クックルは相も変わらず無表情だった。
( ゚∋゚)「わかったか」
(;´ー`)「……わかんねえな」
( ゚∋゚)「【逆転適応】。単純な能力だ」
( ゚∋゚)「この世に存在する全ての力に『逆転(うわまわ)』り『適応(きょうか)』する能力
――と言われた記憶がある」
( ´ー`)「俺は生憎中卒でよ。意味がわかんねぇぜ」
( ゚∋゚)「なら俺を殴ってみろ。むろん本気だ」
( ´ー`)「………はぁ?」
( ゚∋゚)「どうした? 殴れと言われると殴れないのか?」
( ´ー`)「……いいけどよ、別に」
クックルの言いたいことこそわからなかったが、
男は言われた通りにするため、クックルに歩み寄った。
普通ここでは不意打ち、騙し討ちされる不安が生まれるものだが、
彼はそういったたぐいの攻撃は全く恐れていなかった。
そもそも。
彼は、本気のカケラすら出してないのだ。
.
- 16 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:58:18 ID:3zkaOYpgO
-
( ´ー`)「心臓殴るぞ」
( ゚∋゚)「ふん」
男は、躊躇うことなく拳を構えた。
クックルが動じないうちに、その拳を彼の心臓にめがけて繰り出した。
近くの壁に放てば、穴が空く程の威力だ。
人体に放てば、骨折は必至である。
(;´ー`)「……んん?」
( ゚∋゚)「どうした。全然痛くも痒くもないぞ」
しかし、クックルの肉体には傷一つ付いていなかった。
それどころか、殴った側の男の拳が傷ついていた。
まるで、一般人が岩を殴って骨を折ったかのようなダメージが、男を襲っていた。
腕力があることは腕が丈夫であることにも繋がるので、
男の腕は辛うじて折れたり負傷を来すことはなかった。
しかし、たかが人間一人の胸板を殴っただけで自身に反動が来る方がおかしい。
クックルの胸板が傷つくほうが普通であるはずなのだ。
だから、男は不思議に思った。
するとクックルは続けた。
( ゚∋゚)「『手前の腕力』を喰らう前に胸板が
それにあわせて『適応』されたのだ」
( ´ー`)「……へえ」
そう聞き、仕組みを理解できた男は、渋い顔をして肯いた。
それを見て、クックルは戦闘の再開を促した。
当然、男も促されるまでもなくそのつもりだった。
.
- 17 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 15:59:49 ID:3zkaOYpgO
-
( ゚∋゚)「さあ。身包みを剥がせてもらうぞ」
( ´ー`)「確かに強え。【逆転適応】か」
( ゚∋゚)「?」
( ´ー`)「理論上、おめぇに傷一つつけらんねぇもんな。強ぇよ、確かに」
( ゚∋゚)「どうした。怖じ気づいたか」
( ´ー`)「――でもな」
( ゚∋゚)「おい」
男は、にやりと笑んだ。
「こいつなら俺を満たしてくれる」と思ったが故の笑みだった。
そして、男も能力を発動した。
( ´ー`)「でも、相手が悪いわ、おめえ」
( ´ー`)「【逆転適応】?」
( ´ー`)「んなもん―――」
.
- 18 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:01:00 ID:3zkaOYpgO
-
―――知らねえよ。
直後、その場に鮮血が飛び散った。
.
- 20 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:02:54 ID:3zkaOYpgO
-
◆
『因果(けっか)』を
『反転(てのひらがえし)』させる。
それは、極論で言うなれば、この世の全てを
受け入れない――拒絶する――ことに繋がる。
どんな肉体的疲労も、
どんな精神的苦痛も、
どんな無関係的因果も。
その全てが、彼女のもとにはやってこない≠フだ。
【手のひら還し《イレギュラー・バウンド》】。
《拒絶能力》は、皆共通していることがある。
どれも、最悪なまでにひねくれているのだ。
どんな《拒絶能力》を相手取ろうが、自分たちの持っている
『常識』だの『道理』だのは決して通じることはない。
「でも、作品として考えた以上弱点はあるのだろう」
――といった考えは、それこそ『絵空事』なのだ。
それはあくまで内藤の手がける作品の中でのみ通じる『常識』である。
ここにいる彼らは皆知っていることだが、
この『拒絶』という存在を、内藤は作品に出していない=B
その理由は、論理的に考えれば、決して誰も勝てないからだ。
もっと詳述をするならば、パワーバランスが狂っている。
彼女、【手のひら還し】の場合、
『すべてを反転する』なら、当然そのすべてには自らの死も
入っている以上、実質上彼女は負けることはないのだ。
.
- 21 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:05:40 ID:3zkaOYpgO
-
从;゚∀从「生死を『反転』だぁ!?」
从'ー'从
到底信じられそうにないといった声で、ハインリッヒが復唱した。
ワタナベは動じず、ただそこに立っているだけだ。
とても、その『生きていること』は『嘘』とは思えない。
ほんとうに、生死の概念を『反転』したのだ。
(# ,*;゙><●>)「つまり、『死んでいること』が『生きていること』になるのか」
从'ー'从
ゼウスがそう現状把握に努めていても、ワタナベは動じない。
ただ、不敵に笑んでは髪をなびかせるだけだ。
とても、不意打ちのタイミングを測っているようにはみえない。
加え、彼女は不意打ちなんてする必要がない。
(;^ω^)「……ここに」
内藤が、静かに口を開いた。
ゼウスとハインリッヒは自然のうちにそちらに耳を傾けた。
(;^ω^)「ここに、二人。原作じゃあ最強≠フ二人がいる」
内藤は言葉にしなかったが、ゼウスとハインリッヒを指した。
確かに原作では最強%ッ然のキャラクターなのだ。
だが、続けて逆接が挟まれた。
(;^ω^)「……でも。覚えといてほしいお」
(;^ω^)「この世界じゃ≠んたらは決して最強じゃない」
(;^ω^)「上を探せばほいほい高みが見える世界なんだお」
その「高み」の、ほんの一例が『拒絶』だった。
彼らは、二人とも『拒絶』の恐ろしさを知っている。
.
- 22 名前:同志名無しさん[sage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:07:08 ID:3zkaOYpgO
-
ハインリッヒは拒まれた『現実』に。
ゼウスは拒まれた『因果』に。
既に、苦しめられているのだ。
それなのに、再三注意を促す内藤の思惑を、二人はわからなかった。
だが、わからないままでよかった。
内藤は、思い出したのだ。
考えられる限り最強最悪な『拒絶』の存在≠。
それも、二人=B
「最強」と「最凶」である。
从'ー'从「やーん。二人がかりじゃ怖いの〜」
(# ,*;゙><●>)「……いや。一人だ」
从'ー'从「わ〜……。
――え?」
直後。
ゼウスは、その場でくずおれ、無言のまま地面に倒れ込んだ。
手を前に出し地につけようとすらしない。
体力が尽きた≠ゥのような動きだった。
意味深長そうな言葉を残して急に倒れたので、
ハインリッヒは途端に不安に駆られた。
いくら宿敵といえど、『拒絶』の前では心強い味方だ。
そんなゼウスが戦線から離脱したため、急に心細くなった。
.
- 23 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:09:26 ID:3zkaOYpgO
-
从;゚∀从「――え?」
从'ー'从「あ〜思い出した!」
从'ー'从「そういや、自然治癒の効果が
『反転』させられてたんだよね、きみ〜!」
从;゚∀从「はァ!?」
(# ,*;゙>< >)
ワタナベはゼウスの心を読んだ。
しかし、意図的なそれではない、本当の無心が続いていた。
体力の回復の進行が『反転』され、時間経過に
つれて体力がなくなるようにされていたのだ。
そして、温存していた体力も今の不意打ちで使い果たし、
結果動くことすらできなくなった、というわけだ。
从'ー'从「よくやったよ!
あんだけフルボッコにされてさ、
徐々に体力も減ってきてたのに
ボクに不意打ちを決められたもん」
从'ー'从「拍手〜っ!」
そう言って、ワタナベは独りでにゼウスに労いの拍手を向けた。
だがその胸中では祝いの感情はおろかゼウスに対する関心すらまるでなかった。
さながら、その姿はおもちゃの電池がなくなって
それに興味を示せなくなった幼児のようだった。
ゼウスはびくともしない。
不用意に近づいたワタナベに、
不意打ちのひとつ、仕掛けることすらできなかった。
.
- 24 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:11:10 ID:3zkaOYpgO
-
从'ー'从「――で」
ワタナベの思考から、ゼウスが完全に飛んだ。
人をヒトとして見ないような眼になってから、
彼女はハインリッヒの方に躯を向け、じろっと彼女を見つめた。
その不気味な表情に、ハインリッヒは背筋が寒くなった。
無意識のうちに、じり、と後退りもしてしまったほど。
自身の唾が喉を通る音すら、そのときの彼女には鮮明に聞こえていた。
从'ー'从「どーすんのォ?」
从;゚∀从「……は?」
从'ー'从「『英雄の優先』? が使えない『英雄』に用はないんだけど」
从;゚∀从「……帰らせてくれんのかよ」
从'ー'从「どおしよっかな〜」
从'ー'从「あ、せんだみつおゲームしようよ〜」
从;゚∀从「てめ―――」
ワタナベがそうおどけてみせた直後、
ハインリッヒはぎろ、と彼女を睨んだ。
そして、一瞬後にはその背後にワタナベが立っていた。
从'ー'从「甘ぇ」
从 ゚∀从「っ!」
「いつの間に後ろに」。
ハインリッヒが、そう思考を巡らす猶予すらワタナベは与えなかった。
背後に回ったワタナベは、得意の掌底での攻撃でハインリッヒの背中を狙った。
ハインリッヒは躯を捻って応戦しようとするが、
『優先』のされていない『英雄』よりかは
ワタナベの方が身体能力が高かったようだ。
.
- 25 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:13:26 ID:3zkaOYpgO
-
振り返ってワタナベの掌底に迎え撃つ前に、
その掌底は既に背中に命中されていた。
瞬間、内臓が前方に吹き飛んでしまいそうな錯覚に目が眩んだ。
それは、内臓に深く残るダメージが与えられた証拠だった。
从'ー'从「シュークリームに大福混ぜるよりも甘ぇよ」
从; ∀从「……!」
十二指腸の辺りをさすっていると、ワタナベがそう言った。
あまりの痛みに、一瞬ハインリッヒは彼女の存在を忘れていた。
進化した【正義の執行】により常時適用させることもできる『英雄の優先』は、いまは解除しているため
『人体』が『劣後』されて躯に穴が空くことこそなかったが、ダメージは桁違いだった。
「負傷させるよりも負荷を追わせる攻撃」としては、
掌底を用いた突きに勝る他の攻撃方法はないのではないか、と思えたほど。
从'ー'从「いや、角砂糖を直接食ったよりもかな?
あれってあり得ないくらい甘いよね〜」
从; ∀从「……」
从'ー'从「相手が急に変なこととか言い出したら、すぐに
『不意打ちかも』って予測してあらかじめ構えなきゃ」
从'ー'从「いつ向こうが、手のひらを返して
襲いかかってくるのかわかんねーんだからよ」
.
- 26 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:15:38 ID:3zkaOYpgO
-
ワタナベの発言は的を射ていた。
話をしている最中にいきなり襲いかかることがあろうと、
それは決してファールでもタブーでもなく、いたって正当な行為だ。
むしろ相手の挙動、行動、言動、その全てが全て
真であると安易に受け取るほうが愚かなのである。
疑いに疑いぬいてこその、慎重な戦闘なのだ。
「相手の弱点を知る」には「相手の動きを押さえる」必要がある。
ハインリッヒは、それをすっかり怠っていた。
从'ー'从「そんなボクは、塩からより甘いぜ」
そう啖呵を切ってから、続けた。
从'ー'从「甘ったる〜い口調から厳格な性格まで、
なんでも自由になりきることが趣味なの」
从'ー'从「で、いまのボクはすごく辛辣だ!」
从'ー'从「ここでそこの男が死んだら、所詮その程度だった
――なんてキビシイ考えを持っているのだよ、ショクン」
.
- 27 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:18:40 ID:3zkaOYpgO
-
从;゚∀从「……不意打ちされてるくせによく言うぜ」
从'ー'从「だからあれはわ――」
从; ∀从「ッが……!…っ!」
ワタナベは、またしても不意打ちを試みた。
能書きを並べるふりをして隙を見計らう。
そして予想通り、ハインリッヒの隙を衝くことができた。
ハインリッヒは、心臓部への掌底による
凄まじいダメージを、与えられた。
从'ー'从「うわ、二度もひっかかった」
从; ∀从「がぁぁ……カッ……!」
心臓部の機能を停止させるかのようなダメージだったため、
ハインリッヒは一瞬無呼吸状態に陥った。
視界が暗転し、直立することすらできなくなった。
从'ー'从「ほんとにきみ『レジスタンス』のリーダーなの〜?」
从; ∀从「…かハッ……」
从'ー'从「弱ぇ。『英雄』のイメージとは手のひら返して、弱ぇ」
ワタナベは、続けざまに再度掌底を放った。
それも、先ほどと同じように心臓部へ。
その威力はやはり強大で、心臓が異常を来しかけた。
言わば強力な心臓マッサージを連続で受けたようなもの。
健全な肉体で心臓マッサージを受けようものなら、悪影響を与えかねない。
.
- 28 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:20:11 ID:3zkaOYpgO
-
从'ー'从「拒めよ、もっと拒めよ」
从; ∀从「―――ッ!」
今度は、ワタナベは掌底を人中に放った。
ハインリッヒがそれを避けられるはずもなく、
途端に脳がシェイクされたような嫌悪感に見舞われた。
軽い脳震盪を味わった上からやってくる、内部に残るようなダメージ。
そして感じたのは、閉じた瞼の上から触れられた指だった。
それにハインリッヒが気づくと、ワタナベはちいさく言った。
从'ー'从「目ェ潰そっか?」
从; ∀从
人中に掌底を放つメリットは、同時に目潰しも行えることにあった。
何らかのスポーツではそれは反則になるためデメリットと捉えられるのだが、
ここではそのようなルールはいっさい存在していない。
つまり、ワタナベはこう言いたかったわけだ。
「少しでも気を抜けば、すぐに殺すぞ」と。
从'ー'从「もっと跳ね返せ。強い力で、だ」
从'ー'从「そっちの方が『反転』のしがいがあるってもんだから、サ」
从'ー'从「返事は?」
从; ∀从
ハインリッヒは答えなかった。
否、答えることができなかった。
心臓部への、顔面への、大きなダメージ。
目眩、吐き気、脳震盪。
嫌悪、不快、絶望、拒絶。
そういったものに一斉に襲われているのに、
ワタナベの声を正確に聞き取った上で返事をできるはずもなかった。
.
- 29 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:21:56 ID:3zkaOYpgO
-
从'ー'从「返事ッ!」
从; ∀从「ッッ!」
ワタナベは、何度目になるかわからない、掌底を放った。
ハインリッヒの心臓部に、それもより一層強いものを。
ハインリッヒは、声にすらできない呻き声を発することしかできなかった。
从'ー'从「掌底だけがボクの攻撃手段って思ったら大違いだぜ」
从;゚∀从
次の瞬間、いつの間にか躯を捻っていたワタナベから、鋭い裏拳を見舞われてしまった。
鋼鉄のような拳で、ハインリッヒの頬骨は呆気なく砕けた。
この骨が砕けるという痛みには慣れてこそいるが、
裏拳そのものの威力が異常な程高かった。
殴られ、慣性に従ってハインリッヒは飛ばされた。
土を服と肌が擦り、僅かばかりの砂埃が宙に舞った。
从'ー'从「裏拳。慣性を力にできるそりゃすげ〜攻撃サ」
从'ー'从「ボクみたいにか弱い女の子にとっちゃ便利なのよね〜」
从; ∀从「……チッ……」
从'ー'从「もう一発イク? 今度は踵落としさね」
そう言っては、ワタナベは軽く跳ねた。
直後、躯を縦に一回転させ、空中での踵落としをする体勢に入った。
足技の得意なハインリッヒもよく使う攻撃で、それの破壊力はよく知っている。
だからこそ
.
- 30 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:23:02 ID:3zkaOYpgO
-
从; ∀从「(あ――俺、死んだ)」
ハインリッヒは、死を覚悟した。
慣性の補助を受けてない掌底で心臓を止めそうな程の威力を出し、
慣性の補助を受けただけの裏拳で骨を砕いてみせる程のダメージを
生ませるワタナベが、慣性と重力からの恩威を受けた踵落としを放てば、
『優先』のされていない自分の頭蓋骨くらい、簡単に砕かれると思ったからだ。
――そして。
踵がハインリッヒに触れる時、
ワタナベは悲しそうな顔をした。
从'ー'从「(………。)」
从'ー'从「(こいつも……大したことなかったな)」
鋭い空中踵落としが、ハインリッヒの頭蓋骨に炸裂した。
人間が発してはならないような音が、周囲に響き渡った。
.
- 31 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:25:04 ID:3zkaOYpgO
-
从;'ー'从「…………?」
从 ∀从
――ワタナベは、ハインリッヒに踵落としを当てた瞬間、
その足が尋常ない痛みと痺れに襲われていることに気が付いた。
なにが起こったのか、わかるはずもない。
ただ、足に異変が起こったことしか理解できなかった。
ハインリッヒへと向かうはずの威力が
あろうことか自身へ押し返されてきた≠フだ。
その『因果』に説明をつけられるはずがない。
ワタナベは少し狼狽し、不安に駆られた。
从;'ー'从「(なに、今の……!)」
从;'ー'从「(まさか無意識のうちにベクトルを『反転』させちゃった……?)」
从;'ー'从「(いや、そんなはずは――)」
その足には暫く力を入れることができず、片足でバランスを
とらざるを得なくなり、ワタナベは少しふらついた。
必死に、この『因果』がどのように引き起こったのかを考える。
ハインリッヒが『英雄の優先』を発動し、
『劣後』された自分がダメージを受けてしまったのか。
それとも、無意識のうちに【手のひら還し】を
適用させてしまい、ダメージが全部跳ね返ってきたのか。
だが、納得のいく答えは出てこなかった。
ただ、足の痛みが必死に『異常』を訴えていた。
从;'ー'从「てめえ、まさか――」
从 ∀从
ワタナベは、その『因果』がハインリッヒに
よってもたされたものかと思い、咄嗟にそう怒鳴った。
あの状況で不意打ちができるとは考えにくいが、そうしたのではないか、と。
.
- 32 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:26:18 ID:3zkaOYpgO
-
しかし、ハインリッヒは動かない。
目を閉じ、ただ横たわっているだけだった。
不思議に思ったワタナベは、ハインリッヒの心の声を『反転』させた。
すると、還ってきたのは静寂のみだった。
つまり、今のハインリッヒは何も考えていない。
从;'ー'从「(違う、こいつは気絶してる……)」
ハインリッヒは、自身の死を覚悟して、気を失っていた。
はたから見れば様態が様態なだけに死んでいると
思うかもしれないが、彼女はまだ生きている。
しかし、気を失っている彼女がワタナベに
一矢報いることができるはずもない。
从;'ー'从「じゃあ、なぜ……」
そう呟くと、背後から声がした。
知らぬ間に、ワタナベの背後に誰かが立っていたのだ。
.
- 33 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:27:40 ID:3zkaOYpgO
-
「なぜ、もないじゃろぅ。
そういう『因果』だった≠じゃ」
从;'ー'从「ッ!」
ただいまの『異常』を考察するあまり、ワタナベは
背後から漂う殺気を感じ取ることができなかった。
周章し、がばっと背後に向いて、相手の顔を拝んだ。
ワタナベの背後には、灰色の毛と髭、
ひび割れたかのような皺が目立つ老人が立っていた。
太い眉の下から、覗きこむような目がぎろりと光っている。
左腕を持っていない老人が、不敵に笑っていた。
その圧倒的な威圧感に、ワタナベは文字通り圧倒された。
/ ,' 3「――なんての。
『因果』がどうのこうのっちゅーな話じゃないわ」
从;'ー'从「だ、誰だてめえ!」
/ ,' 3「名乗る時は自分から名乗りなさい、お嬢さん」
从'ー'从「………!」
ワタナベは、自分の首に手刀が向けられていることに気が付いた。
「いつの間に」といった感想すら浮かぶことはなかった。
ただ、どうしようもなく集中力を欠いているだけなのだ。
/ ,' 3「……ほう。弱いの」
从;'ー'从「……?」
手刀をひいて、国軍最強の戦士、アラマキが言った。
なぜ手刀をひいたのか、今の言葉の意味、と、
ワタナベは理解できないことが相次いで起こり、
近況を把握するだけで精一杯となっていた。
.
- 34 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:30:12 ID:3zkaOYpgO
-
/ ,' 3「恐ろしいもんよ、《拒絶能力》は、な。
【手のひら還し】だっけかの?」
/ ,' 3「じゃが、喧嘩は弱い。弱すぎる。
『拒絶』のイメージとは手のひら返して弱いの」
从;'ー'从「……」
ワタナベは、この時で既に大分状況を把握できてきた。
まず、自分がハインリッヒにとどめを刺そうとした時、
この老人――アラマキ――が、「なにか」をした。
それでハインリッヒに与えるはずのダメージが全部自分のところへ還ってきた。
次いで、突如として起こった『異常』のため慌てふためいた。
そうして集中力が散漫になった隙に彼が背後を取った。
振り返った直後に自分はアラマキの威圧感に怯んでしまい、
警戒心を疎かにしてしまっていた。
その時に瞬間的に手刀を喉へ突きつけたのだろう、と。
そして、反応しきれていない自分をみて、
アラマキは「弱い」と言ったのだ。
戦場において、威圧感や圧倒といったものを受けてはならない。
その一瞬一瞬が、生死を分ける要因となるからだ。
なのに、自分は怯んでしまった。
だから、アラマキは「喧嘩は弱い」と再度言ったのだ。
そう考え、ワタナベはアラマキがただ者でないと察した。
尤も、ゼウスもハインリッヒもただ者ではないのだが、
ワタナベにとってはその二人よりアラマキの方が恐ろしく見えた。
.
- 35 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:32:09 ID:3zkaOYpgO
-
/ ,' 3「よくまあこの二人を倒せたもんじゃ。それは褒めてやろう」
从'ー'从「……ここはおじいちゃんが来るような場所じゃないですよ〜。
ほら、おしめ換えてあげるからあっち行こうね〜」
/ ,' 3「ヒョヒョヒョ。挑発がなっとらんよ、おぬし」
从'ー'从「……っ」
挑発を試みると、アラマキは笑ってそう言った。
だが、その言葉の裏からやってくる確かな重みをワタナベは感じ取った。
ワタナベが苦手とする威圧感、だった。
アラマキは、意図して威圧的に接することができる。
それは、長年軍隊の頂点に君臨していた彼だからこそ、
身につけることのできた利得的な武器だった。
ゼウスの与えるような恐怖、
ハインリッヒの与えるような窮境とは違う、威圧。
前者二人とは違い、アラマキは出会い頭から
既に攻撃をはじめているようなものなのだ。
/ ,' 3「一応そいつらとは同盟を組んでおってな」
从'ー'从「……だったらなんだよタコ」
/ ,' 3「ちょっと仕置きをさせてもらうぞよ」
从'ー'从「ハン? かかってこいやタコ」
/ ,' 3「早速――」
从;'ー'从「(ばーか! ぜーんぶ『反転』して押し付けてやんよ!)」
威圧を拭いきれないワタナベは、敢えて攻撃を仕向けさせた。
いくら威圧感に襲われ攻撃できないとしても、
向こうから勝手に自爆するならそれでいいのだ。
そして、ワタナベの持つ《拒絶能力》とは
基本的にカウンターを主としたものなのである。
ゼウスとの試合でも、ほぼカウンターでけりをつけたようなものなのだ。
.
- 36 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:34:59 ID:3zkaOYpgO
-
/ ,' 3「(左腕をなくしても衰えちゃおらんよ)」
右腕を大きく振りかぶり、
ワタナベの左頬に向かって強く殴りかかった。
ワタナベは抵抗しない。
この拳によって生じるダメージを、全部
『反転』させてアラマキに与えるつもりだからだ。
だが、アラマキはそれを知ってか知らずか、
いきなり全力を出しきった打撃を見舞おうとした。
否、彼の本気のそれは「打撃」とは言えない。
「破壊」だ。
脚力はハインリッヒに劣ろうとも
頭脳・機動力・戦闘力・身体能力はゼウスに劣ろうとも
純粋な「破壊」力ならば、圧倒的に彼が勝っているのだ。
国軍が国民に重税を課した上で製造した強固な盾でも、
決してアラマキの攻撃を防げるものはなかった。
それは、彼の修業時代、あらゆる力を自身に追い返して
わざと多大なる負荷をかけていたことによる賜物のおかげだった。
実際、『英雄』となったハインリッヒにあれほど
ダメージを与えられるのはアラマキくらいしかいないものだ。
その力は、歳を重ねても衰えを見せず、
それどころか年々増しているようにさえ見える。
从;'ー'从「(右腕も吹き飛んじまえ!)」
/#,' 3「ちぇあッ!」
.
- 37 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:36:55 ID:3zkaOYpgO
-
アラマキが思い切り殴った直後、ワタナベは当惑した。
「破壊」による音も、ダメージも、感触も。
なにも、生じなかったのだから。
从'ー'从「……へ?」
/ ,' 3「ふん」
アラマキは拳をひいて、踵を返して歩いていった。
ざっざっ、と砂の擦れる音は聞こえたが、
打撃音に似たような音は全く聞こえないままだった。
从;'ー'从「(あ、あれ? なんでなにも起こらない……?)」
从;'ー'从「(確かにダメージは『反転』させたのに、なんで!)」
ワタナベはあたふたして、去りゆくアラマキを止めようともしなかった。
彼女なら止めずとも追うことなど容易いのだが、
今の彼女にはそれすらできなかった。
それほど焦っていたのだ。
そのとき。
アラマキは、ぼそっと呟いた。
/ ,' 3「『入力』」
。
从゚ー(;・'从
.
- 38 名前:同志名無しさん[hage] 投稿日:2012/12/10(月) 16:38:20 ID:3zkaOYpgO
-
ワタナベの顔面の左半分が、砕けた。
血は飛び散り、眼球がごろっと出てきた。
赤黒い肉が見えており、見る者が見ると発狂しかねない情景だった。
ワタナベはそのまま倒れ込んだ。
血が溢れ出てきており、死は免れなかった。
アラマキの「破壊」を受けて、顔の一部が砕けるだけ
というのはむしろ相手の防御力の高さを褒めるべきなのだ。
一般人なら首から先が一気にもがれてしまうことだろう。
それを賞してか、アラマキは意気揚々と声高らかに言い上げた。
/ ,' 3「戦場における掟ッ! 其の珀伍拾陸ッ!」
/ ,' 3「見る事、則ち勝つ事に値するなり<b!」
.
戻る 次へ