- 100 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:00:40 ID:MdEa1zFI0
玉葱の皮を剥ぐように、人間の皮膚を一枚一枚剥いでいくと、おしまいには何が残るのだろう。
それが善いものなのか、それとも悪い何かなのか、そのこと自体には余り関心がない。
私が心の底から忌避していたことは、発狂しそうになるくらいに恐ろしかったのはそれは、虚であるということだ。
私はただ、誠実で在りたかっただけなのだ。
最後に残るはずの、私自身のその、何かに。
私はただ、耐えられなかっただけなのだ。
何も残らないという、私自身のその、空白に。
.
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:01:07 ID:MdEa1zFI0
- 一.
電車に乗らなくてはいけないと思って自動券売機の前でぼんやりと運賃表を眺めていたら、
斜め後ろから誰かに小さな声で、すいません、と突然に話しかけられた。
驚いてそちらを振り向くと、優しそうな笑みを浮かべたお婆さんが五歳くらいの女の子の手を引いて、私の傍に立っている。
J( 'ー`)し「あの、ごめんなさい。池袋までは、いくらの切符を買えば良いのか、分からなくて……」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、えっとお……」
あわてて運賃表に視線を戻して、駅の名前を口の中でもごもごと繰り返しながら路線図を追う。
ζ(゚ー゚*ζ「ええっと……大人が、280円です」
J( 'ー`)し「まあ、ありがとうございます。歳をとると、物が良く見えなくって……」
柔らかい笑顔と一緒にそう礼を言われて、私も曖昧に微笑みながらうなづいた。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:01:28 ID:MdEa1zFI0
- お婆さんは隣の券売機の前に一歩進んで、お財布から千円札を一枚取り出して機械に入れた。
女の子が背伸びをするようにして券売機の画面を覗き込んでいる。
J( 'ー`)し「大人が280円だから……子供は140円で……」
*('')*「私も、切符、ほしい」
J( 'ー`)し「失くしちゃうから、お祖母ちゃんが持っていてあげようね」
*('')*「うん!」
そのまま切符を二枚買い、ジャラジャラと吐き出されたお釣りをとって、
それからそのお婆さんはもう一度私に小さくお辞儀をして、女の子の手を引いて改札の方へ向かっていった。
仲良く手をつないで歩いていく二人の、後姿を見送ってその後も私は、何とはなしにしばらく二人の消えた方向を眺めていた。
何故かは分からないけれど、あの優しそうなお婆さんと、もう少し何かを話していたかったような気持ちがして、不思議だった。
ζ(゚ー゚*ζ「ぁ……」
少し経って、ふっと我に返って自分も切符を買おうと思い、券売機の上の路線図に目を戻したのだけれど、
そのときにはもう既に、つい先ほどまで自分が一体どこを目指していたのかが、分からなくなっていて、困ってしまった。
頭の中からすっぽりと、行き先の名前が抜け落ちてしまっていて。
そもそも何故電車に乗らなくてはいけないと思ったのかも忘れてしまっていて、困ってしまって。
どうしようもなくて私はただ、ぼんやりとそのまま、図の上に描かれた色とりどりの線を、眺めていた。
私は、どこへ、行きたかったのだろう。
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:01:59 ID:MdEa1zFI0
- ニ.
仕事は半年前に辞めてしまった。
半年前までは、全国展開するスポーツジムの、その支部のひとつの受付をしていた。
仕事といっても、その受付カウンターの中でマネキンのように微笑んでいるだけのことだったので
難しいことはひとつもなかったし、退職する正当な理由など何もなかったのだけれど、
ある朝目が覚めると、どうしてだか出勤する気を全く失くしてしまっている自分に気がついて、その日から欠勤を繰り返して、結局辞めてしまった。
実家は、地方で少し名の通った中規模チェーンのスーパーを経営していて、
一人離れて暮らす私はその両親から、生活費として毎月充分すぎるほどの仕送りをもらっていたから、そうなったところで失業保険を申請する必要さえなかった。そもそもはじめから、働く必要さえなかったのだけれど。
なんとなく、仕事をしていればまともな人間になれるような気がして、でも結局、何も変わらないと分かってしまって。
ただ、それだけの話だ。
そういうふうにして時間が自由になったところで、だから私には、するべきことも、やりたいことも、何もなかった。
何もなかったので、仕事をやめてその後の半年間は毎日、一人自宅のマンションにこもって、レンタルショップで借りてきたDVDで映画をずっと見ていた。
食べ物を買いにいくか、新しい映画を借りにいくこと以外、ろくに外出もしなかった。
それほど映画が好きなわけではなかったのだけれど、他にこれといって時間のつぶし方を、知らなかったのだ。
傍から見てみれば、食べて、遊んで、寝るだけの、太平楽な生活のように思えるのかもしれないし、実際その通りなのだろう。
それでも私は、まるで尽きることのない砂漠を歩いているような諦めとともに、その安穏な日々を過ごしていた。
何をしてみても、その倦怠と無気力から抜け出せないことは知っていた。まるで、主の居ない蟻地獄に落ち込んだような、感覚。
ずっと、小さい頃から、そうだった。私の周りには、私が望むものが、いつでも何でもそろっている。
ぬいぐるみ、絵本、ケーキ、ピアノ、友達、洋服、アクセサリー、恋人、車───本当に、望んでしまえばそれは何でも、手に入った。
ただそこには、私自身というべきものだけが、見事に欠けているのだ。
私は人一倍恵まれているはずなのに、しかし、希望だけがそこに、ない。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:02:23 ID:MdEa1zFI0
- 三.
それまで話半分といった様子で会話に相槌を打っていた兄は私のその言葉に、読みかけのバイク雑誌から目線を上げて、
私の顔をまじまじと見つめながら言った。
( ´∀`)「空っぽ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
( ´∀`)「そんな気が、するの?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
( ´∀`)「空っぽ、か。ふうん……」
兄はそれを聞いてふうんとひとつ頷いて、雑誌を畳んでこちらに向き直り、それからもう一度真正面から私の顔を見つめなおした。
( ´∀`)「……そうか。それでデレ、最近なんか元気なかったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:02:50 ID:MdEa1zFI0
- ( ´∀`)「……まあ、デレもまだ十六歳だし、そういう年齢なのかもしれないな。
焦んなくても、そのうちやりたいことも見つかると思うけど」
自分でも、言ったことを半分疑っているような口調で、兄はそう言った。
そうでは、なくて。
どうして皆、時間が解決してくれると、いつか必ず自分の中身が見つかるときが来るのだと、言い切ってしまうのか。
そうでなかったとして、空っぽな自分に出会ったときに、一体どうしたらいいのか。私はそれが知りたかったのだけれど。
( ´∀`)「それに、デレの年齢で将来自分が何してるか明確に分かる人のほうが、少ないんじゃないかな。
みんな、結構いい加減なもんだよ。俺もだけど」
皆ではなくて、私なのに。将来じゃなくて、今なのに。私は今、自分が何者かであることを、求めているのに。
だけど、心配そうに眉をひそめる兄を見て、何となく先が続けられなくなってしまった私は、うん、とだけ小さく返事をした。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:03:06 ID:MdEa1zFI0
- 煮え切らない様子の私を前に途方にくれていた兄は、ふと思いついたように手のひらを打ち振って私を傍に呼び寄せて、
その節くれだった右手を私に向かって差し出してみせた。
ζ(゚ー゚*ζ「?」
( ´∀`)「握手。おまじないだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
私がおずおずと手を差し出すと兄はその手の平をぎゅっと握り、空いた左手の人差し指を私の手の背に擦り付ながら言った。
( ´∀`)「いつかデレが困ったときのために、俺のパワーを少しだけ分け与えてやろう」
ふざけた口調で笑いながらそう言って兄は、私の手に何かの絵を描くような仕草をして見せた。
円を描くようなその兄の指のぐるぐるとした動きがくすぐったくて、私は堪えきれずにクスクスと笑ってしまった。
兄にはどこかいつも、そんな不器用な優しさのようなものが、あった。
十六歳の私は、友達や学校の教師達どころかその当時はすでに、両親にすら心を開かなくなっていたけれど、
だからこそ兄だけには色々なことを話したし、いつも冗談交じりのその鷹揚な笑い顔が本当に、大好きだった。
その優しかった兄がバイクの事故で亡くなってから、もう七年経つ。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:03:26 ID:MdEa1zFI0
- 四.
出鱈目に電車を乗り継いで辿り着いたのは、町をぐるりと囲む山林の一部を切り開いて造られた、市営の自然公園だった。
一度も訪れたことのない場所だったけれど、駅からたいした距離を歩くこともなく、迷わずに公園の入り口まで来ることが出来た。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
街灯に照らされた緩やかな林道をゆっくりと歩き続けた。
今日はじめて足を通した真新しいスニーカーのゴム底の下で、道に撒かれた砂利が擦れあってざりざりと足音を立てる。
きっかけなんて、なかった。
ただ気がついたら私は、ナップザックにナイロンロープ一本を詰め込んで、自宅をあとにしていた。
ほとんど衝動的といってほど、ふらりと唐突に、もう死んでしまおうと思ってしまった。
そのために、準備も適当で、踏み台にするための足場になるようなものを何も持ってこなかったのは本当に失敗だったと、今になって後悔したりしている。
いや、少し違う。何も突然のことではなかったじゃないか。
ずっと前から、ぼんやりとだけれど、そのことを想い続けていたのだから。
本当に、もうずっと、遠い、昔から。
少しずつ溜め込まれた雨水が堤を破るように、背負いきれない自殺衝動の積み重なりがついに溢れ出して、
それでもう私は居ても立ってもいられなくなってしまったのだ。
死んでしまおう。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
だから私は歩いていた。自分でもよじ登れそうな、首を吊るのに適当な木を探すつもりで、歩いていた。
黒々とした木々の谷間を、その立ち並ぶ木の幹を一本一本調べながら歩き続けていた。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:03:45 ID:MdEa1zFI0
- 五.
月明かりの射す森の泉のその鏡のように張り詰めた水の上で、
真っ白なバレエ・チュチュをきた女の人が一人、優雅に、私の知らない曲を踊っている。
彼女の足が華麗なステップを踏むたびに水面に細波が広がって、波紋が、数え切れないほどの美しく幾何学的な紋様を形作っていく。
彼女の腕が、右へ、左へ、月明かりの中に幾重にも重なる線を描いていき、
それはまるで御伽噺に出てくる魔法のように、花になり、蝶になり、鳥になって風景の中に放たれていく。
息が詰まるほどのその美しい光景を、私はただ水際でに立って、見つめていた。
踊り続ける彼女の顔を、私は以前どこかで見知っていたような気がして、でも、どうしても思い出すことが出来ない。
ある時はそれは子供のころ絵本で見たお姫様のように思えて、またある時は昔仲のよかった友達に似ていた気がして、
そしていつか、映画の中で見た外国の女優の人のようにも見えた。
そこでふと、気がついた。
私では、ないのだ。
それは誰でも良かったはずなのに、絶対に私ではありえないのだ。
あのダンサーが抱かれているメロディが、私には聞こえない。
私は、あんなふうには、踊れない。
それが哀しくて、目が覚めた。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:04:02 ID:MdEa1zFI0
- 六.
しばらく夜の林道を歩き回って、手ごろな木も見つけられないままに私は、その散策コースの、休憩所のような場所へ出た。
街灯の薄明かりの中に自動販売機と二人がけの木製のベンチが在って
慣れつけない運動に足が痛くなってしまった私は、そこで少しの間休んでいくことにした。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
自動販売機で暖かい缶コーヒーを買って、ベンチに腰掛けようと思ってそちらを見ると、長い間雨風にさらされてきた為だろうか、
苔生して腐りかけのその木製の黒ずんだベンチが、ひどく汚らしいものように私の目に映る。
このまま腰を下ろしたら洋服が汚れてしまいそうで仕方なしに、ポケットからハンカチを取り出して、それを敷物にすることにした。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
しん、とした夜の森の空気が肌にぴりぴりと匂うようで、
手のひらで包み込むように持っていた缶のコーヒーの熱が、じんわりと柔らかく皮膚に染み込んでいく。
吐く、息は白く。
静寂の中にある私と、ベンチと、自販機と。
うるさく流れていく、頭の中のたくさんの、言葉と。
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:04:47 ID:MdEa1zFI0
- 七.
お話に出てくるお姫様のように成りたかったといえば、人は笑うかもしれない。
でも私は長い間本当に真剣に、人として生きるということは結局のところ、そういうことなのだと思っていた。
たった一人で自分だけの幸せを追求してみたところで、そこに永遠なんて存在しないのだということが分かるようになって、
だから私は心底から途方にくれてしまった。
自分のために生きることが本当に無意味であるなら、それならば、どうしろというのか。
私はそうする以外に他の生き方を知らないのだ。
誰かのために生きて死ねるほど、私は人間を愛してはいない。
だから私はいつだって、私だけで在り続けた。
自分が本当は何を望んでいて、どう在りたいのか。
それを突き詰めていく以外に、生きる術を知らないのだから。
ただ自分に、誠実でありたい。
それが無意味で刹那のことだとしても、私は自分だけのためにしか、生きて行かれない。
そして、壁にぶち当たる。
完成されたその世界のどこを見渡しても、私は必要とされていない。
それがどうしようもないエゴだということは、分かっている。
それでも、私は、そう考えずには、居られないのだ。
私はこの世界にたった一人しか居ないのに、この世界は、私以外の人間で溢れている。
私の、居場所が、ない。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:05:18 ID:MdEa1zFI0
出口のないその箱庭に、救いのように垂れる、一本の、首吊りロープ。
踏み出せば、終わることが出来る。
だけど。
そうなのだけれど。
怖いのだ。
どれだけ自分に絶望していても、それでも。
死んでしまうことは、たまらなく、怖い。
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- 112 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:05:38 ID:MdEa1zFI0
- 八.
分かっては、いた。
初めから分かってはいたのだ。
ζ( ー *ζ「……」
そう。
どうして私は、このベンチに座る前に、何か敷物が必要だなどと考えたのだろう。
私は首を吊ろうと思ってここへ来たのに、下らない洋服が汚れてしまうことくらい、それが何だというのだろう。
死んでしまおうという人間が、たかだか服の汚れが気になって、直にベンチに座ることも出来ないなんて。
ζ( ー *ζ「……ぁ」
分かっては、いた。
足が痛くなるほど歩きまわって、首を吊るのによい木を探すなんて面倒くさいことをするくらいなら
どうしてはじめから飛び降り自殺やリストカットや、他の方法を思いつかなかったのだろう。
あの木は高すぎて登れない、この木は枝が細くて折れてしまいそうだ、
そうやって遠ざけ続けた、永遠に見つかる当てのない理想の首吊りの木。
そしてこれから自殺しようという人間が、肌寒いからといって、百二十円の缶コーヒーで暖をとっている。
ζ( ー *ζ「……」
分かっては、いたのだ。
結局はじめから、死ぬつもりなど、なかったのだ。
いくら思い詰めたふりで自分をだましても、最後まで踏み込むつもりは端から少しもなかったのだ。
私には、何もない。死ぬ勇気すら、ない。
我がままで甘ったれた、空っぽな私の、真剣で他愛のない、愚にもつかない───自殺ごっこ。
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:06:01 ID:MdEa1zFI0
- 九.
ζ( ー *ζ「……」
そのままどれくらいその場所にとどまっていたかは知らない。
ゆっくりと動き出した時にはもう、私の中から何かが抜けおちってしまっていて
私はそのまま体を引きずるようにして公園を出て、駅を目指した。
終電の時間はもうとっくに過ぎていて、運良く駅前のロータリーに一台だけ止まっていたタクシーに乗って、行く先を告げた。
窓の外を暗闇が飛ぶように流れていった。
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:06:32 ID:MdEa1zFI0
- ζ( ー *ζ「……」
マンションの前でタクシーを降りた。
そのままエントランスに向かいかけて、ふと思いだして、
背負っていたナップザックからあのナイロンロープを取り出して、共同のゴミ捨て場に、それこそ叩きつけるようにして、投げ捨てた。
そして逃げるように部屋に帰って、真っ暗闇のなか、服も脱がずにベッドに横になって、頭から毛布をかぶった。
そうして、震えがやってきた。
足の指の先からじわじわと、身体を這い登ってくるかのような小刻みな、揺れ。
歯の根がうまく合わずに、カチカチと音を立てて鳴る。
私の世界はこれからもきっと、こういう風にして過ぎていくのだろう。
ゆらりゆらりと揺れながら、生きることも死ぬことも出来ずに、ただ、そこに、あるだけの。
私には、何もない。
自分の死に対する誠実さすら、そこには、欠けていて。
ζ( 、 *ζ「……お兄、ちゃん……」
本当に、願った。
その呟きに、何かが起こることを、本当に心のそこから、願ったのだ。
そうして、凍えそうな暗闇だけが、そこに、浮かび上がった。
ζ( 、 *ζ「……」
自分を抱きしめるようにして、身体を丸める。
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします[sage] 投稿日:2011/11/27(日) 04:06:54 ID:MdEa1zFI0
それから一人、泣いた。
第六話 了
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