パー゚)b俺達は平穏に過ごせないようですd(   ;/2

4 名前:以下、雑談にかわりまして本編をお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:37:26.39 ID:UyYAmUFG0
    __
  ヽ|__|ノ
  ||‘‐‘||レ
  /(Y (ヽ
  ∠_ゝ \
   _/ヽ   廿匁


こんにちは。あたしはカウガール。
育てた牛、『花子』を買ってもらうために町を巡る旅をしています。

えっ、どう見ても牛には見えないって? 小さすぎだって?
……多分モルディブではよくある事よ、きっと。

この旅を続けてかれこれ一週間、街の人達に妙な目を向けられる事にも慣れました。
そろそろ優しい買い手に会えるといいんだけど……

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:40:12.87 ID:UyYAmUFG0

     *     *     *

||‘‐‘||レ「そう思うよね、花子」

廿匁「ンモー」

||‘‐‘||レ「えっ、あたしと別れるのは嫌って?」

廿匁「ンモー」

||‘‐‘||レ「……でもあなたとはいつか別れないといけないの」

廿匁「ンモー」 モシャモシャ

||‘‐‘||レ「そんな悲しい顔しないで……あたしだって寂しいわよ……」

廿匁「ンモー」 モシャモシャ

||;‐;||レ「ごめんね、花子。だからそんな事は言わないで……」



ノハ*゚听)「おおっ、こんな街中に牛がいるぞっ!!」

ミセ;゚ー゚)リ「勝手に八百屋のキャベツ食べてるよ、あの牛……」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:43:09.02 ID:UyYAmUFG0

||‘‐‘||レ「気を取り直して、花子」

廿匁「ンモー」

||‘‐‘||レ「ほら、あそこのお肉屋さんでコロッケを売ってるわ。
     花子の為に一つ買ってあげるわね」

廿匁「ン、ン゙モー……」

||‘‐‘||レ「すいませーん、おじさん。カレーコロッケを一つ――」

廿匁「ン゙ン゙モ゙ーッ!!」

||‘‐‘||レ「きゃっ! あっ、花子! 待ってー!」


『ん、何の音……グエェッ』

『きゃあああああぁぁっ! 牛がー!』

『牛ダー!! 絶対ニ牛ダー!!』


ノパ听)「……ん? 何の騒ぎだっ!? 祭りなのか!?」

アセ;゚д゚)リ「絶対違う! ってかさっきの牛がこっちに!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:46:19.77 ID:UyYAmUFG0

廿匁「ン゙ンモモオオ゙オ゙ォ゙ッッ!!」

ノハ;゚听)「うおおっ!!」

ミセ*;д;)リ「ヒーちゃん! 逃げてぇぇっ!」

ノハ#゚听)「……っ! こらあっ!!」

廿匁「ンモ゙ッ! …………」

ミセ;゚−゚)リ「えっ、牛が止まった……?」

ノハ#゚听)「駄目だろっ! こんな所で走り回ったら!!」

廿匁「ン゙、ンモー……」

ノパー゚)「よーし、聞き分けがいい子は好きだぞっ!」

廿匁「ンモー」

ミセ;゚ー゚)リ「あ、あれだけ暴れてたのに……」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:48:55.49 ID:UyYAmUFG0

||‘‐‘||レ「す、すいません。家の花子が……」

ノパ听)「アンタが飼い主かっ! 駄目だろ、ちゃんと見張ってなきゃ!」

||‘‐‘||レ「ご、ごめんなさい……」

ノパ听)「まあいいさっ、失敗は誰にでもあるしな。
     それよりこの牛は立派だな! アンタが飼ってるのか?」

||‘‐‘||レ「え、ええ……その牛の良さが分かるの?」

ノパ听)「今まで見た中でも、いい面構えだからな。
     愛情いっぱいで育てたんだろ!?」

||‘‐‘||レ「……ねえ、あなた。この牛を買ってくれないかしら?」

ノパ听)「えっ、あんたが育ててるんじゃないのか?」

||‘‐‘||レ「実はその牛を売るために旅をしてたんだけど……
     あなたほどの人なら安心して任せられるわ」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:51:28.26 ID:UyYAmUFG0

ノパ听)「でもアタシは金なんかあまりないぞ!」

ミセ;゚ー゚)リ「えっ、お金があったら買う気なの?」

||‘‐‘||レ「大丈夫、2000円でいいわ」

ミセ;゚д゚)リ「いやいや、幾らなんでも安過ぎでしょ!?」

ノパ听)「……500円でどうだ?」

アセ;゚д゚)リ「しかも値切っちゃったよこの人!」

||‘‐‘||レ「大丈夫、商談成立ね」

アセ;゚Д゚)リ「成立しちゃったー!?」

ノパ听)「ありがとなっ! 大事にするぞっ!」

||‘‐‘||レ「じゃあね。バイバイ、花子……」


ノパ听)「よーし、いい買い物をしたぞ!」

廿匁「ンモー」

ミセ;゚ー゚)リ「牛臭い……ってか今から電車に乗らなきゃいけないのに……」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:54:09.88 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

『   7月1日 (木)

  今日から七月。だんだん暑くなってきた。
  帰り道に商店街で牛を一頭買う。
  晩ごはんは久しぶりのステーキ。とても美味しかった。
                                    』


ノパ听)「……よしっ、今日の日記はこんなものだな!」

「ヒート、お風呂空いたわよ。父さんもまだだから早くねー」

ノパー゚)「了解ー。 ……そうだっ、風呂上りにルートビアを飲もうっ!
     たしか買い置きがあったはずだっ!」


< オッフロオフロ〜♪ ルートビア〜♪



        俺達は平穏に過ごせないようです


     ノパ听)<『その6:灼熱のサバンナ』だああああぁぁっっ!!

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 10:57:06.26 ID:UyYAmUFG0

     △     △     △

('A`;)「あ゛ー……暑いー……」

長かった梅雨もようやく終わり、夏らしい太陽が出てきたこの季節。

俺達は昼飯を終え、この暑さの中、各自の机でのびていた。
教室にクーラーが付いているとはいえ、省エネとかの関係で強制弱冷房設定だ。
焼け石に水って言葉がそのまま当てはまっているこの現状、何とかならないものか……

( ^ω^)「おっおっ、確かに少し暑いおね」

(;´・ω・)「割と涼しそうにいってくれるね……」

畜生、なんでこのポッチャリ系は涼しそうな顔してるんだよ……
あれか? とくせい:あついしぼう なのか?

ξ;゚听)ξ「梅雨が明けたら一気に暑くなったわね……」

梅雨の蒸した空気が未だに残っている分、性質が悪い。
あと数日晴れ続ければこの空気も消えるんだろうがなー……

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:00:17.28 ID:UyYAmUFG0

川 ゚ -゚)「ところでツン、最近ブーンとの夜の勉強は進んでいるのか?」

ξ#゚听)ξ「人聞きの悪い事言わないでっ! 誤解されちゃうでしょ……!」

クーが言ってるのには決して裏は無く、純粋にテスト勉強についてである。
中間で散々だったブーンに対して、ツンがほぼ毎夜行っているらしい。
本人曰く――

ξ#゚听)ξ「大体ね、ブーンがバカだったら幼馴染の私も同列に見られるかもでしょ!?
       私は自己防衛の為にやってるのよ。他の人ならどうでもいいんだから!」

何というか、そのー……ツンデレなのか? それって……

ξ;゚听)ξ「ああっ、もう! 何を言いたいか分からなくなっちゃったじゃない!
       とにかくブーン、これだけは言っとくわよ! もし期末が悪かったら八つ裂きだからね!」

(; ^ω^)「おっ、おっ、おおー……分かったお……」


('A`) ヒソヒソ(……ツンデレだな)

(;´・ω・) (……そうかな?)ヒソヒソ

川 ゚ -゚) ヒソヒソ(……もう好きだって言っちゃえばいいのにな)


ξ#‐凵])ξ「そこっ! 聞こえてるわよ!」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:03:18.67 ID:UyYAmUFG0

     □     □     □

ξ;゚−゚)ξ (全く、今はそれどころじゃないのに……)

あのエニグマ事件から半月、私の身の回りに起きた変化が幾つかある。


まずはエニグマの正体だった、白根ネーヨからだ。
前方の席で他の人と話している彼へと目線を送る。


マト*>д<)メ「おいっ、今日もゲーセン行こうぜ、ゲーセン!
       昨日入荷した奴をもうちょい練習したいんだ」

( ´ー`)「ああ、別に構わネー……ちょっとジュース買って来るーヨ」

(=゚ω゚)ノ「気をつけるょぅ」


私と目が合った彼は、逃げるように教室から出て行く。

エニグマ騒動から一週間、彼は学校を欠席している。
久しぶりに彼が登校した日の放課後、私は彼に呼び出された。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:06:01.51 ID:UyYAmUFG0

  (; ´ー`)『よ、よう……急に呼び出してごめんだーヨ』

  ξ ゚听)ξ『……話なら早くしてもらえない? 今日私掃除当番なんだけど』

  (; ´ー`)『あ、あのーヨ……あの晩に屋上に居たのは、やっぱり津出だったのかーヨ?』

  ξ ゚−゚)ξ『……屋上? 何の事を言ってるの?』

  (; ´ー`)『…………いや、人違いならいいんだーヨ。 ……ここからは独り言だーヨ。
        お互いの秘密を知った場合、秘密にしあった方が身のためだと思うーヨ……』

  ξ ゚听)ξ『……ネーヨ君がどんな秘密を抱えてるか知らないけど、まあそれがいいんじゃない?
         でもそういう話って、約束を破ったら酷い目に会わされるわよね?』

  (; ´ー`)『うっ、分かってるーヨ……時間取らせてごめんだーヨ…………』


……以上が、見え見えの嘘を重ねた会話集。
向こうも約束は守ってる様で、私に対する周りの空気は変わってない。
…………いや、一人だけ変わってるか。

マト#>д<)メ「……なあ、ネーヨの奴遅くないか?」

(=゚ω゚)ノ「……確かに遅いょぅ。どこまで行ってるんだょぅ?」

その日以来、明らかに彼は私の事を避けている……というより、怖がっている。
あんまりそんな態度を続けられても困るんだけどね……

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:09:09.97 ID:UyYAmUFG0

私と戦った仮面の人物だけど……あれ以来の手掛かりはない。
会話したぽの話によると、かなり主格の人物だったらしいけど……

唯一手掛かりになると思われた、ネーヨから奪った黒いペンダント。
だけどポケットの奥深くに入れたはずのそれは、気がついたら無くなっていた。
とても落としたとは思えないんだけど……あいつの手で消されちゃったのかもね。


そしてあの日に手に入れた、赤色をした水晶の欠片。
ぽ曰く、二つの水晶はほぼ正反対の相性があり、人によって合う合わないがあるとか。
……肝心の赤色の水晶だけど、幸いな事に私との相性は抜群らしい。


  ./・ω・ ヽ『二つの水晶、『光芒の水晶』と『黒檀の水晶』。
        『光芒』はそれぞれ赤、青、緑に……『黒檀』は紅、碧、黄に分かれたらしいぽ』

  ξ;゚听)ξ (名前が厨二臭いわね……)

  ./・ω・ ヽ『ツンの手に入れた赤の水晶片は『光芒』の方になるぽ。
        逆に仮面が使っていたのは、『黒檀』にあたる黄色だぽ』

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:12:00.62 ID:UyYAmUFG0

  ξ ゚听)ξ『……で、これからはどうするの?』

  ./・ω・ ヽ『水晶にはそれぞれ、対になる欠片を見つける能力があるぽ。
        ツンが次にすべき事は、『紅の水晶片』を探すことだぽ』

  ξ ゚听)ξ『なるほど、それで更に力を強化するって訳ね』

  ./・ω・ ヽ『いや、多分ツンとは相性が合わないはずだぽ。
        でもツンが手に入れた場合、相手の力を削ぐ事にはなるぽ』

  ξ ゚听)ξ『……で、肝心の探す方法は?』

  ./・ω・ ヽ『まずは水晶を魔力で満たして、それから呪文だけど……
        多分ツンが全力で注ぎ込んでも、半月近くはかかると思うぽ』

  ξ;゚听)ξ『半月……スパンの長い話ね。敵に取られちゃったりはしないの?』

  ./・ω・ ヽ『多分隠匿はされているから、大丈夫だとは思うぽ。
        ……後は、青か碧の水晶を探す事とかかぽ』

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:15:18.57 ID:UyYAmUFG0

  ξ ゚听)ξ『あれ、緑の水晶は……あっ、そうか!
           もう向こうが手に入れている可能性が高いのね?』

  ./・ω・ ヽ『そうだぽ、多分探すだけ労力の無駄だぽ。
        でも正直青とか碧はよっぽどのことが無いと見つからないだろうから……
        それより、魔力の特訓に費やしたほうがいいかもしれないぽ』

  ξ ゚听)ξ『確かに強さに振り回されてた感じはあったからね――』



そしてこの半月以上の間、私は魔力の充填と特訓、ブーンの勉強に勤しんできた。
特訓に使ってる関係で魔力の充填は遅れているけど、あと一週間以内には終わりそう。
ちょっと授業が疎かになりがちだけど、そこはブーンに教える事によって反復学習出来てるし……

ξ ゚ー゚)ξ (まあ、あともうちょいの辛抱ね。そういえばテスト勉強しっかりしておかないと……)

来週の末からは期末テストが始まる。
紅の水晶探索はその後からかしらね……?

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:18:10.36 ID:UyYAmUFG0
       。。     。。       。。
     ゚○゚     ゚○゚     ゚○゚

ノパ听)「でだっ! アタシはその牛と睨み合い、見事に説得したんだっ!」

('、`;川「ふーん、それは大変だったね……」

ミセ;゚ー゚)リ「って、あれは説得だったの……?」

昼休みのこの時間、アタシ達は大抵学食で過ごす。
……といっても、ここのメニューを利用してるのはペニサスだけ。アタシとミセリは弁当派だからな。
ここの学食は無駄に広いから、昼に混雑する事が無くて助かる。お茶飲み放題だしなっ!

('、`*川「で、その牛はどうしたの? まさかそのパンに挟まれた牛肉の正体じゃないよね?」

ノパ听)「いやっ、この焼肉サンドの肉は市販のものだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「まあ流石に即お肉って事はないでしょw」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:21:14.93 ID:UyYAmUFG0

ノパ听)「昨日の牛はちゃんと解体して冷凍してあるぞ!」

アセ;゚ー゚)リ「えっ………………? 冗談だよね?」

ノパ听)「……ん? 何がだ!?」

('、`*川「……それよりさ、その牛どうやって連れて帰ったのよ?
     あんたの家まで徒歩だと遠いでしょ?」

ノパ听)「大通りで軽トラをヒッチハイクしたので問題はなかったぞ!」

('、`;川「へ、へー……気のいい人もいたものねー……」

ミセ;‐凵])リ「あれはちょっと大変だった……
       荷台に乗ってたから街中の人が見てくるし……
       最終的には警察とカーチェイスになったからね」

('、`*川「……そう思うなら、あんたも一緒に帰らなきゃよかったのに」

ミセ*゚ー゚)リ「えー、でも牛と軽トラに乗るなんて、あまり無い経験だよ?」

('、`;川「そりゃあ無いでしょうね……」

ため息を吐きながらきつねうどんの汁をすするペニサス。
そういえば、ペニサスが学食でこれ以外を頼んでいるのを見たことがないな。
時々オプションでお稲荷さんとかおむすびとかは付けてるけど……

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:24:16.27 ID:UyYAmUFG0

……そしてこいつはいつも、最後まで油揚げを残しているんだよな。
ペニサスが言うには――


  ('、`*川『まずはうどんでお腹を適度に満たす。そして甘ーい油揚げをゆーっくりと堪能するの……
       時々スープにつけて味を整えたりして……最後に締めとしてスープを飲むっ!
       これがきつねうどんの醍醐味、そして王道よっ!』


この話を聞いたとき、稲荷があまりに美味しそうに見え、掻っ攫った事があるのだが……
……いやー、あの時はマジで殺されるかと思った。
最後の方とか少し記憶が飛んでるしな……

('、`*川「……ん? まさかまた食べたいとか言わないわよね?」

ノパ听)「いーや、大丈夫だ! もう取ったりなんかしないぞっ!」

('、`*川「……まあわかってるならいいけどさ。絶対に油揚げ様は渡さないからね!」

ミセ;゚ー゚)リ「油揚げに様付けする人初めて見たよ……」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:28:07.82 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

時間は過ぎて放課後。帰宅部のアタシは電車に乗り、家の最寄り駅まで向かう。
そして家へと帰る……前に、町外れにある古びた道場へと足を伸ばした。
門を潜って、どこにいるか分からない師匠を呼ぶため、アタシは声を張り上げる。

ノパ听)「師匠! 来たぞおおおおおぉぉっっ!!」

声に反応して道場の裏手の方からひょこひょこと歩いてきたお爺さん。
彼がアタシの習っている武道の師匠、相田ほわっちょさんである。
アタシの父の叔父の友達の……ええいっ、とにかく何かの知り合いで、昔から縁がある人だ。

ν(・ω・ν)「おー、一週間ぶりかー。ちょっと待っとれよー、手ー洗ってくるからなー」

ノパ听)「わかった、道場内で待ってるからなっ!」

とりあえず道場へ入って、適当に畳みの上へと腰掛ける。
無駄にボロボロな畳、所々に穴の開いた壁、途中から千切れている掛け軸……
うん、いつ見ても古ぼけてるなっ!

ν(・ω・ν)「お茶淹れてきたでー。芋羊羹食うかー?」

ノハ*゚ー゚)「食べるっ! 食べるぞおおおおおおおぉぉっっ!!」

芋羊羹!! 喜ばずにはいられないっ!!

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:31:16.07 ID:UyYAmUFG0

ノハ*‐ヮ‐) (はああぁぁっっ……! この芋独特の自然な甘みがぁぁっ……!)
  つ‐[]

これを考え出した昔の人には金一封を送りたいなっ!

ν(・ω・ν)「はぁーっ、そこまで喜んでもらえて良かったわー。
        ところで学校はどうやー?」

ノハ*゚听)「バッチリだぞっ! それより師匠の方はどうなんだ!?」

ν(・ω・ν)「うーん、相変わらず盆栽で食っとるわー。
        門下生は相変わらず来んしのー……
        こりゃヒートが最後の弟子になりそうじゃー」

師匠はこの様に格闘技の道場を開いているが、設備の古さと稽古の厳しさで、まったく客がいない。
だから今は副業の盆栽作りと年金と貯金で生計を立てているらしい。
ちなみにこの格闘技、アタシは半年ほど前に免許皆伝をしている。その名は――

ノパ听)「そんなに厳しかったか、『流派:灼熱砂万那』の稽古は……?」

ν(・ω・ν)「幼い頃から叩き込んだヒートとは違うわー。
        最近の親は子供をワシに任せてくれる者がおらんしのー……」

アタシは物心ついた頃には既に、師匠の下で流派を学んでいた。
……そう言われると確かに修行は厳しめだったかもな。
他の修行では一日に百キロ走るって話は聞かないしなー……

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:33:44.54 ID:UyYAmUFG0

ν(・ω・ν)「まーともかく、ワシはそろそろ引退じゃー」

ノハ;゚听)「えええっ! 師匠! それは気が早いぞっ!
      まだアタシは秘伝の最終奥義を伝授してもらってないし……」

ν(・ω・ν)「それはまだ早いわー。時が来たらちゃんと教えるわー。
        ……ヒート、一つだけ忘れちゃいかん事がある。覚えとるかー?」

ノパ听)「うんっ! 『究極の肉体は究極の心あってこそ』だよなっ!?」

ν(・ω・ν)「それさえ覚えてれば何とでもなるわー。
        ヒート、あれから究極の心は何かわかったかー?」

ノパ听)「うーん……やっぱり『正義』なんじゃないのか!?」

ν(・ω・ν)「……まだ少し勘違いしとるようじゃのー。
        まあ間違った道には進まんじゃろーがなー」

ノパ听)「違うのかー……まあいい、じゃあアタシ自身の力で見つけるぞっ!」

ν(・ω・ν)「……まーその意気じゃー」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:36:25.57 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

師匠への挨拶を終え道場を出たアタシは、近くの公園にある池へと向かった。
この池の脇にあるベンチに座って考え事をすると、なぜか上手い案が出るからだ。
実際に過去に何度も利用して、そのたびに名案が出ている……気がするしな。

ノハ;゚听) (はああっ、『究極の心』か……)

幸いな事にアタシ以外の人の姿が見えないので、じっくりと考えに没頭出来る。
お気に入りのベンチへずっしりと座り込んで、近くの自販機で買ったレモネードで喉を潤す。
夕暮れの中で水面を泳ぐアヒル達を見ながら、アタシは今日師匠に言われた事を反芻していた。

ノハ‐凵]) (昔から師匠ははぐらかしてたからなー……)

身体を鍛える事に関しては一から十まで教えてくれた師匠。
だけどこの質問をしたときには、決まって師匠はこう答えた。

  ν(・ω・ν)『ワシは答え合わせだけしちゃるけーのー。
          ヒート自身がこれだと思うものを言うてみー』

それ以来延々とこれだと思うものを上げてるが、師匠からのいい返答は無い。
もう正解までにかなり近い所まで来てると思うんだけどなー……

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:39:07.27 ID:UyYAmUFG0

ノパ听) (正義とは違うんだよなー……そもそも正義って何だ!?)

「……ためらわない事じゃないかな?」

ノパ听)「それは愛だったはずだぞ……」

ナチュラルに返答をした後に気がつく。
…………アタシは誰に対して答えたんだ?

声の聞こえた方を振り向くと、そこには――


( [E/▽)「はろー」


いかした仮面をつけた人物が、アタシの隣に座っていた。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:42:01.73 ID:UyYAmUFG0

ノハ;゚听)「なっ、いつの間に……!?」

( [E/▽)「クックックッ……さあ、いつなんだろうね……?」

たしかについさっきまでは人はいなかったはず……
何でこんな所に…… まさか――

ノハ*゚听)「……そうか! お前も池のアヒルを見にきたんだな!?」


( [E/▽)「…………ア……ヒル?」

ノハ*゚ー゚)「あいつらが池を泳ぐ姿って可愛いよな? それぞれに名前があるんだぞ!
      あっちの白いのは『マリー』であれが『フランソワ』、あの茶色いのが『まさあき五世』だ!
      ……まあアタシが勝手につけてるだけだがなっ!!」

( [E/▽)「いや、違うよ。全然違う」

なんだ、違うのか……

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:45:09.70 ID:UyYAmUFG0

ノパ听)「……? じゃあ何でこんな所にいるんだ?」

( [E/▽)「……君に興味があってね。
       すこし話に付き合ってもらえないかい?」

ノパ听)「……別に構わな――」

……まてよ、これってもしかして『ナンパ』って奴じゃないか?
えーっと、確か姉さん達が言っていた事によると――


  『 いいかっ、この姉様がナンパされた時の対策を教えてやろうっ!
   とりあえず誘われるがままについてけっ! 色々美味しい物を食べさせてもらえるぞっ!
   そしてもし危なくなったら逃げろっ! 大丈夫ッ、ヒートの力なら何とでもなるさっ!』


  『 いやいや、姉さん。ヒートに対してそれはダメでしょ……
   ヒートは加減とかが出来そうにはないから、相手を病院送りにしちゃうかも……
   とにかくヒート、悪い誘いにはついて行っちゃダメだからね』


そうだ、こういう時は――

ノハ*゚ー゚)「……アタシはピザが食べたいぞっ! テイク・オフでなっ!」

( [E/▽)「ピ、ピザ……? しかも離陸?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:48:11.32 ID:UyYAmUFG0

ノハ*゚听)「そうだっ! 奢ってくれるんだよな?」

( [E/▽)「えっ、えーっ…………なんでそうなるか、理解に苦しむんだけど……」

なぜか呆れたような声を出す人物。むぅ、ナンパじゃないのか?

ノパ听)「じゃあ何の用だ? 言っておくが、奢ってくれないならついて行かないぞ!」

( [E/▽)「……いや、ここで話をするのはダメかな?」

ノパ听)「それなら構わん! 手短に頼む」

( [E/▽)「あっ、それならいいんだ……」

……しかし、見れば見るほど怪しい格好をしてるな。
何かのコスプレなのか?

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:51:18.71 ID:UyYAmUFG0

( [E/▽)「単刀直入に言おう。僕に協力してほしい」

ノパ听)「いいぞっ!!」

( [E/▽)「速っ!? ……いやいや、本当にいいのかい?」

ノパ听)「困ってる人を助けるのは当然の義務だからな!」

( [E/▽)「そ、そうか……いや、協力してもらえるならありがたいけど……」

ノパ听)「でっ、何をすればいいんだ!? 公園の掃除か?
     それとも大通りのゴミ拾い? 海岸の清掃活動?
     アタシは一度でいいからジャンボジェット機の洗浄をやってみたいぞっ!!」

( [E/▽)「な、なんで清掃限定なんだい……? しかもジャンボジェット機って……」

ノパ听)「知らないのか? こないだテレビでやってたぞ!
     消防車みたいな車でバァーッと水をぶっかけてさ、デッキブラシでゴシゴシこするんだ!」

( [E/▽)「いや、掃除の方法はいいから……」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:54:09.89 ID:UyYAmUFG0

ノパ听)「じゃあ何なんだ? あれか、お前は掃除が出来ないタイプの人か?」

( [E/▽)「いや、決してそういう訳ではないけど……
       とにかく、まずは黙って僕の話を聞いてもらえないかい?」

ノパ听)「了解した!」

( [E/▽)「ふうっ、助かるよ……
       僕は今、一つの野望を抱いている」

ノパ听)「おおっ、世界征服的なノリかっ!?」

( [E/▽)「うーん、ある意味近いかもね」

ノパ听)「なるほど…………それって悪い事か?」

( [E/▽)「……まあどちらかといえば、悪い事かもね」

ノパ听)「なーるほど、なるほど……」

( [E/▽)「……? どうしたんだい、急に……?」



ノパ听)「よーくわかった。お前をここで倒せばいいんだな?」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 11:57:38.01 ID:UyYAmUFG0

     *     *     *

( [E/▽)「えっ?」

仮面の人物が疑問の声を上げた次の時、彼の目前へと迫るものがあった。
左隣に座っていたヒートの右腕が、音も無く顔面に向け迫っている。
反射的に体を反らし、裏拳をかわす仮面。だがヒートの攻撃はまだ終わらない。

ノハ#゚听)「うらあっ!!」

上体を跳ね上げ、彼女が次に繰り出すのは左の拳。
次なる彼女の狙いは、仮面の人物の腹部。
ベンチで背中を固定されている関係上、逃げ道はない……はずだった。

ノハ;゚听)「なっ!?」

ヒートの拳は確かに仮面の人物が羽織っていたマント、その腹部に刺さる。
……だが彼女が攻撃した物は、そのマントのみ。中の人はいない。
彼女が疑問に思う間もなく、拳はそのまま木製のベンチへとぶつかった。

驚愕するヒート、その後ろへと立つ影がある。
マントを捨て、礼服のような服装を露わにした仮面の人物。

( [E/▽)「急に攻げk …………なん……だと…………?」

彼の言葉は、すぐに動揺へと変わる。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:00:00.49 ID:UyYAmUFG0

彼女の放った拳、それが比喩無しにベンチへと『突き刺さった』。
真っ二つに割れる背もたれ。辺りには轟音が響き、池のアヒルが驚いて泳ぎ去る。
決して薄くは無いそれを破壊した彼女は、特に痛そうな素振りをみせずに立ち上がった。

ノパ听)「さっきのは何か知らないが……覚悟は出来てるんだろうな!?
     アタシの前で、悪行は許さないっ! だからアタシが裁くっ!!」

( [E/▽)「……いいじゃないか、やってみなよ」

ノハ#゚听)「言われなくてもっ!!」

ヒートは叫び、仮面男へと突き進む。
独特のステップを刻んで近づき、まず繰り出すは右足によるハイキック。
男の顔を狙った攻撃の最中、ヒートの目に飛び込むものがある。


いつの間にか、仮面の男が握る物。
それは、黒い刀身を持った細身の剣。

そしてその刃先は、ヒートの攻撃の進路上にあった。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:03:38.57 ID:UyYAmUFG0

ノハ;゚听)「くそっ!!」

軸足を崩し、強引に接触を回避するヒート。
彼女は左半身から地面に倒れこんでいく。
そして仮面の男は、その隙を見逃すはずが無い。

( [E/▽)「ふっ、これで……!」

男はそのまま剣を振り落とし――

ノハ#゚听)「だりゃああああっっ!!」

その太刀筋は、ヒートによって止められる事となった。

( [E/▽)「なっ!?」

彼女の取った行動とは、左手を地面につけての足払い。
指先を地面に食い込ませながら体を捻り、逆に左足を跳ね上げて刃の腹を叩きぬく。
男の手から剣が弾き飛ばされ、アスファルトに転がる音が響いた。


そのまま一回転し、体を起こしたヒートは再び右足での蹴りを放つ。
今度は男の左足、膝を狙った一撃。

太い木の枝を折るような音が辺りに響き渡った。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:06:31.83 ID:UyYAmUFG0

( [E/▽)「ぐっ、ぐおおおっっ……!!」

男の左足が、曲がってはいけない方向へと曲がる。
そのままうつ伏せに倒れる男に対し、ヒートはマウントポジションを取った。
男の右腕を捻じり上げ、背中のほうへと回す。

ノパ听)「質問に答えろっ! お前は何者だっ!?
     目的は何だっ!? 十秒以内に言えっ!」

( [E/▽)「……それは、答えるわけにはいかな――ぐあっ!!」

捻り上げられた男の肩から紐を引きちぎるような音がし、右腕が地面へと力なく垂れ下がる。
男の右肩の関節を外したヒートは、次に男の左腕を取った。

ノパ听)「次は左肩だ。早くしないと両腕が使えなくなるぞ」

( [E/▽)「はぁっ、はぁっ……こ、こんな所で…………」

男の震える様な声により、ヒートの心の片隅に若干の躊躇が生まれる。
その感情を押し殺すため、決意を声に上げるヒート。

ノパ听)「……泣いたって承知してやらないからな!」

( [E/▽)「……泣く? 何を馬鹿な事を言ってるんだい?」

ノハ#゚听)「……なっ、バカだと!?」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:09:39.71 ID:UyYAmUFG0

瞬間、彼女の上に影を差すものが出現した。
思わず見上げ、そして唖然とする彼女。

ノハ;゚听)「なっ、これは……!?」

彼女の上を覆う、無数の黒剣。
その刃先は全て下を向き、鋭く光っている。

今にも落ちてきそうなそれらの下で、ヒートは苦悶の声を上げた。

ノハ#゚听)「くっ、バカなのはお前だっ! 自殺でもする気かっ!?」

( [E/▽)「本当に馬鹿だね、君は……僕自身が傷つく攻撃をするはずないだろ?
       ところでもうすぐ時間だ。そのままそこにいていいのかい?」

細かく振動を始めた剣の下で、ヒートは決断を迫られる。

おそらく男にとどめを刺しても剣の落下は止まらないだろうし、その間に剣の攻撃を喰らう。
それよりはいっそ――

ノハ;゚听)「くそっ、しょうがないなっ!!」

選んだ判断は、男の上から飛びのき、攻撃をかわす事だった。
彼女が離れた一刻後、落下を始めた刃が男の上へと突き刺さっていく。
……いや、正確には男の寸前で動きを止め、不自然に空中へと浮かんでいた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:12:07.90 ID:UyYAmUFG0

全ての剣が落ち、男の上には刃による塊が生まれる。
その塊が二つへと割れ、空いた空間へと男はゆっくりと体を起こした。
そして男は『折られたはずの』右腕を伸ばし、一つの剣を掴み取る。

ノハ;゚听)「なっ……」

( [E/▽)「ふふっ。さあ、第二ラウンドといこうじゃないか……?」

確かに先ほど彼女が叩き折り、妙な方向へと捩れていた脚。
その左脚で大地を蹴り、男は立ち上がる。
しっかりと地面を踏みしめたその脚を見て、ヒートは先ほどの光景は幻かもという疑念を抱いた。

ノハ;゚听)「…………」

( [E/▽)「どうしたんだい? 君が攻撃してこないなら、こちらからいくよ?」

ノハ;‐凵])「…………」

( [E/▽) (……? 本当にどうしたんだ、急に黙って……?)

ヒートの変化を訝しがりながらも、男は攻撃を始めるため、周りの剣へと指令を送る。
男の周りの剣が軽い金属音を立て、刃先を彼女へと向けた。


ノハ‐凵])「…………灼熱砂万那流、上位――」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:15:06.12 ID:UyYAmUFG0

( [E/▽)「なっ……?」

男が剣を飛ばして、攻撃しようとした矢先、


ノパ听)「猪突山間――」

彼女が腰を屈め、姿勢を低くする。そして――


ノハ#゚听)「――猛虎追伸撃!!」


一瞬の後、男の前にヒートが立っていた。
正に瞬間移動というべき、圧倒的なスピード。
そしてそのヒートは、再び高速で後ろに下がっていく……ように男からは見えた。

男が自分の状況を理解したのは、はるか後方まで飛ばされ、背中から地面に落ちた時。
背中からの痛みよりはるかに強い、腹部からの激痛を感じての事である。
もっとも、その後すぐに男の意識は闇の下へと沈んでいくのだが……



振り切った右腕を収めながら、自分が殴り飛ばした男を見やるヒート。
男へと近づき気絶している事を確かめると、彼の付けた仮面へと手を伸ばし――

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:19:13.48 ID:UyYAmUFG0

     :÷:     :÷:     :÷:

……目を開けると、そこには夜空が広がっていた。
外灯の光が横から差し込み、星の光が僅かしか見えない、都会独特の夜空。
夏特有の暖かい風が吹き、魔力を使った後の火照りを持った体に染み渡る。

左右に頭を動かす事で、自分が横たわっているものが公園のベンチだという事に気がつく。
先ほどの戦いの影響で背もたれが無くなった椅子の上で、自分の状況を再確認する。

……そうだ。たしか自分は、彼女の攻撃で倒されたはず。
彼女の行方は……そして自分のつけていたはずの仮面は……?


「よう、目を覚ましたか?」


体を半身ほど起こし、声のほうへと顔を向ける。
そこには、缶ジュースを二本ほど持った彼女が立っていた。

ノパ听)「ちょっと本気でやっちゃったからな。目を覚まさないかと心配したんだぞ?」

彼女はジュースを一本、こちらに投げてよこす。
自分の横にどっしりと座り込んだ彼女は、一気にプルタブを開けて中身を飲み干した。

ノパ听)「……どーした、飲まないのか? 言っとくが、アタシの奢りだぞ?」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:21:17.22 ID:UyYAmUFG0

いや、別に金の問題では無く……というか、このジュースはあまり好きでは……

ノハ#゚听)「いいから飲めよ! 男がごちゃごちゃ言うなっ!」

彼女の剣幕に負け、ジュースをあおる。
久しぶりに飲むその味は、そこまで悪い物ではなかった。

ノハ*゚听)「だろ? アタシは疲れたときはこれって決めてるんだ!」

しばらく二人で、ぼんやりと池を眺める。
アヒル達はそのまま住処にでも帰ったのか、池は静かにゆらゆらと周りの灯りを写すだけだ。


……しかしなぜ、今の彼女の態度はここまで豹変しているのだろうか?
思い切って彼女にその事を尋ねた。

ノパ听)「んー……まあ知らないとはいえ、知り合いをボコボコにしちゃったからな。
     普段はそんな悪そうな事をする奴には見えないし、何か事情があるんだろ?」


……そうだな。ここまで来たなら彼女には全てを話してしまおう。
その方が彼女からの協力を得られるかもしれないしな……

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:24:09.01 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

ノパ听)「……なるほど。さっぱりわからないが、大体理解したぞ!
     ってか別にそこまで悪い話じゃないじゃないか!」

本当に理解してるのか限りなく怪しいが……こちらの熱意は伝わっているようだ。

ノパ听)「で、その邪魔をしてくる魔法少女ってのが問題なんだよな!?」

彼女にはあえてプラナス・チェリーの正体は伏せてある。
正体を教えた途端に猛進して、万が一こちらの身分までがバレない様にだ。
それに準備をしていない相手を叩くような、卑劣な手は使いたくないからな……

ノパ听)「いいぞっ、アタシが相手をしてやる!」

それは願ったりもない話だが……本当に相手の強さを理解しているのか?

ノハ*゚ー゚)「一度でいいから全力で戦ってみたかったからなっ!
      強い相手と戦えるなら、不足は無いっ!!」

確かに彼女の力は只者では無い……というより、自分との戦いでは全力ではなかったのか?

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:27:26.46 ID:UyYAmUFG0

こうして彼女との交渉は上手くいったかに見えたが……彼女は条件を二つほど出してきた。

一つは、戦いの間は元より、勝負の準備なども含んで一切手を出さない事。
以前にネーヨにも渡した攻撃を退ける宝石や、魔力を緩和する手袋などを渡そうとしたのだが――

ノハ#゚听)「いーや、アタシは自分一人でやってみせる!
      自分の力だけで勝たないと意味が無いからな!!」

と、頑として言う事を聞かなかった。



そしてもう一つだが――

ノパ听)「さっきのお前との戦いでさ、アタシの腕時計が壊れたんだ。
     でさ、今度の日曜に買い物に付き合ってくれないか?」

時計ぐらいなら魔力で直せると、彼女に言ったのだが……

ノハ#゚听)「ダメだ! 絶対買い物に付き合ってもらうからなっ!
      今度の日曜、朝から予定開けておけよ!!」


……まったく、彼女の本心がよくわからないな。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:30:44.00 ID:UyYAmUFG0

     *     *     *

『   7月2日 (金)

  今日は色々な事があった。
  公園で変な仮面の奴と戦ったら、なんとそい
                                  』

ホツ*゚ー゚)「ヒート、少しいい?」

ノパ听)「ん? どーした、ホト姉?」

ホツ*゚ー゚)「あのねー、ハサミを貸りたいんだけど……
      あれ、その雑誌は?」

ノハ;゚听)「なっ、姉貴には関係ないだろ!?」

ホツ*゚ー゚)「……へー、ヒートもオシャレに気を使う年頃になったのね」

ノハ;゚听)「ほら、ハサミだ! いいから出てってくれ!
      あと母さんとかビー姉には話すんじゃないぞ!」

ホツ*゚ー゚)「はいはい、わかったわかった。ハサミありがとーね」

ノハ;‐凵])「全く、家の姉さん達は……」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:34:10.40 ID:UyYAmUFG0

     :÷:     :÷:     :÷:

時間は過ぎて今日は日曜日、ヒートとの約束の日だ。
集合場所は新美府駅の駅ビル五階、コーヒーショップ『ユート・R』。
適当にコーヒーを飲みながら、彼女を待っているのが現状である。

プラナス・チェリーがいつ動くかもわからないのに、こんな事をしている余裕は無いのだが……
……まあ彼女のへそを曲げさせる訳にもいかないしな。

それにしても遅い。約束の時間は既に10分前に過ぎている。
彼女からの誘いだ、反故にすることは無いと思うが……


ノパー゚)「すまないっ、待たせたな!」

どうやらようやく来…………

ノパ听)「……どうした、急にそんな呆けた顔をして?」

彼女の身に着けているのは白いワンピース。
涼しげなその格好に、不思議と赤い長髪がマッチしている。
もっと活動的な服を着てくると思い込んでいた自分には、かなりの不意打ちであった。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:36:30.91 ID:UyYAmUFG0

しかしいつもは制服姿しか見たことが無いとはいえ……
彼女の私服がこんなに可愛いとは思わなかったな。
端的にその事を伝えてみると――

ノハ*゚ー゚)「そ、そうかっ、ありがとなっ!」

嬉しそうな彼女の笑顔を見ると、やはり言って正解だったな。


とりあえず二人でコーヒーを飲みながら、今日の予定について語り合う。
てっきり時計の店を訪ねてそこで終わりだと思っていたのだが……

ノパ听)「まず午前中はアタシいきつけの店を巡って夏物チェックからだな。特に店長さんが
     オリジナル商品を作っている『ロサ・カンディーネ』が今日バーゲンをしているはず
     だから、まずはそこから攻める。あとお前も夏物ほしいだろ? アタシオススメの
     店がいくつかあるから、そこで買えばいいと思うぞ。そしてお昼はイタリア料理店、
     『パール・ジャム』でランチ。あそこのキノコのピザは凄く美味しいんだよなー……
     午後からはとりあえず姉貴に頼まれた楽器屋にいって絃の調達、ついでに小物を
     仕入れている店がその近くにあるから立ち寄るかな。その後は駅前のデパートに
     戻って本屋で買い物。そういえば新しく出来たアイスクリーム屋に行ってないから、
     そこで休憩を取らないか? あとは母さんから頼まれた香辛料を買えばOKだな!」


……とりあえず、時計屋はいつ行くんだ?

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:39:10.95 ID:UyYAmUFG0

ノハ;゚听)「あー……楽器屋の後だな。すっかり忘れてた……」

まったく、何のために呼び出されたのやら……

ノパ听)「そうだ! お前は行きたい所は無いのか?
     アタシでよければ付き合うぞ!」

……いや、行きたい場所は別に無いな。
むしろ魔法少女との戦いに備え、休めるうちは休んでおこうと……

ノパ听)「根性無いな、お前! だからそんなしょぼくれた口をしてるんだよ!」

いや、口は関係ないと思うが……

ノパ听)「まあいい、そろそろいくぞ!」

伝票を持ってレジへと向かうヒート。
一応払おうとはしたのだが……

ノパ听)「気にするな、この間の侘びだ!
     その分今日はしっかり付き合ってくれよ!」

なぜだろう、嫌な予感しかしないが……?

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:42:22.79 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

……疲れた、とてつもなく疲れた。
午前中から昼過ぎにかけて、彼女の買い物に付き合って様々な服屋を巡ったのだが……

ノハ*゚听)「いやー、夏服が一杯手に入った。これで今年の夏は安泰だな!
      お前も中々似合うものが手に入って良かっただろ!?」

12時過ぎ辺りまでは彼女に付き合っての強行店巡り。
そしてその後は――

  ノパ听)『さーて、次はお前の服だな! このアタシが見繕ってあげるぞ!』

と、その後二時間近く着せ替え人形と化していた。
あまり派手な服は好みでは無いのだが……まあ折角だしな、たまには着るか。

ちなみに今の時間は三時前、場所はイタリア料理店『パール・ジャム』だ。
港の近くにある割と広めの店内には、昼を過ぎても多くのお客さんの姿が見える。

ノパ听)「しっかし料理遅いなー。いつもだったらもう来てもいいはずなんだが……」

まあ今は混んでいるようだし……っと、噂をすれば影かな?


从 ^∀从「大変お待たせして申し訳ありませんでしたー。
      こちら季節のパスタとピザのセットとなりまーす」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:45:12.92 ID:UyYAmUFG0

ノパ听)「…………」

从 ^∀从「…………」

トレイに出来たての料理を乗せ、テーブルの前で固まる少女。



ノパ听)「…………あのー……」

从;^∀从「……………………」

片目を銀髪で隠し、営業スマイルを浮かべている顔が、だんだんと震えだす。



ノパ听)「……もしかして――」

从;゚д从「なっ、なんでお前らがここにいるんだーーーっ!!」


……いや、それはこちらの台詞だと思う。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:48:38.54 ID:UyYAmUFG0

「ハインちゃーん、店で騒がないでねー」

从;゚∀从「あっ、いえ、すいませんでしたチーフ!」

……なんか大変そうだな。それより一年生の間は、原則バイト禁止だったはずでは……

从;‐∀从「すまん! 頼むからビロの野郎には黙っていてくれ!」

放っておくと土下座しそうな勢いで頭を下げてくるハイン。
話を聞いてみると……

从;゚∀从「いやー、最近研究資金が尽きそうになってさー……」

どうやら趣味の機械弄りのために、色々回って資金調達をしているとか。
ここの店長とは知り合いで、人員不足を避けるために休みの日には入っているらしい。

从 ゚∀从「しかしお前らもよくこんな店に来るな。ここ結構割高だろ?」

ノパ听)「その分美味いから問題ない!」

从 ゚∀从「まー確かに味はいいが……それよりさ、お前らってそんな仲だったか?
      学校で一緒に居る所を見たことねーぜ」

まあ単純に買い物に付き合っているだけだからな。
それよりこの事は内密にして欲しいんだが……

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:52:57.49 ID:UyYAmUFG0

从 ゚∀从「だが断る……といいたいが、こっちも弱みを握られてるしな。
      この俺の携帯電話にかけて誓っておこう」

……なぜ携帯?

「ハインちゃん。お話もいいけど、そろそろ……」

从;゚∀从「あっ、すいませんでしたっ! じゃあな、ゆっくり食えよー!」

空になったトレイを小脇に抱え、小走りで店の奥へと消えるハイン。
約束を守って貰わなければ、少し厄介な事になるかもしれないな……

ノパ听)「おーい、食べないのかー? 全部食っちゃうぞー」

ふと気が付くと、テーブルの上の料理はきっかり半分になっていた。
運ばれてきてから数分も経ってないはずなのだが……いつの間に…………?



ちなみにピザとパスタの味は、とてつもなく美味だった。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:54:11.32 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

そして買い物日和は続いていく。


ノパ听)「うおっ、お前凄いな! ……ところでこの楽器何だ?」

楽器店でよく分からない楽器を試演してみたり――
(……ヒートが演奏した所、異音しか出なくなったので慌てて逃げ出した)


ノパ听)「えー、絶対この赤い奴がいいだろっ!? 秒針が三倍速く動くんだぜ!」

目当ての時計店でヒートと腕時計を選んだり――
(……なぜかこちらが時計代を払う事になった)


ノパ听)「何かお前がじっと見つめていたからな、時計を買ってもらったお返しって事で!」

小物系の店で猫の置物をプレゼントされたり――
(……実は同じ物を持っている事は言えなかった)

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 12:57:19.06 ID:UyYAmUFG0

そんな平穏な午後(……なのか?)、駅前のデパートの玄関前に付いた時の事だ。


lw´‐ _‐ノv「珍しい組み合わせ、明日の天気はサンタナだな」

(;*゚∀゚)「ここはアメリカじゃない。まあ確かに珍しくはあるな……」


……今日の知り合いへのエンカウント率はかなり高いようだな。

ノパ听)「よぉ、シュー達もデパートに用事かっ!?」

lw´‐ _‐ノv「ふっ、本当にそうなのかな……?」

(;*゚∀゚)「いや、普通に買い物だ。あとこいつの言う事は気にしないでくれ」

lw´‐ _‐ノv「まあ酷い、アタクシそんな子に育てた覚えありませんわ……」

(*゚∀゚)「奇遇だな、オレもお前に育てられた覚えはない」

仲がいいのか悪いのか……相変わらず不思議な関係だ。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 13:00:14.40 ID:UyYAmUFG0

(*゚∀゚)「新しく出来たアイスの店のクーポン、有効期限が今日まででさ。
     折角だから買い物がてらに食べていこうって話になったんだ」

ノパ听)「おっ、アタシも目的は同じだ。『ひんやりカフェ・ぬくぬく堂』だろ?」

(*゚∀゚)「そうそう、それそれ。都内で流行ってるらしくてさー。
     この地方での支店は初めてらしいぜ」

……いや、そのネーミングはおかしいと思う。

lw´‐ _‐ノv「もし二人だと怖い様なら一緒に来るか? 私達は構わないぞ」

(;*゚∀゚)「いや、そりゃオレ達は問題ないけどさ……」

ノパ听)「うーん……お前はどう思うんだ?」

どう思うと言われても……普通に皆で食べれば――

ノハ;゚听)「えー……ま、まあいいか……」

何をそんなに躊躇う事があるんだ……?

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 13:03:28.53 ID:UyYAmUFG0

……という訳で、4人でデパートの二階にある店に入った訳だが――

(*゚∀゚)「しかし色々メニューがあるな……シューはもう決めたのか?」

lw´‐ _‐ノv「ん、このとんかつパフェにしようと思う」

メニューはやたらと種類があり、基本的な味の他にも色々と変り種があった。
先ほどシューが選んだのもその一つで、何気にこの店の三番人気らしい。

(*゚∀゚)「あとから一口くれ。じゃあオレは……この和風三山って奴にするかな」

ノパ听)「よし、じゃあアタシは『モンブラン・パラダイス』で。お前もそれにしないか?」

まだメニューを半分ほどしか見ていないので、どんな物かはわからないが……
何にするか決めかねていたし、まあそれにしてみるか。

(;*゚∀゚)「モンブランって……お前ら勇気あるな。じゃあ店員を呼ぶぞ」

……なんだ、その不吉な言葉は……?
注文を取った店員さんの苦い顔と、『本当によろしいのですね?』の一言も気になる……

(;*‐∀‐)「ってか、知らずに注文しちゃったのかよ……
      こりゃご愁傷様だな……」

モ、モンブランって何だ……?

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[ご飯食べてくる] 投稿日:2009/12/31(木) 13:06:34.14 ID:UyYAmUFG0

そんな心配をよそに、次々と運ばれてくるアイス。

lw´‐ _‐ノv「おお、これは中々壮観だな」

シューが注文した、とんかつパフェ。
抹茶とバニラのアイスをベースに、リンゴやキウイなどの様々な果物が乗っかっている。
そしてその横に刺さっている、一口サイズのとんかつ……

何でもとんかつの上にアイスと果物を乗せ、一緒に食べるのが流儀だとか……


(*゚∀゚)「うっひょー、これは美味そうだな!」

つーが頼んだのは和風三山。
抹茶と小豆、そして牛乳仕立てのアイスがやや平ための皿に盛られている。
周りに添えられた果物や白玉がアクセントとなり、中々美味しそうだ。



そして二人が食べ始めて少し後――

「あのー、こちらが注文の『モンブラン・パラダイス』になります……」


……そこには二つほど、そびえ立つ山脈があった。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[お待たせしました] 投稿日:2009/12/31(木) 13:46:29.40 ID:UyYAmUFG0

もはや丼やボウルとか、そんな物を凌駕している大きさの皿。
そこに山盛りと言う言葉でも不足なほどの量のアイスが盛られている。
つーの食べているアイスを山に例えるなら、このアイスは大陸ぐらいはあった。

ただでさえ量のあるアイスの周りには、グルグルと生クリームとチョコソースが等高線を描いている。
山頂には雪をイメージしているのか、見た目にも甘そうな白い練乳がタップリ。
麓は果物や白玉、ウエハースなどが樹海を形成し、登頂を退けていた。


……間違いない、この山には悪魔が住んでいる。


「ちなみに少しでも残された場合、二万円ほど頂きますのでご注意ください。
 それでは、ごゆっくりどうぞ」

……余裕で財布の全財産をオーバーしている。
最早撤退は許されないのか……


ノハ*゚ー゚)「よーし、突・撃!」

備え付けのでかいスプーンを手に取り、早速中腹から取り崩しにかかる彼女。
昼食もかなり取ったはずなのに、一体どこに入っているのか……?


……とにかく、ここで負けるわけにはいかない。
とりあえず山頂辺りから攻め立ててみるか……

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[保守ありがとう] 投稿日:2009/12/31(木) 13:48:25.55 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

おかしい、三十分は食べ続けているのに全然量が減らない。

なんとか半分ほどにまでは山を崩したのだが、そこから先が全く進まなくなった。
アイスが皿から湧き出していると言われても、何となく納得してしまうな……

ノハ*゚听)「いやー、美味かったー」

(;*゚∀゚)「あれを食べきるって……お前凄いな……」

横にいるヒートはあっさりと完食している。
たしか他の二人のをつまみ食いまでしてたよな、彼女は……

ノパ听)「しかしとんかつとアイスが合うなんてビックリだったぞ!」

(*゚∀゚)「そーそー。ソースがかかってるから絶対マズいと思ってたのにな」

lw´‐ _‐ノv「まあ美味しいという噂は聞いていたからな。
       この店にライスが無かったのが心残りだが……」

ノハ;゚听)「いや、普通アイスとご飯は一緒に食べないだろ!」

(;*‐∀‐)「甘いぜ、ヒート。こいつが料理当番の時は、どんな料理でも米がついてくる。
      この間はカルボナーラにまでついてきたからな……」

lw´‐ _‐ノv「米があればご飯何杯だっていけます」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 13:51:19.13 ID:UyYAmUFG0

……しかしこのペースだと、まだまだ時間がかかりそうだな。
このまま三人を待たせるのは、流石に悪い気が……

ノパ听)「別にアタシは構わんぞっ!」

(*゚∀゚)「まあゆっくり食えよ」

lw´‐ _‐ノv「……つー、一つ頼みがあるのだが」

(*゚∀゚)「ん、なんだ?」

lw´‐ _‐ノv「この買い物メモを渡すから、先に買い物してくれないか?
       ……あとヒートも出来れば一緒に行って欲しいのだが」

ノパ听)「えー……なんでアタシなんだよ。シューが行けばいいだろ!?」

lw´‐ _‐ノv「今朝の占いの結果、私が本屋に行けば重傷を負うと出ててな……
       つーを一人でいかせる訳にもいかないし、頼むよ」

ノハ;゚−゚)「んー……そうだ、お前はどう思うんだ?」

アイスを食べている関係上、自分は動けないし……
普通についていけばいいんじゃないか?

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 13:54:11.12 ID:UyYAmUFG0

ノハ#゚听)「そうか、わかった! お前はやっぱりそんな考えなんだなっ!
      つー、早く行くぞ!!」

(;*゚∀゚)「えっ、ちょっ、待ってくれよ!」

つーを引き連れ、急いで出て行くヒート。
何であんなに怒っていたのか、さっぱりわからないが……



lw´‐ _‐ノv「鈍い、鈍すぎる。文房具で言うならポケモンのバトル鉛筆並だ」

それは鈍いのか……? そもそも文房具なのか……?

まあそれはおいといて、わざわざ二人きりにしてきたんだ。
何の話を持ちかけてくるのか……

lw´‐ _‐ノv「しかし君に彼女を落とせるとは思わなかったぞ。
       一体どんな手品……じゃなくて魔法を使ったんだ?」

魔法も何も……強いという噂を聞いて、協力してもらおうと思い……
まあ結局はボコボコにされ……成り行きでこうなっているだけだ。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 13:57:06.32 ID:UyYAmUFG0

lw´‐ _‐ノv「ふーん、まあそうなるだろう。
       今の君だと、ヒートに勝てる確率は二千円札よりも小さいからな」

……そんな微妙な物を例えに出されても困る。

lw´‐ _‐ノv「まあ彼女なら、桜餅に勝ってもおかしくないかも……」

へぇ、君もそう見てるか。勝率はどちらが高い?

lw´‐ _‐ノv「……もし二人が全力で殺し合い、君はそのどちらかと命運を共にするとする。
       その場合君はどちら側に付く? 勿論手助けは無しだぞ」

まあ当然、ヒートの応援をさせてもらう。
君はどちらにするんだい?

lw´‐ _‐ノv「私なら当然、どちらも選べない。
       ……その条件なら二人を相手に戦った方がマシだな」

……自意識過剰だな、この女は。
この間の戦闘から見るなら、今の自分でも勝てそうな気が――

lw´‐ _‐ノv「……まあこの間は、な。本気を出したら第二第三の私が……」

現れるのか? とてもそうは思えないが……

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:00:02.18 ID:UyYAmUFG0

lw´‐ _‐ノv「しかし君はアレだな。何で普段の桜餅には手を出さないんだ?
       やはり彼女の事が……」

……そんなものじゃない。ただ、勝負くらいは正々堂々とやりたくてね。
それに彼女には、水晶を全て集めるまでは活躍してもらわないと……

lw´‐ _‐ノv「甘い、黒砂糖の蜂蜜漬けより甘いな、その考えは。
       そんな事ではいつか取り返しのつかない事になるぞ」

……それでも自分はやり遂げると決めているからな。

lw´‐ _‐ノv「……そうか、ではその君の覚悟を見せてもらおう。
       まずは手始めに、目の前の物の完食からだな」

……いい感じに忘れていたのに、思い出させないでくれ。
溶けたアイスがそろそろ皿から溢れそうなんだよな……

lw´‐ _‐ノv「ちなみにメニュー曰く、テーブルに溢し過ぎても課金の対象だとか。
       二万円が惜しければ急いで食べきる事だな」

先ほどから店員が遠めで見ているのはその為かっ!?
くっ、覚悟を決めるしかないのか……

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:03:28.97 ID:UyYAmUFG0

     U     U     U

(*゚∀゚)「あとは……このオリーブオイルだけだな」

ノパ听)「油ならあっちの方で見たぞ!」

(*゚∀゚)「OK、サンキュー。これでメモにあった食料品は終了だな。
     しかし悪いな。カートまで押してもらって……」

ノパ听)「気にするなっ! お前の体型だと辛いだろっ!」

(*゚∀゚)「まあそりゃそうだが…………」

オレ達は地下一階、広大な広さを持つ食料品売り場をうろついていた。
最初は機嫌が良くなかったヒートも、様々な食材を見ている内に調子を取り戻してきたようだな。


ノパ听)「会計は任せろー!!」 バリバリ

(;*゚∀゚)「いや、オレが出すから!」 ヤメテ !


しかし、砂緒姓は相手をしていると疲れる……
クーもあれな所があるし……まあシューの変人っぷりには負けるがな。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:06:16.64 ID:UyYAmUFG0

買い物リストのほとんどを終え、最後の物を買うために本屋へと向かうオレ達。

(;*゚∀゚)「しかし重傷になるって占い、何だったんだろうな……?」

ノハ;゚听)「本で一命を取りとめはしても、重傷にはならないだろ……」

(*゚∀゚)「一命って……胸ポケットの文庫本で銃弾を止めたとかか?」

ノパ听)「いや、アタシが山篭りしていた頃の実話だ。聞きたいか?」

(*゚∀゚)「うんうん、是非聞かせてくれ」

ノパ听)「あれは二年前の冬、雪が降り積もる山の中での事だった。
     山から山への移動中に足を滑らせて、崖の下に食料が入ったバッグを落としたんだ。
     幸い怪我は無かった物の、麓までは丸一日はかかる場所。当然他の食べ物は持ってない」

(;*゚∀゚)「それは大変そうだな……」

ノパ听)「しかし、アタシは昔から『食べられる野草ガイドブック』を持ち歩いていた!
     とりあえずそれで飢えを凌ぎ、翌朝に見事麓まで降り立ったという訳だ!」

(*゚∀゚)「おおっ、さすが! …………ってあれ? 冬の雪山にも野草あったのか?」


ノハ )「……カラーページは硬かったぞ」

……うん、聞かなかった事にしておこう。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:09:08.57 ID:UyYAmUFG0

     ○     ○     ○

そんなこんなで話をしているうちに、五階の本屋に到着。

ノパ听)「で、探している本は何だ!?」

(*゚∀゚)「えーっと、『有効な100のサル退治法』『小学生でも分かるクトゥルフ入モん』
     『蓮根にも穴ってあるよな』…………って、何だよこのラインアップは!?」

ノパ听)「蓮根の奴は姉さんが持ってたぞ。たしかこの間しぃも読んでいたな」

(;*゚∀゚)「嘘ぉっ、メジャーなの!?」


「おやおや、まさか『穴ある』シリーズを知らない人がいるとは……」

「いや、一般人は普通に知らないと思うぞ。ってかその呼び方危険だな……」


ノパ听)「ん?」

(*゚∀゚)「なんだ、この声は……?」


「フッ……なんだかんだと聞かれたら――」

「……悪いが一人でやってくれ」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:12:19.52 ID:UyYAmUFG0


(; ´_ゝ`)「なっ、そこは『答えてあげるがYOのNASAKE☆』だろっ!?」

(´<_` ;)「兄者こそ、何故いつも微妙なアレンジを加えるんだ?」


振り向いた先にいたのは、兄者ともう一人の人物。
……双子の弟がいるとは噂に聞いていたんだが、確かに瓜二つだな。

ノハ;゚听)「なっ、何で兄者が二人いるんだっ!?」

(*゚∀゚)「……あれ、ヒートはこいつらが双子だって事知らないのか?」

割と有名な話だと思っていたが……

( ´_ゝ`)b 「いや、双子というのは世を忍ぶ仮の姿。実は分身の術だ」

ノハ*゚听)「おおおっ、凄いぞっ! ぜひやり方を教えてくれ!」

( ´_ゝ`)「OK。まずは30メートルの布を腰に巻きつける。
      端が地面につかないほどの速度で走れれば、第一段階はクリアだ」

(;*‐∀‐)「いやいや、普通に話を進めr――」

ノパ听)「それなら昔何度もやった事あるぞ! 次のステップを教えてくれ!」

(;*゚∀゚)「ええっ!? やった事あるのかよ!? しかも成功したような口ぶりだし!?」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:15:08.41 ID:UyYAmUFG0

(´<_` )「……ときに兄者、この人達は知り合いなんだよな?」

( ´_ゝ`)「はっはっはっ、俺が可愛い娘には見境無く声をかける奴だとでも思っているのか?」

(´<_` )「ああ、思っている」


( ´_ゝ`)


(´<_` )「兄者ならやりかねないな」

( ´_ゝ`)「…………二人とも俺の大事なマイ ・ スウィーツ ・ クラスメイツだ」


(*゚∀゚)「……キモい」

ノパ听)「その言い方は気持ち悪いぞ!」


( つ_ゝ`)「…………泣いていいかな?」

(´<_` )「駄目だ。しかし二人ともって、この子は……ああ、例の天才少女か!」

……オレってそんな通称で通っていたのか。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:18:22.20 ID:UyYAmUFG0

(;*゚∀゚)「いや、そんな天才ってほど大した者じゃないぜ」

(´<_` ;)「いやいや、その歳で高校生って時点で充分だ。
      兄者の毒牙には引っ掛らないよう気をつけてくれよ」

(#´_ゝ`)「何を言う、弟者! 俺は決してロリには手を出さないぞ!
       遠くからやんわりと見守り、その挙動を見ながら心の中でモハモハする!
       それが俺のジャスティス! 同意なき接触はダメ、絶対!!」

(´<_` ;)「…………すまないな、こいつの存在は脳内で抹消していてくれ」

(;*‐∀‐)「あー、大丈夫だ。身近なので慣れているからな」

幸いこういうのには耐性が出来ている。シューには感謝して……いや、しなくていいな。

(´<_` )「しかし年齢の割にはしっかりしているな。兄者に爪の垢でも煎じて――」

(* ´_ゝ`)「えっ、何? 飲めっていうのか!? いや寧ろ飲ませてくr―― グフォアッ!!」

おっ、ヒートのいい拳が腹に入ったか。
しかし床に倒れながらビクビクと痙攣する様も、見ていて気持ち悪いな……

ノパ听)「すまない、我慢が出来なかったからな! もう一発いっとくか?」

(´<_` )「……いや、死なれると処理が面倒だしな」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:21:04.49 ID:UyYAmUFG0

(  _ゝ )「あ……大きな星が……ついたり消えたりしている……」

(´<_` ) PIPIPI 「……ん、電話だ。すまない」

(*゚∀゚)「あー、気にしないぜ」

(  _ゝ )「あははっ、大きい…………彗星かな……?」

(´<_` )「ん、妹者か。うん、うん……何ッ、母者が……待たせて……カンカンに……」

(  _ゝ )「いや、違う、違うな…………」

(´<_` ;)「そうか……わかった、すぐそちらに行く。
      それまで母者を宥めていてくれ、じゃあな!」 ピッ

(  _ゝ )「……彗星は、もっとこう――」

(´<_`#)「いい加減に起きろ!」

(  ゚_ゝ゚)「バアアァァッッツ……! はっ、夢か……」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:24:19.29 ID:UyYAmUFG0

(´<_` )「目が覚めたか?」

(; ´_ゝ`)「ああ……ときに弟者、腹部とわき腹が酷く痛むのだが……」

(´<_` )「俺は知らん。それより母者が一階でお待ちかねだぞ」

(; ´_ゝ`)「なんと……急がないと命が無いではないか」

(´<_` )「という訳で、悪いがここでお別れだ。えーっと……」

……そういえば色々とドタバタしていて、まだ自己紹介をしてなかったな。

(*゚∀゚)「鶴亀つー、よろしくな」

ノパ听)「あっ、そうか……アタシの名前は砂緒ヒートだ!」

(´<_` )「俺の名前は弟者だ。まああんな奴だが兄者とは仲良くしてやってくれ」

ノハ;゚听)「えー……わ、わかったぞ……」

( ´_ゝ`)「おいおい、何か歯切れが良くないZE☆」

(´<_` )「すまん、前言を撤回する。
      ではもし学校で会ったら、その時はよろしくな。それじゃ」

(; ´_ゝ`)「えっ、なにそれ……そもそも俺買い物まだ終わってないけど……」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/31(木) 14:28:03.84 ID:UyYAmUFG0

< 兄者、早くしないと晩飯が無くなるぞ。

< ちょっ、まだ『穴ある』のマンガ版を……ああっ、待ってくれ!


(*゚∀゚)「さーて、今度はこっちの買い物だな……っと、メールか」

仮面をつけた変態にぶった切られて以来、新しくした今の携帯。
このバイブの間隔からして……シューからだな

(*゚∀゚)「えーっと、なになに……?」


『  件名:アイス食べ終わったのでそちらにむかう。いま本屋?
  本文:                                    』


……シューは機械オンチなんだよな、そういや。
しかしあいつはあれを食べきったのか……もっと時間がかかると思ってたが。
とりあえず本屋にいる事を返信しておくかな。


ノパ听)「……そういえばレジの横に検索用のPCがあったぞ。
     それを使えば一発なんじゃないか!?」

(*゚∀゚)「まー店員に聞くのもどうかだしな……じゃあ早速試すか」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:09:12.37 ID:vIjecPeC0

     :÷:     :÷:     :÷:

つーからの返信により、ひとまず店を出て五階まで移動することになる。
ちなみに例のモンブラン、例え完食してもタダではなく、千円は取られる様だ。
まあ時間制限は無いし、原価と考えると妥当なのか……?

lw´‐ _‐ノv「……しかし、君の覚悟がその程度だったとはな。
       もうお姉さんはがっかりだよ、ガッカリ。英語に直すと『Gakkari』だな」

お姉さんって……同い年だろ。あとそれは英語じゃない。
しかしまだそのネタを引き摺るのか……いい加減勘弁して欲しいものだが。

lw´‐ _‐ノv「いいや、この事は末代まで語り継ぐ予定だ」

それは壮大な嫌がらせだな……

lw´‐ _‐ノv「まさかアイスを消すためだけに魔術を使うとは……
       これ以上の無駄遣いが過去にあっただろうか?」

知らんがな。そもそも古代にアイスがあったのか……

lw´‐ _‐ノv「少なくともかき氷に類するものは食べていただろうな。
       君も積もった雪とルートビアでやった事あるだろ?」

いや、無い。そもそも古代にルートビアは無いだろ、絶対……

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:12:08.36 ID:vIjecPeC0

そんな話をしている間に、本屋がある五階まで到着する。

(*゚∀゚)「お疲れー、お前ら」

ノパ听)「おっ、アレを食べきったのか! お前やるな!」

lw´‐ _‐ノv「さーて、どうなのかなー……?」

ちょっと待て、妙な口は出すなよ。
まあつーもいる事だし、真実は言わないとは思うが…………いや、どうなんだ?

lw´‐ _‐ノv「まあそれはともかく、頼んだ物は買えたかな?」

(*゚∀゚)「食べ物は買ったけど、本の方は一冊売り切れていたぜ。
      しかし頼まれた本が全部ライトノベルだったんだが……本当にそれで合ってたのか?」

lw´‐ _‐ノv「ライノベ……響きがいいじゃないか……
       ちなみに買えなかったのは何だ?」

(*゚∀゚)「略すならラノベだろ。売り切れは蓮根の奴だな」

lw´‐ _‐ノv「なっ、馬鹿な……あれだけの人気商品を切らせるとは……
       げに恐ろしきは穴の人気か……」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:15:13.77 ID:vIjecPeC0

(*゚∀゚)「……やっぱりシューと兄者ってどこかが似てるな」

lw´‐ _‐ノv「そりゃあ同じホモ・サピエンスという種族だから、仕方ないさ」

(;*‐∀‐)「そんな生物学的な話じゃなくてだなー……」

……しかし何故急に兄者の名前が?

ノパ听)「さっきバッタリ会ったんだ! 相変わらずだったぞ!」

そ、そうか……

lw´‐ _‐ノv「……さて、じゃあ私達はそろそろおいとまにしますよっと。
       流石にそろそろ馬に蹴り殺されそうだからな……」

(;*゚∀゚)「馬って……まあ、じゃあな! また明日なー」

そう言い残して足早に立ち去って行く二人。

ノハ;゚听)「あれ、もう行っちゃったのか……」

あの足の速さ……何かを企んでいなければいいんだが……

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:18:13.45 ID:vIjecPeC0

ノパ听)「さて、じゃあ本屋でも見て回るか!?」

……いや、ヒートはもう用事を済ませているんだろ?

ノパ听)「いやっ、まだだ! お前を待ってたからな!」

何故ついでに用事を済ませないか、理解に苦しむな……

ノパ听)「いいから行くぞっ!」

それから少しの間、二人でゆったりと本を見て回る。
偶然面白そうな本を見つけ、購入する事にしたが……

ノハ;゚听)「……そのセンスはどうかと思うぞ」

……ヒートと自分の感性はかなり違うようだな。


こうして今日の買い物が全て終わり、ようやく開放と思いきや――

ノパ听)「…………あのさ、悪いがもう一箇所だけ付き合ってくれないか?
     結構遠い所なんだけど……もしお前が良かったらさ」

……まあここまで来たんだ、折角だし付き合ってみるか。

ノハ*゚听)b「ありがとなっ!! 大丈夫、絶対後悔はさせないぞ!!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:21:40.29 ID:vIjecPeC0

     ○     ○     ○

デパートから出て歩く事30分、かなり日も傾いてきた。
……そして自分は今、なぜか森の中にいる。

ノパ听)「悪いけどもう少しの辛抱だ! 頑張れ!!」

街中にポツンとある小さな山……というよりは丘というべき場所。
その林にに入って木の間を掻き分けつつ、山頂を目指して進んでいる。
道なき道を進む彼女の後を追い、五分ほど経った頃だろうか……

ノパ听)「よーし、到着だ!」

急に目の前の景色が開け、小さな広場の様な場所に出る。そして――

ノハ*゚ー゚)「なっ、ほら! 綺麗だろ!?」


目の前に広がるのは、オレンジ色の光へと沈む美府市の町並み。
小高くなっている丘からは街の景色が一望でき、遠くの海には夕日がキラキラと反射している。
これは……確かに苦労する甲斐はあった眺めだな。


ノハ*゚听)「昔適当に山中を歩いている時に見つけてさ……
      この景色を前からお前に見せたかったんだ!」

……確かに綺麗だけど、なぜ自分に?

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:24:45.09 ID:vIjecPeC0

ノハ;゚听)「えっ、そりゃあ…………えっ?」

いや、だから今日は、以前のお詫びを込めての買い物だったはず。
わざわざこんな所まで来て、景色を眺める必要が――

ノハ;゚−゚)「ほ、本気で言ってるのか……!?」

しばらく沈黙が続いた後、ヒートが思い詰めた様な顔をしながらこちらを向く。

ノハ;‐凵])「あ、あのさ……お前はわかってないかもしれないが……」

震える様な声でそう言った後、彼女は大きく息を吸い込んで――



ノハ*゚听)「アッ、アタシはっ!! 以前からっ、お前がっ、お前の事が好きなんだあああぁぁっっ!!」



…………はい? えっ、どういう事!?

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:27:06.84 ID:vIjecPeC0

ノハ#゚听)「だからっ、前からお前の事が気になってたんだよっ!!」

…………もしかして、告白?

ノハ#゚听)「よーやく気付いたのかっ、このバカッ!!
      全く、今日一日を何のつもりで過ごしたんだ!?」

いや、だから買い物だと思っていて――


……思い返せば、確かに今日のヒートの態度はおかしかった。

彼女の雰囲気には合わない着飾った格好。
自分の分まで買い物に付き合わせた事。
そしてシュー達と行動した時のあの陰のある顔。


……そうか、そういう事だったのか。
ははっ、これならシューが鈍いって言うのも頷けるな……


ノパ听)「でっ! お前はどうなんだよ!?」

……今日一日を振り返って、心に感じたことは一つ。
ヒートといた時間は、色々あったけど楽しかった事。
だから返答は――

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:30:43.24 ID:vIjecPeC0

     *     *     *

『   7月4日 (日)

  今日はあいつとのデート。
  夏服を買ったりパールジャムでご飯を食べたりとか。
  デパートでなぜかつーとシューとか、兄者に会ったりとか……
  そして例の丘に連れて行って告白したら、
                                         』


< うおおっっ!! いやっほおおおおぉぉぉっっ!!


ノリ ゚∀゚)「うぃーす、ただいまーっ! って何でヒートが叫んでいるんだっ!?」

ホツ*゚ー゚)「それがさー、どうやら今日はデートだったらしいのよ」

ノリ;゚∀゚)「なっ、なにぃっ!? 遂にヒートも恋をするお年頃になっちゃったのかっ!?
      でっ、相手はどんな奴よっ!?」

ホツ*゚ー゚)「それがさー、いくら話しても教えてくれないのよねー……」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:33:12.04 ID:vIjecPeC0

ノリ*゚∀゚)「まあホットは押しが弱いからなっ! ここは姉さんに任せなさいっ!!」

ホツ;゚ー゚)「あっ、ちょっ……あーあ、いっちゃったか……」


< うおおっ!? どうした、ビー姉ッ!?

< どうしたもこうしたもあるかいっ! でっ、相手は誰なのさっ!?

< いっ、言わないぞ!!

< フッ、甘いねっ! そこの日記にしっかり書かれてるんじゃないのかいっ!?

< なっ、勝手に見るなああぁぁっっ!!

< えーっと、名前はっ――

< 灼熱砂万那流、下位! 猫殺・肉球拳!

< ぐはああっっ!!


ホツ;゚ー゚)「まったく、私の姉妹達は……」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:36:16.16 ID:vIjecPeC0

     △     △     △

('A`)「よお、二人ともおはよう……」

( ^ω^)「おっおっ、どうしたおドクオ? 元気が無いお」

ξ;゚听)ξ「いや、あんたが元気すぎるのよ……」

七夕から一夜明け、今日は7月の8日、木曜日。
昨夜は色々あって……とにかく大変だった。

('A`)「そういや明日から試験だろ? 昨日遊んでても大丈夫なのか?」

ξ ゚听)ξ「以前から一応一通りは叩き込んであるからね。
       一日空白を空けた方がかえって頭がすっきりする物よ」

……そうなのか?

ξ ゚听)ξ「まあ流石に今夜は勉強させるけどね。
       ……ブーン、私がいなくてもちゃんとやりなさいよ!」

(; ^ω^)「おっおっ、わかってるお……」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:39:09.84 ID:vIjecPeC0

いつもの通学路を歩き、ちょっと早めの時間に教室まで到着。
ショボンはまだの様だが……いや、そんな事より……

川 ゚ -゚)「やあ、おはよう」

('A`;)「……何してるの?」

川 ゚ -゚)「見れば解るだろ? 朝食の準備だ」

……いや、それは見ればわかる。なんとなくわかるんだが……

('A`;)「俺が言いたいのは、なぜガスコンロで湯を沸かしているかって事だ」

どこから用意したのか、机の上でアルミの鍋を沸かしているガスコンロ。
鍋の中では、刻まれた長ネギがグツグツと茹だっている。
その横には二組ずつの丼とお箸にレンゲ、胡椒、そして袋麺が用意されていた。

川 ゚ -゚)「いや、今朝は早く学校に到着してしまってな……」

ξ;゚听)ξ「……ちなみに何時?」

川 ゚ -゚)「朝六時だ」

(; ^ω^)「早すぎだお……」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:42:05.49 ID:vIjecPeC0

川 ゚ -゚)「で、朝食を取ってない事に気がついて、どうした物かと考えていると――」

从 ゚∀从「よお、クー。準備できたか!?」

川 ゚ -゚)「ハイン、遅かったじゃないか」

从 ゚∀从「いやー、これを生物室から取ってくる時にトソンに見つかりかけてさ……」

そういって取り出したのは、二つの生卵。
たしか生物室の一角には鶏を飼っていたよな……

从;‐∀从「あいつ凶暴過ぎるだろ……一応顔は見られなかったはずだぜ」

川 ゚ -゚)「ハイン、GJだ。じゃあ作り始めるぞ」

袋からラーメンを取り出し、お湯の中に突っ込むクー。
教室一面にインスタント麺独特のいい香りが広がっていく。

('A`;)「で、このラーメンとか調理道具はどこから持ってきたんだ?」

从 ゚∀从「ああ、それは俺の私物だ。部屋に篭ってると遅くなる事があってさ……」

このハイン、放課後は技工室の一角を借りきり、何かを作る事に没頭しているらしい。
しかしよく先生方が許してくれるな……

从 ゚∀从「まあ校長とちょっと『話し合い』をしてな……」

……間違いない。こいつは脅している、絶対。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:54:44.15 ID:vIjecPeC0

そして三分後、そこには湯気をたてる丼が二つ。
朝飯をちゃんと食べてきた俺にとっても、この味噌の香りは魅力的だ。
教室じゅうから突き刺さるいくつかの視線が痛い……

川 ゚ -゚)「うーん……ごま油がほしいな」

从 ゚∀从「贅沢言うな。卵があるだけありがたいと思え」

( ^ω^)「あ、あのー……一口分けてくれないかお?」

川 ゚ -゚)「ん、構わない。ほれ」

(* ^ω^)「ありがとうだお!」

……流石にこいつみたいな真似はできないな。


从 ゚∀从「あっ、そういやさー、『パールジャム』って店知ってる奴いるか?」

何そこ、石鹸で殴られるの?

( ^ω^)「おっおっ、港のほうにあるイタリア料理店の事かお?」

从 ゚∀从「そーそー、そこそこ。それでさ、先週末の昼にそこを訪れた奴はいないよな?」

当然俺は行ってないし、皆も首を左右に振るだけだ。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 01:57:25.62 ID:vIjecPeC0

ξ ゚听)ξ「……そこで何かあったの?」

从 ゚∀从「いや、この事はビロちゃんには黙っていて欲しいんだけどさ。
      実は俺、週末にその店を手伝ってるんだよ」

……いかん、働く姿が全然想像できない。

从 ゚∀从「でさ、日曜の昼過ぎにクラスの誰かが客として来た気がするんだが……
      どうしても誰だったかが思い出せないんだよなー」

( ^ω^)「……おっ、チラッと見ただけかお?」

从;゚∀从「いや、そのテーブルに料理を持っていってさ、少しの間話までしたんだぜ?
      このクラスの誰かって事は覚えてる。なのに誰だったかが全然解らないんだ……」

……それは忘れっぽいとかってレベルじゃないな。

从 ゚∀从「しかも一人じゃない、カップルだったはずだ。
      話の内容も大体覚えてるのに、なぜか誰かが解らない。
      ……これってミステリーになるのか?」

確かに不思議な話だ。貞子先生に話すと喜ばれるかもな。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:01:08.27 ID:vIjecPeC0

(´・ω・`)「おはよう……って何? なんでラーメン食べてるの?」

川 ゚ -゚)「ああ、ショボンも来たのか。一口食べるか?」

(;´・ω・)「いや、あんまり食べる気は……それよりもうすぐ和寒内先生が来るはずだよ」

从;゚∀从「なっ、それマジ? ソースはどこよ!?」

(´・ω・`)「ソースはともかく……さっき近くの方で渡辺さんと話してたのを見たからね。
      あともう少ししたら来るんじゃないかな?」

从;゚∀从「さっ、流石にこれを見られるのはヤバイ! 急いで食べるんだっ、クー!」

川 ゚ -゚)「……私はもう食べ終えてるぞ」

从;゚∀从「なっ、いつの間に!? ……って俺、人の事構ってられねーじゃん!」

川 ゚ -゚)「はい、イッキ! イッキ!」

从;゚∀从「だああぁぁっっ! 急かせるなっ!」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:03:40.12 ID:vIjecPeC0

从'ー'从 ノ ‖ガラガラ 「みんなおはよ〜」


从;゚Д从「渡辺来ちゃったしー!!」

川 ゚ -゚)「終わったな、ハイン」

从;゚∀从「いや、でもコンロとかはクーの机の上に……ってあれ!?
      いつの間に俺の机の上に移動してるんだ!?」

lw´‐ _‐ノv「ジョバンニが一晩で移動しておきました」

川 ゚ -゚)「シューか、ありがとな」

从;゚∀从「そしていつの間に来てんだよシュー!?」

川 ゚ -゚)「くっくっくっ、これで被害が及ぶのはハインのみ……」

lw´‐ _‐ノv「こってり油を絞られるがいい……
       そして後で絞られた油を分けてくれ」

从 ;∀从「ちくしょおおおおっっ!! お前らなんて嫌いだーーっ!!」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:06:29.88 ID:vIjecPeC0


そして三分後――


( ><)「皆さん、おはようなんです! ってあれ? 何かラーメン臭いんです……」

和寒内先生の言葉により、教室内のいくつかの視線がある少女に向かう。

从 ∀从「ハ、ハハハッ……」

( ><)「……高岡さん、何か知らないですか?」

从 ∀从「いや、俺は何も知らない……」

( ><)「…………そうですか。じゃあ渡辺さん、このプリントを皆に配っていてほしいんです。
      僕は職員会議があるので、一度職員室まで戻るんです」

和寒内先生は首を傾げながらも、教室を去って行った。
……ハインの席の横にある鞄には、空になった丼やその他諸々が詰められている。
僅か三分でラーメンを汁まで飲み干し、全てを片付けたハインの手腕に合唱だな。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:09:29.71 ID:vIjecPeC0

     □     □     □

テスト前の最後の授業も終わり、あっという間に放課後。
明日からはテストなので、流石に今夜ブーンに構っている暇は無い。
そして水晶については……

ξ ゚听)ξ「……よし、魔力の充填は完了ね」

./・ω・ ヽ「どうするかぽ? さっそくやっちゃうかぽ?」

ξ ゚听)ξ「……いや、今はテストに集中したいわ」

./・ω・ ヽ「ツン、覚悟しておくぽ。最悪の場合、地球の裏側まで行くことも考えられるぽ」

ξ ゚ー゚)ξ「……解ってるわよ。いい夏の思い出になりそうじゃない?」

幸いな事に目の前まで夏休みが迫っているので、時間はいくらでもある。
果たしてどんな冒険が待っているのか……まあともかく――

ξ ゚听)ξ「さーて、テスト勉強に戻るわよ!
       ブーンにかまけて成績を落とす訳にはいかないからね!」

./・ω・ ヽ「まあ頑張るぽ。陰ながら応援してるぽ」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:12:05.16 ID:vIjecPeC0

     *     *     *

そして一学期最後の行事、期末テストが始まる。


( ^ω^) (あっ、ここツンの予習で出た所だお!)

('A`;) (やべー、山外したなー……)

(´・ω・`) (うん、今夜はボルシチに挑戦するかな)


土日を挟んで四日間、合わせて11教科分。


ξ ゚听)ξ (これはブーンに教えた問題……ちゃんと出来てるといいけど)

川 ゚ -゚) (ここでユニバーサルメルカトル図法を使って……)


一日に3教科ずつ行われるテストを次々とこなしていく。


lw´‐ _‐ノv (鯛が入ってないたい焼きが許されるなら、ニラが入っていないニラ玉でも……)

(*゚∀゚) (……流石に一度受けた勉強を落とすわけにはいかないな)

从;゚∀从 (なあっ!? 裏にも問題あったのかよ!?)

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:15:14.59 ID:vIjecPeC0

自分の力を信じて、ある者は安堵し、ある者は後悔し――


(; ´ー`) (ハアッ!? こんなの覚えてネーヨ……)

\(^o^)/ (…… \(^o^)/ )

( ∵)


それでも時間は均等に過ぎ去っていく。


('、`;川 (こんなマニアックな問題を……やるわね、ビロード先生……)

アセ;゚ー゚)リ (ビロ先生のクセに、こんな難しいのを出して……覚えてろよ……)

ノパ听) (よっしゃっ、これで合っててくれよっ!)


この一学期、自分の実力の集大成が試されるこの場。


(;,,‐Д‐) (俺、このテストが終わったら思いっきり遊ぶんだ……)

( ・∀・) (……まあ、僕の手にかかれば楽勝だね)

( ´∀`) (……アイス食べたいモナ)

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:18:07.74 ID:vIjecPeC0

生徒達は己の力全てを持って、目の前の敵へと進む。


(*゚ー゚) (生肌ッ! 生肌ッ! ウフフッ……)

从'ー'从 (あれれ〜、消しゴムが無いよ〜?)

/ ゚、。 / (……私は今、非常に迷っています)


それは他のクラスでも例外では無い。


( ^Д^) (うはwww余裕だしwwwwww)

(´<_` ;) (昨日の晩、兄者が不審な動きをしていたが……いや、気にしないでおこう)

/ ,' 3 (…………ZZZ)


全てはこのテストの先に待つ、長い休暇の為に。


ζ(゚ー゚*ζ (あー、お腹すいちゃったなー……)

川 ゚ 々゚) (あははははっ、分解分解ー♪)

(゚、゚トソン (中々のやり手のようですね、このテストの製作者は……)

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:21:03.43 ID:vIjecPeC0

     *     *     *

( A )「…………お、終わった……のか?」

(  ω )「あははっ、世界が回ってるお……」


(;´・ω・)「……二人とも死に掛けてるね」

川 ゚ -゚)「なあ、この後憂さ晴らしにカラオケ行かないか?」

ξ ゚ー゚)ξ「あっ、それ賛成!」

(´・ω・`)「いいね。最近覚えた曲、試してみたいと思ってたんだ」


( A )「……いいぜ、今だけは幸せでいたいからな」

(  ω )「無知は最高の幸せだお……」


(;´・ω・)「二人とも元気だしなよ……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:24:08.51 ID:vIjecPeC0

     □     □     □

そして楽しかった午後も終わり、今は深夜。

ξ ゚听)ξ「……そろそろやろうかな?」

./・ω・ ヽ「……じゃあ早速始めるぽ」

ここは近所の小さな公園、その一角にある広場。
人避けの結界を張ってあるので、いるのは私とぽだけ。

ξ ‐凵])ξ「じゃあいくわよ。『桜色の共鳴』……」

魔法少女の姿になっている私は、手に持った杖に意識を集中させる。
身体中の魔力が杖へと流れていき、先端にある水晶へと蓄積されていく。
それが限界を超えた頃、波紋のように魔力が勢いよく解き放たれる。


……そして魔力を放つのとほぼ同時、杖の先へと返ってくる力があった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:27:02.61 ID:vIjecPeC0

ξ;゚听)ξ「んっ!? 今のって反応!?」

この波紋が別の水晶のある場所へと当たった時、その波紋が跳ね返ってくるらしい。
世界のどこにあるかわからない関係上、波紋の速度をほぼ最速にしたんだけど……

./・ω・;ヽ「そうみたいだけど……もう一度、今度はゆっくり試してみるぽ」

もし感覚が正しければ、水晶があるのは県内……下手をすると市内さえありえる距離。
限りなくスピードを落として、何度か魔力を解き放つ。

そして導き出された場所は……

ξ;゚听)ξ「VIP高校……しかも反響の角度から見て多分校長室ね……」

./・ω・;ヽ「幾らなんでも近すぎだぽ……」

……初めての海外旅行は、またの機会になりそうね。

./・ω・ ヽ「で、今すぐ行くかぽ?」

ξ;゚听)ξ「うーん、今夜は疲れ気味だし……明日にするわ」

./・ω・ ヽ「そうかぽ。まあすぐに終わる作業だし、明日ゆっくりやればいいぽ」



……後に私は、この判断を後悔する事になる。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:29:59.65 ID:vIjecPeC0

     *     *     *

『   7月14日 (水)

  ようやくテスト終了! 今回はよく出来たと思う。
  あいつに勉強に付き合ってもらった甲斐はあったな。
  そして明日の放課後はまたあいつとのデー
                                  』

  チャララー チャララララー ♪

ノパ听)「ん? あいつからか?」

  ピッ

ノパ听)「もしもーし、アタシだ、ヒートだ。
     お前からの連絡って珍しいな……ん? 今から……?
     まあいいけど……大事な話なんだよな?」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:33:06.95 ID:vIjecPeC0

     □     □     □

ξ ゚听)ξ (さーて、どうしようかしら……)

翌日の昼時間、私は校長室近くのベンチで悩んでいた。
勿論目当ては、校長室の中にある紅色の水晶を手に入れる事。
強引に押し入ってもいいんだけど、後がめんどくさそうだし……

そんな考えをしているときに、廊下の向こうから走りよってくる人達がいた。

( ^ω^)「あれ、ツン? 何でこんな所にいるんだお?」

(´・ω・`)「職員室に用事……にしては遠い場所にいるね」

ξ ゚听)ξ「ブーン達こそ……何でここに?」

(; ^ω^)「ショボンとキャッチボールをしてたら、投げる勢いが強すぎてお……
      窓の開いてた校長室の中に入っちゃったんだお」

(´・ω・`)「で、今から一緒に謝りにいくところさ」

……これはチャンスね。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:36:12.91 ID:vIjecPeC0

ξ ゚ー゚)ξ「……全く、あんた達は仕方ないわね。
       私も一緒に謝りに行ってあげるわよ」

(;´・ω・)「いや、別にツンが一緒に行く必要は――」

(* ^ω^)「助かるお!」

よし、これで校長室に入る大義名分が出来たわね。
そうとわかれば早速行動開始!

ξ ゚听)ξ「失礼しまーす」

(; ^ω^)「ちょっ、まだ心の準備が……」

(´・ω・`)「まあブーン、諦めなよ」


ドアを開けてまず目の前に入るのは、立派なソファとガラスのテーブル。
そしてその奥には高級そうなデスクセットと、そこに座っている男性の姿があった。

( ̄ー ̄)「どうしたんですか、あなたたち。。。」

彼こそがこの学校の校長、西村まろゆき氏である。

……あれ、まろひこだったっけ?

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:39:23.83 ID:vIjecPeC0

(´・ω・`)「すいません、実は先ほど校舎の裏手でキャッチボールをしてたのですが……」

( ̄ー ̄)「ああ、このボールはあなた達のでしたか」

ゴムボールを手に持ち、微笑みながら語るひろひこ校長。

( ̄ー ̄)「一瞬テロ行為かと身構えましたよ。。。
       今度からは注意してくださいね」

ショボンへとボールを投げ渡すひこまる校長。
中々のコントロールの持ち主ね……


それはそうと、この隙に校長室の中を見渡してみる。

部屋の左右は書類棚が並んでいて、その上には歴代の校長の写真が飾られている。
デスクの上には最低限の書類や本、何故かウマー棒がいっぱい入った籠……
そして窓際にある棚には様々な表彰状やトロフィーが飾られていて――

ξ ゚听)ξ (……あった! 多分あれが水晶ね)

トロフィーのある棚の一つ上、幾つかの飾り物が置かれている場所。
ガラス戸が填められたその棚の中、木彫りの熊の横にそれはあった。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:42:17.18 ID:vIjecPeC0

紅色と言うよりは薄い紫色に近い色合い。
元は球状だっただろう形は、今は半分以上が消失している。

小さな座布団のような台座の上に置かれた紅色の水晶片。
室内の蛍光灯の光を反射し、キラキラと紅色の光を放っていた。


( ̄ー ̄)「。。。あなた達、いつまでいるのですか?」

(; ^ω^)「えっ、お叱りの言葉とかは……」

( ̄ー ̄)「あなた達がわざとで無いなら、これ以上言う事はないですね。
       夏休みが目の前だからと言って、浮かれすぎないように。。。」

(´・ω・`)「わかりました、以後気をつけます。では失礼しました」

……残念だけど、今はここまでの様。
まあ存在と置いてある場所が確認できただけでも充分ね。

さーて、あの棚には警備装置が仕掛けられていたようだし、ここはまず……

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:45:11.21 ID:vIjecPeC0

     ○     ○     ○

ξ ゚听)ξ「すいません、和寒内先生はいらっしゃいませんか?」

テスト期間の前後は、基本的に職員室への生徒の立ち入りを禁じられている。
職員室の前まで来た私は、偶然近くを通りかかった愛媛先生へと声をかけた。

(*‘ω‘ *)「ん? ビロに用事っぽ?」

ξ ゚听)ξ「はい、テストの問題で気になる所があって……」

(*‘ω‘ *)「んー、ビロは今手が離せないみたいだっぽ。
       後からに出来ないっぽ?」

ξ ゚听)ξ「いえ、どうしたくても今のうちに聞いておきたくて……」

(*‘ω‘ *)「んー……まあ津出なら大丈夫かっぽ。アタシの後から付いて来るっぽ。
       なるべく机の上の物を見ない様にするっぽ」

……よし、作戦成功。

あらかじめ和寒内先生が忙しそうな事は魔法で調べておいたし、
愛媛先生なら私を信頼してくれているみたいだしね。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:48:32.30 ID:vIjecPeC0

和寒内先生の机は、一年生担当教師のデスク群の端にある。

ξ ゚听)ξ「すいませーん……」

テストに赤ペンで採点していた和寒内先生は、私の声に反応して顔を上げた。

( ><)「……あれ? ツンさん、どうしてここにいるんですか?」

ξ ゚听)ξ「愛媛先生にお願いして……今回のテストの問い三、三問目なんですけど……」

( ><)「それは今朝のテスト返却で説明したはずなんです。
      説明が解り辛かったですか?」

和寒内先生を話をしつつ、目線をある方向へとずらす。
その先の壁に設置されているのは、学校中の警備システムを担当する機械の基盤。

ξ ゚听)ξ「はい、教科書の公式とは違ってる気がして……」

( ><)「確かにこれは公式から外れた、ちょっと解り辛い物を使ってるんですが……
      帰りのHR後まで待ってもらってもいいですか? その時に説明するんです」

ξ ゚听)ξ「…………わかりました、ではその時にお願いします」

ペコリと一礼し、そそくさと部屋を立ち去る私。
……これで全ての準備は整ったわね。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:51:10.12 ID:vIjecPeC0

     ○     ○     ○

『お疲れ様でーす』

『よし、じゃあ私達も帰りますかね……』


ξ ‐凵])ξ「……よし、これで誰もいなくなったわね」

夜も10時を過ぎ、テストの採点のために残った教師も帰宅した頃、私は学校の屋上にいた。
昼の時間に職員室と校長室で展開した『霧桜』を頼りに、室内に人がいない事を再度確認する。

ξ ゚听)ξ「……じゃあ始めるわよ。『桜色の漏電』」

職員室に薄く広がった魔力をかき集め、部屋の一角にまとめる。
その場所は警備用の機械がおいてある壁の近く。そして――

ξ ゚ー゚)ξ「よし、成功したわね!」

屋上への出入り口、そこの天井にあった小さな赤いランプが点灯を止める。
機械類を無効化する『桜色の漏電』。実際に漏電を起こすわけじゃないけど、応用次第で色々使えそうね。

ξ ゚听)ξ「さーて、一気に頂いちゃいますか!」

./・ω・ ヽ「その意気だぽ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:54:36.63 ID:vIjecPeC0

警備システムを眠らせた私は、屋上から階段を駆け下りて行く。
別にそこまで急ぐ必要は薄いけど、とっとと終わらせて休みたいしね……

校長室がある二階まで来て、廊下へと出た時だ。

ξ;゚听)ξ (ん? 人がいる……!?)

校長室の前、廊下の真ん中に人影らしきものが見えた。
距離があるので姿は解らないが、背丈は低いように見える。

その人物はこちらの姿を見つけてはいるようだけど、特にこれといった動きはない。

./・ω・;ヽ (ツン、どうするかぽ?)

ξ ゚听)ξ (どうするも何も、とっとと倒して進むしか無いわね……)

その人物に向かい、ゆっくりと足を進めていく。
段々と近づくにつれ、その姿が明らかになってきた。

身に着けているのはTシャツにショートパンツという動きやすそうな格好。
背丈は私と同じほど……つまりある程度低め。
長い髪の毛を根元で一つにまとめて後ろへと垂らしている。


そこまで確認できた時の事だ。
一斉に廊下の明かりが灯り、その人物の顔が映し出された。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 02:57:05.12 ID:vIjecPeC0

ξ;゚听)ξ「……やっぱり、そうなの…………?」


普段クラスでよく顔を合わせている人物。
活発な性格と、赤い髪が特徴的な同級生。


ノハ;゚听)「…………ツン、なのか……!?」


砂緒ヒートの姿がそこにあった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 03:00:01.86 ID:vIjecPeC0
       。。     。。       。。
     ゚○゚     ゚○゚     ゚○゚

あいつの連絡で今日戦えると聞き、内心はワクワクしていた。
果たして魔法使いに自分の力が通じるのか……そんな不安もある。
だけど、アタシが全力で戦える機会など、今まで全く無かった。


強いと評判の街の不良と戦った。三分後には泣いて謝る不良がいた。
近くの山で暴れている熊と戦った。その日の晩は熊鍋だった。
酔っ払ったプロボクサーにからまれたこともあった。翌日彼は引退宣言を出した。


どいつもこいつも、歯ごたえが無い……
そんな憤りを感じていた時、仮面を付けた彼と出会ったのだ。


初めて戦う未知の力。そこでアタシは色々と衝撃を受けた。

相手の出方が全く読めない恐怖。
奇想天外な所から繰り出される攻撃による焦り。
一撃が重傷となるかもしれない攻撃を避ける緊張感。

……それらは全て、自分が心の奥で求めていた物。
そのスレスレの負の感情が、逆にアタシの神経を高揚させていった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 03:03:11.25 ID:vIjecPeC0

……しかし、終わりは呆気なく訪れた。

本気を出した自分の一撃で、彼はあっさりと崩れ落ちる。
その仮面の下を見た時には、既に自分の闘争心は削がれていた。


やや落胆しつつも、彼の話を聞く。するとその中には大きな成果があった。
彼より何倍も強い存在、それと全力で戦えると……

元々とある事情から彼の事が好きだった自分は、当然OKを返した。
彼の大いなる野望に付き合えると共に、初めて全力で相手と戦える……それが嬉しい。

……そしてオマケと言ってはあれだが、彼と共に行動できる口実も出来た。
休日の彼は普段見せないような別の顔も見せてくれ、アタシはそんな所にも惹かれていく。



だけど……

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 03:06:02.36 ID:vIjecPeC0

ノハ#゚听)「あいつ……相手がツンとは聞いてないぞ……」

ξ;゚听)ξ「聞いてないって……まさか……」

目の前にいるのは、ヒラヒラな格好をした一人の少女。
手に持ったステッキといい、誰がどう見ても魔法少女と呼べる存在だろう。

ノパ听)「一つ聞きたい! ツンの目的は水晶か!?」

ξ ゚听)ξ「…………ええ、そうよ」

杖を構えながら答えるツン。
その目の中には、今までに見ないほどのはっきりとした闘志が見えた。
全身を漂う気配から見ても、かなりの手練である事が見て取れる。

ノパー゚)「なるほど……いいかっ! もし水晶が欲しいならば――」

思わずにやける顔を抑えながら、相手の目を睨みつける。
その目線を受けても動じない所を見ると、胆も相当据わっているな。
……これは手答えのある戦いが出来そうだ。


ノパ听)「このアタシを倒してからにしろっ!!」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[寝落ちしてた……] 投稿日:2010/01/01(金) 06:04:33.68 ID:EREvM9Jf0

     □     □     □

……まったく、最近の知り合いとの戦闘率は異常ね。
まあともかく、さっさと目を覚まさせてあげますか。

ξ ゚听)ξ「……いいわ、かかってきなさい!
       その言葉、後悔させてあげるわ!」

ノパ听)「よし、言ったな! そっちこそ後悔するなよ!」

両手の握り拳をぶつけ合い、軽い音を鳴らすヒート。
彼女には悪いけど、早速全力で……

ノパ听)「流派中位! 猿樹昇降――」

……ヒートの姿が沈み、そして――

ノハ#゚听)「――落撃脚!!」

彼女の姿が、目の前から消えた。

ξ;゚听)ξ「えっ……?」

./・ω・;ヽ「ツン、上だぽ!」

ぽの言葉によって見上げた私の視界には、宙に浮かぶヒートの姿がある。
そしてヒートの左足が、私の頭を目掛けて振り落とされた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:07:44.86 ID:EREvM9Jf0

     *     *     *

ξ;゚−゚)ξ「っ……!!」

ツンの選んだ判断は、手持ちのステッキで攻撃を受け止める事。
両手で杖の端を持ち、攻撃を杖の中心で防御する。

ヒートの足が杖に当たった時、ツンの手に強い衝撃が走った。
人一人とは到底思えないほどのその力、魔力で強化された肉体でも杖を取り落としそうになる。
全身に痺れが走り、杖が嫌な音を立て始めた頃、ようやくヒートの力が弱まった。

ノパ听)「くっ、やるなっ!」

ξ;゚听)ξ (どっちがよ、まったく!?)

身を翻してツンの目の前へと降り立つヒート。

ξ ゚听)ξ「『桜色の小玉』!」

そこへツンからの攻撃が入る。
杖の先の光球を飛ばし、ヒートの胴体中央を狙う彼女。だが――

ノハ#゚听)「……っらあっ!!」

ξ;゚听)ξ「なっ!? この距離で避け――」

右足を軸に体を回し、ツンの攻撃をかわすヒート。
光球は廊下の先へと飛んでいき、壁際にある校長の銅像を粉々にした。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:10:13.03 ID:EREvM9Jf0

ノパ听)「うおりゃあああぁぁっ!!」

爪を逆立て、顔を抉るような軌道で振り下ろすヒート。
だが彼女の攻撃は、突如形成された桜色の壁によって阻まれる。

ノハ;゚听)「くっ、硬いっ!?」

ξ#゚听)ξ「……悪いけど、こっちも負けてられないのよ! 『桜色の鳥篭』!」

ヒートの頭上に生まれた光球、そこから光の棒が放射状に広がり、地面へと突き刺さる。
動きが素早いヒートを捕らえるために生み出された魔力の籠、
しかしそれは瞬時に彼女が後方へと飛びのいたため、役目を果す事が無かった。

ξ;゚听)ξ (動きが素早すぎるわね……)

ノハ;゚听) (くっ、あの壁硬すぎるな……)

ξ;゚−゚)ξ (ヒートの体からは微弱な魔力しか感じない……
        まさかあれが本来の力とでもいうの!?)

ノハ;゚听) (これが魔法の力……壁を作られる前に倒すには……)

ξ ゚听)ξ (ともかく、相手の動きが速すぎるなら……)

ノパ听) (……とにかく、やるっきゃないな!!)

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:13:47.93 ID:EREvM9Jf0

ξ ゚听)ξ「ぽ、離れてて! 『桜色の詩篇』!」

./・ω・ ヽ「了解したぽ!」

体をバネのように弾ませ、ツンの肩から廊下の端へと降り立つぽ。
それと時を同じくして、ツンの持つ杖の先へと変化が起こる。

杖の先に付けられた赤い宝石と、それを取り囲むように存在する五枚の花弁を模した飾り。
その飾りが一瞬赤く輝いた後、次々と杖の先から剥がれ落ちた。
ヒラヒラと舞いながら落ちるそれらは、途中から空中を泳ぐように舞い上がり、ツンの周りに滞空する。

ξ ゚听)ξ「よし、行きなさい!」

ゆらゆらと左右に揺れていた花弁達がツンの言葉に反応し、ヒートへと向かう。

ノハ;゚听) (は、速い!)

今までとは違う直線的な動き、そして目でギリギリ追いきれるかと言うほどの速さ。
何より五つの花弁は広がるように軌道をずらしてあり、ヒートが回避するのを困難にしている。

ノパ听)「だがっ! 中位、鋼虎爪!」

どのように避けても一枚は当たる軌道。しかし裏を返せば、一枚しか当たらないという事。
そこで彼女の取った行動は、動かずに迎え撃つ事だった。

……その行動が、最も行ってはいけない事だとも知らずに。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:16:24.94 ID:EREvM9Jf0

ノハ#゚听)「うおおおおおぉぉっっっ!!」

前方から迫る一枚に向け、爪を模したように指を逆立てた手を振り下ろす。
花弁のスピード、角度、力を予想し、それに対して適切な威力を与えるために計算された一撃。
それは寸分の狂いも無く花弁へと向かい、その暴力的な力を叩き込んだ。

……だがヒートは、一つ大きな誤算をしていた。

ノハ;゚听) (こっ、この力の量はっ!!)

花弁の大きさとスピードに惑わされていたが、彼女が想定した物よりもはるかに莫大なその力。
斜め上から叩き付けた拳は、花弁の軌道を変えるには何の効果も満たさなかった。
瞬時に回避行動へと切り替わるヒート。花弁は彼女のわき腹を掠めて、廊下の先へと飛んでいく。

ノハ; )「っつぅ!!」

ほんの少し掠っただけで、車に当てられでもしたかのような激痛がヒートへと走る。
思わず膝を突きそうになるのを何とか堪えきる彼女。
その彼女の後ろで壁を削る不快な音が響き渡った。

ノハ ) (風を切る音……また来るのか!)

廊下の端に当たり、向きを変えて迫ってくる花弁達。
ヒートはその動きを見て、ある事を考える。

ノパ听) (もしかして……なら!)

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:19:45.71 ID:EREvM9Jf0

ノパ听)「灼熱砂万那ry…… ぐっ!」

ヒートは急にバランスを崩したかのように膝を突き、地面へと片手を下ろした。
右のわき腹を庇うようなその仕草からして、先ほどの痛みがぶり返してきたかにも見える。

そしてツンはその隙を見逃すほど愚かでも無く、そして甘くもなかった。

ξ ゚听)ξ「(悪いけど……) これで終わりよ、ヒート!」

戻ってくる五枚の花弁を、全て倒れたヒートへと向かわせるツン。
ヒートが全力を出しても全てを受け止める事は到底適わないだろう。
そうしている間にも花弁達はヒートへと近づき――

ノパ听)「下位! 猫壁跳天!!」

ヒートの四肢に力が込められ、地面へと向かって解き放たれる。
それにより彼女の体が跳ね上がり、天井近くまで到達した。

ξ;゚听)ξ「あっ、あの体勢から!?」

蛍光灯の金具に手を掛け、そのまま天井に張り付くヒート。
その下を花弁が通り過ぎ、ツンの杖へと収まったのを確認した彼女は天井から降り立った。

ノハ;゚听) (しかしあれだと……そうだっ!)

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:24:21.24 ID:EREvM9Jf0

ヒートが選んだ手段は、身を返しての撤退。
ツンに背を向け、廊下を走り出す。

ξ ゚听)ξ「悪いけど、逃がさないわ! 『桜色の流星』!」

ツンの杖から花弁が一枚のみ剥がれ、桜色の光を放ちながらヒートへと向かう。
先ほどの花弁よりも速いスピード、そして力強い光。
それはヒートの無防備な背中へと突き進み――


ノハ#゚听)「流派:灼熱砂万那、上位!! 鹿金両断山!!」

身を翻したヒートは、左右の手刀を交差させるように花弁へと叩きつける。

ξ;゚听)ξ「なっ……!!?」

そこで起きた現象を、にわかにはツンは信じる事が出来なかった。


高濃度の魔力で作られた花弁型の魔力体、それが二つへと叩き割られた。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:27:07.27 ID:EREvM9Jf0

自らの身に迫る危機を回避したヒートは、尚も廊下を走る。
そして端まで辿り着いた彼女は、姿勢を低くした。

ξ;゚听)ξ「何を……」

ツンが疑問に思った次の時、彼女は再び走り出した。
向かう先は先ほどとは逆、ツンに向けてだ。

ノハ#゚听)「うりゃあああぁぁっ! 覚悟しろおおぉぉぉっ!!」

ξ ゚听)ξ「……悪いけど、それはこっちのセリフよ!」

残った四枚の花弁を展開し、全てをヒートへと飛ばすツン。
しかし速度は先ほどよりもゆっくりと、せいぜい鳥が飛ぶ程度の速さだ。
当然ヒートは避けようとするが――

ノハ;゚听)「なっ、曲がって ――!!」

ヒートが横をすり抜けかわそうとした時、花弁がほぼ直角に曲がり、ヒートを襲った。
腕で振り払う事により致命傷は抑えたものの、打ち付けた腕はジワジワと痛む。
しかも弾いた花弁は再び態勢を整えて、ヒートへと向かおうとしている。

ノハ#゚听)「ぐっ! やるな、ツン! だがっ!!」

向かってくる花弁を強引に弾き、突き進むヒート。
ツンとの距離をある程度詰めた時、彼女は行動に出た。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:30:04.80 ID:EREvM9Jf0

ノパ听)「喰らえっ!!」

両手にこっそりと握っていた物、先ほど廊下の端で拾った石像の欠片をツンへと投げつけた。

ξ ゚听)ξ「その位でっ、甘いわよ!」

ツンは持っていたステッキでつぶてを弾き、再びヒートへの攻撃に集中しようとする。
だが次の瞬間、ツンの目の前の景色が暗闇に閉ざされ、ヒートの姿を見失った。

ξ;゚听)ξ「えっ、何!? 停電?」

ヒートはツンへの攻撃とほぼ同時、別方向へも欠片を投げていた。
目標はツンの後ろの壁、そこに備え付けられた照明のスイッチパネル。
その目論見通りにパネルは壊れ、廊下一帯の電灯は消えたのだ。

ツンはそんな事を知らず、とにかく失った視界を取り戻すために魔法を発動する。
暗闇に瞬時に反応出来るほどの眼力は無く、何よりヒートの走る音が未だに続いているからだ。

ξ ゚听)ξ「っ! 『桜色の五光』!」

花弁達から光球が生まれ、四つの光が天井近くまで浮かびながら光を放つ。
そしてツンはその灯りの中で、最悪の光景を目にする事となった。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:33:19.90 ID:EREvM9Jf0

ノハ#゚听)「捕らえたぞぉっ!!」

ξ;゚听)ξ「っ! こんな近くまで!」

彼女が見たものは、ほんの目の前にまで迫っていたヒートの姿。
花弁を呼び戻しても届かない距離への接近を許してしまった彼女の前で、ヒートの足が跳ね上がる。

ノハ#゚听)「うおおおぉぉぉっっ!! 流派:灼熱砂万那、最上位!!」

ξ;゚−゚)ξ「っ! 『桜囲い』っ!」

ノハ#゚听)「烈火咆哮! 竜虎突斬脚!!」

水晶の魔力を全て花弁に注ぎ込んでいる関係上、ツンの本来の魔力のみで作られた防壁。
その壁へと全力でのヒートの蹴りがぶつかり、衝突点に紫電が走る。

二人の元来の力を持ってしての戦い、その結果は――

ノハ#゚听)「だりゃあああああぁぁっっ!!」

ξ;゚−゚)ξ「かっ、壁がっ!? ……ぐっ!!」

ヒートの蹴りが壁を突き破り、ツンの体へと突き刺さる事で勝敗が付いた。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:36:08.43 ID:EREvM9Jf0

咄嗟に体を後ろへと流しながら、左腕で腹部への攻撃を防ぐツン。
しかしそれ位の事では、ヒートの勢い全てを受け止める事など出来なかった。
彼女の体は後ろへと弾き飛ばされ、廊下を転がっていく。

ξ  )ξ (強い…………でも!)

左腕の痛みと全身を打ち付ける感覚と戦いながらもツンは反撃に打って出る。
四つまで数を減らした花弁、そのうち二つをヒートの背後から強襲させた。

ノハ;゚听)「くっ、まだやれるのかっ!?」

攻撃の後の隙を突き、それに加えて二方からの時間差攻撃。
ヒートは最初の一撃を避けはしたものの、続く二撃目を左肩へと受けてしまう。
切っ先を捻るように肩へと食い込む花弁。ヒートは引き離そうとするが、ツンの行動はまだ終わらない。

ξ#゚听)ξ「これで終わりよ! 『桜色の点花』!」

ノハ; )「なっ――!!」

左腕を庇うようにして立ち上がったツンが呪文を口に乗せる。
それと同時に、ヒートが握り締めていた花弁が爆発を起こした。


ξ;゚听)ξ「や、やったの……?」

辺りには魔力による残光と白煙によって覆われ、ヒートの様子は見て取れない。
……やがてゆっくりと煙が晴れていき、彼女の姿が現れた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:39:32.73 ID:EREvM9Jf0

ヒートの左の肩口にはえぐれたような傷が生まれ、血がダラダラと垂れている。
力なく下がる左腕は、おそらく少し動かす事すら辛いだろう。
今だに立ち上がっているヒートだが、表情は苦々しい物へと変わっていた。

ノハ;゚−゚)「くそっ、やってくれたな……」

ヒートのその声を聞き、ツンの背中に怖気が走る。

ξ;゚听)ξ (ま、まだやる気なの……?)

ヒートの声量も弱くなってはいるが、声の裏に現れる覇気は変わらない。
……いや、むしろ強くなっているとツンは感じ取った。

ノハ;゚ー゚)「ここまで強い相手……不足は無いっ!!」

顔を痛みに歪ませながらも両腕を持ち上げ、構えを取るヒート。

ξ ゚听)ξ「……なんでよ。なんでヒートはそこまでやれるのよ!」

ノパ听)「そんなの決まってる! 『最強』を目指すためだっ!!」

ξ;゚听)ξ「最強って……その力で何をする気なの?」

ノパ听)「それは勿論……最強であり続けるんだ!!」

ヒートの顔に一瞬影が差すのを、ツンは見逃さなかった。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:42:44.64 ID:EREvM9Jf0

ξ ‐凵])ξ (いいわ、そこまでいうなら……)

ツンは残った三枚の花弁を呼び戻し、杖を水平に構える。
最初の攻撃の時に廊下の脇に飛び退いていたぽに目を向け、語りかけた。

ξ ゚听)ξ「ぽ、何かあったらお願いね」

./・ω・;ヽ「ツン、まさか……」

ξ ゚ー゚)ξ「あのバカの目を覚ますには、この位の事をしなくちゃね」

./・ω・;ヽ「待つぽ! だからといって、そんな無謀な事を――」

ξ ゚听)ξ「『桜色の舞踊』!!」

杖の先の飾りが離れ、ツンの体の周りに滞空する。
先ほどと違う点は、花弁が端から細かく崩れていき、光の粒子と化していく所だ。
その現象はツンの持つ杖にも起こり、ツンの体は桜色の微粒子で覆われる事となる。

全ての魔力を身に纏い、常識ではあり得ないほどに身体能力を上げる魔法、『舞桜』。
『桜色の舞踊』は、ただでさえ強力なそれを更に強化した物である。
当然魔力が尽きやすいなどの欠点も引き継いでおり、易々と使える物では無いのだが――

ξ ゚听)ξ「これで片を付けるっ! 行くわよ、ヒート!!」

ノハ;゚ー゚)「望む所だっ! 来いっ!!」

こうして二人の、最後となる激突が始まった。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:45:33.47 ID:EREvM9Jf0

ξ#゚听)ξ「はああぁぁっっ!!」

ヒートへと駆け寄ったツンは、右の拳での正拳を放つ。
顔を狙ったその一撃は、ヒートが左腕で弾く事によって何も無い空間へと逸れていく。

ノハ#゚听)「甘いぞっ、ツン!!」

ヒートはそのままツンの伸ばされた腕を掴み、体を半回転させる。
拳の勢いを使ってツンの体を背中に乗せ、そのまま前方の床へと投げつけた。
いわゆる背負い投げを受けたツンは背中から床に落ち、激しい音が廊下に響く。

ξ;゚听)ξ「ぐっ、だけど―― ッ!」

ツンが体勢を立て直そうとした時に、彼女の上へと影が差す。
その正体は、ヒートの高く掲げた左足。

ノパ听)「中位! 恋路邪馬雷!!」

ξ;゚听)ξ「…………っ!!」

ツンが側転した一瞬後、彼女の脚がツンの右肩のあった場所へと叩き落される。
ヒートの脚が床へとめり込み、そこから1mほどの長さを持つヒビが走った。

ξ;゚−゚)ξ(この攻撃をまともに喰らったら……でも!)

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:48:21.89 ID:EREvM9Jf0

転がりながら体を起こしたツンは、再び右の拳で殴りかかる。
今度は力任せの一撃ではなく、連打性を重視したジャブの様なもの。
先ほどよりは軽い連撃をヒートへと浴びせるツン。

……しかし魔力で強化されている都合で、ヒートは易々と看過は出来ない。
迂闊に手を出すと手痛い左の一撃が待っている事は、ヒートにも充分予測出来た。
あっという間に彼女は妨勢に立たされ、じわじわとツンに押されていく。

ξ ゚听)ξ (このまま一気に押し込むっ!)

ノハ;゚听) (こっ、このままだと!!)

そして遂にツンの拳が、ヒートの顔に一撃を喰らわせる。
ヒートの視界が揺れ、ガードの手が弱まった。

ξ ゚听)ξ「覚悟ぉっ!!」

ノハ )「……!!」

ツンの左拳が下方からヒートの顎を襲い、高く跳ね上がった。
激しく脳を揺さぶられ、ヒートの意識は消し飛ばされそうになる。
崩れ落ちようとするヒートの体に、ツンは止めの一撃を加えた。

ξ#゚听)ξ「これでっ! 『桜色の衝撃』!」

ツンの右の拳が赤く光り、高速でヒートへと突き出された。
そして鳩尾を狙ったその一撃をかわす術は、最早ヒートには無い。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 06:52:03.32 ID:EREvM9Jf0
       。。     。。       。。
     ゚○゚     ゚○゚     ゚○゚

ぼやけた視界の中で、ツンの拳が赤く光ったのが見えた。
成す術も無くそれはアタシのお腹の方へと向かっていく。

内臓全てが吐き出されそうな痛みが、アタシの腹部から伝わってくる。
身体中の感覚が抜け、力を込めようとしても反応が無い。


……そうか、これが負けると言う事か。


師匠との模擬戦では、いつも決着がつく前に勝負が取止めになっていた。
いつもアタシが不利になると師匠は攻撃を止め、これで終わりとばかりに模擬戦は終わった。


あれは一年前だったか? アタシの攻撃が師匠に当たった時、師匠がふらついた事があった。
今までもそんな事は何度かあったが、その時は急に師匠が模擬戦の中止を言い出したのだ。

その日の晩、アタシは師匠から免許皆伝を言い渡されたのだ。
まだ必殺の奥義を習得していない……そうアタシは詰め寄ったけど――


  ν(・ω・ν)『ええけー何も言わずに受け取ってくれー。
          奥義はいつか身につく日が来るけーのー……』

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:01:06.25 ID:EREvM9Jf0

それ以来師匠との特訓は終わってしまったので、自己流で腕を磨いてきた。
様々な方法で自分を鍛えて、そしてその実力を様々な方法で試してきた。
実際に今まで負けた事は無かったし、これからもそうだと思っていた。


しかし今回のこのザマ、やはりアタシより強い存在はいたのか……


あんなに体を鍛えても、実力で適わない奴はいる。
やはり最強と言う存在に、自分はなれないのか……
アタシのこの12年間の苦労は……



意識を失いかけたその時、頭の中に蘇る光景があった。
それはまだアタシが小さかった頃、修行を始めたばかりの時だ。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:05:05.14 ID:EREvM9Jf0

     ○     ○     ○

  山の奥の広間、師匠が身長よりも高い大岩の前で構えを取っている。
  それを傍で見つめている、小さなアタシ。

  「なあ、ししょー。ほんとーにそんなことができるのかー?」

  「出来るに決まーとるわい、見とれよー」

  そう言うと師匠は右手に力を込め、目の前の岩へと突き出す。

  「灼熱砂万那流、奥義! 白虎秋西・林牙斬!」

  師匠の攻撃が岩に当たった時だ。凄い音が響くと共に、岩が二つへとパックリ割れた。

  「わー、すげー! ほんとーにいわをわったぞ!」

  「ふっ、まあこんなもんじゃー」

  「なーなー、いつかあたしにもできるよーになるのか?」

  「当然じゃー。一番大事なのは、自分を信じぬく事じゃー」

  「しんじぬくこと?」

  「そうじゃー。少しでも自分の力を疑ったり、自分に自信の無い奴には出来んわー。
    大切なのは、出来て当たり前だと思う事。信じる心があれば何でも出来る訳じゃー」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:08:46.14 ID:EREvM9Jf0

     ○     ○     ○

……そうか。究極の心、答えはもう聞いてたんじゃないか。


なのにアタシは何時までもグズグズと自分の力を疑って……
力を試す事だって、実は自分に自信が無い証拠じゃないか。


そうだ……もうこんな弱い自分とは去ろう。
ここで自分を証明して、やれる事をやろう。


今までの生き方が間違っていたなら、新たにやり直せばいい。
そうだ。アタシ、砂緒ヒートは自分を証明してみせる。

自分は並ぶ物がいない、無双の存在になってみせる事。
師匠の生み出した「流派:灼熱砂万那」に敵は無い事。


そのためには――――

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:12:03.51 ID:EREvM9Jf0

     □     □     □

完璧なタイミング、威力、そして手答えだった。
私の右腕はヒートの腹部へと刺さり、彼女がうな垂れて腕へともたれ掛かる。

ノハ )「………………」

ξ ゚−゚)ξ「……これで終わりね」

正直な所、かなり危なかった。
一瞬でも間違えていたら、この立場は逆転してたかもしれない。
私が全身の力を抜き、ヒートの腹部に刺さった右腕を引こうとした時だ。

ξ ゚听)ξ「……ん、何!?」

何者かが私の右肘を掴み、私が手を戻す事を阻んでいる。
万力の様な力で掴んでくる手。その持ち主は――

ξ;゚听)ξ「嘘ッ!? まだ意識がっ!?」

ノハ )「……そうだ、アタシは――」

ξ;゚听)ξ「くっ、『桜色の――』」

ノハ# )「証明するんだ!!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:15:11.85 ID:EREvM9Jf0

     *     *     *

ヒートの手が回り、ツンの腕が外側へと捻られる。

ξ;゚−゚)ξ「……! 放しなさい!」

ノハ )「いやだっ! アタシは決めたんだっ!」

ξ#゚听)ξ「何をよっ!」

ツンの腕に桜色をした電流の様な物が走り、ヒートは指を放してしまう。
一歩離れて距離を置いたツンは、再び桜色の光を身に纏った。

ノハ )「今度こそ、最強になるって決めたっ! もう迷わない!!」

粒子を両手に集中させ、ツンはヒートに向かって駆け出す。

ξ#゚听)ξ「まだそんな世迷い事をっ!!」

再び繰り出される殴打。今度はヒートも対抗し、二人の間には拳が行き交う。

ノパ听)「いや、アタシが決めたんだ! 絶対、もう絶対負けないって!!」

ヒートの前蹴りがツンへと向かい、彼女の脚を崩させる。

ξ#゚听)ξ「……っ! いい加減にしなさい!」

姿勢を崩したツンは、ヒートへと肩から突っ込んだ。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:18:09.59 ID:EREvM9Jf0

ノパー゚)「ツン、アタシは今最高に楽しいぞっ!
     今を全力で生きていられるからなっ!!」

ツンの体当たりを受けたヒートは、そのまま後ろへと体を流した。
廊下に二人の倒れる音が響き、二人でもつれ合いながら数回転がる。

ξ#゚听)ξ「……アンタは狂ってるわ! 何でそこまでして……!!」

ヒートの上へと乗り、マウントポジションを制したツン。
だが攻撃をする前にヒートの蹴りが入り、彼女は慌てて飛び退いた。

ノパ∀゚)「決まってる! それがアタシの生きる意義だからだっ!!」

ξ;゚−゚)ξ「…………アンタは……」

立ち上がったヒートは、ツンを睨みつける。
そのまま数秒の時が流れ、廊下に静寂の時が響き渡った。



ノパ听)「ツン、これで決着をつけるぞ!!」

ξ ゚听)ξ「いいわ、望む所よっ!」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:21:08.52 ID:EREvM9Jf0

ノハ‐凵]) (そうだ、師匠のあの動きを思い出すんだ……!!)

ξ ゚听)ξ (この一撃に……全てを込める!!)


両者とも自分の右手に全神経を集中させ、力を込め始めた。

ノパ听)「行くぞっ!! 流派:灼熱砂万那、最終奥義が一つ!!」

ヒートの右手が爪を立てながら広がり、彼女の眼前でゆっくりと開閉する。

ξ ゚听)ξ「これで終わらせるっ!!」

ツンの握られた拳に全ての粒子が集まり、真っ赤に輝く。


一拍置かれた後、二人は右腕を構えて走りだす。

ノハ#゚听)「白虎秋西・林牙斬!!」

ξ ゚听)ξ「『桜色の破弾』!!」


互いに全ての力を込めた二つの拳は、奇しくも二人の間でぶつかり合った。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:24:11.04 ID:EREvM9Jf0

ノハ#゚听) (負ける訳にはいかないっ!)

ξ#゚−゚)ξ (ここで負けたら、ヒートが誤った道に進んじゃう!)


ぶつかり合った拳は両者の間でせめぎ合い、僅かに前後へと振動している。


ノハ#゚听) (師匠の力、そしてアタシの力を証明するために!!)

ξ#゚听)ξ (それにあの仮面の計画も進んでしまう……!)


両者とも一歩も譲らない戦い。二人は己の全てを懸け、拳へと込めた。



ノハ#゚听) 「そう、アタシは勝たなくちゃいけないんだああぁっっ!!!!」


ξ#゚听)ξ「私は絶対に、こんな所で負ける訳にはいかないのよっ!!」



永遠に続くかもと思われたその戦いにも、遂に終わりの時が訪れる。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:27:12.44 ID:EREvM9Jf0

全魔力を集中させているはずのツンの拳。
そこに集中されていたはずの赤い光が弾け跳び、宙へと四散する。

ξ;゚听)ξ「えっ――?」

ノハ#゚听)「もらったああああぁぁぁっっ!!」


ツンの拳を砕き、ヒートの拳はひたすら加速していく。
無防備だったツンの腹部へと進み、硬い物が折れる音が響く。

ξ; − )ξ「…………!!」

ノハ#゚听)「はあああぁぁっっ!!」

振り切られたヒートの拳。
ツンの体はくるりと回り、軽い音を立てて床へと倒れる。


ノハ;゚听)「ハアッ、ハアッ…………やった、やったんだ……」

光が消えた廊下には、ヒートの荒い吐息のみが響き渡った。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 07:30:27.73 ID:EREvM9Jf0
       。。     。。       。。
     ゚○゚     ゚○゚     ゚○゚

ノパー゚)「やった! 勝った、勝ったんだ!!」

./・ω・;ヽ「そ、そんな……そんな馬鹿なぽ……」

ツンの肩に止まっていた毛玉が何かを呟いている。
まあこちらに挑んでくるようなら、返り討ちにするだけだがな。

そんな事はともかく、あいつに勝つ事が出来たんだ。
アタシの実力は限界なんか無い、それがよく解った。

奥義のキレは微妙だったが、きっと特訓すればなんとかなるはずだ。
そうだ、師匠に究極の心が解った事を伝えにいかなければな。
そして残りの三つの奥義を教えてもらって、それで――

ノパ听)「ん? 電気が……?」

壊れていたはずの廊下の照明が灯り、辺りが光で照らされる。
そして校長室の扉が開き、中から人が出てきた。

( [E/▽)「全く……君はよくやってくれたよ。
       まさかあの彼女を倒してしまうなんてね……」

……なんだ、あいつか。
しかしその似合ってない仮面と口調、止めればいいのにな……

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:00:17.29 ID:EREvM9Jf0

あいつはゆっくりとアタシに向かって近づいてくる。

ノパー゚)「ああ、凄いだろっ!? アタシも今回の事で解った事があるんだ!」

( [E/▽)「全く、君は本当に凄いよ。僕の予測をはるかに上回るなんて……」

彼はアタシの横に立ち、倒れたツンの様子をまじまじと見始めた。

ノパ∀゚)「アタシは強い! 例えどんな事があっても――」

( [E/▽)「そう、強過ぎる……だから僕にとっては危険なんだ」

ノハ ∀ )「負けな……え――?」


アタシのお腹から、じわじわとした痛みが広がっている。
いつの間にか彼の手には、黒い短剣が握られている。
そしてその刃先は、アタシのお腹へと入り込んでいる。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:03:03.31 ID:EREvM9Jf0

ノハ )「……な、なんで…………?」

頭がボンヤリしてきて、目の前が霞んでくる。
強烈な眠気の様な物がアタシを襲い、意識が遠のいていく。

( [E/▽)「ヒート、最後に一つだけ伝えておこう」

アタシの意識が闇へと落ちる寸前、彼は確かにこう呟いた。



  ( [E/▽)「君の事は好きだったよ、本当に……」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:06:05.99 ID:EREvM9Jf0

     *     *     *

崩れ落ちそうになったヒートを抱きとめた仮面の人物は、彼女をゆっくりと寝かせる。
そしてツンの元まで近づいた彼は懐から小瓶を出し、中の液体をツンへと降りかけた。

./・ω・#ヽ「な、何をしてるんだぽ!?」

( [E/▽)「あまり騒がないでくれるかい? 心配しなくても、これはただの回復薬さ」

./・ω・;ヽ「か、回復……かぽ?」

予想もしなかった単語に、ぽは戸惑う。

( [E/▽)「多分二時間もしたら意識を取り戻すよ」

./・ω・;ヽ「な、なんでそんな事を……?」

( [E/▽)「さてね。君に話す義理はないな……」

おどけたように肩を竦める仮面の男。
彼はヒートを肩へと担ぎ上げ、階段の方へと向かい歩いていく。

./・ω・;ヽ「待つぽ! お前の目的は一体なんだぽ!?」

男の足が止まり、数秒間立ち竦む。
そして彼は顔だけをぽに向け、嘲るような口調で話し始めた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:09:04.11 ID:EREvM9Jf0

( [E/▽)「そうだね……メシアになる、っていうのはどう?」

./・ω・;ヽ「メシア…………救世主かぽ?」

( [E/▽)「そう、世の中を救う指導者だ。正義のヒーローとか、いい響きだろ?」

./・ω・;ヽ「じゃあ何で古代神を蘇らせるかぽ!?
       あれは混沌と破壊しか生み出さないぽ!」

( [E/▽)「どんなものでも使いようによっては、利益にも害悪にもなるんだよ」

./・ω・;ヽ「…………」


( [E/▽)「……ああ、そうだ。肝心なことを言い忘れる所だったよ。
       この件に関するヒートの記憶は、僕の方で全て消させてもらうから。
       後から彼女に当たっても無駄足になるだけだよ。それじゃあね」


男は廊下から去っていき、後には倒れたツンとぽのみが残された。
蛍光灯の細かな振動音と、ツンの細い息の音のみが廊下に響き渡る。



……こうして、ツンにとって初めての敗北を味わった戦いは終わった。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:12:28.49 ID:EREvM9Jf0

     △     △     △

('A`)「よお、おはよーさん」

( ^ω^)「おっおっ、おはようだお!」

まったく、こいつはテンションが高いな……
まだテストは半分返ってきてないんだぜ?

ξ ゚听)ξ「……おはよう。じゃあ行きましょ」

……逆に何でツンはこんなに暗いんだ?
昨日はむしろ上機嫌に見えたのに……

('A`;) ヒソヒソ(なあ、何でツンはあんなに暗いんだ?)

(; ^ω^) ヒソヒソ(本人に聞いてほしいお。正直ボクも朝から困ってるんだお)

まあ触れない神に祟りは無いからな……
わざわざ地雷を踏む必要もないだろう。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:15:16.19 ID:EREvM9Jf0

     *     *     *

('、`*川「あー、もうマジやばかったわー……」

ミセ*゚ー゚)リ「ホントホント。ハロー先生のなんか赤点寸前だったしね」

ノパ−゚)「…………」

('、`*川「ありゃ、今日のヒート元気無いわね。どうしたの?」

ノパ听)「あっ、いや……何かぼんやりしてさ……」

ミセ*゚ー゚)リ「そうそう、何か今回ヒート点数良かったじゃん。
       何か特別な勉強法でもやったの?」

ノハ;゚听)「いや……特には思い出せない……」

('、`*川「そこはしっかりしといてよー」

ノパ听)「……なあ、最近アタシに何か変わった事は無かったか?
     ここ二週間位のアタシの記憶が曖昧でさー……」

('、`;川「もしかして……ボケた? あんたの年ではまだ早いわよ」

ノパ听)「いや、ごめん! 真面目に聞きたいんだ!」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:18:21.55 ID:EREvM9Jf0

ミセ*゚ー゚)リ「そんな事言われても…………あ、そうだ!
       この間オススメのファッション誌紹介してって電話あったよね?」

ノパ听)「えっ、そんな事があったのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「そうそう、ヒーちゃんにも遂に色恋沙汰かと思ったんだけど……」

ノハ;゚−゚)「駄目だ、全然思い出せない……」

('、`*川「……アンタさー、本当に何も覚えてないの?」

ノパ听)「うん……日記帳もどっかにいっちゃったしなー……」

('、`*川「……まあ、忘れるって事は大した事じゃないんでしょ!
     それより夏よ、夏! 男でも作ってパーッと遊んじゃいなよ!」

ミセ*゚ー゚)リ「……そういうペニサスにはいるの?」

('、` 川「……いるんだったら苦労はしないわよ。ミセリは?」

ヒト ゚−゚)リ「……いない。付き合いたい相手もいないし……」

('、` 川「ですよねー……告白とかも当然ないしさー」

ミセ ゚ー゚)リ「ですよねー……ヒーちゃんはそんな相手いないの?」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:21:25.61 ID:EREvM9Jf0

ノパ听)「実はここだけの話……前から気になる奴がいるんだ」

('、`;川「えっ! 嘘ッ!? 誰、誰なのっ!?」

ミセ*゚ヮ゚)リ「クラス? それ以外? それとも先輩とかっ!?」

ノハ;゚听)「二人ともやたら食いつきがいいなっ!?」

('、`*川「で、名前は誰よっ? さあ、とっとと吐きなさい!」

ガク*゚ヮ゚)リ「他の学校の生徒とか……まさか先生とかだったりして!?」

ノハ;゚听)「話すから落ち着けっ! あとミセリ、髪型関係無いものになってるぞ!」

('、`*川 wkwk

ミセ*゚ー゚)リ tktk

ノパ听)「いいかっ、アタシが好きなのは――」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:24:04.72 ID:EREvM9Jf0

     :÷:     :÷:     :÷:

全く、昨夜はとんだ厄介な晩だったな。
あの女があそこまで力を付けていたのも想定外だが、それをヒートが破ったのも大きな誤算だった。
まあ目的の物は手に入れたし、結果だけは上々だが……


しかし彼女の自分に対する思い、あれほど強かったとは……
最初は記憶だけを綺麗に消そうとしたが、どうしても無理が生じてしまった。

そこで取った手段は、自分の存在を別の人物へと書き換える事。
幸い目処は付いていたので、書き換えはすんなりと行えた……はずだ。

正直自分も辛いが、何より彼女にはこれ以上関って欲しくない。
どうせ計画を実行したら、もう後には引けなくなるしな……

しかし書き換え先の彼には少し悪いな。あまり自分とは面識が無いし……
まあ彼の性格から見ると、そこまで悪い扱いはしないだろう。


それよりも問題は、残りの水晶だ。
青と碧、今年中に見つかるといいんだが……

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/01/01(金) 08:27:15.86 ID:EREvM9Jf0

     *     *     *

ミセ*゚ー゚)リ「いやー、しかし意外な相手が来ましたねー」

('、`*川「そうそう。もう今日のうちに告っちゃいなよ!」

ノハ*゚−゚)「んー……それは…………」

ミセ*゚ー゚)リ「別に彼には他の噂とか無いからさー!」

('、`*川「思いを乗せた手紙を書いて、そっと下駄箱に入れておくのよ。
     そして放課後に体育館裏まで呼び出して……」

ミセ*゚ー゚)リ「ペニちゃん、それカツアゲコースだから」

ノパ听)「うん、そうだな! 全力で当たって砕くぞっ!!」

('、`;川「砕けるじゃなくて砕くって……ともかくその意気よ」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫! 草葉の影からペニちゃんが見守っているからねー!」

('、`#川「ってコラァッ! 何勝手に殺してるのよ!?」

ノハ*゚听)「よーし、待ってろよ! アタシのものにしてみせるからなっ!」


     【次回へ続く】

85 名前:【次回予告】 投稿日:2010/01/01(金) 09:00:26.47 ID:EREvM9Jf0
  _
( ゚∀゚)「リアルでの季節を考えたらいけないな、この作品……」

('A`)「今は冬真っ只中だからな……さて、次回だが――」


  皆が待ちわびた夏休み、嫌いな奴など存在しない!
  海に山川、肝試しに虫取り、花火大会にスイカバー!
  正直イベントてんこ盛り、花火の後はちゃんと火を消せ!

  そんな次回:『塊マンボ!』
                             お前を殺す……

  _
(; ゚∀゚)「何、予告のこのテンション……?
     最後物騒なセリフ入ってるし……」

('A`;)「俺に聞くな。正直Wの次回予告ってどんなのだったっけ……」
  _
(; ゚∀゚)「……一つだけ解るのは、上のは絶対間違っているって事だな」


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